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今日は、このWeblog始まって以来とも思える美形を紹介する。 数日前、庭の奥の方にある柿の木の下を歩いていたら、妙にクルクル回る様な飛び方をする変な虫が居た。良く見ると、長い尾が付いているらしい。一体何者?? やがて建物の壁面に留まった。ハチの1種であった。体長は多分7mm位、長い産卵鞘を持っているので、多分ヒメバチの類であろう。 留まっているのは高さは2m位の所、一寸撮り難い、と言うか、虫が遠すぎて等倍接写は出来ない。仕方なく、やや離れた位置から撮ったのだが、ストロボの光が気に食わないのか、数枚撮ったらもっと上の方に逃げて行ってしまった。オナガコバチ科の1種.産卵管鞘が長い(写真クリックで拡大表示)(2009/08/25) 撮った虫をコムピュータで拡大してビックリ、全身がサファイアの様に青色に輝いている。撮影時には逆光になっていたせいか、全く気が付かなかった。こんなに綺麗なハチならば、降りてくるまでもっと待つのであった。急いで先の場所に戻って探してみた・・・が、残念ながら、後悔先に立たず。 目で見たときは、かなり大きかったのでヒメバチだと思った。しかし、翅脈を見れば明らかにコバチ類(コバチ上科:翅脈が大幅に退化している)。何分にも横からの写真1枚しかないので、背面がどうなっているか分からず、北隆館の圖鑑に載っている検索表は引けないが、産卵管鞘が長いし、後腿節がかなり太いのでオナガコバチ科の1種の可能性が高い。縁紋脈の形もある種のオナガコバチの1種としておかしくない。しかし、コバチ上科には20近くもの科がある。 此処まで書いたところで、「Borror & Delong's Introduction to the Study of Insects」の検索表が引き易いことを想い出した。早速それを参照してみると・・・、少し怪しげな(この写真からは判別出来ない)所もあるが、一応オナガコバチ科(Torymidae)に行き着いた。上の写真の部分拡大.体は青色に輝き、眼は赤く、脚の先は桃色(写真クリックで拡大表示)(2009/08/25) この本のオナガコバチ科の解説を読むと、体長は2~4mmとあり、先に書いた「体長は多分7mm」は少し大き過ぎる。しかし、これはあくまで印象に過ぎない。何時もと違い、等倍撮影をしていないので正確な大きさは分からないのである。判断に苦しむが、此処では検索結果を尊重して「オナガコバチ科の1種」とし、「?」は付けないことにした。[その後、同科のEcdamua nambuiである可能性が高いことが分かった。詳しくは追記参照のこと] オナガコバチ科の分類はまだかなり問題があるらしい。先の「Study of Insects」には6亜科の名前が出ているが、九州大学の日本産昆虫目録では3亜科、全2亜科としている外国のサイトもある。 九大目録には42種が載っており、、東京都本土部昆虫目録を見ると10種が記録されている。余り種類数の多い科ではないが、恐らくまだ未記載種がかなりあるのだろう。 オナガコバチ類の生活史は様々である。虫えいを作るもの、虫えいを作る虫に寄生するもの、種子に寄生するもの、カマキリの卵に寄生するものなど、実に変化に富んでいる。上位分類に諸説あるのも、生活史の多様さと無関係では無いだろう。[追記]このオナガコバチについては、掲載前にハチ類の掲示板「蜂が好き」に御伺いを立てたのだが、その時は残念ながら有用な情報が得られなかった。しかしその約1年後、私が南方方面に出撃している間に、ハチの研究者として知られている長瀬博彦氏から「写真のオナガコバチは写真で見る限りEcdamua nambui Kamijo(和名はたぶんついていない)だと思います」とのコメントを賜った。何分にも日本を3ヶ月も離れていたので、新しいコメントが入っていることには全く気が付かず、今日漸くそのコメントに接した次第である。 九州大学の目録を見ると、Ecdamua nambui(和名なし)はオナガコバチ科(Torymidae)Toryminae亜科(和名なし)に属し日本では1属1種、北海道と本州に産する。Web上で探してみると、A. Zavada氏の「Notes on Ecdamua nambui (Hymenoptera:Torymidae), with a key to world Ecdamua species」と云う論文が見付かった。これに拠れば、Ecdamua属は、世界に5種産し、E. nambuiは当初日本からのみ知られていたが、キエフでも採集されたとのこと。 この論文には、検索表とE. nambuiの詳細な記載が載っているが、本記事の写真1枚からでは判断出来ない特徴が多い。しかし、前伸腹節の中央に小窩の列があるのはE. nambuiのみで、写真にはその様なものが見えるのでE. nambuiである可能性は高いと思う。 長瀬氏は「写真出見る限り、・・・だと思います」と書かれており断定はされていない。コバチ類には未記載種や未記録種がまだ沢山あると思われるが、同属は世界で5種と少なく、その可能性は低いであろう。其処で、此処では「E. nambui」とし、「?」は付けないことにした。 長瀬氏には貴重なコメントを賜り、深謝申し上げる。(2011/02/02)
2009.08.30
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一週間程前、一頭のルリタテハが庭にやってきた。少し大きめの綺麗な個体で、庭の中を飛び回りながら、彼方此方に少しずつ留まる。一見産卵場所を探している様にも見えたが、食草のホトトギスの葉に留まっても別に産卵行動をとることもない。ルリタテハはまだ紹介していないので、何とか撮ってやろうと思ったのだが、一枚も撮らない内に、道路の方へ飛び去ってしまった。 その2~3日後、何気なくホトトギスの葉を見ると、葉の表面に何か小さい粒々が付いている。もしや!!と思ってマクロレンズで覗いてみると・・・、これは、紛れもないルリタテハ(Kaniska canace)の卵。直径1mm弱、彼方に一粒、此方に一粒、と言う感じで全部で5~6個を見付けた。やはり、あのルリタテハが産んでいったのだろうか。横から見たルリタテハの卵.直径1mm弱ピクセル等倍(以下同じ)(2009/08/25)同じ卵を上から見た(2009/08/25) その3日後、ホトトギスの葉を見ると、卵が見当たらない。昔、カラスアゲハがサンショウに産んだ卵が暴風雨で吹き飛ばされてしまったことがあるので、或いは、先日のやや強い風で葉が擦れて卵が取れてしまったのかも知れない。そう思って見に行くと、卵の空いた殻が2つ見つかった。 どうやら既に孵化してしまった様である。