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私としてはコンパニオンの真似事など御茶の子さいさいで,それほど苦にはならなかったが,夕食を食べ損ねた上お酒を飲んでしまったせいで,いささかボーッとしていまっていた。予想通り,コンパニオン達と二次会へ行くこともなく,宴会が終わって,金バッチ達は速やかに部屋に戻って行った。最後までコンパニオンに延長をせがまれていた,金バッチのボスはカマキリ達に守られ廊下へを出てて,後ろ向きになってから私に手を上げて“おやすみ”の挨拶をしている。私はそれをボンヤリと見送りながら取り巻いている人達が,カマキリかバッタかわからなくなり,何度も瞬きをしていた。添乗員の夕食として“お好き処で召し上がって下さい”と,渡されたミールクーポンには,21:00まで・・・とあったので,そのまま食事に行くことにした。和・洋・中どれも美味しそうなお店ばかりだ。どこも捨てがたかったが,酒のせいで体が重かったので,ここから一番近い中華を頂く事にした。そんなに高級ホテルでもないし,レストランのメニューを見てても庶民に手が届かない価格設定ではないようだが,内装は黒と白で統一され,レストランには珍しく薄暗くなった店内にはいたるところにキャンドルが揺れていた。ホールを担当している30歳前後の男性も,教育が行き届いて誠にスマートな振る舞いをしている。この雰囲気に飲まれ私は,もう一杯・・・飲みたくなって,海鮮焼きそばと杏露酒(シンルチュウ)をオーダーした。益々フワフワして来た私は,久しぶりに至福の時を味わっていた。このしっぺ返しが明日の朝にもやって来る事など,この時の私に想像できるはずもない・・・。 つづく
2010/09/29
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宴会場を彩り男達を高揚させるコンパニオンは,そりゃぁ若いに超したことはないのだろうが,“若ければいい”ってもンでもなくて,中高年以上のオジさま達の中には,“あまり若すぎても話しが合わないンだよ”と,思っている人も少なくなく,少し落ち着いた30代のコンパニオンも結構好まれるのである。だが,今夜の場合は辛うじて30代に見えるのは,1人か2人だ。後の3人は紛れもなく40代で,ややもすると50代か?と,思われるのが1人いる。私は,なるべくカマキリ達と目を合わせないようにして,少しの間忙しくしている仲居さんを手伝って,飲み物を運んだり,時にはお酒を注いだりしていた。実は,何故か治まらない胸騒ぎを不安に感じ,ジッとしていられなかった・・・と,言うのが正直なところだった。 「よォっ・・・」大きく手招きをして,相変わらず横柄な態度で私を呼ぶのは・・・,やっぱりカマキリだった。隣に座った金バッチがそれに気付いて, 「“よォっ”て,なんだよ!! すてきなレデイ―に向かって。 それは失礼だよな・・・空子さんっ?!」 「・・・,いやぁ・・・。」と,私は照れ笑いをしてごまかすしかなかったが,カマキリも笑ってごまかしているので,私の笑顔は引きつっている。カマキリの後ろでひざまずいて,用件を聞く・・・。カマキリは金バッチに聞かれないように小さな声で言うのだが,傲慢な態度は変わらない。 「アンタよォ-,なんだこれは?! 酷すぎないか? オバちゃんばっかりじゃないか?!」 「・・・はぃ,申し訳ありません。」 「アンタの責任だな・・・, アンタの責任だよな!」 「・・・あぁ,・・・・はぃ・・。」 「これじゃぁ,アンタがコンパニオンやるしかないなっ。 責任取って最後までやるしかないだろ,6人目のコンパニオン。」 「・・・はぃ,わかりました。」 「しょうがねーよ,これじゃぁ,なぁ。」そう言ってカマキリは,グラスを持って一気にビールを飲み干した。仕方なく私はカマキリにビールを注ぐ・・・。そして,カマキリの指令はまだ続いた。 「それからっ,○×さんにはあんまり飲ませるなよ,焼酎のおか わりは,薄~く作れよっ,薄~くなっ!他のコンパニオン にも言っとけよ!明日大変だからなっ。」カマキリの言う○×さんとは・・・,今回の金バッチの中では一番の年配者で,これまでもカバンを持っあげたり階段では手を貸してあげたりと,みんなが気遣っていたことはわかっていたので,ご高齢のため,旅先で何かあっては困る・・・と,言う事なのだろうと,私は勝手に解釈をしていた。そう,だから私は明日の朝襲われる災難がここから始まる・・・って事を,まだ知らないのである。 つづく
