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シリアの反政府軍へ武器を運んでいた貨物船が拿捕されたとレバノンのメディアが報道したのは先週の金曜日、4月27日のこと。拿捕されたのは26日の夜のようだ。28日にレバノン海軍はこの事実を認めている。 その船とはシエラ・レオネ船籍のルトファラー IIで、3つのコンテナには重機関銃、砲弾、ロケット弾、ロケット・ランチャーなどの武器弾薬150トンが入っていた。リビアのベンガジでコンテナを積み込み、レバノン北西部の港トリポリへ向かっていたという。 リビアの新体制が武器をシリアの反政府軍に渡しているとする報道もあったが、今回のケースでは密輸に関与していないとしている。ベンガジにはサウジアラビアやカタールが管理している倉庫が5棟あるようなので、こうした国々が黒幕だという可能性はある。 リビアでムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊した直後からリビア軍の武器弾薬をシリアへ運び込む工作にNATO軍機が使われているという話は流れていた。 カダフィ政権を倒したのはNATO軍だが、地上部隊の主力はアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)。この武装集団は次のターゲットをシリアと定め、兵士をシリアへ送り込んでいたが、同時に武器弾薬も流れていったとされている。サウジアラビアがヨルダン経由でシリアの反政府軍FSA(自由シリア軍)に武器を供与しているとも伝えられていた。 昨年春にシリアで反政府運動/攻撃が本格化するが、その時からFSAはトルコの米空軍インシルリク基地でNATO軍などの訓練を受けてきたとする情報がトルコで流れ、教官としてアメリカは情報機関員と特殊部隊員を、イギリスやフランスは特殊部隊員を派遣しているとされている。またレバノンやヨルダンの北部にもFSAの拠点があるという。レバノンのトリポリはそうした地域だ。 それだけでなく、シリア領内へ自国の特殊部隊員を潜入させているともいう。イスラエルで伝えられている情報によるとイギリスとカタール、民間情報会社ストラトフォーの電子メールに書かれた推測によるとアメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコが特殊部隊を送り込んでいる国だ。 カダフィ体制が崩壊した直後からNATO軍はシリアの反体制軍を支援していたと言われているので、今回の件で武器の輸送を黙認していたとしても驚きではない。少なからぬ人がそう思っていることだろう。 今回、船が武器を密輸しようとしていることをアメリカ/NATO軍、イスラエル軍、あるいはUNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)も知っていた可能性が高いのだが、阻止するそぶりは見せていない。シリアの体制転覆を狙っているのはこうした勢力であり、当然なわけだが。
2012.04.30
レア・アース(希土類)の共同開発をすることで日本とカザフスタンの両政府が5月に正式合意すると朝日新聞が報じている。 そのレア・アースとは「ジスプロシウム」。原子炉の制御用材料、光磁気ディスクの材料、あるいは永久磁石の中で最も強力だと言われるネオジム磁石の添加物などとして使われているようだ。開発の基本計画には住友商事と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、そしてカザフスタンの資源開発公社カザトムプロムが調印するという。 住友商事は2010年、ウラン鉱残渣を活用したレア・アース回収事業を目的としてジョイント・ベンチャーのSARECOを設立、東芝とカザトムプロムもジョイント・ベンチャーをスタートさせることで合意。さらに、日本原子力発電や丸紅もこの分野に参入する姿勢を見せている。そういえば、東電福島第一原発が過酷事故を引き起こした後も原発推進を叫び続けていた経団連の米倉弘昌は「住友化学」の会長だった。 住友商事とカザトムプロムは以前から緊密な関係にある。カザフスタンは世界最大のウラン産出国で、2006年から日本にも供給している。このビジネスを取り仕切っているAPPAK社の株主はカザトムプロム(65%)、住友商事(25%)、関西電力(10%)であり、融資を担当しているのが国際協力銀行。2009年になると、住友商事、関西電力、原子燃料工業はカザトムプロムと関電の原発向けにウラン処理を行うことで調印している。 原子燃料工業とは1972年に住友電気と古河電気の原子燃料事業を統合して設立した会社だが、2009年5月にウェスチングハウスが両者から株式を譲り受け、52%を保有する筆頭株主になっている。 言うまでもなく、ウェスチングハウスはアメリカの総合電機メーカーだが、加圧水型原子炉を開発、製造してきたことで有名だ。そのウェスチングハウスの株式を購入すると2006年2月に東芝が発表、10月に取り引きは成立している。持ち株比率は東芝が77%、ショーが20%、そしてIHIが3%。ただ、翌年の8月には東芝が手持ち株式の1割、つまり全体の7.7%をカザトムプロムに譲渡している。原子燃料工業は東芝の系列下に入ったということになる。 2006年は日本とカザフスタンが「核」で結びついた年でもある。当時の首相、小泉純一郎はこの年の8月にカザフスタンを訪問し、「原子力平和的利用協力の促進に関する覚書」に調印している。小泉が動いたということは、背後にアメリカの支配層が存在していることを示唆している。 現在、カザフスタンやアゼルバイジャンはアメリカやイスラエルの強い影響下にある。アメリカの「友好国」ではありがちな話だが、人権を無視した事実上の独裁国家だということも知られている。選挙に不正があると指摘されているが、「西側」は寛容な姿勢を見せている。そのカザフスタンのためにロビー活動を展開しているひとりがビル・クリントン元米大統領だ。 劣悪な労働環境などに対する抗議が昨年12月にもあったのだが、活動に参加した人びとを治安当局は銃撃し、現地のメディアによると10名、独立系ジャーナリストのマーク・エイムスによると約70名が殺されている。負傷者は数十名から数百名、勿論、多くの人が逮捕された。ヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティー・インターナショナルといった「西側メディア御用達」の人権団体もカザフスタン政府を批判、拷問が行われているという訴えもある。 カザフスタンにはイスラエルも食い込んでいる影響なのか、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)で中心的な役割を果たしてきたリチャード・パールもこの国で石油ビジネスを展開しようとしている。「レア・アースが手に入るようになってよかった」とは行かない現実がある。
2012.04.29
アメリカ政府はステルス戦闘機のF22をアラブ首長国連邦のアル・ダーファ基地へ配備したという。アラスカのエルメンドルフ・リチャードソン基地にいる第302戦闘飛行隊の戦闘機のようで、イスラエルがイランを攻撃した場合、イランの防空体制を破壊するためだとも言われている。先月にはマサチューセッツ州空軍州兵の第104戦闘航空団のF15がすでに配備されているようだ。 現在、イランの近くにアメリカ軍は2隻の空母、エイブラハム・リンカーンとエンタープライズを貼り付けているが、戦闘になれば別の1隻も派遣するらしい。ともかく、アメリカ政府はイランを軍事的に恫喝している。 イランとの戦闘を想定した動きとしては、今月上旬にアメリカ軍は湾岸の独裁産油国、つまりサウジアラビア、アラブ首長国、クウェート、そしてバーレーンの軍隊と大規模な軍事演習を実施、エンタープライズとエイブラハム・リンカーンから飛び立った100機の戦闘機に加え、湾岸の独裁産油国軍の100機がホルムズ海峡の上空を飛び回ったようだ。その前、3月にはイスラエルやギリシャの軍隊と地中海からエーゲ海にかけての海域で軍事演習「ノーブル・ダイナ」をアメリカ軍は実施、ロシアから強く抗議されている。 シリアにしろ、イランにしろ、アメリカで最も好戦的な姿勢を見せているのは親イスラエル派のネオコン。イスラエル政府も好戦的だが、こうした姿勢を治安機関であるシン・ベトのユバル・ディスキン元長官が批判している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は信頼に値せず、和平も望んでないと明言しているのである。確かにその通りなのだが、シン・ベトの元長官がそうしたことを言うとは、ちょっとした驚きである。 考えてみれば、モサドのメイア・ダガン元長官は議会でガザ支援船を襲撃した軍を批判していた。21世紀に入ってから、つまりボリス・エリツィン時代のロシアで巨万の富を築いた富豪がウラジミル・プーチンの時代になってイギリスやイスラエルへ亡命、それからのイスラエルは常軌を逸している。だからこそドイツの作家、ギュンター・グラスもイスラエルは世界の平和にとって脅威だと声を上げたのだろう。 今年3月には韓国軍とアメリカ軍は「軍事訓練」を実施している。朝鮮の内戦に軍事介入して自分たちに都合の良い体制を作り上げるという筋書きで、そのベースは朝鮮の崩壊を想定した「CONPLAN(概念計画)5029」(2008年に5029はOPLANになったとする情報もある)だったようだ。朝鮮半島で戦争をやりたがっているものネオコン。 この「軍事訓練」が実施される3カ月前、昨年12月に朝鮮の政府高官はアメリカ政府に対してロケットの発射計画を伝え、4月に発射を試みて失敗している。発射が間近になってから日本のマスコミは大々的に朝鮮を批判するキャンペーンを展開したが、奇妙な話である。 その後、南シナ海ではフィリピン軍とアメリカ軍が合同軍事演習を実施して中国とフィリピンとの関係が緊張、バルカンではブルガリアとアメリカが大規模な空軍の演習を行っている。アメリカは戦争なしには生きられないようだ。こうした動きを支援しているのは東京都の石原慎太郎知事。「反米」的なことを口にする人物だが、所詮はアメリカの手駒にすぎない。 そのアメリカには伝説的な海兵隊の軍人がいる。名誉勲章を2度もらったというスメドリー・バトラー少将。この将軍は戦争を「押し込み強盗」だと言っている。アメリカは戦争で略奪を続けないと支配体制が崩壊するのだろう。
2012.04.29
