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非行少年が我が物顔に跋扈し、教師は事なかれに徹する通称“悪徳学園”にやってきた新任の女教師は何を考えてか、非行少年グループの敵意を煽るように主人公を贔屓し始め、学園は不穏な空気に包まれ・・・という表題作の他、星新一を中心に、SF作家達の狂乱を描く「星新一の内的宇宙」、様々な生命、種を滅ぼしてきた人類が滅ぼされる立場になる「親殺し」など、王道的な題材を使ったSF短編集です。かなり古い作品だけあって、さすがに設定や世界観が甘く、読んでいて引き込まれる程の力を感じませんでした。色んなタイプの作品を書きながら、自分のスタイルを模索しているような印象でしょうか。 彼が好きなら読んでみて今と比較してみるのも面白いかも知れませんが、小説としては積極的にはお薦めできません。
2003年02月28日
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金儲けに執着する時計屋と、当て付けのように店の品物を盗んで売り飛ばす息子、やくざから足を洗い、乱暴だが商売に関しては良心的な肉屋の兄弟、顔の痣を化粧で隠し、劣等感を持つ人間としか付き合おうとしないスナックのママ。真面目で気の弱い、詩人を志している主人公を中心とした夢見通り商店街の人間模様を描いた短編連作集です。設定や内容など「道頓堀川」と似たような雰囲気があり、庶民的な人々の悲喜交々が味わい深く読めました。強欲、粗野、淫蕩、嫉妬、屈託と、どちらかと言えば負の方向に近い感情の描写が多いものの、人物描写が立っているため、それが人間であり、生きるということだと感じさせられます。不思議なエネルギーのある一殺。
2003年02月27日
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著者の長男である岳少年は父親に似たのか喧嘩っ早く、大食らいで勉強は大嫌いだが、興味を持ったものには驚く程の集中力と勤勉さを発揮する。 そんな彼が目下夢中になっているのは釣り。 小遣いで道具を揃え、活字嫌いが釣りの入門書だけは読むというのめり込みようで、家を空けることの多い著者も、たまに戻ると振り回されながらも息子の成長を目の当たりにして感慨に耽る。不器用だけど暖かい親子の交流を綴った私小説です。何と言うか、非常に納得のいく、椎名誠らしい息子への接し方や周囲の人々の様子が微笑ましく読めました。 学歴社会ではなかった頃の若いお父さん像の見本のような印象があります。やはり父親とは良いものだと思わせられる一殺。いや、母親も良いものですよ勿論(笑)
2003年02月26日
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組の命令で自分の恋人を敵対組織の人質に差し出すことになった同性愛者「恋とは何でしょう」、酔って殴り、説教ばかりしていた父親に対する思い「アイス・クリーム」、音楽学校へさえ行っていれば別な未来が開けていたかも知れないと悔やむ「あなたと夜と音楽と」など、様々なヤクザを主人公に、はぐれ者の悲哀を描いた短編集です。グロテスクで狂気を孕んだ描写と、人間の愚かしさや悲しさの感じられる内容がアンバランスながら深い味わいがあります。非人間的で人間的なキャラクタ達は他人事とは思えないような葛藤や悩みを抱えており、印象に残る一殺。
2003年02月25日
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「かつをぶしとダイコンオロシの極致的状況は素晴らしい」、「ある日、悲しみのドアを開けるとバランタインの水わりがあった」、「藤色レースの手袋女にわしらは黙って切符を渡すべきか」、「一〇〇パーセント純正オババはニカッと笑いポットのお湯をドビンにそそいだ」など、不思議な抑揚のある長々としたタイトルが特徴的な、著者の初期エッセイ集です。文章は勿論のこと、下手をすると力強さや破天荒さですら今の方が上回り、徐々にシーナ的スタイルを固めつつある著者ですが、この頃の作品も意識したモノ書きらしさのような若さが感じられて悪くないです。 日常の出来事や考えに妄想連想突っ込みを細かく積み重ね、膨らませた内容は妙な味わいがあります。 エッセイの枠に留まらない一殺。
