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どうもネタ切れ状態が続いている。後3日で12月となるが、11月の更新はこれで漸く3回目、昨年の11月は11回、12月は10回も更新しているのに較べて著しく少ない。何分にも庭が狭いので、虫も植物も殆ど紹介し尽くした感がある。 しかし、1種類だけまだ掲載していない虫が居る。外庭に植わっているヤマボウシに付いているアブラムシである。 余り撮る気の起こらない虫である。しかし、他に未掲載の虫は見つからないし、また、幸いにも有翅虫が居たので、このアブラムシを紹介することにしよう。ヤマボウシヒゲナガアブラムシの有翅雄体長約2mm、翅端まで約5mm(写真クリックで拡大表示)(2009/11/24) 全農教の「日本原色アブラムシ図鑑」で調べてみると、ヤマボウシに寄生するアブラムシとしてはヤマボウシヒゲナガアブラムシしか載って居ない。今日紹介するアブラムシの特徴は、この図鑑の写真や記述とほぼ一致するので、どうやらこのヤマボウシヒゲナガアブラムシ(Sitobion cornifoliae or Macrosiphum cornifoliae)で間違いなさそうである。ヤマボウシの他には、クマノミズキにも寄生するとのこと。ミズキ属(Cornus)の植物に広く寄生するのかも知れないが、隣に植わっているやはりミズキ属のハナミズキには付いていない。同一個体(以下同じ).アブラムシにしてはカッコイイ(写真クリックで拡大表示)(2009/11/24) 有翅虫の体長は約2mm、翅端までは約5mmである。先日紹介した「オオアブラムシ亜科の有翅虫(雄)」は、体長約3.5mm、翅端まで約1cmだから、その1/2程度の長さである。 やはり腹部が小さく、胸部と同じ程度の大きさしかない。・・・と言うことは、これも雄の有翅虫であろう。正面から見たヤマボウシヒゲナガアブラムシの有翅雄アブラムシにしては虫相?が良い.右は同種の幼虫(写真クリックで拡大表示)(2009/11/24) ヤマボウシヒゲナガアブラムシは、アブラムシ科アブラムシ亜科(Aphidinae)ヒゲナガアブラムシ族(Macrosiphini)に属す。オオアブラムシ類の有翅虫に似て翅斑(縁紋)が大きいが、オオアブラムシ亜科とは、Rs脈(下の写真右下の丸く曲がった翅脈)の形や、M脈(写真ではRs脈のすぐ上にある翅脈)の分かれる位置が異なる。 脚は基部を除いて色が濃く、小楯板、胸背、頭部背面も濃い焦げ茶色をしている。体の下面は色が薄く、腹部は全体が少し緑を帯びた黄色である。しかし、角状管(腹部第5節側面から出ている1対の管状構造)は脚の基部に近い色合いをしている。真横から見たヤマボウシヒゲナガアブラムシの有翅雄翅斑が大きくオオアブラムシの有翅虫に似るがRs脈の形やM脈の分岐位置が異なる(写真クリックで拡大表示)(2009/11/24) ヤマボウシ葉裏の翅脈に近いところに群がっているが、その数は多くなく、ビッシリと付くことは無いらしい。しかし、木の下部にある葉は、排泄する甘露でベトベトであった。翅を拡げたヤマボウシヒゲナガアブラムシの有翅雄(写真クリックで拡大表示)(2009/11/24) 前述の図鑑には、このヤマボウシヒゲナガアブラムシの生活環に付いて何も書かれていない。寄主としてはクマノミズキとヤマボウシしか載っていないので、寄主転換する種ではないらしい。 「アブラムシの生物学」に拠ると、アブラムシ亜科に属す種の生活環には、完全生活環(秋に産雌有翅虫と有翅雄が出現し、産雌有翅虫が胎生で産んだ無翅雌が有翅雄と交尾して越冬卵を産む)の他に、年間を通して有性生殖を全く行わない不完全生活環や、この両者の混合型、中間型など様々な様式がある。中には秋に有翅雄と越冬型胎生雌が出現する生活環もあり、この場合、雄は生殖には関与しない。生まれても、何もしないで死ぬだけである。写真の雄がその様な運命にあるのか否かは、残念ながら分からない。ヤマボウシヒゲナガアブラムシの無翅胎生雌.体長約3mm体は半透明で眼が黒く、触角に紋がある(写真クリックで拡大表示)(2009/11/27) 無翅虫は無翅雄よりも少し大きく体長約3mm、触角を除いて非常に淡い色合いをしている。写真は既に紅葉した葉に付いている個体を撮ったものなので背景とは色が異なるし、また、コントラストを強めにして見易くしてあるが、葉が緑色の場合には背景に紛れて輪郭が非常に分かり難い。 写真を撮るときも、何処に焦点が合っているのかが良く分からない。幸い眼は黒いし、触角が縞模様なので、これらを目当てに焦点を合わせた。同一個体.横に居る若齢幼虫はこの個体が産んだ仔虫かもしれない(写真クリックで拡大表示)(2009/11/27) この無翅虫の特徴としては、以上のような半透明に近い体で眼が黒く、非常に長い触角に縞模様があり、腿節端(と思う)に黒斑を持つことの他に、角状管の形も重要な指標となる。