アメリカの下院は4月26日、CISPA(サイバー情報共有保護法)を可決した。この法律はインターネットの監視を強化、事実上、あらゆる情報をアメリカのDHS(国土安全保障省)が入手できるようにすることが目的の法律で、昨年11月に共和党のマイケル・ロジャーズ下院議員が111名の議員と提出していた。今回の議決で賛成したのは共和党議員206名と民主党議員42名(248名)、反対は共和党28名、民主党140名(168名)、棄権は共和党7名と民主党8名(15名)。アメリカの下院はファシストが多数派を占めているようだ。 もっとも、すでにアメリカの情報機関はインターネット上を飛び交う情報を全て監視、記録、分析するシステムを築き上げている。このことは本ブログで何度も書いてきた。 何しろ、コンピュータが普及する前から反戦/平和運動を監視するためにFBIは「COINTELPRO」、CIAは「MHケイアス」という監視プロジェクトを実行している。アメリカの支配層は庶民の反乱を恐れているのだろう。 監視するためにコンピュータが中心的な役割を果たすようになるのは1970年代に入ってから。1970年代の初めに通信衛星が打ち上げられると、通信内容を自動的に傍受するシステムが動き始めている。これがECHELON。おそらく、この極秘監視システムを最初に暴露したのはイギリスのジャーナリスト、ダンカン・キャンベルである。 このシステムを動かしているのはアメリカとイギリスの電子情報機関、つまりNSAとGCHQ。この2カ国はUKUSA(ユクザ)という連合体を作り、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの機関を従えて情報活動を続けている。日本はこの5カ国の周辺にいる「協力国」のひとつだ。 言うまでもなく、ECHELONなどで集めた情報を蓄積、分析するシステムも開発されている。1970年代の後半に登場したPROMISもそうしたシステムのひとつ。このシステムはINSLAWという民間企業によって開発されたのだが、あまりに優秀だったことからロナルド・レーガン政権の司法省は「横領」(破産裁判所や連邦地裁、あるいは下院司法委員会がそのように認定したが、控訴審で逆転判決)している。 司法省が横領したという判決が出た・・・大きなニュースだと思うのだが、日本で報道されたという話は寡聞にして知らない。 その当時、アメリカの日本大使館に一等書記官として勤務していた原田明夫もPROMISに注目、実際には部下の敷田稔がINSLAWと接触、法務総合研究所は1979年と80年、2度にわたって概説資料と研究報告の翻訳を『研究部資料』として公表した。後に原田は法務省刑事局長として「組織的犯罪対策法(盗聴法)」の法制化を進めている。 一方、アメリカでは、国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)を中心にして国民を監視、追跡するシステムを開発してきた。例えば、学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどを収拾、分析するだけでなく、GPSなどで行動を追跡、最近では顔を識別するシステムが進歩し、顔写真があれば監視カメラを利用してターゲットがどこにいるかを調べることが可能になっている。最近ではTwitterやFacebookもターゲットだ。 それだけでなく、スーパー・コンピュータを使って「潜在的テロリスト」を見つけるためのシステムを開発しているという。膨大な量のデータ、例えばどのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、分析ようというわけである。 要するに、支配層にとって都合の悪い人間、あるいはそうした種類のおとなになりそうな子どもを見つけ出そうというわけだが、その前に支配層が望む人間を作る仕組みも存在している。「教育」だ。石原某や橋下某が実行している政策は、より効率的に教育/洗脳することにある。教育を洗脳に使うのは、「優生学」やプロパガンダと同様、ギリシャ時代から続く手法らしい。 こうした監視システムを合法化するのがCISPAを持ち出した理由なのだろう。当然のことながら、議案に賛成した議員もターゲットになる。議員であろうと官僚であろうと大企業の経営者であろうと学者であろうと記者であろうと、誰でも支配層にとって目障りな人間は潰されることになりそうだ。インターネットにおけるアメリカ企業の重要度を考えれば、ターゲットは勿論、全世界に及ぶ。
2012.04.27
政治資金規正法違反(虚偽記載)の容疑で強制起訴されていた小沢一郎議員に対し、東京地裁は無罪判決を言い渡した。2009年3月、東京地検特捜部が小沢議員の秘書、大久保隆規を逮捕したことから始まった今回の「事件」の場合、起訴されたこと自体が不可解であり、無罪判決は当然の結果だと言える。当然のことが通らないのが日本の司法システムだとはいえ、厚生労働省の村木厚子元局長のケースや今回のケースはひどすぎた。 こうした「事件」では検察だけでなく最高裁にまで疑惑の目が向けられている。朝日新聞の報道によると、検察官と裁判官の人事交流を法務省は今年度から廃止したそうだが、司法システムへの信頼が揺らいでいることに危機感を持ち始めているのかもしれない。 小沢議員の場合、「気に入らない」とか「嫌い」という感情だけでなく、党利党略で攻撃されていたが、その背後でアメリカ支配層の意向が反映されていたと信じている人も少なくない。少なくとも一時期、小沢議員はアメリカと良い関係だったようだが、新自由主義を信奉する勢力とはうまくいかなかったのかもしれない。 アメリカやイスラエルの支配層は気に入らない相手を1979年頃から「テロリスト」と呼ぶようになった。当初はソ連がそう呼ばれていたが、最近ではレオン・パネッタ国防長官がイランと友好的な関係を結んでいるラテン・アメリカの国々をテロ支援国扱いしている。自分たちが公然とテロを続けていることを棚に上げ、好い気なものである。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) そのイランをイスラエルやアメリカの親イスラエル派は攻撃するべきだと叫んでいる。イランが核兵器の開発を決断したとは思わないと発言しているイスラエル軍のベニー・ガンツ参謀長によると、複数の国がイランを攻撃する準備をしているという。CIAもイランが核兵器を開発しているとは考えていない。「核兵器の開発」がイランを攻撃する理由ではないということなのだろう。 アメリカは自国の「テロ組織」、つまりOPCやCIAの計画局/作戦局/NCSを使い、気に入らない体制を破壊してきた。例えば、1953年のイラン、1954年のグアテマラ、あるいは1973年のチリで正当な手続きを経て誕生した政権をクーデターで倒している。「テロ帝国」のアメリカが「テロとの戦争」を叫ぶとは、ブラックジョークとしか言いようがない。
2012.04.26
シリアに軍事介入するべきだとフランス政府は叫んでいる。大統領選で劣勢のニコラ・サルコジは軍事的な緊張を高め、自分に有利な状況を作り出そうとしているのかもしれないが、危険な火遊びである。 フランスは国連の和平工作が失敗したらという条件をつけているが、和平工作に強く反対しているのは外国から支援を受け、トルコなど国外からシリアへ侵攻している反政府武装勢力。和平工作が進み、戦闘が治まると反政府軍は早速、拠点にしていたホムスへ戻ったという。住民のいないホムスへ。 こうした反政府勢力を支援している外国の勢力とは、NATO(アメリカ、イギリス、フランス、トルコなど)や湾岸の独裁産油国(サウジアラビア、カタール、バーレーンなど)、さらにアル・カイダ系武装勢力が加わる。こうした勢力の圧力に屈しないシリア政府をアラン・ジュベ仏外相は我慢ならないようだ。 アメリカの中で最も好戦的な姿勢を見せているのは親イスラエル派のネオコン。ふたりの上院議員、ジョン・マケインとジョー・リーバーマンは象徴的な存在だ。先日もトルコを訪問、反政府軍の中心的な存在である自由シリア軍(FSA)のリーダーと会談したと伝えられている。 本ブログでは何度も書いたが、アメリカでシリアの体制転覆を目指して工作を始めたのはネオコンに担がれていたジョージ・W・ブッシュ政権。内部告発を支援しているウィキリークスが公表した文書によると、シリアの反体制派はアメリカ国務省から資金援助を受け、プロパガンダを目的としたバラダTVをロンドンに設立している。 昨年春からはFSAをトルコにある米空軍インシルリク基地で訓練しているが、それだけでなく少なからぬ国が特殊部隊をシリア領内へ送り込んでいるようだ。例えば、イスラエルのメディアはイギリスとカタールの特殊部隊が潜入していると報道、民間情報会社ストラトフォーの電子メールには、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコの特殊部隊が入っているという推測が書かれている。 シリアへの本格的な軍事介入はロシアと中国が反対、NATO軍も簡単に動けない状況だが、そのロシアと中国への軍事的な圧力もアメリカは強めている。今月、南シナ海ではフィリピン軍とアメリカ軍が合同軍事演習を実施、バルカンではブルガリアとアメリカが大規模な空軍の演習を行っている。
2012.04.25
アメリカの国防総省は新たな情報機関「DCS(国防秘密局)」を創設する計画だと伝えられている。レオン・パネッタ国防長官は先週、この計画を承認したという。 新組織を作る切っ掛けはDNI(国家情報長官)が行った研究で、数百名がCIA(中央情報局)と協力することになりそうだ。活動のターゲットは中国やイランのように、戦争状態にはないものの、情報を収集する必要性の高い国や組織になるとされている。 CIA側で新組織と関係してくるのはNCS(国家秘密局)だという。2005年に作戦局を吸収する形で作られた部署である。 作戦局は1973年3月まで計画局と呼ばれ、クーデターや要人暗殺といった破壊活動、いわば「汚い仕事」を行っていた。さらにさかのぼると、1948年に創設されたOPC(政策調整局)、そしてOSS(戦略事務局)の破壊工作部門に行き着く。DCSがこうした流れをくむのだとすれば、「テロ組織」ということになる。 OPC、計画局、作戦局といった部署は軍の特殊部隊と協力関係にあった。特殊部隊は正規軍よりもCIAと関係が深いとも言われるほどで、DCSにも関わってくる可能性がありそうだ。 現在、アメリカ政府は国外で暗殺を実行すると公言している。その手段として無人機が使われているのだが、無人機に関する研究がアメリカで始まったのは1996年より前。開発を担当したのはロッキード・マーチンだった。途中、同社は開発を止めると発表しているが、実際は秘密裏に研究開発を続けていた。 そうした無人機のひとつがRQ-170(センチネル)。これはステルスの無人機で、CIAは偵察を目的としてイラン領内に侵入させていた。 ところが、昨年12月に何らかの理由でアフガニスタンとの国境から200キロメートル以上イラン領内へ入った地点で不時着、回収されている。当初、ジャミングで乗っ取られたという話も流れたが、無人機の故障という説もある。 革命防衛隊のアミル・アリ・ハジザデ航空司令官によると、イラン側は回収した無人機に記録された情報を解読することに成功、オサマ・ビン・ラディンが住んでいた邸宅をアメリカの特殊部隊が襲撃する前、この無人機が邸宅の上空を飛行していることも判明したという。また、クローン機の製造に着手しているという。 こうした無人機はアメリカ国内でも治安対策として使われ始めている。DCSも自国民をターゲットにする可能性があるだろう。何しろ、CIAにはMHケイアスという前歴がある。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を)