2003年02月24日
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プランクトンを分解してエネルギーに変える画期的なエンジンを搭載した潜水艇F7号。 できるだけ多くのものを積めるよう、開発者である博士の他は、彼の息子と、ある事件で両親を失った養女に厳しいダイバーの訓練を施して乗り込ませ、人類の期待を背負って出発した一行だったが、深海には想像を超えた世界が広がっていた。内容的には現代版「海底二万マイル」といったところですが、自分でもダイビングをやり、動物への造詣も深い著者ならではの描写が楽しめました。 ただ、海底人などの設定はちょっと子供騙しっぽいかな。 中高生の頃に読みたい一殺。
2003年02月23日
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進化、生物と非生物、ロケット、ビッグバン、遺伝・・・小説の好きな文科系の人にも理科系の楽しみを伝えようと、専門用語では何が何だか解らない様々な理科の題材について清水義範がわかりやすく説明し、そこに何故かサイバラの挿し絵と漫画が入るという、寧ろ何が何だか解らなくなった素晴らしいコラボレーションの短編集です(笑)ぱっと見はお馬鹿っぽい(失礼)作品ですが、内容はかなり本格的で、特に前半の生物絡みは興味深く読めました。強引に噛み砕いたり例えたりして結局良く解らない部分もありますが、試みは評価できます。 頭から煙が出そうになったらサイバラの漫画を読んで和みましょう。ちなみに内容とは全く関係無いです(笑)
2003年02月22日
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夢枕獏の代表作の一つです。 気付かないうちに2年振りの新刊が出ていたので1巻から読み直してみました(笑)人が人ならぬもの・・・いや、この世ならぬ獣に変貌してしまうという、呪われた血を持つ主人公。 そこには本来、人間の奥深くに封印されている、「8番目のチャクラ」の力が働いているらしいと知った友人や師匠が何とかして主人公の獣化を食い止めようとする一方で、彼の能力や身柄を狙って様々な個人や組織が動き出す。 そしてその根は遥か大陸、明治期の大谷探検隊にまで遡るのであった。玄道や格闘技など著者お得意の分野から、仏教、神智学まで巻き込み、人間という存在、在り様、可能性などについて考えさせられる超大作です。 ぐいぐいと引き込んでゆく展開の力強さとキャラクタの魅力で16殺を3、4日で読み終えてしまいました。 1巻から数えて既に20年、著者も初老に差し掛かり、この話の雄大さからいつ終わるのか終わらないのか非常に気になるところですが、これだけのライフワークを持てるのは幸せなことだと思います。
2003年02月21日
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恋人と別れたせいなのか、母親と上手くいっていないせいなのか、それとも他に理由があるのか、何故食べるのかも解らないまま食べ続け、食べることに固着し、それでも胃も心も満たされない主人公の心理を綴った作品です。私も人よりは食べる方だし、食べ歩きも好きですが、それは食べたいから、美味しいから食べるのであって、詰め込むように食べ、しかも苦しみつつも満たされないなんて想像したくもありません。 それだけに主人公の心の闇の深さが感じられるような気がしました。 小説の中だけでなく、現に過食症などの人々が少なからず居るというのは結構重い事態なのかも知れません。
2003年02月20日
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社会生活に疲れ、疎ましさを感じ、躓いた小石を何の気無しに拾い上げるように出家を決めた著者が、曹洞宗の総本山で禅や礼を特に重んじる永平寺の門を潜り、苛烈な修行に耐え抜いた一年間の体験を綴ったノンフィクションです。座禅はもともと厳しいイメージがありますが、永平寺の作法は想像以上で、比喩でなく箸の上げ下ろしから服の畳み方までありとあらゆる動作に関して厳格な規律があり、破った場合の罰も激しいもので驚かされました。 体に叩き込まれ、考える暇も無く必死で過ごした一年間の末に得たものは、体験した者にしか解らないでしょうが、私は勘弁願いたいです(汗) 自分がいかに恵まれているか感じさせられ一殺。
