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馴田さんの新作は自画像と思われます。椅子に座った自分、腕組み、足組みをしてどこか考え事をしてるように見えます。そして明と暗を思わせる背景には赤と黄色の丸が描かれています。太陽と月の関係なのかもしれません。 そして画面左上隅から曲がりくねった地球色の流れが馴田さん自身と思われる人物に向かっています。この流れは人の人生を思わせます。 陰と陽を感じさせる青色と黄色、そしてそこには太陽と月を思わせる赤と黄色の丸。人が時間の中に生きていく中で必ず接する昼と夜の時間、そこに象徴として存在する太陽と月。 そういった人間の生きている時間の流れをシンプルに、そして軽快に表現しているように感じます。人生の道程として真っ直ぐではない、曲がりくねって山あり谷ありという長い人生もここに存在するということも地球色と曲線をもって表現しようとしているのではないでしょうか。その道に僅かばかりの混色と荒い筆跡を残しているのはとても良かったかなと感じました。 そして自画像の後ろには背景として緑を配色しています。緑の色は植物を連想し、草とか葉をイメージしそこには生きている存在感を感じさせてくれます。そして自画像の直接後ろにその色を配色したということは現在の時間、さらにはこれからの自分自身の未来を見せようとしているのでしょう。 自画像を画面右端に配置し、そして体験した昼夜のイメージが画面の大半を占め、そして今の時間、と未来の時間を僅かばかり見せることによって自分の余生の時間が残り僅かという少し寂しさも感じる表現になっています。私とすればまだまだ続く時間の流れがあるよと馴田さんに強く言いたいのですが、歳を重ねていくと残りの時間はどのくらいだろうと私自身も考えることが多くなりました。振り返る時間を持つことは、不安ではないけれど、馴田さんにとって正直な思いで、それを素直に表現したのでしょう。私はこの絵を見て、とても良いなと感じたところは自画像の頭部を、ほんの僅かですが、右に傾げて描いた妙味です。真っ直ぐに頭部を描くより、僅かばかり傾げることによって空気の流れが生まれ、画面の中に余韻というものを感じさせるようになりました。小さなところですが、とても素晴らしい味わいを生んでいます。
2023/02/25
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高橋幹さんは抽象絵画を長い間追求しています。今回の新作も高橋さんのモチーフである幾何学形態、スクエアを使いながら日本的な幽玄の世界を表現しようとしています。 高橋さんは西洋的な力強く個人の存在をアピールするイメージではなく、東洋的、或いは日本的な自然と一体化する、或いは自然の中に溶け込んでいくようなイメージに美しさを感じているようです。その思いをどうやって表現すれば良いのか、四苦八苦しているわけですが、色に関していうと彩度を抑えグレイを基調にして表現しようとしているのでしょう。また画面構成では流れをできるだけ抑えてゆっくりとしたリズムにポイントを置いているのかもしれません。ただ全てが静止してしまうと逆に凍り付いた堅苦しさしか残らないので、微かな流れが画面から感じられるように制作しています。 そういったことを感じさせるためにスクエアの形に対して微妙に変化を加え、またグレイ基調の色に僅かの明暗、彩度に変化を加えて微かなゆっくりとした流れを作り出しています。 画面全体を見ていくと、画面中央部分に色の違いがある程度、識別できるように彩色しながら、端にいくに従って色が溶けていくようなグラデーションを施しています。そうすることによって自然の中に溶け込んでいく流れを生み、ゆっくりとした時間の流れのイメージを植え付けようとしています。高橋さんはこの自分の描いたイメージを見て、まだまだ自分の思っている表現にはほど遠いと言います。自然の中に溶け込んでいく幽玄的な表現を求めれば、もっと溶け込んで消え入るようなイメージが欲しいと言います。ただどこまで消え入るようなイメージにすれば良いのか?やり過ぎてしまうと全てが消えてしまう恐ろしさもあります。そこに高橋さんの心の葛藤があるのでしょう。自然の中から突出して人間の個を見せる有の美と禅的な無の美のせめぎ合いを高橋さんの作品から強く感じられます。高橋さんの追求はまだまだ続くでしょう。でも高橋さんの求めている美の表現に確実に近づいているのが作品から強く感じられ、とても嬉しく頼もしく思っています。
