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「どくとるマンボウ航海記」の編集者、そして北杜夫の良き隣人として彼のエッセイにしばしば登場する著者が退職後、世界各国を列車で渡り歩いた鉄道紀行の一つ、ウラジヴォストクからモスクワまで、7晩8日をかけて走る世界最長のシベリア鉄道での見聞を綴った作品です。雄大かつ厳しい風土や、崩壊前のソ連の体質がシンプルな文章で描かれており、非常に興味深く読めました。飛行機全盛になってしまい、地球の裏側ですら1日も掛からず飛んでしまう今とは違った旅情が感じられます。淡々とした描写が心地良い一殺。
2003年01月31日
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暴走する列車を止めるため、車輪の下に身体を投げ出し、自らの生命と引き換えに大勢の乗客を救った主人公の生涯を描いた三浦綾子の代表作の一つです。 厳格な祖母によって当時まだ邪教扱いであったキリスト教信者の母と引き離され、保守的な教育を受けた主人公が成長するに従って死や愛について悩み、信仰に目覚め、犠牲の死を遂げるまでの過程が克明に綴られ、質量ともに非常に読み応えがあります。一番衝撃を受けたのは、この主人公に実在のモデルが居るということです。 正直な話、私だったら人を犠牲にしてでも自分が生き延びたいと思う性質なので、主人公の覚悟は理解の範疇を超えていますが、それだけに強烈な印象が残りました。 キリスト教の教義云々よりも、主人公の行動を通して何かが伝わってくる一殺。
2003年01月30日
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しりとり→リトマス試験紙→白雪姫→メタモルフォーゼ・・・思い付くままに様々な単語をしりとりで繋げ、それを題材にして自分の体験や思い出、考えなどを綴ったエッセイ集です。ただ単に題名だけ考えるのは簡単ですが、題名に合わせた内容でエッセイを書くのはなかなか難しく、それを105編も続けられるというのは想像力と引き出しの多さに優れているのだと思います。 時折、シモやダジャレに走りがちになるのは関西の血でしょうか(笑) 1つの作品が短く、気軽に楽しく読める一殺。
2003年01月29日
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秘伝書を盗んで逃げた男と、そのことへの憎悪と嫉妬で狂ったように鍛錬に励む男、感情を抑えて地道に道場を守る男の3人の末路を通して剣の心を説いた表題作の他、腕はからきしながら経理に長け、家老に重宝されているが実は幕府の隠密だった「そろばん虎之助」、魔が差したように万引きを繰り返してしまう「小泉忠男の手」など、池波正太郎にしては珍しい、時代物と現代物の入り混じった短編集です。時代設定は様々ながら、どの作品も人間の強さ弱さ、真心などについて考えさせられました。 在り来りに感じてしまう内容を巧く纏めている辺りも流石です。 「鬼平」や「剣客」のような勧善懲悪物とはまた違った味わいのある一殺。
2003年01月28日
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ロリコン吸血鬼の「かわいい生贄」、古びたカメラのとある設定の時だけ写真に写る「1/60秒の女」、水虫の薬の研究中に偶然出来てしまった薬の副作用「透明人間を撮る方法」、タイトル通り「なぜカトマンズの床屋に行ったのか」など、一人称の朴訥な語り口調が独特な作品が中心の短編集です。読んでいるうちに背中がそそけだってくるようなホラーや様々なアプローチによって描かれるエロ、不思議な安らぎや悲哀を感じるファンタジーと、文章も内容も多彩で楽しく読むことができました。 比較的初期の作品のため、今とは若干違った味わいもありますが、そこがまた良い一殺。
2003年01月27日
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合法ドラッグである幻覚サボテンの体験談、UFOに関わる愉快な人々の本の紹介、盗聴電波傍受の恐い話、占い師に占って貰った結果など、著者が体を張って取材(?)した様々な体験を綴ったエッセイ集です。さすがは大槻ケンヂ、目の付け所が面白いと言うか突拍子も無く、当然結果も予想のつかないものになっており、文中の随所から奇妙なパワーが溢れています。 世の中は広いとつくづく感じました。 変なもの好きな人にはたまらない一殺。
2003年01月26日
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オレンジ色の砂丘、ラクダ、イスラム教・・・この程度のイメージしかないアラビア遊牧民と一ヶ月近くも生活を共にし、その独自の生活様式や考え方、更にはこれまでに体験したニューギニア高地人やカナダエスキモーとの生活と比較することで、歴史によって培われた民族性の違いまで考察したルポルタージュです。想像もつかない過酷な風土や戒律などが非常に興味深く読めました。 一見、親切で慎み深いアラビア人たちの日本人とは大きく違った常識も驚きです。 単なる旅行記としてだけでなく、人間について考えさせられる一殺。
