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▼オズワルド問題 マクドナルドは質問を続けた。「ロレンツさん。あなたはリー・ハーヴィー・オズワルドと名乗る男に会ったと述べましたね?」 「はい」 「五回ぐらい会ったと?」 「不規則に、そのくらい」 「私が数えたところでは、三回――。最初はマイアミの隠れ家で、二回目はオーランド・ボッシュの家で・・・」 「それから訓練所です」 「もう一度言ってもらえますか?」 「訓練所です」 「訓練所と、それにダラスへの旅行の時ですね」 「はい」 「いいでしょう。それでは最初に会ったときの話をして下さい。あなたは、あなたが言うところのマイアミの隠れ家で彼に会ったのですね?」 「はい」 「マイアミの一体どこにその家はあったのですか?」 「南西部だと思います。白い家で、だれかから借りていたのだと思います」 「当時、あなたはどこに住んでいたのですか?」 「(キューバの)反乱分子の一人として、リバーサイドホテルに住んでいました」 「失礼、もう一度言って下さい」 「リバーサイドホテルは、わたしたち反カストロ分子の泊まり場所でした。反乱分子たちは、後にピッグズ湾事件にかり出されたのです」 「マイアミ川のどのへんですか?」 「マイアミ川のそばです」 「分かりました」 「マイアミの町中の近くです」 「隠れ家は南西部だと言いましたね?」 「はい」 「南西部では、おおざっぱすぎますね。もうちょっと具体的にどこか言えませんか?」 「正確には分かりません。ズカス氏が運転して回ったときに、私は彼にその隠れ家がどこだか指し示したことはありますが。彼はマイアミの関税・入国審査局の人間です」 「そのとき隠れ家がどこにあるか指し示すことができたわけですか?」 「はい」 「あなたたちがその家を探し回った理由は何ですか?」 「彼も知りたがったからです」 「だれが知りたがったんですって?」 「そのスティーブ・ズカス氏です」 「我々も興味を持っています。何故あなたたちはその家に行こうと思ったのですか?」 「彼と行って、住所を確かめようとしたのです。そこが・・・」 「そうじゃなくてですね」と、マクドナルドはロレンツが自分の質問と異なる答えをしようとしたので遮った。 それでもロレンツは続けた。「そこが最初にオズィーに会った場所だからです」 「何故あなたは六〇年代の初めに、その家に行って、会ったのですか?」 「質問の意味が分かりませんが」 困惑したロレンツを見かねたクリーガーが口を挟んだ。「マクドナルド委員、多分あなたはこういう風に聞きたいのでは・・・」 マクドナルドはクリーガーを遮った。「私が質問をしているのです」 クリーガーがやけになって反論した。「あなたの質問がはっきりしないので、証人は理解できないでいるのです。あなたのことを助けてあげようとしているのに、その必要がないならそれもいいでしょう」(続く)
2005.10.31
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▼悪徳弁護士2 「彼があなたのお金を取り上げたと証言しましたね?」 「はい」 「もしそうだとしたら、ウォルターズにはどんな利益があったのですか?もう金を手に入れたのだから、何故あなたをマイアミから追い出そうとする必要があるのですか?」 「私は彼に対し信託基金を取り戻す訴訟を起こすと告げたからです。彼は私の娘の名付け親であり、信託基金の被信託者なのに、こんなことをしたのです」 「彼はあなたの娘の名付け親なのですか?」 「はい」 「今あなたは、重大な申し立てをしているのですよ」 「何を申し立てているか、よく知っています」 「あなたはデービッド・ウォルターズがマイアミで尊敬されている弁護士だということを知っていますか?」 「尊敬されているですって?」 ロレンツは耳を疑った。ウォルターズが尊敬に値する人間などということは到底受け入れられなかった。ウォルターズは信託基金を盗んだ上に、その金のためにロレンツを殺そうとした人物なのだ。マクドナルドは何という戯言を言っているのだろうか。 「尊敬されています」とマクドナルドは再度きっぱりと言った。 「だれに尊敬されているのですか?」とロレンツは皮肉を込めて聞き返した。 マクドナルドは、クリーガーがロレンツに何事かささやこうとしているのを見つけ、「弁護人、私は証人に聞いているのであって、あなたにではない」と諫めた。 ロレンツが「デービッド・ウォルターズが何で・・・」とウォルターズを非難しようとしたところ、マクドナルドが証言をさえぎって、こう付け加えた。「彼が尊敬されている弁護士で地域の名士であるということを知らないんですか?」 ロレンツはマクドナルドのコメントにあきれ返った。「素晴らしい。彼は何て素敵なんでしょう。彼がどうやってそんな尊敬を勝ち取ったか不思議だわ」 「デービッド・ウォルターズが過去十五年以上もの間、地域の教会に奉仕する積極的なメンバーであると知って驚きましたか?」 マクドナルドの根拠はあまりにも子供じみていた。教会の奉仕活動を十五年やっている人間ならだれでも信頼できる人間だという幼稚な考えに、ロレンツは到底、賛同できなかった。ウォルターズのキリスト教的地域奉仕者としての顔は、表の顔に過ぎない。ロレンツにとってウォルターズは金の亡者以外の何者でもなかった。そんな人間が現在、カトリック教の総本山で大使になっているということも新聞で知っていた。それが現実なら世の中は狂っている。金のために人殺しさえやりかねない人間が、世界中の多くの人が神聖視している国に米国の代表として大使をしているのだから。何という皮肉だろう。おそらく金を持っている"名士"が人格とは関係なく大使になるのがアメリカのシステムなのだ。ロレンツはそんな世の中にうんざりして言った。「いいえ。もうたくさんだわ。彼が今、バチカンにいるということも聞いています」 マクドナルドは勝ち誇っていた。「彼は今、バチカン市国駐在の米国大使です」 「私が保護されているときにそれを読みました」 「つまりあなたが言っていることは、ロレンツさん、重大な申し立てをしているということです」 マクドナルドは依然として幼稚な観念に固執したいらしかった。 ロレンツは言い切った。「私は死ぬまで、今まで言ったことを変えるつもりはないわ」 マクドナルドは言った。「いいでしょう。ありがとう」(続)
2005.10.30
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▼サメ2昨日の答えですが、一番近い答えが2ですね。本当は5が一番いいのですが、そうはいきません。最初、サメが近づいてきたときはびっくりしました。だがよく見ると、背びれなどヒレの先が黒くなっています。ブラックチップ・シャーク(日本ではツマグロ)と呼ばれる、主にリーフに棲むリーフシャークですね。このサメはそんなに凶暴ではありません。もちろん野生の動物ですから、興奮させると何をしでかすかわかりません。だけれども、タヒチではよく見かけるサメで、まず襲ってくることはないでしょう。そうとわかれば、安心ですね。ブラックチップは体長1・2~1・5メートルほど。私のほうが大きいです。一般的に海の世界では、大きいということは強いということです。私がわざとサメのほうに向かって泳ぐと、すぐにサメは方向を変え、逃げていってしまいました。写真は、私に恐れをなして”尻尾を巻いて”退散するブラックチップ。水面を雨が叩いていますね。先ほどまで輝いていた太陽が隠れてしまって、写真も暗くなってしまいました。ただ、気をつけなくてはいけないのは、サメの種類によっては、いつもこうはいかないということです。以前紹介したレモンシャークも最初はこちらに向かってきますが、ある距離までくると方向を変えます。ところが、タイガーシャーク1、2、3、4や、ホオジロザメ1、2はそうはいきません(ホオジロザメは最近、川崎市の港で発見されました。こんな近くまで来ているんですね)。タイガーシャークやホオジロザメは人間よりはるかに大きいです。4~8メートルにも成長します。8メートル級のタイガーやホオジロをもし海の中で見たら、どんなにベテランのダイバーでも平常心ではいられないでしょうね。実際に見た人は「潜水艦のようだった」と感想を述べています。彼らは、自分より小さな人間を見ても怖がりません。エサなのかどうか、近づいてきて様子を見るでしょうね。ダイバーが怪我をして血でも流していたら、襲ってくる可能性が非常に高くなります。でも、もっと危険に身をさらしているのは、普通のダイバーよりも、サーファーや水中銃を使った漁をしている人たちでしょう。魚の血のにおいや断末魔の痙攣はサメを呼び寄せます。また、ボードの上で両手をバタつかせているサーファーは、下から見るとタイガーの好物の亀や、ホオジロの好物であるアシカのように見えます。ハワイや宮古島でサーファーがサメに襲われたことがありますが、タイガーシャークが好物と間違えて食い付いたのではないかとみられています。満月の晩に海で泳ぐのも危険ですよ。私が1999年4月に米ワシントンDCからタヒチに向かっていたとき、機中でロサンゼルスタイムズを読みました。そこには、新婚旅行先のハワイで悲劇に遭遇した悲惨なカップルのケースが紹介されていました。ハワイ諸島のどこの島かは忘れましたが、そのカップルは二人乗りのカヌーに乗って、海に漕ぎ出しました。ところが沖に出ると強い潮の流れの中に入ってしまって岸に戻れなくなってしまったんですね。岸は遠ざかり、二人は漂流してしまいます。やがて日が暮れて、夜になります。幸いなことに、海は荒れていなくて、静かです。空には満月が煌々と輝いています。月の光が黄金色に海を染めています。ロマンチックですね。ただ、ハワイは常夏と言っても、夜は結構冷たい風が吹くんです。寒くなった二人は、海水に手をつけて水温を確かめました。すると結構温かいことに気づきました。新郎がためしに海に飛び込んでみると、海の中はやはりとっても温かい。カヌーの上で寒さに震えている新婦にも海の中に入るように告げました。二人はカヌーに手をかけて海の中につかりました。空には満月。海の中は温かく、気持ちがいいです。しかし、恐怖は次の瞬間にやってきました。新婦が叫び声を上げたんですね。驚いて振り向いた新郎が見たのは、大きな魚が新婦のそばにいて攻撃を加えている光景でした。攻撃された新婦はカヌーから手を離したため、夜の海をカヌーからどんどん離れていきます。新郎は新婦の名を呼びました。返事がありません。新婦は暗闇の中に消えていきました。この暗闇と不気味なほど静かな海の上で、新郎はまったくの無力でした。怖くなって再びカヌーに乗り込んだ新郎は一晩中、ただガタガタ震えていたようです。翌日、カヌーはある島に流れ着き、新郎は救出されました。警察はサメの襲撃にあったという新郎の話を一応、信じつつも、保険金殺人などの可能性についても調べていると、書いてありました。どう思いますか? 保険金殺人か、サメの襲撃か。私はおそらくタイガーシャークの襲撃があったのではないかと思います。その根拠は、満月だったからです。満月の晩、海の上に浮かんでいるということは、下から見ると襲ってくださいといっているようなものなんですね。もちろんサメの目から見ての話ですが、満月によって獲物のシルエットがはっきりと浮かび上がるんです。ガラパゴス諸島のアシカは、満月の晩になると、海に魚を捕りに行く数がめっきり減るそうです。彼らはわかっているんですね。空が月で明るいと、深海の暗がりからサメが忍び寄ってくることを。アシカのほうからは見づらくて、サメのほうからは見やすい状況ができあがるわけです。自然界においては、アシカにとって致命的な悪条件ということになりますね。今日はちょっと怖い話になりました。次回もサメの話ですが、もうちょっと明るい話になると思います。
2005.10.29
