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(野中郁次氏を招いた、旧・通産省職員向け講演会にて)野中先生の伝えるべき教訓というのは、たった一言であった。何が物事の本質か。これを議論し突き詰める組織風土を維持しつづけることだ、それに尽きる、ということだった。旧帝国陸海軍の組織のありようをあれほど研究した人が、たった一言の教訓であった。齋藤 健(元経済産業省、歴史研究家)
2006/02/28
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2月26日。今日は騎手としての松永幹夫の引退日。JRAから配られたレースプログラムには「ターフの紳士」とあった。言いえて妙。競馬界のいい人、松永幹夫。勝負師と呼ぶにはあまりにも優しげな顔立ち派手さはないが、堅実で馬を大事にする騎乗記者からも慕われる誠実なインタビューの受け答え後輩騎手を大事にし、先輩騎手からは信頼される騎手会長。ミキオ、ミッキーと呼ばれファンからも愛された。そのミキオが、去年もG1を勝って好調のミキオが38歳の若さで引退する。長年固い絆で結ばれてきた師匠の山本調教師が来年定年で廃業する調教業を継ぐために。地元・阪神競馬場ではミキオがターフに現れただけで拍手喝さいだったようだ。そんなミキオに特別な思い入れはない自分は、今日は有終を飾れるといいな、ぐらいに思いながら中山競馬場にいた。阪急杯のパドック映像。これがミキオにとって最後の重賞になる。ミキオ騎乗のブルーショットガンの青いメンコがやけに鮮やかだった。ブルーはようやく6歳にして1600万下条件を勝ち上がってきたばかり。勝ち上がり後ミキオと組みオープン2連敗、しかも前走は13着の惨敗。普通の馬ならとっくに見切りをつけられて引退してもおかしくない7歳馬だ。通常のオープン戦でも、いや元の1600万下条件ですら入賞できるかどうか・・・毛艶や調子はよさそうだが、ローエングリンやオレハマッテルゼほか重賞馬5頭(うちG1馬2頭)を含むこの強力メンバー相手ではさすがに辛い・・・。40倍近いブルーの単勝オッズを見て、隣のじいさんが「こりゃあ、ミキオの馬には乗ってやれんなぁ・・・」とため息をついた。だが、次の12R(最終レース)でミキオの乗る馬は相当強い。単勝オッズはこの時点で断然の1.7倍。ここ2戦は僅差の2着を2連続。今日の相手ならば実力は頭2つ抜けている。はっきり言ってこれはミキオへの餞別に特別に用意された馬だろう。引退する騎手に、それまで世話になった馬主や厩舎がとっておきの強い馬を送り込む。人間関係を重んじる競馬界ではよくある粋なはからいだ。次はまずこの馬で堅い。中山記念と阪急杯でプラスが出たら、その分を12Rのミキオの単勝に突っ込んでご祝儀にしようじゃないか。コスモ2頭が面白い阪急杯は勝負に徹する。本命・オレハマッテルゼから馬連で千円ずつローエングリン、ビッグプラネット、コスモシンドラー、コスモサンビームに流した。阪急杯より10分先に終わった中山記念は、前年度勝者と1番人気の組み合わせで固い決着に終わった。予想通り。むしろ阪急杯で好配当を期待していた自分は、払い戻しには行かずそのまま前列の柵にへばりついていた。隣にはやけに真剣な目をした無精ヒゲの大柄なオッサンがいた。50代半ばぐらいだろうか? 建築業でもしているのかゴツい。手の中のスポーツ新聞を開く気配もない。腕を組んで仁王立ちのまま、怒ってるような、考え込んでるような、なんともいえない雰囲気でターフビジョンを睨んでいるオッサンがやけに怖かった。 締め切りのメロディが終わる。そして阪急杯発走。ローエンの快調な逃げで進むレース、途中サンビームの故障発生に場内ざわめくも、ほぼ予想通りの展開。4角正面を向いたところで一瞬馬群が広がり、一気に先行組が差を詰める。断然の一番人気・マッテルゼが満を侍して上がってきた、ぐいぐいと先頭ローエンを追い詰めるローエンはしぶとく競り粘っている、大外からやはりコスモシンドラーが伸びてきているこのままなら、マッテルゼとこの2頭のどちらかで決まる。「このレース取った」そう思った瞬間、それまで一言も発さなかった隣のオッサンが怒声が響いた「マ・ツ・ナ・ガ・ミ・キ・オぉ~~!! そぉ、こぉ、かぁ、らぁ こぉぉ~~~いぃっ!!」フルネームで呼ばれたミキオのことを思い出し、とっさにターフビジョンでミキオ駆るブルーを探す。なんと!?