その基部は太く先端部の2倍以上あり、長さは中央部の幅の約10倍で、先端1/3は少し黒ずみ(網目状の模様があるとのこと)、また、先端は縁がある(縁輪が僅かに発達する)。尾片(お尻の先)は短く、角状管の長さの約1/3である。真横から見た同一個体.葉が紅葉して吸汁が出来ないのかヘタッた感じしかし、まだ生きており少し動いていた(写真クリックで拡大表示)(2009/11/27) この無翅虫は成虫(胎生雌)と思われ、その横には、写真にも写っている様に、1~2頭の若齢幼虫が見られることが多かった。これらの幼虫は、この無翅虫が産んだ仔虫ではないだろうか。もう気温も低く運動能力が低下しており、また、既に葉が紅葉しているので、吸汁が出来ずに飢餓状態にあるのではないかと思われる。 まだ紅葉の多くは木に残っている。しかし、数日の内に落葉して、何れ朽ち果てるであろう。このヤマボウシヒゲナガアブラムシの胎生雌やその仔虫も、やがてその葉と運命を共にすることになる。
2009.11.28
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11月ももう20日代に入ってしまった。今年もそろそろ終わりである。 今日は「北米原産シオンの1種(紫花)」に居た芋虫を紹介する。見付けたのは今月の上旬であったが、ヤガ科キンウワバ亜科(Plusiinae)の幼虫であることまでは分かっても、この連中は羽化させないと種までは落ちないので、飼育して羽化するのを待っていたのである。羽化した成虫を調べると、エゾギクキンウワバ(Ctenoplusia albostriata)であった。 エゾギクキンウワバの終齢幼虫.頭の方へ行くにつれ体高が低くなる(写真クリックで拡大表示)(2009/11/01) 終齢幼虫で体長は3cm程度。腹部の第7~8節辺りで体高が一番高く、前方に行くにつれて段々低くなる。しかし、背面から見ると体の幅は殆ど一定である(下)。同一個体.背側から見ると体の幅は殆ど一定(写真クリックで拡大表示)(2009/11/01) 鱗翅目(蝶、蛾)の幼虫の多くは、第3~6腹節に1対ずつ、全部で4対の腹脚を持つ(尾脚を除く)。しかし、ヤガ科の中にはこのキンウワバ亜科やコヤガ科、アオイガ科(例えばフタトガリコヤガ)の幼虫の様に、第3~4腹節の腹脚が退化して2対しか持たない連中も居る。 この様な脚を持っているので、歩き方は尺取虫的になる。なお、尺取虫(シャクガ科)の場合は、更に第5腹節の腹脚も退化して、腹脚は第6腹節の1対だけである(例えば、ヨモギエダシャクの幼虫)。エゾギクキンウワバ終齢幼虫の腹脚.2対しかない(写真クリックで拡大表示)(2009/11/01) 頭は、腹部後半の太さに比してかなり小さい。尺取虫的な体勢に加えて、胸脚を放してこの小さな頭をかなり忙しく振り回すことがあり、その様な場合には、何かヒラタアブ類の幼虫を思わせる様な動きになる。エゾギクキンウワバ終齢幼虫の頭部と胸部.頭は小さい(写真クリックで拡大表示)(2009/11/01) 下は別個体で、蛹化間近である。最初の個体は蛹化するまであと数日を要したが、それに較べ随分と太っている。 このエゾギクキンウワバの幼虫は、専ら花序の中にある小さな葉(1種の苞?)か舌状花の花弁を食べ、下位にある大きな葉は食べない様である。食べているのを見たことがないし、また、食痕も見当たらない。別個体.前蛹になる1日前で上の個体に比して随分太っている(写真クリックで拡大表示)(2009/11/16) この幼虫の種類を調べるのに、先ず北隆館の古い幼虫圖鑑を参照した。これにはミツモンキンウワバの幼虫が載っていて、これが写真の幼虫に良く似ているのだが、「頭部の側面に黒線が走る」と書かれている。御覧の様に、このエゾギクキンウワバの終齢幼虫にはその様な黒線はない。全くの無紋でコントラストに乏しい。休憩中の幼虫.顔を上げて休む(写真クリックで拡大表示)(2009/11/01) 普通、幼虫が休んでいるときは頭を下向きにすることが多いので、中々顔が見えない。しかし、この幼虫は顎を上げた様な格好で休憩する。顔の写真は非常に撮り易い。こう云うのも一寸珍しいと思う。正面から見たエゾギクキンウワバ終齢幼虫の顔(写真クリックで拡大表示)(2009/11/01) 「シオンの1種」には合計3頭の幼虫が居た。実は、残念ながら此処に示した写真(下から3番目を除く)の個体は繭を作った後、蛹化せずに死亡してしまった。寄生されていたのではなく、何らかの病気で死んだ様である。エゾギクキンウワバと同定したのは、此処に示していない別の個体である。だから、この幼虫がエゾギクキンウワバであるという確証はないのだが、同じ場所に同じ齢の近縁種の芋虫が居る可能性は極めて低いと思うし、学術論文ではないのだから、まァ、エゾギクキンウワバの幼虫としておく。 エゾギクキンウワバの幼虫は、葉の間に極く薄い繭を作ってその中で蛹化する。写真の枚数が多くなるので、蛹や成虫についてはまた次の機会に譲ることにしよう。