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▼悪徳弁護士1(前回までのあらすじ) ケネディ暗殺事件やカストロ暗殺未遂事件の関係者が次々と消される中、自分の命を危険にさらして小委員会で証言するロレンツ。しかしロレンツの証言は、CIAが暗殺事件の背後で糸を操っていたという衝撃的な内容であった。にわかには信じられない小委員会のメンバーは、ロレンツが真実を語っているかどうかを確かめるために、ロレンツ証言の矛盾点を詰めていく。ロレンツは委員らを納得させることができるのか。 「そのとき、あなたも車に乗っていたのですか?」 「いいえ。私は腕に赤ん坊を抱え、歩いていました。そこへ、その車が近付いてきたのです」 「これが、あなたが先程言ったところの、デービッド・ウォルターズがあなたをひき殺そうとしたという事件のことですか?」 「はい」 「その車は、その地方弁護士によって雇われた男が運転していたのですか?」 「はい。彼とデービッド・ウォルターズはマイアミ警察によって事情聴取されました」 「ロレンツさん、話があちこちに飛んでいます。デービッド・ウォルターズがあなたをひき殺そうとしたと言ったのではないのですか?」 「いいえ。デービッドが人を使って私をひき殺そうとしたのです。彼はまた、入国管理局に告げ口し・・・」 「ちょっと待って下さい。デービッド・ウォルターズがリチャード・ガースタインのところに行き、ガースタインの部下に車であなたをひき殺させようとしたと言っているのですか?」 「はい」 「その地方弁護士の部下の車で?」 「はい」 「マイアミのどこで起きたのですか?」 「正確な地名は覚えていません。見つけだすことはできますけど」 「町中のどの辺ですか?マイアミビーチですか?」 「はい」 「何時ごろでしたか?」 「夜でした。夜も早い頃です」 「モーテルの裏で何をしていたのですか?」 「入り口のところでした。部屋の入り口は裏にあったのです。赤ん坊と一緒でした」 「駐車場で何をしていたんですか? どこに行っていたのですか?」 「私はモーテルのプールのある辺りから部屋に戻るところだったのです。そのとき、車がずっと近付いて来たのです」 「どのくらいのスピードで近付いて来たのですか?」 「正確には分かりません。大きな駐車場で、車はかなり早かったです」 「どれくらいのけがをしたのですか?どんなけがを被ったのですか?」 「お尻をすりむいた程度です。だけど、私の娘は、私の手から放り出され、歩道に頭をぶつけ、頭から出血しました」 「だれかこの事件で処罰を受けましたか?」 「フランク・ラッソが警察に調べられました。デービッド・ウォルターズもです」 「ウォルターズはどうして調べられたのです?」 「彼は関係者であり、私を脅していたからです。ウォルターズは、私にマイアミから出ていけ、出ていかないと無理にでも追い出すぞと脅していたのです」(続く)
2005.10.29
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▼サメ1タヒチ・ツアモツ諸島のマニヒ。水上バンガローですね。2001年12月29日。この日はダイビングではなく、シュノーケリング・ツアーに参加しました。毎日ダイビングするよりは、一日ぐらい途中で休みを入れたほうが、体にいいですからね。こんなところをシュノーケリングして遊んでいました。水深は3メートルぐらいでしょうか。光が十分に海底に届いて、きれいです。岩の周りで泳いでいるのは、ルリスズメダイ。のどかですね。しばらくすると、何か大きな魚がこちらに向かって来るのに気づきました。なんだろうと思ってよく見ると、サメですね。まっすぐ私に向かって泳いできます。ピンチ! 面白い写真でしょう。普通、サメの写真というと、横や斜めから撮った写真が多いですが、これは真正面です。まったく無駄のない形をしていますね。まるでミサイルのよう。速く泳げるはずです。ちょっとアップにしてみましょう。下にはコバンザメ、顔の周りには、獲物のおこぼれにあずかろうと、スズメダイが併泳しています。ところで獲物って、私のこと?さあ、大変! どうしましょう。ダイビング中であれば、前後左右上下自由自在に動けますが、シュノーケリングだと、前後左右ぐらいにしか動けませんね。水面に浮かんでいますから、サメも狙いを定めやすいわけです。さて、ここで問題です。私の次の行動を予測して、次から選んでください。1、一目散に反対方向である岸に向かって逃げた。2、チキンレースよろしく、サメに向かって泳いだ(当然、先によけた方が負けですね)。3、近寄ってきたサメを持っていたカメラで殴り、撃退した。4、サメに食べられた。5、一緒に記念撮影した。答えは明日。
2005.10.28
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▼再開 休憩の後、小委員会は午前十一時五十八分に再開された。 議長の了解を得て、今度はマクドナルドが質問を始めた。 「ロレンツさん。あなたは午前中、マイアミの弁護士、デービッド・ウォルターズの話をしてきました」 「はい、そうです」とロレンツは答えた。 マクドナルドは、ヒメネス将軍の弁護士で、ロレンツの子供のための信託基金を横取りしたという人物に特に興味があるらしかった。 「デービッド・ウォルターズとその仲間があなたのことを追いかけていたと?」 「はい」 「それに、あなたの子供のために創設された信託基金約三十万ドルを、彼があなたから取り上げたと証言しましたね?」 「はい」 「彼がお金を持っていたのなら、何故あなたを殺そうとするのですか?」 「私は彼に対し法的措置をとり始めましたから」 「どのような法的措置ですか?」 「私の信託基金を取り戻すためのです。彼はフロリダ州の弁護士、リチャード・ガースタインと組んで、フランク・ラッソという男を雇いました」 「ガースタインはデード郡の地方弁護士ですね?」 「はい」 「すみません。ウォルターズが地方弁護士を雇ったのですか?」 「いいえ。ウォルターズがその地方弁護士と一緒になってフランク・ラッソを雇ったのです。フランク・ラッソはレンタカーのシボレーに乗って、私をひき殺そうとしたのです」 「そのフロリダ州の地方弁護士はどうして、あなたとあなたの弁護士の民事訴訟に首を突っ込む必要があったのですか?」 「私が車にはねられた後、ナンバー・プレートをチェックしたのです。マイアミビーチの警察が調べたところ、リチャード・ガースタインの事務所までたどり着きました」 「車からですって?」 「車からです。ラッソはガースタインに雇われていたのです」 「あなたをはねた車ですか?」 「はい」 「あなたはひどくけがをしたのですか?」 「そんなにひどくありませんでした。娘は頭にけがを負いました」 「どこでその事故があったのですか?」 「私が隠れていたマイアミのモーテルの裏です」 「駐車場で、ですか?」 「はい、駐車場で、です」(続く)
2005.10.28
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▼決意と不安下院暗殺調査特別委員会のジョン・F・ケネディ暗殺に関する小委員会で証言するように求めた召還状がロレンツに届いたのは、1978年5月1日だった。召喚状は、免責を与える代わりに証言を強制する命令書であった。 召喚状が届いたときロレンツは、逃げ出したい気持ちになった。危険はいつも身の回りにあった。殺してやるという脅迫は日常茶飯事だった。実際、CIAのカストロ暗殺計画にかかわったマフィアは、明らかに口封じのために殺されていた。シカゴのモモ・サルバトーレ・ジアンカーナは1975年、上院の委員会がカストロ暗殺計画での役割について事情を聴こうとした矢先、自宅の地下室で殺された。後頭部に一発、そして、口封じだということがわかるように、口の周りに計6発の銃弾を浴びていた。同じくマフィア関係者のジョン・ロゼリは、上院の委員会で一回目の証言をした後の1976年7月、殺された。マイアミ沖に浮いていたドラム缶の中で足を切断された死体の状態で見つかったのだ。ロゼリは二回目の証言をする予定になっていた。CIAと関係しマフィアによる殺しを請け負っていたとみられるチャールズ・ニコレッティも1977年3月、シカゴのショッピングセンター駐車場で後ろから撃たれ、殺された。その48時間前には、ダラスでオズワルドと交友があったジョージ・ド・モーレンスチャイルドが“自殺体”で発見された。議会調査団に証言する直前であった。ロレンツは、自分が何に直面しているのか、十分に理解していた。ロレンツもまた、“彼ら”と同じ世界に住んでいたのだ。だが、もう証言するしかなかった。自分で撒いた種は自分で刈り取らねばならない。任務についているときは、自分のしていることを他人に話してはならないと教えられていた。それは国家の安全のためであると言われた。ロレンツが属していたオペレーション40は、CIAがお墨付きを与えた暗殺集団であった。ロレンツは直接、手を下さなかったが、一人以上の人間が殺されていたことにロレンツも気づいていた。盗みにしろ、殺しにしろ、法律など一切関係のない暮らしが“保証”されていた。こうした非合法活動は、国家によって認知されていた。議会は巨額の金が何の説明もなく秘密情報活動に使われることを容認してきた。CIAの予算には、国益という大義名分を実行するための聖域があったのだ。ロレンツはそうしたCIAの暗部を、知っていることを洗いざらい話すつもりでいた。しかし、委員会や世間の人々はそうした現実を受け入れることができるのだろうか。喋りすぎると、自分も消されることになるのだろうか。休憩の間も、ロレンツの頭の中では、決意と不安がまぜこぜになっていた。(続く)
2005.10.27
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▼休憩 「私が知りたいのは、彼らがあなたを裏切ったときの気持ちです。もし彼らがあなたに、三十万ドルの信託基金を取り戻せると約束・・・」 「彼らはデービッドと話をしましたが、デービッドは彼らにウソをついたのです。私の議論はデービッドのことであって、ボビー・ケネディの部下のことではありません」 「それでは、デービッドが信託基金を元に戻すと約束したのですか?」 「そうです。だけどそうなりませんでした。私はお金のことなど特に気にしていたわけではありません。稼ごうと思えばまた稼げますから。問題は、デービッドが車でつけ回した挙げ句、私をひき殺そうとしたり、人を雇って私を殺そうとしたり、殺人事件の証拠隠滅工作をしたり、ウソをついたり、そうした諸々の悪行をしたりする権利は彼にはないということです」 「議長、これで私の質問を終わります」 フィシアンの質問が終わった。 トリプレットが議長に提案した。「議長。ここで委員会スタッフの顧問弁護士であるジェームズ・マクドナルドに質問の機会を譲りたいと思います」 これに対しクリーガーは議長に五分間の休憩を求め、了承された。 午前十一時四十分、小委員会は休憩に入った。(続)(編注:これで前半が終了しました。後半はロレンツ証言の矛盾点が浮き彫りとなり、ロレンツと委員の間で丁々発止のやり取りが展開されます。カストロとの再開を含め、ロレンツのその後の冒険談も明らかにして行きます)
2005.10.26
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今日は秋の花々を紹介します。まず、ヤナギバヒマワリです。花弁が柳の葉のようになっているので、名づけられました。次はダリア。左のダリアには、チョウチョウが止まって蜜を吸っていますね。逆光で撮った白いダリアです。ダリアは花型や色彩が豊富です。これはイヌサフラン。イヌサフランの英名はコルチカムといいますが、サフランといっても香辛料になるアヤメ科のサフランと異なり、八重咲きのユリ科の植物です。これは多分、ミソギハギ(ミソハギ)ですね。次は可憐で綺麗ですよ。バラです。でも、ただのバラではありません。バラの名は「ダイアナ・プリンス・オブ・ウェールズ」。故ダイアナにちなんだ品種です。ダイアナは、女王陛下の諜報機関で「殺しのライセンス」を持つMI6に謀殺されたのではないかと噂されていますね。真相はわかりません。いずれ明らかになるときが来るでしょう。ローズマリーです。ハーブで有名ですね。ニュージーランドにいる姪の名前と同じです。手前が蔦のように低く茂る品種で、奥に見えるのはまっすぐ上に伸びる品種。どちらもローズマリー。花はこれからが見頃かな。後はすみません。名札がついてなかったので、名前がよくわかりません。色がなんとも言えず、きれいですね。トップページにマンタの写真をアップしましたので、ご覧下さい。これからは、写真付きの海シリーズが始まる予定です。ところで、ガラパゴス諸島のイザベラ島で火山が噴火しましたね。被害がでなければいいのですが・・・。ゾウガメなんかは動きが遅いから、逃げ遅れてしまいそうです。フリーページにガラパゴス旅行記がありますので、興味のある方はどうぞ、お読み下さい。
2005.10.25