2003年01月25日
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監察医として死因の特定出来ない死体の検死を34年間も続けてきた著者が自分の体験を纏め、生者に伝えるために停年を前に退職し、書き綴ったノンフィクションです。遺書を書いて実行に移す前に病的発作で死亡したケースを含む様々な自殺、全員が死亡した自動車転落事故で傷痕から割り出された運転者、同じ場所、同じ死因なのに腐敗差があることの推理などの検死現場での体験だけでなく、それを基に脳死についての考察、老人の自殺の理由、監察医制度の重要性などを説いており、死というものを間近で見続けてきた著者ならではの説得力のある内容が興味深く読めました。文章的にはさすがに上手いとは言えませんが、丁寧に冷静に書こうという姿勢は感じられます。 他の人には書けない一殺。
2003年01月24日
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ブルックリンのスラム街からひょんなことで知り合ったカナダ人のグループに拾われ、勉強に励んでいたレズラ少年はある本を読んで大きな衝撃を受けた。 少年と同じように貧しい生まれから這い上がり、ミドル級タイトルマッチに挑戦までしながら、明らかに冤罪とわかる罪で終身刑を宣告され、今も刑務所暮らしを続けている黒人ボクサー、ルービン・“ハリケーン”・カーターの手記は少年だけでなくカナダ人達の心も揺り動かし、彼等はルービンに手紙を送り、交流を深めながら救済活動に乗り出した。デンゼル・ワシントン主演の映画としても高い評価を得たので知っている人も多いでしょうが、22年に及ぶ獄中生活と、判決が覆されるまでの道程を綴った実話です。 著者は作中に登場するカナダ人グループのうちの2人であり、当事者ならではの詳細で迫力のある内容に引き込まれました。ルービンの誇り高さや我慢強さもさることながら、周囲の人々の正義のために労力を惜しまない姿はまさに「事実は小説より・・・」というところです。 しかし、今も人種差別や検察の権限の強さなど問題は残され、色々と考えさせられる一殺。映画も是非観ておきたいです。
2003年01月23日
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土ダンゴの硬さを競い合ったり、初めての検便に戸惑う少年編、不良ぶっていたら他校との喧嘩に呼び出されたり、期待に胸を膨らまして歌舞伎町を訪れた青春編、外国のトイレでの出来事や深夜のバッティングセンターの作法などを綴った現在進行編の3章からなるエッセイ集です。相変わらず素直と言うか単純と言うか、読んでいて飽きない著者の体験の数々が楽しく読めました。 小説も面白いけど、エッセイでこれだけネタが尽きないってのは凄いです。文体と内容のバランスも良く、気軽に読める一殺。
2003年01月22日
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周囲から孤立するのも構わず、自分の腕一本を頼みに無理な漁を続けていた主人公が初めて龍神に祈る表題作の他、傾いた店を立て直す為の望まぬ結婚を蹴り、自分に正直に生きようとする「おつぎ」、妻が見知らぬ男と歩いていたことで悩む「女下駄」など、市井の人間模様を中心にした時代物短編集です。性格は様々ですが、根本的な部分は気の良い小市民といった風情の登場人物達の描写が微笑ましい読後感です。漁師、商人、侍、泥棒など職業も多様でそれぞれに味わいがあります。 派手さは無いけどのんびりと読める一殺。
2003年01月21日
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気立てが良く、一緒に居て寛げる女性と結婚の約束をした主人公だったが、専務の娘との縁談を持ち込まれ、気持ちが揺らぎだした。 しかし婚約者は別れることを拒み、お腹に彼の子を宿していることを告げた。 彼は思い余って会社の総会屋だとか暴力団という噂のある男に彼女の殺害を依頼し、首尾良く専務の娘と結ばれた。 ところが常務の結婚式に殺した筈の婚約者そっくりの女性が現れ・・・損得や憎しみによって突き動かされた後の空しさが伝わってきました。 少し話の展開が都合良過ぎて押し付けがましい部分もありますが、人間の物悲しさのが漂う雰囲気は悪くないです。 ただ、三浦綾子作品の中では地味かな。
2003年01月20日