2010/09/27
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“受けて立つ”とは・・・,売られた喧嘩を買うわけではなく,“私に任せろ”と言う事で,納得いかないお客様にはとことんご説明しますよ,と,言いたかったのである。 「どなたか,早く部屋の番号を知りたいと,言っている方 はいらっしゃいますか?」 「言われる前に,やらなきゃいけないの!!どんだけ俺らが じーさん達に気を使ってるかわかるか?!・・・。」 「わかりました。私の方からご説明致します。」プンプンして鼻息の荒いカマキリを横目に,私は車内のマイクを取った。 「これから本日お泊まり頂くホテルへ向かう事になりますが, いつものように,前もってお部屋番号をご案内することが できません。 このホテルは,チェックインの際に簡単なミーテイングが あり,カードキーやお部屋の使い方などをご説明致します。 そして,最後にそれぞれのルームキーをお渡しすることに なりまが,その際に,事務局(カマキリ)様のお部屋及び 添乗員の部屋番号をお知らせ致しますので,どうぞ ご理解の程,よろしくお願いします。」 「はいヨ-,わかったよォ―。」どこからか,そんな声が聞こえてきた。“どうだ,聞いたか?カマキリ!”と,言うような事は顔に出さないように気をつけながら,通路を挟んで隣に座るカマキリを横目で見た。当然,目をそらしている。こういったタイプの旅行は,世話役である事務局の人達の神経の使い方は異常だど,いつも思う。ピリピリした緊張感は,私にも伝わって来て,気の毒にも思えるのだ。だからこそ添乗員としては,出来る限り事務局の人達の背負っているものを軽くして上げようと気遣うのだが・・・,今回ばかりは,空回りだ。心配していたチェックインもスムーズに運び,私たちは最後の宴会時間を迎えた。今夜のコンパニオンは5人。ご指定通り,あまり若くない人で・・・,揃えた。ところが,あまり若くないどころか明らかにオバサン5人が揃っている。でも,こっちの平均は65才前後なわけだから,たとえ40才のオバちゃんだったとしても,相当若いだろ・・・,と,私は自分の胸騒ぎをなだめていたのだった。 つづく
2010/09/17
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こんな風に何かと,どやしつかれながら2日目,予定通り今夜のホテルへ向かうことになった。今夜のホテルは昨夜と違い,那覇市内のシテイホテルに止まる事になっていて,温泉ホテルとは勝手が違い,泊まり慣れない人達にとっては戸惑うことも多いのである。でも,金バッチ達はいろいろな視察旅行で場慣れしているため,私はあまり心配してはいなかったのだが,慣れていない人がいた。それは,カマキリたちだった。朝から,“今日の部屋割り(部屋番号)を早く聞け”と,鬼のような目で私を急かしているのだった。“今夜止まるホテルは,温泉ホテルと違って前もって部屋番号を教えてくれないンです。“と,言っても,カマキリは,“松田君(先輩添乗員)が当日にわかるって言ってたぞ!“と,責め立てるのだ。“早くホテルへ電話しろっ!”と,朝から何度言われたか,わからない。私は,2度ホテルへ電話を入れて頼んでみたが,最後の電話に出たコンシェルジュが落ち着き払って言うのだった。 「どうしても部屋番号を教えてもらえませんか?」 「はぃ,申し訳ございませんが,まだご案内出来ません。」 「お偉い方々ばかりなので,チェックインの時お待たせする 訳にはいかないンです。」 「お待たせ致しませんよっ,16名様ですから・・・,少しご説明 をさせて頂いてから,すぐにお部屋へご案内できます。 