2003年02月19日
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若き頃、自分なりの美意識があった「コダワリの原稿用紙」、大枚をはたいた「夢のワードプロセッサー」、つい買ってしまい「後悔先に立たぬスライム」、なぜか子供心をくすぐる「ヘッドホンと少年」など、彼がこれまでに所有した様々な“モノ”への思い出を綴ったエッセイ集です。好奇心旺盛で物への愛着が深い著者の性格が感じられる暖かい読み心地ながら、やっぱりトホホな内容が楽しめました。子供の頃を思い出して年寄り臭い気分に浸れる一殺。鷺沢萠氏の解説もいい味を出しています。
2003年02月18日
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中学生の頃から競馬に親しみ、馬主、ノミ屋、予想屋などもやっていたバクチのプロである著者が、ヤクザも唖然のテラ銭を取り、更に関係者が馬券を買えるためにレースは八百長だらけという中央競馬会、競馬サークルの横暴を指弾しつつ、新聞や評論家の予想やデータ取りでは絶対に勝てない仕組みになっている競馬で本当に見るべきポイント、勝負どころを解り易く説明しているエッセイ(?)集です。競馬のテラ銭が埒外だという話はたまに聞きますが、勝負まで左右し、賞金に馬券にと金をふんだくることしか考えていない関係者の内情には驚かされます。 全部が全部そういうわけではないだろうし、時代の変化やこういう本が出たことでどのくらい変わったのか変わってないのか興味はありますが、競馬に手を出そうという気は起きなくなりました(笑)人によってはショックを受けそうな一殺。
2003年02月17日
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タイトルでぎくっとする学生の方も居るかも知れませんが(笑)、その単位とはあまり関係はありません。 肉がまだ贅沢品だった頃、そして重さの単位が匁だった頃のお使いを頼まれた少年の心理を描く「小間切れ五十匁」、かけっこの苦手な少女が力を振り絞る「エネルギー下さい」、日本語と英語の助数詞の違いを落語調に綴る「数えられますか」など、様々な単位を小説と組み合わせて分かり易く(?)説明した短編集です。とにかく単位の話に持ち込まないといけないので、かなり強引な展開もありますが、著者もそれを承知の上で、軽妙な文体と巧みな人間模様の描写で楽しく興味深く読ませます。上手いと唸ってしまような作品から、どこがオチてるのか良くわからない作品まで多少ばらつきはあるものの、全体的に良く纏まっており、目の付け所も面白いお薦めの一殺。
2003年02月16日
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里見家に代々伝わる八顆の珠、八頭の犬、八人の犬士。彼等は興国の時から同じ名を受け継ぎ、珠の大切さを説いてきたが、平和に慣れた君主はそれを煩わしく思い、ある祝いの席で将軍の子息に1年後、珠を献上する約束をしてしまった。里見家取り潰しを狙っていた本多正信は約束を守らせないよう画策し、服部半蔵に命じてその珠を奪わせることに成功した。だが老いた犬士にはそれぞれ、甲賀の里で修行を積む息子が居り、彼等は主君への忠義ではなくその奥方への恋慕から命を賭して服部半蔵配下の伊賀忍軍と壮絶な戦いを繰り広げる。著者の代表作、忍法帖シリーズの1つでその設定の破天荒さにまず驚かされます。 八犬伝のパロディは多くあれど、八房が八頭なんてまず思い付きません。 しかも八犬士が甲賀忍びの技を体得しており、伊賀と争うなんて忍法帖シリーズの名に相応しいとは言え無茶苦茶です(笑)しかしそれだけに血沸き肉踊る想像もつかない展開が楽しめました。 山田風太郎の面目躍如な一殺。
2003年02月15日