卵を超接写をして、卵の表面構造を見たかったのだが、空いた殻の写真を精緻に撮っても余り面白味がない。そんな訳で、普通の等倍接写した写真だけである。孵化した後の空の卵殻(2009/08/28) ホトトギスの葉っぱには、彼方此方に小さな穴が開いている。葉をひっくり返すと、小さな黒い固まりが見えた。ルリタテハの初齢幼虫である。体長は3mm強、卵直径の3倍以上ある。 思ったより沢山居る。卵の殻は他に見つからなかった所をみると、孵化後に卵殻を食べるのが普通らしい。葉裏を歩くルリタテハの初齢幼虫.棘が曲がっている(本文参照)体長は3mm強.拡大画像はピクセル等倍(以下同じ)(写真クリックで拡大表示)(2009/08/28) 実は、葉っぱをひっくり返すとき、丁度手を触れた位置の裏側に幼虫が居た。一瞬感じた柔らかな感触で手を止めたので、潰れることは無かったが、棘が曲がってしまった。写真の幼虫君、棘が曲がって余りカッコ良くないが、これは私のせいである。葉裏の表面を食べるルリタテハの初齢幼虫(写真クリックで拡大表示)(2009/08/28) 卵は葉表に産み、孵化した幼虫は裏側に回って、葉を表面から食べる。まだ、口が小さいので、葉を削る様に食べ、やがて穴が空く。御食事中か御休み中か良く分からない典型的な御休中は体を強く曲げる(写真クリックで拡大表示)(2009/08/28) 此処まで書いたところで、幼虫の数を調べに行ったら、小型のヤドリバエがホトトギスの葉に留まっていた。まずい!!、非常にマズイ。幼虫はまだ小さいから、これに直接産卵することは無いと思うが、微小卵型のヤドリバエ(幼虫に直接卵を産み付けるのではなく、非常に小さい卵を食草に産んで、これを幼虫が食べることにより寄生する)の場合は若齢幼虫でも寄生される。早速、ホトトギスを切り、全部で6頭を飼育箱の中へ入れてしまった。[追記]これらの幼虫は全て無事成長し成虫に羽化した。以降の記録は下記の通り。 内 容 掲載日 2~3齢幼虫 9月 8日 4齢幼虫 9月18日 5齢(終齢)幼虫 10月 6日 前蛹、蛹と成虫 10月19日
2009.08.29
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今日は、「庭を漂う微小な羽虫」の第3段である。 一昨日の夕方、もう少し暗くなってきたとき、妙な言い方だが、今までの羽虫よりも「核」のある虫がフワリフワリと漂っていた。これは一寸違うぞと言う感じがして、殆ど瞬間的に左手が動き、虫を掬ってしまった。これまでの虫とは異なり、左の掌に何かがぶつかる軽いが明らかな衝撃を感じた。 手を開いてみると、まだ動いている。逃げられるといけないので手を閉じ、コールド・スプレーを指の間から噴霧して低温で動けなくしてから(三枝先生に教えて頂いた方法)、マクロレンズで覗いてみた。前翅が短く腹がはみ出している。一見したところハネカクシに似ている。 しかし、まだコールド・スプレーのかけ方が足りないらしく、今にも飛び立ちそう。其処で、もう一度手を閉じて今度はしっかりスプレーをかけた。しかし、手を開いてみると、虫が居ない。スプレーの勢いで、指の隙間から何処かへ吹っ飛んでしまったらしい。全く何をやっているのだ・・・。そんな訳で、今日の写真は1枚だけである。デオケシキスイ亜科の1種.体長2.1mm、ハネカクシと間違えた(写真クリックで拡大表示)(2009/07/) しかし、この虫、本当にハネカクシか? 体長2.1mmと小さいのは良いとして(1mm位の種類もある)、先ず触角がおかしい。先端3節が膨らんで丸くなっているし、第1節と思われる部分も肥大してな変な格好になっている。それに、妙に円らな可愛い眼をしている。こんなハネカクシは見たことがない。 鞘翅(前翅)が短く見えるのは翅がカメラの方向に立っているからで、本当は腹部を隠すだけの長さがあるではないか。しかし、鞘翅の先端は切り取った様な形になっており、これで腹部全体を被うことが出来るとは考えられない。 ハネカクシ科の近縁にアリヅカムシ科と言うのがある(ハネカクシ科に入れる場合もある)。この科の連中も前翅が短く腹がはみ出している。体長は4mm以下(多くは2mm前後)と微小で、図鑑を見ると、触角や頭部の形は写真の虫とよく似ている。しかし、アリヅカムシの胸部は何れも丸く、頭部と余り変わらないほど小さく纏まっており、写真の虫の様に横に拡がって翼状になっているものはない。 よく調べてみると、ハネカクシの近縁以外にもケシキスイ科のデオケシキスイ亜科に四角い前翅を持ち腹部が露出される種類があることが分かった。デオケシキスイとは、「出尾芥子木吸」の意らしい。しかも、この科の仲間は何れも触角の先端3節が球桿となり、頭部の構造もソックリである。 図鑑を見ると、その中でもヘリグロデオキスイと言うのがよく似ており、特に腹部が上に曲がった所がソックリである。しかし、色は口の周りを除いてもっと濃く、特に、鞘翅は「ヘリグロ」の名の通り周囲が黒っぽい。まァ、何分にも小さいし、鞘翅を立てた状態の写真しか無い。デオケシキスイ亜科に属すことは間違いないと思うので、此処では単にデオケシキスイ亜科(Carpophilinae)の1種としておく。 実は、ケシキスイ科の虫を見るのは、今回が初めてである。しかし、それ程珍しい虫ではない様で、九州大学の日本産昆虫目録には161種が登録されている。保育社の甲虫図鑑に拠ると、大きな種(18mm)もあるが、多くは5mm以下、1mmのものもあるとのこと。小さいので余り目に付かないのであろう。食性は多様らしく、花、樹液、落果、キノコ、朽ち木、貯穀、腐肉などに見られる、と書かれている。しかし、こう言う虫が、我が家の庭を浮遊しているとは夢にも思わなかった。 追記:当初、この虫の正体が良く分からず、本稿の表題を「ハネカクシ科の1種(?)」としていた。しかし、投稿の翌日にケシキスイ科デオケシキスイ亜科の虫であることが判明し、それに従って、表題と本文を書き改めた。
2009.08.28
