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「この時間にここにいる,と言うことは,アナタの読みが甘かった ・・・と言う事になりますよねっ!」 「はぁ・・・。申し訳ありません。」言葉は丁寧でも,偉そ~なもの言いは相変わらずだ。 「アナタッ,プロでしょ?!どうしてこんなに・・・。」 「はい,おっしゃるとおりです。プロだからこそ渋滞を予想して 余裕を持って行程を作りました。」今度は私の方から青モンスターの言葉をさえぎってやった。 「とにかくウウウ・・・,早く着いてしまっては困るンですウッ~!」青モンスター(青田先生)は,今にも火を噴きそうな勢いだ。私は純粋な疑問を,首をかしげながら素直に投げかけた。 「あのォ・・・,どうして早く着くとマズイんですか?」いつの間にか私たちの周りには,自然とドライバーやガイドが集まって来て,血相を変えた青モンスターの言葉に,一緒に耳を傾けていた。 「早く着くと,家へ入れない子供達がいるンです!」 「・・・(はぁ?)・・・。」キョトンとしていたのは,私だけではないだろう。青モンスターは続けた。 「共働きのお母さん達は,子供の帰る時間に合わせて 帰って来るンです。それまでは迎えに来られないンです!!」 「・・・(それでェ?)・・・。」 「親が迎えに来なければ子供達は,歩いて家に帰ってしまいます!」 「・・・(それから?)・・・」私は,心の声を見破られないように言葉を選んでいたら,しばらくの間相づちすら打てないでいたのだった。 「子供は,鍵がかかっている家へ入れない・・・,って事になる。 “どうしてこんなに早く帰って来るの?” “時間通りに帰って来てくれなくちゃ困るじゃない” って,私たちがお母さん達に攻められるンです!!」 「・・・そんなぁ・・・。」やっと出てきた私の言葉は,青モンスターの耳には届いていないようだ。青モンスターの怒りは頂点に達した。 「そう言う親たちがいるンですッ。私たちはそこまで気を使わなくては ならないンです!アナタにわかりますか?!わからないでしょっ!!」青モンスターは,とうとう火を噴いたようだ。周りの人たちが1人,2人と離れて行くのがわかった。 つづく
2010/08/31
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学校の教師と言うものは,とかく一般社会から遠ざかっており,子を持つ親の目で見ても立派な先生に見えるのだが,なぜか世間に出ると小さい世界で右往左往している,浮世離れした社会人に見えてしまうものだ。 私が思うに,教育界と言う狭い社会の中でこれが全てだ,と思い込んでいる人が多いからこそ,小さい人間になってしまうのだろう。子供教育に命までかけなくても,大きな使命感を持った志の高い先生ほど,一端の人間の振りしたモンスターになってしまうように思われる。タイプは違っても,青田先生も赤木先生もモンスターである事に違いはないのだ。そして,恐らくこの青モンスターと赤モンスターが,火花を散らす場面を何度も見ることになるだろう・・・と,私が密かに楽しみにしている事は,誰も知らない。ところが私の期待を大きく裏切り,今回の修学旅行の最終見学場所である,国会議事堂に着いてしまった?!トラブルを期待していたわけではない。子供達の旅行は,どんな仕事よりも神経が張り詰めているもので,たかがトイレ休憩でさえ,サービスエリアときては神経の使い方は,ハンパない!! 駐車場内での交通事故を防止するため,先生方はもちろん,ガイドもドライバーも全員で子供達の行方に集中するのだった。だからこそ,この最終見学地の出発を待つ間は,少しホッとして私たち乗務員の表情も緩んで来る頃なのであった。幸い渋滞に巻き込まれることもなく,予定時刻より1時間も早く行程は進んでいたため,ここ最終の見学場所では,少々ゆっくり時間を取っていたのだった。