2012.04.25
3月30日、パレスチナのガザやヨルダン川西岸で住民とイスラエル軍が衝突し、20歳のパレスチナ人男性が殺され、200名以上が負傷したと伝えられている。この日、アラブ系住民は「土地の日」の抗議活動を行っていた。1976年3月にイスラエル政府はアラブ系住民の土地を略奪、この出来事を忘れないために作られた記念日が「土地の日」である。 このとき、ガリラヤにあるアラブ系住民の土地を収用するとイスラエル政府は発表、この決定に人びとは抗議していた。そのとき住民は非武装だったが、軍と警察は激しく弾圧して住民4名を軍が射殺、2名を警察が殺している。また約100名が負傷、数百名が逮捕されたという。 そもそも、イスラエルという国自体、先住のアラブ系住民から土地を奪って建国している。1948年4月4日にシオニストはパレスチナの占領を目指して「ダーレット作戦」を発動、8日にはデイル・ヤーシーン村で254名のアラブ系住民を虐殺し、恐怖したアラブ系住民は避難することになる。 約140万人いたというアラブ系住民のうち5月だけでも42万人以上がガザ地区やトランス・ヨルダン(現在のヨルダン)に移住し、イスラエルとされた地域にとどまったパレスチナ人は11万人強にすぎないという。そして5月14日にイスラエルの建国が宣言された。アラブ諸国の軍隊がアリバイ工作的に出てくるのはその翌日である。 欧米には強力な親イスラエルのネットワークが存在し、破壊と殺戮を繰り返しても非難は口先だけだった。ところが1982年9月にレバノンのパレスチナ難民キャンプで数百名から3000名の難民をイスラエル軍とファランジスト党のメンバーが虐殺してから欧米でもイスラエルに批判的な人が増え、最近ではドイツの作家、ギュンター・グラスも声を上げた。イスラエルは世界の平和にとって脅威だとグラスは主張している。 今年4月中旬にはヨーロッパやカナダからパレスチナ人に連帯するため、イスラエルへ入ろうと多くの人が集まってきた。こうした動きを恐れたのか、イスラエル政府は数十名の入国を拒否し、帰国させている。 その後、ヨルダン川西岸では自転車で移動していたパレスチナ人やヨーロッパ人をイスラエル軍が襲い、けが人が出ている。その様子を撮影した映像(その1、その2)、また別の場所での出来事がインターネットで流され、人びとの怒りを買うことになった。 現在、そうしたイスラエルを守っているのはアメリカ。支配層の一部はイスラエルと一線を画そうとしているようだが、強力なイスラエル・ロビーの影響は無視できない。イスラエルを使って大儲けしている戦争ビジネスも警察国家イスラエルの守護神だと言えるだろう。 そのアメリカではファシズム化が進み、刑務所国家になりつつある。100人にひとりが刑務所に収監され、囚人の数は全世界の4分の1に達するという。いわゆる「スリー・ストライクス法」が1993年から本格的に適用され始めた影響だというが、要するに貧困対策を放棄、その代わりに刑務所を用意したのである。しかも、刑務所の私営化が進んでいる。刑務所ビジネスへの投資で有名な金融機関のひとつがウェルズ・ファーゴ。麻薬資金をロンダリングしていた銀行、ワチョビアを買収したことでも知られている。
2012.04.21
シリアの内戦/軍事介入を平和的に解決しようという試みがコフィー・アナン元国連事務総長を中心に進められている。とりあえず停戦に漕ぎ着けたようだが、こうした動きを如何にして壊し、リビアと同じように軍事力で制圧できるかと「西側」の好戦的な勢力は画策、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官はシリアに対するさらに厳しい制裁を求めている。当然、外国勢力の手先として動いているFSA(自由シリア軍)も戦争の継続を望み、停戦を利用して住民の去ったホムスへ戻っている。 リビアの場合、米英仏は「飛行禁止空域」を設定することに成功、軍事介入に突き進んでいった。飛行禁止空域の設定について、アメリカのロバート・ゲーツ国防長官は戦争につながると警告していたのだが、巨大軍需企業のロッキード・マーチンをスポンサーとするクリントン国務長官に押し切られた形だ。実際、空域を設定した直後から本格的な空爆が始まっている。 アメリカで飛行禁止空域を設定しろと早い段階から主張していたのはジョン・マケイン上院議員やジョセフ・リーバーマン上院議員。つまり親イスラエル派のネオコンである。親イスラエル派と戦争ビジネスが結びつき、アメリカを戦争へ引きずり込んでいる。 マケインやリーバーマンはシリアへの本格的な軍事介入も望んでいる。今年4月上旬にはトルコを訪問、FSAのリーダー、ムスタファ・アル・シェイクやリアド・アル・アサドらと会談したと伝えられている。 シリアの体制転覆を目指す工作を始めたのは、ネオコンに担がれたジョージ・W・ブッシュ大統領。内部告発を支援しているウィキリークスが公表した文書によると、シリアの反体制派はアメリカ国務省から資金援助を受け、プロパガンダを目的としたバラダTVをロンドンに設立している。 昨年春からはFSAのような武装集団がシリア領内へ送り込まれ、アメリカを含む何カ国かは特殊部隊も送り込んでいると伝えられている。イスラエルのメディアはイギリスとカタールの特殊部隊が潜入していると報道、民間情報会社ストラトフォーの電子メールによると、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコの特殊部隊が入っていると推測されている。 リビアでムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊すると、アル・カイダ系武装集団がシリアへ移動したとも伝えられている。カダフィ体制を転覆させたのはNATO軍だが、地上軍の主力はアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)だった。 現在、シリアで起こっていることはアメリカなどNATO諸国や湾岸の独裁産油国などによる軍事的な体制転覆工作。この工作にはイスラエルも深く関与していることはネオコンの動きから推測できる。しかもアル・カイダ系武装集団が参加している。 人民の蜂起が独裁者を倒すという妄想に酔いしれている人もまだいるようだが、「平和的な民主化要求運動」をシリア軍が弾圧しているという構図で内戦を描くことは正しくない。
2012.04.20
内部告発を支援する目的で創設されたウィキリークスの「顔」で、アメリカとスウェーデン両国の政府から狙われているジュリアン・アッサンジをホストにするRT(ロシア系のメディア)の番組が始まり、アメリカのメディアから罵詈雑言を浴びせられている。その番組で最初のゲストに選ばれた人物は、ヒズボラの指導者サイード・ナスララーだった。 ヒズボラはハマスと同様、2001年にアメリカ政府から「テロリスト」の称号を与えられた。イスラエルやアメリカの親イスラエル派(ネオコン)の要求にバラク・オバマ大統領が応えた形だが、両グループのメンバーは民主的なプロセスを経て政治活動を展開している。アメリカから「テロリスト」と呼ばれる人びとは、アメリカの支配層にとって都合の悪い人びと、あるいは敵対関係にあると庶民に思わせたい人びとにすぎない。 いわゆる「西側」に住んでいると、アメリカ支配層の主張は嫌と言うほど聞かされる。そうした主張を伝える役割を与えられているのがメディア。そうした関係の強いメディアは巨大化し、「本流」になる。 第2次世界大戦後、メディアを使った情報操作を組織的に行う仕組みがアメリカでは作られた。いわゆる「モッキンバード」だ。その中心にいたのがアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてフィリップ・グラハムの4名。 ダレスはウォール街の弁護士で、大戦中から1960年代にかけてアメリカの破壊活動を指揮していた人物。ウィズナーもウォール街の弁護士で、ダレスの下、破壊工作に従事していた。戦後、破壊工作のために作られた極秘機関OPCを指揮していたのはこのウィズナー。後にOPCはCIAの内部に入り込み、破壊工作部門の核になる。ヘルムズもダレスの側近。情報機関に入る前にはメディアで働いていたのだが、祖父は国際的な投資家。グラハムはワシントン・ポスト紙のオーナーだった人物で、大戦中は陸軍情報部に所属していた。また、彼の義理の父であるユージン・メーヤーは金融界の大物として知られている。 要するに、4名とも金融界と情報機関、両方に深い関係がある。言い換えると、アメリカの金融界(アメリカに限らないだろうが)は血まみれだ。戦後、ワシントン・ポスト紙は急成長したのだが、その理由はここにあった。後にウォーターゲート事件で名を売ることになるが、その背景も同じだ。 この4名にはメディア界の大物たちも協力していた。グラハムと妻、キャサリーン・グラハムは勿論、CBS社長のウィリアム・ペイリー、TIME/LIFEを発行していたヘンリー・ルース、ニューヨーク・タイムズ紙の発行人だったアーサー・シュルツバーガー、クリスチャン・サイエンス・モニター誌の編集者だったジョセフ・ハリソン、フォーチュン誌やLIFE誌の発行人だったC・D・ジャクソンなどだ。 ノーム・チョムスキーはメディアを「プロパガンダ工場」と呼んだが、こうした背景を考えれば、当然の帰結だ。大手メディアに「言論の自由」を期待するのは無理な話なのである・・・もっとも、日本のマスコミよりはマシだが。
2012.04.19