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此処暫く5mm以下の小昆虫が続いていたが、今日は久しぶりに大きな虫を紹介する。サトキマダラヒカゲ(Neope goschkevitschii)、開張5~6cm、やや大型のジャノメチョウの仲間である。この専ら単子葉植物を食草とし、多くは日陰を好むグループは、以前はジャノメチョウ科として独立の科になっていたが、今ではタテハチョウ科ジャノメチョウ亜科とするのが一般的らしい。サトキマダラヒカゲ.拡大すると鱗粉が見える(写真クリックで拡大表示)(2009/08/26) この蝶、私が高校生の頃までは只の「キマダラヒカゲ」と呼ばれていた。それが1970年頃にサトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲと言う2種に分けられた。サトとヤマの紋様の違いは非常にビミョーで、両者を並べて比較しても良く分からない程の差異である。此処で一方だけの写真を出して、その違いについて書いても殆ど意味が無いと思われるので、その違いについては省略する。サトキマダラヒカゲの鱗粉.被写界深度が浅いので凹凸のある翅の一部にしか焦点が合っていない(写真クリックで拡大表示)(2009/08/26) 紋様は酷似していても、この両者、名前から察せられる様に、棲息する場所が異なる。我が家は世田谷区の標高40m位の所にあるので、文句なしにサトキマダラヒカゲと相成る。しかし、サトは低地、ヤマは山地・・・なのだが、一般的にはそう単純には行かない。ヤマは本州中部では標高240~2000mに分布するが、サトの方も標高1500mを越える亜高山帯にまで棲息するのである。山地で採集したキマダラヒカゲは、そのビミョーな斑紋の違いを見極めて、ヤマかサトかを決めなければならない。サトキマダラヒカゲの横顔.口の下に普段は使わない前脚が見える(写真クリックで拡大表示)(2009/08/26) しかし、2種に分けられたのは、その殆ど見分けが付かない程の微妙な斑紋の差異だけを根拠としたのではない。幼虫の形態や成虫の行動にも差があり、それらの違いを丹念に調べ上げた結果、2種あるとの結論になったのだそうである。 これを調べたのは高橋真弓氏と言う当時高校の教諭で、その後日本鱗翅学会(アマチュア中心の学会)の会長なども務めた方である(一見御婦人の様な名前だが男の人)。サトキマダラヒカゲの顔.触角が赤いのが印象的複眼にはかなり長い毛が生えている(写真クリックで拡大表示)(2009/08/26) 何時もの様に、顔写真を撮ってみた。データをコムピュータに移し、拡大した像を見て驚いたことは、この蝶の複眼に沢山の毛が生えていたことである。しかも、その毛がかなり長い。双翅目(蠅、虻、蚊)には複眼に毛の生えた種類がかなりあるが、鱗翅目(蝶、蛾)ではこれが始めてである。或いは、今まで撮った蝶の中にも良く見れば毛が生えている種類が居たかも知れない。これからは眼の毛にも気をつけてみよう。上の写真の部分拡大.毛で覆われた複眼の中に個眼が見える(写真クリックで拡大表示)(2009/08/26) このサトキマダラヒカゲ、昔は我が家の常連で、秋になると柿の落ちた実などにキタテハと一緒に集っていた。しかし、最近はその数がグッと少なくなった。年に2回位しか姿を見せない。尤も、一緒に居たキタテハの方はもっと少なくなって、全く姿を見ない年の方が多い・・・。余り昔のことを想い出すと、何か寂しくなって来る。思い出話は止めにしよう。
2009.08.27
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今日の朝、ベランダの椅子に座って一服しているとき、目の前のクリスマスローズの葉上に2mm位の黒いシミの様なものがあるのに気が付いた。単なるシミか、それとも、何か厚みのあるものか? 角度を変えて見ても大きさに余り変わりが無いところをみると、どうやら、何かの「物体」らしい。虫の糞か、将又、単なるゴミか? 虫の可能性もあるので、一応カメラを持って来て、マクロレンズで覗いてみた。 すると・・・、極く小さなカメムシであった。余りに小さく、また、黒っぽいので、ハナカメムシの類かと思ったが、触角が細長いのでカスミカメムシの様である。ズアカシダカスミカメ.翅端まで2.5mmカスミカメの中でも小さい方に属す(2009/08/24) 調べてみると、ズアカシダカスミカメ(Monalocoris filicis:カスミカメムシ科)と言うシダ植物に寄生する普通種であった。しかし、随分小さい。翅端まで2.5mm、今まで我が家で撮影したカメムシ類の中では最少である。クリスマスローズの葉上に居たが、シダ類に寄生する(2009/08/24) 普通、虫を撮影するときは、先ず背側から、次いで横、前、斜めの順序で撮って行くのだが、場所の関係で背側からは撮れない。仕方なく、横から撮っていたのだが、カメムシ君、ストロボの光に驚いたらしくウロウロし始め、やがて飛んで逃げて行ってしまった。ウロウロしている間に背側からも1枚は撮ったのだが、完全な後ピン。それで、今回は背側からの写真は無し、普段ならば没にするところだが、我が家で見るのは初めてだし、ネタは不足しているしで、掲載することにした。頭部は赤く、触角の中央付近が黒くまた脚には顕著な模様がある(2009/08/24) ズアカシダカスミカメは漢字で書くと、頭赤羊歯霞亀、頭が赤くシダに寄生するので、その名が付いたらしい。しかし、それにしてもカスミカメムシ類の名前はみな長ったらしい。斑点米を作るので重要なイネの害虫とされているアカヒゲホソミドリカスミカメなどは、長くて憶え難いと言うので、イネホソミドリカスミカメに改称した位である(改称してもまだ長いが・・・)。 大型で特徴が明確な昆虫であれば、昔からそれなりに識別され、ヒグラシ、ツクツクボウシなど、種固有の名があったり、或いは、同じコガネムシ科でもコガネムシ、ハナムグリ、カナブンの様なグループ分けをして名前を付けられる。しかし、カスミカメムシ類の多くは体長5mm以下、肉眼では見分けの付かない種類も多く、歴史的には全くと言って良いほど区別されていない。だから、カスミカメムシ類の名称は、ダルマカメムシ亜科の約10種を除いて、全部後にカスミカメが付く。しかもその種類数が400種以上なのだから、区別に必要な形容詞を複数積み重ねないと、とても名前が付けられない。それでナガ~イ名前と相成る。 名前を憶える方も大変だが、しかし、付ける方はもっと大変なのである。文句ばかり言わず、散々苦心をして和名を付けている分類学者の苦労も少しは慮ってみるべきであろう。
2009.08.24