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▼憤慨 「あなたがそのように、将軍と一緒にいたいという強い感情や望みを持っていたのなら、何故本国送還を妨害したのは間違いだったと、あなたの書いた証言書で言っているのですか?」 「それは国務省の代理人であるアービング・ジャフが、私の父親認知訴訟を取り下げるよう要求したからです。彼は"私が本国送還を妨害している"と言いました。そのとき、私はいいでしょうと言いましたが、デービッドがそれから二、三週間のうちに私のお金や家といったすべてを取り上げてしまったので、訴訟を取り下げませんでした。アービング・ジャフは、私が信託基金の条項に違反したからだと言いました。これに対し私は"デービッドが私の信託基金を元に戻せば、訴訟を取り下げる"と条件を出しました。そのとき私は信託基金を取り戻せると保証してもらったのですが、実際は取り戻せませんでした」 「だれがあなたの信託基金を取り戻せると保証したのですか?」 「国務省、ボビー・ケネディの配下の人間です」 「それに?」と、フィシアンは答えを促した。 「アービング・ジャフです」 「あなたは、ボビー・ケネディに対しては怒りの気持ちを持っていなかったと証言していますね?」 「どうしてボビー・ケネディを非難する必要があるのですか?」 「ボビー・ケネディと国務省が、あなたが証言したように、父親の親権訴訟を取り下げれば、三十万ドルの信託基金を取り戻してやろうと言い、だけれども信託基金が取り戻せなかったのであるならば・・・。それにあなたはお金の問題で非常に困っていたと証言しているわけですから・・・」 「いいえ、違います。お金だけの問題ではありません。生きるか死ぬかの問題だったのです。あなたは全く分かっていません。デービッドは私に死んで欲しかったのです」 「それは理解しています。私はただ、何故ボビー・ケネディ上院議員に対して、あなたが憤りを感じなかったのかを理解するのに戸惑っているだけです」 「それは私が当時、政府の命令に刃向かうつもりがなかったからです。そんなことは私の性分に合わないと感じていました」 「だけど彼らは、あなたが訴訟を取り下げれば、信託基金を取り戻すと・・・」 「あなたは分かっていません。ボビー・ケネディが私のお金を取り上げたのではないのです。デービッド・ウォルターズが取り上げ、それをいまだに持っているのです」 「それは理解していますが、私はあなたが言ったことについて聞いているのです。あなたはボビー・ケネディに憤慨したり、怒ったりしなかったと言ったと思うのですが」 「違います」と答えながら、ロレンツはまるで自分が魔女狩りの裁判にかけられているようだと思った。 「憤慨したと言ったのですか?」 「そんなことは言いませんでした。約束をしたのは国務省の弁護士とか、司法省の弁護士であるアービング・ジャフです。正確には彼がだれを代表しているのか知りません。国務省と思いました」 「彼は司法長官の下で働いていたのではありませんか?」 「はい」 「司法長官とはだれですか?」 「ボビー・ケネディです。だけどどうして私がボビー・ケネディを憎まなければならないのですか?」(続)
2005.10.25
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収穫の秋ですね。おや、なにかオレンジ色の実が落ちていますね。かぼちゃでした。これは小さいかぼちゃ。いずれも観賞用です。まるで菊の紋章のようですね。花弁の数がちょっと少ないかな。10月31日はハロウィンなので、早くもかぼちゃの提灯が飾られています。ハロウィンは、ケルト人の大晦日の行事に由来するアングロサクソン系民族の祭りです。仮面をかぶって踊ったり、子供たちはこのかぼちゃの提灯を持って家々を回り贈り物をもらったりしますね。これはイチジク。写真右下には、イチジクの「実」がなっているのが見えます。まだ青いですね。紫色に変わると食べられるそうです。漢字でイチジクは無花果と書くように、花はこの「実」の中にあって見えません。だから本当は、これは果実ではなく、花托です。でも便宜上、果実と呼んでいます。次はザクロ。実は熟すると裂けて、紅色の種が出てきます。では、これは何でしょう? さくらんぼ? ちょっと違います。答えはヒメリンゴ。小さなリンゴですが、味は苦く、鳥さんも食べないそうです。観賞用ですね。最後に紹介するのは、バラ科の落葉喬木カリンの実。カリンは春、紅桃色の美しい花を咲かせます。秋の実をお届けしました。明日は、シリーズ最終回「秋の花」です。
2005.10.24
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フィシアンの質問2 フィシアンが質問した。「みんなが当時、ケネディを憎んでいたというのは、つまり、彼らはよく、ケネディを撃ってやるとか、殺してやるとか話していたということですね?」 「そうです。そういう風に言っていました」 「みんなというのは、だれのことを言っているのですか?」 「反カストロのキューバ人です。キューバ人のみんな、それに一部のアメリカ人も」 「これまで出てきた人物に限って話をしましょう」 「フランク・フィオリーニは大変激しく嫌っていました。ジェリー・パトリックやディアス・ランツも」 「オズワルドはケネディについて何か言っていませんでしたか?」 「はい、彼も同意見でした」 ロレンツは、ケネディ大統領が六二年十一月にマイアミに寄った際、亡命キューバ人たちが口々にケネディをののしり「いつかピッグズ湾事件の恨みを晴らすため、やつをやってやる」と言っていたのを思い出していた。 フィシアンが続けた。「すると、その旅をしたグループのメンバー全員がケネディらを嫌いだった。八人全員が敵対するようなことを言っていたのですね?」 「七人です。私は言っていませんから」 「ほかの七人・・・。こうしたののしりの言葉は、あなたが六一年に訓練を受けていたときに聞いた言葉と違うものでしたか?」 「違いました。でも私はその理由を感じ取りました。何故なら私の娘の父親はボビー・ケネディ(司法長官)によって本国送還されたため、みんな私もケネディ家を憎んでいると思っていたからです。しかし、実際は、私はケネディを非難したりしませんでした。本国送還したのは国務省だったからです。しかも正当な理由があった。本国送還は単に私を惨めな気分にしただけです。私はお金を失いました。弁護士のデービッドが三十万ドルの信託基金を取ってしまった。私の復讐心はデービッドに向けられたものあり、ケネディに向けられたものではありませんでした」 「ボビー(ロバート)・ケネディに対しては、何ら憤りを感じなかったのですか?」 「ボビーに関しては感じませんでした。むしろ政府がやったという感じでした。政治的な交渉事だという感じでした。私は・・・」 「ボビー・ケネディと将軍の関係について話してもらえませんか?」 「ボビーは将軍について、米国は今後いかなる独裁者にとっても安住の地とはならないとする前例にしたかったのだと思います。でなければ、取引が行われたのです。デービッド本人が私に、マルコス・ペレス・ヒメネス将軍の後、権力の座に着いたロミュロ・ベタンコートとの間で、将軍を本国送還処分するという政治的取引が成立したと説明しました。将軍には国庫から数百万ドルを盗んだ容疑と四件の殺人容疑がかけられていました。私はデービッドが将軍に忠実ではないことに気づきました。彼自身もそう言っていましたから。それに私自身も本国送還の件では利用されました。私は本国送還を妨害するため将軍を訴えるよう言われました」ヒメネスの本国送還は、当然といえば当然のことであった。ロレンツの証言からは、それを巧みに利用した“悪徳弁護士”デービッドの存在が浮かび上がってくる。(続く)
2005.10.24
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今日の東京地方は真っ青な秋晴れ。家で原稿を書いていてもつまらないので、調布市にあるフローラルガーデン「アンジェ」に秋の花々を観賞しに行きました。全部紹介すると大変なので、3回にわけます。第1回目は「秋の穂」を取り上げましす。これはガマの穂ですね。『古事記』によると、怪我をした因幡の白兎は、大国主命(オオクニヌシノミコト)に教えてもらってガマの穂にくるまり、その花粉で止血して怪我を治療したといいます。もうすぐ穂の部分がはじけ、わたのような種が風に舞うはずです。次はススキの穂のようですが、もっと大きいイネ科のパンパスグラス。高さが2~3メートルにもなる大型の宿根草です。逆光で撮ると、光が透き通ってきれいですね。逆光のまま、ちょっとズームしてみました。ドライフラワーや切花として、よく使われています。名前は忘れましたが、カエデ科の植物。逆光で撮ると、秋らしくなりますね。あまりにも綺麗だったので、最後に花の写真も紹介します。ダリアです。明日は秋の実。
2005.10.23
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ハナビラクマノミの別のショットがありました。黄色っぽいのがヨスジフエダイ。黄色に白の筋が四本縦(人間から見れば横ですが)に入っているので、こう名づけられています。写真に写っているのは、幼魚ですね。その上を泳いでいるのは、ヒレグロスズメダイです。ヨスジフエダイ。いずれも竹富島の「ヨスジの根」での撮影です。ちょっと、光量が不足しています。
2005.10.23
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▽フィシアンの質問 「ありがとう、議長」 そう言ってフィシアンのロレンツに対する質問が始まった。 「あなたたちがフロリダからダラスに向かい、あなたが今回の仕事がいつもより長距離で様子が違うと受け止めたとき、武器庫に盗みに入るだけなのに、何故こんな遠くまで来るのかと不思議に思い始めましたか?」 「はい。私はフランクにたずねました。そうしたらフランクは、州境の警察や、入国管理局、関税局、沿岸警備隊が私たちへの取り締まりを厳しくし始めたからだと説明していました。マイアミやジョージアでは取り締まりが厳しすぎるので、遠くへ行かねばならないのだと言っていました」 「ダラスでの武器庫襲撃のためだと思った旅では、あなたはダラス市という名前をよく覚えているのに、ドッド議員の質問の答えでは、襲撃した武器庫がどの市にあるのか、どこにあったのか、覚えていないということですか?」 「そうではありません。襲撃した武器庫の場合は、大抵は夜でしたから、覚えていないのです」 「では何故、ダラスだけこんなにも鮮明に覚えているのか、答えていただけますか?」 「何故ですって? 今度はダラスの話ですか?」 ロレンツは先のドッドの質問で武器庫襲撃の話にはうんざりしていたので、苛立たしく言い放った。 「はい」とフィシアンは少し申し訳なさそうにうなずいた。 「それは、フランクに聞くべき質問です」 「そうではありません。私はあなたに何故、ダラスのことだけそんなに鮮明に覚えているのか、と聞いているのです。あなたの陳述書には、ダラスへようこそという標識を見たり、ダラスを去ったり、都市の境界を見たりとか、そんなにも詳しく覚えているのに、ほかの武器庫襲撃の話になると、急に記憶がぼやけてしまうのは、おかしいと思いませんか?」 ロレンツは今度はフィシアンの質問の意味をちゃんと理解し、こう答えた。「ダラスに行くのは、武器庫襲撃ではないことが分かったからです」 確かにその通りだった。計画の緻密さからいっても、その場に立ちこめた一種異様な雰囲気からいっても、単なる武器庫襲撃でないことはダラスに着いた時点でロレンツにも分かっていた。だが、何なのかはスタージスやほかの仲間も一切答えなかった。その場の雰囲気から、だれかを殺すのは分かっていた。しかも大きな仕事だ。 フィシアンが聞いた。「ケネディ大統領がダラスに行く予定だったことは知っていましたか?」 「いいえ」 「ボッシュの家で開かれた会合で、大統領の名前が一度でも言及されたことはあったのですか?」 「はい。だけど、当時はだれもが、ケネディを憎んでいました。みんなケネディのことを悪く言ったり、軽蔑したりしていました。それでも私は、彼らが本気でワシントンにいる人間の悪口を言っているとは思えませんでした。何故なら、ワシントンにいる政府の人間から、私たちは命令を受けていたのです。特に資金が欠乏しているときとか、訓練に関しては。ピッグズ湾事件もそうでした」 こうしたロレンツの理解は無理からぬことだった。まさか、CIAの人間が自分の国の大統領を殺そうとするとは、だれも想像だにしなかったに違いない。(続く)
2005.10.23
