Pastime Paradise

< 新しい記事

新着記事一覧(全1381件)

過去の記事 >

2008.07.02

十面埋伏

カテゴリ：書籍・雑誌

どれどれ…と夕食後、軽い気持ちでページを捲り始めたものの、余りの面白さにどうにも止まらなくなり、上下巻８００頁を一気に読破した。
　それが今回紹介する張平の「 十面埋伏 」だ。
以前紹介した張平の「凶犯」も良かったが、「十面埋伏」は更に上を行く面白さで、読中の緊迫感、読後の満足感は相当なもの。
　そういえば 金城武 さんや アンディ・ラウ LOVERS 」の原題も「十面埋伏」だったが、映画とは一切関係ありませんので

中国三大文学賞（ベストセラー大賞、金盾文学賞、中国図書賞）受賞作品！
という帯の宣伝文句にまず目を惹かれる。それらの賞がどれくらい権威のあるものなのかは知らないが、文学賞三冠を得たのも当然だろう。

　９月９日午後　古城刑務所　第五面談室
　凶悪な受刑者・ 王国炎 （ワングゥオイェン）の口から繰り出される中国全土を震撼させた数々の重大な未解決事件の“詳細”。デタラメとして一蹴する幹部たちだったが、刑務所捜査官・ 羅維民 （ルオウェイミン）は本能的にその重要性を嗅ぎ分け、事件解決に向かって動き出す―。　<上巻>
　事件の真相を追う捜査官と警察の前に次第に姿を現す闇の犯罪組織。そしてその背後には政界上層幹部の姿も見え隠れする。巨大な闇の癒着を暴きだす闘いの結末を見ることができるのか―。 <下巻>　

　「十面埋伏」とは、周囲に隙なく伏兵が潜んでいることを意味するらしい。
　維民は王国炎が語る数々の事件の詳細のうち、ある事件の話を聞いて驚く。維民がかつて公安局で働いていた時に起こった未曾有の凶悪事件“１．１３事件”の、真犯人以外は決して知りえない詳細を口にしたのである。しかしこの王国炎は、精神病の疑いがあるとして外医治療を受けることになっていた。
　王国炎が犯人に間違いない！おまけにヤツは精神病を装っているだけで、万が一、病院移送中に逃げられでもしたら終わりだ。直ちに厳重監視して、捜査すべきだ！

　何かがおかしい…。遂に維民はかつての同僚で友人でもある、市公安局の刑事警察隊長兼副局長・ 魏徳華 （ウェイドーホア）に電話し、王国炎の口から出た“１．１３事件”に関する事柄の裏付調査を依頼する。
　維民からの依頼されたもの―それらは外部に漏らすことを厳禁とされた極秘情報だった。愕然とする徳華は即座に上司である市公安局長・ 史元傑 （シーユァンジィエ）や地区公安本部長・何波（フーポー）にこのことを伝える。“１．１３事件”解決は公安局の悲願でもあった。色めき立つ公安局。

　身内に潜む見えない悪の巣窟。その圧力に抗しながら、暴利をむさぼる権力との死力を尽くした闘いが始まる―。

　司法部門の上層幹部と黒社会との癒着に、都市の不動産開発業者と農村の悪徳幹部が結託して進める耕地の不正取引といった問題も絡ませ、ラストは維民の妻子を人質にとった王国炎の爆弾満載ベンツと維民のおんぼろシャレードのカーチェイスあり、王国炎の妻の浮気相手で事件の黒幕でもある男に対する国炎の復讐ありと、まさにノンストップ・アクション映画のよう！　
　「 三国志 」や「 水滸伝 」に比べると少ないものの、それでも多い登場人物に始めのうちこそ多少混乱するが、次第に相関関係が明らかになるにつれ、グイグイ話に惹き込まれること必至。一日の用事を全て片付けてから読み始めるべし（＾＾ゞ

米原万理 さんも著書「 打ちのめされるようなすごい本 」の中で打ちのめされていた凄い本、もし機会があれば読んでみて下さい。面白さは保証します（キッパリ！）

十面.jpg