私どもでは,修学旅行のような100名200名の団体様でも,この様に させて頂いております。心配いりません。大丈夫ですよ,お任せ下さい。」 「はぁ・・・。」私の返事はほとんどため息に近かった。まるでたかが16名で何を騒いでいる・・・,と言わんばかりだ。それはそれでしゃくに障るが,すっかり気落ちしてしまった私は,それから電話をしていないが,カマキリの攻撃は未だ続いている。 「おうッ,部屋わかったか?」 「いいえ,まだです。・・・・・・・・・・。」“こういったホテルは通常,事前に部屋番号は出ない”と,改めて言ったところで,納得しない事ぐらいわかっているし,いささか私は困り果て,ホテルの言い分をそのまま伝えたところ,やっぱりカマが振り落とされたのだった。 「わかってンだヨそんな事! それを何とかするのがアンタの仕事 だろっ,ったく・・・交渉するのがアンタのシ・ゴ・ト!!」2回繰り返した“アンタの仕事”と,私の顔の目の前まで迫っているカマキリの人差し指が,私を威嚇しているように思えた。そして,同時に心の声が聞こえた。”よしっ,受けて立とうじゃないか!!” つづく
2010/09/16
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お客さんの先頭と酒屋の軽トラは,ほぼ同時にバスに到着した。それに気付いたた金バッチが,嬉しそうに言った。 「おやおや,早速酒ですか・・・。」カマキリ達と目を合わせないように背を向けていた私は,背中に近づいて来たカマを感じながら,酒を受け取っていた。すると程なく,背中からカマが振り下ろされた。 「おう,ご苦労さんっ,ビール冷えてるの持って来たか?!」カマキリは酒屋のお兄さんに無作法に話しかけている。そう,カマキリ達は,金バッチ以外には誰にでも同じ態度で接するのだ。ここぞとばかりに,お腹を前に突き出して顎を無駄に動かしながら,上の方から不機嫌そうに話しかける・・・。私は酒屋のお兄さんがどう答えたのか聞こえなかたが,答えを聞くまでもない・・・と,思っていたのだ。なぜなら,私が会計してすぐに軽トラに積み込んでいたのを見ていたし,荷台に載せられたビールの箱を見て,店のテープが貼られていた位置まで憶えてた私は,紛れもなくだいぶ前に冷蔵庫から出されたビールであるに違いないと,悟ったからだ。私は,ビールだけを持って先にバスに乗り込み,戻って来た人達に,“お帰りなさい”“お疲れ様です”と,声をかけながら,涼しい顔で冷蔵庫へビールを移していた。そしてそれは予想通り,やって来た。 「ようっ,ビール冷やしとけって言ったよなっ!」 「はぃ・・・。」 「今頃,冷やしたって間に合わないだろっ!!」 「申し訳ありません・・・。」 「ったく,気が利かねェなぁ・・・。」私は,ずっと頭を下げたままで,言い訳などはしなかった。カマキリに言葉は通じないと思っていたし,顔を見るのもイヤになっていたからだ。初日からこんなで,私は耐えられるのだろうか・・・? 「これ1本もらって行くよ!」1人の金バッチは,“待ってました”とばかりに,ビールを掴んだ。 「あっ,スイマセン,まだ冷えてなくて・・・。」と,私は慌てて声をかけた。すると金バッチは,くるりと向きを変えて,カマキリに向かってこう言った。 「・・・,酒屋すぐそこだから,冷えてるやつ少し買って 来いよ。」 「ハイッ,わかりました!!」カマキリは,すかさず私の方を見て,顎で指図した。“オマエが行け!!”と。私は驚くほど素直に,遠ざかる軽トラを追いかけるように,走り出すのであった。 つづく
2010/09/14