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妻の不義を知って離婚し、女性をモノや性欲の捌け口としてしか見なかった主人公、しかし彼の反対を押し切って強引に堕胎手術を行い、患者を死なせてしまった科長に憤りを感じ、対立したことで徐々に院内で孤立してゆく。 そんな折、主人公は事故に見せて殺されかけるという目に遭った。あちこちで恨みを買っている主人公は、犯人を探すうちに人の心に潜む醜さや悲しさを目の当たりにし・・・重く退廃的な雰囲気で、最後も上手くケリはついているけど暗く、沈んでいる時にはお薦めできません。 ただ、類型的ながら人物描写はしっかりしており、読み応えはあります。直木賞受賞作という程のインパクトは感じませんでしたが、手堅く読める一殺だとは思います。
2003年02月14日
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野良着や長衣では全く違和感の無いしゃがむという行為が、最近はみっともない姿勢として定着しつつあるのは、しゃがむことに問題があるのではなく、背広に代表される、しゃがむという文化の無い国の服装が浸透し、その格好でしゃがむからみっともないのだと考察する表題作の他、言語、食生活、旅行の体験に果てはスポーツの人気まで、あらゆる観点から文化というものを分析し、日本の盲目的な西洋崇拝や長いものに巻かれろ的な姿勢、大国の傲慢さなどに鋭い指摘を投げかけるルポルタージュ、エッセイ集です。その烈しさ、狷介さにたじろがされる部分もありますが、内容的には至極もっともで、4桁ごとに一次名詞の変わる日本に於いて、数字表記を西洋の3桁区切りに合わせる馬鹿らしさなど共感を覚えながら読めました。 しかし、この本が出されて20年、文庫化から10年経った今でも状況は変わるどころか悪化の一途を辿っているような気がしてなりません。 読んでいるうちに日本人であることが情けなくなってくるような一殺。
2003年02月13日
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友人と恋人の裏切りで自分の設立した会社を追われ、仕事も発明も奪われ、自棄になっていた主人公はふと目に入った冷凍睡眠の広告を見て申し込んでみることにした。30年後、無事に目覚めた彼は裏切り者のその後を調べるうちに、自分ではないが自分としか思えない存在の影を感じ始める。 その謎を解明するために彼は一計を案じ・・・冬でもどこかの扉は夏に繋がっていると信じて疑わなかった主人公の飼い猫を通して未来、過去の可能性を示唆した長編です。SFの中でも最も知名度の高い作品の1つだけあって、設定もキャラクタも非常に魅力的でテンポ良く読めました。何となく都合が良すぎる気もしますが、不思議と違和感も無く、終わりも綺麗に纏まっています。 ただ、期待が大きすぎたせいか、絶賛する程の感動は無かったです。 それでも充分にレベルの高い内容で、人を選ばず薦められる一殺。
2003年02月12日
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酒を飲み、煙草を吸い、髭を剃り、エロい大人という存在に対する謎や尊敬とはどういうものか、どうして嫌いなものを食べないといけないのか、何故地球は丸いのかと多岐に渡る「少年ギモン編」、秘密基地を作るべし、必要以上に驚くべし、学校での大は控えるべし、とにかく探検すべしと大人には理解出来ないような「少年オキテ編」の2部構成で子供の頃の体験や当時の感情を思い出しながら綴ったエッセイ集です。幾つになっても少年の心を失わない著者らしい人柄が良く出ており、ほのぼのとした読み心地です。 記憶の底に沈んでいた子供の頃を思い出し、懐かしい気持ちになりました。良くも悪くも歳を取ったことを実感させられる一殺。
2003年02月11日
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ある女性と彼女の伯父の遺品であるシェンクのピッケルを巡る男達の意地と確執を描いた「蒼氷」、ヒマラヤを志し、我流で近隣の山に登っていたところをある山岳会の幹部に見込まれ、彼の指導のもと次々と未踏の登攀ルートを制覇してゆく男の心境「神々の岩壁」の他、山で遭難した弟の死因に不審を抱き、その時同行していた男と共に同じ山に登ることで状況を再現しようとする「疲労凍死」など、山の厳しさと、そこに関わる人間模様を描いた作品集です。自らの経験を生かした山の描写は現実感と迫力に富んでおり、非常にしっかりした読み心地でした。 実話を元にした作品と比べるとやはり小説色が強く、キャラクタの心理描写にも力が入っています。 内容的には明るいもの暗いもの様々ですが、どれも重く生々しい一殺。
