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山本一力の深川黄表紙掛け取り帖〈二〉「牡丹酒」読了。簡単に言うと、深川に住まう四人の若者が、自分たちの持つ特殊な力を生かして、江戸の町のやっかいごとを智恵と勇気で解決しますという、設定で、今回はひゅんなことから土佐の「司牡丹」(今でも現存する銘酒の作り酒屋、因みに漫画家の黒金ヒロシはそこのお坊ちゃん)を江戸の町に広めようと四人組が取り組むという話。当然、そうした取り組みには困難が伴ってそれを四人組が力を合わせて、智恵を出し合って解決することにカタルシスがあるんですが、この話はそんなものは有りません。第一、困難という困難が有りません。一応敵役が出てくるんですが、これがまた、小粒で間抜け。しかも四人のバックには紀伊国屋文左衛門がついているから、金はいくらでもあるし、その縁で、柳沢吉保の助力はあるは、土佐藩は全面バックアップだは、要所要所で出会う重要人物はみんないい人で主人公達意の熱意に打たれて、すぐにシンパになっちゃうわ、これで、物事うまくいかなきゃおかしいでしょってかんじ。ちょうど最初から最強レベルに達したメンバーでロールプレイングゲームをやっているような物。山本一力の小説は基本的に上記のような設定が多く、その分、気分良く読めるのは確かですが、いくら何でもご都合主義に過ぎやしませんかね。この辺が、いい人を登場させても、うまく困難や試練を持ち込んできちんとカタルシスをもたらしてくれる浅田次郎と違うところ。
2006年12月26日
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立川談志が百の落語を語るという竹書房のシリーズが今回完結。体調も万全とは言えず、性格的にも一番こうした仕事に向かない家元が、スタジオ録音百席が本当にできるのか、と言う声も有ったが、今回無事完結。第一期から聞いてきた感想としては、やっぱり家元元気がなくなったかなということ。特に前の第四期から感じたことは、「愚痴が多くなったな」ということ。もともと、家元の話は「入れごと」「よそ事」が多いのが特徴ですが、四期・五期は特にそれが多くなったように感じました。まあ、家元のCD買おうって人は、老いも、愚痴も、不調でもすべてが家元という人だから、全然かまわないし、なによりも、今回も取り上げた噺や、特典CD「芝浜」があっちゃ買わないわけにはいきませんよね。続いてDVD「日本の話芸」特選集。土曜の午後にNHK教育テレビで今も地味に放映を続ける、噺か一人45分の高座の放送。その名演を集めたDVD。落語ブームで様々な音源・映像が発売され、落語ファンは財布との相談が大変ですが、これも我慢できずに買ってしまいました。亡くなった文治師匠や柳昇師匠の高座姿や、普段テレビではなかなかお目にかかれない師匠形の高座が一枚に四席収められ、計六巻。そのうち、二巻は浪曲と講談という目配りもNHKらしいところ。バラエティーに富んだ構成で、楽しく鑑賞できます。
2006年12月25日
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医者にしてミステリー作家である帚木蓬生の新刊「受命」読了。前作「受精」で運命的な出会いを果たした、日系ブラジル人医師津村、日本人の舞子、韓国人の寛順・東源らが、運命の糸に操られ、北朝鮮に入国。それぞれの入国事情も、入国方法も、そして、朝鮮内での身分も、安全も違う三組が、巧妙に張り巡らされた糸に操られ、北朝鮮再生のための大きなプログラムに巻き込まれその中で自分の位置と使命を自覚して、大事な歯車として計画に関わっていく。北朝鮮の内情が丁寧に描かれ、三組がそれぞれに計画に荷担していく経過がよく描かれているので、荒唐無稽になりがちな物語にリアリティーを与えている。巻末にフィクションだから、実在の国とは一切関係ないとの断り書きはあるが、とてもフィクションとは思えない出来。著者得意の冒険小説的要素を含んだ良質のミステリー。お正月休みの一冊にどうぞ。
2006年12月25日
