森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.01.30
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精神科医の高橋伸忠さんのお話です。
Kさんという50代の独身の女性がおられました。
3年ほど前から耳鳴りがひどくて、10か所以上の大学病院などで精密検査を受けられました。
どこに行っても「耳や脳にはまったく異常がない」といわれました。
でも本人はつらいのです。「耳鳴りは雪が降っても蝉が鳴く」というような苦しさがあるのです。
心理的な影響を疑った耳鼻科の医師が、精神科医の高橋さんを紹介したのだそうです。
心理療法のおかげで長い間治らなかった耳鳴りが、1週間前からすっかり解放されたそうです。

しかし耳鳴りが治った途端にその女性は自殺されたというのです。
普通に考えると耳鳴りが無くなったのだから、自由に生活を楽しむことが出来そうな気がします。


ひょっとしたら耳鳴りはなくならないかもしれない。
一生耳鳴りを抱えて生きていくなんて耐えられない。と思っておられたかもしれません。
ところが心理療法のおかげで、思いもかけないことに完治してしまったのです。
すると途端に生きる目標を失ってしまったのです。
これは森田で言う手段の自己目的化が起きていたのです。

神経症に陥っている人も同じようなことが言えます。
私は対人恐怖でしたが、苦しんでいる時はとてもつらいものです。
なんとか取り除きたいと思うのは当然のことです。
そしてそれだけにとらわれて30年も40年も苦しんできたのです。
それだけに注意を集中させて、精神交互作用でどんどん増悪させてきたのです。

今は森田理論学習のおかげで、そのからくりと進むべき方向が分かります。

そして行動実践する中で見つけた、課題や夢や目標に向かって努力していくこと。
人生においては症状をなくすることに集中していくよりも、その方がはるかに意義があるということでした。

症状を抱えたままその方に舵を切っていくことができるようになると、一つの能力を身につけたということです。
その能力はプロスポーツで注目される人と同じように、素晴らしい特殊技能の持ち主として人の役に立つ仕事ができます。
今神経症で苦しんでいる人はその能力を身につけるようになるとよいのです。


気になる症状があったら、早めに医師の診断を受けることはごく当然なことです。
しかし、複数の医師から異常なしと言われたら、それ以上こだわらないことが大切である。
現代は「一病息災」ではなく、「二病息災」、「三病息災」の時代です。
いくつもの病気を抱えながらも、前を向いて、人の役に立つ生き方をしてゆきたいものです。
(幸せの見つけ方 高橋伸忠 PHP 175ページ参照)





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Last updated  2015.01.30 06:32:33
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通りすがり@ Re:阿久悠さんが「ジョニーへの伝言」に託した思いとは(03/06) この曲の歌詞の意味がわからなくて検索し…
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