石川選手は世界ランキング4位である。
しかし、 2017年1月日本選手権で高校生の平野美宇選手に負けた。
これは球がセルロイドからプラスチックに変更になったことが大きく影響していた。
セルロイドは1秒間に122回転する。プラスチックは115回転である。
その差はわずか7回転であるが、この差が選手生命を脅かすという。
石川選手のプレースタイルは、球に回転をかけることと、強力なフォアドライブを打ち込むことだった。フォアドライブとは、球に上回転を与えて、ボールが弧を描いて急速に沈み込む打法である。
球の素材が変わり、回転数が7回転落ちたことによって、球の威力が弱くなっていったという。
それまでは、相手選手は球の大きな変化をある程度見極めてから打ち返していた。
ところが、球の変化が少ないために、球が落ち込む前に球をとらえて強力に撃ち返すようになったのだ。
10代の力のある選手は、最初からプラスチックの球になじんでおり、回転がかからない球を、落ちる前にとらえて、素早く強力に撃ち返すという高速卓球になっているのである。
石川選手は小さい頃から変化の激しいセルロイドの球になじんでいた。
それで世界ランク4位にまで上りつめていたのである。
そのプレースタイルを変えていくということは大変難しい。
あるベテラン選手は今までの常識が通用しないといって引退を余儀なくされていた。
なにしろ球の軌道が今までと全く違うので、疑心暗鬼に陥り自信がなくなったのだ。
石川選手は負けず嫌いを絵にかいたような人である。
東京オリンピックで中国選手に勝ってメダルをとりたいという大きな目標があった。
そこで、石川選手がとった対応策は、今までのプレースタイルを変更することだった。
プラスチックの球に対応した自分のプレースタイルを新たに確立することだった。
つまり、今までの栄光を捨てて、 一から卓球に取り組むことだった。
卓球の選手は練習方法や用具については強いこだわりを持っている。
しかし、それでは勝てなくなっている。そこで今までの練習方法や用具を大きく変更していった。
今まで4年間変えることのなかったラケットは、より遠いところに球を飛ばせるものに変えた。
最初は卓球台を飛び出す球が多かった。それでも粘り強く取り組みなんとかものにしていた。
プレースタイルでは、より強く、より素早く、より厳しいコースをねらう練習に切り替えた。
つまり球に回転を加える、強力なフォアドライブを打ち込むスタイルを封印して、プレースタイルを変えた。そのために今まではあまり取り込まなかった筋力強化や俊敏性の運動等にも積極的に取り組んでいった。
石川選手は、格下の選手に負けると、すぐに世代交代だとか言われるという。
実際変化に対応しないと勝てない。変わることは強さになる。自分は変われると信じる。
一旦栄光をつかんだ人は、それを捨てて新しい道に挑戦することは大変難しい。
それなのに、石川選手は、東京オリンピックでメタルを獲得するという目標に向かって、過去の栄光を捨てて、プラスチックの球に対応できるように自分を変える道を選択した。
成果は現れ始めている。今後に期待したい。
森田理論でも、自分の周囲の状況をよく見て、周囲の状況の変化に対応していくということ重視している。そこには「かくあるべし」が入り込む余地はない。
「種の起源」を著し、進化論で有名なダーウィンは次のように言っている。
「この世に生き残るものは、最も力の強いものか。そうではない。では最も頭のいいものか。そうでもない。最後に生き残る者は、 時代の変化に対応してきた生き物だ
。そうした生き物が今現在生き残っているのだ」
変化に対応しようとすると、いかに栄光の過去を持っていようとも、もはやそれにこだわっていてはいけない。
われわれで言えば、 「かくあるべし」 にとりつかれて、現実を否定していれば、真っ先に淘汰されてしまう運命にあることを忘れてはならない。
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