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那覇到着後,すぐに視察へ向かいとある市の市庁舎へ入った。ここで約1時間30分,私たち(乗務員)は,待機することになる。2泊3日の視察で研修・視察と思われるものは,ここだけである。本当にここだけで用が足りるのであれば,1泊2日の日程で充分なわけで,ついでに組まれる行程の方が遥かに多くなるのだ。その時代,視察旅行と言えばどこでもそんなもので,得にバブル崩壊前までは,お役所までもが豪勢旅行をやっていたのだった。当然,費用のほとんどが税金で支払われるわけで,我ら一般人としては腑に落ちないところもあるのだが,お役所の仕事を数多く取り扱う我が社としては,大事な顧客であることに間違いない。視察の間の待ち時間に,お酒を買って来るように言われていた私は,早めに近くの酒屋へ向かって歩き出した。頼まれたのは,ビール1ケース,焼酎1本,ミネラルウオーター2本等々。当然一人では運べないため,前もって配達をしてもらえるか,確認をしておいたのだ。平日の昼間だ,酒屋が混んでいるわけもなく,私は手早く商品を選び,会計を済ませた。店の中からは見えないが,すぐ近くの駐車場に止まっているバスまで届けてほしいと,告げると,あっさり“わかりました,すぐでいいですか?”と聞くので,“はい,すぐでいいです!”と,答えた。私はもう一度,“ビールは冷えているものをお願いします。”と,念を押した。一人でバスへ戻った私は,ガイドさんが入れてくれたお茶に手をつける暇もなく,目を閉じてしまった。そう,私は眠るつもりなど毛頭なくただ目を閉じただけなのに,目を開けると,出発時予定時間の10分前だった。“ヤバッ・・!”と,思い,バスのシートにすっぽり埋もれていた体を持ち上げた。すると冷蔵庫が目に入って,ダブルで“ヤバッ!!”だ。まだ酒屋が来ていない・・・。慌てて酒屋に電話をかけた。“今出ましたよ!!遅くなってごめんなさいねェー”沖縄独特ののんびりした口調は,何故か私の全身の力を抜いて行くのであった。目の前のに,カマキリの姿を発見!!彼らがゴキブリなら,ゴキブリホイホイでも置いて来たのに・・・,なんて思いながら私は・・・,覚悟を決めた。 つづく
2010/09/10
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空港でろくな挨拶もなく声をかけて来たのは,金バッチの世話役である公の人・・・,つまりどこかの役所の職員ってことだ。一度顔合わせはしたのだが,予想通り横柄で人の話を聞かない人達だなぁーと言う印象と,やたら色が黒く細身でひょろっと背が高かったので,緑色ではない茶色のカマキリを連想させた。よってこの2人をカマキリと呼ぶことにする。 「搭乗券は俺らに先によこせよなっ!」 「はい,お席はこちらになりますが・・・。」と,私は手にしていた座席表を見せた。たった16席の座席表だ,迷うこともなくカマキリは,自分の席を決めた。 「俺らは,ここなっ!!」私は彼の指さしたその席に○の印を付けて記録し,彼らの搭乗券を探した。すると,彼らは名簿を出して指さしながらこう言うのだった。 「俺らの周りに,これと・・これと・・・これは,近くに 座らせるなよ!!」 「ぁハイ・・,もう一度,伺ってよろしいですか?」慌てたように,早口でまくし立てる彼らを落ち着かせようと,私はゆっくりと聞き直した。 「朝からこの人達にこき使われるのは,イヤだからなっ! 絶対離せよっ!!」“はぃ,わかりました。”と言いながら私は,少し戸惑っていた。初めてのグループで,私は顔と名前が一致しないのだ・・・。私は極々丁重にお願いしてみた。 「あの・・・お顔と名前が一致しないので,搭乗券を配って 頂けませんか?」 「バカやろ-,アンタがやれっ!・・・俺らがやったら わがまま言ってきりがないだろ!アンタがやるンだよ!!」 「はぃ,わかりました。」日頃から金バッチを付ける先生方には,相当手を焼いているのがうかがえるが,まだ,羽田を出てもいないのに,こう何度も私の頭上にカマを振り下ろされると,同情する気もなくなるわけで,私は一生懸命,“かわいそうな人達なンだ・・・“と,自分に言い聞かせ,・・・堪えたのだった。 つづく
2010/09/09