東電福島第一原発4号機の使用済み核燃料プールが危険な状態にあることは多くの人が指摘している。近い将来、大きな余震が原発の近くで起こると言われているが、その際、プールを支えている構造物が崩壊すれば、東日本が壊滅するだけでなく、被害は地球規模で広がると懸念されているのである。そうした状況であるにもかかわらず、日本政府や東電は対応が鈍い。 そうした中、4月6日にアメリカ上院のエネルギー委員会に所属するロン・ハイデン議員が日本を訪問して福島第一原発を視察、予想以上に原発の状況が悪いことを知り、帰国してから各方面に働きかけているようだ。何しろ、4号機のプールが崩壊すれば、アメリカにも被害が及ぶ可能性がある。 ハイデン議員も4号機を含む使用済み核燃料プールの状況を最も心配している。日本政府の緩慢な姿勢に業を煮やしたのか、国際的な支援を受けるように日本政府を説得するべきだと考え、ヒラリー・クリントン国務長官、スティーブン・チュー・エネルギー長官、グレゴリー・ヤツコNRC(核規制委員会)委員長らに書簡を送っている。 昨年3月11日の地震で福島第一原発は破壊され、大量の放射性物質を放出しはじめた。その当時から現在に至るまで、日本政府は外国の関与を極度に嫌っているように見える。 事故の1年前、東電はセキュリティ対策でイスラエルのマグナBSPと契約、炉心の状況を監視できる状態で特殊カメラを設置、事故後も会社のスタッフが残っていたという。ただ、事故から4日目の時点では、原子炉内部の様子を調べることを日本側から許されていなかったようだ。 21世紀に入ってから、太平洋地域では大きな地震が連続している。例えば、2004年12月にはスマトラ沖でマグニチュード9.1、2010年2月にはチリ沖でマグニチュード8.8の地震が起こっている。スマトラ沖の場合、2005年3月にマグニチュード8.6、07年9月に同8.5、12年4月には同8.6と同8.2というように大きな地震が続いた。 日本も警戒しなければならない時期に入っているわけで、原発を再稼働させるなどは論外。原発を停止させるだけでなく、各原発の使用済み核燃料をプールから取り出し、少しでも安全性の高い状態で保管する必要がある。
2012.04.19
大阪を拠点としているジャーナリスト、ジェームズ・コルベットは、支配層が社会をコントロールする手段として教育と「国家安全保障」を指摘している。洗脳と恐怖と言い換えることもできるだろう。アメリカや日本でも実際に行われている手法だ。 アメリカでは「アカ」や「テロ」など、手を変え品を変えて恐怖を煽っているが、日本も大差はない。アメリカと同じように「アカ」や「テロ」もそうだが、外交では「中国」や「北朝鮮」、経済では「財政破綻」を使っている。失業率を高めることも「恐怖政治」の定番だ。 教育の問題は本ブログでも取り上げたことがあるのだが、ここでは再度、教育について考えてみたい。 支配体制を確立する上で教育が重要な意味を持つことを明治政府も認識、1890年10月には「教育勅語」を発布している。「忠君愛国」と「儒教的道徳」を国民に植えつけ、天皇制の思想的な基盤を築くことが目的だ。こうした教育を受けた人びとが社会の中堅になるのは1920年代から30年代。「戦前レジーム」の根幹はここにある。 こうした流れの中で作り上げられたのが皇国史観。「天皇が至高の存在であることを学問の大前提」として、「天皇に忠義であったか否か、忠臣か逆臣かで人物を評価し、その人物の行動をあとづけることによって歴史物語を描写した」(本郷和人著『人物を読む 日本中世史』講談社)もので、歴史とは呼べない。 その内容は、「天皇に従属する軍部と政府が支配する日本」という構図を全ての時代に当てはめる荒唐無稽な代物なのだが、平泉澄は「悠久の歴史をもつ日本の建国のことを疑えばきりがありません」と開き直り、「信じる以外の事が日本人に出来ましょうか」(前掲書)と言う。こうなるとカルトだ。 支配層へ盲目的に従属する人間は巨大企業にとっても魅力的らしく、丸紅元会長の鳥海巌も日の丸/君が代に反対する人間を「徹底的につぶさないと禍根が残る」と発言している。ちなみに、この鳥海は石原慎太郎東京都知事と一橋大学で同期だったという。 教育を支配の道具と考えている人間は「教育改革」を実行してきたグループの中にも存在している。その一例が教育改革国民会議で議長を務めていた江崎玲於奈。この人物は、「いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞれの子供の遺伝情報に見合った教育をしていく形になっていきますよ。」と語っている。(斎藤貴男著『機会不平等』文藝春秋) 教育課程審議会の会長を務めた三浦朱門は、「平均学力が下がらないようでは、これからの日本はどうにもならんということです。」と主張、多くの国民は「実直な精神だけを養っておいてもらえばいいんです」としている。(前掲書) これに対し、アメリカは日本経済の強さを優秀な中小企業群にあると分析していた。無能な大企業を優秀な中小企業群が支えるという構図だ。だからこそ、1980年代にアメリカの支配層は「ケイレツ」を問題にし、中小企業群を崩壊させようとしてきたのである。そして1990年代に入ると、アメリカの思惑通り、日本の中小企業群は崩壊していく。 日本の大手メーカーで研究職やエンジニアとして働く友人に聞くと、異口同音に生産現場は崩壊寸前だという。まず、新入社員の能力が落ちていると語る。思考力、応用力が特に劣化しているようだ。 また、人員削減の影響で中堅に負担が集中して精神的にダウンする人が増え、さらに一部へ負担が集中するという悪循環に陥っているようだ。そうした状況に対する経営者の対策は中国やインドでの採用増らしい。 学校は経済状況の影響を受けるわけで、現在社会の縮図だと言えるが、その一方、学校で育った子どもが次世代の社会を形成していくことを考えると、近未来を映す鏡だとも言える。つまり、日本社会は崩壊しつつあり、ファシズム化が促進されるだろうということを学校の状況は示している。そうした中で橋下某や石原某も日米支配層の手駒として動いている。
2012.04.18
ある女性を標的にして東京メトロの駅員がIC乗車券の「PASMO」で追跡、その結果をインターネット上で公開していたという。 こうした行動自体が問題だということは言うまでもないが、それより大きな問題はシステムそのものにある。国家権力が秘密裏に国民を追跡できる体制が整っているということなのだ。情報を個人が入手、公表したことが問題なのではなく、そうした情報を集め、管理、分析できるシステムが存在していること、そしてこの点を指摘しないマスコミが問題なのである。 日常生活に入り込んでいる「潜在的監視装置」には、PASMOやSUICAといったIC乗車券のほか、ATM、あるいはGPSを搭載した携帯電話などがある。街中に設置された監視カメラは監視装置そのものだ。ポイントカードも個人情報を集める道具になっている。要するに、コンピュータ処理するシステムは全て「潜在的監視装置」だということ。こうした情報を集約するシステムとして機能すると言われているのが住民基本台帳ネットワークだ。 日本の先を行くアメリカの場合、FBIは反戦平和運動を監視するためのプロジェクト「COINTELPRO」を1950年代、マッカーシズムの時代から始めている。支配体制にとって都合の悪い人びとを「アカ」だとして監視、弾圧したのだが、途中から標的を反戦/平和運動へ移した。ベトナム戦争が泥沼化してくるとCIAはMHケイオスなるプロジェクトをスタートさせ、独自に反戦/平和運動を監視するようになる。 1970年代になって通信技術が発達、コンピュータが広まり始めると監視の網は一気に広がり、強化された。アメリカには電子情報機関のNSAがあり、電子的な監視を担当しているのだが、ジャーナリストのダンカン・キャンベルによると、NSAのコンピュータには1974年当時、すでに約7万5000名のアメリカ市民に関する情報が記録されていた。 しかも、その監視リストにはラムゼー・クラークやロバート・ケネディーというふたりの元司法長官、あるいはジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された際に同じ自動車に乗っていた「目撃者」のジョン・コナリー元テキサス州知事も含まれていたのだ。 NSAはイギリスの電子情報機関GCHQと手を組み、UKUSA(ユクザと発音)なる連合体を作った。NSAとGCHQの下には、カナダのCSE、オーストラリアのDSD、ニュージーランドのGCSBが活動している。これらの情報機関は自国の政府でなくNSAやGCHQの命令で動いている。 1970年代に衛星通信が発達してくると、この通信を傍受する世界規模のシステムを築き始めるのだが、しばらくするとそうした情報がアメリカとイギリスで明らかにされる。 1972年、ランバート誌に元NSA分析官のインタビュー記事が掲載され、その中でNSAは「全ての政府」を監視していることが明かされた。また、1977年に逮捕されたふたりのアメリカ人青年はスパイ衛星に関する情報をソ連に渡していた。 彼らに秘密情報を外部へ漏らす決心をさせた出来事がある。アメリカの支配層にとって都合の悪いオーストラリアのゴウ・ホイットラム首相を解任させ、やはりアメリカにとって邪魔なチリのサルバドール・アジェンデ大統領を排除するために軍事クーデターを仕掛けた内幕をふたりの若者は知ってしまったのである。このとき、若者はメディアには情報を流さなかった。信用していなかったということだ。彼らは内幕を知っていた。 イギリスでは、1976年に「盗聴者」というタイトルの記事がタイム・アウト誌に掲載され、GCHQに関する極秘情報が明るみに出た。筆者はダンカン・キャンベルとマーク・ホーゼンボール。この記事に怒った当局は関係者を起訴するなどして激しく弾圧するが、それでもキャンベルはUKUSAが世界の人びとを監視している実態を明らかにし続けている。そうした仕組みのひとつがECHELONである。 1970年代の後半になると、不特定多数の個人情報を収集、分析、保管することのできるPROMISというシステムが開発され、日本の法務総合研究所も早い段階で注目している。調査結果は1979年と1980年に「研究部資料」で公表された。 この当時、駐米日本大使館に一等書記官として勤務していたのが原田明夫、その下でシステムを開発した会社と接触していたのが敷田稔。日本に戻ってから「組織的犯罪対策法(盗聴法)」の法制化を進めた原田は検事総長に出世、敷田は名古屋高検検事長を務めることになる。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) アメリカ国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)は国民を監視するため、PROMISを上回るシステムを開発しているようだ。あらゆる個人情報、例えば学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどを収拾、分析するだけでなく、GPSなどで行動を追跡、最近では顔を識別するシステムが進歩し、顔写真があれば監視カメラを利用してターゲットがどこにいるかを調べることが可能になったようだ。 今回の一件を個人的なストーカー事件で終わらせてはならない。その背後には国民ひとりひとりを監視するシステムが存在、ファシズム化を促進しようという支配層の動きがあるのだ。
2012.04.17