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(少し間が開きましたが、再開します。ロレンツが暗殺団と共にダラスに出向き、そこでCIAの工作員ハワード・ハントに会ったかどうか、暗殺団がダラスで何をしようとしていたか、それにロレンツの役割がなんであったかが、質問のポイントとなっています。)▼証言の矛盾 議長はさらにロレンツの陳述書に書いてあったことについて質問し、追い打ちをかけた。「あなたが帰ることになって、だれがあなたを空港に送るかで話し合ったのですか?」 「私は当然、フランクが私を空港へ送ってくれると思っていました」 「ここにあるあなたの陳述書では、こう書かれています。"私が立ち去ろうとしていると、エドゥアルド・H・ハントが車でやって来て、だれが私を空港まで送るかで議論がありました。フランクとボッシュが私を乗せていき、エドゥアルドはモーテルで待っていました“――。そういうことがなかったと言うのですか?」 ロレンツは白を切った。「私は車の中にいて、もう出発する準備ができていました。多分、エドゥアルドだったと思います。ほかの人たちもいました。私は彼らとは話をしませんでした」 ロレンツにはこう答えるのがやっとだった。議長は陳述書の内容と今のロレンツの証言の間に矛盾を感じながらも、あえて追及せずに話題を変えることにした。 「少し話題を変えましょう。この時点ではこれが私の最後の質問です。あなたはこれが武器庫襲撃だと思っていたのですね?」 「はい」 「あなたは何度かの武器庫襲撃では、フランクと一緒に仕事をした」 「はい」 「でも何故、CIAとつながりのあるフランク・スタージスが銃を入手するために武器庫に押し入らなければならないのですか?」 「分かりません。私たちには、いつも釈然としないことがありました。私も同じ質問をフランクにしましたが、何故だかは理解できませんでした」 「あなたたちは武器庫に侵入し、盗んだのですね、銃と・・・」 「ライフルもです」 「そして、その後、そうした銃をだれに運んだのですか、キューバやフロリダの反カストロの部隊ですか?」 「マイアミです」 「ダラスでスタージスらのグループと別れたのは、私にはよく理解できなかったのですが、あなたがそうしたかったからですか、それとも・・・」 「私がそうしたかったからです。それに娘のことが気になりましたし、私が場違いの人間であるとも感じていました」 「スタージスもあなたに立ち去るよう言ったのですか?」 「いいえ。彼はただ、"お前はここを出ていけ。お前にはここにいて欲しくない"とだけ言いました。 私はこう言いました。"いいわ。いつも通りね。あなたはまったく役に立たないわ。アレックスを探すわ"」 「それでは、彼はあなたが立ち去ることに異議を唱えなかったのですね?」 「唱えませんでした。お互いの意見が一致したのです」 「すると、彼はあなたに旅の目的、何故あなたがそこに行くのかという理由を知らせること無しに、はるばるフロリダからダラスまであなたを連れてきたのですか?」 「そうです」 「それでダラスに着いたら今度はあなたに立ち去るよう言った?」 「はい」 「あなたは、あなたが何故そのダラス行きにかかわって、ダラスに行ったのか、その理由を理解したことがあったのですか?」 「私は彼が私を利用することはないと思っていたし、利用されたくもありませんでした。私は本当に、将軍の弁護士の件とアレックスを探し出す件で彼と話をしたかっただけなのです。旅の初めのある時点では、アレックスがダラスで待っているのではないかとの印象を持ったほどです」 「ありがとう。おや失礼。フィシアンさん」 議長はフィシアンが手を挙げているのを見つけ、彼に質問をするよう促した。(続く)
2005.10.22
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さて、この惑星のクマノミの話でしたね。下の写真は、前半で紹介したカクレクマノミでしたね。クマノミが住んでいるのは、このイソギンチャクです。イソギンチャクには毒がありますが、クマノミには免疫があり、共生していますね。カクレクマノミのお隣には、ハナビラクマノミが住んでいました。頭の部分がウルトラマンのようになっているセジロクマノミも、すぐそばにいました。すばやく動いているので、ピントが合いませんでした。この海の珊瑚も一部で被害を受けていますね。珊瑚は水温の上昇や台風で死んでしまうことがあります。無残な珊瑚の残骸が海底に散らばっています。それでもこの場所は大半の珊瑚がよく保存されており、非常にきれいでした。スカシテンジクダイの群れですね。これはゴマウツボ。写真には撮れませんでしたが、アカシマシラヒゲエビやホンソメワケベラがウツボのクリーニングをしていました。砂地に棲むガーデンイールこと、チンアナゴですね。穴からこのように首を出していますが、近づくとすぐに穴の中に引っ込んでしまいます。陸に上がって、休んでいると、大コウモリが飛んでいました。この惑星のコウモリは、カラスぐらい大きいですよ。最初はフクロウかミミズクかと思いました。ばさばさ飛び回っていました。夜にはフクロウの鳴き声が聞こえます。2羽いて、お互いに呼び合って(あるいは縄張りを主張して)いるようでしたよ。恒例の夕陽の写真です。この惑星は、石垣島と呼ばれていました。潜ったポイントは、石垣島・「底地沖グルクンの根」や、竹富島南の「ヨスジの根」でした。グルクンの根では5歳ぐらいのマンタに遭遇しましたが、カメラを持って潜らなかったので写真はありません。マンタの写真は、タヒチで何枚か撮っているので、いずれ公開します。
2005.10.21
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大気圏突入後、この雲の下に惑星の大地が広がっていました。その惑星はこのようなところです。前方後円墳のような山並みが見えますね。海もあるようです。早速、海の中に潜ってみましょう。ウチワのような珊瑚がありますね。若い珊瑚も育っています。スカシテンジクダイという透明な小魚が、ダイバーの周りを取り囲みます。スズメダイが群れています。カクレクマノミも顔を出していますよ。長くなりそうなので、後半へ続きます。今日の夜、アップします。
2005.10.21
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別の惑星から帰ってきたら、地球はすっかり秋でした。今回は太陽系内の別惑星ということもあり、3泊4日の視察旅行に終わりました。向こうの惑星はまだ夏でしたよ。地球はちょっと寒いですね。季節ボケで冬眠したいぐらいです。どの惑星に行っていたかは、明日明らかになります。
2005.10.20
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ハントの存在 「ハワード・ハントはモーテルに現れたのですか?」 「何ですって?」とロレンツは聞き返した。いきなりハントの話になったからだ。 「ダラスのモーテルにあなた方がいたとき、ハワード・ハント、またの名をエドゥアルドがいつの時点かで、現れたのですか?」 「いいえ。私はそこでは彼を見ませんでした」 「全く現れなかったのですか?」 「来ませんでした」 「陳述書の中では、彼が現れたと書いていましたよ?」 ロレンツはドキッとした。ハントのことを証言で明確に話すことはロレンツの身が危うくなることを意味していたからだ。何故ならハントはオペレーション40によるケネディ暗殺計画とCIAを結びつける重要人物にほかならなかったからだ。ここで本当のことを言ってもいいのだろうか。ケネディ暗殺の直前にCIA情報部員が暗殺団と打ち合わせをしていたことをばらしたらどういうことになるのか。委員会はロレンツの安全を保証してくれるのか。もしハントがケネディ暗殺の背後にいると証言したら、それこそCIAが黙っていないだろう。とっさにロレンツは、曖昧な答えをしてごまかそうとした。「エドゥアルドがそこに来ると聞かされたのです。フランクが言っていたことを思い出せる限りにおいて、エドゥアルドがそこに来ることになっていたのです。しかし、私は見ませんでした」 もちろんこれは正しい回答ではなかった。とっさについたウソだった。ロレンツははっきりとハントをダラスで見ていた。ハントはダラスのロレンツらが泊まったモーテルに来て、報酬の入った封筒を手渡し、約一時間にわたってスタージスと話をしていた。それは、後にロレンツが書いた自伝でも明らかにされている。 「それでは、滞在中いかなるときも、彼には会わなかったと・・・」 「ダラスではありません」 ダラスの件とハントを結びつけるのはまずい。ロレンツは何度も自分に言い聞かせた。 「知っている限りでは、彼はダラスには現れなかったということですか?」と、議長は続けざまに念を押した。 「私はフランクから彼がそこに来るだろうと聞いたのです。私はフランクを信じて・・・」 ロレンツはたじろぐばかりだった。(続く)お知らせ:他の惑星視察のため、ブログ更新をお休みします。今度は太陽系内の惑星なので、地球時間で三日ほどになる予定です。
2005.10.17
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▼「パニック1」あるいは「真っ青な世界」マウイ島では、三日月形のモロキニ島の外側にあたるバックウォール(裏の壁)のドリフトダイブ(潮の流れに乗って潜るダイビング)が面白い。三日月形の内側は湾になっており、水深も浅くなだらかだが、外側(裏側)は急激なドロップオフで豪快な地形になっている。島の真裏の辺りはほぼ垂直の崖になっており、その崖は水深200メートル以上の海底へと真っ逆さまに落ち込んでいる。それだけ深いと海底はまったく見えない。つまり、崖の壁以外は青の世界に完全に包まれるわけだ。しかし、「底なしの海」に潜るということが、ダイバーの心理に大きな影響を与えることがある。ベテランのダイバーならばなんのことはないが、体験の浅いダイバーだと、底が見えないという不安からパニックに陥ることがあるのだ。2000年1月5日のダイビングはその意味で、悲惨であった。いつものようにバックウォールに飛び込むと、そこには真っ青な世界が待ち受けていた。私はそのときまでに何度もバックウォールを潜っていたので、楽しくてしょうがなかったが、私たちのグループにはほぼ初心者のダイバーもいた。ダイビングを開始して10分ぐらい経っただろうか。壁の近くで戯れているチョウチョウウオやウチワ、カイメンなどの写真を撮っていると、ガイドが急にダイビングをストップするとの合図を出した。私たちはあっけに取られた。まだ潜行したばかりなのに、なぜ浮上しなければならないのか。するとガイドは一人の屈強なアメリカ人を指差して、彼のエアがなくなったのだ、とジェスチャーで説明した。このダイビングの場合、一人のエアがなくなれば全員がその人に合わせて、浮上することになっていたのだ。しかし、10分とはいくらなんでも短すぎる。普通水深20メートルほどのダイビングでは45分ぐらいは潜る。実際、そのアメリカ人以外のダイバーのエアはほとんど減っていなかった。ボートに上がってから理由を聞いたところ、エアがなくなったダイバーは、あまりにも海が深いのでパニック状態となり、極度に呼吸が荒くなって、あっという間にエアを消費してしまったのだという。安全停止の時間をいれても15分という、最短のダイビングであった。(続く)
2005.10.16
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オズワルドの謎2 「ということは、推論すると、オズワルドは十一月十六日の前、二週間ばかりフロリダにいて、さらに十六日から二十二日まであなたたちと一緒だったということになります。オズワルドは仕事があるとか、働かなければならないとか、言っていませんでしたか?」 「彼は失業中でした」 「どこかで働いていませんでしたか?」 「彼は失業中でした。彼はわたしたちと一緒にいたのです」 「職がなかったのですか?」 「無職です。彼はいつでも何についても多くを語りませんでした」 「ちょっと戻りますが、あなたは隠れ家で初めてオズワルドに会った。スタージス、パトリック・ヘミング、ランツ、ボッシュらもいた。そしてあなたはオペレーション40のグループとも会ったと証言した。さらにフロリダ州の小島であなたが受けた訓練の話もした。そうですね?」 「そうです」 「そのときやっていた訓練というのは、どのくらいの期間やっていたのですか?」 「併せて六一年から一年半ぐらいです」 「それでは、おそらくこういう風に聞いた方がいいでしょう。どのくらいの期間、オズワルドは訓練・演習に参加していたのですか?彼はその場にいたのですか?」 「私たちは訓練を受けていました。ときどき一ヶ月ほど、物資を求めてマイアミに戻らなければならなかったのです。私たちは行ったり来たりしました。私たちはエバーグレーズの小島で訓練を受けていました。彼(オズワルド)は私たちと一緒にキャンプにいるか、あるいは隠れ家にいました」 「すると彼は一度に一カ月もいないときがあったのですね?」 「毎日はいませんでした。私は彼を毎日は見ませんでした。時々しか見なかったのです。フランクには百人以上の部下がいました。彼が責任者だったのです」 「ダラスではジャック・ルビーがドアのところに現れたと言いましたね? あなたについて書かれた新聞記事には、ルビーのことは書かれていません。それなのに、この陳述書の証言ではルビーのことに言及していますね。先ほどあなたに提示された、この陳述書はいつ書かれたのですか?」 「この陳述書はまず、完成していません。移民局のスティーブ・ズカスの指示の下で私はそれを書きました。彼はシークレット・サービスと関係があったのです」 「いつか書かれたのですか?」 「昨年(77年)の六月か七月です。私は保護管理下にありました」(続く)
2005.10.16