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西條奈加 の新刊「金春屋ゴメス 芥子の花」読了。前作「金春屋ゴメス」の続編がよりパワーアップしてもどってきた。物語の舞台は、日本の関東から東北にかけての一帯が「江戸」として独立を宣言。自給自足社会を形成して鎖国。江戸幕府のしいた政策を改良しながら、江戸を再現。人々は化石エネルギーも使わず、江戸時代そのものの生活を続け、「江戸」も国際的に日本の属領ではるものの、独立国家としての存在を認められているというファンタジー的設定。ゴメスとは、本作の主人公辰次が使える「長崎奉行」のあだ名。女性でありながら、容貌魁偉にして、武勇に優れた怪力無双の怪物的人物。物語としては、ゴメスの指揮のもと辰次たち主人公が捕物帖よろしく、難事件を解決していく趣向。江戸ではありながら、現代日本から独立した国のため、妙に近代的だったり、日本との微妙な関係や、日本人と江戸人の行き来の問題など、物語世界が精緻に構築され、ファンタジーでありながら妙にリアルなところがこの小説世界の特徴。今回から美人剣士という新しいキャラクターも登場し、華を添える一方、自国内の独立国家を快く思わない日本の勢力の暗躍を暗示し、一つの事件は解決した物のより大きな事件が起こることを暗示しつつ物語は終了。主人公は辰次という日本から江戸へと帰化した青年なんだが、中心となる狂言回しのゴメスの凶暴にして実は何でもお見通しというキャラクターが秀逸。前作に引き続き一読巻を置くあたわざる面白さ。
2006年12月22日
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「真剣」で鮮烈な時代小説デビューを飾った海道龍一朗の新刊。真剣が柳生新陰流の改組上泉伊勢守という実在の人物を主人公としたのに対し、本作は、一匹狼の忍者加藤段蔵という魅力的な主人公を作り上げ、往年の山田風太郎を彷彿とさせるような、ピカレスクロマンを作り上げている。忍者小説の醍醐味は、なんと言っても、奇抜なキャラクターの忍者と、彼らが繰り出す華麗なワザにある。本作でも主人公を初めとして、主人公にまつわりつく、美形の女装忍者兄弟(姉妹?)や、甲賀の憎めない忍者、ガマのような容貌でありながら火薬を自在に扱う忍者など、個性的なキャラクターが縦横無尽の大活躍。主人公が智恵とワザで悪巧みを次々に成功させていく様は、爽快である。最後に大どんでん返しもあり、シリーズ物としての期待も持たせて終わるラストも秀逸。
2006年12月20日
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今年も大活躍だった宮部みゆきの「名も無き毒」「誰か」で、自転車によるひき逃げ事件を解決した「逆玉」の主人公が、今回は、連続毒物殺害事件と、主人公の会社で首にしたアルバイト女性の引き起こすトラブルに巻き込まれ、心ならずも素人探偵として事件に関わっていく。今年後ミステリーナンバーワンの呼び声も高いが、確かにそれもうなずける傑作ミステリー。宮部はこうした市井の人物を描かせたら他を寄せ付けない人物造形をするが、今回もその力量を遺憾なく発揮。登場人物がそれぞれに欠点を持ちながらも一生懸命に生きていく様を丁寧に描き出す。こうした人物造形が、悲惨な事件であり、陰惨な犯人の性格を描きながらも、読後感を汚くしないことにつながっていると思う。謎解きも見事ながら、新しい形の犯人像を造形する中で、「勝ち組」「負け組」が喧伝される世の中が続けば、「負け組」の人間がこうした復讐にでることもあり得るのではないかと思わされた。一読、だれもが感じるのは、これほどひどくはないが、こういう風に何でも悪い方に受け取ってトラブル起こす人はいるよな、と感じる人が多いのでは無いだろうか。殺人や事件を描く以上、決して爽やかな後味とはいかないのは当然だが、それでもなお、人間を信じようとする作者の姿勢に共感する。一読、損のない小説です。
2006年12月18日
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世の中では落語ブームと言われ、寄席も結構お客が入り、落語の公演も各地で満員の状態が続いています。テレビ東京では、水曜の深夜枠で民放では無謀と言われる企画「落語の極み」もはじまるなど、落語会も活気を呈しています。落語は歌舞伎や能と違って、歴史も浅く、本来的に庶民に親しまれた芸能ですので、そんなに難しいことは無いのですが、やはり、そこにはそれなりの伝統と、格式みたいな物があって、落語に親しみ始めたばかりの人には、解りにくい点があります。そんな、人たちを対象にNHK教育で始まったのが趣味悠々の「落語をもっとたのしもう」です。