2003年02月10日
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友人に張り合ってある船乗りと結婚したものの、友人は裕福な商人と結婚し、その妬ましさから夫をけしかけて息子と共に航海へと送り出した結果「妻ゆえに」、婚約者が居ながら村外れに野営している軽騎兵と恋に落ちてしまい、その狭間で悩む「憂鬱な軽騎兵」、自分を捨てた地主の新しい妻を夢の中で傷付けてしまう「呪われた腕」など、男女間を中心に人生の皮肉のようなものを描いた短編集です。私は知らなかったのですが、明治の頃から教科書や翻訳が出ており、広く読まれている著者らしく、時代や国の枠を超えて感慨深い読み心地です。 ただ、訳者の好みなのか「○○ゆえに」というタイトルが多く見受けられるのはちょっと狙い過ぎて逆に合わない印象がありました。内容の訳は悪くありませんが、他の訳者でも読んでみたい一殺。
2003年02月09日
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もう傷つきたくない、これって嫉妬なの、こんなはずじゃなかった、信じるって、本当の私を分かってくれない、きっと大丈夫、やりたいことを見つける・・・恋愛を中心とした様々な悩みを抱えた相談者を仮定(?)し、彼女に対して語りかけるような口調で綴ったエッセイ集です。私は基本的に他人は他人、自分は自分という考え方なので教訓めいた本は好きではないのですが、この本はあまり押し付けがましくなくて比較的嫌味を感じずに読めました。だからと言って鵜呑みにする程ではありませんが。 文章は柔らかいので悩んでいる時や落ち込んでいる時に誰かの言葉が聞きたい、という人にはいいかも知れません。
2003年02月08日
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あまりにも醜い容貌のため親からも疎まれ、隠岐の民宿で目の悪い老人を手伝いながらひっそりと暮らしていた主人公。ところが、ある時民宿に泊まりに来た美しい青年によって彼女の運命は大きく動き始める。 自殺を装って新しい戸籍を手に入れ、大掛かりな形成手術による新しい顔と、1年間に渡る教育を施され、全く別の人間として生まれ変わった主人公や周囲の心理を描いた作品です。美醜というものや、それによって形成、左右される精神構造などが非常に興味深く読めました。 「容姿は醜くても心が美しければ」とか「人は生まれながらにして平等である」という考えを真っ向から否定し、人は皆心は醜いのだからせめて容姿だけでも美しくありたいという主人公の思いは極端ではあるけど納得できる気がします。 美醜を通して人間の存在まで考えさせられる一殺。
2003年02月07日
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ダンスのレッスンに励んでいた主人公は、鏡に映った自分の姿に嫌悪感を覚え、スリムで引き締まらなければという強迫観念が高じて自分の中に冷静で硬質な別人格を作り、神経性拒食症に陥ってしまう。 親の叱責や懇願、医師の忠告も空しく彼女の体重は減り続け、入院することになった。一時的に輸液や点滴で体重を回復させても心の問題を解決しない限り、入退院を繰り返す神経性拒食症の少女が拒食の原因を自覚し、回復に向かうまでの経過を描いた作品です。私は・・・と言うか男性は基本的に拒食とは縁の無い世界に生きているため、主人公にはあまり共感は覚えられませんが、自分の存在を主張し、他人に構って貰うための手段として拒食を選ぶという心理は理解できなくもないです。著者は心理学者ということで登場人物の描写なども現実感があり、読み進ませる力があります。 題材的にも興味深い一殺。
2003年02月06日