あの鮮やかな青いメンコが馬群を割ってグングン伸びてきているではないか!!わが目を疑う!? これ、これって、あのブルーショットガン!?「差せぇ~!ミキオ~!!」またもオッサンの怒号がとどろく!?なんと!ブルーが馬群を捌いて前3頭との差を詰じわじわ詰め上がってきた力強く不良の馬場を蹴り、一完歩、一完歩、青いメンコが伸びてくる。え、え!?ほんの半年前まで下級条件で掲示板さえ外していたコイツ、こんなすごい脚もってたのか!?だが、粘るローエンをようやく交わした本命・マッテルゼが前で独走態勢に入ろうとしている。大外からシンドラーの追い込みも届きそう、粘り腰が持ち味のローエンもまだ2着争いを捨てていない。青いメンコ・・・ブルーは!?馬群の切れ目からミキオの手が動いているのが見える。激しいが忙しくない職人騎手らしい追い方「ミキオぉぉ~!!追えぇぇ~!!」またもオッサンの大声が鼓膜をビリビリ揺らす振動を感じた瞬間プチ・・・自分の中で何かがはじけた ぉぉぉおおおおおお!馬券はいらねぇ! 勝て!ミキオ!!これが・・・・これがジョッキー松永幹夫、最後の大舞台!!「ミキオ、差せ!差せ!来い!来ぉーーーい!!」「ミキオぉ~!いけぇ~!!」数秒の間、二人は柵をバシバシ叩きながら叫んだ、いや怒鳴った。怒鳴っているのは柵の二人だけではない。中山の競馬ファン全員がミキオ!ミキオ!と叫んでいるのが分かる。ミキオに勝たせたくて勝たせたくて、枯れるほど大声を出す。馬券なんかくれてやる!だから勝たせてくれ!と祈った。だって、いいじゃないか!いい騎手なんだ・・・ 苦労してきた馬なんだ・・・そんな理由で勝たせてくれたっていいじゃないか!なぁ、神様!!!!少し泣きたい気持ちにも似ていた。自分を・・・重ねていた。ローエンをマークして仕掛けたマッテルゼの脚色が少し鈍い!シンドラーも仕掛けが早すぎたか!?伸びが足りない!一方、ブルーショットガンは大歓声をムチと思ったのかのように、さらに加速してゆく!そして場内大興奮の中、青いメンコが見事にマッテルゼを交わしきり、猛追するシンドラーを振り切ったところがゴール「届いたっ!」「ぃよぉ~~~し!!!」中山競馬場もミキオとブルーのアッと驚く快勝に沸き立つ。オッサンと目が合い、数秒前まで他人だった二人はがっちり握手した。「ミキオが勝ったな!」「はい!」「いいマクリだったな!」「はい!」このオッサンも自分も、、、そしてほとんど馬券を外しただろうに、あちこちでミキオの名前を呼び、遠い阪神競馬場に拍手を送る人たちもみんな知ってるんだ。松永幹夫がどんな男かどんな道のりでここまで来たかどんな不遇の時代を耐えてきたかなぜステッキを置くことにしたのか。。。昨年秋の天皇賞・ヘヴンリーロマンスの勝利は松永幹夫20年間の騎手人生の中で、師匠・山本師の管理馬で初めて勝ったG1だった。 「ミキオがウチの馬で勝てて、ホッとしていますよ・・・」山本師も師匠として責任を果たせた安堵を隠さなかったそうだ。松永幹夫ほどの好騎手が20年間も同じ厩舎に所属しつづけることは珍しい。というより、平城の競馬業界ではまずない。この世界、騎手人生の最初は特定の厩舎に所属して馬を確保しながら技術と実績を積み上げ、一定のレベルに達したらより良い馬に乗れるよう、身軽なフリー騎手になるのが通例だからだ。レース慣れしてない新馬や気難しい牝馬を安定して好走させることでは日本一のミキオ。しかし、恩義を重んじるミキオは、所属厩舎の馬を最優先し、有力馬の騎乗依頼ををあえて断ってきた。ミキオが断った有力馬は他の一流ジョッキーのもとに。一度他のジョッキーの「お手馬」になった馬の乗替り依頼が来ることはほとんどない。これがミキオの不遇時代である。ミキオがフリーだったら・・・G1をもっと勝っていただろう。重賞もあと10や20、勝ち星も百の単位で増えたはずだ。だが、ミキオは馬も人も大事にする師匠を心から尊敬し「山本先生の弟子でなかったら、今の自分はありません」と師匠の管理馬を勝たせることにこだわった。20年・・・20年間こだわった。山本師はそんな弟子を強い馬に乗せたいと願い、ミキオはそんな師の意気に応えたかった。お互いが、お互いをなんとか勝たせようと努力した。そして、その想いが結実したのが「天皇賞」設立以来初の天覧競馬だった。賭博の世界にスポーツの風を送るターフの紳士。自分たち競馬ファンを代表して天皇陛下に挨拶してくれたのが、ミキオで本当によかった。興奮さめやらぬ中山競馬場。着順確定のアナウンスが聞こえる。