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双翅目が2回続いたので、今日はハチを紹介しよう。 極く小さなハチを何気なく撮ったのだが、コバチ(コバチ上科)であることは確かで、更に後腿節が異常と言えるほど膨らんでいるから、アシブトコバチ科の1種と思われる。後腿節の太いコバチの仲間には、他にシリアゲコバチ科、オナガコバチ科がある。しかし、これらは外見的、特に胸部の構造がかなり異なっている(また、雌は長い産卵管を持つ)ので除外して良いであろう。 九大の目録に拠れば、日本産アシブトコバチは53種、東京都本土部昆虫目録には21種が記録されている。アシブトコバチ科の1種.後脚腿節が非常に太いチビツヤアシブトコバチに似ている(写真クリックで拡大表示)(2009/08/13) 体長は3.5mm、多くのアシブトコバチは5mm位なので、この種は小さめと言える。北隆館の新訂原色日本昆虫大圖鑑を見ると、チビツヤアシブトコバチ(Antrocephalus japonicus)と言う種が載っている。記載を読むと、「雌は体長3~4mm、触角の柄節(第1節)の先端、梗節(第2節)、環状節(梗節に続く狭い部分)は赤褐色、後脚は黒色であるが、脛節の先端と付節は若干赤褐色、胸部の点刻は密で、点刻間の間隔は狭い」とある。 脚の色についての記述は日本語として少し曖昧である。「後脚は[全体が]黒色であるが、[他の脚では]脛節の先端と付節は若干赤褐色」なのか、或いは、「後脚[の大部分]は黒色であるが、[その]脛節と付節は若干赤褐色」なのか、判然としない。前者の解釈をとれば、これらの記述は写真のコバチと一致する。また、写真のコバチは肩の部分が膨らんでおり、翅に茶色の部分がある。圖鑑の図版を見ると、この様な特徴はチビツヤアシブトコバチ以外には認められない。 それならば、チビツヤアシブトコバチとしたいところだが、北隆館の圖鑑に載っているアシブトコバチは僅か9種、酷似種が居るかも知れず、チビツヤアシブトコバチと決めつけるには些か証拠不充分である。其処で、此処では「チビツヤアシブトコバチ?」と「?」を付けて置いた。胸部頭部は密な点刻で被われて、複眼には毛が生えている(写真クリックで拡大表示)(2009/08/13) アシブトコバチの仲間は、主に蝶や蛾、或いは、ハエ類の蛹や幼虫に内部寄生する。しかし、その寄生様式は様々で、単寄生(1宿主に1寄生)、多寄生(1宿主に同種複数が寄生)、共寄生(1宿主に異種複数が寄生)、二次寄生(寄生種に更に寄生)などが記録されているとのこと。先に可能性が高いとしたチビツヤアシブトコバチに関しては、圖鑑では「寄主は不明」と書かれている。 どうも最近は、我ながら味気ない分類や形態の話が多い。しかし、最近は検索で来訪される読者の数が非常に多く、同定の根拠や類似種との差異などを明確にする必要があると思われる。何卒御寛恕頂きたい。
2009.08.20
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今年の夏は陽射しの強い日が続くことが無いせいか、我が家の庭には何時もそれなりに虫が居て、どうやら「夏枯れ」状態にはならないで済む見込みである。結構色々な種類が居るが、まだ紹介していない虫となると、やはり双翅目(ハエ、アブ、蚊)、特に「ハエ」と名の付く虫が多い。 今日はその中でも特にハエらしいエを紹介する。イエバエ科ハナレメイエバエ亜科(Coenosiinae)に属すアシマダラハナレメイエバエ(脚斑離眼家蠅:Coenosia variegata Shinonaga, 2003)、翅端まで4.5mmの一寸小さめのハエである。アシマダラハナレメイエバエ(雌).翅端まで4.5mm毛深くて如何にもハエ的だが捕食性の清潔なハエ(写真クリックで拡大表示)(2009/08/02) イエバエ科を含む有弁類(他にハナバエ科、クロバエ科、ニクバエ科、ヤドリバエ科その他がある)と言うのは、一部を除いて殆ど素人が手を出すことの出来ない厄介な(恐ろしい)領域である。所謂「絵合わせ」は先ず効かない。これは双翅目全体に言えることだが、特に有弁類の場合はその程度が甚だしい。 種を決めるには、検索表と睨めっこし、翅脈相がどうなっているか(これが実に細かい)、何処にどの様な剛毛が何方の方向に生えているか(これはもっと細かい)、触角の柄節、梗節、鞭節等の形はどうなっているか、触角刺毛には微毛があるか・・・等、非常に細かい形態を見ながら的を絞って行き、最終的には交尾器の形態で判断をすることになる。図鑑などにある検索表は多くは科までのもので、種まで落とすには、それぞれ科ごとや属ごとの検索表が載っている文献を参照しなければならない。 イエバエ科の場合は、篠永哲著「日本のイエバエ科」と言う書物があり、種までの検索が出来る。しかし、この文献は非常に誤植や誤りが多く(主に英文なのだが、英文と和文で意味が逆になっていたりする)、私などは容易に使いこなすことの出来ないのだが、今回は奇跡的に種まで落とすことが出来た。下側やや後から見たアシマダラハナレメイエバエ.上と同一個体頭はボケているが、翅の下を精緻に撮らないと検索表が引けない(写真クリックで拡大表示)(2009/08/02) しかし、私の場合は標本を作らないので交尾器の形態は分からない。だから、最終的には双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」で同定が正しいか否か見ていただくことと相成る。 私の問い合わせには、九大名誉教授の三枝豊平先生が対応して下さった。「写真だけで良く到達するものかと感心しますが,恐らく外観からするとあなたの同定が当っているように思えます」との御話で、先ずは胸を撫で下ろした。今日、此処に示した写真は一番最後を除いて雌(同一個体)で、「日本のイエバエ科」にある写真と較べて少し脚の黒い範囲が広いのが気になっていた。しかし、「本種の♀は♂に比べて脚の淡色部が一般に狭く,かつ個体変異がかなりあるようです。♂なら「日本のイエバエ科」の写真のようになり,もっと淡色部が広くて,その範囲はあまり個体変異が著しくないようです」とのこと。これで疑問が解消された。 また、先生はアシマダラハナレメイエバエ雄雌の標本写真を提示して下さった。先生の標本は交尾器で確認されている筈である。その標本写真と剛毛の配列などを比較した結果、完全に一致することを確認、この写真のハエをアシマダラハナレメイエバエとして問題ないであろう。 今回もまたすっかり三枝先生の御世話になってしまった。先生には、此処に記して御礼申し上げたい。上と同一個体.中脚基部の上にある3本の剛毛が逆2等辺三角形に配列しているのがハナレメイエバエの重要な特徴後脚脛節先端1/3に長い後背剛毛が見える(写真クリックで拡大表示)(2009/08/02) ところで、先生の御話に「写真だけで良く到達するものかと感心しますが」とあるが、これはお褒めの言葉ではない。「標本を顕微鏡で精査せずに、これらの写真だけで分かる筈がない、何処かで誤魔化したのであろう」と言うお叱りと理解すべきであろう。 実際、少し誤魔化した。イエバエ科か否かと言うところで、写真では位置的に良く見えない剛毛の有無が問題となるし、また、イエバエ科と酷似するハナバエ科との区別に使われるCuA+CuP(A1)脈が写真では殆ど見えないのである。此処は、実のところ、「感」でイエバエ科とした。 「日本のイエバエ科」に拠る検索でも誤魔化しをした。検索表のkey3で「後脚脛節の後背部先端1/3に剛毛がある」か否かが問題になるのだが、写真のハエにはこれがある。