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馴田さんのこの作品は1ヶ月前に見せて頂きました。その時は右に描かれている男性の身体表現に少し難があり、馴田さん自身も身体表現が難しいとこぼしていました。 そして1ヶ月後に修正を加えたこの作品を再度見せて頂きましたが、以前にあった不自然な感じのする身体表現がすっかり修正されていて、絵画的にとてもコントロールされ、まとまりのある絵画になっていると感じました。 馴田さん自身は「私には技術がない。私の絵画は素人の領域から出られない。美学的なことが分からない」とよく泣き言を言います。私は馴田さんのその言葉を聞いて、純粋に絵を描くことが好きで、自分自身のことを真っ直ぐに見て、ありのままの自分を通して感じたことを制作している人なんだと思っています。 今回の馴田さんの作品は昨年から世界を震撼させているウクライナでの戦争で亡くなった若いウクライナの男性とその母親というテーマで描いています。息を引き取り横たわった息子をまさに自分の胸に抱きかかえようとしている母親の姿とその息子の一体感がシンプルながらとても直接的に表現され、そこにある親子の愛情と優しさを感じるのは私だけでしょうか。 戦争の理不尽さ、戦争の醜さを糾弾するというより、人間として親子とか寄り添うといった愛情の大切さ、私たちが大事にしなければならない人としての在り方をこの絵画の中に表現しているように感じます。 馴田さんは母親の姿を緑を主体にした衣装で包みました。その緑の衣装は母親の心情を表しているのでしょう。決して明るくハッピーな色ではありませんが、喪服のような黒色ではありません。どこか寂しげで、悲しいけれど現実を受け止めなければという色のように感じました。亡くなった男性は逆に上半身裸で、傷などは一切描かれていず、まだ温かみの感じのする色使いで描かれています。馴田さんはここに色の表現として逆説的なイメージを考えたのでしょう。生と死という観念に対して生きることの苦しさ、死自体の存在感を緑色と肌色の違いで現そうとしたのでしょうか。とても深く考えさせる表現と思いました。 画面の構図もシンプルで見やすく感じます。良い構図というのは、画面に逆三角形の流れを作るというのがルネサンスの時代から受け継がれてきています。近代に入って美術は美学的な視点を多く学ぶ傾向が生まれてきました。印象派、キュビズム、未来派、シュールレアリズム等、様々な絵画表現が誕生しましたが、そういった変化においても画面の構成の仕方はルネサンスの頃からほとんど不変であるような気がします。その一つが逆三角形の構図と思っています。 馴田さんのこの新作も逆三角形の構図を使った絵画です。そしてその構図を生かすために人体の腕を非常に上手くデフォルメしています。そして画面全体をより見やすくし、鑑賞する私たちを絵画の中に入りやすくし、絵画の持つ心を感じさせてようとしているのでしょう。とても良い作品ですね。
2023/04/27
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馴田香代さんの新作に対してタイトルを付けるとすれば「抱擁する女性」、「恋する女」、「木に頬ずりする女」のように思いますが、この感覚は私が男性だからそのように感じてしまうのでしょうか。馴田さんの表現するイメージは以前からとてもダイレクトでまたシンプルに直接的に鑑賞者に訴えかける力を持っています。この絵画でも同様に鑑賞者は女性と木のイメージからのみ作者の思いを汲み取ろうとします。この絵画の他のイメージは背景の緑のみになります。そこから鑑賞者はこの絵画を読み解こうとします。この女性は誰?、女性は何を思っているの?、何の木?、女性は木を抱いているの?という感じに鑑賞者は作品から見えてくるイメージに対してたくさんの質問を投げかけます。そして鑑賞者はそれらの質問に対して自ら回答を見つけ出さなくてはいけません。作者である馴田さんは彼女の思い、考えがあるはずですが、作品の前では沈黙を保っています。私が最初に作品のタイトルはと言ったのは、私のこの作品に対する解釈の一端で、馴田さんからすると全く違ったものかもしれません。絵画の奥深いところは他の芸術作品より表現に対して鑑賞者が自問自答しながら作品を読んでいこうとする長い時間与えられていることだと思っています。一瞬のうちに作品の意図が分かる、一瞬のうちに感動を呼ぶと言うことではなく、作品を前にして長い時間対話でき、そして心の中にゆっくりと感動が浸透していくというのが絵画の本来の姿ではないかと感じています。馴田さんのこの絵画において私はダイレクトでシンプルと書きました。目の前に見えるのは女性と木、背景に緑のみです。ところがそれだけしか目の前に見えないはずですが、私の心の中に女性の目を閉じて何かを思っている表情、そして木に沿って抱きかかえるような腕の仕草、そして指先、さらにはワンピースの真っ赤な色、服のヒダの流れから、様々な思いが私の心の中に浮かんできます。それらは馴田さん自身がこの絵に仕組んだ彼女の思いかもしれないし、或いは馴田さん自身が直感的に感じたことを表現したものかもしれません。さらには抽象的に描かれた左右非対称の枝ぶりにも馴田さんの思いというのが感じられます。ダイレクトでシンプルな表現の中に、この絵画に馴田さんの心の中で深く感じている思いというのが深くたくさん詰まっている作品に仕上がっていると感じました。鑑賞者はどのようにこの作品を捉えるか、それぞれに違ってくると思います。でもしばらく時間をかけてこの作品と対峙し、自問自答し、そして自分はどのように感じるか思いを巡らせると、様々なことが改めて見えてくるかもしれません。
2023/04/01
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