確定の赤ランプを見てふと我にかえる。 「あ、、馬券は外したんですよ。あはは・・・」ちょっと恥ずかしくて、笑いながら外れ馬券をオッサンに見せた。オッサンは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐにニヤリと笑った。「なんだぁ、そっちもか! わはは!」オッサンのポケットから取り出した馬券は・・・なんとマッテルゼの単勝1万円だった。その時自分は・・・きっとポカンとした表情をしていたんだろう。オッサンは実に気持ちよさそうに大声で笑いながら背中をバンバン叩いてきた。それがすごく心地よくて、小さく、でも腹から笑った。こんなことがあっていいんだ! いや、あるんだ!この臨場感! この一体感! この爽快感!最高!!!ヘヴンリーロマンスの天覧競馬勝利後天皇・皇后両陛下に深く頭を下げる松永騎手
2006/02/26
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日本馬がまるで野球選手のように普通に海外遠征する時代。いい時代だとつくづく思うとき、いつも戦時中、厩務員だったという、近所のお爺さんが教えてくれた話を思い出します。お爺さんが厩務員になったのは戦前ですが、すぐに太平洋戦争に。戦中~戦後、人間も食べるのに困っている状態だから、馬たちのカイバも2、3升もらえたら上等。 半升どころか、カイバなしの日も少なくなくって、お腹を空かせた馬たちは、放牧させたらもう雑草でも木の皮なんでも食べていたそうです。 お爺さんは痩せこけた馬たちがあんまり可愛そうだったので、軽トラックにのって農家やってる福島の実家に帰省し、親類縁者をはじめ近所のリンゴ農家を回り、傷みかけや割れて出荷できないリンゴをかき集めようとしたそうです。「半端もののリンゴありませんか?」頭下げて回って、農家の人だって切羽詰まってる時代だから、乞食となじられ怒鳴られ、水かけられたり、正直に「馬に喰わせてやりたい」と言ったら殴られたり・・・・嫌な思いもいっぱいしたけど、馬たちのためだと思ったら苦にはならなかったと言っていました。そんな中で、田舎で一番の大農家の主が「自分の祖父も父も馬で田畑を耕してここまでなった。 自分も含め、馬には三代の恩がある。 半端ものといわず甘いリンゴを持っていってやれ。 うまいリンゴ食わせてやれ。」と言ってくれたそうです。それは今までの人生で一番ありがたい言葉だった、今でも地主さんの言葉をそっくりそのまま思い出す、と言っていました。だけど、目の前にきれいなリンゴを見ると、馬と同じようにひもじい思いをしている他の人々のことが思い浮かび、どうしても手をつけられなかったそうです。大農家の主は「それならお前さんが食いなさい」と風呂敷に十個ほどの上等なリンゴを包んでくれたそうです。傷みかけているリンゴが本当に腐ってしまわないように、一睡もせずトラックを夜通し走らせて福島から厩舎へ。今のように高速も無い時代の話です。そうしてお爺さんが寝ずに持って帰った半分傷んだリンゴを、馬たちはそれはもうすごい勢いで実においしそうに食べて「うまい、うまい」という顔をしていたそうです。 なんと、馬たちの中には、生まれて初めてリンゴを食べた馬がほとんどだったそうです。そんな時代だったんですね。さぞかしおいしかったことでしょう。あんまり嬉しそうにリンゴを食べるの馬たちを見て・・・かえって不憫で可哀想で、お爺さんは思わず「すまない、すまない」とぼろぼろ泣いてしまったそうです。風呂敷包みのリンゴは、地主さんが自分のためとくれたリンゴ。義理堅く一口だけかじって、残りは全部馬たちにあげてしまいました。一口食べたリンゴは、それは夢のように甘くて、美味しくて・・・自分の馬たちにこんな美味しいリンゴをくださって・・・ありがたくって、ありがたくって・・・また涙が出てきて、思わず福島の方に手を合わせてしまったそうです。私が馬や競馬を好きになったのは、このお爺さんの影響が大です。他にも馬や牧場、競馬のいろんな話を聞きました。その中でもリンゴの話は私が子供のころ何度も聞かされましたが、その話をするとき、お爺さんはいつも目に涙浮かべていました。 まるで自分のせいで馬たちにひもじい思いさせてしまったみたいに。 きっと馬が大好きで厩務員をはじめたのに、どうしようもない、どうにもしてやれない酷な時代に生きなければならなかった。そう大人になった今想うと、お爺さんの切なさが少しだけ分かる気がします。 日本が復興し、リンゴが高級品でなくなってからも、お爺さんが決してリンゴを食べなかった理由も。お爺さんは十年ほど前に亡くなり、お爺さんの馬たちが走っていた足利競馬場も廃止されてなくなってしまいました。 きっと今は、世話した馬たちに「リンゴうまかったよ」ってお礼を言ってもらって、幸せだと思います。そんな辛い時代があったことと同時に、今の日本は競馬を娯楽として楽しめるほど幸福な国だということ、忘れたくないものです。かつて隆盛を誇った足利競馬場