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長年の添乗員生活の中で,忘れられないエピソードが2つある。それはどちらも,金バッチを付けた人に同行した,名ばかりの視察旅行と言われるものだった。金バッチを付けたおじさま達には,長年の経験で培った私の愛嬌で可愛がられる事はあっても,いじめられることなどほとんどないのだが・・・。私の想像を遥かに超える人間たちは,良くも悪くも私の心に残っていて,私の添乗員履歴に深く刻まれているのだ。思い出すのも腹立たしいが,打ち明ける事にしよう。一つ目は,“金バッチを取り巻くカマキリたち”二つ目は,“ある金バッチの性癖”まずはカマキリを紹介しよう。そのカマキリとは,今回の視察旅行を企画・催行した,一般的には社員旅行の幹事さんと言われるものに値するが,金バッチ達を連れて行く視察旅行の場合は,お世話係といった意味合い強い人だ。その人達の気遣いには,時に気の毒に思うほどなのであるが,このカマキリは,異常なまでに金バッチに気を遣い,添乗員を顎で使い,非常識なことを当たり前のように要求する,人間の顔をした昆虫だ。それは,梅雨真っ只中の沖縄へ行った時のことである。集合場所の羽田空港で,一匹のカマキリが早速カマを振り上げた。 「ようっ!搭乗券もらって来たか?」と,いきなり声をかけられたが,私は落ち着いて挨拶をした。 「おはようございます。添乗員の桜来空子と申します。 よろしくお願いします!」私は,笑顔で挨拶したものの,いきなり“ようっ!”とは何だ?と思っていたのは間違いないなく,世間から遠いところにいる公の人たちに,初めからバカにされてなるものか,と,きっと私の笑顔は引きつっていたのかも知れない。カマキリはもう一度言い直した。 「桜来さんよっ,搭乗券もらって来たのか?」実は,去年まで担当していた先輩の添乗員が,今回他の仕事とダブってしまい,急遽私が行くことになったのだが,その先輩があまりにも申し訳なさそうに引き継ぎをするので,“あの何か問題でも?”と,問いかけると,“本当に大変な人たちなんだ・・・”と,重い口を開いたのだった。私は自信満々でこう言った。 「金バッチのおじさま達は,私,得意ですから・・・”」先輩は何故か今にも泣き出しそうな顔で言うのだった。 「どちらかと言うと,そっちじゃないンだ。いつも同行する 2人の職員が問題ありなんだ!」 「えっ・・・,そうなんですか?どんな風に?」 「金バッチに気を遣うあまり,無理な要求を平気でして来 るし,出来ない,無理だと言うと怒り出す。・・・・・ ・・・,とにかくわがままな人たちなんだ。 どうしようもないジジイもいるし・・・。」 「・・・??」 「・・・どうか堪えてくれ!! 空ちゃん頼む!!」 「・・・?あっ,はぃ・・・。がんばります!」先輩の悲痛な姿に,私はそれ以上聞くのが怖くなった。 つづく [この物語は事実に基づくかもしれない,フィクションです 。]
2010/09/08
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私は,早速ドライバーさん達の集まっている場所へ急いだ。通常ならドライバーは既に運転席に戻り,出発の準備をしているはずだが,私たちのやり取りと聞いて一塊(ひとかたまり)になり,待機していてくれたのだ。 「お待たせしました!予定通り帰ります。」失笑が起きていたが,気を取られずに続けた。 「予定より1時間早く進んでいますので,これから時間調整を お願いします。高速道路は,80キロ位で行きましょう。 それから,1つ手前の×××インターで降りることにします。」 「ハイ,了解です!」ドライバーさん達はみんな口々に言いながら,バスへ戻って行った。すると,1号車のドライバーが私を追い越してから間もなく振り向いてこう言った。 「大丈夫,時間ぴったりに正門に着けてやるから!!」 「よろしく!!」顔見知りのそのドライバーの自信たっぷりな一言は,疑う余地はなかった。私は改めて各号車を周り,1つ手前のインターで降りることを担任の先生に伝える。“抜かりはない・・・絶対時間通りに着けてやる!!“と,私も心に誓った。間もなく私たちのバスは,最後の見学地“国会議事堂”を後にした。再び乗った高速道路は,やっぱり空いていた。