迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2025.07.02
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カテゴリ: 浮世見聞記




晩年に目が不自由になった瀧澤馬琴(曲亭馬琴)が、長年執筆を續けてきた「南総里見八犬傳」を、先立った息子の嫁に口述筆記させて完成を見るまでの葛藤の軌跡
──



を、瀧澤馬琴と嫁お路の二人芝居で劇的に見せていくのかと思ったが、前半は舌の病ひと下し腹に苦しむ病弱で嫉妬深い息子、何かとヒステリックな老妻、そして禮儀作法すら知らぬポヤっと陽氣な田舎娘じみた嫁と云ふ、「役に立たない」家族に振り回される馬琴の苦悩絶えぬ家庭状況を、やけに暗転を繰り返して見せ續けるばかりで話しに進展性がなく、後半になっていよいよ目が利かなくなった馬琴に、嫁お路が覺悟の代筆を申し出る場面でやうやく芝居らしいヤマ場となるが、結局そこでおしまい。



そんな「南総里見八犬傳亅の完成後に義父馬琴から“滝沢琴童”の雅號を貰ふに至る嫁のお路は、前半で「トンイ」を上越す天然ばりな健氣さを見せる演技が光り過ぎて、夫との口論に一歩も退かぬ氣の強さや、一度は無斷で實家へ帰る嫁の辛い心情といった、もうひとつの面が見えにくい。

また扮装も前半は日本髪の鬘をのせてゐたのが、後半にはなぜか洋髪じみた地頭で登場し、その姿が水商賣のオンナのやうで、實際のお路は生きてゐなかったはずの昭和に話しが飛んだのかと錯覺させられたのには困った。

主役の滝沢馬琴は、いかにも舞臺人らしい明朗な聲とセリフが身上か。


(※滝沢馬琴)

馬琴の妻と息子はそれぞれ有名役者による聲のみの出演、録音時の表情までも髣髴とさせる“クセ強”な人物像ぶりに、なるほど役者はカラダすべてが資本と、今さらながら當たり前なことに感心する。








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最終更新日  2025.07.03 10:08:34
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