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ふと思い出して立ち寄った昔の家で発見した鍵は若い頃に住んでいた物置のような部屋のものだった。 懐かしさでそこを訪れたところ、前の会社のロッカーの鍵を発見し・・・鍵と共に自分の人生を遡った末に待っていたものを描く表題作の他、多くのタレントが生まれ、消えてゆくメディアの舞台裏を皮肉った「公共伏魔殿」、突然会社に鬼が現れ、次々と殺されてゆく社員の「死にかた」など、ホラー、グロを中心とした著者の自選恐怖小説集です。恐らく全て単行本収録作品をホラー文庫用に選出しただけらしく、私は殆ど読んだことのある作品ばかりでちょっと拍子抜けしましたが、ジャンルが固まっており、小説としてもきちんと纏まった作品を集めているので読み易く、筒井康隆をあまり読んだことのない人には良いかも知れません。気持ち悪い描写は評価が分かれそうですが、嫌いな人はそもそも筒井康隆を読もうと思わないでしょう(笑)
2003年01月19日
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ポルノ、SM作家、脚本家、監督など精力的な活動の後、60を目前に断筆し、将棋を中心とした作品で復筆した著者が出会った様々な人間や出来事を綴ったエッセイ集です。しかし、アウトロー文庫って名前はどうなんだ・・・題材としては将棋の話が多いのですが、それが主題ではなく、将棋を通した人間模様や著者の人生における将棋といった内容が興味深く読めました。 ポルノ作家で将棋好きというのも面白いです。 文章的にも読み易く、著者の他の作品を知らなくても楽しめると思います。 エロくはないので注意(笑)
2003年01月18日
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決して手の届かない月、永遠に落ち続ける月、そんな月に不思議と惹かれる主人公を中心に、彼女の独特な感性、心情、思い出、周囲との交流を描いた作品です。装丁や表紙絵、文体などに絵本のような柔らかい雰囲気があり、穏やかな読み心地が味わえました。 但し、内容はかなりシビアで重いです。 その取り合わせが面白いと言えば面白いのですが。 何とも評価の難しい一殺。
2003年01月17日
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美しく強気な祖母の影響を強く受け、自らもその美貌を武器に様々な男と遊びのような感覚で割り切って付き合い、気侭に生きてきた主人公だったが、祖母が自動車事故で入院し、そのショックからかボケてきたのをきっかけに、父の破産、職場での不和、親友との決裂と、何かが狂い始めた。そして、憧れていた祖母の意外な事実が判明し・・・強さ、美しさとはどういうことなのか考えさせられました。美人で気が強く、男にも金にも不自由していなくても、表面的なものによって構築された脆さが感じられます。ただ、私はそういう生き方も貫き通せるなら一つの在り方だとは思うんですけどね。 この主人公はまだ人間的だったということなのでしょう。 心理描写や展開は鋭いのでキャラクタが嫌いでなければお薦めです。
2003年01月16日
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才能とルックスを併せ持つサックス奏者である主人公。しかし、バンド内での技術や音楽性の差、まず顔で売ろうとするプロダクションへの反発、アメリカから連れてきた妻のアルコール依存など、様々なことに思い悩んでいた彼の前に、昔大きな影響を与えたやくざが16年ぶりに姿を現した。誘われるように彼に悩みを打ち明け、徐々に自分の考えを確認してゆく主人公だったが、妻がある麻薬組織と関わっていたことに巻き込まれ・・・好悪や愛憎すらも超えたような深い感情の流れが感じられる作品です。 人間というものの複雑さ、大きさが主人公を中心に渦巻き、絡み合い、生きているということについて考えさせられます。 勿論、そういう教訓めいた話ではなく、小説としてきちんと仕上がっています。 前作「キャバレー」が苦手でなかったら読んで損はない一殺。
2003年01月15日
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小学生の頃、精肉屋兼菓子パン屋でソースをだぼだぼにかけて貰ったコロッケをコッペパンに挟んで食べる美味さと、最近のコロッケ、特にカニコロッケなどと言うシロモノに対する怒りをぶちまける表題作の他、ウォークマンをつけることによる風景の変化、東南アジアの人々のたくましさとそこでカモにされる日本人、プロレスの男達の話、日本の結婚式の馬鹿馬鹿しさを指弾するスーパーエッセイ(?)と、題材も内容もあっちこっちへ飛ぶエッセイ集です。喜ぶにしろ、怒るにしろ、著者の感情がストレートに伝わってくるような文章が気持ち良く読めました。シンプルで太く、時折の脱線がまた人間臭くて良いです。椎名誠らしさが上手く出ている一殺。
2003年01月14日