アナウンサーを進行役に、芸協の副会長小遊三師匠、隣の晩ご飯の米助師匠が解説役に回り、林家たい平師匠がOLさんに寿限無を教えるコーナーもあり、楽しく、落語鑑賞の基礎知識が身に付くようになっています。放 送は 毎週水曜日 午後10時00分~10時25分 再放送 翌週水曜日 午後0時30分~0時55分 第一回目は6日でしたので、一回目の再放送には間に合いませんが、番組紹介を見る限り、第二回目からでも十分に楽しめるし、落語入門としては、これからだと思います。この番組のテキストが、冒頭の「落語をもっとたのしもう」です。番組と平行した形で編集され、さらに番組を深める形になっているうえに、落語を楽しむための基礎知識が上手にまとめられています。付録にたい平師匠と桂平治師匠の落語CDも付いてこの値段はお得だと思いました。落語を聞き始めたひと、落語を聞きたいと思っている人、寄席に行きたい人、そして御通家にもお勧めします。
2006年12月14日
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桂米朝の弟子にして、米朝が一番信頼し、期待をしていたにもかかわらず夭折してしまった、桂吉朝のDVD「特選 吉朝庵」収録作品は、東京でもおなじみの「天災」と鳴り物がたくさんでいかにも上方らしい、芝居を踏まえた「蛸芝居」の二席。大阪の落語家さんにはどうしてもなじみが薄く、吉朝師匠についても、亡くなった記事等を読んで大阪にもそんな師匠がいるんだと認識した次第。初めて高座を聞いたのが米朝事務所から限定発売された、亡くなる前の高座を収録したものなので、声に張りがなく、途中つらそうな面もあったけれど、なんとも言えないフラのある高座でとても楽しかったので、今回のDVDも購入してみました。まだ、お若くお元気な頃の高座で、動きも大きく、声もよくとおり、表情が非常に豊かで、ちょうど亡くなられた志ん朝師匠の高座を見ているようでした。吉朝師匠が亡くなったと聞いた米朝師匠が非常に落胆されたというのが、よく解る気がします。それでも、今はDVDがあるので、亡くなった師匠の高座が(生には当然及ばないものの)見ることが出来ることが現代のせめてもの慰めでしょうか。そこから、興味を持って「上方落語家名鑑ぷらす上方噺」も購入。上方の師匠については、大看板の方しかしらなかったのですが、こう言っちゃ失礼ですが、上方にも落語家さんたくさんいらっしゃるんですね。各師匠の紹介文もなかなか面白いのですが、やはり、巻末の鶴瓶師匠と、春団治師匠の対談が面白かったです。上方落語のあらすじ紹介は?が残りましたが。これからは、上方落語と東京落語との交流も盛んになるでしょうから、この一冊が役に立つと思います。
2006年12月08日
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鈴木理生「お世継ぎのつくりかた」読了。筆者は、などの著作で、考古学・地形学の立場から江戸とはどういう時代であったかを考えてきた人物。今回はお世継ぎのつくりかたという一見きわどい題名であるが、家康が徳川政権の安泰のために、どのようにして後継者を作りそだて、また、人材を探しだし、作りだし、それを配置してきたかを中心に、「武家の女性」と「子どもを作ること」に視点を当てて、江戸時代の特色を描きだした物。基本的には歴史学の書物であるが、引用された文献には必ず梗概をつけるなど、素人にも読みやい工夫がなされているし、記述もわかりやすい。江戸についてかなり知っている人にも「なるほどそうだったのか。」「そういう意味があったんだ。」「それは、知らなかった。」と思える記述が一杯。江戸幕府は300年続いたのに、明治政権が30年そこそこでこけた理由も明かされます。江戸時代好き、歴史好きは是非。
2006年12月06日
