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猿丸幻視行(著者:井沢元彦|出版社:講談社) 第26回江戸川乱歩賞受賞作。ずっと昔から気になってはいたのだが、いままで読む機会がなかった。ミステリというよりはSFだと思うのだが、ミステリの範囲はすでに20年前にここまで広がっていたのだな。 話は面白い。よくできているし、よく調べてある。特に、人麻呂から猿丸になったのではなく、その逆であるとという発想が秀逸。ただ、暗号解読のくだりと、終わりの方で会話だけで謎の解明がなされるところがややわかりにくい。 また、あくまでも折口の目で見たものしか知り得ないはずなのに、そうなっていない部分もあってちょっと残念。 しかしこれを26歳で書いたというのだから大したものだ。世の中にはすごい人がいるんだなあ。
1999.06.29
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空飛ぶ馬(著者:北村薫|出版社:創元推理文庫) 最初の一話を読んだところで、これは、アームチェア・ディティクティブであり、『九マイルは遠すぎる』なんだな、とは分かる。一人称で、主人公の名前が明かされないところは『血の収穫』というところか。 最も感心したのが、事件が殺人や盗みといった大きなものではないことである。日常生活の中に起こるかもしれないことを謎として設定しているのがすばらしい。 陰惨な殺人事件が起こり、犯人の過去やら出生の秘密やらが明らかにされていって……というのも否定はしないが、こういった、日常的なことを事件として考え出す方が困難なことだろう。 ただ、十九歳の主人公が物知り過ぎるのが気になるが、ま、そんなことまで言い出したら、そもそも小説というものが成り立たないわけで、よしとしましょう。
1999.06.18
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漢詩の作り方(著者:新田大作|出版社:明治書院) 書名の通り、漢詩の作り方を説明した本。 読んでいる時は、ほうほうそうか、と思うが読み終わってみると、あまり規則などは頭に残っていない。 自分で実際に作ってみないとだめ、ということだ。 357ページあるが、そのうち文章は111ページまで。残りは詩作に役立つ詩語集。 実用本位の本なのである。 「漢文は漢文、現代中国語は現代中国語で、実は元来全く別々のものです。」(p111)というにのは好感を持った。
1999.06.15
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本気で作家になりたければ漱石に学べ!(著者:渡部直己|出版社:太田出版) この前に『それでも作家になりたい人のためのブックガイド』という著書があり、それを先に読んでこらこちらを読まなくてはならないようなのだが、こちらだけ手元にあったのでこれだけ読んだ。 全段となる本を読んでいないのだから、当然だが、よく分からないところが多い。これは著者の責任ではない。 この本では、小説のテクニックのあれこれを解説しているが、小説入門というよりは、漱石がどのようなテクニックを(おそらく意識せずに)使っているか、ということを分析した本である。 漱石の小説から例を出して説明し、後に、最近の作家の作品から悪い例を「対照悪例」として示している。気になるのは、対照悪例を引く際、その作品に対する批評だけでなく、それを書いた作家に対する悪意が感じられることである。「実際、漱石の意地の悪さは有名であったが」と書いているくらいで(p161)、書いた人間とか書かれた作品とは別個の存在のはずなのだが、どうも、悪例として挙げた作品の作者に対して含むところがあるように思えてならない。 読んだことのないものばかりなのでそう思うのかもしれないが、唯一読んだことのある新井素子の『グリーン・レクイエム』を取り上げ、謎を結末近くまで明かさずにおくことなく、すぐに正体を明かしてしまっていることを批判しているのだが、少女の正体が何者か、ということが主題ならともかく、正体が明らかになった上で、どういうことが起こったか、という小説だったはずで、悪例とするには適切ではないのではないか。 そもそも、新井素子と漱石を比較すること自体に無理があると思うのだが。
1999.06.11
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