そのせいか,出発10分前にはほとんどの生徒がバスに戻っていて,先生方はトイレを済ませるように・・・と,子供達に声をかけ始めていた頃,それは始まった。 「桜来さん,これじゃぁ早すぎるからどこか寄ってくれない?」と,青田先生が唐突に言い出した。 「・・・でも140名ですから・・・そう簡単には・・・」 「運転手さんに聞いたら,この近くに&$*記念館がある らしいわよ。」 「えェ・・・,でも行程表にないところへ行ってもよろし いンですか?」多分,私の言葉は最後まで聞いていなかっただろう。イライラした表情の青田先生はいきなり口調が変わった。 「このまま1時間も早く着いてしまたったら困るンです!! アナタの責任でしょ?!」 「・・・???。」私は,この言葉の意味が良くわからないのと同時に,もの凄い剣幕で迫る青田先生に対して,言葉を失ってしまった。 つづく
2010/08/30
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ドライバーもガイド面喰らっている。もちろん,校長も保健の先生も一斉に青田先生を見つめた。私は,あきれ顔にならないように注意して静かに言った。 「高速道路上で駐停車は出来ませんので,パーキングまで 少しお待ち下さい。」 「休憩するパーキングまで校長先生を待たせるってこと?」 「いえいえ,次のパーキングで止まりますから。」 「そんなとこ,予定にないじゃなぃ?!」 「そうなンですが・・・,時間のロスもさほどではありま せんし・・・ちょっと寄らせて頂いて・・,私,2号車 へ走りますから・・・。」 「そんなこと,アナタが勝手に決められるの?!」私もいささかキレそうになった頃,校長先生が青田を諫めた。 「青田先生,落ち着いて下さい。」青田先生はかなり鼻息が荒くなっていたが,校長先生の一言で,やっと座席に腰を下ろした。程なく,バスはパーキングエリアに入り停車した。当然のとこながら,3台のバスが後に続く。まだ全部のバスが駐車場へ収まらない内に,私は速攻バスを降りて2号車へ走る。私の姿を発見するなり,2組担任の先生がお弁当をもって降りて来た。 「すいませーん,青田先生怒ってますよね-。」私は,小刻みに何度もうなずきながら, 「・・・大丈夫です・・・!」と,肯定してるのか否定しているのかわからない返事をしていた。もちろん私は,折り返し走って戻り,バスは何事もなかったように滑り出す。3,4号車は駐車場に入ることなく,1,2号車の先行を待って,そのままパーキングエリアを通過することになった。 「申し訳ありませんでした。」バスに戻るより早く,私はお弁当を青木先生に手渡した。先生は無言のままそれを受け取り,早速,校長先生の分を取り出した。 「校長先生,朝食が遅くなって申し訳ありませんでした。」深々と頭を下げ,まるで卒業証書をもらうときのように,両手を前に差し出している。 「そんなことは何でもないことです!」と,言いながら校長先生は,私に両目でウィンクのような合図を送っている。私は,恐らく謝っているのだなぁ,と思い,静かに微笑んでうなずいた。やれやれこの先が思いやられる・・,と思い知らされた出発だった。 つづく
2010/08/27
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さて,今回私を悩ますのはこの教育界の風雲児“赤木先生”ではなく,この1号車に乗る1組の担任であり学年主任でもある,“青田先生”である。年齢など聞いたことはないが,恐らく40才前後・・・と,思われる女性。打ち合わせの時からずーっと感じていたが,青田先生は教頭と校長以外の全ての人に,見下したような態度で接し,いつも上から目線でものを言う上に,非常識な要求を平気でする人なのだ。出発前から私は,恐らくこの人に悩まされるなぁ・・と,覚悟していたのものの・・・。それは予想以上に早く私を襲った。