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深谷市で行われた正蔵・いっ平兄弟落語会に行ってきました。会場が小さく300人前後で一杯になるホールですので、発売日から混乱。一人頭4枚の枚数制限があるも、並んだ人全員にはチケットが行き渡らず、一時険悪な雰囲気に。当日は、券を買えた人だけですので、幸せな雰囲気で始まりましたが、隣の大ホールが空いているんだからそっちでやればいいのに、桐生音協もどういう仕込みなんだか。前座たけ平が上手とは言えないまでも一生懸命演じた後、いっ平の登場。海老名家もののマクラを振って、「井戸の茶碗」へ。マクラでは、体を大きく動かし、三平の高座を意識した演じ方で、笑いをとりましたが、圧倒的に落語初めてという人が多い会場での人情味のまさった噺は難しかったかなという感じ。三平落語も実際の高座を明確に覚えているわけではないですが、おぼろげな記憶や、残っている映像から、思っている三平の高座を演じるのは大変だと思います。いっ平には彼なりの壁があると言うことでしょうか。中入り後は勝丸の「太神楽」これも寄席に行かない人には珍しく、良く受けました。勝丸の機知に富んだしゃべりもよく、楽しい雰囲気のまま、正蔵登場。鈴本でも真打ち披露、厚生年金会館の芝浜についで、三度目の高座鑑賞ですが、もうすっかり正蔵の名前にもなれた感じで、また、会場も田舎の小さな会場だったせいか、マクラからすっと新作に入りました。学校の国語の授業で読書をすると言うことで、息子が親父の本棚から持ち出したのが「龍馬が行く」。ところが、その本はカバーは龍馬でも中身はポルノという訳で、本が無いのを発見した親父の狼狽ぶりや、その本を授業中に朗読させられる息子の困惑や司馬遼太郎ファンの先生とのすれ違いを、表情たっぷりに楽しそうに演じ、客席も満足していました。正蔵襲名には、私も含めて多くの落語ファンが批判的でしたが、正蔵襲名前後の精進は本物だったようです。お坊ちゃん落語家であることへの反発もありますが、この豊かな時代に貧乏からはい上がる落語家を期待することのほうが無理だし、むしろお坊ちゃんであるが故のおおらかさが高座の明るさにもなっているかなと思いました。襲名直後の肩に力の入った高座ではない。ゆったりした高座でした。
2006年12月05日
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a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/03347d80.794fe900.039d2cd4.533fa811/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f4052914%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f11836590%2f" target="_blank">若者に人気の山田悠介「スピン」読了。才気を感じさせる小説ですし、メッセージもはっきりしているので、わかりやすいと思います。いじめ、引きこもりのネットお宅たちが、ネットで集結して同時バスジャックを引き起こし、それぞれに、事件を展開していく着想と構成はとても面白かったが、最後に不気味さを出そうとした謎解きがむしろ小説の非現実性を際だたせてしまったのが残念。でも、これも瑕瑾であって、一気に読ませる面白本です。続いて江戸川乱歩賞のa href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/03347d80.794fe900.039d2cd4.533fa811/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f4106632%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f11892051%2f" target="_blank"><「三年坂 火の夢」明治初期の東京を舞台に、「三年坂で転んだ」という謎のことばを残して死んだ兄の死の謎をおう少年実之を中心に、そこに火を放てば東京中を火の海にすることができる「二十一カ所の発火点」の伝説をからめて、明治という混乱期の風俗を描きつつ、謎解きが進んでいく。主人公以外にも鍍金なる風変わりな狂言回しも登場。どくとくの物語世界を構築。その世界は乱歩の衣鉢をつぐといっても良いかもしれない。ただし、いろんなことを盛り込みすぎて、話の展開が遅いのと、猟奇趣味的とも言える謎かけをしておいた割には、三年坂の秘密が科学的かつ明解すぎるのが興ざめ。つまんなくはないんだけどもう少しいくともっと面白くなるかなあ って言う感じで最後まで読んでしまうが、最後はなんかなあって感じでしょうか。
2006年12月01日
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