森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.10.25
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神経症のために会社に出社できなくなっている人がいる。
そういう方が、藁にもすがるような気持ちで集談会に参加される。
そして出社できない状況と葛藤や苦悩について話される。

・出かけようとすると頭やお腹が痛くなる。
・威圧的な上司がいて、職場に行けない。
・自分の得意先や他部署の人との折り合いが悪い。
・同僚との人間関係がうまくいかない。
・ある特定の女性社員あるいは男性社員とギクシャクしている。
・自分の能力以上の仕事を与えられてパニックになっている。

現在はイライラして精神的に落ち込んでいる。
仕事を辞めたい、楽になりたい、休職したい、転職したいなどと話しされる。

そんな人に対してどんな対応をされているだろうか。
「それは大変な状況ですね。同情します」などと、共感されると思います。
問題はその次にあると思います。
「そんなに苦しいのならリタイヤした方がいいかもしれませんね。過労死でもすればもともこうもありませんからね」などと、もうこれ以上苦しまなくてもいいと助言する人もいます。
あるいは反対によくありがちなのは、 「でも、現在の会社を辞めて、どこの会社に転職しても同じようなものですよ。会社に出社していれば給料や賞与がもらえる。社会保険も完備しているじゃないですか。絶対に辞めてはダメだと思う。第一生活ができなくなるじゃないですか。この先家族はどうやって養うつもりなの」などとアドバイスします。

これらは極端な例かもしれませんが、相手が自分の気持ちを十分に吐き出す前に、すぐに森田的なアドバイスをするというケースはよくあります。
でも、そのようなアドバイスが相手にとってどのような意味があるのか考えてみることが大切だと思います。
会社に出社できなくなった人は、精神科にかかり、産業医に診てもらい、カウンセリングなども受けている人もいます。その一環として、集談会にも参加されているのである。
その人は、まず自分の苦しい胸の内を聞いてもらいたい、吐き出したいという気持ちだと思う。

その先に適切なアドバイスでもいただけたら望外の喜びである。
第1次的には、アドバイスよりも自分の話を聞いてもらいたいのである。

そんなときに、相手の話を少しだけ聞いただけで、様々なアドバイスをされると相手はどんな気持ちになるのか。多分、この人たちは私の気持ちなどはわかろうとしてくれていない。
話した事は無意味だった。来なければよかった。
表立って反発はしないかもしれないが、心の中ではさらに大きな傷を負わされたような気分になる。


では、相手を受容するとはどういうことか。
この人は、 「今の状況がとても過酷なので会社に出ることが困難だ」 「でも、会社を辞めると食べていくことができなくなる」この2つの相反する気持ちの中で大きく揺れ動いているのだと思う。
どちらかにすっぱりと割り切ることができない。
森田理論でいう精神拮抗作用のはざまで葛藤しているのだ。

この2つの気持ちを分かって察してあげることが大事だと思う。
両方の気持ちが分かると、 安易に「会社を辞めないで頑張りなさい」とも「もうこれ以上頑張らなくてもいいのではないか」とも言えなくなってしまう。
その状態はどっちつかずで実に居心地が悪いのは確かだ。
特に集談会に参加する先輩方は、森田理論を後ろ盾にして適切なアドバイスをしたいという気持ちが強いので、つい一言アドバイスしてしまう。特に先輩会員に多い傾向がある。
それが森田理論の魅力がわからず、 1回参加しただけでもう二度と集談会に寄りつかない原因になっているとしたらとても残念なことだ。

相手は揺れ動く2つの気持ちをわかってもらうと、自分の葛藤しあう両方の気持ちが丸ごと受け入れられたという気持ちになって安心します。精神的にとても楽になると思う。
本当の受容とは、相手の相反する2つの気持ちをくみとってあげて、両方の気持ちを受け入れてあげることだ。
そういう気持ちがあれば、実際には相手のことをじっと見守ってあげるだけということになってしまうかもしれない。実はそういう態度が受容の一般的な姿なのだ。
結局はそういう人がしっかりと心の後ろ盾になって、相手が自分の問題を自分で解決して、乗り越えていく道を自ら見つけ出す方向につながるものだと思う。
アドバイスしたくなったときには、「相手に十分に話してもらっただろうか。相手の相反する2つの気持ちを理解しているだろうか」と自分に問いかけてみる必要がある。
それがまわりまわって、自分が自分自身に対して、拙速に「かくあるべし」を自分自身に押し付けなくなるのだ。





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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
stst@ Re:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、こんばんは。 過去に何度かコ…
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