と,言うよりここから先はあまり渋滞をしないところだから,返って時間が読み易い。バスは私のもくろみ通り,高速道路をゆっくりと進んでいる。バスの中は,いつの間にか静まり返っていた。後ろの席へ目をやると,子供達も,さすがに疲れを隠せない。夕べはしゃぎ過ぎたツケが回って来たようだ。無邪気な寝顔に心も癒されるようだった,が,その寝顔の中に青田先生を見つけてしまった。戦い敗れたモンスターは無残な姿で眠っていた。私は慌てて子供達の寝顔に目を向けて,もう一度癒された。定刻1分前,バスは小学校入り口の信号で,止まった。私は,胸の高鳴りを抑えられない。ナント,最後の5号車が学校の正門をくぐった時が,ジャスト到着時刻であったのだった。ドライバーがサイドブレーキを引いた時私は,“good job”と静かにドライバーへ親指を立てて合図を送った。子供達が全員降りて,最後にガイドが忘れ物をチェックしていた頃,赤木先生が声をかけて来た。 「終わって見れば,こんなもンだよね!さすが添乗員さん, プロだね。」 「恐れ入ります。」 「アイツ(青田先生)何か言ってた?」 「いえっ,別に・・・。」 「言える訳ねェよな!!」ガッハッハッハ・・・。遠慮がちではあったが,私も一緒に笑ってしまった。そんな時,赤木先生のクラスの生徒が別れの挨拶にやって来て, 「ミ・サ・エ~,バイバイ!」と,言うやいなや,逃げていった。 「テメェーこの野郎・・・,先生を呼び捨てにするなー!」と,追いかけて行ったが,追いつかないと察したのか,立ち止まってつぶやいた。 「ったくっ,親の顔が見てみてェよ!!」少し離れていた私にも聞こえたのだから,そのつぶやきは,割と大きな声だったと思う。すると妙に落ち着き払った声で誰かが返事をした。 「どうもスイマセン。」私が先生の立場だったら,その声の方向に目を向ける事さえためらうだろう。でも,驚くことに赤モンスターは,迷わずその声の方を向いて,言うのだった。 「いいえ,どういたしまして!!」 「・・・・・???!」仕事上,吹き出して大笑いすることも出来ず,あまりの衝撃に私は固まり,しばらく息継ぎを忘れる位だった。落ち着きを取り戻して私は,帰り車の中でふと考えるのであった。お客様の中には,それはそれはいろンな人がいて,自己中な人,あまのじゃくな人,ただエロい人,やたら威張る人,等々。若い頃は,いちいち腹立たしかったが,最近は人間観察することでこの感情が抑えられているのを知り,なおもこの観察が楽しくなって来たのだった。だから,今回の仕事はとても楽しかった・・・と,言えなくもないのだが,自分の子供があの学校へ通い,あの先生達に何を教わるのだろう,と,考えると・・・とても怖くなる。だが,避けては通れないこともわかっている。こうなったら,“私もモンスターになるっきゃない!”と,結論づけたのだった。 おわり
2010/09/03
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任侠のごとく縦社会を守り抜く教育界で,目上の人を手招きして呼び寄せるなど,あってはならないことだろう。だが,その中にあってもけして流されることなく,自分を貫き通して来たのだから,赤木先生は勇者であることには間違いないだろう。そして,白崎校長と言う心強いパートナーを得て,同じ船に乗っているように思う。穏やかな海を静かに進みたい白崎校長に相反して,小さなオールで大きな波を自ら起こしながら船をこいでいる赤木先生に,必死でつかまりながらも,優しいまなざしで見守る校長先生を想像した。他のドライバーさん達と談笑しながら一服していた校長先生は,赤木先生の呼びかけに,すぐさま反応し急いで煙草を消しこちらへ走って来た。 「あのさぁ校長,・・・・・。 青田先生の・・・・。・・ ・・ 添乗員さんが・・・・・・・・,どうする?」と,赤木先生は,これまでの私と青田先生のやりとりを,大ざっぱに説明してくれた。何度となくうなずきながら聞いていた校長先生は,青田先生の顔を顔を見ながらゆっくりと話し始めた。 「青田先生の心配は,そのお母さん達の事だけ?」 「・・ええェ,そうです!」 