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海の中で降る「雨」マウイ島での滞在が長かったので、普段なら行けないようなポイントでもダイビングをした。マウイ島から少し離れたモロカイ島東端の岬の先に浮かぶタートル・ロックという場所だ。当時滞在していたマウイ島カパルアのコンドミニアムからも見える特徴あるペアの岩で、タートル(亀)という名前の通り、丸みのある亀の甲羅のような岩と、その先に亀の頭のように見える岩が水面に突き出ている。マウイ島からボートで一時間近くかかるが、比較的波が穏やかで、かつ潮流の条件が整えば何週間かに一度、潜りに行くこともある。2000年1月3日、ちょうどタートル・ロックに行く条件がうまくそろったようだ。やや波があったが、ザトウクジラがところどころで顔を出す海を、「広がる水平線」号に乗って、一路モロカイ島へと向かった。タートル・ロックは近くで見ると、かなり大きな岩であった。荒波に長年削られながらも、威風堂々とした態で眼前にそびえ立っていた。最初のポイントに潜ってみると、海中は魚の天国のようなところだ。チョウチョウウオやハタタテなど小さな魚や、バラクーダなどが泳ぎ、ロブスターが3匹岩陰に隠れていた。遠くの方でクジラの鳴く声が聞こえる。その後ボートの上で50分休み、タートル・ロックの別の場所へ移動して潜った。この二本目のダイビングが圧巻であった。最初は、ヨスジフエダイの群れや、岩場にたたずんでいるオトヒメエビなどを観察していたのだが、ある岩場を越えたときにガイドが上を指差した。そこには、岸壁に沿って無数のミレットシードバタフライフィッシュが乱舞していたのだ。ミレットシードとはミレット(アワやキビ)の種のこと。その種のような黒い斑点が縦に並んでいるので、このように名づけられた。ハワイ固有のチョウチョウウオだ。このポイントは、その名も「フィッシュ・レイン」と呼ばれている。チョウチョウウオやハタタテが、まるで雨のように“降る”からだ。いつの間にか、私たちはチョウチョウウオたちの群れの中にいた。どこを見ても、魚ばかり。無数の星の中を宇宙遊泳でもしているような気持ちになる。ミレットシードに混じって、チョウチョウウオ科のチョウハンも泳いでいる。英語名ではラクーン・バタフライフィッシュ。目の周りがラクーン(アライグマ)のように黒くてかわいい。ここは魚種が豊富で、キンチャクダイやスズメダイの仲間も多く観察できた。大物こそ見ることはできなかったが、小さい魚の宝庫のような、印象深いダイビングスポットだった。
2005.10.15
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(これまでのあらすじ)下院ケネディ暗殺調査特別委員会で証言を続けるマリタ・ロレンツ。ケネディ暗殺事件直前に、反カストロ暗殺集団「オペレーション40」のメンバーとマイアミからダラスへ移動したことを明らかにした。リーダーのフランク・スタージスはダラスでどのような任務が待ち受けているかロレンツに明かすことはなかったが、殺人を含む「大きな仕事」をしようとしていることは明白であった。その仕事には、CIAのハワード・ハントやマフィアのジャック・ルビーも関係していた、とロレンツは証言した。オズワルドの謎1 ドッドに替わって議長の質問が始まった。議長は淡々と事実関係の確認を進めるが、オズワルドの話になった辺りから、自分たちの知っているオズワルドとロレンツの知っているオズワルドの間に微妙な違いがあることに気付く。最初はオズワルドの職業の件だ。ロレンツはオズワルドが失業中だったと主張するが、一般に知られているオズワルドはケネディ暗殺の少なくとも二週間前にはテキサス学校教科書倉庫に就職していた。 議長がロレンツに聞いた。「今度は私が質問したいと思います。オズワルドは旅の間中、グループと一緒にいたのですか?」 「はい」 「フロリダからダラスまでずっと?」 「はい」 「それで何日にダラスに着いたのですか?」 「十六日です」と、ロレンツはダラスに向けて出発した日にちと勘違いして言った。 「十六日?それでは、逆戻りしてみましょう。いつフロリダを発ったのですか?」 「十六日です」 「十六日」 「はい」 「それでは旅行には二日かかったわけですから、ダラスには十八日ごろ着いたのですか?」 「はい」 「ではいつダラスを発ったのですか、十九日ですか?ダラスには一日、一泊滞在したのですか?」 「はい、一泊です」 「それで飛行機で戻った・・・」 「マイアミへ戻りました」 「マイアミへ。するとマイアミへ戻ったのは二十日ごろですか?」 「はい」 「そして、ニューアークへ飛んだのは二十二日ですか?」 「はい」 「あなたがその日付を覚えているのは、ケネディ暗殺があった日だからですね?」 「はい」 「そのニューアーク行きの前は、何日フロリダに滞在したのですか?」 「二、三日です。私はただ戻って、娘をもらい受けたかっただけですから」 「ダラスに発つ前、フロリダでは、フランク・スタージスやオズワルドといったグループの人間とは、何回も会ったことがあったのですか?」 「ダラスに向け発つ前、私は一度フランクに会いました。それからもう一度その家で。その時に私たちは集合して出発したのです」 「発つ前に二度、彼らに会った・・・」 「一度はボッシュの家で。それから私はもう一度彼に会いました。そのとき、彼は出かける準備ができたと言ったのです」 「出発する前は、何日間あったのですか、その最初の会合は?」 「分かりません。出発の二週間前かしら」 「二週間前?」 「はい」 「その会合にはオズワルドはいたのですか?」 「最初の会合にはいました」 「それからまた会ったのですか?」 「はい」 「出発する前のどのくらいの期間でしたか?」 「隠れ家ででした。正確には分かりません。分からないのです」 「オズワルドはそうした会合にはいたのですか?」 「はい、いました」(続く)
2005.10.15
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ダラス暗殺行2 「あなたの証言によると、あなたは武器庫襲撃をまたやるのだなと思いながら、旅行をしていた」 「はい」 「その旅の間中、スタージス氏からダラス訪問の目的が一体全体何なのかという指示はなかったのですか?」 「武器庫襲撃だと思ったのは、彼が"やつらは俺たちを厳重に取り締まっていやがる"と言ったからです。私は州境の警備隊とか、移民局の役人とか、そういった類の人のことを言っているのだと思いました」 「だれがモーテルのチェックインをしたのですか?」 「フランクです」 「彼は八人全員のチェックインをしたのですか?」 「隣続きの部屋を取ったのだと思います。彼がチェックインをしているときには、一緒にいませんでしたから。彼がチェックインしたのです。手はずは彼がやりました。だれも何も話してはいけないことになっていました。電話も駄目です」 「だれが外出して、食料を買ってきたのですか?」 「フランクです」 「ダラスに着いたのは何曜日だったか、覚えていますか?週末だったのか、平日だったのか?」 「週末の夜、日曜の夜です。そこに着くのに2日かかったのですから。それにベビーシッターが娘を預かってくれていましたから」 「週末だったと?」 「はい、週末です」 「確信がありますか?」 「はい、かなり確信があります」 ロレンツは週末を挟んでいたことには自信があった。ただ日にちはよく覚えていなかった。 「マイアミに戻ることが決まったとき、だれが空港まで運転してくれたのですか?」 「フランクです」 「航空会社は何を利用しましたか?」 「正確には覚えていません。おそらく実名も使っていません」 ドッドはここで再びロレンツの弁護士クリーガーがロレンツの耳元で何かささやくのを見た。クリーガーは偽名で飛行機に乗ったことを言う必要がないと注意しただけだった。しかし、ドッドは先ほどの警告を無視されたと感じ、怒鳴るように言った。「弁護人、私は証人に質問をしているのです。あなたがそこにいる権利を尊重するのはやぶさかではないが、こうして証人に私が質問をしているのに、あなたから質問の答えをちょうだいするのはいただけませんな」 クリーガーが反論した。「私はあなたの質問に答えるようなことはしていません」 「そう、あなたは証人にどう答えるべきかを教えている」とドッドも負けてはいない。 「いいえ、違います。そんなことは全くありません」 「あなたが何を言っているか聞こえますよ。私は耳が不自由ではありませんから」 「私は彼女に何を言うべきかなどと教えていません」 「あなたの依頼人と話をしたいのなら、休憩しましょう。私は証人から答えを聞こうとしているのですから」 「それは私の望むところです」 「よろしい。それでは少し休み、休憩をとって、あなたの依頼人と話をしたいですか?」 「あなたが正当な質問をすれば、問題は生じないのです」筆者もクリーガーに同意見である。ドッドの質問はロレンツに対する不信感と悪意に満ちているように思える。 ドッドは再度、反論する。「私はその質問について心配しているのです。私は証人から質問の答えを得ようとしているのであって、あなたからではない」 「あなたは私から答えを得ることはないはずだ。私はその場所にいなかったのだから」 「では私が証人に質問している間は黙っていてもらおう」。ドッドはそう言い放つと、クリーガーを半ば無視して、今度はロレンツに向き直り、質問した。「それであなたは、航空会社名は覚えていないのですね?」 「覚えていません」 「何時頃出かけたか覚えていますか?朝でしたか?」 「昼間でした」 「昼間の便だったのですか?」 「はい」 「途中、どこか止まりましたか?直行便だったのですか?ニューオーリンズには止まりましたか?」 「直行便だったと思います。直行便です。私はどの名前を使ったか覚えていませんけど」 「実名を使わなかったのですか?」 「使ったとは思えません。というのもマイアミで私の名前が以前、報道されていたからです」 「あなたの先の証言によると、マイアミを出発したとき、あなたは将軍の弁護士のせいで自分の身の上を心配していたということですが」 「その通りです」 「当時、あなたの子供たちの身の上も心配していたのですか?」 「子供たちではなく、娘一人です」 「モニカのことですか?」 「そうです。心配していました」 「だれか、あなたが娘をどこに預けたか知っていた人はいますか?」 「いいえ。ベビーシッター以外は知りませんでした。将軍はベビーシッターのことを知っていましたが、そのときには将軍は国外でしたから」 「私の質問は当面、これで終わります、議長」 ドッドの質問が終わった。(続)
2005.10.14
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再びダラス暗殺行 武器庫襲撃の話はここでやっと終わった。ドッドの質問は次にロレンツがオズワルドらと車に乗ってマイアミからダラスに出かけたという旅行の話に再び移った。 「六三年十一月のマイアミからダラスへの旅行の話に戻らせて下さい。あなたの証言では、十一月二十二日の約二週間前にダラスに出かけたことになっています」 「違います」とロレンツはきっぱりと否定した。ロレンツは先ほど「約一週間前」と言ったのだ。ドッドはさっき何を聞いていたのか。無理解な質問を続けるドッドに対して、ロレンツはちょっとむっとした。 「二週間前ではなかったと?」 「そうです」 「それより早かったのですか、遅かったのですか?」 「十六日です。それというのも、その日が、私にお金がなくて、私がやっと見つけたベビーシッターのウィリー・メイ・テイラーが娘を預かってくれることのできた唯一の日だからです。そのベビーシッターは娘のことをかわいがってくれて助かりました」 「十一月十六日だったのですか?」 「はい、その日です」 「それがその旅行の日にちだと?」 「はい」とロレンツは答えたものの、本当は確信があったわけではなかった。多分十六日で間違いないとは思っていた。 「オーケー。あなたたちは二台の車に分乗して出かけた?」 「はい」 「そして、私が数えたところあなたたちは全部で八人だった。ノボ兄弟で二人、ペドロ・ディアス・ランツを入れて、これで三人。ヘミングで四人。スタージスで五人。オーランドもあなたたちと一緒でしたね?」 「はい」 「それで六人。オズィーが七人目で、あなたを入れて八人」 「はい」 「その旅行には八人がいた?」 「はい」 「そして、あなたの乗った車にはスタージスがいた?」 「その通りです」 「二人のノボ兄弟もあなたの車だった?」 「はい」 「それは約二日の旅程だった?」 「はい、ずっと運転してです」 「スタージスとノボ兄弟に関して、ダラス行きの目的という観点から、もうちょっと明確にしてもらえませんか?」 「それはできません。だれも何も聞いてはいけなかったのです。私たちは命令を受けました。私たちはフランクが"お前の意見は何だ?"と、聞いたときだけ、話すことができたのです。彼はその時は、何も聞きませんでした」(続く)
2005.10.13