アメリカでは今年11月に次期大統領を決める投票がある。共和党の候補者はミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事に事実上、決まったようだ。 共和党にしろ民主党にしろ、選挙で勝ちたいならば、イスラエル・ロビーと喧嘩するわけにはいかないという。その点、現職のバラク・オバマ大統領はリスキーな政策を打ち出しているのだが、共和党はロン・ポール候補を除くと、親イスラエルの好戦派。 中でも最もイスラエルに近い候補と言われているのはニュート・ギングリッチ。スポンサーのシェルドン・アデルソンはカジノ業界の大物で、好戦的なシオニストへ多額の寄付しているだけでなく、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しいことでも知られている。が、ギングリッチは「親イスラエル」の色が濃すぎる。 ロムニーはどうかというと、この人物もネタニヤフとは親しい。1976年にふたりはボストン・コンサルティング・グループという経営コンサルティング会社で顧問として一緒に働いていたのだ。それ以来、現在に至るまで交友関係は続き、情報の交換も行っているようだ。ロムニーも筋金入りの親イスラエル派だと考えて良いだろう。なお、ロムニーはその後、ベインというライバル会社へ移るが、そこにはネタニヤフの2番目の妻であるフラー・ケイツがいた。 ロムニーが信じているというモルモン教とシオニズムとの関係はともかく、ロムニーとネヤニヤフがアメリカの経営コンサルタントで働いていたことは事実。有名なコンサルタント会社にはボストン・コンサルティング・グループとベインのほか、マッキンゼーがある。 1980年代、つまりロナルド・レーガン政権の時代からアメリカでは富が一部に集中する仕組みを急ピッチで導入、社会に壊滅的なダメージを与えたが、こうした政策はコンサルティング会社の「経営戦略」とリンクしている。キーワードは「規制緩和」。そうした経営の象徴的な存在がエンロンだ。 エンロンは1989年、マッキンゼーのアドバイスに従って天然ガスの取り引きを始めているのだが、所詮は会社を賭場へと導いただけ。エンロンは経営破綻が発覚する前に重要書類を廃棄、当局に押収された資料も2001年9月11日、崩壊したビルとともに消滅したらしいが、経営内容は相当いかがわしかったようだ。 もし、秋の大統領選挙でロムニーが勝ったなら国内ではこうした経済政策を推進する可能性が高いが、国際的にはイランなど中東での戦略でネタニヤフに協力しそうだ。イスラエルがイランを攻撃したいと考えたなら、アメリカは反対しないと考えるべきだろう。 このイスラエルと緊密な関係にある勢力で忘れてならないのは、ウラジミール・プーチンが大統領になってから国外へ逃亡した富豪たち。イギリスやイスラエルへ逃げ込んでいる。その代表的な人物がボリス・ベレゾフスキー(後にプラトン・エレーニンと改名)。少なくとも一時期、イスラエルの市民権を持っていた。 このベレゾフスキーはロシアの再支配をあきらめていないようだが、最近、ロシアの元首を「ハリー王子(ヘンリー・オブ・ウェールズ王子)」にするべきだと発言して話題になっている。ベレゾフスキーによると、ハリーの曾祖母はロマノフなのだという。 ハリーの父親はチャールズではなく王室騎馬隊のジェームズ・ヒューイットだという噂があるらしいが、それはともかく、ロシアをイギリスへ売り渡すべきだと主張しているようにしか聞こえない。 中東/北アフリカだけでなく、イスラエルはグルジア、アゼルバイジャン、カザフスタンなどに影響力を拡大させている。石油やウランなどの資源、イラン攻撃の拠点として重要な地域だと言われているが、ロシアを狙うためにも大きな意味を持っている。
2012.04.16
東電福島第一原発で「過酷事故」が起こり、収束の見通しすら立っていない。こうした状態の中、原発を再稼働させようとする勢力が存在している。核兵器の開発、あるいは原発利権といった理由があるのだろうが、正気とは言えない。 福島第一原発の場合、風向きや工事の手違いなどで最悪の事態は奇跡的に回避され、東京を含む首都圏の壊滅は避けられたのである。次もこうした幸運に恵まれると期待することはできない。 勿論、今回の事故でも膨大な量の放射性物質が大気中や海中に放出され、大地や動植物も汚染されている。自然界に放出された放射性物質の減少は、放射性壊変(崩壊)を待つしかない。核種によっては数万年、あるいはそれ以上の間、地球を汚染し続ける。 そもそも、放出された放射性物質がどの程度「膨大」だったのかは明確でない。東京電力は圧力抑制室の水が沸騰していないという前提で放射性物質の99%が除去されたとして計算、しかも格納容器からの漏洩も考慮せず、放出された量はチェルノブイリ原発事故の10%だとしていた。 これに対し、大気中に放出された量はチェルノブイリ原発の40%強、海中に漏れ出た量は東電が発表した数値の約20倍だという推計値も公表されているが、これも正確かどうかは不明だ。ただ、事故後、カリフォルニア沖で採取された海草から短い半減期の放射性物質が見つかっているようで、汚染が太平洋を越えて広がっていることは間違いない。 アメリカの原子力技術者、アーニー・ガンダーセンによると、福島第一原発が冷却機能を失って水が沸騰していたことを考えると、圧力抑制室で除去されるのは1%にすぎず、チェルノブイリ原発事故の2倍から5倍の放射性物質を放出したと推測できるという。 勿論、事故は現在も継続中であり、原発は放射性物質を放出し続けている。大きな余震がきて、例えば4号機の使用済み核燃料プールが崩壊すれば首都圏は全滅、世界に大きなダメージを与えるとも言われている。 そうした中、日本政府は関西電力の大飯原発3、4号機の再稼働を「妥当と判断」、福井県の西川一誠知事は「再稼働に反対しているわけではない」との姿勢を示し、静岡県御前崎市の市長選では「再稼働に慎重な姿勢」の石原茂雄がふたりのライバル、再稼働に同意しないとした水野克尚と永久停止と廃炉を訴えた村松晴久を破っている。 原子力発電に反対する意見が日本人の過半数を占めているようだが、推進派も少なくはない。有り体に言えば、国家だけでなく日本列島の生態系を破壊するリスクを冒してもカネが欲しいということだ。カネと引き替えに、地獄への扉をこじ開けようとしている。 福島第一原発を製造した主契約者を見ると、1号機はGE、2号機は原子炉とタービンはGE、付属設備は東芝、3号機はいずれも東芝、4号機はいずれも日立、5号機は東芝、六号機は原子炉とタービンがGE、付属設備が東芝。 東芝は2006年、アメリカのウエスチングハウスという会社を買収している。原子力発電所を建設してきたことでも有名な会社だ。持ち株比率は東芝が77%、ショウが20%、そしてIHIが3%。後に東芝はカザフスタンの国営会社へ7.7%分を売却している。カザフスタンはアゼルバイジャンと同じように、イスラエル/アメリカの影響下にある。イラン攻撃の拠点になるとも言われている地域だ。 この買収と並行する形で、サウス・テキサス・プロジェクト原発に出力135万キロワットのABWR(改良型沸騰水型軽水炉)を2機、増設するプロジェクトが進行していた。同原発の1号機と2号機の原子炉はウエスチングハウス製で、増設する原子炉も同社の原子炉になる流れだった。 必然的に東芝も参加することになるが、もう1社、東京電力も加わる。東電は国外で原発建設ビジネスに乗り出そうとしていたわけだ。当然、日本の原発利権も引きずっている。福島第一原発だけでなく、イラン攻撃計画にも東芝や東電は関係していると言えそうだ。
2012.04.15
中国のホテルで死んだニール・ヘイウッドというイギリス人は、情報機関と関係の深い実業家・・・のようだ。 ビジネスの基盤だったニール・ヘイウッド・アンド・アソシエイツなる会社をイギリスで登記したのは2000年のこと。アジア市場に関する記事や分析を提供することが目的だとされていたが、実際は中国での取り引きが主な収入源だったという。が、その一方でヘイウッドはイギリスの情報機関、MI6(SIS)と関係の深いハクルートの仕事をしていたとされている。 この「死亡事件」で殺人の容疑がかけられているのは谷開来なる女性弁護士であり、その夫は重慶市に君臨していた薄煕来。事件当時、この夫妻とヘイウッドとの関係は険悪になっていたようで、「保険」として、ヘイウッドはイギリスの弁護士に薄夫妻の国外投資に関する書類を預けていたという。違法な資金運用をしていたのだろう。 ハクルートという会社が環境保護団体のキャンペーンにダメージを与えるため、工作員を潜り込ませたりすることは本ブログでも書いたことだが、ヘイウッドもそうした役割を果たしていた可能性がある。ヘイウッドとハクルートとの関係を薄夫妻が知っていたのか、知っていたとしても自分たちがターゲットだと思っていたのか・・・。途中で気づいたということもありえるだろう。 1980年代から「自由主義経済」を導入した中国では国民の資産を一部の人間が独占、大富豪が誕生している。ボリス・エリツィン時代のロシアよりはマシのようだが、経済的な矛盾が大きくなっていることは否定できない。 魯迅が描いた中国人とは違い、現在の中国人は権力者に対してものを言う。社会の矛盾が拡大すれば、「革命」もありえる。そうした状況も今回の事件には関係しているのかもしれない。BRICSのひとつ、中国を揺さぶる材料として今回の事件をアメリカやイギリスは見ていることだろう。
2012.04.14