ところが、「有り」とするとイエバエ亜科やトゲアシイエバエ亜科へ行ってしまい、その先で行き詰まってしまう。一方、「無し」とすると、その後が上手く行き、その結果としてアシマダラハナレメイエバエに到達できた。 脚の剛毛は、その生えている位置により、前、前腹、腹、後腹、後、後背、背、前背の8通りの区別をする。写真ではこれらの見分けが難しく、時々間違える。しかし、「後脚脛節の先端1/3にある剛毛」はどう見ても後背位置にある様に見える。この点を先生に御伺いしたところ、これはやはり後背とのこと。まァ、これは誤魔化しではなく、検索表がキチンとしていないのが原因であった(これだから「日本のイエバエ科」は困るのである)。これも同一個体.額には交叉剛毛がある(写真クリックで拡大表示)(2009/08/02) このハナレメイエバエ亜科のハエ、翅の畳み方や翅脈相は衛生害虫として著名なイエバエと少し違うが、今まで拙Weblogで紹介してきたハエの中では、最もハエ的な外観を持つハエである。しかし、イエバエ科に属し、最もハエ的なハエでも、これは不潔なハエではない。何と、成虫も幼虫も捕食性の清潔な?ハエなのである。特に、最近日本でも発見された欧州原産のメスグロハナレメイエバエ(Coenosia attenuata)等は、飛ぶ虫を捕らえる天敵としての利用が考えられているらしい。 以前紹介したツヤホソバエの仲間(例えばインドツヤホソバエ)は、外見は綺麗だが、実際は糞食の汚いハエで衛生害虫とされている。「人は見かけによらぬもの」と言うが、ハエも見かけでは、容易にその清潔不潔を判断することは出来ない。今日撮った雄の個体.後腿節の暗色部分が雌より少ない捕食性のハエは一般に剛毛が発達する(写真クリックで拡大表示)(2009/08/18) 今回は、最初の方で書いた学名に命名者と命名年を入れて置いた。これでお分かりの様に、このアシマダラハナレメイエバエ(Coenosia variegata)は2003年と言うごく最近に篠永氏より新種として記載された種である(「日本のイエバエ科」がその新種の記載文献)。今日、此処に示した写真は、日付に示した通り、8月2日(雌)と今日18日(雄)に撮影しているが、この他にも同種の写真を7月の11(雄)日と17日(雄)に撮っている。何れも、同一個体とは思われない。何を言いたいのかと言うと、我が家の様な東京都内の住宅地でも極く当たり前の普通種なのにも拘わらず、2003年まで記載されていなかった(世界に知られていなかった)のである。 先日は、キバガ上科の未記載種を紹介したし、また、私の別のWeblogでは、既に未記載種を3種も紹介している。大都会の住宅地にも、まだまだ未記載の種が棲息していると言うことがお分かり頂けるであろうか。
2009.08.18
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以前から気に掛かっていたことがある。このWeblogを始めて間もない頃に掲載した「アシナガキンバエ」のことである。我が家の庭や近くの林でもよく見かける極く普通のハエ(本当はアブの仲間だが、此処ではハエとしておく)である。雌雄でかなり形が違うし、何分にも体長3mm程度の小さな虫なので肉眼では良く分からないのだが、何回も見ていると、段々複数種存在するのではないかと言う気がしてきた。Web上にある写真を見ても、是亦、何となく、違う種類が混じっている感がある。 其処で、その後買った北隆館の新訂原色昆虫大圖鑑第3巻に書かれているアシナガキンバエの解説を読んでみた。すると、「体長5~6mm。(中略)M1+2脈(翅脈については2番目の写真を参照)は分岐せず、(中略)中脛節の先端には5棘毛を、また、後脚第1付節には背棘毛を生ずる(後略)」と書かれている。随分違うではないか!! これまでWeb上で「アシナガキンバエ」とされてきたハエは下の写真とソックリだが、体長は1/2位だし、M1+2は前縁に大きく曲がるM1脈とM2脈に分離している様に見えるし、更に、中脛節端に5棘毛ある様には見えないし、また、後脚第1付節には棘毛らしきものは見当たらない。 そう思っていたところ、先日、幸いにもかなり高精度の「アシナガキンバエ」の写真が撮れた。そこで、思い切って双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」に、本当にこれがアシナガキンバエ(Dolichopus nitidus Fallen, 1823)か否か御伺いを立ててみた。 その結果は、驚くべきものであった。”ニセ”アシナガキンバエ.体長は3.0mm弱、翅長は約3.0mm(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) 私の問い合わせには、九州大学名誉教授の三枝豊平先生が対応してくださった。先生はオドリバエ研究の第一人者で、同じオドリバエ上科に属すアシナガバエ科についても新種の記載などをされている。 先生の御話を纏めると、写真のハエは明らかにアシナガバエ亜科のアシナガキンバエではなく、これに類似した先生所蔵の標本からの御判断では、ホソアシナガバエ亜科(Sciapodinae:九大目録ではヒゲナガアシナガバエ亜科、ホソアシナガバエ亜科は北隆館の新訂大圖鑑にある名称で執筆者は三枝先生)のChrysosoma属の1種である可能性が高いとのこと[その後、研究が進み同亜科のウデゲヒメホソアシナガバエ:Amblyspilopus sp.1であることが判明した。追記参照のこと]。種が間違っているばかりでなく、亜科も違う「ハエ」だったのである。 因みに、よく知られているマダラホソアシナガバエ(マダラアシナガバエ:Condylostylus nebulosus、マダラホソアシナガバエの名称は三枝先生に由る改称)も、このホソアシナガバエ亜科に属す。上の写真に翅脈の名称を付けておいた.M2脈がカッコに入っているのはこれは正しいM2脈ではなく二次脈との先生の御話に拠る.これが正しいM2脈ならば曲がる方はM1+2脈ではなくM1脈としなければならない(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) 先生に拠れば、ホソアシナガバエ亜科に属すの多く種では、写真の”ニセ”アシナガキンバエの様に、M1+2脈が中室と翅端との中間付近で大きく前縁側に屈曲し、また、その屈曲点から真っ直ぐに翅端に伸びるM2脈(先生の御考えでは、これは本当のM2脈ではなく、屈曲部から生じた二次的な翅脈とのこと。これがM2脈なら曲がる方はM1としなければならない)が出ているそうである。