2006/02/19
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都がヒューザーを刑事告発へ石原都知事の好き嫌いは別にして小嶋氏はやはり敵を誤りましたね。小嶋氏が違反を認知しつつ引き渡しを行ったのであれば、一連の逆ギレ訴訟は無効どころか逆に反撃をくらう爆弾になると前ブログに書きましたが、小国家・東京都はこんな訴訟を甘んじて受けるわけがないです。ヒューザーが訴訟を起こしたと同時に、強力な反撃措置を取るべく警察並の調査を行ったと聞いています。東京都の調査によると「小嶋氏は耐震強度に問題があることを知りながらマンション販売の指示を出した」ということでほぼ確定のようです。推測ですが調査の過程でヒューザーの社員からかなり信頼できる裏が取れたのでしょう。もっとも社員にしてみれば、敗色濃厚、先がない会社に嫌々協力するよりは、遵法精神を示して転職の口利きをしてもらうことが利益と考えて当然。穿った見方をすれば都が非公式に間接的に便宜を図ってくれる可能性もありますしね。そもそもあの社長に対して、末端の社員に愛社精神が芽生えるとも思えませんし。ともあれ、お役所が「告訴」をするっていうのは、勝ち戦だけなわけですから(ヘタな訴訟で税金を無駄遣いできないため)、これはほぼ勝負あったとみるのが妥当。おそらく今後は、同じくヒューザーから訴えられた横浜や千葉など、横のつながりが強い関東八都県市が総反撃に転じるでしょう。本件、東京都の告発が成立した段階で、小嶋氏は「詰み」と見ます。私利私欲のため、保身のため140億円もの税金を庶民から奪おうとした罪は大きいです。前にも述べたように、この悪質な行政訴訟、主張としていちおうスジは通ってますが、それはあくまで小嶋氏に悪質な違法行為がなかったら・・・の場合。容疑が確定したのであればトンデモ訴訟に一変です。そもそも原告適格の段階で裁判は停滞、そのうち司法の場で小嶋氏の容疑が確定し、140億の訴訟はパー。あとは悲惨な末路ですね。会社としての責任もさることながら、小嶋氏個人の責任も問われるわけですから、自己破産まで追い込みくらう可能性も高いと思います。犯罪を帳消しにするために血税140億を搾取しようとした。あってはならない前例として、判事にはこの前代未聞の悪質性を適当に評価していただきたいものです。
2006/02/17
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「ヒューザー小嶋社長が139億円求め全国の自治体を提訴」こんな記事がニュース番組を賑わしたのが4日前。中田横浜市長をはじめ、全国の首長が「逆ギレ」「盗人猛々しい」と不快感と憤りを隠さない。要は139億円もの税金を訴訟で勝ち取り、今回の不祥事の保障金にあてるプランだと思われている。・・・さて、こんなトンデモ提訴が果たして有効なのか?意外に思われるかもしれないが、ヒューザーがこうやって訴訟すること自体はそれほどトンデモとはいえないのだ。ヒューザー側の提訴内容をまとめるとこんなところである。1.ヒューザーが建築士に依頼してマンションの設計をさせた2.建築士の設計は建築基準法に違反する内容だった。(=耐震偽装)3.違反マンションを「知らずに」売ったため損害賠償を求められた。4.建築基準法に違反していることを見抜けなかった自治体が悪い。(=注意義務違反)5.金払え1、2は建築基準法違反としてはよくある事例である。問題は3、4である。そもそも「3.違反を知らなかった」の時点でおかしいのはだれでも気づく。ヒューザーは耐震偽装を知りつつマンションを販売したことが問題とされているのだから。ただ、これは現況では「疑い」にとどまる。ヒューザーは住民に会社側のミスを認めているが、その認め方はあくまで「ミスを見抜けないまま販売して申し訳ない」としている。小嶋社長は「違反については知らなかった」と言い訳している。