4月13日に朝鮮はロケットを発射したものの、失敗したようだ。 言うまでもなく、「人工衛星」の打ち上げなのか、「弾道ミサイル」の打ち上げなのかという議論には意味がない。ロケットは運搬手段にすぎず、人工衛星を搭載することも核弾頭を搭載することも基本的には可能だからである。日本は大陸間弾道ミサイルの技術を持っていると言うことでもある。 昨年12月15日、金正日が死亡する前に朝鮮の政府高官はアメリカ政府に対してロケットの発射計画を伝えたが、その前にバラク・オバマ米大統領は計画を知っていたという。にもかかわらず、その後しばらくの間、朝鮮の計画が非難されることはなかった。この話は日本の英字新聞でも報道されていて、秘密情報とは言えない。 日本語のマスコミが大騒ぎを始めたのは今年3月16日、朝鮮が「地球観測衛星」を搭載したロケットを4月12日から16日までの間に発射すると発表した後からだ。 日本政府は3月30日に安全保障会議を開き、「BMD統合任務部隊」を編成、PAC(Patriot Advanced Capability)3部隊を首都圏、沖縄本島、宮古島、石垣島に配備したという。奇襲攻撃には対応できないことは明白だが、その前にこのミサイルは迎撃能力が事実上、ない。軍事を少しでも調べたことがある人なら、これは常識だろう。 例えば、1991年1月、アメリカ軍がイラクを攻撃した際、イラクが発射したミサイルをパトリオット・ミサイルが撃墜したと宣伝されたが、これは嘘だった。湾岸戦争でミサイル撃墜の成功率は97%だとされたが、マサチューセッツ工科大学のシオドア・ポストルやアビブ大学のルーベン・ペダツールによると、最大でも10%、恐らく0%だろうという。その後も状況に変化はなさそうだ。少なくとも広い範囲を守ることなど不可能だ。 東京電力/原子力発電所の問題、消費税率の引き上げ、そしてTPPなど国民の意思を無視、日本社会を崩壊させようとしている野田佳彦政権としては、朝鮮のミサイル発射を目眩ましに利用したのかもしれない。 韓国の李明博政権にとってもミサイル発射はありがたかっただろう。近づく選挙で劣勢が予想されていただけに、危機感の高まりは自分たちに有利に働いた。国民が反対する中、李政権は自由貿易協定(KORUS FTA)を強引に推進した当時のことを思い起こさせる展開だ。 2010年12月にアメリカ政府と韓国政府はKORUS FTAの締結で合意したと発表しているが、その前に起こっていた出来事は興味深い。 2008年2月に李明博が大統領に就任、09年10月に朝鮮は韓国に対し、韓国軍の艦艇が1日に10回も領海を侵犯していると抗議、11月には韓国海軍の艦艇と朝鮮の警備艇が交戦し、10年3月には、韓国と朝鮮で境界線の確定していない海域で韓国の哨戒艦「天安」が爆発して沈没、5月頃から韓国政府は朝鮮軍の攻撃で沈没したと主張し始め、11月に韓国軍は領海問題で揉めている地域において軍事演習を実施、朝鮮軍の大延坪島を砲撃につながった。そして12月のKORUS FTA締結合意だ。 そもそも、日本政府は朝鮮を脅威だと思っていない。攻撃してくるとも考えていない。そうでなければ、海岸線に原子力発電所を乱立させるわけがない。ミサイルなどを使わなくとも、特殊部隊で攻撃しなくても、原発を建設中に建設作業員として工作員を潜入させたり、定期検査の際に潜り込ませるだけで原発を「核兵器」として利用できる。つまり、朝鮮を本当に脅威だと考え、危機が迫っていると判断しているならば、原発を再稼働させるなどという発想が出てくるはずがないのである。
2012.04.13
権力抗争はどの国にもある話で、重慶市に君臨していた薄煕来が失脚したからといって驚くほどのことはないのかもしれないが、今回の場合はイギリスの情報機関MI6(SIS)が深く関与しているだけに興味深い。 薄の失脚には昨年11月に重慶市のホテルで起きたイギリス人死亡事件が関係している。当初、死因は急性アルコール中毒だとされたが、今では殺人ということになっている。 ホテルで死亡したのはニール・ヘイウッドという人物で、ハクルートというイギリスの情報会社で働いていた。この会社が問題で、巨大石油会社やMI6との緊密な関係が指摘されている。MI6がハクルートをカモフラージュに使っていると考えている人もいる。イギリス版の「民間CIA」ということだ。 イギリスのサンデー・タイムズ紙も2001年6月17日付けの紙面でMI6とハクルートの関係を指摘している。石油会社による環境汚染を追及していたグリーンピースをターゲットにする工作を同社は引き受け、マンフレッド・シュリッケンリーダーを雇ったのだが、この人物はドイツの情報機関で仕事をしていた経歴の持ち主。 まず、BPやシェルがハクルートと契約、同社の重役でMI6のドイツ支局長という経歴を持つマイク・レイノルズがシュリッケンリーダーを雇ったという。ちなみに、レイノルズはMI6の元同僚たちとハクルートを創設している。 シュリッケンリーダーは環境保護運動に共感しているように装ってドキュメンタリーを制作することで懐に飛び込み、最終的にはキャンペーンに大きなダメージを与えることに成功した。そしてBPやシェルは満足、ということだ。 つまり、ハクルートがイギリスの情報機関や巨大石油企業ときわめて緊密な関係にあることは薄夫妻も承知、それでもヘイウッドと親しくしていたことになる。薄は「左派」でも「民族派」でもない。 1980年にミルトン・フリードマンが中国を訪問、その頃から中国は新自由主義経済を採り入れた政策を推進してきた。彼は1988、妻のローザと再び中国を訪れ、趙紫陽や江沢民と会談しているている。ボリス・エリツィン時代のロシアでは一部の人間が政府と結託して国民の資産を強奪、大富豪になっているが、中国でも似た現象は起こっている。ただ、ロシアとは違って単に略奪するだけでなく、国内に投資はしているようだが。 薄煕来が失脚は単なる国内の権力抗争ではなく、国外の勢力が関与した戦いなのかもしれない。当然、その背景には国民の不満がある。
2012.04.13
アメリカ議会でイスラエルを代弁する発言を続けているふたりの上院議員、ジョン・マケインとジョー・リーバーマンがトルコを訪問、シリアの体制転覆を目指す自由シリア軍(FSA)のリーダー、ムスタファ・アル・シェイクやリアド・アル・アサドらと会談したと伝えられている。 シリアとイスラエルとの間には領土問題がある。1967年の第3次中東戦争でイスラエルはシリア領だったゴラン高原を占領、今でも支配を続けているのだ。戦略的な意味だけでなく水源地としても重要な場所で、国際連合の決議など無視する形でイスラエルは併合してしまった。が、NATO軍がイスラエルを空爆することはなく、湾岸の独裁産油国もイスラエルの体制転覆を訴えるようなことはない。 イスラエルが「建国」される前、シオニストはヨルダン川や死海を完全に含み、ゴラン高原やレバノンの南部を含む地域を領土にする予定だったのだが、実現できなかった。この計画を実現するため、第3次中東戦争を引き起こした可能性がある。 この戦争ではアメリカの情報収集船「リバティ」をイスラエル軍が攻撃、乗組員34名を殺害、171名を負傷させている。ただ、船は何とか沈没を免れ、米海軍の第6艦隊に遭難信号を発信することができた。ロバート・マクナマラ国防長官(当時)は後にソ連軍が攻撃したと思ったと語っている。もし船が沈没、状況を伝えられなかったなら、アメリカとソ連が軍事衝突した可能性があるだろう。アメリカ政府の内部には、そうした展開を望んでいた勢力が存在していたかもしれない。 なお、イスラエルが核兵器を手にしたのは、この戦争の直前だったと言われている。切り札を手にしてから攻撃を始めたのかもしれない。そして第4次中東戦争の際には核兵器の使用をイスラエル政府は決断、ゴルダ・メイア首相はジェリコ・ミサイルやF4戦闘機でシリアやエジプトを核攻撃することを承認した。 現在、NATO(アメリカ、イギリス、フランス、トルコなど)や湾岸の独裁産油国(サウジアラビア、カタール、バーレーンなど)がアル・カイダ系武装勢力と手を組んでシリアに軍事介入している。「民主化要求運動に対するシリア政府の弾圧」という話は「妄想」に近いだろう。シリア政府が気に入らないからといって、妄想を撒き散らして良いわけではない。 こうした状況の中、イスラエルへはアメリカから「大規模破壊兵器」が供給されているほか、ドイツは新たに6隻目の潜水艦を提供するのだという。言うまでもなく、核戦争では潜水艦が主力だ。
2012.04.11
アメリカ軍、サウジアラビア軍、アラブ首長国軍、クウェート軍、バーレーン軍が合同で4月8日、イランとの戦争を想定した大規模な軍事演習を15日までの予定で始めたと伝えられている。 演習にはアメリカの2空母、エンタープライズとエイブラハム・リンカーンが参加、両艦から飛び立った100機の戦闘機に加え、湾岸の独裁産油国軍の100機がホルムズ海峡の上空を飛び回ったようだ。エイブラハム・リンカーンは海峡から離れそうな動きを見せていたのだが、そのまま離れていくわけではなかった。 3月29日からアメリカはイスラエルやギリシャと地中海からエーゲ海にかけての海域で軍事演習「ノーブル・ダイナ」を実施、ロシアから強く抗議されていたが、この演習と今回の演習はリンクしているという見方もある。ノーブル・ダイナの際、ロシア軍は駆逐艦をシリアへ派遣、牽制している。 この間、シリアの内戦(実態はNATOと湾岸独裁産油国による軍事介入)を終わらせるための「和平交渉」が進んでいたわけだが、アメリカはあくまでも軍事力で中東の覇権を握るという意志を示しているのだろう。 ジョージ・W・ブッシュ政権の時代からアメリカはシリアに対する介入を本格化、昨年の春からはトルコにある米空軍インシルリク基地で反シリア政府軍のFSA(自由シリア軍)を訓練、シリア領内へ送り込んでいると言われている。その訓練にはアメリカの情報機関員や特殊部隊員だけでなく、イギリスやフランスの特殊部隊員も教官として参加しているようだ。 それだけでなく、イギリス、カタール、アメリカ、フランス、ヨルダン、トルコなどの特殊部隊がシリア領内に潜入、活動している疑いが指摘されている。この問題を解決しなければシリアでの内戦/軍事介入を終わらせることは不可能だが、ノーブル・ダイナを実施するタイミングを見ると、NATO、イスラエル、そして湾岸産油国に戦争を止める意志はなさそうだ。 そうした中、かつてイギリスがイランで作り上げた「パーレビ朝」の人間がイスラエルに助けを求めたという。パーレビ朝はイスラエルと緊密な関係にあり、王制イランの治安/情報機関、SAVAKはCIAとモサドが作り上げたと言われている。反体制派の弾圧にもCIAとモサドは協力していた。イスラエルは王制イランの核兵器開発にも協力していたと言われている。 どのような道筋をたどるかは別として、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、イスラエル、そしてサウジアラビアを中心とする湾岸の独裁産油国などはリビアに続き、シリアやイランの体制を軍事的に転覆させようとしている。そうした戦略を妨害するような行動を許さないという姿勢を露骨に示しているのが日本の政府やマスコミ。アメリカがイラクを攻撃する直前と同じ光景が展開されている。
2012.04.10
国によってIAEA(国際原子力機関)の対応が違う、つまりこの機関が不公正であることは明白である。アメリカやイスラエルの情報機関、CIAやイスラエルもイランが核兵器の開発を進めているとは考えていないのだが、天野之弥が事務局長に就任してからのIAEAはイランを脅威だと主張している。イスラエルやアメリカの親イスラエル派(ネオコン)の意向を代弁していると言えるだろう。 イランを脅威だと主張するイスラエルはすでに世界有数の核兵器保有国である。本ブログでは何度も書いているように、イスラエルが保有する核弾頭の数は内部告発者のモルデカイ・バヌヌによると200発以上、イスラエルのイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経歴を持つアリ・ベンメナシェによると1981年の時点で300発以上、そしてジミー・カーター元米大統領によると150発だという。イギリス、フランス、あるいは中国と同じ程度の核兵器を持っていることになる。 しかも1973年、第4次中東戦争のとき、ゴルダ・メイア首相の執務室で開かれた会議で核ミサイルを発射する準備をするということで合意している。要するに、イスラエルは核兵器の使用を一度は決断したということ。このときはソ連が報復を示唆したことで実行されなかっただけである。このイスラエルをIAEAはほとんど問題にしていない。ドイツの作家、ギュンター・グラスはイスラエルが世界の平和にとって脅威になっていると声を上げた。その一因はそうした現実にあると言えるだろう。 イランを訪問した鳩山由紀夫元首相はイラン大統領との会談でIAEAは公正でないと語ったとする話が流れている。大野元裕参議院議員はそうした発言があったことを否定したそうだが、それはともかく、IAEA、特に日本の外交官がトップになってからのIAEAがイスラエルやネオコンの意向に添う形で不公正な対応をしていることは紛れもない事実である。