これは、全く分類学的位置の異なるヤドリバエやニクバエの翅脈に近い形である(アシナガバエは双翅目短角亜目直縫群オドリバエ上科アシナガバエ科、ヤドリバエは双翅目短角亜目環縫群ヒツジバエ上科ヤドリバエ科なので亜目の次のレベルで異なっている。ヤドリバエの翅脈は此方をどうぞ)。クチナシの花上で何かを食べている”ニセ”アシナガキンバエアシナガバエ科の「ハエ」は基本的に捕食性である(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) 本物のアシナガキンバエの翅脈はどうなっているかと言うと、M1+2脈は写真のハエのM1+2脈が前縁に曲がっている位置で、ほぼ直角に前縁に向かって(左)折れ、その直後にまたほぼ直角に翅端の方(右)へ折れ、R4+5脈に平行して翅端に至る。その曲り方は「ジグザク」的であり、大きくない。また、”ニセ”アシナガキンバエの様に「M2脈」を生ずることはない(北隆館の新訂圖鑑にあるアシナガキンバエの写真は、旧版の写真をスキャンしたものと言われており(三枝先生の御話、解説も昔の儘)、元々写真が綺麗とは言い難い旧版よりも更に酷い写真になっているが、少なくとも大きく曲がったヤドリバエ的な翅脈は認められない)。 なお、アシナガキンバエの属すアシナガバエ亜科には、写真の”ニセ”アシナガキンバエの様にヤドリバエ的な翅脈相を持つ種は居ないとの御話であった。横やや上側から撮った”ニセ”アシナガキンバエ(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) 更に奇怪な事は、アシナガバエ科の研究もされ、十万のオーダーで標本を所蔵されていると思われる先生の御手元に、アシナガキンバエ(Dolichopus nitidus)の標本が一点も無いのだそうである。・・・と言うことは、本物のアシナガキンバエは相当な珍種? しかも、日本で始めてアシナガキンバエをDolichopus nitidusとした故素木得一教授の書かれた雄交尾器の側面図と、「Faune de France 35 Dolichopodidae[仏蘭西動物誌三十五:脚長蠅科](Parent 1938)」に載せられている図とでは、先生にはやや異なる様に見えるとのこと。どうも、アシナガキンバエが本当にDolichopus nitidusに相当するのかすらも、少し怪しい様である。 アシナガバエ科の昆虫は九州大学昆虫目録では41種、北隆館の新訂原色昆虫大圖鑑の解説(三枝先生執筆)には12属100種足らずしか記録されていないと書かれている。しかし、「日本産水生昆虫」のアシナガバエ科を執筆した桝永氏に拠れば「500種を越える種類が生息すると推測される」とのこと。要するに、アシナガバエ科は研究が圧倒的に不足している分類群なのである。正面から見た”ニセ”アシナガキンバエ(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) Web上にある「アシナガキンバエ」の画像を見てみた。すると、調べた範囲では、そのM1+2脈は全て写真の”ニセ”アシナガキンバエと同じ曲り方をしていた(翅脈の見えない様な写真は、ソモソモ問題外である)。 「"アシナガキンバエ"」でGoogle検索すると8,000以上もヒットする。本物のアシナガキンバエが珍品らしいことを加味すると、私の分も含めてその殆ど全部が、種ばかりでなく亜科のレベルで異なる「ニセアシナガキンバエ」についての記事であろう。亜科のレベルの間違いと言うのは、例えば蝶ならば、ナミアゲハとギフチョウを間違えるのに相当する。Web上の情報には誤りが屡々含まれているのは常識だが、これ程大規模且つ大きな誤りも一寸少ないのではないだろうか。 なお、Web上の「ニセアシナガキンバエ」は、此処に示した写真と同じ1種のみとは限らない。数種が「アシナガキンバエ」として掲載されている可能性がある。「ニセアシナガキンバエ」の正体は、今後アシナガバエ科の研究が進まない限り、キチンと解明されることはないのかも知れない。 謝辞:本稿は、一重に九州大学名誉教授の三枝豊平先生の御指導の賜である。先生には、私のクドイ、時に稚拙な質問にも一つひとつ丁寧にお答え下さり、どう御礼を申し上げたら良いか分からない程御世話になった。今、此処でキチンと正座して西の方(先生の御宅の方向)を向き、叩頭して御礼を申し上げる。「本当に有難う御座いました」。 追記:2010年秋に、田悟敏弘氏により、関東地方のアシナガバエに関する研究が、双翅目談話会の会誌「はなあぶ」に発表され、本種は、ホソアシナガバエ亜科(Sciapodinae)に属すウデゲヒメホソアシナガバエ(新称)Amblypsilopus sp.1であることが示された。それに伴い、表題、内容に多少の変更を加えた。詳しくは、こちらをどうぞ。
2009.08.16
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今日は、またケムシ君の登場である。ナカアオフトメイガ(Teliphasa elegans)の終齢幼虫、中庭にある鉢植えのユスラウメの木に居た。長さ25mm位で結構綺麗、所属はメイガ科フトメイガ亜科。 体が表から見えてしまう程度の簡単な巣を作り、御休みは巣の中、御食事は出張して付近の葉を食べる(下)。ナカアオフトメイガの終齢幼虫.虫体が見える様な簡単な巣を作る(写真クリックで拡大表示)(2009/07/23) 次の2枚の写真は、その簡単な巣を開いて撮った。簡単な巣だから簡単に開くことが出来、また、簡単に作り直せる。実は、上の巣の写真は2~3番目の写真の3時間後に撮影したもの。もうキチンと修復出来ている。背側から見たナカアオフトメイガの終齢幼虫.かなり太っている(写真クリックで拡大表示)(2009/07/23) 巣の中に居るのを撮ったので、葉が皿状になっていて真横から撮れない。写真には写っていないが、標準的な鱗翅目の幼虫なので、胸脚は3本、腹脚は4本である。 かなり太っているところを見ると、そろそろ蛹化するらしい。皿状になった葉の上に居るので、真横から撮れず脚が見えないが、胸脚は3本、腹脚は4本(写真クリックで拡大表示)(2009/07/23) 最初に書いた様に、普通は御食事は出張して取るのだが、何故か作ったばかりの巣を食べ始めた(下)。巣が小さ過ぎたのだろうか?巣を食べているナカアオフトメイガの終齢幼虫(写真クリックで拡大表示)(2009/07/23) 写真を撮るので何回かストロボを焚いたら、警戒してサッと巣に引っ込んでしまった(下)。しかし、巣を食べてしまったので穴が開き、顔は丸見え!! これでは余り巣としての意味がないのでは・・・。巣に入ったナカアオフトメイガの終齢幼虫.巣を食べてしまったので顔が丸見え.これでも巣の意味があるのか?(写真クリックで拡大表示)(2009/07/23) 次の日、見に行くとケムシ君が居ない。巣は壊れてはいないので捕食者にやられたのではないだろう。何処かへ移動して蛹になったのだろうか。しかし、蛹化するのは食べたものを全部排泄してからだから少し早過ぎるし、この手の巣を作る幼虫は巣の中で蛹化するのが普通ではないのか? 付近を探索してみたが、その姿は何処にも見当たらなかった。ケムシ君は一体どうなったのであろうか。 なお、ナカアオフトメイガの成虫は、翅の中央部に白っぽい帯のある開張3cm程度の暗色の蛾で、形は、亜科は違うが、以前紹介したカバイロトガリメイガに少し似ている。斑紋には変異が多いそうである。
