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今、クチナシの花が真盛りである。ベランダの椅子に座って一服していると、馥郁とした香が風に乗って漂って来る。 しかし、例によって真っ白に咲いた花には無数と言いたくなるほどのアザミウマが集り、蕾にはアブラムシが付く。今日は、そのアブラムシが排泄する甘露を目当てにやって来るアリを紹介しよう。フタフシアリ亜科シリアゲアリ属のハリブトシリアゲアリ(Crematogaster matsumurai)である。体長は、図鑑に拠れば2~3.5mm(働きアリ)、此処に示した写真では約3.5mmである。クチナシの蕾の基部に付いたアブラムシと、その甘露が目当てのハリブトシリアゲアリ.捕食者(コクロヒメテントウ)の幼虫も2匹見える(2009/06/11) 上はクチナシの蕾の基部を撮ったものである。赤味を帯びた青灰色のアブラムシに多くのアリが集っている。全農教の「日本原色アブラムシ図鑑」には、クチナシに寄生するアブラムシとしてクスオナガアブラムシ(アブラムシ亜科ヒゲナガアブラムシ族)とToxoptera sp.A(Toxoptera属の未記載種が2種あるのでAとBで区別している)(アブラムシ亜科アブラムシ族)が挙げられている。 この内、クスオナガアブラムシは触角が体長よりもずっと長く明らかに異なる。一方、Toxoptera sp.Aは、クチナシ専門のアブラムシらしく、また、写真のアブラムシと、腿節の色や角状管、尾片の構造が類似している。しかし、今回はアブラムシの写真は余りキチンと撮らなかったので、このアブラムシの種類に関しては明確な結論は出さず、「Toxoptera sp.Aの可能性が高い」とだけしておこう。 アブラムシとアリの他に、白い突起を持った変な虫も写っている。コクロヒメテントウの幼虫で、アブラムシを食べに来ているのである。一見、コナカイガラムシの様な格好をして居るが、これはアリなどのアブラムシの保護者を騙す擬態とされている。実際、アリはすっかり騙されている様で、このテントウムシの幼虫を攻撃することは全くなかった。ハリブトシリアゲアリ.体長約3.5mm.尾端から針を出して警戒中.針の先には毒液が付いている(2009/06/13) さて、肝心のアリの方である。このシリアゲアリの仲間は警戒態勢を取るとき、下の写真の様に、毒針を突き出して腹部を反らせる。それでシリアゲアリの名がある。 全国的な普通種であるオオクロアリやトビイロケアリ等が属すヤマアリ亜科のアリには針が無く、刺す代わりに腹端から蟻酸を出して敵に吹付ける。しかし、その他のアリはこのシリアゲアリの様に針で毒液を注入する。ハチと同じである。ハチとアリは同じ膜翅目だから、当然と言えば当然であろう。横から見た警戒中のハリブトシリアゲアリ.やはり毒液の付いた針を出している.白矢印は前伸腹節刺で、ほぼ三角形をしている(2009/06/13) ハリブトシリアゲアリにはテラニシシリアゲアリと言う類似種が居る。図鑑に拠れば、両者の違いとして、前者の方が色が赤っぽいこと、背中にある棘(前伸腹節刺)が前者では余り尖らず横から見るとほぼ三角形をなすのに対し後者では針状であること、後腹柄節背面中央が後者では縦に窪むのに対し前者では窪まないこと、等が挙げられて居る。しかし、色彩の違いは余り当てにはならないし、後腹柄節背面の窪みはこの程度の写真では判断できない。一方、前伸腹節刺の形は真横から撮った写真で何とか判断出来る。 上の写真中、白矢印で示したのが前伸腹節刺である。ほぼ三角形で針状ではない。ハリブトシリアゲアリとした所以である。 このアリは主に蜜液を餌とし、樹皮下や腐った樹木に営巣するとのこと。また、住宅地に棲息するのは一般にハリブトの方で、テラニシはもっと木の茂った環境に棲息するらしい。