出発してから間もなくクラス別の朝の会が始まり,生徒達が司会進行し,引率の先生への挨拶,バスガイド・ドライバー・添乗員の紹介までやってくれるわけで,バスの中といえどもガイドに主導権はないのである。朝の会が終わると,朝食タイムになった。早朝出発のため,朝ご飯が早すぎるとか,早すぎて子供達も食欲がわかない・・・などの父母達の要望があり,車中にて“朝食の時間”をとることになった。だから,子供達は朝・昼2食分のお弁当を持ってバスに乗り込むのである。その頃,バスは高速道路を爽快に走っていた。だが,先生達の朝ご飯にトラブル発生!朝食用のお弁当を各号車毎に分けて袋に入れ,まとめておいた箱を,私は2組の先生(副主任)に渡していた。 「号車毎に分けてありますので・・・。」そう,箱ごと渡してしまったのが間違いの元だった。2組の先生が1組にだけ配るのを忘れてしまったらしい。1組の先生達の朝のお弁当がない事に気付き,2組の先生に電話を入れた。 「すいませ-ん,ここにありますぅ!!」青木先生の携帯電話から,2組の先生の声が漏れて聞こえた。これは私のミスでもある事を,認めざるを得ない。 「はじめから私が配って置けば良かったンだと思います。 申し訳あ・・・。」 「ちょっとその辺でバス止めて・・・!!」 「・・・?!」私の言葉をさえぎったのは,青田先生のありえない言葉だった。 つづく
2010/08/26
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赤木美沙絵(自称29才)独身,教員歴・・・多分10年位?我が県の教育界では知らない人はいないであろうこの先生は,校長だろうと教頭だろと,言いたいことを言って自分流を貫き通し,分からず屋の父母たちには遠慮会釈なく,“家庭教育”に問題あり・・・,と言ってのけ説教を始めてしまう。それがまた,べらんめェー口調ときては,誰も彼女をかばうものなどいるはずもなく,お堅い教育界では一匹オオカミにならざるおえなかった。当然ながらどこにも引き受け手がなく,毎年実家近くの小学校へ異動願い出すものの,受け入れてはもらえず,たまたまここの白崎校長と縁あって,教頭時代から共に異動しているのだと言う。つまり,白崎校長がどこにも行けない赤木先生をいつも引き連れて異動している・・・と言う事が本当らしい。だから,赤木先生の通勤時間は2時間なんてことはざらで,このような早朝(5時30分)集合なんて時は,赤木先生は一番眠そうにしているのだった。当然ながら1組が1号車で,2組が2号車・・・・となり,1号車に校長先生と,保健先生が乗ることになる。もちろん私,添乗員も1号車だ。後列3台のドライバーから無線が入り,各号車の人数の確認が済み,大型バス4台は静かに出発の合図を待っている。 添乗員 「OKです!」 バスガイド 「はぃ,OKで~す!」 ドライバー1 「はい了解! ・・・出発しま~す(無線で交信)」 ドライバー2 「2号車,了解です!」 ドライバー3 「3号車,了解です!」 ドライバー4 「5号車,了解です!」1号車からゆっくりと滑り出す・・・。 「みなさ~ん,左手にお見送りの先生方と,お母さん達が いらっしゃいまぁす。手を振りましょう・・・。」ガイドのかけ声で子供達は一斉に左を向いて手を振っている。学校の正面玄関前は,大抵,大型バスが回転できるスペースを確保している。但し,必ずギリギリの幅なっていて,余裕のある設計にはなっていないのが通常だ。気になって,後に続くバスに目をやると,バスは静かに・・静かに,同じ間隔でついてくる。一糸乱れぬプロフェッショナルなドライバー達の妙技に私はしばらく見とれていた。 つづく
2010/08/25