2009.11.23
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とうとう11月も半ばに入ってしまった。まだキク科の花は咲いているが、虫の新顔はまるで現れない。仕方がないので、1週間程前に撮った正体のよく分からないアブラムシの有翅虫を出すことにした。アブラムシの有翅虫.オオアブラムシ亜科の雄と思われる翅端まで約10mmと大きいが、胴体は小さい(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 翅端まで約10mm、かなり大型の有翅虫である。しかし、体の長さはどうかと言うと、これが非常に短く約3.5mmで体長の僅か1/3程度、特に腹部が短く体全体の2/5位しかない。 どうも雄の有翅虫の様である。雌ならば腹部がもっと大きいと思う。同一個体.翅脈の基部が太く、翅斑(縁紋)が異常に大きい(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 横から見ると、翅脈の基部が矢鱈に太く、また、翅斑(縁紋)が異常なほど大きい。写真を撮っている時は、この太い翅脈と縁紋が胴体の続きの様に見えて、随分細長い変な腹部だと思った位である。暗青色、飴色、黒色で中々渋い配色(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 調べてみると、こう言う翅脈上の特徴を持つのはオオアブラムシ亜科(Lachninae)の様である。余り自信がないが、大型でもあるし、一応オオアブラムシ亜科の有翅雄と言うことにしておく。全体に比し腹部は如何にも小さい(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 拡大してみると、体は青味を帯びており、腿節の一部と翅脈基部が飴色(赤褐色)、脚のその他の部分は黒色で、中々良い色合いをしている。 全農教の「日本原色アブラムシ図鑑」を見ると、ハネナガオオアブラムシ(Cinara longipennis)がこの様な特徴を持っている。しかし、図鑑に載っているオオアブラムシ亜科は僅かに8種、九州大学の目録を見るとオオアブラムシ亜科は51種もあり、オオアブラムシ属(Cinara)だけでも26種もあるので、そう簡単に決めつける訳には行かないであろう。正面からみた顔.アブラムシは一般に虫相?が悪い(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 雄は晩秋にしか現れない。最近の理科の教科書は読んだことはないが、昔の教科書に書かれていたアブラムシの生活環は次の様である。春に卵から孵った雌(これを幹母と言う)は単為生殖で仔虫(無翅胎生雌)を産み、仔虫は成長してまた単為生殖で増殖し、世代を重ねる(無性世代)。これが晩秋になると雄と有性雌を生じ、有性雌は雄と交尾の後、越冬卵を産む(有性世代)(しかし、実際には多くのパターンがあり、こんなに簡単では無い。個体群により異なる複数のパターンを持つ種もある。如何に簡単でないかは、到底此処で書き切れるものでは無いし、また、私の理解にも限りがあるので、それなりの専門的な書籍(例えば、東京大学出版会の「アブラムシの生物学」等)を参照していただきたい)。翅を拡げたアブラムシの有翅虫(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) この雄には、種によって有翅形、無翅形、或いは、その両方と色々あるが、有性雌の方は私の知る限り全て無翅形である。雌の方は、有性雌を胎生で産む産雌虫が有翅形になることが多い(無翅の場合もある)。 今はワタムシ(雪虫)の飛ぶ季節である。このワタムシ(タマワタムシ亜科)の場合はどうかと言うと、この有翅虫は産性雌と呼ばれる胎生雌で、これが無翅雄と無翅有性雌の双方を胎生で産み、生まれた無翅有性雌が無翅雄と交尾して産卵する(ただ1個のみ!!)。雪虫には雄は居ないのである。飛び出す直前.この後少し引いて撮った写真はピンボケであった(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) この写真の有翅虫、翅ばかり大きくて余り旨く飛べそうにも見えない。しかし、ストロボの光を何回も浴びて身の危険を感じたらしく、時々翅を拡げる動作をした。雲の多い日の早朝であり、しかも場所はかなりの日陰だったので、まだ気温が低くて飛べないだろうと思って油断していたら、何とチャンと飛んで逃げた。しかし、普通のアブラムシの有翅虫とは異なり、ウスバカゲロウの様な何とも頼りない飛び方。翅が体に比して大き過ぎる?のでこう言う飛び方になってしまうのであろう。
2009.11.12
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