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タケシのTVタックルで島田洋子先生にやりこめられていた嵐山光三郎は実は辣腕編集者であったことは知る人ぞ知ることだが、そんな嵐山の「昭和出版残侠伝」読了。80年代初頭、名門出版社平凡社で「太陽」編集で一世を風靡した嵐山も、平凡社の倒産にともない希望退職。ババボスら仲間と七人で「青人社」を設立。退職から新会社の設立、そして、軌道に乗るまでの疾風怒濤の時代が、さまざまな文化人、作家、芸能人らのエピソードを交えて彩り豊かに語られる。怪しげなテレビタレントと見られがちな嵐山だが、編集者としても才能があるいっぽう、作家、エッセイスト、俳人としても才能を発揮するマルチな才人であるが、そうした、才能が開花する基本がこの時代のさまざまな人々との出会いにあったのではないかと感じさせる。筆者以外にも、糸井重里・椎名誠の若き頃の姿や世に出るときの勢いなども語られ、昭和時代の熱さが伝わってくる。文人たちのエピソード満載の「文人悪食」とともに、文学や出版に興味のある人にお勧め。
2006年11月27日
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乃南アサの「風の墓碑銘」読了。 「凍える牙」で登場した、バイクを颯爽と乗りこなす女刑事音道貴子ももう既に30半ば。機動捜査からもはずれ下町の所轄の刑事として、地道な活動を続けていたが、3体の白骨発見事件に関わったことから捜査本部へ出向。かつての相方滝沢とのコンビも復活。男性権威主義、セクハラの権化のような滝沢と女刑事音道のいがみ合いコンビが事件解決に向けて動き出す。著者の特徴である、緻密なストーリー展開と、大きな事件に小さな事件を絡めながら、最後にはそれが一つの大きな流れへとまとまっていく見事なストーリーてーリングには脱帽。登場人物が歳を重ねた分、作品全体に落ち着きも出たし、歳を取ることの悲哀も良さも丁寧に描かれます。ミステリーとしての謎解きの興味ももちろん、丁寧に描かれる心理描写や人間描写が陰惨な事件から救ってくれます。秋の夜長に是非。もう一冊はノンフィクションで「指紋の神様の事件簿」警視庁で長年指紋識別の第一人者として活躍してきた筆者が、指紋鑑別の歴史から、指紋について、さらに指紋の可能性についてまで、語ります。指紋が同一の人物はいないことや、それが犯罪捜査に使われていることはもちろん知っていたが、この本を読んで、実は指紋について何も知らなかったことが解りました。読み物としてもとても面白かった。
2006年11月25日
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上野鈴本22日昼席行ってきました。いつも通り、御徒町から歩いていくと、ビル前の歩道に老人の一団が並んでいる。団体さんの入場待ちです。11時40分だというのに、テケツ(切符売り場)の前にもお年寄りが5人ほど。落語ブームも本物か。入場後いつもの二列目ろの6番を首尾良くゲット。個人の落語好きの他に、カップル・友人同士・会社の仲間といったいかにも寄席は初めてといった人が一杯。以前の昼席の平均客数25人を大きく上回るのは、こうした初見の客だと思う。落語や寄席が活性化するには、こうした初めての客を常連にする力量が噺家にあるかどうか。本日のお手並み拝見。名人三木助の孫 三木男が二つ目披露でご挨拶。二つ目ながらしっかりとした高座をつとめます。初めてのお客が多いせいか太神楽も大受け。鏡社中も気持ちよさそう。正朝 遊平・かほり さん喬 といったベテランがそれぞれに持ち味を生かして、客席を引きつけます。ニューマリオネット(ニューが恥ずかしくなるほど伝統的な糸操り人形)の名人芸。これも滅多にテレビでは見られない芸のせいか、おばさんたちに大受け。本日のお楽しみ歌之介が登場。テレビではおなじみではないが、寄席では「平成の爆笑王」の異名を取る名物男。あっという間に客をつかみ、どっかん、どっかん沸かせます。良く聞くとつまんないだじゃれの連発なんだけど、この師匠がやると涙が出るほど笑えるんです。中入り後の食いつきには紙切りの正楽師匠。いつものように名人芸の披露です。「土俵入り」のお題でハプニングが、切り上がった作品を二人のおっさんが「俺のもんだ」と取り合い。あまりの大人げなさに客席がしらけそうになった所師匠がすかさず「もう一枚切りますから。」寄席に来てまでもめないで欲しい。ここからは代演が続き白鳥が「戦えおばさん部隊」で新作落語の魅力を発揮。客席も大受け。雲助師匠の後を受けて膝代わりは粋曲の紫文(しもん)師匠の登場。