最初の写真の右上を2日後に撮ったものアブラムシの多くはマミーになっていた(2009/06/13) 最初の写真を撮った2日後に、また同じ場所を見に行った。もうアリの多くは蕾の裏の方に集まっており、撮り易い表側には殆ど居なかった。 上の写真は、最初の写真の右上と同じ部分である。最初の写真でも一番上のアブラムシは異様に腹が膨らんでいたが、2日後には明らかなマミー(Mummy:ミイラの意、アブラバチに寄生され中にはハチの蛹が入っている)になっている。その他のアブラムシも多くはマミーになっていた。シリアゲアリに守って貰っても、アブラバチの寄生からは逃れ難いのであろうか。或いは、アブラバチはかなり若齢の幼虫に産卵する様なので、アリが来る前に既に寄生されていたのかも知れない。 アブラムシと言うと、穂先にビッシリと付いているブキミな光景を思い浮かべる。しかし、我が家の庭を観察していると、群が増殖する前に捕食者に食べられてしまったり、大風に吹き飛ばされてしまったり、或いは、アブラバチに寄生されて殆ど全滅する機会の方がずっと多い。アブラムシも思っているほど楽ではない様である。
2009.06.27
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最近、駐車場のスレートの彼方此方に直径3mm位の丸い物がちている。毛虫・芋虫の落とし物に違いない。上にあるのはウメの木、或いは、昨年見かけたにも拘わらず写真を取り損ねたモモスズメの幼虫かも知れない。 そこで、眼を皿の様にして探してみた。しかし、幾ら探しても芋虫の姿は見えない。代わりに見付けたのが、ゴミグモの巣。ゴミグモとその巣.巣の長さは約6.5cm中央より少し上にクモが居る(2009/06/15) ゴミグモ類は、獲物の食べ滓や、脱皮殻、巣に引っ掛かったゴミ等を巣の中心部に集める習性があり、故に塵蜘蛛と呼ばれる。コガネグモ科(Araneidae)ゴミグモ属(Cyclosa)に属す。 以前紹介したギンメッキゴミグモは体長5~6mm(雌)と小さいし、溜めたゴミの量も余り多くない。しかし、この無印ゴミグモ(Cyclosa octotuberculata)は体長12~15mmとずっと大きく、巣に付けているゴミの量も相当なもので、長さが6~7cmもある。ゴミグモの拡大.多くのクモと同じく下を向いている同属のギンメッキゴミグモは例外的に上向き下方、脚の間から光っているのは後中眼(2009/06/15) ギンメッキゴミグモは小さいが、ゴミの量は少ないし、腹部は丸く普通は銀色をしているから、何処にクモがいるかは直ぐに分かってしまう。一方、ゴミグモの方は、輪郭がゴツゴツしており、色彩も迷彩的なので、多量のゴミの中に居ると、大型であるにもか拘わらず何処にいるのか些か分かり難い。上の写真の様に拡大しても、その輪郭は背景のゴミに紛れて不明瞭な部分がある。獲物を捕らえたゴミグモ.上の写真では隠れていた頭胸部が見える鋏角の牙を獲物に突き刺している(2009/06/15) 一通り撮ったつもりで居たら、横から撮るのを忘れていたことに気が付いた。そこで、もう一度撮りに行くと、ゴミグモさん、今度は何か獲物を捕まえていた。2番目の写真では眼しか分からなかった頭胸部が現れている。少し分かり難いが、鋏角の牙を黄色い獲物に突き立てているのが見える。牙の先端付近には毒腺が開いており、其処から毒で獲物は麻痺、或いは、殺されてしまう。 クモには通常、前中眼、前側眼、後中眼、後側眼の4対の単眼がある。ハエトリグモ類(例えばメスジロハエトリ)では前中眼が双眼鏡の様に大きく発達しているが、このゴミグモ(コガネグモ科)の場合、ストロボの反射で光っているのは後中眼である。斜めから見たゴミグモ.腹部はデコボコしている(2009/06/15) 背面からでは分かり難いので、少し斜めから撮ってみた。此の方がクモ全体の姿を理解しやすいであろう。もう、獲物をシッカリ抱き込んでいる。しかし、この黄色い獲物、一体何か? 