「それ誰・・・?」 「1組の黒澤君のお母さんです!!」 「あぁ・・・,いつもの。 それから?」 「・・・それだけです。」 「うん,わかった!ウンウンウン・・・ もし何か言って来たら,私がお話ししましょう・・・。 添乗員さんが時間調節してくれる・・・と言うのであれば, おまかせしましょう。 予定になかったところに立ち寄って,もし何かあったら・・・ と,考えると,やっぱり避けた方がいいでしょ?! もう,私も後1年(定年まで)ですし! ァハッハッハハ。」最後まで穏やかにゆっくりと話すその口調は,私たち3人も穏やかなキモチにさせられた。 「っつー事で,チャンチャンだね。校長もう一服したいでしょ? 添乗員さん,時間大丈夫?」 「はぃ,・・・あと3分です。」 「じゃ急ごう・・・,・・・アタシにも1本ちょうだい?!」そんな気もなさそーな校長先生を,赤木先生は引きずるようにさっきの喫煙所に連れて行くのであった。その姿を,私はとても微笑ましく見送っていた。ふと気付くと,もうそこに青田先生の姿はなくなっていた。 つづく
2010/09/02
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「そんな事を言う父母がいるンですかぁ・・・,大変ですねェ。」私は,少し驚いて見せたり同情して上げるのも礼儀だと思い,先生を労ったつもりだった。 「そうです。いるンです!私たちの苦労がわかりますか? わからないでしょ?! アナタには!」何度も繰り返されるその言葉にあきれかえっていたため,顔に出さないように堪えていると,私の顔は顔面神経痛のように引きつっていた。“アンタに私たちの苦労なんてわかりっこない・・・”とばかりに涙目になって,何度も何度も訴えている青モンスターは,日頃からこれらのモンスターペアレントに悩まされているのだろう,と察した。いずれにしろ,自分勝手でわがままな親たちにもあきれるが,理不尽な要求に唯々ひれ伏しているだけで,モンスターペアレントを怖がってばかりいるモンスターには,親たちを上手に納得させる事など出来るはずもなく,思いがけず巻き込まれてしまう者にとってこの両者が,同じようなモンスターに思えるのである。「それじゃぁ,これからの道中も何が起こるかわかりませんから, このまま時間調整をしながらゆっくり帰る,って方法もあります けれど・・・。」「???どうして,&$*記念館に行ってくれないの? このまま帰っても予定時刻に到着するって,アナタ約束出来るの?」どうやら私の意見など聞くつもりはなかったようだ。私は自信を持って“約束します!”と言いたかったが,少々私の顔色も変わって来ていて,同じモンスターになりそうな予感がして来て・・・,その言葉を飲み込むことにした。私としては,こんな大きな団体を引き連れ,行程の急な変更はなるべくしたくなかったのが正直なところだったが,ここまで言われては仕方がない。諦めよう・・・。 「わかりました。それでは・・・」 「よォよォよォ・・ 青田先生! 黙って聞いてりゃよォ!!」と,割り込んで来たのはこの2日間,青田先生とぶつからないよう少し距離を置いていた赤木美沙絵先生だった。 「ナニわけわかんねェ事言ってンだぁ? 親がどうの・・・って 添乗員さんには関係ねェーだろう・・・! だいたい,校長の許可取ったンですか,ツゥの?」 「・・・添乗員さんと相談しろって・・・。」予想外に,青モンスターは怯んでいる。 「青田先生,アンタのは相談じゃねェだろ!ったくっ。」と,言いながら赤木先生は辺りをぐると見回して,校長先生を見つけると, 「オーイ・・・,校長!」仕事上,いろんな学校の先生方を見て来たが,どこよりも上下関係の厳しい教育界において,校長先生の事を“オーイ,校長”なんて呼ぶ人はいない。おまけに赤木先生は手招きをして,校長先生をこっちへ呼び寄せているではないか・・・。 つづく [この物語はあくまでもフィクションです]
2010/09/01
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