迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2025.06.09
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カテゴリ: 浮世見聞記
埼玉縣美里町の、日光山安光寺を訪ねる。

忘年忘月、この寺の境内と覺しき場所で生人形の見世物が行なはれた様子の資料を手に入れ、



以来どのやうな寺院なのかいつか訪ねてみたいと考へてゐたところ、ふとしたきっかけでその機會を得る。

JR八高線を松久驛で下車し、廢田が多く廣がるなかを歩いて關越自動車道のガードをくぐり抜けた先の丘を上ると、正面に簡素な山門が現れ、



その向かふに蜘蛛の巣の張った、明らかに無住とわかる本堂あり。

その左手に伸びる石段の上に見えるお堂が、私が同じく入手した資料にある“大黒天本堂”、



こちらも普段は人の手が入ってゐる様子には見えない。



右手には棟続きの鐘楼があり、なかを覗くと江戸中期の元文年間に鋳造と云ふ、それゆゑに第二次大戰中の金属供出も辛うじて免れた因縁をもつ梵鐘が吊るされ、



無住を幸ひ一つ輕く打ってみてから石段を下りかけて、寺域を示すやうな塀もなにもない野放図とも映る境内を見渡し、





が、歴史はなかなか古く、延暦年間に大蛇を退治してその尾をこの地に埋めた坂上田村麻呂を開基とし、その後は荒廃したが江戸中期に黄檗宗の僧翠岩が中興させたと伝はるが、今またかつての姿に戻りかねない風情に、佛の庭を守るのは佛自身ではない冷厳な現實を見て、目の前の蜘蛛の巣は見えずに顔にひっ付いたそれを拂ふも苦々しけれ。





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最終更新日  2025.06.09 20:52:25
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