森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.12.30
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「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」夏目漱石の「草枕」の冒頭である。
小説家というのは実にうまい表現をするものである。
ところで、夏目漱石は精神性の胃炎で49歳という若さで亡くなっている。
相当なストレスを抱えていたと思われる。

これは、一般的には「知情意」ということで説明される部分である。
今日は森田理論をもとにして、「知情意」の意味するところを考えてみたい。

「知」とは、事実に基づかないで、頭で考えたことである。知識、智恵という人もいる。
今までの人生の中で自然に身に着けて来た、思想、価値観、理想、かくあるべしを持ち出して、問題点を抽出し、現実をより良い方向に改善していこうという態度のことである。
人間には高度に大脳が発達しており、分析力、理解力、論理性、創造性に優れている。

人類の文化、文明が発達してきたのは、「知」「智」の部分のおかげである。
しかしこれが暴走すると、究極的には人類の滅亡につながる可能性も生じる。

「情」というのは、自然に湧き上がってくる感情のことです。
自然現象であり、もともと人間の自由はありません。
これは森田理論の感情の法則で学んでいます。
感情には不安などの不快の感情と感動などの快の感情の両方があります。
感情はコントロール可能であり、人間の意思の力で制御することが可能であると誤解している人が多いようです。これは認識の誤りであり、神経症の原因となります。
「情」という言葉は、同情、共感、人情という使い方もあります。
感情には家族や相手、他国のことを思いやり、自己中心が暴走するのを抑制している面もあります。人情などが自然発動しないと人間同士がすぐに対立関係になります。

「意」というのは、やる気、情熱、意欲のことです。行動力のことです。
困難や目の前に立ちはだかる壁を乗り越えて、問題点や課題、目標や夢を達成しようとする意思のことです。これはいきなり持てるものではありません。


森田理論を学習すると、「知情意」というのは、優先順位が問題になると思うようになりました。「知」が「情」の前に取り上げられることに違和感があるのです。
私は、「情」あって、次に「知」を活用していくことが大切だと考えています。
この関係を説明しましょう。

前提として事実を踏まえない観念優先の態度は問題を引き起こすと考えています。
どんな場合でも、事実を前提として「感情」から出発する必要があると思います。

事実が見えてくると、自然に「感情」が動き出してきます。
気づきや発見、問題や課題、興味や関心が生まれてきます。

この段階を過ぎた後で、大脳の前頭前野の出番がやってきます。
事実をあらゆる角度から分析し、問題解決や目標の達成に向けてどう行動すればよいのか試行錯誤を始めます。つまりこの段階で、「知識」「智恵」が大いに役立つことになります。
その蓄積が大きくて多いほど的確な判断が下せるようになります。

ここまでくれば、やる気や意欲も同時に高まっています。
しかし意欲を持って行動しても、ミスや失敗、障害や壁にぶつかって跳ね返されてしまいます。
それはうまくいくかどうかが全く読めない仮説に取り組んでいるわけですから、当然のことです。ミスや失敗の体験を積み重ねていくことが、成功への唯一の近道であると信じて、粘り強く挑戦していく態度か重要になります。

こうしてみると、「知情意」というのは、「情知意」という順序に変更しないといけないのではないでしょうか。まずは徹底した事実確認を行う。次にさまざまな感情が湧きおこる。
それを多方面から理知で調整していく。最終的に一つの行動を選び、執着性を発揮して目標に近づく。森田先生も感じから出発して理知で調整するのが順序であると指摘されています。





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Last updated  2020.12.30 06:20:05
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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