2009.08.15
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先日、ベランダの椅子で一服していると、横に生えているクチナシの葉裏に体長3mm位の黒っぽい虫が居るのに気が付いた。以前紹介したハリブトシリアゲアリかと思ったが、腹の辺りが少し膨れている。どうも別の虫らしい。 早速、マクロレンズで覗いてみると、甲虫の1種であった。見たことのない虫、何となく、ゴミムシ的な体形をしている。 こう言う小さい甲虫は種の判別が難しい。しかし、鞘翅に明らかな模様があるから、何とかなるであろう。 ヒロオビジョウカイモドキ(雌).体長は3.5mm雄の触角第1節と第2節は長く異常に膨らむ(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) データをコムピュータに移し拡大してみると、口は咀嚼型の様で少なくとも大顎は発達していない。ゴミムシ(オサムシ科)の類ではない。こうなると、もう何科か分からない。図鑑を端から見てゆくことになる。 と言っても、カミキリムシ、テントウムシ、コガネムシ、タマムシ、ゾウムシ・・・等、明らかに該当しない科が多いから、それ程時間は掛からない。直ぐにジョウカイモドキ科オビジョウカイモドキ属(Intybia)の1種であることが分かった。ジョウカイモドキ科・・・今まで見たことのない虫である。体長は3.5mm。 横から見るとかなり毛が生えている(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) ジョウカイモドキとは、ジョウカイボンに似ているから付いた名前と思う。このジョウカイボン(例えばセボシジョウカイ)と言うのは、カミキリムシに似た触角の長い細長い虫である(ジョウカイボンは鞘翅が柔らかいので、カミキリムシとの区別は容易)。そのジョウカイボンに似ていると言うのだが、図鑑を見ると、その多くはジョウカイボンとは余り、と言うより、殆ど似ていない。特にこのオビジョウカイモドキ類は、ジョウカイボンとはゼンゼン似ていない。全く、紛らわしい名前を付けるものである。 日本産オビジョウカイモドキ属は7種の様で、その内本州に棲息するのは5種、しかし、ヒロオビジョウカイモドキ以外は皆かなりの珍種らしい。我が家は、東京都内のかなり大きな商店街から僅か150mの距離にある。珍種が居るとは考え難い。消去法により、自動的にこの虫はヒロオビジョウカイモドキ(Intybia historio = Laius historio)と相成った(九州大学の目録には、Intybia属は無く、全てLaius属となっている)。胸部は腹部に較べて厚みがない.設定を間違えて撮ったので解像力が低く、虫体を小さくしてある(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) このオビジョウカイモドキ属(Intybia)、並びに、その近縁であるイソジョウカイモドキ属(Laius)では、雄の触角第1節と第2節が長く異常に膨らんで面白い形になる。しかし、写真の個体は残念ながら雌、その部分が一寸膨らんでいるだけである。 ジョウカイモドキの仲間には、花に集まる種類が多いらしい。「花粉などを食す」と書いてあるサイトもあるが、保育社の甲虫図鑑には「成虫、幼虫ともに肉食性」と書いてある。このヒロオビジョウカイモドキはどうかと言うと、明らかに捕食性と思われる。テントウムシと同じ様に、葉を一枚いちまい調べながら、忙しく走り回っている。徘徊型捕食性の典型的行動である。正面から見たヒロオビジョウカイモドキ.口は咀嚼型の様に見える(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) 賢明な読者は気付かれたかも知れないが、このヒロオビジョウカイモドキも先日のウスグモスズ、ヒメテントウの1種(コクロヒメテントウ?)も、皆クチナシの葉裏に居た虫である。しかも、同じ日(2009/08/06)。 2年前までは、オオスカシバの幼虫を駆除する為に屡々アース・ジェットをクチナシの株全体に噴霧していた。しかし、こうするとクチナシに居る虫が全滅してしまう。そこで、昨年からは出来るだけ殺虫剤を使わない様にしている。御蔭で、この3種以外にもハリブトシリアゲアリやクロヒラタヨコバイ等を撮ることが出来た。クチナシもハギに似て、色々な虫が様々な物語を繰り広げている舞台の様である。
2009.08.11
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一ヶ月ほど前、ウスグモスズの幼虫と思われる虫を掲載した。今日はその成虫を紹介する。居たのは同じクチナシの木である。だから、直接的な証拠にはならないが、前に紹介した幼虫は、やはりウスグモスズの幼虫である可能性が高いと言える。クチナシの葉裏にいたウスグモスズの成虫(雌)体長は産卵管を除いて7mm(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) 上の写真の様に、葉裏にくっ付いていた。産卵管が見えるので、これは雌。体長は産卵管を除いて7mm、しかし脚は長いし触角も長いので、もっと大きく感じられる。 このウスグモスズ(Usgmona genji or Usugumona genji Furukawa, 1970)、日本以外からの報告がないにも拘わらず原産地不明の帰化昆虫とされている、奇妙な虫である。しかし、この虫の来歴その他については別の所にかなり詳しく書いたので、此処では触れない。興味のある読者諸氏は此方を参照されたい。驚くとサッと葉表に逃げる.実際は此方を撮ったのが先位置が高いので殆ど見えないが時折葉上から顔を出す(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) かなり敏感で、撮影しようとすると、葉表にサッと逃げる。丁度私の背の高さ位の所なので、葉表に逃げられると殆ど見えない。しかし、時折顔だけが見える(上)。しかし、これでは全身像は撮れない。