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2025.07.15
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カテゴリ: 浮世見聞記
東京都文京區の印刷博物館で、「黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化」展を觀る。



1400年頃に独國の地方貴族出身とされる金細工職人グーテンベルクが發明した活版印刷術は、“ディ・シュヴァルツェ・クンスト(die schwarze kunst)”──“黒い”魔術と呼ばれ、旧約聖書のいはゆる“42行聖書”から始まったこの画期的な技術はやがて欧州全体に廣まり、


(※記念繪葉書より)

宗教關係の書籍はもちろん、中世の欧州を席巻した黒死病を背景に、“正しい態度で死ぬ方法”を説いた「往生術」(1493年)や、あらゆる階級の阿呆を乗せた船が阿呆の國をめざして航海する様子を散文詩体で綴り、文盲の讀者も想定して銅版画の挿繪をふんだんに取り入れた題名もズバリ「阿呆船」(1495年)といふ念の入った風刺的文學など、和訳の活字本はないかしらんと私の興味をそそられるほどの、旺盛な印刷出版文化の幕開けとなる。


しかし、グーテンベルク本人については、印刷事業による多額の負債に絡んだ裁判記録より斷片的にしかわからない、謎多き人物云々。

独國で長らく活字の標準書体となる“ブラックレター”──いはゆる“ゴシック体”の生みの親となった人物である、なにかを創(はじ)める非凡な人間と、それを良く思はぬ凡庸なニンゲンとはいつの世も一對と、その辺の事情は推察するしかない。


十八世紀にはすでに不便との聲が上ってゐたブラックレターは、二十世紀には独國の自立を強く謳ふナチスのプロパガンダに頻用され、しかし他國を支配するには世界共通の活字書体である“ローマン体”を用ゐたはうが好都合であることから、1941年に公用書体としてのブラックレターは廢止さるる。


(※縦長の字体で尻に角度をつけてゐるのが特長の“ブラックレター” 案内チラシより)

人の創った文化がヒトの思惑に翻弄される、愚かしいがしかしこれが現實の一片、これも“魔術”なのだらうか。





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最終更新日  2025.07.15 23:00:04
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