2023/02/24
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田中さんの作品のイメージはとてもユニークで、一般常識の目で見ようとすると「なんだ、これは?」と思わせる内容が多く含まれています。美術の世界ではシュールレアリズム、或いは超現実主義とも言われる分野の絵画かなと思います。20世紀に入って様々な美術方法が生まれました。その時代の流れの中で哲学、心理学など人間の心を探る学問の追求も盛んになってきました。その一つとして心理学と連動して夢の世界も人間の一部であるという表現が誕生しました。皆さんにもよく知られているダリという画家の作品はこの夢の世界を表現したものです。これをシュールレアリズムといいます。夢の世界も人間の現実の一部として捉えよう。現実なんだけども超という言葉を付け加えた世界であるということです。田中さんの作品は正にこのシュールレアリズムの絵画の一つと言えるでしょう。蟹がいて、エビがいて何故か向き合っている、そして反目し合っているのか、仲間同士なのか分からない。そして二人の登山者が冬山に向かって歩いている。画面に見える様々なイメージは全く共通項が見当たりません。でも1枚の絵としてみてると全体の調和がしっかりとれていて、とても安心して納得してしまいます。何を訴えているのか分からないけれど、納得してしまう、頷いてしまう表現になっています。とても不思議な感覚になり、まさに夢の世界に引きずり込まれてしまうようなシュールの世界ですね。それもおどろおどろしいシュールではなく、とても明るく思わず微笑んでしまうシュールの世界です。これは田中さん自身が持っているユーモアの心があるからだと思います。そしてこの絵画の素晴らしいところは彼女がどう画面を構成するか、そして色をどのように組み立てていくか、とても深く考えて完成の域まで辿り着けたという痕跡が見られ、そのひたむきさに共感できる味わいが溢れているからでしょう。田中さんは既に新しい作品に着手してますが、次にはどのようにイメージを練り上げていくのか今からわくわくドキドキ楽しみにしています。
2023/02/19
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馴田香代さんの作品には彼女独特のスタイルがあります。人物を主体にした具象的な作品が多く見られますが、ただ単なる具象表現ではなく、少し抽象的な感覚を含めた表現になっています。20世紀前半に印象派から始まり、キュビズム、フォービズム、未来派、コンストラクティズムなど段々と抽象化していく美術世界でした。そこには表面には見えないけれども確実に存在する人間の内面を表現しようとする芸術家たちの姿がありました。馴田さんの絵画にはその人間の内面を捉えたいという思いが強く表れていると感じています。この絵画は現在戦争下にあるウクライナの夫婦を表現したものだと言っていました。日本の現在と比べると比較しきれないほどの悲惨な状況下にあるウクライナです。そういった中でその悲惨な状況を見せるというのではなく、そういう状況の中でも忘れてはならない人間の尊厳と人権というのはどこにあるのかということを問いかけているような気がします。この絵をただ単なる男女の抱擁と見るのか、いやそういった単純な思いではなく、忘れてはならない人間の愛が存在するということを見せようとしていると感じました。とてもシンプルで簡単に見過ごしてしまいそうな表現ですが、女性の顔、そして男性の少し傾げた頭の向き、男性、女性の腕と手で支え合おうとする強そうでいて柔らかい腕と手。とても微妙な傾きを造り彼らの姿を通して人間にとって大事な「愛=ラブ」を表現しています。そして馴田さんの人間に対する愛情と慈しみを感じる作品になっています。背景に微妙な色合いである青緑を使ったのはとても良かったなと思いました。
2023/02/07
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