森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2022.03.26
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森田理論には「生の欲望」というのがあります。
欲望というのは暴走しやすいので、「欲求」という人もいます。
今日のテーマは、欲望や欲求が脳の中でどのようにして生まれるのか。
そして欲望や欲求とどのように付き合うべきなのかです。

欲望には 生理的・現実的な欲望 観念的な欲望 があります。

まず生理的・現実的な欲望とは何か。
おなかがすいたので何か食べたい。喉が渇いたので水を飲みたい。

暑いので体温を下げたい。寒いので温まりたいなど。

この中から「食べたい」という欲求はどのようにして生まれるのか。
人間には不足すれば元に戻そうという仕組みが備わっています。
このことを恒常性維持(ホメオスタシス)と言います。
栄養不足になれば食べ物を摂取して解消しようとしているのです。
多すぎる場合は、抑制して元に戻そうとしているのです。
恒常性維持機能はバランスの維持ということになります。
バランスの維持は森田理論の大きなテーマとなっています。

人間の活動源は糖分です。脳のエネルギー源も糖分です。
糖の原料となる炭水化物の摂取はとても重要です。
血液中のグルコース(糖分)の濃度が一定に保たれているかどうかは生死にかかわります。ですから人間には血糖値を24時間休みなく監視するシステムが備わっています。生存脳と言われる「視床下部」で監視してコントロールされているのです。

ここにはグルコース感受性ニューロンとグルコース受容ニューロンがあります。
血糖値が下がれば、血糖値を上げるために食欲を出すように指令を出しています。
逆に血糖値が上がれば、血糖値を制御するために、食事を制限しようとします。
サーカスの綱渡りのように微妙なバランスをとりながら生活しているのです。
人間の食欲という欲求は、視床下部で生み出されていると言っても過言ではありません。欲望というのは脳のシステムとして生み出されていると理解した方がよいようです。これは他の生理的欲求についても同様です。


これは三重野悌次郎氏が分かりやすく説明されています。
観念的な欲望は人間が言葉を操るようになって出てきた欲望です。
ですから人間に固有なもので、動物にはありません。

生理的・現実的な欲望は目標を達成すればすぐに消えます。
だが観念的な欲望はそうはいきません。
自分は腹いっぱいでも、人がうまそうな果物を食べていればそれを欲しいと思います。観念的な欲望は真に充足することがありません。
仏教で餓鬼(がき)というのは、食っても食っても満腹することがなく、常に飢渇に苦しむそうですが、観念のとりこになった人間を象徴しているようです。

動物はグルコースの濃度が元に戻れば、それ以上に食べようとはしません。
ところが人間の場合は違います。「観念的な欲望」があるからです。
観念的な欲望は、意識しないと、恒常性維持という心身の仕組みを無視して、利己的、攻撃的、暴走しやすいという特徴があります。
欲望が暴走するととても厄介なことになります。

食べ物でいうと、これは絶品だと思うと、生理的には十分に間に合っているのに、いつまでも食べてしまう。飽食三昧ということになります。
食べ過ぎは体重が増加することになります。
血糖値が高いと血管を詰まらせ、内臓を痛めます。

特に飽食三昧で急激に血糖値を上昇させることの弊害は大きい。
血糖値が上昇し過ぎるとインスリンの力で抑えにかかります。
それが急激に行われると、今度は一時的に低血糖を招くことになります。
高血糖と低血糖が大きな大波となって身体を襲います。
最後に調整がきかなくなって糖尿病にかかります。
深刻化すると内臓の障害を招いて人工透析するようにもなります。

観念的欲望は、私たちの生活を豊かにし便利にしてきました。
人間の文明や文化はこの観念的な欲望によって発達したとも言えます。
しかしその反面で観念的な欲望が暴走して、争いや競争の絶えない人間関係や不平等で生きづらい社会を作り出してきました。
しかし観念的欲望持つようになった人間は、その進化に逆行して言葉のない世界に戻ることはできません。

現代人がバランスを維持するためには、暴走する欲望を意識して止めるしかありません。欲望は生理的・現実的な欲望を第一優先順位とする。
観念的な欲望は第二優先順位として、それが暴走しないように絶えず意識して自制する。むしろ抑制的で謙虚な姿勢が人類に求められているのだと思います。

森田を勉強した今では「少欲知足」「吾唯足知」「地産地消」「自給自足」「ないものねだりをしないで現在持っているものやあるものを活かす」という考え方になってきました。
この方針で今後も生きていきたいと思っております。

2つの欲望については、「森田理論という人間学」(三重野悌次郎 白揚社 128~137ページ)に詳しく書いてあります。
その他欲望を抑える生き方として、良寛、老子、加島祥造、中野孝次、井形慶子さんの図書が参考になりますので推薦いたします。





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Last updated  2022.03.27 06:31:41
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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