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クジラ2(カヤックダイビング)さすがに、ダイビング中に海中で巨大なクジラに出会ったことはない。ただ、マウイ島のそばにある有名なダイビングポイントである三日月型のモロキニ島でのダイビングが終わった直後、船上で休んでいるときに五〇メートルほど離れたところを悠然と泳ぐザトウクジラを見たことはある。もう5分ほど長くダイビングしていたら、海中で目撃できたかもしれないのに、残念であった。マウイ島カパルア湾では、一風変わったダイビングも経験した。カヤックダイビングだ。波のない静かな日にしか、実施されない。1999年12月31日。その日はガイドを含めて3人であった。一人乗りカヤックにダイビングに必要な機材をセットして、ガイドについて海に漕ぎ出す。カヤックはその日が初めてであったので、ついて行くのに結構苦労した(漕ぎ方は一応、教えてくれる)。小さな湾を抜け、そのまま海岸線に沿って北上。穏やかな大海原をカヤックで進む。やがて別の小さな入り江につくと、そこにカヤックを係留して、座ったままタンクを背負い込む。フィンやマスクを装着し、レギュレーターを加えて準備完了。カヤックの座席の部分でお尻を支点にクルッと90度回転し、そのままカヤックから海中に、バックロール(ダイビングで背中から入水する方法)で滑り込むように飛び込む。その日は、波は静かだったか、海中は少しにごっていた。すぐにハナヒゲウツボに遭遇。海亀も四匹出会った。やや遠くだったがマダラトビエイも通り過ぎていった。そのときだ、クジラの声が水中に響いた。ザトウクジラだ。声のする方向を見たが、透明度がよくないので遠くは見えない。三人でしばらく、沖の方を見つめたが、声の主の姿を見ることはできなかった。既にダイビングを始めて45分ほど経過していた。私たちはダイビングを切り上げ、カヤックが係留してある場所に引き返した。カヤックへの戻り方は、それほど難しくない。まず水中で、タンクのついたBCD(ベスト状の機材)を取り外し、カヤックに載せてくくりつける。次にカヤックに手を掛け、フィンで思いっきりキックしながら浮上し、腹ばいの格好でカヤックの座席の部分に乗り上げる。ここでお尻が座席のところにくるように体を転がして仰向けになり、再びお尻を支点にしてクルッと90度回転して、元の状態に戻る。後はマスクとフィンをはずして、カヤックにくくりつければ、それでおしまい。そして、カヤックでカパルア湾に向かって大海原を漕いでいるときだった。60~70メートルほど離れた海面にザトウクジラが現われた。なんという近さ。さきほど聞いた声の主であろうか。今度は、海を伝わってクジラの息吹が聞こえてきそうだった。大きな船の上や陸上から見ているのとは明らかに異なる親近感。大自然の中で同じ海に浮かぶ生命としての一体感。私が最もクジラに近づいたと思える瞬間であった。
2005.10.12
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武器庫襲撃4 ドッドは質問した。「私は陸、海軍の倉庫の話をしているのではありません。私は武器店の倉庫の話をしているのです。あなたたちが襲撃した武器庫で、守衛や見張りを縛り上げ、動きがとれないようにしたケースもありましたか?」 「それは私の仕事ではありません」 「あなたの仕事ではないことは知っていますが、そういう場合が多かったのですか? そうしなければならなかった?」 「大抵はそうです」 「あなたたちはトラックを使ったのですか、それともいつも車だったのですか?」 「ステーション・ワゴンも使いました」 「ステーション・ワゴン?」 「フランクが一時期持っていた緑のステーション・ワゴンです」 「もう一度たずねます。その強盗に関してもっと明確な情報が得たいから、詳しい説明を求めているんです。あなたはそれらの強盗に関連した都市や町の名前、明確な日付も思い出せないんですか?」 「思い出せません。私たちは銃の運搬をやっていたのです。正確な日付を知るなんてとても無理です。私はおそらく、弁護士には正確な場所を言うことができるかもしれません。あえて場所を見つけようとしたことはなかったものですから。私はただのおとりだったのです」 「季節は覚えていませんか?春なのか、夏なのか?こうしたことで明確に覚えていることは?」 「いつでもです。武器が不足したときはいつでも。こうした銃を運搬することも私の仕事でしたから」 「何ですって?」 「盗んだ銃の運搬です」 武器の運搬はロレンツの得意とするところだった。武器は通常、船で反カストロ分子のいる拠点に運ばれた。ロレンツは船長である父親から船の操船技術を習っていたため、部隊のだれよりも航海術がうまかった。グアテマラやバハマに運んだこともあった。運搬に使う船は部隊が盗んで調達、武器を運搬しやすいように船を改造し、形や色を変えて使用した。何回か使った後は沈めて証拠を隠したりもした。 「すみませんが、よく聞こえません。運搬があなたの仕事ですって?」 「武器を船に乗せたり、箱から出したり、ケースに入れた上で何が入っているか印を付けたりしました。武器は別々のケースに入れられ、船に保管されました。それが主に私の仕事だったのです。私は船かボートに武器を詰め込み、ある時点で目的地に運ぶ仕事をしていたのです」 「ボートはどこに停泊させていたのですか?」 「マイアミ川、フロリダ州の小島、マラソン、名前もない小島とかです」(続く)
2005.10.12
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クジラ(1)海でクジラを最初に見たのは、米国ボストンで暮らしていた1997年5月、ホエール・ウォッチングのツアーに参加したときだった。ボストン港から高速艇で約一時間半、コッド岬の沖にザトウクジラやセミクジラが集まる世界でも有数のポイント(ステルワーゲンバンク)があるのだ。周囲の深海から湧き上がる栄養分に富んだ深海水がプランクトンを発生させ、そのプランクトンを追って群泳性の小魚が集まる。ザトウクジラやセミクジラにとっては格好の採餌場となっている。ボストンの5月はまだまだ寒い。海上だとなおさらだ。冷たい風が吹きすさぶ中、甲板に上がって海を見つめた。そのとき、甲板に出ていた観光客の一団から歓声が上がった。その人たちが見ている方向を見ると、巨大なザトウクジラの尻尾(尾ビレ)が海中に没するところであった。すると、別の観光客の一団からも歓声が上がる。そちらの方向では、ザトウクジラがコブ状の背びれを海面に現していた。それからはもう、あちらこちらでクジラが海面から姿を現しては、やがて尾ビレを見せながら海中に潜っていくシーンが繰り広げられた。全部で20頭ぐらいいただろうか。重複してカウントしている可能性があるので、個体が何頭いたかはわからない。もっとも、この海域のクジラを研究している海洋生物学者であれば、個体数を正確に言い当てることができただろう。固体を識別する場合、彼らは尾ビレに着目する。尾ビレ裏側の黒と白の模様は、人間の指紋のように、一頭一頭それぞれ異なる。ロッキングチェアーの模様があるため「ロッカー」と名づけられたクジラなど、名前を持った人気者もいる。私はその後、1999年から2001年にかけて、ハワイ諸島マウイ島で何度もザトウクジラを見た。12月ごろから3月ごろまでの間、繁殖と子育てのため、この太平洋の真ん中にあるハワイ諸島に大挙してやってくるのだ。その数は、北太平洋に生息するザトウクジラの3分の2に当たる4000頭ほどであるとみられている。ハワイ諸島では、とくにザトウクジラが集中するマウイ島、モロカイ島、ラナイ島に囲まれた海域は、ザトウクジラのための海洋サンクチュアリに指定されている。この海域ではいかなる方法でも、こちら側からクジラの100ヤード(約90メートル)以内への接近が禁じられている(ただし、向こうからこちらにやってくる場合は、このかぎりではない)。マウイ島でこの時期、ダイビングをすると、ボートでポイントに行くまでにクジラに遭遇しないで目的地に到達するのが難しいほどだ。ボートはクジラを避けながら航行しなければない。当時、私が滞在していたマウイ島のコンドミニアムは二階建てで、二階にベッドルームがあり、モロカイ島や海が一望できた。そのベッドルームのベッドからも、ザトウクジラが潮を吹いて浮かび上がり、泳ぎ去るのを見たことがある。双眼鏡なしでも見える、海岸から100メートルも離れていない距離であった。マウイ島ではそれほど、クジラが身近に出現するのだ。(続く)
2005.10.11
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武器庫襲撃3 「いつもマイアミから出かけたのですか?」 「大抵はそうです」 「アラバマ州に出かけたときは、昼間運転し、夜になるのを待ったということですか?」 「夜になるまで待ちました」 「それでもアラバマ州のどこにいたのか、分からないのですか? ノース・カロライナ州でもどこにいたのか、分からない?」 「分かりません」 何とくどい質問だろう。そんな十六、七年前の話をどうして克明に覚えているはずがあろうか。武器庫襲撃など日常茶飯事だった。スタージスがすべて計画を練り、ロレンツらはそれに従うだけだった。場所がどこだかは問題ではなかったのだ。もちろんドッドの思惑は明白だ。ロレンツ発言の信憑性を探るために、ロレンツの発言内容が実際の起きた武器庫襲撃事件と一致するかどうかを確かめたかったのである。ただし、当時の記録が残っているか、あるいは盗まれても報告されているかどうかは別問題だ。 ドッドは質問を続けた。「マイアミからノース・カロライナまで運転するとどれだけかかったのですか?」 「一日ぐらい、ハイウェーを飛ばして。二日かも」 「それでも、どこにいたか分からないのですか?」 「正確にどこだったか分かりません」 「フロリダはどうですか?」 「フロリダに行きました」 「フロリダのどこでしたか?」 「正確には分かりません」 「ほかの州は?」 「ジョージア、サウス・カロライナ」 「ジョージアとサウス・カロライナ?」 「はい」 「それで、あなたの答えはいつも同じなのですね。どこにいたのか分からない?」 「私は自分の言われた役目をやっただけです。武器を積み込むことです。それに大昔のことですから。正確な位置は分かりません。フランクだったら答えられるでしょう」 そのとき、ロレンツの弁護士クリーガーがロレンツの耳元で話しかけるのを目ざとく見つけたドッドは、クリーガーにすかさずこう言った。「ちょっと待って下さい。あなたが答えたいのなら、答えることができます。証人と話したいのなら、それもできるでしょう。小休止を取りなさい。しかし、私は証人自身から話を聞きたいのです」 クリーガーはロレンツから少し遠ざかるようにし、姿勢を正した。クリーガーは昔の話なので覚えていないと言うようロレンツに忠告したかっただけだった。 ロレンツは答えた。「大昔の話です。正確にはわかりません。道中どこかで、私たちは陸、海軍倉庫を襲ったのです。フランクが椅子を投げ、後ろの窓を壊しました。そして車に詰め込めるだけ積み込んだのです。それでマイアミに戻りました。私たちは寝ないで待つのが常でした」(続く)
2005.10.11
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武器庫襲撃2 「ロレンツさん、これから二、三分、あなたの思い出せる範囲でそうした武器の強奪について、答えていただきたいのです。あなたは十回ほど、そうした強奪をやったと言いましたね?」 「もっとかもしれません」 「もっと?」 「分かりません」 「一体いつ頃だったか、何年のことだか分かりますか?」 「六〇年、六一年」 「六〇年、六一年?」 「はい」 「すべてがその時期に起きたのですか?」 「ピッグズ湾事件の前です。武器の供給が足りなくなると、陸、海軍の倉庫とかを襲いました。私たちのグループは急速に拡大していたのです」 「少しだけ、ここで武器庫襲撃についてのみ、質問していきたいのですが。武器庫を襲撃した具体的なケースを挙げてもらえませんか?」 「どこでやったか、それに全部ですか?」 「そうです」 「正確にはどこだか分かりません。ずっと昔のことですから。フェンスで覆われていました。それに・・・」 「では、ノース・カロライナ州の件にしましょう。ノース・カロライナのどの辺ですか?」 「どこだかは分かりません。フランクがこういったことをすべて知っていました。彼が運転して私たちを連れて行ったのです。それに夜でした」 「ノース・カロライナ州で夜であったこと以外に何も思い出せないのですか?」 「夜でした。私は武器を車に積み込む手伝いをしました。すべて夜のことです」 「ノース・カロライナ州ではどれだけの武器を盗んだのですか?」 「何箱もです。箱の中にいくつ入っていたのか覚えていません」 「何箱ですか?」 「十箱」 「十箱?」 「大体そんなところです。車に載せられるだけの数です」 「アラバマ州はどうですか?」 「同じことです。車に積み込めるだけ積み込みました。後ろの席全部と、床とトランクに」 「同じことと言うと、どこだかは分からないのですか?」 「正確にどこかは分かりません」 「大体でいいのですが?たとえば、モービルのそばだとか?」 「分かりません。いつも夜でしたから。それにそれはフランクの仕事です。彼が知っていたのです。彼ならそうした場所を正確に示すことができました」(続く)
2005.10.10