この師匠も三味線一本で鬼平犯科帳なる粋な語り芸をするんですが、寄席でしか見られない芸人さんなので、客席はほとんど? ざわついている客席を最後にはしっかりつかんで大きな拍手で退場。師匠さすがです。トリは三平一門の林家しん平。右足の骨にヒビが入っているため釈台を前に置いての登場。落語協会メルマガでしん平漫談の集大成を見せますという宣言のとおり、縦横無尽の漫談で客席大爆笑。最後は名物「骸骨かっぽれ」をけがを押して熱演。今日の番組はよく練られていて満足でした。初めてのお客さんも「また、こよう」と思ったことでしょう。ひとつ気がかりなのは23日休日の代演の多さ。休日だから美味しい仕事が多いんでしょうが、いくら何でもというくらい出演者の交代があるのは寄席のためにはならないと思うが。
2006年11月23日
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若年性アルツハイマーにかかったサラリーマンの記憶をなくしていく恐怖と、それを支えようとする妻の愛情と夫婦の苦悩を描き、映画でも評判になった「明日の記憶」の萩原浩の新刊「押入のちよ」読了。基本的に幽霊や化け猫のでてくる短編連作であるが、決してホラーやスプラッターではない、読む者の心の深い部分に触れてくる、怪談集。基本的に幽霊たちも、心優しく、残された生きる者たちのことを思いやり、そして、それに触れた生きる者たちが救われる話が中心。もちろんそれだけでは、いい人ばかりの話で、作品が単調になるところに、化け猫話や、復讐譚を挟み込み、ぞくぞくさせる構成はさすがです。「明日の記憶」が一読本を置くことができなかったように、本書も読み出したらやめられません。是非、一読を。
2006年11月20日
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「手紙」が小説映画共に大ヒットの東野圭吾の「赤い指」読了。「容疑者Xの献身」でもそうだが、「手紙」以降の作者の作品には驚かされるばかりである。ミステリーということになれば、当然「殺人」は避けて通れないし、殺人が起こるのは当然のことである。しかし、普通の人間にとって殺人というのは、ニュースやお話の世界にしかない、「絵空事」であり、当然殺人を描くミステリーも「絵空事」の小説であることになる。だから、ミステリーということになれば、殺人テクニックや、アリバイ工作、そしてその暴露と言った、いわゆる「探偵小説」から抜け出せないことになってしまう。もちろんそうした絵空事を楽しんだり、推理ゲームを楽しむことを否定はしないし、そうした作品も好きだが、東野のここ一連の作品には、殺人をきっかけとして、さまざまな人間模様が描かれ、ミステリーという範疇を超えた感動がある。「手紙」を読み、そのラストに涙したひとは多いだろうし、そんなミステリーがなかったことも確かだ。今回の「赤い指」も殺人事件としては現実に十分あり得るありふれた殺人事件だが、その事件をきっかけに、家族を巻き込んでさまざまな人間模様が明らかになり、また、それを解決する刑事の側の人間模様までも展開しながら、「家族」という問題について、その、もろさと絆を問いかける深い作品になっています。一方、人も死なないし、本当の悪逆非道は行われないいわばお気楽系ミステリーが伊坂幸太郎の「陽気なギャングの日常と逆襲」前作「陽気なギャングが地球を回す」の続編。前作を知らなくとも小説が楽しめるよう、特殊な能力を持つ四人の主人公の「能力」を紹介する小さな事件を短編連作で描きつつ、その四件がひとつの大きな敵を巡る事件に集約し、最後は四人組(銀行強盗を本職としつつ、実は小市民的生活もしっかり営んでいる)たちが、悪者なのに、勧善懲悪をなしていく。強盗や誘拐、犯罪組織が出てきても、血は流れないし、人も死なない。洒落た会話とおしゃれな登場人物、軽快な物語の展開で最後まで一気に読めて、「ああ、面白かった」と日常の憂さを晴らしてくれます。
2006年11月15日
