森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.01.28
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森田先生のお話です。

剣道に限らず、なんでも勝負事は、相手の強い事を知って、これに負けないようにしようとすると、自分を防ぐ方の事ばかりを考えて、いたずらに委縮するばかりで、わかりきった相手の虚があっても、その方には少しも気がつかないで、負けるよりほかに道はなくなる。

これに反して、相手が弱いという事を知った時は、軽蔑心が起こって、相手の虚ばかりねらって、隙間のないところまで、無理押しをしようとして、しかも自分の虚には、見えすいた事までも気がつかないで、全く馬鹿げた不覚を取る事が多い。
(森田全集 第5巻 607ページより引用)

勝負事において、相手が自分よりも強いと判断すると、しっぽを巻いてすぐに逃げ出してしまうという傾向があるといわれている。
勝負をするという気持ちが萎えてしまって、ぶざまな負け方はなんとか避けたい。
逃げ回ってなんとか引き分け程度に打ち込めば十分だという考え方である。
そういう気持ちだと、本来の目的を忘れて防戦一方になる。専守防衛に片寄る。
防戦の方法は思いつくが、対手にどうすれば勝つことができるかについての考えは全く蚊帳の外となる。


精神交互作用によって神経症の固着に向かって突き進んでいるような状態です。
観念と行動の悪循環をおびき寄せています。

このような悪循環に陥らないためには、いくら精神的に苦しくても、日常生活、仕事、勉強、子育て、必要最低限の人間関係を維持していくことが大切になります。
自己防衛、専守防衛に、あまりにも偏り過ぎているということが一番の問題です。

剣道でいえば、対戦相手から逃げ回っているだけの姿を見せつけられた観客はがっかりします。
それは目の前の困難に対して、果敢に挑戦していく態度を放棄しているのを許せないからです。
そういう人はそのほかの人生の問題に対しても、逃げることばかり考えているのではないか。
そんな生き方は、人間本来の生き方とは違うでしょうと、その人の人間性を問題視しているのだと思います。

一方相手が自分よりも弱いと判断すれば、勝負に勝つという工夫を怠るようになる。
精神が弛緩状態に陥り、とにかくイケイケどんどんの状態で勝負を急ぐ。
ところが相手が切羽詰まったときに、奇襲作戦を仕掛けてくると、思わず不覚を取る事が起きる。この場合は、事前の勝負に対する作戦というものが希薄であるというのが問題になります。精神の緊張感が薄く、自己内省力が全くないという状態です。


気が付いたら負けていた。こんなことは認められない。
でも、もうすでに勝負が終わっていて、後の祭りということになります。

これらの事例から学ぶことは、自己防衛に偏り過ぎても、攻撃一辺倒に偏り過ぎても結果はよくないということです。
森田理論は、バランスや調和の維持を目指しているといわれます。
サーカスの綱渡りでいえば、長い物干し竿のようなもので、絶えずバランスを維持しようとしている。そのバランスのとり方が絶妙なために落下して大けがをすることがない。


生の欲望の発揮、事実唯真という考え方とともに、このバランスの維持という考え方を身につけましょうというのが森田の思想なのです。
具体的には精神拮抗作用、心身一元論、欲望と不安の単元などで深耕してしていきましょうということになります。





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Last updated  2021.01.28 06:20:04
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
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軸受国富論@ Re:森田の正道を歩むとはどういうことか(06/05) かの有名なドクターDXの理論ですね。ほか…

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