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武器庫襲撃とドッドの愚問 スタージスが暗殺に関与していたのか、というトリプレットのせっかくの面白い質問がここでドッドからの質問で遮られてしまった。これこそが今回のロレンツ証言のクライマックスといってよかったにもかかわらずだ。このトリプレットの質問は後に再び繰り返されることはなかった。 質問を替わったドッドは、ケネディ暗殺事件とはあまり関係のない武器庫襲撃に固執しており、質問の内容もロレンツに対して攻撃的だ。おそらくドッドは最初からロレンツのことを信用していなかったと推測される。別に疑り深いことは問題ないが、あまりにも挑戦的なのでロレンツが怒り出す場面もある。このドッドの態度は最後まで変わることはなかった。 議長がドッドに質問するよう促した。 ドッドは「ありがとう、議長」と言って、質問を始めた。 「ロレンツさん。あなたは過去に何回か、武器庫の襲撃を手伝ったことがあると言いましたね?」 「はい」 「そして、あなたの役割はおとりであると?」 「はい」 「襲撃の際のあなたの役割について、少し簡潔に教えてもらえませんか? どんなことをやったのですか?」 「みんな黒ずくめで車に乗り込むんです。私はいつも助手席に座るんです。だれかそばを通ったら、私がボーイフレンドとデートしているように見えるようにです。黒い服を着た二人が外に出て、見張り番に気を付けながら、武器庫に忍び込み、武器を盗んでくるのです。私たちはだれか近付いて来る人の注意をそらしたり、シグナルを送って、警戒を促したりしていました。武器を積み込むために後ろにもう一台車を用意していました。私はただそこにいて、だれか来たら、フランクや彼のグループからその人の注意をそらす役目をしていました」 「基本的に、いつも同じグループと行動していたのですか?」 「はい」 「同じ人間、一つのチームとして同じメンバーでしたか?」 「はい」 「あなたがグループとかかわっていた間、何回、武器庫から武器を強奪しようとしたのですか?」 「何回か正確に覚えていません」 「五回?」 「何ですって?」 「五回、十回、二十回、五十回?」 「いいえ。十回か、十回以上」 「それらは基本的に同じ地域でやったのですか?すべてフロリダ州でしたか?」 「いいえ。ノース・カロライナ州、サウス・カロライナ州、アラバマ州、ルイジアナ州も」(続く)
2005.10.09
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イルカ船の上からイルカを見たことは何度もあるが、ダイビング中にイルカに遭遇するケースはなかなかない。1999年11月、ハワイ諸島・ラナイ島付近でダイビングしているときに、イルカの鳴き声を水中で聞いたのが最初のチャンスだった。しかし、皆で周りを探したが、声はすれども姿は見えなかった。それから1年半後の2001年4月。モルジブ・バア環礁にある「ムサフシ・ドロップオフ」でダイビング中、初めて海中でイルカを目撃した。小さな島の壁に沿って50分ほど潜り、水深5メートルの海中で安全停止(減圧症の予防のため、浮上前に水深5メートル位のところで3~5分停止し、体内に溶け込んだ窒素を排出してからエキジットすること)をしているときだった。何気に沖の方を見ると、ちょうど私たちと同じ水深のところに巨大な物体が浮かんでいるのが視界に入ってきた。イルカだ。見た瞬間、結構大きく見えたので、最初は小型のクジラかと思ったほどだった。全部で5頭、私たちを横目で見て、くねくねと泳ぎながら沖の彼方へ消えた。ちょっと距離があったので顔の形はよくわからなかったが、私にはコビレゴンドウに見えた。だがガイドは、ハシナガイルカではないかと言っていた。ハシナガにしてはちょっと大きいなという感じがした。次にイルカを海中で見たのは、2002年12月のタヒチ・ツアモツ諸島のランギロアだ。ランギロアのダイビングは豪快で、パスを流れる強烈な潮の流れに乗ってジェットコースターのようにドリフトする。海中で流れに乗る際は、ガイドから離れたところにいると別の流れに乗ってあらぬ方角へ流されてしまうから、ガイドから半径5メートル以内の場所に集まらなくてはならない。ガイドの合図で、皆がいっせいにパスの流れに身を投じるわけだ。流れに身を任せたら、もうどうすることもできない。じたばたしても流れには逆らえないので、ひたすら流される。しかも、かなりのスピードだ。イルカはその移動中に現われた。私が遠くを見ていると、後方からいきなり私の頭上1メートルぐらいのところを跳び越して前方にハンドウイルカが出現した。ハンドウイルカは、水族館や映画などでもっとも頻繁に親しまれてきたイルカである。さらに2頭のハンドウイルカが私の足元から前方に現われ、計3頭になった。このような激しい流れであっても、3頭はまったく意に介さないようであった。流されて遠ざかる私たちを尻目に、3頭はパスを自由自在に泳いでいた。その二日後、今度はパスのそばにある珊瑚の棚の上でダイビングをしていると、再び3頭のハンドウイルカが現われた。私たちのすぐそばまで来て、これ見よがしに水中を駆け巡る。スピンしながら垂直に上昇したり、猛スピードで回転してみせたりする。彼らのショータイムだ。明らかに私たちを意識して遊んでいるようだった。3頭は一通りの芸を私たちに見せると、そのまま猛スピードで泳ぎ去った。少しせわしないイルカたちであった。
2005.10.08
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暗殺旅行6 「結局、家に帰れたのですか?」 「はい。フランク(スタージス)が私を家に送り返しました。フランクはこう言いました。“俺は判断を誤った。やつらは女が関係するのをいやがっている” 私はこう言いました。“どういうことよ? 私は以前もこれと同じように働いたわ” フランクはこう言いました。“今回のは特別だ。お前は戻れ” 私はこう言いました。“でも、私ははるばるやって来たのよ。アレックス(ローク)はどこ?” フランクはこう言いました。“気にするな。彼は忙しいんだ” 私はこう言いました。“アレックスと話をしたい。アレックスはどこ?” フランクはこう言いました。“アレックスは死んだ” 私は“何ですって?”と聞き返しました。 フランクは繰り返しこう言いました。“アレックスは死んだ” ああ、何て言うことでしょう。もうアレックスを見つけることはできなかったのです」 ロレンツはアレックス・ロークが死んだと知らされたときの衝撃と悲しみを思い出していた。ロークは、苦しいときはいつもロレンツの心の支えだった。カストロ暗殺計画に携わったとき、本当にロレンツの身を案じてくれたのもロークだった。暗殺集団とのかかわりの中で唯一ロークだけが、ロレンツのことを人間性の観点から忠告してくれたのだ。ほかの連中は、非情な殺しのプロだった。仕事をするに当たって人間性のひとかけらも見せないような連中ばかりだった。ロレンツは当時、自分の苦境を脱出するためスタージスに自分の保護を求めると同時に、ロークにも助けを求めようとしていた。そのロークは死んでしまった。ロークの死には、ロークのことを快く思っていなかったスタージスが絡んでいたと、ロレンツは後に知らされる。ロークは「始末」されたのだ。 「フランクはアレックスが死んだのをどうやって知ったのか説明しましたか?」 「いいえ。彼はただ、慌ててそう言い切ると、私に黙るように言ったのです」 「ほかにだれか、あなたがその場所にいるべきではないという事実を伝えた人はいましたか?」 「いいえ。フランクがボスでしたから。私たちはフランクの言うことを聞きました。というより聞かなければならなかったのです」 「それであなたはその場を離れた?」 「はい」 「どうやってその場を離れたのですか?」 「私は飛行機でマイアミに戻り、娘を引き取りました」 「それはいつだったか覚えていますか?」 「十一月の十九日か二十日だと思います」 「一九六三年の?」 「そうです」 「どれだけマイアミには滞在したのですか?」 「二、三日か、一泊だけです。私はベビーシッターのウィリー・メイ・テイラーのところへ娘を引き取りに行かねばなりませんでした」 「六三年の十一月二十二日はどこにいたのですか?」 「私は娘とイースタン航空の飛行機の中にいました。マイアミから、当時は大した空港ではありませんでしたが、現在のケネディ空港(ニューヨーク)に向かっていました。飛行機はニューアーク空港へと航路を変更しました。というのも、副操縦士が出てきて、こう言ったのです。“みなさん、大統領が撃たれました”」 「後にフランク・スタージスと、このことについて話をしましたか?」 「はい」 「それはいつでしたか?」 「七六年か七七年に」 「彼は暗殺に何らかの形でかかわっていたことを認めましたか?」 ここで議長が口を挟んだ。「トリプレットさん。先に進む前に、委員会の他のメンバーに質問があるようです」 「どうぞ質問をさせてあげて下さい。議長」とトリプレットは答えた。(続く)
2005.10.08
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マンタタヒチ(正式名:フランス領ポリネシア)には、環礁でできた118ほどの島々がある。ダイバーがよく訪れるのは、ソシエテ諸島のボラボラ、モーレア、ツアモツ諸島のランギロア、マニヒ、ティケハウなどだ。前回紹介したモーレアはサメだらけ。合計12本潜ったが、レモンシャークをはじめとするサメ以外に印象に残っているのは、ドクウツボやウミガメ、クマノミぐらい。マンタも時々現われるようだが、タヒチでマンタ狙いなら、これまではボラボラだった。だがボラボラでは、近年のホテル乱立で騒音が増えたせいか、あるいは潮の流れが変わってしまったせいか、ここ半年以上、必ずと言っていいほど現われたポイント(アナウ・リーフ)に、マンタが近寄らなくなってしまった(マンタポイントのそばにホテルが立て続けにできたせいではないかと言われている)。一年前までは、このポイントに潜れば10枚ぐらい見ることも可能だったが、今ではほとんど出なくなったので、現在はどのショップも行かなくなった。ボラボラは以前も、ホテル建設で流出した土砂でトオプアのそばのダイビングポイントを一つ失っている。ボラボラはいわば、タヒチ島のように一大観光地になろうとしているようだ。タヒチ観光局はこれでいいと思っているようだが、よき自然は失われ、私たちのようなリピーターも失うことになる。マニヒやランギロアでもマンタは見ることはできる。12月のマニヒでは一回潜ると1,2枚現われた。マニヒのダイビングの醍醐味は、「パス」といって環礁の中と外洋を結ぶ海の通路のようなところで流れに乗って泳いだり、海底を横切ったりして楽しむことだ。流れは時間によって外洋に向かって流れたり、環礁の中に向かって流れたりする。そのパスを、海底をはって横切るダイビングをやっているとき、全長1・5メートルぐらいの子供のマンタが私たちに向かってやってきた。とにかく流れがきついので、私たちは岩にへばりついて流されないようにするのがやっと。マンタは私のすぐそばにいたダイバーの頭上までやってきた。そのダイバーが手を伸ばせば届くような距離だ。明らかにそのマンタは、私たちに興味をもち私たちを観察していた。強い流れに四苦八苦している私たちを横目に、しばらくそのダイバーの上でホバリングをしていた(アナログの銀塩では写真を撮っているので、いつかデジタルに変換して公開します。私が使っていたのはニコノスV)。きっと、こんな流れぐらいで泳げなくなる私たちが哀れに思えたにちがいない。マンタは私たちを置き去りにして、私たちにとっては泳ぐのが不可能な強烈な流れに逆らって、悠々と泳ぎ去ったのだった。
2005.10.07
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暗殺旅行5 「だれが来たのです?」 「中年のずんぐりした男です。白い靴下に、黒っぽいジャケットとズボンをはいていました。彼は丸ぽちゃでした」 「その後、その男がだれであるか知る機会がありましたか?」 「はい。後に私はテレビでその男を見ました」 「だれだったんですか?」 「ジャック・ルビーです」 だれがあの男を見間違えることがあろうか。一目見ただけでちんぴらと分かるような派手な出で立ち。帽子をかぶり、中肉中背というより幾分太ったその中年男は、後にオズワルドを射殺するジャック・ルビーにほかならなかった。 「確かにジャック・ルビーがドアのところまで来たのですね?」 「はい」 「だれが彼と話したのですか?」 「フランク(スタージス)です」 「その会話を耳にしましたか?」 「いいえ。でもその男はフランクに“あの女は一体全体何者だ?”と聞いていました」 「フランク・スタージスは何と答えたのですか?」 「“まあ、いいじゃないか”とか、そういう感じのことを言いました。私は私で“やつは何者よ?”と聞き返しました。こんな風に出会ったのです。それはそれで終わり、フランクはその男にもうしゃべるなと言いました」 「あなたがジャック・ルビーだと認めた男は何か運んできたのですか?」 「いいえ。彼はフランクに会いに来たのです。中で話そうとしませんでした。彼は玄関口のところに立っていて、その後立ち去りました。砂利道を歩く彼らの足音が聞こえました」 「どれだけ長い時間、彼らは話していたのですか?」 「十五分とか、二十分」 「その間中、モーテルでオズィーは何をしていたのですか?」 「何も。服の入った、バズーカ砲が入るほど大きな鞄からものを出していました」 「彼は何か武器の性能をチェックしたりしていましたか?」 「いいえ」 「彼はあなたの前で何か言いましたか?」 「彼は私にサンドイッチを渡してくれました。マヨネーズなしの、あれやこれや。彼は航空会社のバッグから服を取り出していました」 「そうした男たちとモーテルに滞在している間中、あなたは、だれかがそこでの目的について話しているのを聞きましたか?」 「いいえ。私はその時はまだ、武器庫を襲撃するのだと思っていましたから。特にやりたくはなかったのですが、参加するのだと思っていました。本当は娘に会いたかったし、家に帰りたかった」(続く)