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新進気鋭の時代小説作家鈴木英治の新刊「無言殺剣 野盗薙ぎ」。無言とは、主人公の浪人が全くことばを話さないことから付いた副題。なぜ話さないのか、話せないかも不明。名前も不明のため、狂言回しをつとめる伊之介が付けたあだ名が音無黙兵衛。主人公が話せないのでは、もじどおり話にならないところだが、伊之介には、テレパシーのような形で黙兵衛のことばが伝わる。そして、主人公黙兵衛がとにかく強い。時代小説も、リアリティーを求めるため、妙に主人公が弱かったりすることもあるが、読み手から言えば、やっぱり主人公は理屈を超えて強くなきゃ。こう書くと、ご都合主義のいい加減小説にしか感じられないが、それをそう感じさせないのが作者の技量。この作者の一番の才能は、キャラクター作りがうまいこと。主人公の際だつ魅力と、それを取り巻く脇役の豊かな性格描写が破天荒な話にもリアリティーを与えている。本作は、「大名討ち」「火縄の寺」「首代一万両」に続くシリーズ第四作。「大名討ち」の後、シリーズ化する気持ちが作者にあったのかどうか、不明だが、多くの読者を得て、シリーズ化されたことは間違いない。本作だけでも楽しめるが、出来れば第一作から読んでみては。他には、「手習重兵衛 天狗変」などの「手習重兵衛」シリーズもお薦め。
2006年11月10日
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週刊文春ホリイのずんずん調査隊でおなじみの堀井憲一郎の「若者殺しの時代」著者がずんずん調査で調べたことを時空的に調べて、若者が大人にとっての「商売の対象」になってしまった経過をたどる調査。高校生の間でのあの異常なポケベルブームや、渋谷が消防署の前が「ファイヤー通り」だなんて言って、子ども相手に金をむしり取るようになってしまった頃から、いい大人が子どもから金を搾り取んなよって思ってきましたが、そうした世間の大人たちが感じている以上に、大人たちは、子どもたちのすべてを商売の対象としてきたのがよく分かります。自分もその時代を生きてきたけれど、それがどういう意味を持っていたのかということが、よくわかりました。バブルの時代に大人だった人には是非いちど読んでもらいたいです。もちろん若者にも。
2006年11月04日
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「東京バンドワゴン」読了。この本は題名で損してると思う。私は本は基本的にネットでしか買わないので、この題名だけでわ、下町の老舗の古本屋が舞台の人情ミステリーだとは気づかない。どう考えても音楽小説にしか思えない。現物を見ないで本を買う人は結構いると思うので、やはり、題名は大事だと思う。筆者にとっては、作品は子どもみたいな物だから、「勝手なことを言うな」って怒られるだろうけど、でもやっぱり損だと思う。作品の舞台は、東京の根津あたりが思い当たる、古い町の老舗の古本屋で、書店の名前が「東京バンドワゴン」。寺内貫太郎一家を思わせる大家族で、そのうちの若い女性が古書店の一部を改装してカフェを開き、その大家族とそれを取り巻く人々を巡るドラマの中に、ちょっとした事件が起こり、それを、家族が力を合わせて解決する。大家族故に、それぞれの秘密があり、謎もあり、葛藤もある、それが、物語を追っていく内に自然と良い方に解決するという、昨今はやりの爽やか系ミステリー。謎解きは決して難しい物ではないので、それを期待してはいけない。決して大悪人は出てこないので、読んだ後、爽やかな気持ちになりたいときに読む本。基本的に面白いです。通勤の友に良いかも。あえて苦言を呈すれば、以下に老舗の古本屋にしても、屋敷と呼べるほどの家が前はいかがか?また、開高健が「真実は細部に宿る。」といったように、細かい点が大事だと思う。ランドセルに百科事典2冊は入らないと思う。
2006年11月02日
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テレビコメンテーターのようにしか思われていないが、実は、文学、特に文学史や作者のゴシップに関して博識を有し、かつ俳人としても優れた力量を示す。嵐山光三郎の芭蕉評伝。松尾芭蕉といえば、「俳聖」とされているが、文学史的意義は認めつつも芭蕉としての、人間的な欠陥に目をつぶって、まつりあげるのはいかがかという視点で、芭蕉を聖俗合わせて正しく評価しようという評伝。芭蕉の人生そのものがあっちいったりこっちいったり複雑だし、それに多くの門人が関わるのだから、その生涯を追うのも大変、さらに、芭蕉の俳諧そのものが難解なので、国文や俳諧に素養のない人にはつらい面もありますが、芭蕉の評伝としては、やはり傑出した物でしょう。但し、帯の惹句を信じるとがっかりします。同種の文学史もんとしては、文人悪食が素人の人にも楽しめるトリビア一杯です。山口瞳を尊敬するだけあって、山口瞳を彷彿とさせる味のある文章が書ける人です。
2006年11月01日
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