だから、3については一応スジは通っている。んなわけねぇだろ!!というのが常識的な反応だろう。それはそのとおり。もし、知らなかったという発言がウソだと判明した場合は、まずヒューザーは提訴する資格がないとして「原告適格なし」となる。と同時に裁判所で原告として「知らなかった」とウソをついたとして「偽証罪(刑法169条)」が確定する。ほぼ同時にいま検察が捜査している耐震偽装を知りつつ、マンションを販売したという「詐欺罪(刑法246条)」もほぼ確定する。はたしてヒューザー・小嶋社長が「知らなかった」のは本当かウソか?が争点となる。「4.ちゃんと自治体が見抜いてくれなかったのが悪い」ヒューザー側はこれを「注意義務違反」だという。それで被害をこうむったのだから金を払って詫びろと。今回の事件の大きな問題点として、住み家の安全保障という重大な業務を役所ではなく民間が行っていたということがある。民間は営利のために業務を行うのだから、「安かろう悪かろう」はある意味当然だ。最悪、公共の福祉(住民の安全)のためではなく、金をくれる依頼主の利益のために働くという不法行為をやりかねない。そのため、建築基準法では3つの段階で行政が介入する。設計図のチェック(建築確認) 工事のやり方のチェック(中間検査) 出来上がりのチェック(完了検査)このうち、中間検査と完了検査は民間会社が「合格(不合格)でしたよ」と報告した結果を受けて対処する。つまり、合格、不合格は行政は判断しない。この時点では行政の注意義務そのものが発生しない。問題は最初の建築確認の段階だ。建築確認をした民間会社は「こんな確認をして合格にしました」と行政に報告する。ここで、行政はその内容をチェックし、合格にしてよいかを審査できる。「特定行政庁は、前項の規定による報告を受けた場合において、第1項の確認済証の交付を受けた建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは、当該建築物の建築主及び当該確認済証を交付した同項の規定による指定を受けた者にその旨を通知しなければならない。」ヒューザー側は「このときちゃんと不合格にしてくれたらウチは違法マンションを売らずにすんだのに!」というわけである。なるほど、ヒューザー側が違法を知らなかったというのなら、それはそれで言い分としては分からなくもない。確かに行政の不注意でヒューザーや住民が損害をこうむったといえる。では、これは「注意義務違反」に該当するか・・・ヒューザー・小嶋社長はもしかしたら注意義務違反の意味をカン違いしているんじゃないか?現在の「注意義務違反」の一般的解釈はこのようなものである。「何かしら悪いことが起こることをちゃんと知っていたのに、な~にも対処しなかったので被害が発生(または拡大)した。」つまり「不注意」のことではなく「非注意」のことなのだ。非注意という言葉が分かりにくかったら「放置」「無視」と考えてもらっていい。行政が違反を見落としたのはもしかすると「不注意」になるかもしれないが、違法と知りつつ「放置」や「無視」したわけではない。これでは注意義務違反は成立しない。ここで万一、注意義務違反が成立する可能性があるとすれば、不注意がよっぽどひどく非注意に近い場合だ。例えば、民間会社からの報告書をぜんぜん審査せず「はいOK!」と見過ごしたような場合。これはもはや不注意ではなく放置といえる。ただ、このタイプの注意義務違反を認めるのはかなり難しいだろう。行政というところはハンコ社会である。ヒラからトップまでずらりとハンコを押してはじめてOKとなる。営業許可など、いろんな許可証をもらうのに何日も待たされてイライラした人も多いだろう。「みんなでがんばって審査してたけど、残念ながら発見できませんでした」といわれればアウト。現在の建築基準法や行政システムの問題ということにはなるかもしれないが、ひどい不注意とまではいえない。注意義務違反は不成立。ヒューザーが原告不適格として門前払いされる程度ならまだかわいい。いや、まだそのほうがいい。裁判が進み注意義務違反が不成立になり、裁判費用が全額自己負担になるどころか、偽証罪や詐欺罪に問われたり、逆に反撃提訴を食らう可能性が極めて高い。そういう意味では、この勝ち目がゼロに近い提訴はやはりトンデモ提訴といえるのかもしれない。
2006/02/03
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