アートスタジオセイゴ
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馴田さんは数は多くありませんが、抽象的な表現にチャレンジしています。あくまでも馴田さんの絵画は具象画で特に人物を使った人間の根源的な心の在り方を問いかける表現ですが、抽象的な表現である場合、彼女の感じている人間の心の在り方を問いかける表現が難しいと感じていたのかもしれません。ところが今回の新作は難しい抽象的表現にアプローチしながら、具象表現と同じように人間の心の在り方に問いかける作品になっていると感じました。今回の作品は人間の頭(頭部)を使った抽象表現です。画面の構図はとてもシンプルで、細く緑、黄、茶、青色の線が上から下にまるで水が流れるように描かれています。それは水の流れのように時間を感じさせてくれます。その上から下に流れる線の間(時間の中に)から人間の横顔が数多く現れています。左向きの顔、右向きの顔をランダムに配置しています。それぞれの顔には目もなければ口もありません。鼻の線があるおかげで,やっと人の横顔だとわかる最低限の表現にしているのは馴田さんの妙技だと思いました。ここに目があり、口が描き込まれているとこの絵画の意味が全く違ったものになってきます。日本の社会は人間一人一人を認識すると言うよりマイナンバー制度といった番号によって認識する方向に傾きつつあります。欧米諸国においても、中国においても人間を管理するには番号札で認識する方が把握しやすいという流れになってきているのでしょう。個性を大事にする社会を目指すと言いながら管理するには個性というのは逆に邪魔になると言ったことなのかもしれません。私たちは知らず知らずのうちにIT社会と相まって没個性の社会に向かっているのかもしれません。近年、ジョージ・オーウエルの「1984」という本が再注目されるようになってきました。社会は管理社会に向かっているということを70年以上前に指摘した名著です。 馴田さんのこの作品は「1984」と、とても似通った現代社会の人間の在り方を憂えた作品になっていると感じました。そういった現代社会に対してどうすれば良いのかと言うことは馴田さんにしてもジョージ・オーウエルにしてもはっきりとした回答は示していません。でも2人とも人間にとって一番大事なものは「心」にあることを示しているのかなと感じました。
2023/05/26
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