2012.04.09
シリアの内戦が続いている。シリア政府は反政府軍(自由シリア軍/FSA)に対し、停戦合意に従うことを文書にするよう求めているが、体制転覆をあくまで目指すFSAは要求を拒否、戦闘は終わりそうにない雲行きだ。何しろ、バシャール・アル・アサド体制を転覆させるまで戦うのがFSAの与えられた役目であり、停戦するわけにはいかない。 FSAのバックにはアメリカ、イギリス、フランス、トルコなどのNATO諸国や湾岸の独裁産油国が存在、アル・カイダ系の武装集団も反政府軍に参加していることは本ブログで何度も書いてきた。 リビアでムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊してから、大量の武器をNATO軍機がトルコへ運び込んでいるとも伝えられているが、AFPによると、サウジアラビアがヨルダン経由でシリアの反政府軍FSAに武器を供与しているとアラブの外交官が語っている。アサド体制を倒したがっているのは、こうした勢力だ。 昨年の春からトルコの米空軍インシルリク基地ではFSAを訓練、シリア領内へ送り込んでいると言われているが、その訓練で教官を務めているのはアメリカのCIAメンバーや特殊部隊員、あるいはイギリスとフランスの特殊部隊員。 またシリア領内には少なからぬ国の特殊部隊が潜入しているとする情報も流れている。イギリスとカタールの特殊部隊が戦闘に参加しているという話がイスラエルで流れたほか、ウィキリークスが公表した民間情報会社のストラトフォーの電子メールによると、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコも特殊部隊をシリア領内で活動させていると推測されている。 ホムスのババアムル地区から反政府軍が撤退した際、エジプトのアーラム紙によると、その際にフランスの将校が拘束されたとレバノンのアセム・コンソア議員は語っているようだ。同じ趣旨の情報はほかでも流れている。 こうした状況の中、反政府軍やそのスポンサーの言動に触れず、シリアで停戦が実現しない責任を全て政府に押しつけることは正しくない。そんなことをするのはアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタールといった国々の手先か、信奉者なのか、愚か者だと言われても仕方がない。
2012.04.08
イスラエルでは来年、総選挙が予定されている。その数週から数カ月後までイランを攻撃しないとベンヤミン・ネタニヤフ首相は決断したとする情報が流れている。現在、アメリカの空母エンタープライズが地中海を東へ向かっているようだが、カール・ビンソンとエイブラハム・リンカーンはホルムズ海峡から離れつつあり、開戦が延期された可能性は高い。 イスラエル・ロビーが大きな力を持つアメリカでは、大統領選が近づくとイスラエルの意向に添う政策を打ち出す傾向が強く、今回も11月に予定されている大統領選挙までにアメリカ/イスラエル軍はイランを攻撃するのではないかと懸念されていたが、バラク・オバマ米大統領はとりあえずイラン攻撃を拒否したようだ。オバマ陣営のスポンサーたちが強く反対しているのだろう。 核兵器の保有国であるイスラエルは世界の平和にとって脅威だとドイツの作家、ギュンター・グラスが声を上げ、話題になっているが、殺戮と破壊を繰り返すイスラエルに辟易している人は世界的に増えているようで、先月下旬にはイスラエル国内でもイラン攻撃に反対する数百人規模のデモがあった。 それに対し、東アジアでは好戦的な雰囲気が高まっている。3月にアメリカ軍と韓国軍が実施した「軍事訓練」の筋書きは朝鮮の内戦に軍事介入して自分たちに都合の良い体制を作り上げるというもの。そのベースは朝鮮の崩壊を想定した「CONPLAN(概念計画)5029」だったようだ。2008年に5029はOPLAN(作戦計画)になったとする情報もある。 5029以外では、OPLAN5027も有名。この計画は1973年、朝鮮の軍事侵攻に備える目的で作成された。1998年には改定され、金正日体制を倒して朝鮮を消滅させ、韓国が主導して新たな国を建設するというシナリオになった。この内容は1998年11月に外部へ漏れて問題になるが、その3カ月前、朝鮮はテポドンの発射実験を行っている。 1999年3月には海上自衛隊が能登半島の沖で「不審船」に対して「海上警備行動」を実行、5月になると日本政府は朝鮮戦争に備えるため、アメリカ軍が日本や太平洋地域に駐留することを認めている。この年の6月に朝鮮軍と韓国軍が交戦、そして8月には在韓米軍のジョン・ティレリ司令官(当時)がCONPLAN5029の存在を認めた。 ジョージ・W・ブッシュ政権は2003年に先制攻撃を目的としたCONPLAN8022や朝鮮の軍事施設700カ所を「ピンポイント」で空爆するというOPLAN5026を作成している。そして2005年、「日米同盟:未来のための変革と再編」が発表された。 2008年2月に李明博が韓国大統領に就任すると、軍事的な緊張は一気に高まる。2009年10月に朝鮮は韓国の艦艇が1日に10回も領海を侵犯していると抗議、11月には韓国海軍の艦艇と朝鮮の警備艇が交戦、10年3月には韓国の哨戒艦「天安」が爆発し、沈没している。 後に韓国政府は哨戒艦の沈没は朝鮮軍による攻撃によると主張するようになるが、少なからぬ人がこの説明に疑問を持っている。そのひとりが韓国駐在大使を務めた経験のある元CIA高官、ドナルド・グレッグだ。ロシアから得た情報だとして、天安号が沈没した原因は魚雷でなく、機雷が原因だった可能性が高いと語っている。 東アジアで軍事的な緊張を高めているのはアメリカ、韓国、そして日本の好戦派。ネオコン(アメリカの親イスラエル派)や戦争ビジネスにつながる人たちだ。そうした構図は今も変化していない。勿論、メディアが好んで使う「専門家」もこうした人たちが多い。
2012.04.06
バーレーンの国王、ハマド・ビン・イサ・アル・ハリファが4月11日から日本を訪れるのだという。この国は湾岸の独裁産油国のひとつ。サウジアラビアと緊密な関係にあり、アメリカ第5艦隊の司令部があることでも知られている。まだ存在しない「イランの核兵器」を懸念しているハマド国王だが、イスラエルが抱える大量の核弾頭については黙認しているようなので、「親イスラエル」なのかもしれない。 昨年2月、民主化を求める運動が高まると治安部隊が暴力的に弾圧、現在までに約90名が死亡、数千人が負傷したと言われている。運動が始まった翌月には1000名以上の湾岸諸国の部隊(事実上のサウジアラビア軍)がバーレーンへ入った。アメリカとの緊密な関係から、弾圧をアメリカ政府が承認しているという見方もあり、アメリカに対してバーレーンの「臣民」は怒っている。 バーレーンにおける弾圧の特徴として、医療関係者の逮捕が指摘されている。医師や看護師が早い段階から数十名単位で拘束されている。死体の状況、負傷の具合いが医療関係者から漏れることを恐れているのではないかとも見られている。 いわゆる「アラブの春」では、エジプトでホスニ・ムバラクの追放を求めた「4月6日青年運動」は2008年にアメリカ政府と接触、シリアの場合はジョージ・W・ブッシュ政権の時代に反政府派を支援し始めている。昨年春にはシリアでも反政府活動が始まっているが、本ブログでは何度も書いているように、初期の段階でアメリカ、イギリス、フランスなどNATOは軍事的な支援を始めている。 また、リビアの場合もアメリカ、イギリス、フランスを中心とするNATOが主導的な役割を演じ、アル・カイダ系の武装集団が地上戦で中心的な役割を果たしている。リビアでもシリアでもNATOが特殊部隊を地上戦に参加させている可能性は高い。 要するに「西側」が「人道」や「人権」を掲げて政府を攻撃した国々における「抗議活動」は最初から武装闘争、あるいは武力介入だった。それに対し、バーレーンの場合は平和的な活動。その活動に対する弾圧を「西側」は容認している。サウジアラビア、カタール、バーレーンなど湾岸の独裁産油国はリビア、シリア、そしてイランの体制を転覆させようというアメリカ、イギリス、フランス、そしてイスラエルの戦略に加担している。 今年3月31日、ヒラリー・クリントン米国務長官はサウジアラビアを訪問、そこでサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、クウェート、バーレン、オマーンの代表と会い、ミサイル防衛システムを買うように求めたという。イランとの戦争に備えてということのようだが、実際には役に立ちそうもない「高額兵器」を売りつけたいだけだろう。何しろクリントン長官はロッキード・マーチンがスポンサーだ。
2012.04.05
世界有数の核弾頭を保有するイスラエルは世界の平和にとって脅威だとドイツの作家、ギュンター・グラスが声を上げた。『ブリキの太鼓』などを書き、ノーベル文学賞を受賞した作家の発言だけに、注目を浴びている。 イスラエルが世界有数の核兵器保有国だということは間違いなく、核兵器を使おうとしたこともあると言われている。実際に何発の核弾頭をイスラエルが持っているのかは不明だが、1977年から約8年の間、イスラエルの核兵器開発に携わったモルデカイ・バヌヌによると200発以上、イスラエルのイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経歴を持つアリ・ベンメナシェによると1981年の時点で300発以上、そしてジミー・カーター元米大統領は150発だと推測している。約1万発を保有するアメリカやロシアは別として、イギリス、フランス、あるいは中国と同じ程度は持っている可能性が高いわけだ。 イスラエル政府が核兵器の使用を決断したのは1973年、第4次中東戦争のとき。ゴルダ・メイア首相の執務室で開かれた会議で核ミサイルを発射する準備をするということで合意したのだ。 この決定をソ連の情報機関がつかみ、アメリカ政府へもこの事実を通告、ソ連のアレクセイ・コスイギン首相はエジプトへ飛んで停戦するように説得している。このとき、アメリカ政府は軍事物資をイスラエルへ提供、そのかわり停戦するように交渉したという。 ところがイスラエルは停戦の約束を守らずに攻撃を続行、そこでソ連政府はアメリカ政府に対し、イスラエルが約束を守らないならば適切な対応策を講じると警告した。こうした動きを受けてアメリカ政府も真剣にイスラエルを説得したようで、核攻撃は何とか回避された。 イスラエルはイランを絶滅させかねない・・・ギュンター・グラスはそう懸念しているが、イスラエルの過去を考えると当然だろう。 これまでイスラエルの核兵器について沈黙してきた理由として、第2次世界大戦の際にナチスが行った弾圧でユダヤ人もターゲットになっていた事実、そして「反ユダヤ主義」というレッテルを貼られることの恐怖をグラスは挙げている。 どうやら、グラスもナチスに弾圧された「ユダヤ人」とイスラエルを建国した「シオニスト」を混同しているようだ。ナチス時代、ドイツを逃れたユダヤ人が向かった主な行く先はイギリスやアメリカであり、この事実を考えるだけでもユダヤ人とシオニストは別だということが理解できるだろう。 一般に、近代シオニズムはセオドール・ヘルツルが1896年に始めたとされているのだが、その5年前、ウィリアム・ブラックストーンなる人物が「ユダヤ人」をパレスチナへ移住させようという運動をアメリカで展開、ベンジャミン・ハリソン米大統領に働きかけている。 イギリスのエリートがユダヤ教徒のパレスチナ移住を考え始めたのは、さらに半世紀前のこと。1838年にイギリスはエルサレムに領事館を建設、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査、1840年にはタイムズ紙はイギリス政府がユダヤ人の復興を考えていると報じた。 後にアルフレッド・ミルナーがタイムズ紙を支配するようになるが、パレスチナに「ユダヤ人の国」を作らせると約束する「バルフォア宣言」、つまりアーサー・バルフォア外相からロスチャイルド卿に宛てた書簡を実際に書いたのはこのミルナー。 パレスチナに「ユダヤ人国家」を作るというシオニストの計画を実現するためには、ユダヤ人を居住地から追い出す必要があり、そうした意味でナチスのユダヤ人弾圧は願ってもない政策だった。ここにも歴史のタブーがある。 イスラエルを「建国」した土地には人が住んでいた。そうした人びとを追い出すため、シオニストは虐殺事件を起こしている。実際に殺して住民を「消し去る」こともあるが、恐怖で住民が逃げ出すことも期待していた。そうして追い出されて難民化した人々はパレスチナ人と呼ばれ、今ではその一部がガザやヨルダン川西岸に押し込められている。 そのガザへ2008年12月から09年1月にかけてイスラエル軍は軍事侵攻、国連の施設を含む建造物を破壊し、1200人とも1400人とも言われるガザ住民を虐殺している。国連が設置した事実調査団もイスラエルが戦争犯罪を犯したことを認めているのだが、ICC(国際刑事裁判所)のルイス・モレノオカンポ検察官はイスラエルの戦争犯罪を問題にする意志のないことを表明した。 パレスチナは国でないからイスラエルの戦争犯罪は問えないという「理屈」なのだが、NATO軍が先制攻撃したユーゴスラビアの場合、ICTY(旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷)を設置している。要するに、イスラエルの破壊と殺戮を現在の国連は容認しているわけだ。こうした現実にギュンター・グラスは異を唱えたのである。
2012.04.04
2008年12月から09年1月にかけてイスラエル軍はガザに軍事侵攻、国連の施設を含む建造物を破壊し、1200人とも1400人とも言われるガザ住民を殺害、その際に白リン弾を対人兵器として使用している。この爆弾は衣服や人体に付着すると振り払ったり消化することが困難で、深刻なダメージを与える。2009年4月に国連はこの軍事侵攻を調べるため、リチャード・ゴールドストーンを団長とする事実調査団を設置、9月に発表された報告書ではイスラエルが戦争犯罪を犯したことを認めている。 2009年にはパレスチナ自治政府がICC(国際刑事裁判所)にイスラエル軍による戦争犯罪を調べるように求めているのだが、今年4月3日、ICCのルイス・モレノオカンポ検察官はパレスチナ側の訴えを退けると発表した。要するに、パレスチナ人はICCが人権/人道を守る対象ではないということである。
2012.04.04
ジョージ・H・W・ブッシュ、つまりブッシュ・シニアが大統領だった時代から親イスラエル派のネオコン(新保守)はアメリカの一極支配を想定、潜在的ライバル、つまり西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、西南アジアの国々を潰そうとしてきた。 日本は見事に潰されつつあるが、アメリカによる支配を脅かす勢力は着実に育っている。その代表的な存在がBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)だろう。現在、そのBRICSと米英仏はイラン産原油をめぐって激しく対立している。ベネズエラなどもBRICSと歩調を合わせている。 支配システムを維持する上でエネルギーは大きな要因であり、米英仏は自分たちの思い通りにならない体制をさまざまな手段で攻撃している。そうしたターゲットのひとつがイランであり、米英仏はイランの体制転覆を狙い、経済封鎖を試み、軍事的な脅しをかけている。 経済封鎖の中心は石油取引の禁止だ。第2次世界大戦後、イランの民族主義政権が植民地支配から脱しようとした時にイギリスが行った対応を彷彿とさせる。 かつて、イランの石油利権は「王族」を名乗るイラン支配層とイギリスをはじめとする欧米資本が独占、国民はその恩恵に浴していなかった。そうした中、1951年3月にイラン議会はAIOC(アングロ・イラニアン石油、後のBP)の国有化を決定、4月には民族主義者のムハマド・モサデグが首相に選ばれている。その際、AIOCは石油の生産と輸送を止めてイラン政府の収入を断とうとしたのだ。 そのとき、イラン政府はイタリア石油公団(AGIP)のエンリコ・マッティ総裁に接触、交渉はうまくいくかと思われたのだが、合意には達しなかった。AIOCがマッティに対し、石油の供給を申し入れたと言われている。 今回の経済封鎖では、インドや南アフリカといったBRICSが米英仏の強要を無視、イラン産原油を購入する姿勢を見せている。米英仏は保険会社に圧力をかけ、石油輸送を難しくしているのだが、それでもインドは方針を変更するつもりはないようだ。当初はゴールドで支払うという話があったが、最近ではバーター取引、あるいはルピー(インドの通貨単位)を使うという話も流れている。 今年の2月、イランからの石油輸入を再開させたのは南アフリカ。輸入量は1月の0から一転、2月には41万7000トン、3億6400万ドルになったという。イランからパキスタンやインドへ、あるいはイランからイラク、シリア、レバノンを結ぶパイプラインの問題もある。1950年代とは違う流れになっているようだ。 サハラ以南のアフリカを米英仏から独立させようとしていたリビアのムアンマル・アル・カダフィを米英仏は軍事力を使って排除することに成功したが、シリアでは体制転覆を実現できず、リビアでは予想通り、内戦が続いている。軍事力で世界を制覇するというネオコン流のシナリオは破綻していると言えるだろう。
2012.04.04
アメリカが主導する「シリアの友」なるグループの会合が4月1日、イスタンブールで開催された。アメリカ、イギリス、トルコ、サウジアラビアなど約70カ国が集まったというが、目的はシリアの反政府軍を支援することにある。そのため、ロシアや中国は参加していない。 そうした中、サウジアラビアのサウド・アル・ファイサル外相は、反政府軍への武器供与を義務だと主張しているのだが、AFPによると、この国はすでに武器をヨルダン経由で反政府軍へ供与しているようだ。要するに、サウジアラビアはバシャール・アル・アサド体制を倒すことを目指し、その目的を達成できないなら平和的な解決を望んでいない。 リビアの体制転覆でも、シリアでの戦闘でも、イギリスは軍事力で問題を解決しようとしている。こうした姿勢を見ていると、1982年のフォークランド/マルビナス戦争を思い出す。 この戦争はイギリスとアルゼンチンが戦ったのだが、その際、イギリスの首相だったマーガレット・サッチャーは外交的な解決を全く考えていなかったことが明らかになっている。この海域には石油があるので、イギリスとしてはアルゼンチンを完全に排除しておきたかったのかもしれない。 しかし、イギリスは簡単に勝てない。そこでイギリス軍はアルゼンチン軍に対して白リン弾のような化学兵器を使用しただけでなく、サッチャー英首相はブエノスアイレスを核攻撃するとフランスのフランソワ・ミッテラン大統領を脅し、フランス製のエグゾセ・ミサイルを無力化する暗号を聞き出したと言われている。イギリスは今でも好戦的な国だと言えるだろう。 さて、ここで現在の中東へ話を戻そう。 反政府軍を支援する理由をサウジアラビアなどの湾岸産油国は「人道」に求めているいるようだが、こうした国々が反人道的な体制だということは広く知られている事実。民主化を要求する声を暴力的に潰し、最近も人権活動家のモハメド・サレー・アル・ゼナディが軍に銃撃され、負傷している。 湾岸産油国のひとつ、バーレーンでも民主化を要求する活動が激しく弾圧され、死傷者が出ている。デモなどで負傷した医師や看護師が逮捕されていることも問題になっている。医療関係者を逮捕している理由のひとつは弾圧の実態を隠蔽することにあるとも言われている。 リビア、シリア、イランなどに対しては「人権」や「人道」を振りかざして制裁を叫んでいる「西側」の国々だが、サウジアラビアやバーレーン、そして勿論イスラエルに対しては沈黙しているどころか、武器を供与している。例えば、EU諸国は2010年だけで少なくとも43億4000万ドル相当の軍事物資やライセンスをサウジアラビアに供与、アメリカは湾岸産油国にミサイル防衛システムを提供する意向だと伝えられている。 その湾岸産油国はシリア政府軍と戦っているFSA(シリア自由軍)の兵士を「雇う」ための基金を設立しようとしているほか、アメリカも公然と資金面の援助を口にしている。「シリアの友」がシリアを乗っ取ろうとしているように見える。アメリカはシリア政府軍の兵士をカネで誘惑し、「傭兵」を増強するつもりのようだ。これが「西側流民主化」の実態だ。
2012.04.01
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