2005.10.07
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暗殺旅行4 「あなた自身は、どれだけそのモーテルに泊まったのですか?」 「よく覚えていません。一泊かも。私は邪魔者扱いでした。そう感じたのです。エバーグレイズで寝袋の中で寝るのとは訳が違いました。私たちはホテルの部屋にいて、私だけが女性でした。一部屋には、二人の男が寝ることができるベッドが二つあっただけです。彼らも居心地は良くなかったし、私もどちらかというと居心地が悪かったんです。それで彼に言いました。“一体どうなっているの?”と」 「だれに言ったのですか?」 「フランク(スタージス)です。私は以前にもおとりとして使われたり、参加したりしていました。私はおとりとして武器庫を襲撃する際、大いにフランクの役に立ったのです。私はいつもおとりでした。その時も私の役目はおとりだと思っていたのです。だから“一体どうなっているの?”と聞いたのです」ロレンツの自伝には、武器庫襲撃の際、ロレンツは守衛や見回り兵の注意を惹き付ける「おとり」の役をやっていたと書かれている。 「その時のフランクの説明は何だったのですか?」 「彼は聞かれる度に、“後で教えてやる”と答えるだけでした。彼はせわしなく動き回っていました。彼は何本か電話をしたり、食料の買い出しに行ったりしなければなりませんでした。フランク以外は外に出かけませんでした」 「あなたはほかのだれかと話をしなかったのですか?」 「私は部屋の中のだれとでも気さくに話をしました」 「ヘミングは何と言っていたのですか?」 「彼は自分だけのベッドが欲しいと言っていました。彼は太っていましたから」 「彼は、ほかに問題がありましたか?」 「彼はお腹をすかし、疲れていました。といっても、みんな大変疲れていましたけれど」 「彼はそのときやろうとしていた作戦について何かしゃべりませんでしたか?」 「いいえ」 「ペドロ・ディアス・ランツはどうですか。彼は何か話しましたか?」 「彼は別の部屋にいました」 「ドアは開いていたわけですから、部屋を行ったり来たりしなかったのですか?」 「私は同じ部屋にずっといました。私は部屋の床に座り込み、サンドイッチをつくったりしていました」 「ノボ兄弟はどうですか。彼らは何と言っていたのです?」 「彼らはペドロと同じ部屋でした」 「彼らがこちらの部屋に来て話すことはなかったのですか?」 「ありませんでした。彼らはいつもフランクと話すときは、外でこっそりと話していましたから。だから私はのけ者だと感じたのです」 「三、四丁のライフルの件ですが、それらはみんな、あなたがいた部屋に置いてあったのですか?」 「はい、私がいた部屋にありました」 「あなたの知っている限りでは、別の部屋には武器はなかったのですか?」 「分かりません。ちょっと盗み見したことはありましたが、ベッドとベッドの間には何も見えませんでした」 「別の部屋には何も見なかったと?」 「分かりません。だってダブルベッドとベッドの間に隠してしまうから」 「オーランド・ボッシュはどうでしたか。あなたはそのとき、彼と何か話をしましたか?」 「私が昔撃たれたとき、安っぽい手術をしてくれたわね、ぐらいのことは彼に言いました」 「その程度の話しかしなかったのですか?」 「なに気ない会話ばかりでした。私は多かれ少なかれ待機させられていましたから。私は何かするよう言われるのを待つのに慣れていました。私たちは疲れることのないよう普段着の服を着るよう言われました。電話も、新聞も禁止です。私はただ自分の番が来るのを待ったのです。結果は待っていれば来るということです。フランクは“待て、ただ待て”と言っていました。私は待ちました。そのとき、だれかがドアのところにやって来たのです。私はその時、床の上でサンドイッチをつくっていました」(続く)
2005.10.06
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レモンシャーク私のダイビング暦は122本。そのうち沖縄・与那国で6本潜った以外はすべて海外での体験だ。オーストラリアのケアンズから始まって、バリ島、サイパン、テニアンと潜り、カリブ海へ移ってケイマン、タークス&カイコウズ、コロンブス島、メキシコのカンクン、コズメルへと足を運んだ。そして1999年4月にフレンチポリネシアのタヒチ・モーレア島へ。潜って驚いたのは、サメがうようよいること。一回のダイビングで20~30匹程度のサメに出会う。そのほとんどがリーフシャークのブラックチップやホワイトチップで、グレーシャークなども見受けられた。これらのサメはせいぜい大きくても2メートルだが、タヒチの海では時々、その倍の4メートルはあるレモンシャークに出会うこともある。最初に遭遇したときは、かなりの衝撃を受けた。当時私はクラブメッドのダイビング(安いパッケージがあり、12本でなんと約1万3000円=普通なら2本分の料金に相当)を頻繁に利用していたが、バディダイブといってインストラクターなしの二人一組で勝手に潜るのが基本であった。その日は中国系アメリカ人のジムと一緒に潜った。潜行すると、かなり流れがきつい。ドリフトダイブではないので、最初は流れに逆らって進むのが基本だが、どんなに先に泳ごうとしても、戻されてしまう。初心者のダイバーたちは流されてしまうので、船のロープに捕まって、海中で鈴生りとなっている。私たちは仕方なく、海底の岩をつかみながら、流れが一瞬弱まるのを待ちながらほふく前進。ようやく数十メートル前に進んだときに、今来た船の方を振り向くと、そこには巨大な一匹のサメが流れなどものともせず、海底付近を悠々と泳いでいた。周りのリーフシャークが子供に見えてしまうような堂々とした風貌。まさにタヒチの海の王のようであった。やがてもう二匹のレモンシャークが加わって、私たちの周りをぐるぐると泳ぎはじめた。絶体絶命か! だが大丈夫。レモンシャークはそれほど凶暴なサメではない。最初はまっすぐに人間に向かって来ても、向こうの方から進路を変える。当時、妊娠したレモンシャークがいたが、「レオーネちゃん」と呼ばれていた。もちろん野生の動物だから、人間に慣れているわけではない。私たちの様子を見ながら、エサではないことがわかると、再び強烈な流れなど気にせずに、巨体をくねらせながら泳ぎ去っていった。
2005.10.05
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「カストロが愛した女スパイ」を再開します。ロレンツ証言のハイライトとも言える「ダラスへの暗殺旅行」の詳細について語っています。(前回までのあらすじ)ケネディ暗殺調査委員会の質疑の中心は、ケネディ暗殺事件前に反カストロのキューバ人らのグループが開いた秘密の会合に移った。たまたまその秘密会合に居合わせたロレンツは、スタージスの策略で暗殺集団オペレーション40のメンバーとともにテキサス州ダラスに向かい、ダラス近郊のモーテルに宿泊した。ケネディ暗殺事件の数日前のことだった。何か「大きな仕事」を暗殺集団がやろうとしていたのは、明白だった。暗殺旅行3 「フランクはあなたたちに何故新聞を読んではいけないか説明しましたか?」 「いいえ。私は“一体全体、この秘密主義は何なの?”と聞きました。答えは同じでした。フランクは“黙っていろ”と言うだけです。私たちは従うだけでした」 ロレンツは今でもその一種異様な雰囲気を思い出す。このダラスでの仕事に関しては、仲間の間で冗談が全く通じないような、何か重苦しい雰囲気が支配していた。ロレンツはスタージスに「今回の仕事は何でそう特別なの?」と聞いたことがあった。スタージスはただ「気にするな。座って次の命令を待て」としか答えなかった。そこでロレンツは冗談めかして「一体だれを殺すのよ?」と聞いたら、皆が黙り込み、その場に張り詰めた気が充満したこともあった。皆の神経に障ったのは明らかだった。スタージスが「黙れ、ロレンツ」と普段よりも厳しくロレンツをたしなめたことも鮮明に覚えていた。 「部屋の中で、何か武器を見ましたか?」とトリプレットが質問した。 「一度、車のトランクを開け、ライフルを部屋に持ち込みました」 「だれが持ち込んだのですか?」 「フランクとオーランドです。私は、“何故ライフルを持ち込むの?”と聞きました。ライフルは緑の防水紙にくるまれていました。その上に毛布が巻かれていました。ライフルはベッドと望遠鏡の間に置かれました」 「ライフルは何丁ありましたか?」 「三、四丁です」 「どんな種類のライフルですか?」 「自動式のやつです」 「もっと具体的に描写できませんか?」 「いいえ。何故なら包まれていましたから。みんなライフルに躓きました。私は素早くライフルを見ました。自動式のライフルで別の毛布には望遠鏡がくるまれていました」 「望遠鏡はライフルとは分けられていたのですね?」 「はい」 「どんな種類の望遠鏡でしたか?」 「ライフルに取り付けることができるやつです」 「私が質問したのは商標の意味です」 「商標は見ませんでした」 「あなたはエバーグレイズ(フロリダ州南部の大沼沢地)で、あらゆる種類の武器の訓練を受けたと言いましたね」 「M-1、三八口径、四五口径」 「それらはM-1ではなかったですか?」 「明確には言えません。そうかもしれませんが、確信はありません。見慣れたタイプでした。もし、違うのだったら・・・」 「つり帯はついていましたか?」 「つり帯?」 「そうです。銃をつる革帯です」 「いいえ、ありませんでした。訓練でつかったようなタイプではなかったです」 「だれかこれらのライフルの手入れをしなかったのですか」 「しませんでした。彼らはただ、ベッドの間に隠したままにしていました」 「だれかそのライフルを取り出し、打ち金を起こし、引き金を引き、試し撃ったりしなかったのですか?」 「しませんでした。そこに置いてあっただけです。歩くのに邪魔にならないよう脇の方へ押しやられていまし」。(続く)
2005.10.05
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ただの秋休みでしたが、命の洗濯(心のメンテナンス)のため「別の惑星」を視察して、無事帰還しました。その惑星には水も空気も豊富にあります。空と海がきれいですね。この惑星の住人はボートをよく使うようです。椰子の木のような植物が育っています。かやぶき屋根の家がありますね。一体どんな生物が棲んでいるのでしょう。ちょっと海の中に潜ってみましょう。真っ先にやってきたのがベラのような魚。この惑星に棲む水生生物はパンを食べます。パンに群がってきます。ハタタテとチョウチョウウオに似ていますね。こ、これは宇宙人? ではなくて、アカエイですね。海から出ると鳥がいます。雨も降ります。雨宿りをする鳥さん。空気で体を膨らませ暖をとっています。ヒヨコのようなのも歩いていますよ。ちゃんと親が子を見守っていました。ヒヨコは二羽いましたね。猫のような動物もいます。あれっ? どこかで見たような・・・。犬のような動物も。というか、どう見てもワンちゃんですね。この惑星の住人?花も咲いています。花は、この惑星ではティアラと呼ばれています。そろそろ日が暮れてきました。カヌーを漕いでいますね。この惑星の夕日が沈んでいくところをご覧下さい。古き良き時代の地球の夕日と似ていますね。とうとう完全に太陽は海の彼方に沈んでしまいました。太陽が沈み、暗闇があたりを支配します。そして、夜になるとやってくる生物もいます。マンタですね。この惑星で最も高貴な生き物です。目が何とも言えずにかわいいですね。夜間、桟橋の光に集まるプランクトンを食べているところです。ぐるんぐるん回ります。さて、このような楽園のような惑星にも、地球と同様に深刻な問題があります。エネルギーを、限りある化石燃料や原子力のような惑星環境を破壊しかねない力に頼っているため、利権争いによるいさかいが絶えません。皆が皆、自分や自国の利益だけを追い求めて、惑星全体の環境のことなど構っていないのです。なぜか地球に似ていますね。とにかく金儲けに一生懸命で、環境はどんどん破壊されていきます。たくさん生息していた神聖なマンタも、人間の私欲にあきれ果て、多くはより深い海へと逃げてしまいました。当然の結果として、この惑星では温暖化も進んでいます。サイクロンのような猛烈な気象現象も多発するようになりました。季節外れの高波、それも10メートルを超す高波のせいで、私もこの惑星の滞在期間を短縮せざるをえなくなったのです。異常気象は、惑星自体からの警告なのかもしれませんね。雲の切れ間から海面に向けて光の柱が立っていますね。この惑星には、まだ希望があることの象徴でしょうか。想像してみてください。
2005.10.04
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