森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.10.28
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昨日の続きです。

新生「生活の発見会」が、神経症治療に医療行為を行わないとしたのは、今考えると当たり前のことですが、それまでの経過を考えると画期的なことです。
森田先生も水谷先生も、神経症でのたうち回っている人に対して、医師の存在がありました。
それまでは、神経症からの解放は医療分野の介入が不可欠という暗黙の了解がありました。

そのような状況で、新生「生活の発見会」が集談会活動の中で、精神科医の主導のもとで神経症を治すという活動は行わないと高らかに宣言したということなのです。ここが画期的なのです。
この選択には様々な確執がありましたが、何とか乗り越えてきました。
つまりこの会は、学習運動に徹した活動を行う団体であると明記したのです。
神経症を克服した人は、自分が神経症を克服したという成功体験を持っているために、精神科医に成り代わってそのコツを教えたくなるものなのです。
それは会の性質上やむをえないことですが、それが唯一最大の目的ではないということです。

それでは、新生「生活の発見会」は何を目的としていたのか。

その前に、森田先生は、神経症は器質的な病気ではないと言われています。
うつ病、統合失調症、双極性障害などの精神疾患とは違うという考えです。
しかし、神経症は器質的な病気以上に、重篤な精神疾患のように見えます。
そのからくりと治し方をよく分かっている医師が、森田の入院療法によって、40日間という短期間で完治させるという治療だったのです。

新生「生活の発見会」では、重篤な神経症の方は協力医を紹介する方法を選択しました。
精神科医は、薬物療法や森田療法を組み合わせて、社会復帰させるまでは責任を持つ。
その段階で神経症の治療は終了となります。

しかし、仮に退院できても、再発の心配があります。
また神経質特有の生きづらさが解消できたわけではありません。
依然としていばらの道が待ち構えているわけです。


神経症を抱えながら、なんとか仕事や勉強をしている。
苦しみながらも家事・育児・介護をしている人を対象にしていました。
神経症的な葛藤や苦悩を抱えながら、日常生活を何とか維持している人を受けいれていたのです。

そういう人たちが「生活の発見会」という自助組織を作り、情報交換をして助け合い、森田理論学習によって、神経質性格者としての生き方を身に着け、二度と神経症で苦しまないようにする。つまり再発防止と森田的人生観の獲得を目指していたのです。
「生活の発見会」は、このような方向性、目的を持って活動している団体です。


それをすると医療と競合しますし、医療と同じ土俵で勝負してみようと思った時点で負けが決まったようなものです。精神科医のご努力を軽視することになります。
精神科医とは役割の棲み分けを明確にして、協力し合う関係が望ましい。

森田理論学習の場を、神経症を克服するという目的にすり替えてしまうことは大きな問題です。
自分の成功体験を後輩たちに語り部となって教えてあげることは構いません。
そういう活動は必要です。
問題は、森田理論学習を、神経症の治療のための最大で唯一の目的にしてしまうことです。

森田理論学習は、再発防止と神経質性格者の人生観確立が最大の目的となります。
そういう視点で森田理論を見渡すと視界が大きく広がります。
人間の生き方、性格や感情についての考え方、人間の幸福とは何か、生の欲望についての考え方、観念と事実の関係、事実本位の考え方、人間関係の持ち方、不安、恐怖、不快の持つ役割、不安と欲望の関係、変化に対応する考え方、物の性を尽くすという考え方、調和やバランスの考え方、主体的な生き方、社会の中で人間の果たすべき役割、教育や子育て、欲望の暴走社会の修正、歴史の検証、自然との共生、政治・経済・金融へのかかわり方などすべての分野にわたり問題解決のヒントを与えてくれています。

神経症治療としての森田理論の学習は、これらの課題の一分野と考えるべき時です。
そこに限定して森田理論を扱うということは、大きな問題だと思います。
自助組織による森田理論学習は、神経症の治療から始まりましたが、そこに留まってしまうと自ら自滅してしまうかもしれません。
森田理論は優れた内容を内在しているにも関わらず、それを放置することはとても残念なことです。森田理論の秘めた素晴らしい内容に沿って、成長発展させることが大事です。
この方向は森田先生、水谷先生、長谷川先生方が望まれている道だと思います。
この方面は、人類史の今後を大きく左右するものだと考えています。
人類が真剣に森田理論を学ぶ時代がやってきているということです。
森田理論学習の役割と使命を再確認したとき、今後の森田理論学習の活躍の場は大きく広がってくるように考えています。





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Last updated  2021.10.28 06:29:48
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
stst@ Re:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、こんばんは。 過去に何度かコ…
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