脚立を取りに行って戻ってくると、もう居ない。何処へ行ったか知る由もない。 次に見付けたときは、クチナシの徒長した新梢に居た。枝を上り下りしながら、触角の掃除をしている。クチナシの若い枝で身繕いをするウスグモスズ(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) ウスグモスズは体の輪郭は、クサヒバリと非常によく似ている。しかし、脚、特に後腿節に模様がないので簡単に区別することが出来る。何れもコオロギ上科クサヒバリ科(Trigonidiidae:ヒバリモドキ科とも呼ぶ、コオロギ科クサヒバリ亜科とする場合もある)に属し、後脛節に長い棘を列生する。ウスグモスズの全身像、眼が黒くて可愛い(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) 以前も書いたが、私はバッタの類(直翅目)がどうも好きになれない。所謂バッタ(バッタ上科:ショウリョウバッタ、イナゴ類、オンブバッタ、ヒシバッタ類)の顔を見ると不愉快になるし、キリギリス類、カマドウマ等にも好意を寄せない。また、コオロギ類も好きではない。 しかし、このウスグモスズだけは、何故か可愛いと思う。眼が黒くてパッチリしているせいだろうか?クチナシから跳んで枯れたユリの茎を上下するウスグモスズ(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) クチナシの新梢を左手でいじくり回していると、危険を感じたのか、いきなり草むらの方へ跳んでしまった。落差は約1.5m、このウスグモスズの体長は7mmだから、人間(体長1.5m)に換算すれば約320mの飛び下りに相当するが、小さい「物体」の場合は空気抵抗がずっと大きいので大した問題にはならないらしい。 ファインダーを覗いている間に逃げられたので、普通ならマズ探し出せない。しかし、雑草多しと雖も庭の中、直に見付け出すことが出来た。今度は枯れたユリの茎を上下している。4分後に最初見付けた場所の直ぐ近くでまたウスグモスズを見付けた僅か4分で元に戻るとは考え難いので、別個体であろう(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) ところが、ファインダーを覗いている間に、また何処かへ跳んで行ってしまった。かなり探したが、今度はもう見つからなかった・・・。 諦めて、撮った写真の確認を少ししてから、元のクチナシの木を見て驚いた。最初に見付けた場所から数cmも離れていない所に、また、ウスグモスズが居るではないか。しかも同じ雌。時間にして僅か4分、この僅かな間に元に戻ったのであろうか? 一寸それは考え難い。とすれば、2頭居たのか・・・。 クサヒバリの様に脚に模様があれば、同一種でも斑紋の入り方にある程度の違いがあるので区別が出来るが、ウスグモスズにはその模様がない。しかし、首の辺りの微妙な色彩変化や、脚に付いたゴミの位置などを比較すると、どうやら別個体らしい。最初から2頭居たのである。ウスグモスズの体を拡大.拡大してみると、結構毛脛!!前脚脛節基部付近に聴覚器官らしき構造は見えない(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) ウスグモスズは前にも書いた様に、コオロギ上科ではあるが発音器を持たず鳴くことが出来ない。当然、音を聞く必要も無いので、聴覚器官も持たない。以前紹介したキリギリスに近いサトクダマキモドキには聴覚器官があり、その写真も示したが、このウスグモスズの該当部分(前脛節基部付近)にはそれらしき構造は見当たらない。 同じクサヒバリ科に属すクサヒバリ、キンヒバリなどは美声で知られている。しかし、ウスグモスズの他にもクロヒバリモドキやキアシヒバリモドキなど、同じクサヒバリ科に属すにも拘わらず発音器も聴器を持たない虫が居る。人は様々、虫も様々である。
2009.08.09
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ハッキリしない天気が続いていたが、今日は青空も出て夏らしい天気になった。どうも気分が天気に左右される質なので、天気が良くなるとWeblogの更新もやる気が出て来る。カレンダーを見てみると、前回の更新から丁度一週間、随分サボったものである。 2週間ほど前に、綿毛に包まれたコナカイガラムシの様なコクロヒメテントウの幼虫を掲載した。昨日、その成虫らしきものの撮影に成功したので、今日早速紹介することにする。「撮影に成功した」等とやけに大袈裟だが、このヒメテントウは少しでも此方の気配を感ずると、ポトリと落ちると言う「隠遁の術」を使う。今まで何回も見ているのだが、一度も撮れたことがないのである。 ヒメテントウの1種.コクロヒメテントウかも知れない体長は2.5mm(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) コクロヒメテントウの成虫は全体に黒っぽく、鞘翅の先端近くの辺縁(お尻の辺り)だけが茶色い(雄は前頭も茶色い)。ところが、写真のヒメテントウではお尻付近に茶色の部分が認められない。葉の表面に近い部分だけ色が違って見えるが、これは鞘翅自体の色ではなく、反射に拠るものであろう。 また、図鑑を見ると、鞘翅の先端部(お尻の先)が少し飛び出る感じである。しかし、写真では、撮影の角度の問題もあるかも知れないが、その様には見えない。 要するに、余りコクロヒメテントウらしくないのである。しかし、幼虫は我が家で屡々見かけるから、その成虫も当然居る筈である。コクロヒメテントウと名を入れたのは、その程度の理由に過ぎない。甲虫図鑑には、図からは殆ど判別できない様なヒメテントウがズラリと並んでいる。表題を「ヒメテントウの1種(コクロヒメテントウ?)」とした所以である。鞘翅の上には毛ばかりでなく点刻もある(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) 写真のヒメテントウの体長は2.5mm。以前紹介したクモガタテントウよりも少し大きいが、全身に毛が生えているので、何かボワーとした写真になってしまう。以前紹介したハムシダマシと同じく、撮る側にとっては嫌な相手である。 何か捉え所のない内容になってしまった。しかし、ヒメテントウ(テントウムシ科ヒメテントウ亜科)と言うのは、普通のテントウムシとは異なり、この様に毛が多く、丸いが縦長の小さな、余りテントウムシらしくないテントウムシであると御理解頂ければ、今日の目的は達せられたことになる。
2009.08.07
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