森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.10.27
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今日は森田療法、森田理論学習の歩みを振り返ってみたい。

森田療法は、森田先生がさまざまな療法を検証した結果生まれたものとされている。
決して突然思いついて確立したものではない。
少なくとも20年くらいの試行錯誤の期間を経ている。
確立したのは1919年(大正8年)と言われている。森田先生45歳の時である。
その理論は「神経質の本態と療法」にまとめ上げられている。

1929年(昭和4年)12月1日から形外会を開催されている。
その後、1937年(昭和12)4月25日まで、8年間66回開催されている。
森田先生のところに入院していた人たちが、直接森田先生から森田人間学をより深く学ぶ勉強会であった。その様子は1930年(昭和5年)から「神経質」という雑誌に掲載された。

森田療法が広く知られるきっかけとしては、倉田百三氏の「絶対的生活」と「神経質者の天国」という書籍が大きな役割を果たしている。
森田先生は1938年(昭和13年)4月に64歳で亡くなられた。
森田療法は、高良武久、古閑義之、野村章恒、竹山恒寿、鈴木知準、宇佐玄雄氏などの優れた後継者を輩出している。
森田療法が確立して、森田先生が主導的な役割を果たされた期間は、約19年ということになる。

戦後、森田療法の普及に尽力された人は、水谷啓二先生である。
1957年(昭和32年)10月に「生活の発見」誌の発行を始められた。
森田先生が亡くなられてから19年後のことである。
1960年(昭和35年)から、啓心会を開催されている。
これは森田先生の、形外会に該当する。
1961年(昭和36年)には、医師を招いて啓心会診療所を開設された。
「生活の発見誌」は、1968年(昭和43年)100号の節目を迎えた。

1970年(昭和45年)3月のことである。58歳の若さであった。
水谷先生としてはやり残したことがたくさんあり、さぞかし無念であったことだろう。
水谷先生が、主導的役割を果たされた期間は、約13年であった。

主を失って途方に暮れたが、長谷川洋三氏と斎藤光人氏が再建に乗り出した。
1970年(昭和45年)5月には新生「生活の発見会」が発足した。

医療行為は協力医にお願いする。神経症で悩んでいる人が各地の集談会に集まり、森田理論の相互学習と情報交換を行うことにした。
集談会の全国展開はお二人の尽力により予想以上に早く完成した。
そのほか合宿学習会にも取り組んだ。
現在の基準型学習会、オンライン学習会の源流となるものである。
時あたかも高度経済成長期で、時流に乗り会員は7000名近くまでに急拡大した。
拡大に寄与したのは、1972年(昭和47年)1月の朝日新聞の日曜版に生活の発見会の紹介記事が掲載されたことである。そのほか特質すべき点を挙げておく。
1974年(昭和49年) 白揚社から、「森田正馬全集」が発刊された。
1983年(昭和58年) 森田療法学会が発足している。
1988年(昭和63年) メンタルヘルス岡本記念財団が発足している。
1998年(平成10年) 生活の発見会は、第50回保健文化賞を受賞している。

生活の発見会の会員は、1993年をピークにして、それ以降減少に転じている。
新生「生活の発見会」が、活気があった期間は約30年間といえるのではなかろうか。
会員が減少に転じてから、すでに28年が経過している。
現在の会員数は2000人を割り込んでいる。

この原因はさまざまな点から分析しているが、ここでは一つだけ取り上げてみたい。
日本経済は、バブルがはじけて、デフレ経済に陥り、いまだ回復のめどが立っていない事である。つまり、国民の生活がどんどん苦しくなっているという現実である。
森田理論が活況を呈していた時代は、これからの新しい時代を模索して、高度経済成長期であったということです。1億総中流家庭と言われていたころに、集談会が活況を呈していた。
今は生活が苦しい。雇用が安定しない。子どもが作れない。生きることで精一杯という時代になった。これは、国民の生活をないがしろにしている政治の責任である。
それなら、政治家に猛省を促す活動をしているかというと、政治には無関心という人が多い。
無気力、無関心、無感動の生活の中で、毎日汲々として生きている人が多くなるにつれて、森田に関わる人は激減しているのである。

しかし、森田理論を人生哲学としてとらえ、生きる支えにしている人が少なからず存在している。この人たちは、過去に森田療法やその理論に恩恵を受けた経験のある人たちです。
50代前までの若い人たちにとっては、森田理論は無用の長物となっている。
ですから、このまま世代交代を迎えると、森田療法はその役割を終えてしまうという可能性が高くなります。

また一方で、神経症治療としての入院療法はほぼその姿を消した。
現在は外来森田療法が中心である。
というよりも、現在の神経症治療は、薬物療法、認知行動療法をはじめとした他の精神療法、カウンセリングに軸足を移している。

この歴史を否定的に捉えるのではなく、事実をありのままに捉えることで、次の課題が見えてくると思っている。森田理論には人類の普遍的な人生哲学がちりばめられており、これを人類が活用しない手はないと考えています。むしろ森田理論を学び、活用していかないと人類そのものが滅んでしまうというリスクを抱えている。これについては、明日の投稿としたい。





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Last updated  2021.11.14 08:04:09
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