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「#&%小学校6年生のみなさ~ン,おはようございます。 みなさんの旅行が安全で,かつ楽しく,いい思い出がたっくさ~ん できますように・・・,先生方のお手伝いをさせて頂きまぁ~す。 今日から2日間,皆さんとご一緒することになりました, ○×ツアー 添乗員の桜来空子と申します!! どうぞ よろしくお願いしまぁ~す。」 出発の朝,大抵,校庭(雨天時は体育館)に集合し,“朝の会”とやらが始まる。早朝のため,校長先生の簡単な挨拶,生徒達の宣誓,人数の確認など,いたって簡潔に進められる中に,添乗員の挨拶も含まれるのだ。添乗員が全員の前で挨拶するのは,これが最初で最後になることが多く,子供達にとってはなぜ私が同じバスに乗っているかさえ,良く理解していないことも珍しくない。つまり,ここで私の存在をアピールしておかなければ,旅行中,生徒達と話しをすることすら,ままならないのだ。特別おもしろいことも言えない私は,いつも元気に,はつらつと,ややもすると,うっとうしい位に明るく挨拶をするよう,心がけているのだった。どうやら今年も,掴みはOK・・・と,いったところだろうか?私の存在は印象付けられたに違いない・・・,と感じた。なぜなら,子供達の顔を見ればわかるのである。あのキラキラした純粋な瞳から,何の疑いもなく私を受け入れてくれている素直な心が,伝わって来るのだ。全4クラス,総勢138人の子供達は,バスガイドやドライバーに丁寧に挨拶をしながら練習通り,整然とバスに乗り込む。恐らく,バスの指定席に合わせて整列していたのであろう。座席はキレイに後ろから埋まって行った。全号車,ガイドによる人数確認の報告を待ちながら私は,見送りに来た父母達を見つけ,軽く会釈した。まぁ・・ナント言うことでしょう?その中に,涙を拭う母親が,2,3人いるではないか?!初めて見る光景ではないが,私にとってけして“感動もの”ではないのだった。そんな心の内を,けして隠さない先生が一人いた。 「おぃオイおぃ・・・,誰かのかぁちゃん泣いてンぞ~! 勘弁してくれヨなぁ~!!」何かの間違いで,この名門#&%小学校に赴任して来てしまった,#&%小代表する,先生なのに“風雲児”,赤木先生(女)の登場だ。
2010/08/24
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ウチの会社は5月に入ると修学旅行ばかりで,一般団体の取扱がほとんどない。一般団体が暇なのではなく,通常,約一年前から決まってしまっている修学旅行の仕事がイッパイいっぱいで,他の仕事が受けられないのが現実だ。ある年の5月,私は富士・箱根1泊2日 小学校6年生の修学旅行に同行した。いわゆる子供達を旅行に連れて行くわけだから,一般団体よりも面倒な仕事に思われがちだが・・・,実は違う。バスの座席や場所毎に変わる整列方法,電車の乗り降から,お風呂の入り方まで,様々な場面で統率を計るために,先生方は細部にまで渡って指示・指導を重ね,時には予行練習までして分刻みのスケジュールを徹底的に先生達が管理してくれるのだ。先生達の厳しい指導も,この時ばかりは子供達にとって旅行前の楽しい時間なのだった。いつも問題ばかり起こす問題児も,こう言う時にはやたらと素直になるらしいが,それでも要注意人物はいつの時代も1人や2人いるようで,同じグループのリーダーの子供にも,注意を促し,当日の先生方の緊張感たるや・・・,端から見ていて気の毒に感じるほどだった。つまり,バス5,6台を引っ張る修学旅行も,私たち添乗員にとってさほど大変ではない。先生の号令一つで,子供達は静かに整列し人数確認までしてくれる訳で・・・,私は,その報告を待っていればいいのだから・・・。わがままなおばちゃん達を15人連れて行く方が,はるかに気を遣い,私たち(添乗員)を疲れさせるのだ。つまり,子供の方がとても素直で失礼ない言い方だが,扱いやすいのである。しかし,今回の仕事で私は,少し前に話題になったモンスターペアレントに悩まされる先生達も,また,別の種類のモンスターであることを知る事になるのであった。
2010/08/23
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