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食料を確保し、その日を生きることだけに執心する仲間達を尻目に、より高度な飛翔の技術を求めて日々鍛錬に励むジョナサンだったが、誰にも理解されず、調和を乱すとして群れから追放されてしまう。 失意のうちに更なる高みを目指して一人で過ごすジョナサンのもとに、ある時彼を凌ぐ技術を持ったカモメが現れ、同じ志を持った仲間の土地へと誘った。 ジョナサンはそこでも目覚しい上達を見せ、飛ぶことを通して様々なことを理解してゆく。出た当初はヒッピー達の間で回し読みされていたのが数年後、突如ベストセラーを記録するという珍しい経緯を持つ作品です。聖書の「人はパンのみにて生くるにあらず」という文章を思い出させるような、生きることの意味を考えさせられる内容ですが、最後は悟りのような不思議な境地へ到達していたりと、ちょっと掴み所の無い印象を受けました。それが良い悪いというのではなく、変わった読後感です。訳者が五木寛之というのも趣があって良いですね。一度は読んでおきたい一殺。
2003年02月05日
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孫が生まれ、名実ともに(?)おじいちゃんになってしまったマンボウ氏。 ところが鬱期に入ってあまり相手をしなかったためか、孫は彼になつかず「ジイジはなんだかヘンテコリンだ」とまで言われてしまう。 それでも可愛いものは可愛く、孫に振り回されっ放しの著者の一喜一憂や、相変わらずのドタバタを綴ったエッセイ集です。私は孫どころか子供すら居ないので(笑)その辺の感情はあまりピンとこないのですが、矢張り可愛いもののようです。子供っぽいところの多分にある著者と孫の触れ合いが面白く、ほのぼのとした気持ちで読めました。 旅行記や思い出、日常のエッセイとはまた違った味わいのある一殺。
2003年02月04日
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失踪した息子を探して欲しいという依頼を受けた主人公は調査の結果、彼は自分の意志で出て行き、あまり遠くへは行っていないという感触を得た。 ところが漫画形式の身代金要求状が届き、指定の場所に霊柩車を模した車と、棺桶に入った人形が発見されるに及び、状況は単なる家出ではなく、背後に何者かの意思がちらつき始める。「初秋」に続く、私立探偵スペンサーが活躍する作品です。ストーリー的には多少のどんでん返しはあるものの、若干現実味に欠ける展開で、ミステリィ風味のハードボイルドといった印象ですが、主人公を中心とした登場人物の性格や人情味のある描写で読後感は悪くないです。 気は優しくて力持ちを地でいく正統派キャラが好きなら楽しめる一殺。
2003年02月03日
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ボケて寝たきりになった義父の本当の死因、そして現在・・・という表題作の他、仕事で新幹線に乗っていた筈が気付くと見慣れぬ車両に居る「時間線下り列車」、自分の存在について突き詰めてゆく「唯我独尊」など、不思議な柔らかさと徐々にこみ上げる怖さのあるホラー短編集です。ホラーと言うよりも懐かしさや寂しさ、或いは意識についての描写など、考えさせられる作品も多く、人間観察に長けた著者ならではの味わいがあります。 全て単行本収録作品なので、半分くらいは読んだことがありましたが、それだけに全体的なレベルは高く、安定して読むことができます。清水義範をあまり読んだことがなければお薦めの一殺。
2003年02月02日
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三十職種以上の経験を持つアルバイトのプロ(?)原田宗典が厳選したアルバイトにまつわるエッセイ、短編集です。彼自らは当然のこと、椎名誠、村上春樹、群ようこなど納得の作家を中心に、沢木耕太郎、吉本ばなな、宮本輝、五木寛之、遠藤周作、さくらももこと豪華絢爛たる執筆陣で、どこから読んでも楽しめること請け合いです。大半が既発表作品のため、読んだことのあるものも多かったのですが、1つのジャンルで纏まっているということと、あまり馴染みのない作家に触れられるというのはなかなかお得感があって良いです。 1つ1つは短いけど、どれも密度が濃くてそれぞれの作家の味が出ています。こういうアンソロジー形式の作品集はもっと出て欲しいですね。オススメ。
2003年02月01日
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