撮った写真を全部見てみたが、結局何だか分からなかった。ゴミグモの頭胸部.後中眼、前中眼が見えるその側方に前側眼と後側眼がある(2009/06/15) 頭胸部を更に拡大したのが上の写真。頭の上面に付いている後中眼の下側に、前方を向いた前中眼があるのが見える。また、その側方にも眼と思われる構造が見える。調べてみると、コガネグモ科では前側眼と後側眼は前後に相接しているとのこと。この側方にあるのが、それであろう。ゴミグモの略側面.ゴミの多くはグルグル巻きにされた獲物の滓(2009/06/15) 側面からも撮ってみた。随分背中がゴツゴツしている。また、ゴミの多くは、糸でグルグル巻きにされた獲物の滓であることも分かる。 しかしこの写真、側面と言うより側面上方から撮っている。そこで、真横から撮ろうと思い、脚立(今日の此処までの写真は脚立に乗って撮った)を動かしたら、クモさん、どうも身の危険を感知したらしく、ツーと糸を引いて下に降りてしまった。スレートの上に降りたゴミグモ.ゴミがないので見易い(2009/06/15) しかし、下は草むらでもヤブでもなく駐車場のスレート。急いで逃げるかと思いきや、ジッとしたまま動かない。予想が狂ったので、戸惑っているのだろうか。或いは、「死んだふり」をしているのかも知れない。 その間に、こちとらはゴミの上に居ないゴミグモを撮ることにした。背面からはストロボの反射で撮れないので、横と前の2方向から撮った。当たり前だが、ゴミがないのでクモの輪郭がハッキリしている。脚の間から見えるゴミグモの頭胸部.前側眼と後側眼は相接している(2009/06/15) 前方からの写真は、被写界深度が浅いので、頭胸部のみを拡大した。前中眼、後中眼は明らかだが、前側眼と後側眼は殆ど癒合して一つになってしまったかの様に見える。 クモさん、そのままジッとして動かない。しかし、何分にも駐車場なので、誰かに踏み潰される可能性が無くもない。其処で、木の葉に載せて巣に戻してやった。巣に戻ったクモさん、慌てて巣から伸びる糸を伝って木の葉の裏へ隠れてしまった。
2009.06.21
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毎日鬱陶しい空模様が続いている。虫も余り姿を見せないが、それでも探せば何かが見つかる。 先日は一寸面白い虫が居るのに気が付いた。クロヒラタヨコバイ(Penthimia nitida)、全国的には極く普通の虫らしいがこの辺りでは比較的少なく、特に我が家で見るのは今回が初めてである。クロヒラタヨコバイ(Penthimia nitida).体長4mm強、一見甲虫の如し(2009/06/13) 写真の様に、一見甲虫を思わせる形と色をしている。居たのはクチナシの葉裏で、遠目にはルリマルノミハムシが居るのかと思った。 しかし、名前の通り、ツマグロオオヨコバイ等と同じヨコバイの仲間であり、半翅目同翅亜目クロヒラタヨコバイ科(或いは、ヨコバイ科クロヒラタヨコバイ亜科)に属す。同じく背面から撮った写真だが、此の方が翅の模様が良く見える(2009/06/13) 近似種にオオクロヒラタヨコバイと言うのが居る。しかし、困ったことにクロヒラタとの違いが良く分からない。オオクロヒラタは「東京都本土部昆虫目録」にも載っているのでその可能性も零ではないが、写真の虫の体長は4mm強、クロヒラタとしてもやや小型なので、此処では単にクロヒラタヨコバイとしておく。横から見たクロヒラタヨコバイ.暫く接写をしていなかったせいか、少し後方からの写真になってしまった(2009/06/13) 背面から見ると甲虫の様でも、横から撮ればやはり如何にもヨコバイ類らしい脚をしている。ヨコバイ類は何かあると、ピンッと跳ねる。跳ねるのに使うのは後脚で、中脚よりもかなり長い。それで、留まっているときは、上の写真の様に、後腿節端が中腿節端よりも前に出てしまう。 ヨコバイ類は我が家の庭には余り多くない。