ビストロフの橋

ビストロフの橋

October 27, 2005
XML
テーマ: 連載(82)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 十二時。通路でガチャガチャと大きな音がして、えくぼのおばさんがニコニコ顔で戸を開けた。
 「車内販売だよ。何かいりませんか」
 ルビーが勢い良く立ち上がったが、ウィルはトムの弁当のことを思い出して一番大きな荷物の包みを開けにかかった。
 中身は一見ごく普通のランチだった、もっとも中に入っている材料の何割かは蛙だとかナメクジなのをウィルは知っている、それに量は間違いなく五人分はある。
 トムの気持ちは嬉しいが、こんなの全部食べたんじゃ胃がパンクしてしまう。
 「・・・二人とも、ダイエットしてないなら手伝って。とても食べ切れないよ」大鍋型パイを買おうとしているルビーと、何かを素早く買い込んだキャロルにウィルは懇願した。
 「わあ! すっごーい。お母さんが作ったの?」瞬間移動したのかと思うくらいの速さでルビーが戻ってきた。キャロルも戻ってきて、一言。
 「漏れ鍋ね」完全に断言されてしまった。
 「なぜ、それが・・・」わかったのかと聞こうとした僕を制して、キャロルは包みを指さした。包みにも器にも『漏れ鍋』のマーク、そのものズバリの穴の開いた鍋の絵、が入っていた。

 ウィルが、ついさっき着替えたばかりのローブを見下ろすと、確かに首元や裾が綻びている。昨日まできていたローブは洗濯してしまってあるし、今来ているのは古着屋で買って以来、トランクに放り込んだままだったのだ。『オリバンダーの店』や『漏れ鍋』での仕事に気を取られてよく見てもいなかったから当然といえば当然だ。
 ルビーへと目を向けると、これは反対に不自然なくらいに奇麗なローブ、しかも多分オーダーメイド、それなのにどこか不揃いな感じのする持ち物。
 「みんながみんな競って買ってくれたんでしょ? だから一つ一つは一流のものなのに、協調性が感じられないのよ」なんかすごく冷めた声でキャロルが評してみせた。ウィルは気圧されたようになって引きかけたが、もう一人は全然感じていないらしい。
 「すっごーーーーいっ!! なんでわかるんだろう? 魔法みたいだけど、魔法じゃないよね? 魔法は杖がなきゃ使えないっておばあちゃんが言ってたもの」
 「魔法だったら、良かったのにね」
 引きかけたウィルを寂しげに見て、ルビーの態度に戸惑っている、キャロルにウィルが言った。ウィルには何となくだけどわかったように思えた。シャーロック・ホームズと同じだ。観察眼、洞察力。そういったものに恵まれ過ぎた人間は孤独にならざるをえない。
 「そうかもね」キャロルがひっそりといった。
 表情をあまり表に出さないようにしているようなのに、すごく落ち込んだ顔をしている。ウィルはなんだか胸が苦しくなった。ついこの前までの自分の姿がダブって見えるのだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  October 27, 2005 08:24:16 PM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

クラッシュのHP クラッシュ2569さん
まいけるのお部屋 名前のないうさぎさん
凛。きまぐれホーム… RURIKAさん
し ん じ て る 。 沙羅 憐霞さん

Comments

通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw <small> <a href="http://hiru.kamerock…
ヒゲメタボ@ クマたんと呼ばれてます(^^; 最近はこれが流行ってるって聞いたので …
ディック橋本@ ギリ3人です(笑) <small> <a href="http://iikoto.chorie…
大岩井@ 目覚めたら巨チンってぉぃ あの女ー・・昨日チソコが痛くなるくらい…
ビャルヒ@ あのコスwwwww コ ス プ レセ ク ロ スって思った以上に…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: