全37件 (37件中 1-37件目)
1
アメリカやイギリスの富豪たちは人口を削減するべきだと主張してきた。そうした富豪の中にはマイクロソフトを創設したビル・ゲイツやCNNのテッド・ターナーも含まれる。 そのビル・ゲイツが音頭を取り、2009年5月、マンハッタンで富豪たちが密かに会合を開いている。集まった場所はロックフェラー大学学長ポール・ナースの自宅だった。参加者にはデビッド・ロックフェラー・ジュニア、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス、マイケル・ブルームバーグ、テッド・ターナー、オプラ・ウィンフリーも含まれている。その参加者は「過剰な人口」が優先課題であることに同意した。 テッド・ターナーは会合の前年、2008年の4月にチャーリー・ローズの番組に出演し、そこで人口が問題だと主張している。人が多すぎるから温暖化も起こるのだというのだ。ターナーは1996年に「理想的」な人口を2億2500万人から3億人だと主張したが、2008年にはテンプル大学で20億人に修正している。 ゲイツも人口を削減するべきだとも発言している。2010年2月に行われたTEDでの講演では、ワクチンの開発、健康管理、医療サービスで人口を10~15%減らせると語っている。「COVID-19ワクチン」で人口は減っているようだが、これは古典的な意味でのワクチンではなく、遺伝子操作薬だ。 そうした思想はトーマス・マルサスの人口論から少なからぬ影響を受けているが、実際の人口は等比級数的に増えるどころか減少に転じる兆候が出ている。2019年に出版されたダレル・ブリッカーとジョン・イビツォンの『Empty Planet(日本語版:2050年 世界人口大減少)』はその問題をテーマにした著作で、注目された。基本的に同じ結論の論文をランセット誌が2020年7月14日に掲載している。 人口論の背景には優生学が存在している。イギリスでは19世紀にハーバート・スペンサーが適者生存を主張した。彼らによると、競争で強者が生き残ってその才能が開発され、その一方で弱者は駆逐される。弱者に無慈悲であればあるほど社会にとっては「優しい」のだという。イギリスの人類学者、フランシス・ゴルトンは「遺伝的価値の高い者を増やし、遺伝的価値の低い者を減らす」ことで社会を改善できると主張していた。 こうした思想はセシル・ローズなどイギリスの支配者グループに影響を与え、そうした思想に基づく運動はアメリカの支配層、例えばカーネギー研究所、ロックフェラー財団、ハリマン家のマリー・ハリマンから支援を受けた。そうした運動に感銘を受け、自国で実践したのがアドルフ・ヒトラーにほかならない。 「自然選択(自然淘汰)説」で有名なチャールズ・ダーウィンはゴルトンの従兄弟。そのダーウィンはマルサスの人口論やレッセ・フェールの影響を受けていたとも言われている。なお、最近の研究によると「自然選択」は進化を引き起こす原因のひとつにすぎないようだが、今でもダーウィンの仮説を信奉している富豪はいる。富豪たちは人間も「選択」されなければならないと考えているのだろうが、新自由主義下でそうした政策が進められた結果、優秀な人間は排除され、強欲な人間が残ることになった。。 かつてイギリスではエンクロージャーによって共有地などが私有化され、土地を追われた農民は浮浪者や賃金労働者になった。労働者の置かれた劣悪な状況はフリードリヒ・エンゲルスの報告『イギリスにおける労働者階級の状態』やチャールズ・ディケンズの小説『オリバー・ツイスト』などでもわかる。 ロンドンのイースト・エンドで労働者の集会に参加したセシル・ローズは「パンを!パンを!」という声を聞く。その状態を放置すれば内乱になると懸念、植民地を建設して移住させなければならないと考えたようだ。つまり、社会問題を解決する最善の方法は帝国主義だというわけである。(レーニン著、宇高基輔訳『帝国主義』岩波書店、1956年) 帝国主義は侵略によって富を奪うだけでなく、不必要になった人間を処分する手段でもあったのだろう。 現在、世界の構造を変えようとしている富豪の代理人的な役割を果たしている人物はWEF(世界経済フォーラム)のクラウス・シュワブ。その顧問を務めるユバル・ノア・ハラリはAI(人工知能)によって不必要な人間が生み出されるとしている。特に専門化された仕事で人間はAIに勝てず、不必要な人間が街にあふれるというわけだ。そうした人びとを富豪たちが処分しようとしても不思議ではない。 シュワブは2016年1月、スイスのテレビ番組マイクロチップ化されたデジタルIDについて話している。最終的にはコンピュータ・システムと人間を連結、つまり人間をコンピュータの端末にするというのだが、不必要になった人間は処分されるのだろう。「トランスヒューマニズム」の世界を築こうとしているとも言える。
2023.07.31
セルゲイ・ショイグ国防相が率いるロシアの軍事代表団が7月25日から27日まで平壌を訪問、中国全国人民代表大会の常務委員会で副委員長を務める李鴻忠が率いる代表団と合流した。両国の代表団は朝鮮戦争の休戦協定締結から70年を記念して行われた行事へ参加、それぞれ金正恩朝鮮労働党委員長と会談。その際にロシアのウラジミル・プーチン大統領からは手書きの書簡が、また中国の習近平国家主席からも親書が金正恩委員長へ手渡されたと伝えられている。 本ブログでは繰り返し書いてきたように、アメリカのジョー・バイデン政権は東アジアの軍事的な緊張を高めている。昨年8月2日にアメリカ下院の議長だったナンシー・ペロシが台湾を訪問、米中関係は一気に悪化した。 台湾の蔡英文総統は「台湾独立」を主張している政治家で、その主張を利用し、1972年2月にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問してから続いていた「ひとつの中国」政策に挑戦する姿勢を見せた。ペロシの訪問はバイデン政権と連動しているだろう。 中国とロシアは交易を盛んにすることで地域を安定させる戦略を立てているが、アメリカやイギリスは戦乱を引き起こして地域を不安定化させ、疲弊させた上で富を奪うという戦略に基づいて動いたきた。米英はユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げ、最終的にはロシアを制圧するという長期戦略を今でも放棄していない。 アメリカ軍は2018年5月に太平洋軍をインド・太平洋軍へ作り替えたが、これはそうした戦略を反映したものであると同時に、中国が展開している「一帯一路」を潰すことも目的にしている。 アメリカはロシアや中国に軍事的な圧力を加えるため、オーストラリア、インド、そして日本を引き入れて「クワド」を編成、さらにオーストラリアやイギリスと3カ国で「AUKUS」という軍事同盟も組織した。オーストラリアはアメリカとイギリスの技術で原子力潜水艦を建造すると報道されている。 バイデン大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っているが、山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。 アメリカとイギリスはウォール街とシティを拠点とする金融資本に支配されている国であり、オーストラリアは「アングロ・サクソン帝国」の一部にすぎない。インドはイギリスの植民地だった国で、今でも大きな影響を受けている。日本の現体制、つまり「天皇制官僚体制」はイギリスが仕掛けた明治維新によって生み出された。 そうした国々だけでは不十分だと考えたのか、NATOの守備範囲を東アジアへ拡大しようとする動きがある。2020年6月にNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言した。NATOは2024年中に連絡事務所を連絡事務所を東京に設置しようという目論みはフランスの反対にあったが、今後、どうなるかは不明だ。ちなみに、NATOはアメリカとイギリスが第2次世界大戦後のヨーロッパを支配するために組織した軍事同盟である。 岸田文雄政権は昨年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにしたが、アメリカや韓国との軍事演習も盛んだ。 アメリカは日本を彼らの戦争マシーンに組み込むため、1995年2月にジョセイフ・ナイが発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれる事件(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)る事件、そして警察庁の國松孝次長官が狙撃される事件を経て日本を戦争へと導くことに成功した。 自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作り、2023年には石垣島でも完成させた。アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。 日本は攻撃能力を向上させるために巡航ミサイル「トマホーク」の調達を計画しているほか、「いずも」型の「ヘリコプター搭載護衛艦」も建造している。この「護衛艦」は艦首から艦尾まで平らな「全通甲板」を有して多数のヘリコプターを運用でき、垂直離着陸型のステルス戦闘機F35Bも離発着できる。国際的にはヘリ空母(航空母艦)、あるいは揚陸艦などを兼ねた多目的空母と見なされているようだ。 日本、韓国、台湾などを巻き込んだアングロ・サクソンの軍事的な動きをロシアや中国が手を拱いて何もしないとは考えられない。特に日米韓の軍事的な連携を警戒しているはずで、ショイグと李鴻忠が平壌で金正恩と会った目的のひとつは日米韓に対抗することにあるだろう。 現代の戦争は軍事的なものだけでなく、貿易、金融、技術など多岐にわたる。ユーラシア大陸周辺部の支配が有効だったのは物流の中心が海運だったからで、内陸国は対抗するため、鉄道を建設した。最近でも鉄道は重要だが、航空機が発達、パイプラインも重要な役割を果たしている。 ここにきて注目されているのは北極海ルート。従来のルートはマラッカ海峡やスエズ運河を通過する必要があるのだが、いずれもアングロ・サクソンがコントロールしている。それに対し、北極海ルートはそうしたリスクがない上、東アジアからヨーロッパまでの距離が近い。そこで注目されているのがアジアで最も北にある不凍港の羅津だ。
2023.07.30
東京琉球館で8月18日の午後7時から「ウクライナで自爆したネオコン」というテーマで話す予定です。予約受付は8月1日午前9時からとのことですので、興味のある方はEメールで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8Eメール:dotouch2009@ybb.ne.jp アメリカで外交や軍事の分野で大きな影響力を持っているネオコンはソ連が消滅した直後、アメリカが「唯一の超大国」になったと考えました。1992年2月には「世界制覇プラン」をアメリカ国防総省のDPG草案という形で作成しました。国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを中心に作成されたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれています。 ソ連を消滅させたボリス・エリツィンはロシアを西側支配層の属国にしましたが、その支配層はそれでは飽き足らず、世界制覇を実現しようとしたわけです。そしてアメリカは侵略戦争を本格化させました。 東西ドイツが統一された際、西側はソ連大統領だったミハイル・ゴルバチョフに対し、NATOを東へ拡大させないと約束していました。ドイツの外相だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年にエドゥアルド・シェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)、アメリカのジェームズ・ベイカー国務長官がソ連側に対し、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと1990年に語ったとする記録が公開されています。そのほか、ロシア駐在アメリカ大使を務めていたジャック・マトロックも約束が存在したと語り、イギリスやフランスもNATOを東へ拡大させないと保証していました。 しかし、アメリカの時代になったと信じたネオコンはそうした約束を守りません。1999年3月から6月にかけてNATO軍を使い、ユーゴスラビアへの空爆を実施します。ユーゴスラビアの解体をアメリカは1984年に決めています。ロナルド・レーガン大統領が「NSDD133(ユーゴスラビアに対する米国の政策)」に署名したのでです。その後、アメリカはNATOを東へ拡大させ、ウクライナに到達しました。 ウクライナを支配下に置き、ロシアを破壊する準備を完了させると同時にロシアとEUを分断するため、バラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行、ネオ・ナチ体制を築きました。オバマ政権は「勝った」と信じたでしょうが、このクーデターがアメリカの支配システム崩壊を早めることになります。アメリカはウクライナで「自爆」したと言えるでしょう。 クーデター後、ウクライナ国内ではクーデターに反対する勢力が抵抗を開始、アメリカの政策でEUは社会的にも経済的にも崩壊し始めていきます。ところがロシアは大きなダメージを受けず、むしろ体制は強固になりました。 こうした展開になることをリチャード・ニクソン、ジョージ・ケナン、ヘンリー・キッシンジャー、そしてズビグネフ・ブレジンスキーでさえネオコンの政策を危険だと警鐘を鳴らしていました。 それでもネオコンは軌道修正せず、「力技」に頼っていますが、状況は悪くなるばかりです。配下の有力メディアを使った宣伝で人びとを幻影で操るという手法にも限界がきているようで、第2次世界大戦終盤の日本に似ている状況だとも言えるでしょう。 1991年12月のソ連消滅を見てネオコンはアメリカが一極支配する時代になったと考え、勝利の美酒によっていたようですが、その時に彼らは自分たちが破滅へ向かって足を踏み出したことを理解していなかったでしょう。 しかし、アメリカは膨大な核兵器を持っていることも事実です。ネオコンを支持することで資金を得ている議員たちはロシアや中国との戦争に向かっています。しかも東アジアには日本という「忠実な僕」がいます。自爆後のネオコンがどのように動くのかについて考えてみたいと思います。
2023.07.29
厚生労働省は7月28日、5月分の「人口動態統計速報」を発表した。それによると死亡者数は12万2193人。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の接種が始まる前に比べるて大幅に増えている状況に変化はない。 厚生労働省が5月8日から始めた「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」、つまり遺伝子操作薬の6回目接種は一段落したようだが、昨年以降、世界的に接種は止まっている。つまり接種を推進している国は日本くらいだ。 アメリカやイギリスの命令で「玉砕攻撃」を繰り返して成年男子を死滅させつつあるウクライナと同様、「COVID-19ワクチン」に自国民を死滅させようとしている日本が正気の国だとは思えない。この後、日本は中露に対して玉砕攻撃を仕掛けるのだろうか?
2023.07.28
国の内外で追い詰められているジョー・バイデン大統領とその側近たちが来年の選挙前、NATOを利用してロシアと直接的な軍事衝突に突入することを懸念しているケンタッキー州選出のランド・ポール上院議員は「2024年NDAA(S2226)」に修正案を提出、「北大西洋条約第5条は、アメリカが戦争に参加する前に議会が宣戦布告するという憲法上の要件に取って代わるものではない」ことを明確にしようとした。そのポール議員のケンタッキー州にあるオフィスが7月21日の早朝、炎に包まれた。 NATOは1949年4月、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルクで創設された軍事同盟。NATOの初代事務総長でウィンストン・チャーチルの側近だったヘイスティング・ライオネル・イスメイによると、NATO創設の目的はソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけること。有体に言うならば、第2次世界大戦後のヨーロッパをアメリカとイギリスが支配する仕組みだ。 ヨーロッパを支配する上で重要な役割を果たしてきた秘密部隊のネットワークがNATOにはある。大戦中、西部戦線でドイツ軍と戦っていたレジスタンスに対抗するため、アメリカとイギリスの情報機関が編成したゲリラ戦部隊のジェドバラが秘密部隊ネットワークの源だ。 秘密部隊は全てのNATO加盟国に存在、それぞれ固有の名称がつけられているが、イタリアのグラディオが特に有名だ。レジスタンスの活動部隊だったイタリアやフランスではコミュニストの人気が高く、そうした状況を変える必要があるとアメリカやイギリスの情報機関は考え、活動に力を入れていた。 イタリアでは陸海空3軍にそれぞれ存在していた情報機関を統合するため、SIFAR(作戦状況情報部)が設置された。この機関は1959年までに民間人を対象にした情報収集工作を開始、64年には「ソロ作戦」と名付けられたクーデターを計画している。その計画にはバレリオ・ボルゲーゼや「右翼過激派」が参加、コミュニストに甘いと見られていたキリスト教民主党のアルド・モロ首相を暗殺する計画も含まれていた。 1964年からNATOの秘密部隊によるクーデター計画や「テロ」が目立つようになるが、その2年前の11月にアメリカ欧州軍総司令官に就任したライマン・レムニッツァーはジョン・F・ケネディ大統領から統合参謀本部議長の再任を拒否された人物。1963年1月にはNATOヨーロッパ連合軍最高司令官にもなっている。 その10カ月後にレムニッツァーの再任を拒否したケネディ大統領は暗殺され、副大統領から昇格した新大統領のリンドン・ジョンソンはベトナム戦争へのめり込んでいく。その節目になったトンキン湾事件が引き起こされたのは1964年8月のことである。 イタリアでは情報機関が関係した破壊活動が露見、1965年にSIFARはSIDへ組織替えになるが、この程度のことで情報機関の体質が変わることはなかった。1969年4月にはパドゥア大学とミラノの産業フェアで爆弾テロがあり、同じ年の12月にはミラノのフォンタナ広場にある国立農業銀行でも爆弾を炸裂して16名が死亡、約90名が負傷している。 1970年12月にイタリアの有力貴族であるバレリオ・ボルゲーゼを中心とするクーデターが試みられ、失敗した。クーデターの暗号名は「トラトラ」。爆弾テロに続いてクーデターが計画された理由のひとつは、1968年5月に実施された総選挙にある。この選挙で第1党になったのは39%の票を獲得したキリスト教民主党だが、第2党には27%を獲得したコミュニストが入ったのだ。社会党は15%で第3党にとどまった。 こうした中、コミュニストの入閣に前向きな姿勢を見せていたアルド・モロをアメリカ政府は警戒する。モロは1974年9月に外務大臣としてアメリカを訪問するが、そこでヘンリー・キッシンジャーから政策を変更しろと脅されたという。アメリカはモロをロッキードから賄賂を受け取った容疑で失脚させようとしたが、成功していない。(Claudio Celani, “Strategy of Tension Part 4,” EIR, April 30, 2004) そのモロが1978年3月16にchに拉致される。モロの妻、エレオノーラによる議会の調査委員会における証言によると、キッシンジャーはモロの政治プランを諦めるように要求、さもないと代償を払わされることになると警告したという。 そうしたアメリカ側の意志を知った上でモロは「歴史的妥協案」に関する書類をスーツケースに入れて家を出た。1976年の選挙で34.4%を獲得したしたコミュニストからの入閣を認める決意をして国会へ向かったと言われている。 その途中、モロのリムジンが交差点に近づいた時に1台の外交官ナンバーをつけたフィアットが進路を妨害、リムジンは急停車する。フィアットから降りた2名と道路で待ちかまえていたアリタリア航空のパイロットの制服を着た4名が銃撃を開始、見事な手際で5名の護衛を殺害してしまい、モロは誘拐される。その際、モロと襲撃犯は無傷だった。モロの死体が発見されるのは5月9日のことである。(Daniele Ganser, "NATO's Secret Armies, Frank Cass, 2005) こうした工作を実行したのはNATOの秘密部隊ネットワークであり、工作を指揮しているのはCIAとMI6だと考えられている。NATOとはそう言う組織だ。 このNATOを利用し、アメリカをロシアとの戦争へ引き摺り込もうとしている勢力が存在する。アメリカが参加してもロシアと中国に勝てるとは思えないが、アメリカがいなければ話にならない。 NATOの内部は分裂しているが、好戦的な国に暴走させてNATOを動かし、アメリカをロシアと戦争させようとしている勢力が存在する可能性が高い。ポール上院議員はそれを恐れている。
2023.07.28
アメリカのジョー・バイデン政権は7月21日、OPPR(パンデミック対策対応室)の発足とポール・フリードリックス退役少将のOPPR初代室長就任を発表した。この新組織は生物学的脅威や病原体に対する備えと対応を指揮することになるという。 フリードリックスは国防総省の「COVID-19タスクフォース」で医療顧問を務めた後、NSC(国家安全保障会議)の大統領特別補佐官兼世界保健安全保障生物防衛上級部長を経験している。 医薬品業界で研究開発に関わってきたサーシャ・ラティポワの分析によると、接種計画はオバマ政権の時代にアメリカの国防総省が始めていることが判明しているのだが、この分析の正しさを再確認させる人事だとも言えるだろう。 文書の分析から医薬品会社や監督官庁は薬の危険性を理解した上で、つまり死亡者や深刻な副作用を引き起こすことを承知で「COVID-19ワクチン」、つまり遺伝子操作薬の接種を強行したことがわかってきた。 COVID-19騒動はWHO(世界保健機関)が2020年1月30日に緊急事態を、そして3月11日にパンデミックを宣言して始まったのだが、死亡者が爆発的に増えているわけではなかった。 それにもかかわらずパンデミックを宣言できたのは定義の変更があったからにほかならない。「豚インフルエンザ」が流行(2009年1月から10年8月にかけての時期に)する直前、「病気の重大さ」、つまり死者数が多いという条件が削られていたのである。この時のパンデミック宣言は間違い、あるいは嘘だと言われている。 危機感を煽るため、「患者」が爆発的に増えているイメージを作る必要があった。アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員は2020年の4月8日にFOXニュースの番組に出て、病院では死人が出ると検査をしないまま死亡診断書に新型コロナウイルスと書き込んでいると話している。その実態を告発する看護師も少なくなかった。患者数は大幅に水増しされたということだ。 病院がそうしたことを行った理由は、COVID-19に感染している場合には病院が受け取れる金額が多くなるからだ。人工呼吸器をつけるとその額は3倍になるという。そこで必要がないにもかかわらず人工呼吸器を装着するケースが少なくなかったようで、それが原因で死亡した人は少なくないと言われている。 感染者の約9割に症状がないとされているが、「無症状感染者」なるタグも考え出された。その無症状感染者を「発見」するために利用されたのがはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査。これは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する分析のための技術だが、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、ウイルス自体を見つけることはできない。 増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、偽陽性も増える。偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。 Ct値をこうした数値に設定したならPCR検査は無意味だが、結果だけは出るので人びとを騙す材料には使える。PCRを開発、1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスもPCRをウイルスの検査に使ってはならないと語っていた。 アメリカでは検査のため、CDCがFDA(食品医薬品局)に「2019年新型コロナウイルス(2019-nCOV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」のEUA(緊急使用許可)を発行させ、使用していたが、CDCは2021年7月、このパネルを同年12月31日に取り下げると発表した。この診断パネルはインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、区別できないことを認めているように読める。 実態はどうであろうと、WHOとしては遺伝子操作薬を強制的に接種させなければならない。そこで治療法が存在しないということにする必要があった。最初の「患者」が発見されたとされている中国ではSARSで効果があったインターフェロン・アルファ2bがまず試され、COVID-19でも効果があった。 インターフェロン・アルファ2bはキューバで研究が進んでいる医薬品で、リンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされている。吉林省長春にも製造工場があり、中国の国内で供給できた。この事実は中国やキューバなどで報道され、中国の習近平国家主席がキューバのミゲル・ディアス-カネル大統領に謝意を述べたとも伝えられている。 駆虫薬として知られているイベルメクチンが有効だということはメキシコの保健省と社会保険庁が実際に使って確認した。また抗マラリア薬のクロロキンがコロナウイルスに対して有効だとする論文が2005年8月22日にウイルス・ジャーナルというNIH(国立衛生研究所)の公式刊行物に掲載されている。 つまり、複数の治療薬が存在しているのであり、安全性が確認されていない新薬を使う必要はなかったのだが、それを認めることのできない医療利権はそうした医薬品の使用を禁止した。 半ば強制的に使わされることになった遺伝子操作薬は病気の原因になるスパイク・タンパク質を人間の細胞に生産させる。そこで人間の免疫システムは細胞を攻撃、血管、内臓、神経などにダメージ与える。自己免疫疾患だ。炎症を抑えるために人間の体は免疫力を低下させ、AIDS状態を作り出すことになる。そのほかLNP(脂質ナノ粒子)やグラフェン誘導体によっても人体に害を及ぼし、はDNAの混入も発覚した。 パンデミックを演出し、遺伝子操作薬を半ば強制的に接種させるプロジェクトを指揮してきたのはアメリカの国防総省だということを公開された内部文書は示している。その国防総省はウクライナで生物兵器の研究開発を行なっていた可能性が高い。 ロシア軍は昨年2月24日から巡航ミサイルなどでウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを攻撃、機密文書を回収しているが、その中に生物化学兵器に関する約2000文書が含まれていた。分析の結果、アメリカはウクライナで「万能生物兵器」を研究していたことが判明したとされている。そのウクライナでもCOVID-19に関する研究をしていた疑いがある。 アメリカでは1943年にUSBWL(陸軍生物兵器研究所)がキャンプ・デトリック(後のフォート・デトリック)が建設され、生物化学兵器の研究開発が始まるが、本格化するのは第2次世界大戦後のことだと言われている。ドイツや日本の研究資料や研究者を押さえてからだ。 日本では1933年に軍医学校が東京帝国大学や京都帝国大学の医学部と共同で生物化学兵器の研究開発を始めたが、正確なデータを得るために日本では生体実験が組織的に実施されている。犠牲になったのは主に中国人、モンゴル人、ロシア人、朝鮮人。こうした人びとを日本軍は「マルタ」と呼んだ。 生体実験を実施するため、軍の内部に特別な部隊が占領地である中国で編成される。当初は加茂部隊や東郷部隊と呼ばれたが、1941年からは第731部隊と呼ばれている。第731部隊の隊長は1936年から42年、そして45年3月から敗戦までが石井四郎、その間、42年から45年2月までを北野政次が務めた。 1945年8月には関東軍司令官の山田乙三大将の名前で部隊に関連した建物は破壊され、貴重な資料や菌株は運び出された。捕虜の多くは食事に混ぜた青酸カリで毒殺される。事態に気づいて食事をとならなかった捕虜は射殺され、死体は本館の中庭で焼かれ、穴の中に埋められたという。 石井たち第731部隊の幹部は大半が日本へ逃げ帰るが、日本の生物化学兵器に関する情報はアメリカ軍も入手していた。1946年に入ると石井たちアメリカ軍の対諜報部隊CICの尋問を受けることになるが、厳しいものではなく、資料はアメリカ側へ引き渡された。 尋問の過程でGHQ/SCAPの情報部門G2の部長を務めていたチャールズ・ウィロビー少将と石井は親しくなり、隊の幹部たちはアメリカの保護を受けるようになる。日本が提供した資料や研究員はドイツから提供された知識と同じように、アメリカにおける生物化学兵器開発の基盤になった。 1950年6月に朝鮮戦争が勃発、52年2月に朝鮮の外務大臣はアメリカ軍が細菌兵器を使用していると国連に抗議した。アメリカ側は事実無根だと主張したが、1970年代にウィリアム・コルビーCIA長官は議会証言の中で、1952年にアメリカ軍が生物化学兵器を使ったと認めている。 朝鮮戦争が始まると、アメリカ軍は輸血体制を増強しなければならなくなり、「日本ブラッドバンク」が設立されたが、北野政次が顧問に就任するなど、この会社は第731部隊と深い関係がある。後に社名は「ミドリ十字」へ変更され、「薬害エイズ」を引き起こすことになる。現在は田辺三菱製薬の一部だ。 第731部隊を含む日本の生物化学兵器人脈は「伝染病対策」の中枢を形成することになる。その拠点として1947年には国立予防衛生研究所(予研)が創設された。当初は厚生省の所管だったが、1949年には国立になる。1997年には国立感染症研究所(感染研)に改名された。 その過程でアメリカの国防総省は人間の免疫システムに関係した生物兵器の開発を始めている。1969年6月、同省の国防研究技術局で副局長を務めていたドナルド・マッカーサーはアメリカ下院の歳出委員会で「著名な生物学者」の話として、人間の免疫システムが対応できない人工的な因子を5年から10年の間に開発すると証言しているのだ。 マッカーサーによると、人工的に作られた生物学的な因子、自然には存在せず、自然免疫を獲得できない因子を生産することが5年から10年以内に生産できる可能性があるとしている。AIDS(後天性免疫不全症候群)のような病原体を1979年頃までに作り出せると見通しているとも言える。 1970年代は医薬品業界にとって厳しい時代だった。伝染病による死亡者が世界的に減少していたのだ。そのため、アメリカではNIH(国立衛生研究所)、その下部機関であるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)、CDC(疾病予防管理センター)の存在意義が問われていたという。そうした状況を一変させたのがAIDSだった。1984年11月から昨年12月までNIAID所長として伝染病対策を指揮した人物がアンソニー・ファウチにほかならない。 そのファウチは昨年12月にNIAID所長を辞め、今年5月にCDC(疾病予防管理センター)のロシェル・ワレンスキー所長は辞表を提出した。遺伝子操作薬を表で推進していた人物が姿を消し、裏でプロジェクトを推進していたと見られる国防総省の幹部が表に出てきたわけだ。
2023.07.28
アメリカのウェンディ・シャーマン国務副長官が7月28日を最後に退任、次の副長官が決まるまでジョー・バイデン大統領はビクトリア・ヌーランドを副長官代行にする意向だという。 バラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行した。このクーデターを現場で指揮していたのがヌランドにほかならない。ホワイトハウスで指揮していたのが副大統領だったバイデンだ。ロシアからEUへ天然ガスを運ぶパイプラインを制圧するだけでなく、耕作地を支配し、未開発のレアアースを手に入れるつもりだったのだろう。ソ連時代、ウクライナには造船、エレクトロニクス、ロケット、化学工業、冶金などの産業もあった。 そのウクライナを手に入れた米英の巨大資本だが、新自由主義政策でウクライナ経済を破壊、ロシア系住民に対する弾圧は「民族浄化」へと進みつつあった。そうした略奪と殺戮を行うため、アメリカ/NATOは2014年から22年にかけてキエフ体制の軍事力を増強してきた。そのための時間稼ぎに使われたのが「ミンスク合意」だ。 しかし、アメリカ/NATOが東部のドンバスへ軍事侵攻する直前にロシアがミサイル攻撃を実施、ドンバスの周辺に集結していたウクライナの軍、親衛隊、外国人傭兵、各国の特殊部隊などは壊滅的な打撃を受けた。 ウォロディミル・ゼレンスキー政権はイスラエルやトルコを仲介役としてウラジミル・プーチン政権と停戦交渉を始めるが、イギリスやアメリカは交渉を止めるように命じた。その間、ゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフをウクライナの治安機関SBUのメンバーが射殺している。ここにきてゼレンスキーがイギリスの対外情報機関MI6のエージェントだということが明確になったが、ならばイギリス政府の命令に逆らうことはできない。米英にとって停戦はロシアの勝利に等しく、ロシアの勝利はNATOにとって地政学的大惨事だ。 ウクライナで窮地に陥ったバイデン政権は中国に照準を合わせ、東アジアの軍事的な緊張を高めている。そうした中、シャーマンだけでなくNSC(国家安全保障会議)で中国担当シニアディレクターを務めてきたローラ・ローゼンバーガー、そして国務副次官補として中国と台湾の問題を担当するリック・ウォーターズも退任、バイデン政権の好戦的な色彩は強まっている。 アメリカ政府はオーストラリア、インド、そして日本と「クワド」を編成、さらにオーストラリアやイギリスと3カ国で「AUKUS」という軍事同盟も組織した。オーストラリアはアメリカとイギリスの技術で原子力潜水艦を建造すると報道されている。 バイデン大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っているが、山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。 その前、2020年6月にNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言、24年中に連絡事務所をNATOは連絡事務所を東京に設置しようとしている。NATOはアメリカ憲法の規定に関係なくアメリカを戦争へ引き摺り込む仕掛けになりつつあり、「関東軍」に近い存在になっている。 岸田文雄政権は昨年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。そうした能力は先制攻撃に必要。その決定を「手土産」にしてアメリカを訪問してバイデン大統領と1月13日に会談した。 アメリカは現在、その日本だけでなく韓国も巻き込み、軍事演習を繰り返し、7月20日から8月4日にかけてイギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、フランス、ドイツ、韓国、日本を含む13カ国で軍事演習「タリスマン・セイバー23」を行っている。国の数は集めたようだが、アメリカの軍事作戦に従いそうなのはAUKUSを構成しているオーストラリア、イギリス、アメリカ、そしてアメリカへの従属度が強い日本と韓国くらいだろう。 7月25日にセルゲイ・ショイグ国防相が率いるロシアの軍事代表団が朝鮮に到着、中国の代表団と合流して朝鮮戦争終結を記念する戦勝記念日の行事に出席した。朝鮮を口実にして日米韓は軍事的な行動を展開してきたが、勿論、本当のターゲットは中国。これは朝鮮戦争でもベトナム戦争でも同じだ。最近ではそこへロシアも加わった。 米英を中心とするグループと中露が東アジアで対峙している。日本は戦争の最前線になる可能性があるわけで、「地下要塞」が巨大な地下施設として建設されても不思議ではない。
2023.07.27
ジョー・バイデン政権は半導体取引を規制するという形で中国に対する攻撃を始めた。その先にはAI(人工知能)の問題がある。アメリカはAIが覇権の鍵を握ると考え、AIの開発に必要な高度なチップを中国が手に入れられなくしようとしているのだ。この政策をニューヨーク・タイムズ紙は「戦争行為」と呼んでいる。かつてアメリカを中心とする資本主義国は共産主義国への輸出を統制するためにCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)を発足させたが、その戦法を再び使おうというわけだ。 しかし、この戦法には大きな問題がある。高度なチップを製造するために必要が原料の調達を含め、他の取引はこれまで通り機能することが前提になっているのだ。中国やロシアからの反撃を想定しているとは思えないのだが、すでに中国は8月からガリウムとゲルマニウムを輸出する際に特別なライセンスが必要になると発表している。このふたつの金属はコンピューター・チップの製造に必要だ。世界市場で流通している約95%は中国が生産している。 日本はアメリカの命令に従い、中国に対する「制裁」に加わるようだが、アメリカが仕掛けた半導体戦争によって日本の自動車産業が打撃を受ける可能性が高い。現在の自動車はチップへの依存度が高いからだ。 EUの製造業はロシアから低コストの天然ガスを購入することで成立していた。必然的にEUとロシアの関係が強まったのだが、これはアメリカの支配層にとって脅威。1992年に始めた政界制覇プロジェクトも破綻してしまう。そこで2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行した。EUからエネルギーを含む資源の供給源を奪い、ロシアから巨大なマーケットを奪おうということだ。 しかし、ロシアはこうした展開に備えて準備していたので大きな打撃は受けなかったのだが、高いコストのエネルギー資源をアメリカから買わなければならなくなったEUは壊滅的なダメージを受けている。 そこでアメリカはドイツなどの製造業に対し、アメリカへ拠点を移動させるよう誘っている。世界最大の半導体メーカーである台湾積体電路製造股份有限公司(TSMC)の場合、バイデン政権は工場をアリゾナに建設することを認めさせた。2024年に稼働するとされていたが、アリゾナ工場での先端マイクロプロセッサーの生産開始は2025年になるとTSMCは7月20日に発表した。 TSMCは2004年に中国本土で生産を開始、同社としては中国本土での活動を縮小するつもりはないようで、バイデン政権と対立していると言われている。 2011年2月、バラク・オバマ大統領はシリコン・バレーの幹部たちと食事をともにした際、アップルのスティーブン・ジョブスに対し、同社のiPhoneをアメリカで生産しないかともちかけたのだが、拒否されている。 ジョブスによると、アジアでは生産規模を柔軟に変更でき、供給ラインが充実、労働者の技術水準が高いという理由からだという。アップル側の推計によると、iPhoneを生産するためには約20万人の組立工と約8700人のエンジニアが必要で、それだけの陣容をアメリカで集めるためには9カ月が必要だが、中国なら15日ですむという。 アメリカには教育の問題もある。最高レベルの教育は維持されているものの、生産現場で必要な中間レベルの技術を持つ人を育成してこなかったのだ。これが致命的になっていると指摘されている。日本でも技術系学生のレベルが落ちているようで、企業は中国やインドの学生に目をつけていた。 支配者は非支配者を管理するために思考力を奪う。非支配者の中に現れる優秀な人間は教育するが、授業料を高額にすることで債務奴隷化して逆らえなくしている。実際、COVID-19問題で医師や弁護士が声を上げられない一因はそこにある。日本でも1970年代からそうした政策が推進されてきた。アメリカは研究者やエンジニアも工場と一緒に乗っ取ろうとしているようだ。 別の問題もある。中国やロシアに高度なチップを生産する能力がないわけでもない。軍事分野では独自のチップを製造していると言われ、その気になればいつでも民生用の製品を作ることができる。
2023.07.26
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はイギリスの対外情報機関MI-6の命令で動いているとスコット・リッターは自身が作成した2部構成のドキュメント「エージェント、ゼレンスキー」の中で指摘した。(パート1、パート2)リッターはアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官だ。調査にはフランスの元情報機関員エリック・デネーゼが協力している。 2020年10月14日にゼレンスキーはイギリスを訪問したが、その際にMI-6のリチャード・ムーアからゼレンスキーの周辺にロシアのスパイがいて情報が漏れていると警告されたと伝えられていた。その後、ゼレンスキーの身辺警護はすべて英国に引き継がれたという。同時にウクライナのすべての反対派報道機関は、イギリスの命令で検閲され、活動できなくなった。ゼレンスキーはMI-6の長官に操られているということだ。 ウクライナは2013年11月から14年2月にかけてのクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領が排除され、ネオ・ナチが街を跋扈する反ロシア体制になった。そこでヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部では住民がクーデターを拒否、南部のクリミアはロシアと一体化し、東部のドンバスでは内戦が始まる。そのほかの地域でも人びとはネオ・ナチが支配する体制を嫌っていた。 そうした中、2015年11月に下ネタを得意とするコメディアンだったゼレンスキーを主役とするテレビ番組『人民のしもべ』が始まり、人気になる。このドラマは教師がウクライナの指導者というもので、国民が望む大統領に即したイメージをゼレンスキーにつけた。そのイメージが功を奏し、2019年の3月から4月にかけて実施された大統領選挙で圧勝する。番組は選挙の直前まで続いた。 しかし、当選後、彼はそうしたイメージとは反対の政策、つまりネオコンの手先として活動していたネオ・ナチが望む政策を始める。ゼレンスキーはMI-6やCIAが書いた台本に従って演じるコメディアンだとも言える。 ゼレンスキーの政策は西側の巨大資本の制圧された他の国々と同じように、そうした巨大資本へ国の資産を叩き売る。その報酬は多額で、財産が膨らんでいった。複数のオフショア市場の口座を持ち、欧米やイスラエルなどに高級住宅を保有することになる。 ソ連時代、ウクライナには造船、エレクトロニクス、ロケット、化学工業、冶金などの産業があり、少なからぬ大学など研究施設もあった。また膨大な農地をアメリカのアグリビジネスに売却、最近では未開発のレアアースが注目されている。 シティを拠点とするイギリスの支配層、つまり金融資本は19世紀からロシアの征服を計画、そこに新興国家のドイツを潰すと言う目的が加わり、第1次世界大戦につながった。この戦略を実行する上で重要な役割を果たしたのがイギリスと関係の深い有力貴族、ユスポフ家だ。 第1次世界大戦が始まる前からこの家にはイギリス人の家庭教師がいて、サンクトペテルブルクにあった同家の宮殿で家庭教師の子どもが誕生している。スティーブン・アリーだ。その11年後にフェリックス・ユスポフが誕生、後にイギリスのオックスフォード大学へ留学し、ブリンドン・クラブへ入っている。留学先で親密な関係になったオズワルド・レイナーは流暢なロシア語を話した。アリーとレイナーは大学を卒業した後、イギリスの対外情報機関MI6のエージェントになる。MI6は金融資本と緊密な関係にある組織だ。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) 第1次世界大戦に参加するかどうかで帝政ロシアの支配層は割れていた。ドイツとの戦争に積極的な産業資本家と消極的な大地主だ。産業資本家側には有力貴族のフェリックス・ユスポフが、また大地主側には修道士のグレゴリー・ラスプーチンがつき、ラスプーチンの背後には皇帝アレキサンドロビッチ・ニコライ2世と皇后アレクサンドラがついていた。 戦争を望んでいなかった皇后は7月13日にラスプーチンへ電報を打って相談、ラスプーチンは戦争が国の崩壊を招くと警告しているが、その内容を盗み見た治安当局は議会などにリーク、ラスプーチンは腹部を女性に刺されて入院してしまう。入院中にロシアは総動員を命令、ドイツは動員を解除するよう要求。それをロシアが断ったため、ドイツは8月1日に宣戦布告している。ラスプーチンが退院したのは8月17日のことである。 すでにドイツと戦争を始めていたロシアだが、ラスプーチンが復帰したことでいつ戦争から離脱するかわからない状況。それを懸念したイギリス外務省は1916年にサミュエル・ホーアー中佐を責任者とする情報機関のチームをペトログラードへ派遣。チームにはアリーとレイナーが含まれていた。(前掲書) ペトログラードにおけるイギリスのお抱え運転手だったウィリアム・コンプトンの日記によると、彼はレイナーをユスポフの宮殿へ1916年の10月後半から11月半ばにかけて6度運んだという。ユスポフは1916年12月19日にレイナーと会ったと書き残している。(前掲書) ラスプーチンは1916年12月30日に暗殺された。殺したのはユスポフだと言われているが、暗殺に使用された455ウェブリー弾はイギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだったという。
2023.07.25
世界の流れに反し、日本の厚生労働省は「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の接種を推進している。「なりゆくいきほひ」に逆らわない日本人としては珍しく、自分たちで考えたことではないのかもしれない。 この「ワクチン」、つまり遺伝子操作薬にはいくつかの問題がある。ひとつは人間の細胞に病気の原因であるスパイク・タンパク質を製造させるという仕組み、DNAの混入、mRNAを細胞の内部へ運ぶために使われているLNP(脂質ナノ粒子)の毒性、グラフェン誘導体の混入などだ。 遺伝子操作薬の中に「酸化グラフェン」があることを発見したのはスペインのパブロ・カンプラ教授。2021年6月、電子顕微鏡などを利用して見つけたと発表している。同年11月には周波数の分析で酸化グラフェンが「ワクチン」に含まれていることを確認したと発表している。 その論文を読んだドイツの化学者、アンドレアス・ノアックは酸化グラフェンでなく水酸化グラフェンだろうと解説しているが、酸化グラフェンは人体に入ると水素と結合するとも言われているので、そのためかもしれない。 グラフェンは炭素原子1層で構成されるシート状の物質で、硬く、柔軟で、熱と電気を伝える一種の半導体。厚さが0.1ナノメートルの小さな「カミソリの刃」とも言える。 その誘導体も同様で、カミソリの刃が体の中を動き回り、ギザギザのエッジが細胞膜や皮膚に穴を開ける。意図せずに吸い込み、粘膜に炎症を引き起こすほか、肺にダメージを与える可能性もあると懸念されている。電磁波を反射するかもしれない。 こうした発見から、「COVID-19ワクチン」は単に遺伝子操作薬というだけでなく、ナノテクノロジーが関係していることがわかるのだが、この新薬は特許で守られ、その内容は秘密にされている。このナノテクノロジーが接種した人間の血液や細胞に対するさまざまな毒性は明らかにされていない。 このグラフェン誘導体との関係から5G(第5世代移動通信システム)も注目されている。電磁波によって脳波の異常が現れることは事実であり、「電磁波曝露で痙攣発作を起こす患者が実在し、電磁波曝露で頭痛などの症状を訴える患者がいる以上、患者の気のせいにして済むものではない。」(宮田幹雄『化学物質過敏症、電磁波過敏症(京都大学基礎物理学研究所研究会報告書『電磁波と生体への影響』、研究会報告)物性研究、2004年4月20日) 5Gは既存のシステムより影響が強い可能性があるのだが、この事実を認めることはエレクトロニクス利権にとって大きな損失になる。あのWHO(世界保健機関)が「科学的根拠はない」と主張するのは必然だと言えるだろう。電気通信業界は業界として科学的調査を行っていないと言われているが、それが事実なら「科学的根拠」が出てくるはずがない。 ところで、5Gの技術開発で先頭を走ってきた会社は中国のファーウェイ・テクノロジーズ(華為)。アメリカ政府がこの会社を激しく攻撃してきた。その中国は2019年10月、武漢で5Gの実験を行っている。
2023.07.24
ウラジミル・プーチン露大統領は7月20日、「ベラルーシへの侵略開始はロシアへの侵略開始を意味する」と発言、ポーランドの動きに注目していることを明らかにした。ポーランドがドニエプル川以西のウクライナ領占領を計画しているとロシア政府は見ているようだ。 ポーランドは昔から反ロシア運動が存在、侵略も行なっている。決して「かよわい子羊」ではない。そうした運動を率いていたユゼフ・ピウスツキは日露戦争が始まった1904年に来日、25年には「プロメテウス同盟」という地下組織を編成した。 ピウスツキの後、ポーランドの反ロシア運動を率いたウラジスラフ・シコルスキーはドイツ軍がポーランドへ軍事侵攻した1939年9月にパリへ脱出して亡命政権を名乗り、翌年6月にはイギリスのウィンストン・チャーチルと会談、ポーランドがイギリスと一緒に戦うことを約束している。亡命政権はロンドンへ移動した。 シコルスキーの側近のひとりだったユセフ・レッティンゲルは大戦の前からヨーロッパをイエズス会の指導の下で統一しようと活動していた人物で、戦争が終わった後の1952年にオランダのベルンハルト(ユリアナ女王の夫)に接近し、その人脈を利用してアメリカのハリー・トルーマン政権やドワイト・アイゼンハワー政権につながった。そして設立されたのが「ビルダーバーグ・グループ」だ。 プロメテウス同盟には当初、ウクライナのナショナリストも参加し、「OUN(ウクライナ民族主義者機構)という団体が生まれ、その中の強硬派がステパン・バンデラの周辺に集まる。2013年11月から14年2月にかけての暴力的クーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのはバンデラの信奉者たち、いわゆるネオ・ナチだ。ネオ・ナチは2004年以降、バルト3国にあるNATOの訓練施設で軍事訓練を受けたと言われ、ポーランド外務省は2013年9月にクーデター派の86人を大学の交換学生を装って招待、ワルシャワ郊外にある警察の訓練センターで4週間にわたり、暴動の訓練を受けたと伝えられている。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、昨年2月24日にロシア軍がミサイルでウクライナに対する攻撃を始めた直後、ウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けている。ドンバスへの軍事侵攻を行うために部隊を集結させていたため、一気に叩かれてしまったと言われている。その時点でウォロディミル・ゼレンスキー大統領はイスラエルのナフタリ・ベネット首相を仲介役としてプーチン大統領と停戦交渉を始めている。そうした交渉をアメリカやイギリスが潰したことも書いてきた通り。 その後、アメリカ/NATOはウクライナへ武器弾薬を供給、軍事情報を提供、昨年夏頃にはNATOが指揮していたとも言われているが、十分な訓練をしないまま前線へ送り出され、「玉砕戦法」を強いられた。アメリカ/NATOはウクライナ人の命を軽視しているので可能な戦法だ。 ロシア軍の地上部隊として活動してきたワグナー・グループはソレダルに続いてバフムート(アルチョモフスク)を制圧、エフゲニー・プリゴジンは5月20日にアルチョモフスクの「解放」を宣言、その際にセルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。 6月4日にウクライナ軍は「反転攻勢」を始めたが、フォーブス誌によると、6月8日にウクライナ軍の第47突撃旅団と第33機械化旅団は南部の地雷原を横断しようとした試みて壊滅的なダメージを受けた。その後も無謀な攻撃を繰り返し、反転攻勢の失敗は明確になる。 そして6月23日、ロシアの連邦保安庁(FSB)はワグナー・グループを率いるエフゲニー・プリゴジンの捜査を開始したと発表される。その日、プリゴジンはワーグナー・グループの部隊を率いてロストフ・オン・ドンへ入り、ロストフ・オン・ドンからモスクワへ向かうように命令したとされている。 この話が流れると、マイケル・マクフォール元駐露大使やアン・アップルバウムのようなワシントンの「専門家」はプーチン政権の崩壊を妄想し、大騒ぎだったが、展開が奇妙だということは本ブログでも書いてきた。 そこで、ロシア軍は「マスキロフカ」、つまり欺瞞作戦を行なっているのではないかという仮説が出てきた。例えば、西側の情報機関からプリゴジンに何らかのアプローチがあり、誘いに乗ったふりをしたというストーリー。ワグナー・グループを動かし、西側がロシア国内に作ったネットワークを動かして実態を調べようとしたのかもしれない。 ワグナー・グループが創設される際、ロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将が背後にいたと言われ、しかも今年5月4日からミハイル・ミジンチェフ上級大将が副司令官を務めている。セルゲイ・スロビキン上級大将も関係していた。 プリゴジンと同じようにロシア軍第58統合軍を指揮していたイワン・ポポフ少将もセルゲイ・ショイグ国防相やワレリー・ゲラシモフ参謀総長を批判、解任されたと噂されていたが、実際はシリアに派遣され、ロシア軍の軍事作戦を指揮しているという。 こうしたロシア軍の将軍やプリゴジンは何の咎めも受けていないようだが、別のロシア軍幹部16人が粛清されたという未確認情報が流れている。アメリカ/NATOがロシアに築いたネットワークをあぶり出す作戦だった可能性もあるだろう。 バラク・オバマ政権が行った2014年のクーデターはウクライナで内戦を引き起こしただけでなく、ロシアと中国を接近させ、両国は戦略的な同盟国になっている。 ロシアと中国を分断させようと努力していたひと世代前の好戦派、例えばヘンリー・キッシンジャーやズビグネフ・ブレジンスキーはネオコンのクーデターで自分たちの戦略が崩れたと考えたようだ。軌道修正しなければならないということだが、自分たちを優秀だと信じているらしいネオコンは力で押し切ろうとしてきた。その結果、彼らは追い詰められたネズミと同じように、厳しい状況に陥っている。
2023.07.23
ウクライナはすでに国家の体をなしていない。 2010年の大統領選挙で当選したビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除するためにバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを手先に使ったクーデターを実行、ウクライナの状況は悪化した。クーデター後の体制はネオ・ナチの影響を強く受けているが、その背後には米英の巨大資本が存在する。ヤヌコビッチを支持していた南部とクリミアはロシアと一体化したが、東部のドンバスでは内戦が勃発したわけだ。 キエフのクーデター政権はロシアを敵視しない人びと、特にロシア語を話す人びとを激しく弾圧、ドンバスを攻撃してきたが、クーデター後にウクライナ軍の将兵や治安組織の隊員は約7割が組織から離脱し、一部は反クーデター軍に合流したと言われ、ドンバスを制圧するためには戦力を増強する必要があった。 そこで「ミンスク合意」である。国連の安全保障理事会は2015年2月17日にこの合意を是認すると決議しているが、アンゲラ・メルケル元独首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認め、その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。ミンスク合意で平和が訪れることはありえなかった。停戦交渉を壊してきたのはアメリカとイギリスである、ドイツやフランスも平和を望んでいなかった。 アメリカはクーデターを仕掛けた国であり、イギリスもアメリカに同調していた。その米英にドイツやフランスが従属していたわけだ。ウクライナのクーデターはロシアとEUを分断、双方を破綻させることが目的だったのだが、それでもドイツとフランスは従属している。ロシアとEUを潰す計画を立てたのはアメリカとイギリスの支配層、つまり両国を拠点とする金融資本だ。 彼らはウクライナの産業や資源にも目をつけていた。ソ連時代、ウクライナには造船、エレクトロニクス、ロケット、化学工業、冶金などの産業があり、少なからぬ大学など研究施設もあった。穀物の生産も重要だが、ここにきて注目されているのは未開発のレアアースだ。 アメリカはウクライナを支配することでロシアとEUを分断するだけでなく、生物化学兵器の開発、マネーロンダリング、そしてレアアースの支配を目論んできた。ジョー・バイデン親子がウクライナに執着している理由のひとつはここにあると見られている。 しかし、今は見る影もない。ソ連消滅後、ロシアも10年間は惨憺たる状態だったが、西側の巨大資本から自立、新自由主義から離脱する道を歩み始めて復活した。西側へ従属する道を歩いてきたウクライナは破綻したわけだ。 そうした状況を作り出したのは新自由主義にほかならないが、その実態に気づいたウクライナ人は2004年から05年にかけてウクライナの選挙でヤヌコビッチを支持した。 そこでアメリカは選挙に介入、大多数の住民がロシア語を話す東部と南部を支持基盤とするヤヌコビッチの政権が樹立されることを阻止するため、抗議活動を演出している。いわゆる「オレンジ革命」だ。この時のアメリカ大統領はジョージ・W・ブッシュである。 ブッシュ政権が選んだビクトル・ユシチェンコは2005年1月から2010年2月まで大統領を務め、新自由主義を導入、大多数のウクライナ人が貧困化した。富は欧米の支配層へ流れたが、その手先になった一部のウクライナ人も巨万の富を築く。いわゆる「オリガルヒ」だ。 そこで、2010年1月から2月にかけて行われた大統領選挙ではヤヌコビッチが勝利する。その結果に反発したバラク・オバマ大統領は7月にヒラリー・クリントン国務長官をキエフへ送り込み、新政権に対してロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、西側の植民地になることを望まないヤヌコビッチ大統領はこの要求を拒否。そこからオバマ政権のクーデター計画が始まったと言われている。 現在、米英金融資本はウクライナを「民営化」しようとしている。その巨大資本の中心は「闇の銀行」とも呼ばれるブラックロック、そして巨大銀行のJPモルガン・チェース。民営化を実現するため、このふたつの「民間企業」はウクライナ復興銀行(URB)の設立を目指しているようだ。私的権力が支配する体制はファシズムにほかならない。
2023.07.22
ロシア軍第58統合軍を指揮していたイワン・ポポフ少将はセルゲイ・ショイグ国防相やワレリー・ゲラシモフ参謀総長を批判していた。彼の主張を録音したボイスメッセージをロシアのアンドレイ・グルリョフ議員が公開して話題になったが、この話を奇妙だと考える人もいる。そのひとりがCIAの元分析官で国務省のテロ対策室に所属していたこともあるラリー・ジョンソンだ。ポポフ解任されたとされているのだが、実際はシリアに派遣され、ロシア軍の軍事作戦を指揮しているという。 ワグナー・グループのエフゲニー・プリゴジンもゲラシモフやショイグを批判していた。この傭兵会社の創設ではロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めていたウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将が背後にいたと言われ、今年5月4日からミハイル・ミジンチェフ上級大将がワグナー・グループの副司令官を務めている。民間の傭兵会社とは考えにくい。 ワグナー・グループはソレダルに続いてバフムート(アルチョモフスク)を制圧、プリゴジンは5月20日にアルチョモフスクの「解放」を宣言、その際にセルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。ポポフと同様、このふたりもロシア軍の有能な将軍として知られている。 スロビキンはプリゴジンが騒ぎを起こした後、公的な場に姿を見せていないので、解任されたのではないかと噂されているが、その推測を裏付ける情報はない。 プリゴジンの騒ぎとは、NATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が終了した6月23日の「反乱」。ロシアの連邦保安庁(FSB)は武装反乱の呼びかけ容疑でプリゴジンの捜査を開始、ウラジミル・プーチン大統領は「武装反乱」は反逆であると述べ、ロシア軍に対して武器を取った者は誰でも処罰されると約束しているのだ。 しかし、24日の午後にはロシアにおけるワグナー・グループの行動を中止することでベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領とプリゴジンが合意し、ロシア政府はワーグナー・グループの幹部に対する訴追を取り下げると発表した。プーチン大統領は最終的にプリゴジンの行動を武装反乱だと見なさなかったということだろう。 ショイグは父親のコネで1990年にロシア連邦国家建築建設委員会の副委員長に任命されたが、そこで彼はボリス・エリツィンの信頼を得たと言われている。そこでショイグはエリツィン人脈に属すと考えられ、欧米資本の影響下にあるとも言われている。1990年代にエリツィン人脈は米英巨大資本の命令に従ってロシア国民の資産を略奪する政策を進めていた。その時、ショイグはエリツィン側について戦ったという。 つまり、ロシア軍の内部で、エリツィン派の幹部に現場の司令官たちが反発しているという話はありそうなのだが、一連の出来事を見ていると奇妙なのだ。本当なら厳しく処罰されそうなのだが、そうした話が流れてこない。ロシア軍は「マスキロフカ」、つまり欺瞞作戦を行なっている可能性がある。 ウクライナの内戦は2014年2月にバラク・オバマ政権が暴力的なクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除し、ネオ・ナチ体制を築いた結果だ。その様子は人びとによって撮影され、インターネット上に流れた。その後、削除されたようだが、事実は消えない。 ヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部の住民はクーデター体制を拒否、南部のクリミアはロシアと一体化する道を選び、東部のドンバスでは内戦の道を選んだ。クーデター後、ウクライナ軍の将兵や治安組織の隊員は約7割が組織から離脱し、一部は反クーデター軍に合流したと言われている。 ネオ・ナチの一部はNATO諸国で軍事訓練を受けていたが、それだけでは足りない。ネオ・ナチはウクライナだけでなく世界各地から集められ、軍事訓練を受け、内務省に設置された親衛隊の主要メンバーになった。そうした親衛隊の中心的な存在がアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)。マリウポリを拠点にするが、その際、少なからぬ住民が殺害されたと言われている。 そうしたネオ・ナチを訓練した軍人のひとりがアメリカ陸軍のブライアン・ボイエンガー。このボイエンガーはイラクでマイケル・スティール大佐の下で活動したが、このスティールはソマリアでの戦闘に参加、本人は否定しているが、イラクでは少なからぬ非武装の市民を殺害したと言われている。 ボイエンガーは2015年にウクライナへ軍事インストラクターとして入り、アメリカの特殊部隊に参加したとされているのだが、実際はヤヌコビッチが排除される直前の2014年2月15日にはウクライナで活動を始めていた。 その数日後、キエフではネオ・ナチが棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら最前線に現れ、石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始める。広場では無差別の狙撃があった。この狙撃を指揮していたのは西側が支援していたグループの幹部でネオ・ナチのアンドレイ・パルビーだとされている。 イタリアで2017年11月に放送されたドキュメント番組の中で3人のジョージア人が狙撃したのは自分たちだと語っている。この3人は治安部隊のメンバーとしてジョージアから送り込まれたのだが、警官隊と抗議活動参加者、双方を手当たり次第に撃つよう命じられたとしている。(その1やその2)この3人も狙撃の指揮者はクーデター派の幹部だったアンドレイ・パルビーだと語っている。ボイエンジャーも狙撃事件を組織したひとりだったとする証言もある。 ヤヌコビッチが排除された直後の25日に現地入りしたエストニアのウルマス・パエト外相も調査の結果、クーデター派が狙撃したと判断、その事実をEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で報告しているが、この報告をアシュトンはもみ消された。 2013年11月から14年2月にかけてのクーデターはオバマ政権がネオ・ナチを利用したというだけでなく、アメリカの軍や情報機関が深く関係していた可能性が大きい。すでに、その時点までにアメリカの巨大企業は多額の資金をウクライナへ投入しているが、それはウクライナの資源や富を盗むことが目的である。
2023.07.21
朝鮮の金正恩第1書記の妹で外交政策に大きな影響力を持つ金与正は7月10日、同国のEEZ(排他的経済水域)の内側をアメリカの偵察機が飛行、迎撃機を発進させたと発表、侵入は8回あったと非難した。 同じ日に韓国の合同参謀本部は平壌が韓米同盟による「通常の飛行活動」を威嚇しているとする声明を発表したが、それに対する反論だと見られている。その2日後、朝鮮は「⽕星砲-18」と名付けられたICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を実施した。 その発射実験から4日後にアメリカは韓国と日本を従えて日本海で軍事演習を実施、これに続いて中国とロシアが20日から日本海で艦隊演習を実施する。7月18日にはアメリカ海軍の核兵器を搭載したSSBN(弾道ミサイル潜水艦)の「ケンタッキー」が釜山に入港、朝鮮、中国、ロシアを威圧している。 イギリスは19世紀にユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配し、内陸部を締め上げて支配するという戦略を作成、アメリカはその戦略を引き継いでいる。スエズ運河の建設や明治維新がなければ成り立たない戦略だ。 アメリカ軍は2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ編成替えしているが、これもその戦略に基づいている。日本を太平洋側の拠点に、インドを太平洋側の拠点に、そして両海域をつなぐのがインドネシアだとされている。つまりアメリカにとって日本、インド、インドネシアは戦略的に重要な国だということになるが、今のところ、アメリカに従属していると言えるのは日本だけだ。 アメリカは1949年にNATO(北大西洋条約機構)を創設した。加盟国はアメリカのほか、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルク。ソ連に対抗することが目的だとされたが、その当時のソ連には西ヨーロッパに攻め込む能力はなく、ヨーロッパを支配することが本当の目的だった。 初代のNATO事務総長はヘイスティング・ライオネル・イスメイ。この人物はウィンストン・チャーチルの側近で、NATO創設の目的について「ソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつける」ことにあると公言している。ヨーロッパですでに編成されていた破壊工作部隊はNATOの秘密部隊として活動し始めた。 現在、アメリカは日本、韓国、台湾、フィリピンなどを従えているように見えるが、従属国と言えるのは日本だけ。アメリカの支配層は不安だろう。そこでアメリカはオーストラリア、インド、そして日本と「クワド」を組織、さらにオーストラリアやイギリスと3カ国で「AUKUS」という軍事同盟も組織した。 オーストラリアはアメリカとイギリスの技術で原子力潜水艦を建造すると報道されている。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っているが、山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言した。 2024年中に連絡事務所をNATOは連絡事務所を東京に設置するとされているが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はその計画を承認しなかったという。NATOとは北大西洋条約機構を意味するのであり、「北大西洋地域の安全保障」を維持することが目的だという理由からだ。 フランスと違い、日本はアメリカに歯向かわない。岸田文雄政権は昨年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。その決定を「手土産」にしてアメリカを訪問、ジョー・バイデン大統領と1月13日に会談している。 現在、アメリカの軍事政策を動かしている勢力はネオコン。彼らはソ連が1991年12月12月にソ連が消滅した直後、アメリカが唯一の超大国になったと認識、国防総省の「DPG草案」という形で世界制覇プランが作成された。作成の中心がポール・ウォルフォウィッツ次官だったことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれてきた。 その後、アメリカの国際戦略はこのドクトリンに基づいて動くことになった。中心的な目的には新たなライバルの出現を防ぐことにある。警戒する地域には旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアが含まれる。ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れるともしている。ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込もうということだろう。 戦争マシーンに組み込まれることを嫌がっていた日本に進むべき道筋を示したのが1995年2月にジョセイフ・ナイが発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」だ。日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれることを嫌がる政治家や官僚もいたことから国連を中心とする主張する一派を排除、そして奇怪な事件が続く。 例えば、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、その10日後には警察庁の國松孝次長官が狙撃されている。8月には日本航空123便の墜落に自衛隊が関与していることを示唆する大きな記事がアメリカ軍の準機関紙とみなされているスターズ・アンド・ストライプ紙に掲載された。 結局、日本は戦争への道を歩み始め、自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作った。2023年には石垣島でも完成させている。 アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。
2023.07.20
東京電力福島第一原発は2011年3月11日、東北地方の太平洋沖で発生したマグニチュード9.0という大規模な地震が原因で炉心が溶融する大事故が引き起こされ、今でも大量の汚染水が発生し続けている。そこで日本政府は2021年4月13日に汚染水を太平洋へ放出する方針を決定、その計画をIAEA(国際原子力機関)は承認した。「水に流す」ということだ。共同体内での揉め事を「水に流す」のは生活の知恵だろうが、放射性物質に汚染された水を海へ流す行為は犯罪的である。 放出する汚染水は「ALPS(多核種除去設備)」によって「トリチウムを除く大部分の放射性核種を取り除いた状態でタンクに貯蔵」しているものだとされている。 トリチウム、つまり三重水素が残っていること自体が大きな問題だが、ALPSは炭素14を取り除けず、処理した汚染水の8割以上に基準を超える放射性物質が残っているとも指摘されている。炭素14はDNAを損傷させ、突然変異を誘発する可能性があるともいう。 日本政府は危険性が明確になり、人類の存続すら危うくすると懸念されている遺伝子操作薬、いわゆる「COVID-19ワクチン」の接種を推進している。正気ではない。正気ではない政府が汚染水を海へ流しても不思議ではないが、中国や韓国などの国々から抗議されるのは当然だろう。 放射能汚染水だけでなく、歴史も日本政府は水に流そうとしてきた。イギリスの支援を受けて長州や薩摩を中心とする勢力は徳川体制を倒し明治体制を樹立、米英に煽られて東アジア侵略に乗り出した。侵略、破壊、殺戮、略奪を繰り広げたのだが、それをなかったことにしたがっている人びとがいる。「水に流せ」というわけだが、こうした行為は事実であり、加害者である日本側から求めることはできない。「反日教育」という呪文を何度唱えても事実は消えないのだ。 原発の汚染水はデブリ(溶融した炉心を含む塊)に触れた水だ。デブリがどうなっているか正確には不明だが、格納容器の床に落下、コンクリートを溶かし、さらに下のコンクリート床面へ落ちた可能性もある。さらに一部が地中へ潜り込み、地下水で冷却されているとも考えられるだろう。 イギリスのタイムズ紙は福島第一原発を廃炉するまでに必要な時間を200年だと推定したが、数百年は必要だろうと考える人が少なくない。数百年間は放射性物質を含む水を太平洋へ流し続けるということだ。 福島第一原発から放出された放射性物質の総量はチェルノブイリ原発事故の1割程度、後に約17%に相当すると発表されているが、その算出方法に問題がある。 計算の前提では、圧力抑制室(トーラス)の水で99%の放射性物質が除去されることになっているが、この事故では水が沸騰していたはずなので、放射性物質の除去は無理。トーラスへの爆発的な噴出で除去できないとする指摘もある。そもそも格納容器も破壊されていた。 原発の元技術者、アーニー・ガンダーセンは少なくともチェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2~5倍の放射性物質を福島第一原発は放出したと推測している(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)が、10倍程度だと考えても非常識とは言えない。 放出された放射性物質が住民の上に降り注いでいたことを示す証言もある。例えば医療法人の徳洲会を創設した徳田虎雄の息子で衆議院議員だった徳田毅は事故の翌月、2011年4月17日に自身の「オフィシャルブログ」(現在は削除されている)で次のように書いている: 「3月12日の1度目の水素爆発の際、2km離れた双葉町まで破片や小石が飛んできたという。そしてその爆発直後、原発の周辺から病院へ逃れてきた人々の放射線量を調べたところ、十数人の人が10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れていたという。それは衣服や乗用車に付着した放射性物質により二次被曝するほどの高い数値だ。」 12日の午後2時半頃にベント(排気)した、つまり炉心内の放射性物質を環境中へ放出したとされているが、双葉町ではベント前に放射線量が上昇していたと伝えられている。そして午後3時36分に爆発。 建屋の外で燃料棒の破片が見つかるのだが、この破片についてNRC(原子力規制委員会)新炉局のゲイリー・ホラハン副局長は2011年7月28日に開かれた会合で、発見された破片は炉心にあった燃料棒のものだと推測できるとしている。マンチェスター大学や九州大学の科学者を含むチームは原子炉内から放出された粒子の中からウラニウムや他の放射性物質を検出した。
2023.07.19
アメリカ/NATOがウクライナへ供給した武器弾薬の約20%は「反転攻勢」が始まった最初の2週間でロシア軍によって破壊されたとニューヨーク・タイムズ紙が伝えている。西側のプロパガンダ紙ですら、「反転攻勢」の惨状を否定できないのだろう。ウクライナ兵はアメリカ/NATOの命令でロシア軍が築いた防衛線に突入させられ、死傷した兵士は約2万6000名、破壊された戦闘車両は3000両とも言われている。 レオパルド2R地雷除去車が先導する形でウクライナ軍の戦車部隊は地雷原を突破しようと試みたが、「反転攻勢」を始めてから1、2時間のうちに、M2ブラッドレー歩兵戦闘車のほぼ5分の1、レオパルド2A6戦車の5分の1、レオパルト2R装甲工兵車の半分を失ったという。 アメリカ/NATOはアメリカのM1エイブラムス、イギリスのチャレンジャー2、ドイツのレオパルト2といった戦車のほか、「HIMARS(高機動ロケット砲システム)」や長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドー」を供給しているが、ウクライナのアレクセイ・レズニコフ国防相はHIMARS多連装ロケットランチャー用の弾薬を含むGPS誘導砲弾を妨害する方法をロシア軍は知っているとしている。西側の兵器が優秀だという話は幻影にすぎなかった。 ウクライナ軍がロシア軍に圧倒され、アメリカ/NATOの武器庫は空になったようで、日本にもTNT爆薬を供給してほしいと頼み込んでいる。韓国の尹錫悦大統領はリトアニアとポーランドを訪問した後、7月15日にウクライナを予告なしに訪れ、ウクライナに対する軍事支援の「規模拡大」を宣言した。イギリス政府やアメリカ政府はウクライナへ劣化ウラン弾やクラスター爆弾を提供しているが、こうした問題の大きい兵器を提供しているのは、それしか武器庫に残っていないからだという見方もある。 昨年2月24日にロシア軍がドンバス(ドネツクやルガンスク)で軍事作戦を開始した直後、キエフのクーデター軍と戦うドンバス側の部隊は現地軍、チェチェン軍、あるいはワグナー・グループで、ロシアの正規軍は多くなかった。戦力を比較するとドンバス側はキエフ側の数分の1だったと言われている。西側でもクレムリンのやり方に疑問を持つ人がいたが、それでもドンバス側が優勢で、キエフ側の主力だったネオ・ナチの親衛隊は軍事拠点を住宅地に築き、住民を人質にとっていた。ロシア政府内にいるエリツィン派の思惑を現場の将兵が吹き飛ばしてしまったのかもしれない。 ウクライナ政府はロシア政府と停戦交渉を開始。停戦交渉を仲介したひとりはイスラエルの首相だったナフタリ・ベネット。彼によると、話し合いで双方は妥協に応じ、停戦は実現しそうだった。 3月5日にベネットはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけ、その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・シュルツ首相と会っている。ゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフがウクライナの治安機関SBUのメンバーに射殺されたのはその3月5日だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 停戦交渉の進展でロシア軍はウクライナ政府との約束通りにキエフ周辺から撤退を開始、3月30日にはブチャから撤退を完了した。31日にはブチャのアナトリー・フェドルク市長がフェイスブックで喜びを伝えているが、虐殺の話は出ていないが、その後、西側の有力メディアはロシア軍が住民を虐殺したとする宣伝を開始、停戦交渉を壊した。実際に住民を殺したのはウクライナ内務省の親衛隊だったと見られている。ロシアに寛容だと判断させた人びとが殺されている。 4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と国民を脅し、4月30日になるとナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。 ウクライナで窮地に陥っているアメリカ/NATOは東アジアの軍事的な緊張を高め、あわよくば戦争を始めたいと考えているようだ。
2023.07.18
アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月からウクライナでクーデター計画を始動させ、翌年の2月にはビクトル・ヤヌコビッチ大統領の排除に成功した。その時の工作でバラク・オバマ政権が手先に使ったのはNATO諸国で訓練を受けたネオ・ナチだ。 クーデターでキエフや西部地域は制圧できたものの、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデター体制を拒否、南部のクリミアはロシアの保護下に入り、東部のドンバスでは内戦が始まる。 しかし、内戦でキエフのクーデター政権は勝てないとアメリカやEUは判断、軍事力の増強を図る。そうした時に結ばれたのがミンスク合意だ。ドイツやフランスが仲介したのだが、アンゲラ・メルケル元独首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認め、その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。 その後、8年をかけてアメリカ/NATOはクーデター政権に兵器を供給、兵士を訓練、ドンバスの周辺に要塞線を築いた。アゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリや岩塩の採掘場があるソレダルの要塞は特に有名だ。 ウクライナでクーデターを実行した目的のひとつはロシアとの国境線までNATOを拡大し、「チェックメート」を宣言することにあったのだろうが、ロシアとドイツを分断することも重要な目的だった。ドイツやフランスはロシアとビジネス上の関係を緊密化させていたが、それはアメリカの影響力が低下することを意味する。そうした動きを阻止しなければならなかった。 ドイツとロシアを結びつける大きなファクターはエネルギー資源。ロシアからヨーロッパへ天然ガスを運ぶパイプラインの多くはウクライナを通過していた。ウクライナを支配ることでアメリカは天然ガスの輸送を断ち切ることもできる。 しかし、ウクライナを迂回するパイプラインをドイツとロシアは建設する。「ノード・ストリーム」と「ノード・ストリーム2」だ。このパイプラインが昨年9月26日に爆破された。破壊直後、ポーランドで国防大臣や外務大臣を務めたラデク・シコルスキーは「ありがとう、アメリカ」と書き込み、その後、ノードストリームの破壊はプーチンの策略の余地を狭めるとも書いた。 状況証拠はアメリカ政府による犯行だということを示唆しているが、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは今年2月8日、アメリカ海軍が爆破したとする記事を発表した。 ジョー・バイデン大統領はオバマ政権で副大統領を務め、ホワイトハウスでクーデターを指揮していた。その下にいたのがビクトリア・ヌランド国務次官補と副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンだ。このトリオにブリンケン国務長官を加えたチームが現在、戦争政策を推進している。 バイデンが大統領に就任したのは2021年1月。その年の後半に新大統領はサリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のチームを編成した。その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加、12月にはどのような工作を実行するか話し合ったという。そして2022年初頭、CIAはサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。 その年の1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官は、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2を止めると発言、2月7日にはバイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束した。 ハーシュによると、爆破計画の拠点として選ばれたのはノルウェー。イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長の母国だ。3月にはサリバンのチームに属すメンバーがノルウェーの情報機関に接触、爆弾を仕掛けるために最適な場所を聞き、ボルンホルム島の近くに決まった。 プラスチック爆弾のC4が使われたが、仕掛けるためにはロシアを欺くためにカムフラージュが必要。そこで利用されたのがNATO軍の軍事演習「BALTOPS22」だ。その際にボーンホルム島の近くで無人の機雷処理用の潜航艇を使った訓練が行われた。 当然のことながら、爆破されるとパイプライン内の圧力が減少する。その事実をロシアのガスプロムは異常をアラームで知るのだが、詳しい状況は理解できなかった。 そのアラームが鳴った1分後、イギリスの首相だったリズ・トラスはiPhoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送っている。この情報は10月30日に報じられたが、その前日、ロシア国防省はこれらのパイプラインを破壊したのはイギリス海軍だと発表、トラスはその4日前に辞任している。 アメリカが何カ国かの協力を得てパイプラインを爆破した可能性が高く、ドイツはこの爆破で経済活動に大きなダメージを受けた。 ところが、そのドイツで外務大臣を務めるアンナレーナ・ベアボックは2022年8月31日に「フォーラム2000」で「ドイツの有権者がどのように考えようとも、私はウクライナの人びとを支援する」と発言、23年1月24日に「われわれはロシアと戦争している」とPACE(総州評議会議会)で口にしている。ウクライナに対する軍事支援にも積極的である。 シティ(金融資本)を拠点とするイギリスの支配層は19世紀からロシアの征服を計画、そこに新興国家のドイツを潰すと言う目的が加わり、第1次世界大戦につながった。ドイツとロシアを戦わせるということである。 この戦略を実行する上で重要な役割を果たしたのがイギリスと関係の深い有力貴族、ユスポフ家だ。第1次世界大戦が始まる前からこの家にはイギリス人の家庭教師がいて、サンクトペテルブルクにあった同家の宮殿で家庭教師の子どもが誕生している。スティーブン・アリーだ。 その11年後にフェリックス・ユスポフが誕生、後にイギリスのオックスフォード大学へ留学し、ブリンドン・クラブへ入っている。留学先で親密な関係になったオズワルド・レイナーは流暢なロシア語を話した。 アリーとレイナーは大学を卒業した後、イギリスの対外情報機関MI6のエージェントになる。MI6は金融資本と緊密な関係にある組織だ。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) 第1次世界大戦に参加するかどうかで帝政ロシアの支配層は割れていた。ドイツとの戦争に積極的な産業資本家と消極的な大地主だ。産業資本家側には有力貴族のフェリックス・ユスポフが、また大地主側には修道士のグレゴリー・ラスプーチンがつき、ラスプーチンの背後には皇帝アレキサンドロビッチ・ニコライ2世と皇后アレクサンドラがついていた。 戦争を望んでいなかった皇后は7月13日にラスプーチンへ電報を打って相談、ラスプーチンは戦争が国の崩壊を招くと警告しているが、その内容を盗み見た治安当局は議会などにリーク、ラスプーチンは腹部を女性に刺されて入院してしまう。入院中にロシアは総動員を命令、ドイツは動員を解除するよう要求。それをロシアが断ったため、ドイツは8月1日に宣戦布告している。ラスプーチンが退院したのは8月17日のことである。 すでにドイツと戦争を始めていたロシアだが、ラスプーチンが復帰したことでいつ戦争から離脱するかわからない状況。それを懸念したイギリス外務省は1916年にサミュエル・ホーアー中佐を責任者とする情報機関のチームをペトログラードへ派遣。チームにはアリーとレイナーが含まれていた。(前掲書) ペトログラードにおけるイギリスのお抱え運転手だったウィリアム・コンプトンの日記によると、彼はレイナーをユスポフの宮殿へ1916年の10月後半から11月半ばにかけて6度運んだという。ユスポフは1916年12月19日にレイナーと会ったと書き残している。(前掲書) ラスプーチンは1916年12月30日に暗殺された。殺したのはユスポフだと言われているが、暗殺に使用された455ウェブリー弾はイギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだったという。 ユスポフは上流社会の堕落に憤り、犯行に至ったとされているが、世界の上流社会は堕落している。そのようなことで憤る人物が上流社会で生きることはできない。 ロシアの「二月革命」でドイツとの戦争を継続することが決まると、ドイツは「即時停戦」を主張していたウラジミル・レーニンに目をつけるのだが、当時、ボルシェビキの幹部は国外に逃亡しているか刑務所に言えられていた。 そこでドイツはボルシェビキの幹部32名を「封印列車」でロシアへ運ぶ。ウラジミル・レーニンは1917年4月に帰国、7月にボルシェビキは武装デモを行うものの、鎮圧されてしまう。レーニンはフィンランドへの亡命を余儀なくされたが、結局、「十月革命」につながった。 こうした経緯があるため、ソ連とドイツとの関係は良かったのだが、この関係をアドルフ・ヒトラーのナチスが破壊した。このナチスがソ連に破れると、アレン・ダレスなどはナチスの幹部たちを逃亡させ、保護した。 この仕組みはNATOにも組み込まれ、現在のドイツでも影響力を維持している。ウクライナでのクーデター、パイプラインの爆破などでアメリカはドイツを弱体化させようとしているが、ドイツの支配層にはそうした工作に協力するグループが存在しているわけだ。
2023.07.17
ロシア軍の第58統合軍を指揮していたイワン・ポポフ少将は豪胆な性格で、兵士たちから人気があったという。このポポフが解任されたのだが、彼の主張を録音したボイスメッセージをロシアのアンドレイ・グルリョフ議員が公開、話題になっている。 その中でポポフはワレリー・ゲラシモフ参謀総長たちを厳しく批判、その中で兵士のローテーション、あるいはウクライナ軍の重火器を効果的に標的にしていないなどについて語った。ゲラシモフのほかセルゲイ・ショイグ国防相も批判の対象だ。 ワグナー・グループのエフゲニー・プリゴジンもゲラシモフやショイグを批判していた。この傭兵会社が創設された際、ロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めていたウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将が背後にいたと言われ、今年5月4日からミハイル・ミジンチェフ上級大将がワグナー・グループの副司令官を務めている。 アゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリや岩塩の採掘場があるソレダルにはソ連時代、核戦争に備えて地下施設が建設されていたが、それらを利用し、アメリカ/NATO/ウクライナ軍はドンバスの周辺に要塞線を築いた。 ワグナー・グループはソレダルに続いてバフムート(アルチョモフスク)を制圧、プリゴジンは5月20日にアルチョモフスクの「解放」を宣言した。その際、セルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。スロビキンはプリゴジンがデモンストレーションを行なった後、公的な場に姿を見せていない。 NATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が終了した6月23日、ロシアの連邦保安庁(FSB)は武装反乱の呼びかけ容疑でプリゴジンの捜査を開始、ウラジミル・プーチン大統領は「武装反乱」は反逆であると述べ、ロシア軍に対して武器を取った者は誰でも処罰されると約束した。 ところが、24日の午後にはロシアにおけるワグナー・グループの行動を中止することでベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領とプリゴジンが合意、ロシア政府はワーグナー・グループの幹部に対する訴追を取り下げると発表した。プーチン大統領は最終的にプリゴジンの行動を武装反乱だと見なさなかったということだろう。 ロシア軍の中で対立があり、一方にはポポフやプリゴジンが属し、他方にはゲラシモフやショイグがいる。 ショイグは父親のコネで1990年、ロシア連邦国家建築建設委員会の副委員長に任命されたが、そこで彼はボリス・エリツィンの信頼を得たという。それ以来、今でもショイグはエリツィン人脈に属し、欧米資本の影響下にある。そこで、ショイグたちエリツィン人脈はロシア軍をウクライナで戦争の泥沼へ突き落とそうとしたと考える人もいる。 ソ連を消滅させたのはエリツィンだが、彼に実権を握らせるための秘密工作があった。その始まりはニコライ・ブハーリンを「別の選択肢」として研究していたミハイル・ゴルバチョフの登場。実権を握ったゴルバチョフは「ペレストロイカ(建て直し)」を打ち出すが、これを考え出したのはKGBの頭脳とも言われ、政治警察局を指揮していたフィリップ・ボブコフだ。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) このボブコフはKGBの将軍で同僚だったアレクセイ・コンドーロフと同じようにジョージ・H・W・ブッシュをはじめとするCIAのネットワークと連携していたとする情報がある。CIA人脈とKGBの中枢が手を組みんでソ連を消滅させ、資産を盗んだというのだ。このクーデターは「ハンマー作戦」と呼ばれている。 ところがゴルバチョフは西側支配層の命令に従わない。そこで排除され、登場してきたのがエリツィン。彼はソ連を消滅させる直前の1991年11月にアナトリー・チュバイスを経済政策の中枢に据え、チュバイスはエリツィンの娘、タチアナ・ドゥヤチェンコの利権仲間になる。経済部門ではこうして欧米支配層の手先として動く人脈が作られた。昨年2月、ロシアがウクライナに対してミサイル攻撃を始めると、気候問題特使を務めていたチュバイスが辞任して国外へ脱出した。 エリツィン人脈は西側資本の命令に従ってロシア国民の資産を略奪する政策を進めるが、それに反対する議会は1993年3月に立ち上がる。国民の多くも議員を支持したのだが、アメリカ政府の支援を受けていたエリツィン大統領は国家緊急事態を宣言して対抗、9月になると議会を解散し、憲法を廃止しようとする。 それに対して議員側はそうした行為をクーデターだと非難、自分たちの政府を樹立すると宣言して少なからぬ議員が議会ビル(ホワイトハウス)に立てこもるのだが、エリツィン大統領は力の解決を図った。戦車に議会ビルを砲撃させたのだ。この時、ショイグはエリツィン側について戦ったという。 議会ビルに立てこもって殺された人の数は100名以上、議員側の主張によると約1500名に達するというが、こうした虐殺を西側の政府や有力メディアは容認する。 エリツィンはロシアを欧米の植民地にし、自分たちは甘い汁を吸おうとしたのだが、それをひっくり返したのがウラジミル・プーチンにほかならない。彼はロシアを再独立させつつある。 そして今、プーチンは国防省のエリツィン派と対峙せざるをえない状況になった。CIA人脈に買収されたKGBグループは消滅していない。エリツィン派はロシアが敗北し、新自由主義政策に戻ることを望んでいるはずだ。
2023.07.16
ウクライナでの戦闘にしろ、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」にしろ、アメリカの支配層やその従属国のエリートたちにとって都合の悪い情報は検閲で排除され、事実に基づく検証をせず、都合の良い物語が流されている。流しているのは言うまでもなく有力メディアだ。 西側支配層は事実を嫌う。内部告発を支援してきたWikiLeaksのジュリアン・アッサンジは2019年4月11日にロンドンにあるエクアドル大使館の中でロンドン警視庁の捜査官に逮捕され、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所で拘束されているが、これも事実を封じ込めるためだろう。 アメリカの当局は彼をハッキングのほか「1917年スパイ活動法」で起訴、懲役175年が言い渡される可能性がある。ハッキング容疑はでっち上げであり、「1917年スパイ活動法」もオーストラリア人でヨーロッパを活動に舞台にしていたアッサンジを起訴する法的な根拠があるとは言えない。そもそも、「1917年スパイ活動法」自体が問題だ。 アメリカの支配層がアッサンジを拘束、WikiLeaksの活動を妨害している理由は、彼らにとって都合の悪い事実を隠したいからにほかならない。日米欧の西側「先進国」では1970年代の後半から言論統制を強化し、有力メディアは支配層のプロパガンダ機関になった。 アメリカの支配層は以前から情報の統制を重視、第2次世界大戦が終わって間もない頃から言論操作プロジェクトを始めている。「モッキンバード」だ。デボラ・デイビスが書いた『キャサリン・ザ・グレート』によると、そのプロジェクトが始まったのは1948年頃である。 それを指揮していたのは4人。第2次世界大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、ダレスの側近で戦後に極秘の破壊工作機関OPCを率いていたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。フィリップの妻がウォーターゲート事件で有名になったキャサリーン。(Deborah Davis, “Katharine the Great,” Harcourt Brace Jovanovich, 1979) フィリップはキャサリーンと離婚して再婚し、ワシントン・ポスト紙を自分ひとりで経営すると友人に話していたが、1963年6月に精神病院へ入院、8月に自殺している。フィリップと親しかったジョン・F・ケネディが暗殺されたのはその3カ月後だ。 ワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を取材したカール・バーンスタインはリチャード・ニクソン大統領が辞任した3年後の1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したとバーンスタインにCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。 彼によると、CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開する。その結果、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ているとしていた。そのウルフコテは2017年1月、56歳の時に心臓発作で死亡した。 ウクライナの内戦が始まったのは2014年2月のことである。2010年の大統領選挙で東部と南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチが勝利したのだが、それを嫌ったバラク・オバマ政権がクーデタを計画、13年11月から実行に移し、14年4月にヤヌコビッチを排除したのでだ。クーデターの主力はNATOの訓練を受けたネオ・ナチだ。 ヤヌコビッチを支持した人びとはクーデターを拒否、ネオ・ナチがキエフを支配する様子を知ったクリミアの住民はロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が始まった。オデッサではクーデターに抵抗した住民がネオ・ナチの集団に虐殺されている。こうした事情を西側の有力メディアや「リベラル派」は無視してきた。 クーデターでヤヌコビッチが排除される前年、ロシア政府はアメリカがウクライナで生物兵器の研究開発をしていると批判していた。後にそれが事実だということが判明する。 アメリカの生物化学兵器開発は日本と密接な関係がある。アメリカでは1943年にUSBWL(陸軍生物兵器研究所)がキャンプ・デトリック(後のフォート・デトリック)が建設され、生物化学兵器の研究開発が始まるが、本格化するのは第2次世界大戦後のことだと言われている。ドイツや日本の研究資料や研究者を押さえてからだ。 日本では1933年に軍医学校が東京帝国大学や京都帝国大学の医学部と共同で生物化学兵器の研究開発を始めたが、正確なデータを得るため、日本では生体実験が組織的に実施されている。犠牲になったのは主に中国人、モンゴル人、ロシア人、朝鮮人。こうした人びとを日本軍は「マルタ」と呼んだ。 生体実験を実施するため、軍の内部に特別な部隊が占領地である中国で編成される。当初は加茂部隊や東郷部隊と呼ばれたが、1941年からは第731部隊と呼ばれている。第731部隊の隊長は1936年から42年、そして45年3月から敗戦までが石井四郎、その間、42年から45年2月までを北野政次が務めた。 1945年8月には関東軍司令官の山田乙三大将の名前で部隊に関連した建物は破壊され、貴重な資料や菌株は運び出された。捕虜の多くは食事に混ぜた青酸カリで毒殺される。事態に気づいて食事をとならなかった捕虜は射殺され、死体は本館の中庭で焼かれ、穴の中に埋められたという。 石井たち第731部隊の幹部は大半が日本へ逃げ帰るが、日本の生物化学兵器に関する情報はアメリカ軍も入手していた。1946年に入ると石井たちアメリカ軍の対諜報部隊CICの尋問を受けることになるが、厳しいものではなく、資料はアメリカ側へ引き渡された。 尋問の過程でGHQ/SCAPの情報部門G2の部長を務めていたチャールズ・ウィロビー少将と石井は親しくなり、隊の幹部たちはアメリカの保護を受けるようになる。日本が提供した資料や研究員はドイツから提供された知識と同じように、アメリカにおける生物化学兵器開発の基盤になった。 1950年6月に朝鮮戦争が勃発、52年2月に朝鮮の外務大臣はアメリカ軍が細菌兵器を使用していると国連に抗議した。アメリカ側は事実無根だと主張したが、1970年代にウィリアム・コルビーCIA長官は議会証言の中で、1952年にアメリカ軍が生物化学兵器を使ったと認めている。 朝鮮戦争が始まると、アメリカ軍は輸血体制を増強しなければならなくなり、「日本ブラッドバンク」が設立されたが、北野政次が顧問に就任するなど、この会社は第731部隊と深い関係がある。後に社名は「ミドリ十字」へ変更され、「薬害エイズ」を引き起こすことになる。現在は田辺三菱製薬の一部だ。 第731部隊を含む日本の生物化学兵器人脈は「伝染病対策」の中枢を形成することになる。その拠点として1947年には国立予防衛生研究所(予研)が創設された。当初は厚生省の所管だったが、1949年には国立になる。1997年には国立感染症研究所(感染研)に改名された。 「COVID-19ワクチン」と呼ばれる遺伝子操作薬は免疫と深い関係がある。この「ワクチン」開発で中心的な役割を果たしてきたことが明らかになっているアメリカの国防総省は1969年6月の段階で人間の免疫システムが対応できない人工的な因子を5年から10年の間、つまり74年から79年の間に開発するとしていた。同省の国防研究技術局で副局長を務めていたドナルド・マッカーサーがアメリカ下院の歳出委員会で「著名な生物学者」の話をしているのだ。その予言通り、AIDS(後天性免疫不全症候群)が出現している。 1970年代は医薬品業界にとって厳しい時代だった。伝染病による死亡者が世界的に減少していたのだ。そのため、アメリカではNIH(国立衛生研究所)、その下部機関であるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)、CDC(疾病予防管理センター)の存在意義が問われていたという。そうした状況を一変させたのがAIDSだった。1984年11月から昨年12月までNIAID所長として伝染病対策を指揮した人物がアンソニー・ファウチだ。 AIDSはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)によって引き起こされるとされているが、このウイルスを発見し、2008年にノーベル生理学医学賞を受賞したのはフランスのリュック・モンタニエ。1983年に彼のチームが患者の血液からレトロウイルスを発見、LAVと名付けたのだが、その1年後、NIAIDのロバート・ギャロもAIDSの原因を特定したと発表、それをHTLV-IIIと名付けた。ギャロのウイルスはモンタニエから送られたLAVのサンプルから分離したものだったとされている。ギャロの上司がファウチにほかならない。 AIDSへの感染もPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査で判定していたのだが、この技術を開発したキャリー・マリスもPCRはこれをウイルスの検査に使ってはならないと語り、分析の技術であるPCRをAIDS感染の診断に使うべきでないというわけだ。AIDSで死亡したとされる人の大半は「治療薬」によって死んだとも言われている。 マリスは2019年8月に肺炎で急死、その年の12月にCOVID-19騒動が始まる。そこでファウチたち医療利権はPCRを持ち出してきた。この技術を診断に使うことができないとCDCが認めたのは2021年7月21日のことだ。 「COVID-19ワクチン」を推進しているビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団やクラウス・シュワブのWEF(世界経済フォーラム)は人口削減も主張、シュワブの顧問を務めるユバル・ノア・ハラリはAI(人工知能)によって不必要な人間が生み出されるとしている。事、特に専門化された仕事で人間はAIに勝てず、不必要な人間が街にあふれるとハラリは考える。 人間がアルゴリズムよりも優れている仕事につけなければ、失業するだけでなく雇用される可能性がなくなる。雇用されても変化についていくことは難しく、身につけた能力が役に立たなくなる可能性が高い。テクノロジーの進歩によって、人口の大部分を必要としないくなるというわけだ。「ベーシック・インカム」という餌を与えるだけで人びとの不満を抑えることはできないだろう。 また、シュワブは2016年1月、スイスのテレビ番組マイクロチップ化されたデジタルIDについて話している。最終的にはコンピュータ・システムと人間を連結、つまり人間をコンピュータの端末にするというのだが、不必要になった人間は処分されるのだろう。 かつてイギリスではエンクロージャーによって共有地などが私有化され、土地を追われた農民は浮浪者や賃金労働者になった。労働者の置かれた劣悪な状況はフリードリヒ・エンゲルスの報告『イギリスにおける労働者階級の状態』やチャールズ・ディケンズの小説『オリバー・ツイスト』などでもわかる。 ロンドンのイースト・エンドで労働者の集会に参加したセシル・ローズは「パンを!パンを!」という声を聞く。その状態を放置すれば内乱になると懸念、植民地を建設して移住させなければならないと考えたようだ。反乱を封じ込めるため、デジタルIDは有効かもしれないが、イギリスの支配層は移住先をつくるため、アメリカやパレスチナでは先住民を虐殺している。
2023.07.15
ジョー・バイデン米大統領は最大3000人の予備兵をヨーロッパへ派遣することを承認した。ウクライナでの戦闘でアメリカ/NATOが支援してきたクーデター体制軍が壊滅的な状態で、ロシア政府を脅すつもりなのだろう。 3000人という予備兵の数は多くないが、ロシア政府に対する挑発としては大きな意味を持つ。バイデン政権は非常に危険な領域へ足を踏み入れた。 F-16の供給をアメリカ/NATOが決めれば、ロシア政府は核戦争の準備だとみなすはず。アメリカ空軍はアラスカへ2機以上のB-52爆撃機を配置したとも伝えられている。
2023.07.14
昨年2月にロシア軍によるミサイル攻撃が始まった後、ウクライナの軍や親衛隊は壊滅的な打撃を受け、外国から傭兵を集めるしかない状態になっている。そこでフランスはポーランドでの1600人を含め、5200人近くのウクライナ兵を訓練、年内には7000人近くを訓練する予定だという。イギリスは新兵のための軍事訓練プログラムでこれまでに1万9000人以上の兵士を訓練、今夏には英国でウクライナ人パイロットの訓練が開始される予定だされている。 ウクライナで2014年2月にクーデターを成功させたネオ・ナチは04年からバルト3国にあるNATOの訓練施設でアメリカ/NATOから軍事訓練を受けていたと伝えられている。またポーランド外務省は2013年9月にクーデター派の86人を大学の交換学生を装って招待、ワルシャワ郊外にある警察の訓練センターで4週間にわたり、暴動の訓練を受けたともいう。アメリカの有力メディアによると、内戦勃発後の2015年からCIAはウクライナの特殊部隊をアメリカの南部にある秘密基地で訓練してきたという。 アメリカ/NATOはウクライナでクーデターを実行する部隊を訓練するだけでなく、ロシア軍と戦わせるために兵器など軍事物資を供与、情報を提供、将兵を訓練してきたが、ロシア軍に圧倒されている。すでにウクライナには航空戦力はないに等しい。 そこで、西側ではF-16の供与が議論されているのだが、この戦闘機は旧式。アメリカが誇る「空飛ぶダンプカー」、F-35との空中戦で勝ったそうだが、ロシアの新鋭機と対等に戦うことは難しいと見られている。そのF-16を欲しがる理由はただひとつ、核弾頭を搭載したミサイルを発射できることだ。F-16を欲しがる人びとは核戦争を目論んでいると言える。 それに対し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6月21日、ロシアの戦略ミサイル部隊の約半数に大陸間弾道ミサイル「ヤース」が配備され、極超音速滑空体「アバンガルド」が搭載されつつあると述べた。NATOが核戦争を仕掛けるなら応じるという姿勢だ。 その前にネオコンはロシアで内乱を引き起こそうとしてきたが、成功しなかった。ワーグナー・グループの反乱騒動にもそうした背景があったのかもしれない。 ワーグナー・グループの反乱騒動があったのはNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が終了した6月23日のこと。この演習をカモフラージュに使い、NATO軍はロシアへ攻め込むのではないかという噂もあった。NATO諸国では反乱が内戦になり、ウラジミル・プーチン政権が倒されると浮かれている人もいた。西側の有力メディアは例によって予定稿ができているかのような記事を載せ、放送していた。 アメリカと西側の情報機関が「クーデター」に関する情報を事前に入手しいていたとCNNやニューヨーク・タイムズ紙は伝えていた。元駐露大使のマイケル・マクフォール、あるいはネオコンのアン・アップルバウムのような人びとが興奮していたようだ。 しかし、西側の情報機関が第三者として気づいていたと言うなら、ロシアの情報機関も気づいていたはずで、反乱が成功する可能性は大きくない。マクフォールやアップルバウムのような人びとが興奮したということは、違う話をアメリカなどの情報機関から聞いていたのかもしれない。
2023.07.14
NATO(北大西洋条約機構)はリトアニアのビリニュスで7月11日から12日まで首脳会議を開催したが、団結とは程遠く、ウクライナが厄介者になっている現状が明らかになった。ロシアと核戦争したくない加盟国が少なくないのだ。そこでウォロディミル・ゼレンスキー大統領はNATO加盟国を激しく非難した。 ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は2022年8月31日に「フォーラム2000」で「ドイツの有権者がどのように考えようとも、私はウクライナの人びとを支援する」と発言、23年1月24日に「われわれはロシアと戦争している」とPACE(欧州評議会議会)で口にしているが、こうした好戦的な主張をできる状況ではなくなっている。 このベアボックは「緑の党」に所属している政治家。名前から受ける印象は平和的なのだが、同党のヨシュカ・フィッシャーが外務大臣を務めていた当時の外務省は「コソボにおいても、アルバニア民族への帰属に結びついた明白な政治的迫害が存在する確証はない。」と認めているのだが、フィッシャーはユーゴスラビアへの空爆を支持している。(ジャン・ブリクモン著、菊地昌実訳『人道的帝国主義』新評論、2011年) ジョー・バイデン米大統領は側近からロシアに楽勝できると吹き込まれたのか、大統領に就任した直後からロシアを挑発、「ルビコン」を渡った。その結果、無残なことになっている。 アメリカ/NATOは昨年春にドンバスを攻撃、住民を大量虐殺してロシアを要塞線の内側へ誘い込み、そのすきにクリミアを攻撃しようとしていた可能性があるが、ドンバス攻撃の直前にロシア軍がミサイル攻撃を開始、出鼻をくじかれた。しかもロシア軍部隊がドンバスへ入ってこない。しかもウクライナ軍の動きを封じるため、キエフへ部隊を向かわせている。そこでイスラエルやトルコを仲介とする停戦交渉が行われ、ほぼ合意したのだ。 それを壊したのはアメリカ政府とイギリス政府にほかならないが、その背後にはジョージ・ソロスを含むネオコン、つまりセシル・ローズ人脈がいるはずだ。 この人脈はシティ(金融資本)と関係が深く、20世紀初頭からドイツとロシア/ソ連を戦わせようとしてきた。ロシアの有力貴族だったユスポフ家に対する数十年にわたる工作があったように見える。 ロシアとの戦争に積極的だったユスポフ家にはイギリス人の家庭教師がいた。その家庭教師の子どもがサンクトペテルブルクにあったユスポフ家の宮殿で生まれている。スティーブン・アリーだ。その11年後にフェリックス・ユスポフが誕生、後にイギリスのオックスフォード大学へ留学し、ブリンドン・クラブへ入っている。留学先で親密な関係になったオズワルド・レイナーは流暢なロシア語を話した。アリーとレイナーは大学を卒業した後、イギリスの対外情報機関で金融資本と緊密な関係にあるMI6のエージェントになっている。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) ヨーロッパでは1914年7月28日にオーストリア-ハンガリー帝国がセルビアに宣戦布告して大戦が勃発、帝政ロシアではドイツとの戦争に積極的な産業資本家と消極的な大地主が対立した。 産業資本家側には有力貴族のフェリックス・ユスポフが、また大地主側には修道士のグレゴリー・ラスプーチンがついていた。ラスプーチンの背後には皇帝アレキサンドロビッチ・ニコライ2世と皇后アレクサンドラがいる。ドイツとロシアを戦わせようとしていたイギリスにとってラスプーチンは邪魔な存在だ。 戦争を望んでいなかった皇后は7月13日にラスプーチンへ電報を打って相談、ラスプーチンは戦争が国の崩壊を招くと警告しているが、その内容を盗み見た治安当局は議会などにリーク、ラスプーチンは腹部を女性に刺されて入院することになった。 入院中にロシアは総動員を命令、ドイツは動員を解除するよう要求。それをロシアが断ったため、ドイツは8月1日に宣戦布告している。ラスプーチンが退院したのは8月17日のことだ。 すでにドイツと戦争を始めていたロシアだが、ラスプーチンが復帰したことでいつ戦争から離脱するかわからない状況。それを懸念したイギリス外務省は1916年にサミュエル・ホーアー中佐を責任者とする情報機関のチームをペトログラードへ派遣。チームにはアリーとレイナーが含まれていた。(前掲書) ペトログラードにおけるイギリスのお抱え運転手だったウィリアム・コンプトンの日記によると、彼はレイナーをユスポフの宮殿へ1916年の10月後半から11月半ばにかけて6度運んだという。ユスポフは1916年12月19日にレイナーと会ったと書き残している。(前掲書) ラスプーチンは1916年12月30日に暗殺された。殺したのはユスポフだと言われているが、暗殺に使用された455ウェブリー弾はイギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだったという。 ユスポフは上流社会の堕落に憤り、犯行に至ったとされているが、世界の上流社会は堕落している。そのようなことで憤る人物が上流社会で生きることはできない。 ラスプーチンが暗殺された後、1917年3月に「二月革命」で帝政ロシアは崩壊、産業資本家を後ろ盾とする臨時革命政府が成立した。この政権は戦争を継続する。そこでドイツは即時停戦を主張していたボルシェビキに目をつけた。 しかし、ボルシェビキの指導者は国外に亡命しているか刑務所に入れられていた。そこでドイツはボルシェビキの幹部32名を「封印列車」でロシアへ運ぶ。ウラジミル・レーニンは1917年4月に帰国、7月にボルシェビキは武装デモを行うものの、鎮圧されてしまう。レーニンはフィンランドへの亡命を余儀なくされた。 この時、臨時革命政府軍の最高総司令官になったのがラーブル・コルニーロフ将軍。労働者や兵士を味方につける必要性を感じたのか、臨時政府は7月にエス・エルのアレキサンドル・ケレンスキーを首相に就任させた。 ところが、コルニーロフが8月にクーデターを企てる。この武装蜂起にケレンスキー政府は対応できず、ボルシェビキに頼ることになった。そして十月革命につながり、革命政権はドイツの思惑通りに即時停戦を宣言、無併合無賠償、民族自決、秘密外交の廃止も打ち出した。 レーニンの命令でボルシェビキ政権はドイツとの戦争を停止。アメリカが参戦、兵員を送り込んだほか、イギリスやフランスに物資を供給してたこともあり、ドイツは戦争に負けた。 しかし、そうした経緯があるため、大戦後、ドイツとソ連の関係は良好だった。両国の関係が悪化するのはドイツでナチスが実権を握ってからだ。ナチスはイギリスやアメリカの金融資本から資金的な支援を受けていたことがわかっている。 第2次世界大戦でドイツはソ連に負けた。アメリカやイギリスがヨーロッパで戦争に参加するのはスターリングラードでの戦闘でドイツ軍が敗北、1943年1月に降伏してからだ。ウィンストン・チャーチルが大戦を勝利に導いたという主張は戯言にすぎない。 チャーチルの側近で、NATOの初代事務総長になるヘイスティング・ライオネル・イスメイはドイツ軍が「バルバロッサ作戦」を始めて間もない1941年10月の段階で、モスクワは3週間以内に陥落すると推測していた。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015)その推測通りに進まないことを見てイギリスやアメリカは動き始めたのだ。 ナチスがソ連/ロシアを征服してくれることを米英の支配層は期待していたのだろう。ただ、アメリカの大統領だったフランクリン・ルーズベルトは反ファシズムで、植民地に反対だ。帝国主義者のウィンストン・チャーチルとは立場が違うため、両者の関係は悪かった。チャーチルはセシル・ローズの直系で、「最初のネオコン」とも呼ばれている。
2023.07.13
アメリカ/NATOが仕掛けたウクライナ軍による「反転攻勢」は無惨な結果に終わった。選挙を控えたジョー・バイデン大統領や側近たちにとって厳しい状況で、傭兵を世界各地からかき集めたとしても、供給できる兵器は少なくなっている。腰がひけている国々を引きずり出し、ロシア軍と戦わせるためにはショッキングな出来事を演出する必要があるだろう。 そうした中、トルコのレジェップ・エルドアン大統領は拘束していたアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)の幹部5名を釈放、その5名は7月8日にウクライナへ戻った。ウクライナでの戦闘が終わるまで釈放しないことでトルコ政府とロシア政府は合意していたのだが、これを破ったわけだ。 そして9日、エルドアン大統領はEU(欧州連合)に対し、スウェーデンがNATOへ加盟することを認めさせたいなら、トルコがEUへ加盟することを認めるように求めたという。EUへの加盟は主権の放棄に等しく、ギリシアのケースのように、経済破綻の原因にもなる。それほどエルドアンはヨーロッパに憧れを持っているのだろう。「恋は盲目」だ。 ロシアとトルコとの関係を引き裂きたいアメリカのジョー・バイデン政権としては好ましい展開。アメリカ側から何らかのアプローチがあったのかもしれない。 イギリスやアメリカを支配する私的権力は19世紀からロシアを征服しようとしてきた。そこでドイツとロシアを戦わせようと仕掛け、その一方でユーラシア大陸の周辺を海軍力で支配、内陸部を締め上げて中国やロシアを手に入れようとしてきたのだが、バイデン政権もその戦略に従い、動いている。 クーデターや内乱でロシアの体制を壊す計画も繰り返されてきたが、エフゲニー・プリゴジンが率いるワグナー・グループの「反乱」もそうした背景があると見る人もいる。 NATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が終了した6月23日、ロシアの連邦保安庁(FSB)は傭兵会社ワグナー・グループを率いるエフゲニー・プリゴジンの捜査を開始したというのだが、大事にはならなかった。兵士2万5000人が行動を起こすとプリゴジンは言っていたが、実際に動いたのはせいぜい8000名で、将校クラスは動かなかった。 ベラルーシでの報道によると、同国のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と6月24日に話し合ったプリゴジンはロシアにおけるワグナー・グループの行動を中止することに同意したという。ロシア政府はプリゴジンやワグナー・グループのメンバーを処罰しないという。 ウラジミル・プーチン露大統領は6月29日、ワグナー・グループの司令官35名をクレムリンに招き、3時間にわたって話し合ったと発表されている。 話し合いの中でワグナー・グループ側は自分たちが国家元首と最高司令官、つまりウラジミル・プーチン大統領の揺るぎない支持者であり、兵士であることを強調、祖国のために戦い続ける用意があると語ったとされている。この騒動は何だったのか? 前にも書いたが、ワグナー・グループの行動には謎が多く、真相は不明だ。ひとつの可能性はロシア国防省が契約更新を拒否したことにプリゴジンが怒ったというもの。第2はプリゴジンがアメリカ/NATOに内通していて、両者が連携して軍事作戦を予定していたが、梯子を外されてしまった可能性。そしで第3は「マスキロフカ」、つまり欺瞞作戦だったというもの。 第1のシナリオは可能性が小さいだろう。第2のシナリオは、例えばNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」を利用した軍事作戦があり、それと連動して蜂起する予定だったが、その作戦が取りやめになったというようなもの。バイデン大統領やその取り巻きの好戦派ならやりそうだが、「反乱」が伝えられた直後に彼らがはしゃいでいたことを考えると、この可能性は大きくない。ワグナー・グループの「反乱」に合わせ、アメリカ/NATOの秘密部隊が蜂起したという話も聞かない。 そして第3のシナリオはアメリカ/NATOを欺くための欺瞞作戦だったというもの。どこかの時点でプリゴジンにアメリカやイギリスの情報機関が接近、買収を試み、プリゴジンはロシアの情報機関に連絡する一方、買収に応じるように振る舞った可能性はある。 ちなみに、ワグナー・グループ創設の背後にはロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将がいると言われ、今年5月4日からミハイル・ミジンチェフ上級大将がワグナー・グループの副司令官を務めている。 プーチンと話し合った後、プリゴジンやワグナー・グループがどこにいるかは明確でない。ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は7月6日、プリゴジンはベラルーシでなくサンクトペテルブルクにいると語っている。そのルカシェンコ大統領も、ワーグナー・グループの部隊を使いたいようだ。
2023.07.12
日本の厚生労働省は5月8日から「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」、つまり遺伝子操作薬の6回目接種を始めた。半ば強制的に接種できる人びとに注射する一方、マスコミは接種キャンペーンを展開しているものの、すでに息切れしている。 接種が本格的に始まったのは2020年12月下旬。先行したのはイスラエルだが、そのイスラエルで2021年4月に十代の若者を含む人びとの間で心筋炎や心膜炎が増え、問題になった。 アメリカのCDC(疾病予防管理センター)のACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)は6月23日に「mRNAワクチン」と「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと認め、その2日後にはFDA(食品医薬品局)がmRNA技術を使ったファイザー製とモデルナ製の「COVID-19ワクチン」が若者や子どもに心筋炎や心膜炎を引き起こすリスクを高める可能性があると発表している。心筋炎や心膜炎の問題を否定できなくなったのである。 早い段階から帯状疱疹や⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、あるいはギラン・バレー症候群による末梢神経の障害が報告され、ADE(抗体依存性感染増強)なども起こっていると考えられた。 遺伝子操作薬は侵入した人間の細胞にスパイク・タンパク質を製造させるようになり、人間の免疫システムは病気の原因になっていると判断し、その細胞を攻撃し始める。自己免疫疾患だ。そこで免疫力を弱める力が働き、免疫不全の状態になる。つまりAIDS的な状態。病気に感染しやすく、癌になりやすくなる。 こうしたことが知られるようになったこともあり、2022年に各国は「COVID-19ワクチン」の接種を止めるが、そこから接種を推進しているのが日本だ。 安倍晋三が銃撃事件に巻き込まれる2カ月間の2022年5月に来日したジョー・バイデン米大統領は首脳会談後の共同記者会見でCDCの日本事務所を新設する考えを表明、それと連携することが想定できる機関を日本政府は創設する。 そして今年3月7日、NIIDとNCGMを統合して「国立健康危機管理研究機構」を作るための法案を閣議決定、5月31日には法案が参院本会議で可決、成立している。 岸田文雄内閣は昨年10月13日、「マイナンバーカード」と健康保険証を一体化させる計画の概要を発表した。それにともない、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止するという。 マイナンバーカードで遺伝子操作薬の接種歴、そしてその後の治療歴もわかるはずだ。遺伝子操作薬のロット番号も調べられるだろう。日本は世界に類がない「ワクチン」接種国であり、今回の騒動を仕掛けたとされるアメリカの国防総省は日本人のデータが欲しいことだろう。
2023.07.12
クラスター爆弾 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権はアメリカ/NATOから供給された戦車などをロシア軍が築いた防衛線へ突入させた。防衛線は二重、三重で、戦車の走行を妨害する障害物、監視施設、砲兵による支援などで構成され、航空兵力も強力だ。それに対してウクライナ軍は航空兵力による支援がなく、武器弾薬も不足している。そこで「玉砕戦法」を繰り返すことになり、必然的にダメージは大きい。アメリカ/NATOはウクライナ兵の犠牲を気にしていない。しかも防衛線は突破できない。 そこでアメリカのジョー・バイデン政権はウクライナへクラスター爆弾を供給することにしたのだが、イギリス、カナダ、スペイン、ドイツを含むNATO加盟国は反対、内部対立が表面化した。イギリスのリシ・スナク政権は劣化ウラン弾をすでにウクライナへ提供しているが、クラスター爆弾の提供には反対したようだ。 クラスター爆弾は昨年3月にドネツクで使われている。2014年2月のクーデターで成立した体制を拒否、抵抗を続けていた地域だ。ロシアのウラジミル・プーチン大統領は2022年2月22日にドネツクやルガンスクの独立を承認、24日からミサイルなどで攻撃を開始、航空基地や生物兵器研究開発施設などを破壊したと言われている。 その直前、2022年2月17日にウクライナ側からドンバスへの攻撃が激しくなり、18日、19日とエスカレートしているとOSCE(欧州安全保障協力機構)は報告していた。その段階でドンバス周辺にはウクライナ軍だけでなく、ネオ・ナチで編成された内務省の親衛隊、アメリカやイギリスの特殊部隊、あるいは外国人傭兵も集結していた。そうした部隊をロシア軍は壊滅させてしまった。停戦交渉 そこで、ゼレンスキー政権はロシア政府と停戦交渉を始める。まずイスラエルのナフタリ・ベネットが仲介役になった。 その交渉で両国は条件面でほぼ合意している。3月5日にベネットはモスクワでプーチンと数時間にわたって会談、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。 ところが、その3月5日にウクライナの治安機関SBU(事実上CIAの下部機関)のメンバーはキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。キリーエフを殺害することでアメリカ政府は停戦を許さないという姿勢を示したと言える。 ベネットによると、恐怖から掩蔽壕に隠れていたゼレンスキーはロシア政府がゼレンスキーを殺害しないと保証したことを確認した2時間後にゼレンスキーはオフィスで「私は恐れない」と宣言したという。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 停戦交渉の進展でロシア軍はウクライナ政府との約束通りにキエフ周辺から撤退を開始、3月30日にはブチャから撤退を完了した。31日にはブチャのアナトリー・フェドルク市長がフェイスブックで喜びを伝えているが、虐殺の話は出ていない。 ところが、ウクライナ政府は停戦合意を破棄する。破棄させたのはアメリカ政府やイギリス政府だ。合意を潰すため、西側の有力メディアは4月に入ると西側の有力メディアはロシア軍がブチャで住民を虐殺したと宣伝し始めるが、マクサー・テクノロジーズなる会社から提供された写真の分析などからキエフ政権の親衛隊が殺害した可能性が高いと言われている。 そうした中、4月9日にボリス・ジョンソン英首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令。4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。そこからウクライナでの戦闘でロシア軍と戦う相手はNATOへと移っていく。 回収された文書によると、アメリカ/NATOはドンバスへ軍事侵攻を昨年3月から始める計画を立てていた。2014年2月にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した直後からドンバスで内戦が始まるが、クーデター政権は劣勢。そこでそこで結ばれたのがミンスク合意だ。時間稼ぎ ドイツやフランスが仲介して成立したのだが、アンゲラ・メルケル元独首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認め、その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。ゼレンスキー政権だけでなく、ドイツもフランスも端からミンスク合意を守るつもりはなかった。勿論、アメリカもだ。「ミンスク合意を誠実に履行していれば」という前提の話は無意味である。 その後、8年をかけてアメリカ/NATOはクーデター政権に兵器を供給、兵士を訓練、ドンバスの周辺に要塞線を築いた。アゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリや岩塩の採掘場があるソレダルの要塞は特に有名だ。ここにはソ連時代、核戦争に備えて地下施設が建設されていたという。 ロシア軍の攻撃は始まった直後にウクライナ軍の敗北は決定的だと見られていたが、停戦交渉をアメリカ/NATOは許さない。そうした中、3月14日にドネツクの上空でクラスター弾を搭載したウクライナ軍のミサイルが撃墜され、市民20人が死亡、36人が負傷しているのだが、西側は沈黙していた。ウクライナの問題に限らないが、国連も役に立たない。米国と国連 バラク・オバマ政権は2013年11月にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でカーニバル的な集会が始め、参加者を集めた上でネオ・ナチを動かした。 この混乱をEUは話し合いで解決しようとしていたが、暴力を使おうとしていたビクトリア・ヌランド国務次官補は怒る。ウクライナ駐在のアメリカ大使だったジェオフリー・パイアットとクーデター後の閣僚人事について電話で相談している際、彼女は「EUなんかくそくらえ」と口にした。 この会話の中でヌランドは「今朝、ジェフ・フェルトマンと話した際、新しい国連のヤツの名前を聞いたわ。ロバート・セリーよ。」と口にしている。 セリーはオランダの外交官で、2007年から15年まで国連の中東和平プロセス特別調整官などを務めているが、問題はフェルトマン。2012年7月から18年4月まで国連の事務次長を務めた人物だ。 フェルトマンは1991年から93年にかけてローレンス・イーグルバーガー国務副長官の下で東/中央ヨーロッパを担当、ユーゴスラビア解体に関与したと言われている。NATO軍は1999年3月から6月にかけてユーゴスラビアを空爆、破壊した。2004年から08年にかけてフェルトマンは駐レバノン大使を務め、09年から国務省で近東担当次官補を担当している。 2005年2月にレバノンでラフィク・ハリリ元首相が殺害されている。西側の有力メディアは暗殺の背後にシリアがいると宣伝、この年の10月に国連国際独立委員会のデトレフ・メーリス調査官は「シリアやレバノンの情報機関が殺害計画を知らなかったとは想像できない」と主張し、「シリア犯行説」に基づく報告書を安保理に提出している。イスラエルやアメリカの情報機関が殺害計画を知らなかったとは想像できないと彼は考えなかったようだ。 アーマド・アブアダスなる人物が「自爆攻撃を実行する」と宣言する様子を撮影したビデオをアルジャジーラは放送したが、これをメーリスは無視。アブアダスが途中で自爆攻撃を拒否したため、シリア当局に殺されたとズヒル・イブン・モハメド・サイド・サディクなる人物は主張している。 爆破現場を撮影した写真が存在するのだが、そこには深いクレーターがあり、自動車による自爆テロでなかったことを示している。ハリリの死体を見ると、金製の腕時計は溶けているのだが、シャツの襟は残っている。体もあまり炭化していない。体がバラバラになっているわけでもない。金の時計を溶かすほど高温になったが、その際に無酸素状態を作り出したと見られている。 ハリリが乗っていた装甲車両に同乗、負傷してフランスの軍事病院で治療を受けたバッセル・フレイハンから濃縮ウランが検出されたと伝えられている。 イスラエルがレバノンへ軍事侵攻した直後、ウルスター大学のクリストファー・バスビー教授はレバノンで濃縮ウランを見つけたという。核物質が利用された武器、例えば数十センチ程度の長さのミサイルが暗殺に使われた可能性があるのだ。当時、そうした兵器を保有していたのはドイツだけだったと考えられている。 事件の調査を任されたメーリスはドイツ人で、ドイツだけでなくアメリカの情報機関との緊密な関係にあると言われている。検察官としてアメリカやイスラエルの関与をもみ消すこともしていたという。2000年代の前半にはWINEP(近東政策ワシントン研究所)の研究員になっているが、この研究所はイスラエルロビーのAIPACと関係が深いことで知られている。 そのメーリスの調査が杜撰だということが明確になり、彼は2006年1月に辞任した。彼の重要証人だったフッサム・タヘル・フッサムはシリア関与に関する証言を取り消し、レバノン当局の人間に誘拐されて拷問を受け、そのうえでシリア関与の証言をすれば130万ドルを提供すると持ちかけられたと話している。それ以外にも証言の信頼度が低いことが明らかになり、責任を取らざるをえなくなったのだろう。 そして設置されたのがレバノン特別法廷(STL)。2007年のことだ。STLは国連の機関ではなく、年間85億円程度だという運営資金はサウジアラビア、アメリカ、フランス、イギリス、レバノンなどが出している。 この法廷ではメーリスの主張に基づき、ヒズボラに所属するという4名が起訴された。それに対し、イスラエルの無人機(ドローン)がハリリの動きを監視していたことを示すとされる映像をヒズボラは2010年に公開している。 「紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表」のプラミラ・パッテンはマリウポリでロシア兵が女性に対して性的な犯罪行為を「軍事戦略」として行なっていたと発言していた。パッテンはリビアを侵略するときに使われたバイアグラに関する作り話を使い回していたのだが、リビアの話は嘘だった。 マリウポリはネオ・ナチで編成された親衛隊のアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)が拠点にしていた場所で、昨年4月中旬にロシア軍がマリウポリを解放した際、住民は異口同音に逆のことを話していた。親衛隊による残虐行為を批判していた。 パッテンは自身の発言についてAFPの記者に証拠が示されていないと指摘され、自分はニューヨークのオフィスにいて調査はしていないと開き直っている。国連とはその程度の代物にすぎないということだ。国連や西側の有力メディアが言うところの「信頼できる報告」とはアメリカやその従属国、従属機関の「報告」にすぎない。これはウクライナでの戦闘に限らず、中東問題でも中国問題でもCOVID-19でも同じだ。
2023.07.11
NATOは東京連絡事務所を2024年中に設置するとされているが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はその計画を承認しなかったという。NATOとは北大西洋条約機構を意味するのであり、「北大西洋地域の安全保障」を維持することが目的だという理由からだ。 すでにNATO軍はユーゴスラビアを攻撃、アフガニスタンへ部隊が派遣されている。東アジアまで手を広げるべきでないという主張なのだろうが、イェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言している。 NATOの初代事務総長でウィンストン・チャーチルの側近だったヘイスティング・ライオネル・イスメイによると、NATOを創設した目的はソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけることのあった。実際のところ、第2次世界大戦後のヨーロッパをアメリカとイギリスが支配する仕組みだ。 現在、世界規模でアメリカ離れが進行している。中東やアフリカだけでなく、東アジアやラテン・アメリカでも見られる現象だ。東アジアでは日本、韓国、台湾、フィリピンをアメリカは確保しようとしているものの、日本以外は国内に反対勢力が存在している。 そこで創設されたのがAUKUS、つまりオーストラリア(A)、イギリス(UK)、アメリカ(US)の軍事同盟だ。2021年9月にオーストラリアがイギリスやアメリカとAUKUSを創設したと発表している。それにともない、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っている。 NATOはアメリカとイギリスがヨーロッパを支配するために創設されたが、東アジア版はユーラシア大陸の東側を支配する仕組みとして想定されているはずだ。 しかし、この支配システムはウクライナで破綻した。ロシアを過小評価した結果だ。 例えば、外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文では、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日は近いとされている。 実は、この分析が間違っていることは2008年8月に判明している。イスラエルやアメリカを後ろ盾とするジョージア軍が北京で夏季オリンピックが開かれていた期間を狙い、南オセチアを奇襲攻撃したのだが、完膚なきまで叩きのめされた。 イスラエルは2001年からジョージアに武器/兵器を含む軍事物資を提供、将兵を訓練しはじめている。イスラエルから供給された装備には無人飛行機、暗視装置、防空システム、砲弾、ロケット、電子システムなども含まれていた。 当時のジョージア政府にはヘブライ語を流暢に話す閣僚がふたりいたことも知られている。ひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当しているテムル・ヤコバシビリだ。 そのほか、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、同年7月にはコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問している。南オセチアへの奇襲攻撃はその翌月だ。アメリカ政府の承認を受けての奇襲攻撃だったのだろう。 アメリカはアル・カイダ系武装集団を使い、2011年春にリビアやシリアへ軍事侵攻、13年11月から14年2月にかけてウクライナではクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。このクーデターでアメリカ政府はネオ・ナチを使っている。 ヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部の住民はクーデターを拒否し、南部のクリミアはロシアの保護下に入り、東部のドンバスでは内戦が始まった。オデッサではクーデターに反対していた住民をネオ・ナチの集団が虐殺している。 内戦ではドンバス軍が優勢で、アメリカ/NATOはキエフ体制の軍事力を強化する時間が必要だった。そこで結ばれたのがミンスク合意。ドイツやフランスが仲介したのだが、アンゲラ・メルケル元独首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認め、その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。 その後、8年をかけてアメリカ/NATOはクーデター政権に兵器を供給、兵士を訓練、ドンバスの周辺に要塞線を築いた。アゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリや岩塩の採掘場があるソレダルの要塞は特に有名だ。ここにはソ連時代、核戦争に備えて地下施設が建設されていたという。 アメリカ/NATOの支援を受けたウクライナ軍は昨年2月、ドンバスに対する軍事侵攻に備えて部隊をドンバス周辺に集結させていた。その部隊が動く直前にロシア軍は集結していたウクライナ軍や軍事施設、そして生物兵器の研究開発施設を攻撃、破壊した。 その段階でウクライナ軍の敗北は決定的だったのだが、すでにルビコンを渡っていたジョー・バイデン政権はウクライナで勝たなければならない。そこでウクライナ政府にロシア政府と停戦交渉をするなと命令した。この辺の経緯は本ブログでも繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。 そして先月上旬にウクライナ軍は「反転攻勢」を試みる。言うまでもなくアメリカやイギリスの命令だ。ロシア軍はウクライナ軍の攻撃に備えて二重、三重の防衛線を構築していた。地雷原だけでなく、戦車の走行を妨害する障害物、監視施設、砲兵による支援などで構成され、航空兵力も準備されているのだが、これをウクライナ軍が突破するのは困難だと見られていた。実際、その予想通りになっている。 ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相が言うように、ウクライナの軍事的努力は絶望的であり、これ以上の援助を送ることは死者を増やすだけである。バイデン政権に残された手段のひとつはアメリカが得意とする偽旗作戦を実行し、NATO軍を前面にだしてロシア軍と戦わせる、つまり第3次世界大戦を始めることだが、それに同調するNATO加盟国が多いとは思えない。 ヨーロッパにおいてNATOは疫病神的な存在だ。その疫病神の連絡事務所を自国に設置させようという日本の政府が正気だとは思えない。
2023.07.10
ウクライナ軍は6月4日に大規模な攻撃を始めた。「反転攻勢」と西側では表現されているが、悲惨な状態にあることが伝えられている。例えば、フォーブス誌によると、6月8日にウクライナ軍の第47突撃旅団と第33機械化旅団は南部の地雷原を横断しようと試みて壊滅的なダメージを受けた。ロシア軍は地雷原を構築、地上部隊や航空兵力を配備して待ち受けていたのだ。 昨年春の時点でウクライナ軍は自力で戦うことができない状態になっていたが、アメリカやイギリスの命令で戦わされている。アメリカ/NATOは「玉砕戦法」をウクライナに強いる一方、「HIMARS(高機動ロケット砲システム)」や長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドー」、あるいはアメリカのM1エイブラムス、イギリスのチャレンジャー2、ドイツのレオパルト2を供給してきた。 レオパルド2R地雷除去車が先導する形で戦車部隊は地雷原を突破しようと試みたが、1、2時間のうちに、M2ブラッドレー歩兵戦闘車のほぼ5分の1、レオパルド2A6戦車の5分の1、レオパルト2R装甲工兵車の半分を失った。 すでにイギリス政府はウクライナへ劣化ウラン弾を「チャレンジャー2」戦車とセットで引き渡したが、ここにきてアメリカ政府は劣化ウラン弾やクラスター爆弾をウォロディミル・ゼレンスキー政権へ供給する可能性があると伝えられている。ブラッドレーやM1エイブラムスも劣化ウラン弾を発射できる。155ミリ榴弾砲で発射されるクラスター弾も供給される可能性があるようだが、劣化ウラン弾と同様、問題になっている兵器だ。 予想されていた通り、「反転攻勢」は無惨なことになった。メディアを使い、アメリカ/NATOが支援しているウクライナ軍は勝っているというイメージを人びとに植え付けようとしているが、事実はイメージを吹き飛ばすことになる。 ウクライナでの敗北が許されないジョー・バイデン政権が「汚い爆弾(放射能爆弾)」を使うのではないか、あるいはザポリージャ原発を破壊するのではないかと懸念されているのはそのためだ。似た手口をバイデンが副大統領だったオバマ政権はシリアで使おうとしている。
2023.07.09
1966年6月30日に静岡県清水市で「こがね味噌」専務の家族が殺されるという事件があった。被害者は専務、その妻、次女、長男。遺体には刃物で刺された傷が多数あったという。事件現場は放火されている。 その容疑者として逮捕された袴田巌は起訴され、死刑が言い渡されている。その裁判をやり直すことが決まったのだが、その公判で検察は有罪立証をするという。それなりの時間が必要になるが、87歳の袴田にとって時間は重要なファクターだ。検察は時間を稼ぎたいのかもしれない。 事件の現場見取図を見るだけでも単独犯行の可能性は小さいことがわかる。両隣は民家で、ひさしが密着しているため、一見長屋風だ。妻と長男の死体は玄関に近い八畳間、次女はその隣にある仏壇の間とピアノの間の中間、専務は土間の裏木戸近く。刺し傷の状態から考え、それぞれの人を殺すためにそれなりの時間をかけている。ひとりの犯人が周囲の家に気づかれず4名を殺すことは困難だろう。 当初、マスコミは当局の発表を垂れ流していたが、その後、少なからぬ人が詳しく調査、冤罪である可能性はきわめて高いということは決定的だ。それでも検察や裁判所は死刑判決に執着していた。警察も同じだろう。 静岡県で冤罪事件が続いていた。1948年11月の「幸浦事件(死刑判決後、無罪)」、50年1月の「二俣事件(死刑判決後、無罪)」、50年5月の「小島事件(無期懲役判決後、無罪)」、54年3月の「島田事件(死刑判決後、無罪)」、そして「こがね味噌事件」だ。 いずれの容疑者も拷問によって自白させられ、証拠や証言の隠蔽や改竄も指摘されているのだが、前の4事件には共通の警察官が関係している。国警の警部補だった紅林麻雄である。紅林はさまざまな拷問の手法を考案、部下に実行させていたと言われている。「名刑事」と言われていた警官だが、後に「拷問王」と呼ばれるようになる。 こうした手法を同僚や上司は知っていたはずであり、実際、二俣事件では捜査員の山崎兵八巡査が拷問の事実を告発、法廷で証言している。それに対し、警察は山崎巡査を偽証罪で逮捕した。「妄想性痴呆症」だとして起訴はされなかったが、退職させられている。内部告発は許さないという警察組織の意志を示したのだろう。「こがね味噌事件」の再審決定でも、警察による組織的な証拠捏造の疑いが示唆されている。
2023.07.08
アメリカ政府は劣化ウラン弾やクラスター爆弾をウォロディミル・ゼレンスキー政権へ供給する可能性があると伝えられている。155ミリ榴弾砲で発射されるクラスター弾が含まれるという。いずれも問題になっている兵器だ。 すでにイギリス政府はウクライナに対し、劣化ウラン弾を「チャレンジャー2」戦車とセットで引き渡しているが、アメリカが引き渡した「ブラッドリー」装甲戦闘車両や「M1エイブラムス」戦車も劣化ウラン弾を発射できる。 劣化ウラン弾は2003年3月にアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃した際に使用し、問題になった。ファルージャでアメリカ主導軍はイラク人を大量殺戮、劣化ウラン弾も使われたのだ。 その後、ファルージャやバスラでは新生児に奇形や脳の障害などが多発しているという報告がある。環境汚染毒物学紀要という専門誌に掲載された論文によると、ファルージャで2007年から10年にかけて生まれた新生児の場合、半数以上に先天性欠損があったという。1990年代以前には2%以下、2004年に占領軍から攻撃される前は約10%だとされている。 バスラの産院における先天性欠損の割合は、1994年から95年にかけて1000人のうち1.37人だったが、2003年には23人、そして2009年には48人に増えている。また、ファルージャやバスラの子どもたちの頭髪から鉛が通常の5倍、水銀が通常の6倍と異常に高いともいう。そうした原因は劣化ウラン弾だと一般的には言われている。劣化ウラン弾が環境を汚染し、放射能障害を引き起こすことは間違いない。 劣化ウラン弾には直接的な被害の問題だけでなく、カモフラージュに使われる疑いもある。例えば、2011年10月にファルージャを調査したウルスター大学のクリストファー・バスビー教授によると、濃縮ウラニウムを人の髪の毛や土の中から検出したという。 2006年7月から9月にかけてイスラエル軍はレバノンを軍事侵攻、ヒズボラに敗北しているが、その直後にバスビー教授はレバノンへ入って調査、残されたクレーターの中でも濃縮ウラニウムを見つけたという。レバノンやガザを走っていた自動車のフィルターからもそうした物質が発見されたという。つまり、劣化ウラン弾が濃縮ウラニウムを使う兵器のカモフラージュに使われた可能性があるのだ。 ロシアのメディア、スプートニクは昨年10月23日、「複数の国の信頼できる匿名の情報源」から得た情報として、ゼレンスキー政権が「汚い爆弾(放射能爆弾)」を爆発させ、欧米が支配している有力メディアを使ってロシアに責任をなすりつけて反ロシア宣伝を世界規模で展開しようとしていると報じた。その「汚い爆弾」は西側の管理下、ドニプロペトロフシクにある東部採掘加工プラントやキエフ核研究所で製造されるともしていた。 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は「汚い爆弾」に関する情報を中国やインドへ伝え、10月23日には電話でアメリカ、イギリス、フランス、トルコの国防当局へ警告したという。それに対し、イギリス、アメリカ、フランスは共同で声明を発表、ウクライナが汚い爆弾を使う可能性は高くないと主張している。 アメリカのM1エイブラムス、イギリスのチャレンジャー2、ドイツのレオパルト2、3種類の戦車がウクライナの戦場に投入されたが、航空兵力の支援なしに戦場へ出れば壊滅的な打撃を受けると言われていた。実際、そうした展開になっている。 航空兵力の支援だけでなく、ロシアが投入したT-14戦車は弾道弾の射程が7キロメートル、ATGM(対戦車誘導ミサイル)を使用する場合は12キロメートル。米英独の戦車は攻撃できる距離に到達する前に破壊されてしまうと見られていた。 そのほか、HIMARS(高機動ロケット砲システム)で発射されるGPS誘導砲弾や長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドー」などはロシア軍のECM(電子対抗手段)によって妨害され、アメリカ/NATO軍の思惑通りにはなっていない。 来年の大統領選挙を控え、ジョー・バイデン政権は「ウクライナでロシア軍に勝っている」というイメージを作ろうとしている。有力メディアは必死に宣伝しているが、実態は無惨。「ギャンブル・プレイ」を仕掛けてくるかもしれない。
2023.07.08
アメリカでは7月4日を「独立記念日」と定めている。「アメリカ・インディアン」と呼ばれる先住民を虐殺、土地を奪い、奴隷を使うことを肯定する人びとが「独立」を宣言した日だという。奴隷はアフリカのみから連れてこられたわけではない。ヨーロッパやアジアからも連れてこられている。SCO その7月4日にSCO(上海協力機構)の首脳会議が開かれ、イランが正式に加盟した。ロシア、中国、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンの5カ国でスタート、その後ウズベキスタン、インド、パキスタン、そしてイランが9番目の加盟国になったわけだ。さらにモンゴル、アフガニスタン、ベラルーシがオブザーバーになっている。ここにきて注目されているのは中東諸国が興味を示していること。エジプト、カタール、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦だ。経済的なつながりは安定をもたらす。 第2次世界大戦後、世界の経済はアメリカが発行するドルを基軸通貨として動いてきた。当初、金1オンス35ドルとされたが、1971年8月にリチャード・ニクソン政権がドルと金の交換を停止すると発表、変動相場制に移行したが、ドルが中心にあることに変化はなかった。このシステムはアメリカにとって極めて有利で、アメリカによる世界支配の柱とも言えるが、その支配体制が揺らいでいる。 支配体制の揺らぎを抑えようとアメリカの支配層はドルを武器として使い始めた。通貨戦争を仕掛け、預金口座の封鎖も行っている。ドルは信用できなくなった。そうした中、新たな金融システムがロシアと中国を軸に生まれつつある。そのシステムはSCOやBRICSと深く結びついているのだ。 アメリカにとってドルは他国を脅し、破壊できる有効な武器であることは確かだが、その武器を公然と使い始めた結果、ドルは警戒され、拒絶され始めた。支配体制の崩壊を早めているとも言える。モスクワ攻撃 同じ7月4日にモスクワの空港が5機のドローン(無人機)に攻撃された。4機は防空軍によって撃墜され、1機はECM(電子対抗手段)で無力化されたようだ。 ロシア側の認識は、アメリカ/NATOの助けなしにこうした攻撃は不可能だというもの。キエフ政権にドローンを提供、その操縦技術を訓練し、民間衛星や軍事衛星の助けを借りて得られた地表の画像などの情報を提供しなければ攻撃は不可能だとしている。ウォロディミル・ゼレンスキー政権は事件への関与を否定したようだが、いつもの戯言だ。 ロシアの連邦保安庁(FSB)はNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が終了した6月23日、武装反乱を呼びかけた容疑によるエフゲニー・プリゴジンの捜査開始を発表した。プリゴジンは傭兵会社のワーグナー・グループの経営者だった。 ワーグナー・グループがバフムート(アルチョモフスク)で勝利した直後の5月20日、プリゴジンは「解放」を宣言し、25日から部隊を撤退させると発表した。その際、セルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。 スロビキンは昨年10月からドンバス、ヘルソン、ザポリージャの戦闘を指揮している軍人。ミジンチェフはマリウポリを解放した作戦の指揮官だった。今年5月4日からミジンチェフはワグナー・グループの「副司令官」を務めているが、料理人のプリゴジンではなくミジンチェフが本当の司令官だと考える人もいた。 プリゴジンは25,000人の兵士が行動を共にすると主張したが、実際は8000名程度で、将校は動かなかったという。ロストフ・オン・ドンへ入り、ロストフ・オン・ドンからモスクワへ向かうように彼は命令したと言われているが、ロシアの軍や治安機関に目立った動きは見られなかった。アメリカなど西側の「専門家」はプーチン政権の崩壊を妄想、有力メディアも内戦と殺戮を期待していたようだが、そうしたことは起こらなかった。 24日の午後にはロシアにおけるワグナー・グループの行動を中止することでベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領とプリゴジンが合意し、ロシア政府はワーグナー・グループの幹部に対する訴追を取り下げると発表した。プリゴジンはベラルーシに「追放」される。 プリゴジンはどこかの時点で西側の情報機関に買収されたと考える人もいる。1980年代にアメリカのCIA人脈はソ連のKGB幹部を買収したと言われているので、ありえないことではないが、買収されたふりをしたという見方もできる。軍事力が強くないベラルーシに戦闘部隊を送り込む演出と推測する人もいる。アメリカ/NATOがロシア国内で内乱が起こると考えていたなら、そのタイミングでドローンによるモスクワ攻撃を計画していたかもしれない。ECM ロシアのECMが注目されたのは2013年9月。バラク・オバマ政権はシリアへの直接的な軍事侵略を正当化させるために「化学兵器話」を宣伝していたが、その話が嘘だということが明らかになる。オバマ政権の主張を否定する証拠や証言が次々と出てきたのだ。 そうした中、9月3日に地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射された。リビアに対して行ったような軍事侵攻をシリアに対しても始めたと言われたのだが、そのミサイルは途中で海中へ落下してしまった。 後にイスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だったと主張したが、実際に攻撃を始めたと見られている。周辺国に対する事前の通告はなく、発射実験だとする主張に説得力がないからだ。その際、ロシア軍がECMを使ったと言われたのだ。数機のミサイルでは撃墜されてしまうことをアメリカ政府は悟っただろう。 オバマ政権は2012年からアル・カイダ系武装集団に替わる新たな武装集団を作る工作を進めていた。それに対し、マイケル・フリンが局長を務めていたアメリカのDIA(国防情報局)は2012年8月、オバマ政権が支援している武装勢力の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告した。その警告が2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実になる。フリンは2014年8月に退役を強いられた。 それでもシリア軍は潰れないため、オバマ政権はアメリカ/NATO軍を投入しようと考えたようで、2015年2月に国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させる。 ヘーゲル国防長官やデンプシー統合参謀本部議長は上院軍事委員会で直接的な軍事介入に慎重な姿勢を示し、好戦派のヒラリー・クリントン国務長官らと対立していた。 デンプシーは2015年9月25日に退任、9月28日にウラジミル・プーチン露大統領は国連の安全保障理事会でアメリカを強く批判する。民主主義や進歩の勝利でなく、暴力、貧困、そして社会的惨事を招き、生きる権利を含む人権を少しも気にかけない状況を作り上げた人びとへのメッセージを口にしたのだ。「あなたは自分たちがしでかしたこと理解しているのか」と問いかけ、「うぬぼれや自分は特別で何をしても許されるという信念に基づく政策」を批判したのだ。勿論、アメリカに向けての発言だ。 そして9月30日、ロシア軍はシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させた。軍事作戦を始めた直後、ロシア軍はカスピ海に浮かべた艦船から26基の巡航ミサイルを発射した。全てのミサイルが約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で命中したとされている。ロシアが保有する兵器の優秀さにアメリカ軍は驚いたと言われている。 ドナルド・トランプは大統領に就任して間もない2017年4月、地中海に配備されていたアメリカ海軍の2隻の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したものの、6割が無力化されてしまう。ロシア軍の防空システムはアメリカ軍より優秀だということだ。 トランプ大統領は翌年、リベンジを図る。2018年4月にイギリスやフランスを巻き込み、100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射したのだ。ところが今度は7割が無力化されてしまう。前年には配備されていなかった短距離用の防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったと言われている。 ロシア軍はウクライナでも兵器の優秀さや生産力の高さを示し、しかもPGM(精密誘導爆弾)や長距離高精度兵器を使い果たす可能性は小さい。そうした兆候は全く見られない。ウクライナのアレクセイ・レズニコフ国防相はHIMARS多連装ロケットランチャー用の弾薬を含むGPS誘導砲弾を妨害する方法をロシア軍は知っているとしている。つまり、西側の「報道」は間違い、または嘘だった。 EUや日本などアメリカに従属している国々のエリートはロシアの戦闘力や生産力を低いと教えられ、すぐにマイクロチップは枯渇し、兵器庫が空になると信じ込まされていたのかもしれないが、そうだとすると、動揺しているだろう。「経済封鎖」は機能していない。自分たちの判断ミスを誤魔化すため、中国や朝鮮を持ち出しているようだが、説得力はない。 1991年12月にソ連が消滅した後、世界制覇戦争を始めたネオコンは追い詰められた。ジョー・バイデン親子がホワイトハウスでコカインを使っていたことが発覚したそうだが、幻覚の中でロシアと核戦争を始めないとは言い切れない。
2023.07.07
IAEA(国際原子力機関)は放射性物質に汚染された水を太平洋へ放出する計画を承認した。「COVID-19(コロナウイルス感染症-2019)ワクチン」が「安全」であるのと同様、汚染水の「住民と環境への影響はごくわずか」だということらしい。 2011年3月11日に東北地方の太平洋沖でマグニチュード9.0という大規模な地震が発生し、東京電力の福島第一原発で炉心が溶融する大事故が起こった。「過渡期現象記録装置データ」を分析した結果、地震発生から約1分30秒後、つまり津波が来る前に冷却水の循環が急激に減少し、メルトダウンが始まる環境になっているようだ。 この時の地震でメルトダウンしたのは福島第一原発だけだったが、地震で福島第二原発、女川原発、東海第二原発も冷却ができなくなる寸前だったと言われている。つまり、これらの原発もメルトダウンする可能性があったのだ。 3月12日には1号機で爆発があり、14日には3号機も爆発、15日には2号機で「異音」が聞かれ、4号機の建屋で大きな爆発音があった。4号機は稼働していなかったとされているが、使用済み核燃料プールの中には1500本を超す燃料棒が入っていて、この原発全体では1万本を超していたとされている。このプールが倒壊した場合、放出される放射性物質で近くの福島第2原発や女川原発へも影響が及ぶことは避けられなかった。 IAEAは原子力の利用を推進するための組織であり、原発事故を厳しく調査することは期待できない。そこでWHO(世界保健機関)に期待する人もいたが、WHOとIAEAは1959年5月に締結された合意文書の第1条第3項の規定により、一方の機関が重大な関心を持っている、あるいは持つであろうテーマに関するプログラムや活動の開始を考えている場合、その機関はもうひとつの機関に対し、問題を調整するために相談しなければならない。WHOはIAEAの検閲下にあるということだが、そのWHO自体が欧米の強力な私的権力に支配されていることがCOVID-19騒動で明確になっている。その騒動を利用し、深刻な副作用を引き起こし、すでに少なからぬ人を死に至らしめた「ワクチン」と称する遺伝子操作薬を世界中で接種させようとしてきたのは私的権力、つまり米英の金融資本だ。 接種が始まって間もなく遺伝子操作薬の危険性が認識され、大多数の国では接種にブレーキがかかった。2022年になっても政府やメディアが危険性を無視して接種させようとしてきた国は日本くらいだろう。その日本でも昨年末から危険だと理解する人が増えたようだが、そうした流れに逆らい、政府やマスコミは接種させようとしている。 福島第一原発が事故を起こした直後、最初に逃げ出したのは電力会社とメーカーの社員、次がマスコミの社員だったという。その間、政府とマスコミは安全だと宣伝し続けていた。高濃度の放射能汚染、そして深刻な障害が起こりつつあることを隠している。そして原発再稼働と汚染水の放出。正気とは思えない。
2023.07.06
ジョー・バイデン米大統領は7月3日、エリオット・エイブラムスをACPD(公共外交諮問委員会)の委員に指名する意向を表明した。エイブラムスは現在、CFR(外交問題評議会)の中東研究シニアフェローを務めている。 日本では「パブリック・ディプロマシー」と表記することもある「公共外交」は、「広報や文化交流を通じて,民間とも連携しながら,外国の国民や世論に直接働きかける外交活動」だと日本の外務省は説明している。内政干渉の一形態であり、エイブラムスの過去を調べると「パブリック・ディプロマシー」の本質は理解しやすい。 エイブラムスは大学を出た後、ヘンリー・ジャクソン上院議員の事務所でスタッフとして働いている。エイブラムスだけでなく、この事務所にはリチャード・パール、ポール・ウォルフォウィッツ、ダグラス・フェイス、エイブラム・シュルスキーなど後にネオコンの中枢メンバーになる人びとが所属していた。 ジャクソン議員は民主党に所属していたが、1972年の大統領選挙で同党のジョージ・マクガバン候補を落選させる運動で中心的な役割を果たしている。マクガバンは戦争に反対していた人物で、彼が民主党の大統領候補に選ばれたことをジャクソン議員だけでなく同党の幹部は容認できなかった。そのため、ジャクソンらは1972年にCDM(民主党多数派連合)を組織している。 その結果、選挙では共和党のリチャード・ニクソンが勝利するが、新大統領はデタント(緊張緩和)を打ち出す。ニクソンはアレン・ダレスの影響下にあったと言われ、「タカ派」と見られていたが、ベトナム戦争での敗北もあり、軍事力一辺倒ではダメだと考えたようだ。 ニクソンは中国に接近、中国とソ連の分断を図るのだが、支配層の中には、この政策に反発する人たちも少なくなかった。その中にはネオコンの後ろ盾も含まれている。 当初、ニクソン政権の副大統領はスピロ・アグニューだったが、スキャンダルで失脚、ジェラルド・フォードが後釜に座る。その次にニクソンがウォーターゲート事件で失脚、フォードが選挙を経ず大統領に就任した。このフォード政権でデタント派が粛清されるが、特に重要だった人事は国防長官とCIA長官の交代だと言われている。国防長官はジェームズ・シュレジンジャーからドナルド・ラムズフェルドへ、CIA長官はウイリアム・コルビーからジョージ・H・W・ブッシュへ替わった。この政権ではウォルフォウィッツやリチャード・チェイニーも表舞台へ登場している。 フォード政権はネオコンを含む好戦派が実権を握り、ポーランドやアフガニスタンを舞台にしてソ連に対する秘密工作を開始、ラテン・アメリカでは配下の軍人を使い、民主化運動を展開していた人びとを虐殺している。 工作資金をポーランドの「連帯」へ送るため、バチカン銀行に不正送金させているが、これは途中で発覚した。「バチカン・スキャンダル」である。 1982年6月7日にはロナルド・レーガン大統領が教皇ヨハネ・パウロ2世とローマ教皇庁の図書館で50分にわたって密談。カール・バーンスタインによると、レーガンと教皇は大半の時間をソ連の東ヨーロッパ支配の問題に費やされ、ソ連を早急に解体するための秘密工作を実行することで合意したという。(Carl Bernstein, “The Holy Alliance,” TIME, Feb. 24, 1992) その2年後、河野太郎はポーランドの中央計画統計大学へ留学、反体制派の神学生と一緒に連帯書記長のレフ・ワレサの自宅を訪問し、ポーランド警察に逮捕されている。その当時、すでに連帯とCIAとの関係は知られていた。 ジョージタウン大学で河野はマデリーン・オルブライトのゼミに入っているが、そのオルブライトはコロンビア大学でズビグネフ・ブレジンスキーから学んでいる。アフガニスタンへソ連軍を引き込み、イスラム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)で編成した武装集団と戦わせた。集められた戦闘員をCIAが訓練、武器弾薬を提供してのことだが、この仕組みが「アル・カイダ」にほかならない。 ブレジンスキーの考えたアフガニスタンにおける秘密工作をジミー・カーター大統領が承認したのは1979年7月だが、その月にアメリカとイスラエルの情報機関に関係する人びとがエルサレムで「国際テロリズム」に関する会議を開いた。それ以降、テロリズムの黒幕はソ連だというキャンペーンが始まる。 1979年にはイランでパーレビ体制が崩壊する。ムハマド・レザー・パーレビ国王は同年1月に国外へ脱出、2月にはイスラムの指導者、アヤトラ・ルーホッラー・ホメイニがフランスから帰国する。そして11月に「ホメイニ師の路線に従うモスレム学生団」を名乗るグループがテヘランのアメリカ大使館を占拠、館員など52名を人質にとり、機密文書を回収した。人質の多くはアメリカの情報機関員だと見られている。 シオニストへの忠誠度が足りないと考えられていたカーター大統領はネオコンから攻撃を受けていたが、この人質事件を平和的に解決した場合、大統領選挙で彼のプラス材料になる。それを嫌ったロナルド・レーガン陣営やジョージ・H・W・ブッシュ陣営はイランの革命政権に対して人質の解放を遅らせるように要請、その代償として武器を提供することになった。結局、人質が解放されたのはレーガンが大統領に就任した1981年1月20日だ。 1979年7月にはニカラグアでアメリカの傀儡だったソモサ家の支配が終わった。ソモサ家に属すアナスタシオ・ソモサ・ガルシアはシオニストへ外交特権を与え、武器を供給するなどしてイスラエルの建国に協力した人物としても知られている。 サンディニスタ体制を倒すためにCIAはソモサ時代の兵士などを集めて武装集団を組織する。「コントラ」だ。議会から十分な資金を得られないため、CIAはコカインの密売を始める。ベトナム戦争で彼らはヘロインの密輸で儲けているが、同じ手法だ。アフガニスタン工作ではやはりヘロインを使っているが、その密売ルートはコソボを通過している。 CIAやコントラのコカイン密輸を初めて記事にしたのはAPの記者だったロバート・パリーとブライアン・バーガー。1985年末のことだ。当初、AP本社の編集者はふたりの記事を「ボツ」にしようとしたが、「ミス」でスペイン語に翻訳され、ワールド・サービスで配信された。(Robert Parry, "Lost History," The Media Consortium, 1999) レーガン政権は秘密裏に武器をイランへ売却、儲けの一部をコントラ支援のために使う。その事実は後に内部抗争が原因で露見、「イラン・コントラ事件」と呼ばれるようになるが、この工作にエイブラムスも関係していた。 エイブラムスはエル・サルバドルの秘密工作にも加わった。そこで行われた工作は「汚い戦争」とも呼ばれている。例えば、CIAの手先だった軍人や警官が1980年3月にカトリックのオスカル・ロメロ大司教を暗殺、その年の12月にはカトリックの修道女ら4名を惨殺し、81年12月にはエル・モソテ村で住民900名から1200名を殺した。 エイブラムスは1982年2月8日、エル・サルバドルにおけるアメリカの政策について上院外交委員会で証言した。その中でエル・モソテの虐殺事件について、そうした報告はコミュニストのプロパガンダだと主張しているが、勿論、事実だ。後に彼は偽証に問われることになる。 1991年にエイブラムスはイラン・コントラ事件への関与に関する議会への情報隠しで有罪を認めたが、後にジョージ・H・W・ブッシュ大統領によって恩赦されている。 ジョージ・W・ブッシュ政権は2002年にベネズエラでクーデターを計画した。アメリカへの従属を拒否していたウゴ・チャベス大統領を排除することが目的だ。キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、81年から85年までホンジュラス駐在大使を務め、後に国連大使にもなるジョン・ネグロポンテ、そしてエイブラムズが計画の中心にいたが、これは失敗する。計画を事前に知った当時のOPEC事務局長、アリ・ロドリゲスからチャベスへ知らせていたのだ。 WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに組み込まれた機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入し、チャベス派を分裂させ、アメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるとしている。 2002年に試みたクーデターは失敗したが、それでアメリカの支配層がベネズエラ乗っ取りを諦めたわけではない。2004年にセルビアで設立された「CANVAS」が転覆工作の中心になったという。 CANVASのリーダーは「オトポール!」の活動家。1998年に設立されたオトポール!は西側がスロボダン・ミロシェヴィッチを2000年に倒す際、重要な役割を果たした団体。「マーティン・ルーサー・キング」というロゴを利用しているが、キング牧師が戦っていた相手、西側の強大な私的権力の手先だと言わざるをえない。この団体にはNED(ナショナル民主主義基金)、IRI(国際共和研究所)、USAID(米国国際開発局)などから、つまりCIAから資金が提供されている。CANVASはウクライナでも活動してきた。 チャベスは2013年3月、癌のため、58歳の若さで死亡。癌の原因が人為的なものかどうかは不明だが、生前、キューバのフィデル・カストロから暗殺に気をつけるよう、経験に基づいて警告されていたことは確か。さまざまな暗殺手段が存在するが、癌を引き起こすウイルスも使われていると言われている。 その後もアメリカは産油国のベネズエラを制圧しようとしてきた。ドナルド・トランプ政権も例外ではない。そのトランプ政権がベネズエラの政権を転覆させる工作を指揮させていた人物もエリオット・エイブラムズだ。
2023.07.06
NATO(北大西洋条約機構)は7月11日から12日にかけてリトアニアのビリニュスで首脳会議を開く予定だ。ソ連消滅後、NATO軍は1995年8月から9月にかけてボスニア・ヘルツェゴビナを空爆、1999年3月から6月にかけてユーゴスラビアを攻撃、アメリカの侵略マシーンとして活動を本格化させたが、昨年2月からウクライナでロシア軍と戦闘をはじめ、窮地に陥った。そこから抜け出そうとする国も出てくるだろう。 アメリカがウクライナで政権転覆工作を始めたのは2013年11月。翌年の2月にはビクトル・ヤヌコビッチ大統領の排除に成功した。その時の工作でバラク・オバマ政権が手先に使ったのはNATO諸国で訓練を受けたネオ・ナチだ。 クーデターでキエフや西部地域は制圧できたものの、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデター体制を拒否、南部のクリミアはロシアの保護下に入り、東部のドンバスでは内戦が始まる。 内戦でキエフのクーデター政権は勝てないとアメリカやEUは判断、軍事力の増強を図る。そうした時に結ばれたのがミンスク合意。ドイツやフランスが仲介したのだが、アンゲラ・メルケル元独首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認め、その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。 その後、8年をかけてアメリカ/NATOはクーデター政権に兵器を供給、兵士を訓練、ドンバスの周辺に要塞線を築いた。アゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリや岩塩の採掘場があるソレダルの要塞は特に有名だ。 アメリカ/NATOはウクライナ軍を2022年春にドンバスへ軍事侵攻させ、住民を虐殺して、ロシア軍を要塞線の内側へ誘い込もうとしていたと推測する専門家もいる。そこでロシア軍を足止めさせ、その間にクリミアを別の部隊に攻撃させようというわけだ。ロシア軍がキエフへ部隊を向かわせたのはクリミアへの攻撃を阻止するためだったという見方もある。 しかし、ロシア軍は地上部隊をドンバスへ送り込まなかった。すでにドンバス周辺に集結していたウクライナの軍や親衛隊、各国の軍人や傭兵をミサイルで攻撃、壊滅的な打撃を与えた。地上で戦っていたのはドンバス軍とワーグナー・グループだ。この段階でキエフ政権は停戦交渉を始めている。 停戦交渉を仲介した人物はイスラエルの首相だったナフタリ・ベネット。彼によると、話し合いで双方は妥協に応じ、停戦は実現しそうだった。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はNATOへの加盟を諦めるとしたいう。 3月5日にベネットはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。 ところが、その3月5日にゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフをウクライナの治安機関SBUのメンバーが射殺してしまう。クーデター直後からSBUはCIAの下部機関化しているので、アメリカ政府が殺したと言えるだろう。 ベネットによると、恐怖から掩蔽壕に隠れていたゼレンスキーはロシア政府がゼレンスキーを殺害しないと保証したことを確認した2時間後にゼレンスキーはオフィスで「私は恐れない」と宣言したという。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 停戦交渉の進展でロシア軍はウクライナ政府との約束通りにキエフ周辺から撤退を開始、3月30日にはブチャから撤退を完了した。31日にはブチャのアナトリー・フェドルク市長がフェイスブックで喜びを伝えているが、虐殺の話は出ていない。 ところが、ウクライナ政府は停戦合意を破棄する。破棄させたのはアメリカ政府やイギリス政府だ。合意を潰すため、西側の有力メディアは4月に入ると西側の有力メディアはロシア軍がブチャで住民を虐殺したと宣伝し始めるが、マクサー・テクノロジーズなる会社から提供された写真の分析などからキエフ政権の親衛隊が殺害した可能性が高いと言われている。 そうした中、4月9日にボリス・ジョンソン英首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令。4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。そこからウクライナでの戦闘でロシア軍と戦う相手はNATOへと移っていく。 プーチン大統領はNATO軍との戦闘を想定、昨年9月21日に部分的な動員を実施すると発表した。集められた兵士の大半は訓練に回され、前線に出たのは一部にすぎなかった。NATO軍の軍事侵攻に備えているとも見られている。その後、ワーグナー・グループは解体され、兵士はロシア軍に吸収されることになった。 ワーグナー・グループは傭兵会社で、経営者は料理人のエフゲニー・プリゴジン。軍事の分野では素人であり、軍事作戦に関与してきたとは思えない。創設にはロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将が関係したと言われている。同中将は多くの秘密作戦に参加、民間企業とロシア国防省の契約を仲介してきたともいう。 ワーグナー・グループはバフムート(アルチョモフスク)で勝利した直後、5月20日にプリゴジンは「解放」を宣言、25日から部隊を撤退させると発表した。その際、セルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。 スロビキンは昨年10月からドンバス、ヘルソン、ザポリージャの戦闘を指揮している軍人。ミジンチェフはマリウポリを解放した作戦の指揮官だった。今年5月4日からミジンチェフはワグナー・グループの「副司令官」を務めているが、料理人のプリゴジンではなくミジンチェフが本当の司令官だと考える人もいた。 ロシアの連邦保安庁(FSB)はNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が終了した6月23日、武装反乱の呼びかけ容疑でプリゴジンの捜査を開始した。プリゴジンは25,000人の兵士が行動を共にすると主張したようだが、実際は8000名程度で、将校は動かなかったという。 プリゴジンは部隊を率いてロストフ・オン・ドンへ入り、ロストフ・オン・ドンからモスクワへ向かうように命令したと言われているが、ロシアの軍や治安機関に目立った動きは見られなかった。アメリカなど西側の「専門家」はプーチン政権の崩壊を妄想、有力メディアも内戦と殺戮を期待していたようだが、そうしたことは起こらなかった。 24日の午後にはロシアにおけるワグナー・グループの行動を中止することでベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領とプリゴジンが合意し、ロシア政府はワーグナー・グループの幹部に対する訴追を取り下げると発表した。プリゴジンはベラルーシに「追放」される。 プリゴジンはどこかの時点で西側の情報機関に買収されたと考える人もいる。1980年代にアメリカのCIA人脈はソ連のKGB幹部を買収したと言われているので、ありえないことではないが、買収されたふりをしたという見方もできる。軍事力が強くないベラルーシに戦闘部隊を送り込む演出と推測する人もいる。 ウクライナでの戦闘はロシア軍が圧勝している。ワグナー・グループの件でロシア国内を混乱させたかったのかもしれないが、そうした展開にはならなかった。2014年にウクライナで戦争を始めたネオコンに残された手段は多くない。 6月12日から23日にかけてNATO軍は「エア・ディフェンダー23」と名付けられた軍事演習を実施した。25カ国から約1万人が参加したというが、これは演習を装った実戦ではないかと疑う人もいた。 アメリカやEUの内部にはそうしたことを考えそうな人が少なくないのだが、NATO内には同調しない国が増えているようだ。NATO軍を動かすためには何か大きなショックが必要だ。例えば、原子力発電所の破壊、「汚い爆弾」の使用など。イギリスの有力メディアはすでに予定稿を書き上げているという噂もある。
2023.07.05
COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)プロジェクトはアメリカの国防総省が中心にあることが資料の分析からも明らかになった。ウクライナで行われている対ロシア戦争も国防総省が重要な役割を演じていることは言うまでもないだろう。 しかし、国防総省だけがCOVID-19プロジェクトや対ロシア戦争を主導しているわけではない。1970年代からアメリカ、ヨーロッパ、日本を中心に新自由主義によって政策が決められてきた。その政策を進める際に使われた呪文が「民営化」や「規制緩和」だ。そして私的権力が国を上回る力を持つようになり、政策を決めている。 ニューディール派を率いていたフランクリン・ルーズベルトは1938年4月、議会へのメッセージで、ファシズムとは個人、グループ、あるいは何らかの支配力をもつ私的権力による政府の所有だと指摘している。つまり、ルーズベルトの定義を採用すると、新自由主義はファシズムにほかならないのだ。 ファシズムの創始者とも言えるベニト・ムッソリーニが1933年に書いた「資本主義と企業国家」によると、巨大資本の支配するシステムが「企業主義」で、それは資本主義や社会主義を上回るものだとしている。 私的権力や情報機関が国という枠組みを超えた力を持つことに1970年代のアメリカ議会は危機感を持っていた。そこでアメリカ上院では外交委員会に多国籍企業小委員会が、また情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会が設置されている。いずれもフランク・チャーチ上院議員が委員長を務めた。 しかし、議会のこうした動きは封じられ、チャーチは1980年の選挙で落選、84年に膵癌で死亡した。この間、有力メディアの世界では気骨ある記者が排除され、一部の私的権力に会社は買収されていく。 1970年代から始まった金融規制の大幅な緩和によって銀行のような規制は受けない金融会社が登場、大きな影響力を持つようになる。その代表格がブラックロック、バンガード、ステート・ストリートだ。「闇の銀行」とも呼ばれている。 この3社が大株主になっている会社はアメリカの主要500社の9割近くにおよび、つまり巨大医薬品メーカー、シリコンバレーのハイテク企業、あるいは有力メディアを支配している。ウクライナの戦争にブラックロックが深く関与していることは本ブログでも指摘した通り。COVID-19プロジェクトや反ロシア戦争に対して大きな影響力を持っているとも言える。 ブラックロックのラリー・フィンクCEOはWEF(世界経済フォーラム)の評議員を務めている。このWEFはリチャード・ニクソン米大統領がドルと金の交換を停止すると発表した1971年にクラウス・シュワブが創設した団体で、西側の巨大資本や富豪たちの代弁者だ。 シュワブはハーバード大学でヘンリー・キッシンジャーから学んでいるが、ロドニー・アトキンソンによると、シュワブの父親であるオイゲン・シュワブはナチスを支援していたスイスのエンジニアリング会社のエッシャー・ビスを率い、ノルウェーの工場でナチスの核開発計画のための重水生産を支援していたという。 エッシャー・ビスは1960年代に合併、スルザー・エッシャー・ビスになる。1967年から70年までクラウスが取締役を務めた同社は核兵器を開発していた南アフリカへ核技術を供給する仕事に関わっていたと言われている。なお同社は現在、スルザーに名称を変更している。 WEFの評議会メンバーにはシュワブやフィンクのほか、カナダの副首相兼財務相のクリスティア・フリーランド、アル・ゴア元米副大統領、ヨーロッパ中央銀行頭取で前IMF専務理事のクリスティーヌ・ラガルド、投資ファンド「カーライル・グループ」の共同設立者兼共同会長のデイビッド・ルベンシュタイン、CCIEE(中国国際経済交流センター)の朱民副理事長、チェリストのヨーヨー・マ、竹中平蔵などだ。竹中平蔵がどのような人間なのか、言うまでもないだろう。2016年から19年にかけての時期にはウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長もWEFの評議員だった。 このうちフリーランドの祖父はポーランドでファシスト新聞と言われている『クラキフスキー・ビスティ』の編集者だった。ナチス占領下、ユダヤ人オーナーから没収された同紙は1941年11月6日、「ボリシェビキ政権時代、35万人いたキエフのユダヤ人は、今日、ひとりも残っていない。」と書いた。1941年9月29日から30日の間に3万3771人が殺されたという。 1980年代にニーダーザクセン州知事を務めたウルスラ・フォン・デア・ライエンの父親、エルンスト・アルブレヒトはナチズム色が強かったと言われているが、彼女の一族は、ヒトラーの第三帝国に協力、財産を築いたともいう。 その遺産によってウルスラはエリート教育を受け、ドイツ政界へ進出することを可能にし、軍の正式な経歴がないにもかかわらず、2013年から19年までドイツ国防相に就任している。彼女の指揮の下、ドイツ軍は大規模な再軍備が行われ、汚職も問題になった。 ウルスラは「COVID-19ワクチン」の購入をめぐる契約でも疑惑を持たれている。EU委員会は数億人分の「ワクチン」を購入する契約を締結したが、これを主導したのが2019年12月1日から委員長に就任したウルスラ・フォン・デア・ライエン。この契約が部分的にしか公表されていないなど手続きに疑惑があり、欧州検察庁が捜査しているという。契約を全く明らかにしない日本よりはましなのかもしれないが。 2021年春に結ばれた契約でEUはBioNTech/ファイザーから最大18億回分の「ワクチン」を購入し始めるのだが、これはライエンとファイザーのアルバート・ブーラCEOの個人的な交渉で決められたと言われている。ふたりはテキスト・メッセージも交換したというが、EU委員会はそのメッセージを公開することを拒否している。 彼女が抱えるスキャンダルはこれに止まらないが、そうしたことに関係なく出世してきた。ワシントンの覚えがめでたいからだと考える人は少なくない。 WEFの背後に存在している私的権力はウォール街とシティ、つまりアメリカとイギリスの金融資本。この巨大資本は19世紀の後半から帝国主義政策、つまり侵略と略奪を本格化させる。この戦略を「グレート・ゲーム」とも呼ぶ。 こうした戦略を進化させ、理論化したのがイギリスの地理学者、ハルフォード・マッキンダー。ユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配し、内陸部を締め上げるというもので、現在でもアングロ・サクソン系の私的権力は踏襲している。第1次世界大戦もこの戦略によって引き起こされたと言える。 1914年7月28日にオーストリア-ハンガリー帝国がセルビアに宣戦布告して大戦が勃発しが、イギリスはロシアとドイツを戦わせようとしていた。 その当時、帝政ロシアではドイツとの戦争に積極的な産業資本家と消極的な大地主が対立していた。戦争に賛成していた産業資本家側には有力貴族のフェリックス・ユスポフが、また戦争に反対していた大地主側には修道士のグレゴリー・ラスプーチンがいて、ラスプーチンの背後には皇帝アレキサンドロビッチ・ニコライ2世と皇后アレクサンドラがついていた。 戦争を望んでいなかった皇后は7月13日にラスプーチンへ電報を打って相談、ラスプーチンは戦争が国の崩壊を招くと警告しているが、その内容を盗み見た治安当局は議会などにリーク、ラスプーチンは腹部を女性に刺されて入院することになった。入院中にロシアは総動員を命令、ドイツは動員を解除するよう要求。それをロシアが断ったため、ドイツは8月1日に宣戦布告している。ラスプーチンが退院したのは8月17日のことだ。 ロシアはドイツと戦争を始めたわけだが、ラスプーチンが復帰したことでいつ戦争から離脱するかわからない。それを懸念したイギリス外務省は1916年、サミュエル・ホーアー中佐を中心とする情報機関のチームをペトログラードへ派遣する。チームにはスティーブン・アリーとオズワルド・レイナーが含まれていた。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) アリーの父親はユスポフ家に雇われた家庭教師のひとりで、アリー自身はサンクトペテルブルクにあったユスポフの宮殿で生まれている。またレイナーはオックスフォード大学の学生だった時代からユスポフの親友で、流暢なロシア語を話した。(前掲書) ペトログラードにおけるイギリスのお抱え運転手だったウィリアム・コンプトンの日記によると、彼はレイナーをユスポフの宮殿へ1916年の10月後半から11月半ばにかけて6度運んだという。ユスポフは1916年12月19日にレイナーと会ったと書き残している。(前掲書) イギリスにとって邪魔なラスプーチンは1916年12月30日に暗殺された。殺したのはユスポフだと言われているが、暗殺に使用された455ウェブリー弾はイギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだったという。 ユスポフは上流社会の堕落に憤り、犯行に至ったとされているが、世界の上流社会は堕落している。そのようなことで憤る人物が上流社会で生きることはできない。そもそもユスポフはオックスフォード大学に留学した際、「堕落」を売り物にしていた学生の結社「ブリングドン・クラブ」へ入っている。上流社会の堕落に憤り、暗殺に至ったというハリウッド映画風の説明に説得力はないのだ。事実を直視すれば、ドイツとロシアの戦争をイギリスが継続させたかったのだという結論に達する。 二月革命で成立した臨時革命政府は産業資本家と結びついていて、戦争を継続する。そこでドイツは即時停戦を主張していたボルシェビキに目をつける。 そこでドイツはボルシェビキの幹部32名を「封印列車」でロシアへ運んだのだ。ウラジミル・レーニンは1917年4月に帰国、7月にボルシェビキは武装デモを行うものの、鎮圧されてしまう。レーニンはフィンランドへの亡命を余儀なくされた。 この時、臨時革命政府軍の最高総司令官になったのがラーブル・コルニーロフ将軍。労働者や兵士を味方につける必要性を感じたのか、臨時政府は7月にエス・エルのアレキサンドル・ケレンスキーを首相に就任させた。ケレンスキーはフリーメーソンのメンバーでもある。 ところが、コルニーロフが8月にクーデターを企てた。この武装蜂起にケレンスキー政府は対応できず、ボルシェビキに頼ることになる。そして十月革命につながり、革命政権はドイツの思惑通りに即時停戦を宣言、無併合無賠償、民族自決、秘密外交の廃止も打ち出した。 レーニンの命令でボルシェビキ政権はドイツとの戦争を停止するが、すでにアメリカが参戦して兵員を送り込んみ、イギリスやフランスに物資を供給していた。結局、ドイツは戦争に負けた。 しかし、そうした経緯があるため、大戦後、ドイツとソ連の関係は良好だった。両国の関係が悪化するのはドイツでナチスが実権を握ってからだ。ナチスはイギリスやアメリカの金融資本から資金的な支援を受けていたことがわかっている。 ナチスは米英金融資本の支援で実権を握ることができた。そのナチス政権は1941年6月、ソ連に対する侵略戦争を始める。「バルバロッサ作戦だ。この作戦で東へ向かったドイツ兵は約300万人、西部戦線に残ったドイツ軍は約90万人だと言われている。 ソ連軍は敗北して再び立ち上がることはないと10月3日にアドルフ・ヒトラーはベルリンで語り、ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官だったヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測していた。勿論、イギリスはソ連を助けようとしない。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) ところがそうした見通しは外れ、1942年1月にドイツ軍はモスクワでソ連軍に降伏、8月にはスターリングラード市内へ突入して市街戦が始まる。当初はドイツ軍が優勢に見えたが、11月になるとソ連軍が猛反撃に転じ、ドイツ軍25万人はソ連軍に完全包囲され、1943年1月にドイツ軍は降伏する。 その後、アメリカやイギリスはナチスと接触して善後策を協議。サンライズ作戦である。その後、アメリカの軍や情報機関はナチスの幹部や協力者を逃走させたり、保護したり、雇用する。ラットライン、ブラッドストーン作戦、ペーパークリップ作戦などという暗号名が付けられている。 その一方、ソ連やレジスタンスに対抗するための手を打っている。そのひとつがシチリア島上陸作戦だが、もうひとつはゲリラ戦部隊ジェドバラの創設。1944年のことである。この部隊を組織したのはイギリスとアメリカの特殊部隊。つまりイギリスのSOEとアメリカのSO(OSSの一部門)だ。 ウォール街はイギリス政府と同じようにソ連/ロシアを制圧しようと目論んでいたが、アメリカ大統領だったフランクリン・ルーズベルトはファシズムや植民地に反対していた。そこで帝国主義者のウィンストン・チャーチル英首相とは関係が良くなかったのだが、帝国主義者にとって好都合なことに、ルーズベルトは1945年4月に急死した。 第2次世界大戦後、ヨーロッパにはアメリカやイギリスによって「元ナチス」のネットワークが作られた。その「秩序」を維持する仕組みのひとつがNATOにほかならない。NATOに破壊工作を行う秘密部隊のネットワークがあることは本ブログでも繰り返し書いてきた。 COVID-19プロジェクトやウクライナの対ロシア戦争はこうした歴史の延長線上にある。WEFもそうした流れの中で創設された。 シュワブの顧問を務めるユバル・ノア・ハラリはAI(人工知能)によって不必要な人間が生み出されるとしているが、そのAIをナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技術、認知科学と融合、自然の摂理を否定し、「トランスヒューマニズム」の世界を築こうとしているとも言えるだろう。 これは所詮「ヒトの浅知恵」だが、その浅知恵によって人類が滅びるかもしれない。
2023.07.04
「COVID-19 mRNAワクチンの作用原理は遺伝子治療製剤(GTP)の定義に相当する」事実が論文という形で示された。ワクチンに分類すべきでないということだ。このタイプだけでなくアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用した製品も同じことが言えるだろうが、規制当局は「COVID-19ワクチン」をGTPの規制から除外している。 WHO(世界保健機関)が2020年1月30日に緊急事態を、また3月11日にパンデミックを宣言し、緊急使用リスト(EUL)に掲載されて使用できるようになった。パンデミックという緊急事態であり、ほかに治療法がないという前提での使用許可だ。 ワクチンは感染症の予防を目的として長く使用されてきた製剤で、原因となる微生物を弱毒化させたり、毒素を無毒化させたり、病原体を殺して使うタイプがあるが、「COVID-19ワクチン」はどれにも当てはまらない。それにもかかわらずGTP規制から除外、ワクチンの規制対象としているのだ。この除外には科学的、そして倫理的な正当性がないと批判する人は少なくない。GTP規制から除外されたため、「COVID-19 GTP」は数年にわたる長期安全性モニタリングが行われなかった。 そのGTPの接種が本格的に始まるのは2020年12月。最も迅速に動いた国はイスラエルで、2020年12月から21年3月にかけて一気に接種するが、4月から十代の若者を含む人びとの間で心筋炎や心膜炎が増えていることが問題になりはじめた。 当初、「COVID-19ワクチン」と心臓の炎症に関連性はないと主張していたアメリカのCDC(疾病予防管理センター)は5月になると「ワクチン」のデータを見直すと言わざるをえなくなり、緊急会議を開催することになる。CDCのACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)は6月23日、「mRNAワクチン」と「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと発表した。 そして6月25日、FDA(食品医薬品局)はmRNA(メッセンジャーRNA)技術を使ったファイザー製とモデルナ製の「COVID-19ワクチン」が若者や子どもに心筋炎や心膜炎を引き起こすリスクを高める可能性があると発表。その後、「COVID-19ワクチン」が心筋炎、心膜炎、横紋筋融解を引き起こしていることも解剖で確認された。 心筋炎や心膜炎だけでなく、帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害、ADE(抗体依存性感染増強)などが報告された。 mRNAを利用したタイプにしろ、アデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したタイプにしろ、いずれもコロナウイルスのスパイク・タンパク質を人間の細胞に製造させ、それによって抗体を作って免疫を高めることになっている。 ところが、このスパイク・タンパク質こそが病気の原因だという事実をカリフォルニア州サンディエゴ郊外にあるソーク研究所が2021年3月に発表している。解説記事も出された。その後、この指摘が正しいことが確認されている。 遺伝子操作薬に侵入された人間の細胞はスパイク・タンパク質が製造するようになり、人間の免疫システムは病気の原因になっている細胞を攻撃し始める。自己免疫疾患だ。そこで免疫力を弱める力が働き、免疫不全の状態になる。つまりAIDS的な状態。病気に感染しやすく、癌になりやすくなる。無効性と危険性が明確になった「COVID-19ワクチン」は2022年になると大半の国は接種を止めたのだが、日本は例外。正気とは思えない。WHOは2023年5月初旬にCOVID-19パンデミックの緊急段階の終了を宣言した。それでも日本は「遺伝子治療製剤」の接種を続ける。
2023.07.03
ウクライナではGUR(国防省情報総局)キリーロ・ブダノフ局長や陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官と同様、バレリー・ザルジニー総司令官が姿を消していた。そのうちザルジニーとワシントン・ポスト紙は参謀本部で会い、インタビューしたという。その中でザルジニーはアメリカ/NATOに対し、武器弾薬をよこせと語っている。 6月にはウィリアム・バーンズCIA長官がウクライナを訪問、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領や「情報当局トップ」と会談したとも伝えられている。その「トップ」がブダノフなのかどうかは不明だ。 ブダノフの場合、5月6日に「この世界のどこにいてもロシア人を狙い殺し続ける」と語っている。それに対し、ロシア軍は5月28日からキエフに対する大規模な攻撃を実施、GUR本部も破壊され、29日からブダノフは姿を見せていない。 攻撃があった夜、2機のヘリコプターがキエフからポーランドへ向かい、ポーランドからドイツへ第86航空医療後送中隊のC-21Aが重傷者を乗せて飛んだと言われているが、その重傷者がブダノフではないかと噂されている。 ウクライナ側はバーンズに対し、秋までに大砲とミサイル・システムをクリミアとの境界線近くへ移動させ、ウクライナ東部へさらに押し進めることを目指していると語ったというが、難しいだろう。現在、ウクライナ軍は「玉砕戦法」で攻撃を続けているが、地雷原の中で戦闘車両が破壊され、多くの死傷者を出している。こうした状況はアメリカ統合参謀本部のマーク・ミリー議長も認めている。 すでに武器弾薬はウクライナ軍だけでなくアメリカ/NATOの兵器庫からも消えているようだが、それ以上に深刻なのは膨大な数の兵士が死傷している現実。周辺国から雇い入れ、ウクライナ国籍を与えても追いつかない。最後のウクライナ人が死ぬまで戦争を続けるというが、結局のところ、外国人傭兵に頼らざるをえない。 要するに、アメリカやイギリスを支配する私的権力、つまり金融資本はロシアの現体制を倒し、制圧するためにウクライナの国土を破壊し、人間を死滅させようとしている。その目論みにウクライナのエリートは協力してきたわけだ。 こうした仕組みは遅くとも19世紀には出来上がっている。 経済競争で中国(清)に敗れたイギリスの私的権力はアヘンを売りつけることで形勢を逆転させようとし、中国の反発を招いた。そしてイギリスは1839年から42年にかけて「アヘン戦争」、そして1856年から60年にかけて「第2次アヘン戦争(アロー戦争)」を仕掛けている。 2度のアヘン戦争でイギリスは勝利、同国とアメリカの貿易商は大儲けしたものの、征服はできなかった。戦力が足りなかったからだ。そこで目をつけたのが侵略拠点としての日本列島であり、傭兵としての日本人だ。イギリスは長州と薩摩を利用して徳川体制を倒す。これが明治維新であり、天皇制官僚体制の始まりだ。 しかし、イギリスが侵略戦争を本格化させるのは19世紀の終わり。その中心にはセシル・ローズやジョゼフ・チェンバレンがいた。帝国主義の時代への突入だ。 1866年にアフリカの南部地域でダイヤモンドが発見され、86年にはトランスバール(南アフリカ北東部)で大量の金が発見されるとローズは南アフリカへ移住、ダイヤモンド取引で財をなす。ローズに融資していた金融機関はNMロスチャイルド&サンである。イギリスにおけるローズの仲間にはナサニエル・ロスチャイルドのほか、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、そしてアルフレッド・ミルナーらがいる。 ロスチャイルドは金融界に君臨する大物であり、ステッドは多くのメディアを支配して情報操作を行っている。ブレッドは心霊主義の信者としても知られているビクトリア女王の相談相手で、後にエドワード7世やジョージ5世の顧問を務めた。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013) 一連の動きで重要な役割を果たしたローズは優生学を信奉していた。彼は1877年6月にフリーメーソンへ入会し、その直後に書いた『信仰告白』の中でアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877) イギリスにおける帝国主義は優生学と密接な関係にあると言える。実際、アングロ・サクソンはアメリカやオーストラリアで先住民を虐殺しているが、東アジアでは中国に照準を定め、最終的にはスラブ民族が支配するロシアを征服しようと計画する。ウクライナへの工作もその一環だ。 南北アメリカ大陸における先住民虐殺は「大航海時代」までさかのぼることができる。16世紀にはエルナン・コルテスがアステカ王国(現在のメキシコ周辺)に攻め込んで莫大な金銀を奪い、フランシスコ・ピサロはインカ帝国(現在のペルー周辺)で金、銀、エメラルドなどを略奪した。 こうしたヨーロッパからの侵略者は莫大な量の貴金属品を盗んだだけでなく、先住民を酷使して鉱山開発も行っている。その象徴的な存在がボリビアのポトシ銀山だ。 アメリカ合州国の場合、1620年11月が大きな節目になっている。オランダを出航した「メイフラワー」が現在のマサチューセッツ州プリマスにたどり着き、上陸した。 そこには先住の「アメリカ・インディアン」が住んでいたのだが、メイフラワーが到着した時には腺ペストで皆死んでいた。ペストは1617年にイギリス人が持ち込んだのだという。 この当時、アメリカ大陸で「失われた十支族」を特定したという話が流れ、それに基づいて1650年にオランダのラビ、メナセ・ベン・イスラエルは『イスラエルの希望』という本を出版している。イスラエルはイギリスのオリバー・クロムウェルに対し、アメリカ先住民のスー族とコマンチ族を再ユダヤ化するためにユダヤ人を派遣するように求めた。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) ヨーロッパからの移民はアメリカ・インディアンの助けで生き延びることができたのだが、そうしたことに感謝せず、侵略を本格化させて先住民を虐殺していく。先住民を殺した後には「自由になる土地」が残されたのだが、富裕層や植民会社は働き手をイギリスから運んでくる。アヘン戦争の後、中国からイギリスの植民地などへ運ばれた「苦力」も一種の奴隷だと言えるだろう。 イギリスではエンクロージャーによって共有地が私有化され、土地を追われた農民は浮浪者や賃金労働者になっている。そうした人びとを年季奉公人、つまり期間奴隷として使ったのだ。1776年にアメリカではトーマス・ジェファーソンが起草した「独立宣言」が可決されたが、先住民や奴隷は「人間」から排除されている。この欺瞞性がアメリカの本質であるように思える。 アメリカの「開拓」は先住民を虐殺することで成り立った。中でも悪名高い虐殺は1864年に引き起こされた。約700名のシャイエン族の集団が講和を結ぶためにコロラドのフォート・リオンへ向かうのだが、その途中、サンド・クリークで白人側の示唆に従ってキャンプ、そこを約750名のアメリカ兵が襲撃したのだ。シェイエン族を率いていたふたりの長老は白人が攻撃してくることはないと部族民を説得していたが、判断を誤り、多くの仲間を殺すことになった。 フロンティアの消滅が宣言された1890年12月にはサウスダコタのウンデッド・ニー・クリークにいたスー族を騎兵隊が襲撃し、150名から300名を虐殺した。これも歴史に残る残虐な出来事のひとつで、アメリカという国の本質を示している。 その前、1845年に侵略者は太平洋岸に到達したが、その翌年にはメキシコと戦争をはじめ、テキサス、ニュー・メキシコ、カリフォルニアを奪う。 1904年にはセントルイスでオリンピックが開催されたが、その際、並行して「万国博覧会」も開かれた。1903年までアメリカの民族学局に所属していたウィリアム・マギーは「特別オリンピック」を企画、人種の序列を示している。それによると、トップは北ヨーロッパの人びとで、最下位はアメリカ・インディアンだ。アパッチ族のジェロニモが「展示」されたのもその時である。(Alfred W. McCoy, “To Govern The Globe,” Haymarket Books, 2021) アラバマ州モントゴメリーで人種差別に抗議する「バス・ボイコット運動」が始まり、「公民権運動」に発展するが、そのボイコットが始まったのは1955年のこと。この運動の指導者だったマーチン・ルーサー・キング牧師はベトナム戦争が人種差別と本質が同じだと理解、ベトナム戦争に反対する意思を明確にしたが、その1年後に暗殺された。 今では債務によって「新奴隷」が生み出されていると言われている。アメリカでは医療費や教育費で債務奴隷状態になる人が少なくない。その経済的な境遇のため、さまざまな権利を放棄せざるをえない状況に追い込まれている。「債務奴隷」に近い人たちが存在するのだ。 アメリカの医療システムは貧弱で、経済的な弱者は適切な医療を受ける権利が奪われ、大きな病気や怪我をして破産するケースが珍しくない。公立学校が崩壊状態のアメリカで少しでもまともや教育を望むなら家賃の高い地域に住まなければならない。不動産による倒産の大半は教育問題だとエリザベス・ウォーレンが説明していた。 アメリカという仕組みは民主主義から程遠い。フランクリン・ルーズベルトは1938年4月、議会へのメッセージで、ファシズムとは個人、グループ、あるいは何らかの支配力をもつ私的権力による政府の所有だと指摘しているが、これは1970年代からアメリカ主導で進められた新自由主義政策そのものだ。その政策を進めたのは米英の金融資本だが、「独立宣言」を起草した勢力も大同小異である。「アメリカという仕組みは健全だが、悪いグループに支配されているので、その悪いグループを排除すれば、素晴らしいアメリカが達成できる」という主張はナンセンスなのだ。
2023.07.02
BioNTech/ファイザー製「Covid-19ワクチン」の最大30%はプラセボ(偽薬)である疑いがあるという。これはデンマークで行われた研究の結果だ。接種は2020年12月下旬に始まるが、その直後からロットによって副作用の出かたが違うことは指摘されていた。そうした指摘をしたひとりがファイザーで副社長を務めていたマイク・イードンだ。 デンマークで使用されたバッチは基本的に3つのグループに分かれ、グラフでは青、緑、黄に色分けされている。青で表示されたバッチは高いレベルの「有害事象」を引き起こし、緑は中程度、黄は「有害事象」がほとんど見られない。青の場合、報告された重篤な「有害事象」の発生率は10回に1件、緑は約400回につき1件。ロット数の比率が最も高いには緑で、60%以上だとされている。プラセボが30%とすると、非常に危険なロットは10%程度ということになる。「ワクチン関連死亡者」の50%近くが青ロットだともいう。 COVID-19のパンデミック騒動は2019年12月に中国の湖北省武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が見つかったところから始まる。翌年の2月には、横浜港から出港しようとしていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でも似たような症状の患者が見つかり、人びとを恐怖させることになった。ハリウッドが制作してきたパンデミック映画を連想、「SARSと似た重症の肺炎患者」が街にあふれ、死者が急増すると信じた人もいるだろう。 中国ではSARSで効果があったインターフェロン・アルファ2bを使ったところ、2019年のケースでも効果があり、早い段階で沈静化させることに成功。駆虫薬として知られているイベルメクチンが有効だということはメキシコの保健省と社会保険庁が実際に使って確認した。また抗マラリア薬のクロロキンがコロナウイルスに対して有効だとする論文が2005年8月22日にウイルス・ジャーナルというNIH(国立衛生研究所)の公式刊行物に掲載されている。 WHO(世界保健機関)が2020年3月11日にパンデミックを宣言してからCOVID-19騒動は始まるが、その当時、死亡者が続出しているわけでもない。そもそもCOVID-19なる伝染病が蔓延している証拠はなかった。風邪やインフルエンザのような症状の患者をCOVID-19感染者と見做しただけである。 その後、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で陽性になった人を感染者と見做すようになるが、これは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する分析のための技術で、診断に使うことは想定されていない。この技術を開発し、1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスもPCRを病気の診断に使うべきでないと語っていた。 増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になるだけでなく、偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならない。35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。ちなみに、国立感染症研究所が2020年3月19日に出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だ。 PCRで陽性になっても病気だとは言えないのだが、パンデミックを演出するためには感染者数を爆発的に増やさなければならない。そこで現れたタグが「無症状感染者」だ。 アメリカではCOVID-19の感染を調べるため、「2019年新型コロナウイルス(2019-nCOV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を採用、EUA(緊急使用許可)を発行していた。 しかし、CDC(疾病予防管理センター)は2021年7月にこのパネルを同年12月31日に取り下げると発表する。この診断パネルはインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、コロナウイルスとインフルエンザウイルスを区別できないようだ。「旧型」コロナウイルスと「新型」コロナウイルスの区別もできないのだろう。 コロナウイルスであれ、インフルエンザウイルスであれ、人間の免疫システムは対応できる。インターフェロン・アルファ2bはリンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされ、吉林省長春に製造工場がある。イベルメクチンも有効だとされているが、それ以外でも免疫力を高める薬は存在する。 こうした薬を使わせず、「ワクチン」というタグをつけた遺伝子操作薬をWHOをはじめとする医療利権は接種させてきた。副作用の爆発的な発症は隠しきれなくなり、大半の国は2022年に入ると接種をやめている。そうした中、例外的に接種を進めた国が日本だ。 その日本では昨年10月13日、「マイナンバーカード」と健康保険証を一体化させる計画の概要を岸田文雄内閣が発表した。それにともない、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止するという。マイナンバーカードで遺伝子操作薬の接種歴、ロット番号、そして接種後の治療歴もわかるはずで、「COVID-19ワクチン」プロジェクトを進めてきたアメリカ国防総省にとって貴重なデータになる。岸田は命令に従うしかない。
2023.07.01
全37件 (37件中 1-37件目)
1