だから、このWeblog「我が家の庭の生き物たち」には、ヨコバイ類は殆ど登場していない。しかし、もう一つのWeblogにはかなりの種類を掲載してある。何れの種類でも、後腿節端は中腿節端よりも前に出ている。興味のある読者諸氏は此方を参照され度。クチナシの葉裏に張り付くクロヒラタ.実はこれが最初に撮った写真(2009/06/13) 虫の写真を撮るときは、少なくとも、背面、側面、正面の3方向から撮ることにしている。色々な方向から撮らないと、種類の判別が出来ないことが多いのである。しかし、今回は正面からの写真は無い。一応撮ったのだが、ブレていたので没にしたのである。 等倍接写と言うのは射撃のようなもので、暫くやっていないと確実に腕が落ちる。2ヶ月の出張の間、虫の写真を撮る機会は皆無に等しかった。御蔭で、接写をするのが少し下手になった様である。
2009.06.18
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火曜日の夕刻に帰朝した。その後に一部の読者諸氏のサイトを拝見したので、「足跡」から小生の帰国に気が付かれた方も居られるかも知れない。 今回の出張は2ヶ月に満たなかったので大して疲れては居ない。しかし、帰国便が早朝発であったのとその次の日にまた早起きをしなければならい事情があって、それで睡眠不足に陥り未だに頭痛が取れない。そんな訳で帰国後の第一報は少し遅れてしまった。 庭は草も木も伸び放題だから虫は結構居る。掲載済みの虫が殆どだが、探せば未掲載の虫も居ない訳ではない。当然小さい虫が多い。今日紹介するセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ(Uroleucon nigrotuberculatum)の有翅形も体長は3.5mm、余り大きい虫とは言えない。和名は矢鱈に長いが・・・。セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシの有翅形(胎生雌)横から見ると脚や触角が長く、翅も綺麗で中々カッコイイ(2009/06/12) 虫集め用に植えてあるセイタカアワダチソウの茎上部に数頭居た。有翅形だが今頃居る有翅形は有性ではなく単性の胎生雌で、やがて無翅胎生雌を産み、その後巧く行けば爆発的に増える筈である。 我が家にアブラムシは多い。しかし、このアブラムシをこれまでに見かけた記憶はない。胴体は真っ赤で脚の大部分と触角は真っ黒、かなり特徴的なアブラムシである。だが「日本原色アブラムシ図鑑」には載っていない。そこで、「セイタカアワダチソウ アブラムシ」で検索すると一発でセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシが出て来た。 セイタカアワダチソウ以外の植物には殆ど寄生しないらしい。と言うことは、セイタカアワダチソウの原産地である北米からの外来種に違いない。セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシの有翅形(2009/06/12) 調べてみると、このアブラムシは1980年代後半に北米から侵入したと推定されているとのこと。セイタカアワダチソウが帰化したのは1890年代の終わり頃らしいので、宿主が帰化してから約1世紀遅れて寄生者であるアブラムシがやって来たことになる。 掲載の写真を撮ったのは昨日である。今日見てみると1頭しかしない。何処か別の場所に移動したのかも知れないが、このセイタカアワダチソウにはササグモが1頭居て盛んにかけずり回っているから、その餌食になってしまった可能性が高い。どうやら、我が家でこの長い名前のアブラムシが爆発的に増殖することは無さそうである。
2009.06.13
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