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テレビ局のトラブル処理を押し付けられている主人公に、ある番組に放映予定だったVTRの一部を持ったカメラマンが失踪してしまったのを探し出せという命令が出された。ところがカメラマンのパスポートを持った男が轢き逃げされ、カメラマンの娘や愛人の周囲に謎の男達がうろついていることが判明し、事件は単なる失踪ではない気配が漂い始めた。内容としてはさほどの特徴も目新しさもありませんが、親しみの持てる主人公のキャラや、彼がカメラマンの娘に振り回される様が微笑ましく読めました。 事件そのものは剣呑としているのだけど、良くも悪くもそれを感じさせません。程良い軽さと読み易さの一殺。
2003年01月13日
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17年間飲み続け、肝臓がぼろぼろになって入院した主人公のそこに至るまでの経緯や心情を通してアルコールに依存するということに関する考察、入院してからの日々やそこでの人間模様、様々な出来事を自らの体験をもとに綴った吉川英治文学新人賞受賞の長編です。インパクトのある設定もさることながら、体験した者にしかわからない迫力のある描写、豊富な資料に裏打ちされたアルコール依存の実情などが非常に興味深いです。中島らもと言えばお馬鹿なエッセイの印象が強かったのですが、これを読んで大きくイメージが変わりました。「ガダラの豚」なんかも読んでみたいですね。巻末対談の相手が山田風太郎というのも驚き。
2003年01月12日
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善良だが愚鈍で引っ込み思案な野呂、一本気で行動的な南条、全く正反対だが仲の良い2人が同じ少女に恋をした。しかし野呂は自分の気持ちを出せず、南条の手助けに徹して身を引いてしまった。 ところが彼女と結ばれた南条が突然の交通事故によって死亡したことで野呂の心は揺れ・・・何と言うか、救いの無い話です。 良かれと思ってやったことが相手には重荷にしかならず、少しずつ歯車が狂い出すように全てのバランスが崩れてゆく。 誰が悪いというわけでも無いだけに、やるせない気持ちになります。3人の少年少女を見守る教師の視点や、取り返しがつかなくなってからの手紙という形での文章も雰囲気が出ています。若さということについて考えさせられる一殺。
2003年01月11日
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新しいものや複雑なものの使い方に悩み、途方に暮れたり見当違いのことをする著者に対して妻が投げ付けた一言、「あなたって、まるでブッシュマンみたいね」その言葉に逆上し、何かにつけ自分とブッシュマンを比較し始めた著者のドタバタなエッセイ集や、阪神ファンの凄まじさを極端に描いた「小説 猛虎阪神応援団」、伊勢、マレーシア、ロタ島の旅行記など、様々な内容の作品集です。侮蔑の対象や非文明人としてではなく、著者の間抜けさや親しみを感じさせる題材としてのブッシュマンの描写が面白く読めました。 北杜夫ならではの思考回路や日々の行動は何度読んでも飽きません。 小説も最後は何だか突拍子も無いオチがついています。 インパクトのある一殺。
2003年01月10日
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飛行機の事故によって無人島へ不時着した少年達。幸いにしてその島には豊富な果物があり、野豚なども居たため彼等はリーダーを決め、小屋を作り、救援信号の狼煙をあげ、狩猟隊を編成し、楽しみながらも秩序ある生活が始まった。しかし、遊びにかまける年少組や主導権を巡ってのリーダーと狩猟隊の争い、謎の生き物の目撃などにより秩序は崩れ、果ては理性を失った殺し合いにまで発展してゆく。極限における人間、集団の心理の推移を通して社会のあり方や人間の弱さ、ルールなどについて考えさせられました。子供ならではの残酷さや我儘だけでは片付けられないものがあるような気がします。 題材以上に重い一殺。
2003年01月09日
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ジャズを愛し、音楽は人間を映す鏡だと信じていたジョニー。しかし、ベトナム戦争を体験し、汚れてしまった筈の自分の演奏が昔以上に評価されてしまった彼の苦悩を描く表題作の他、文部大臣が作詞したという、ある中学校の校歌が実は盗作だったという情報を得て事実関係を調査するうちに思わぬところへ行き着いてしまう「盗作狩り」、私情を切り捨てた渾身の企画の行方「CM稼業」など、音楽、メディアを中心とした題材の中編集です。内容の独特さも興味深いのですが、それよりも悲しみや喜びのようなはっきりした形の無い、やるせなさやおかしみと言った微妙な感情の漂う雰囲気が印象に残りました。インパクトは無いけどじわじわと沁み込んでくる感じです。自分もそういう微妙な気分の時に読みたい一殺。
2003年01月08日
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その巨大さ故に掴み所の無い街・東京。 渋谷、上野、新宿などの主要エリアは勿論、大井、浅草、汐留と言ったわけのわからなさを形成する様々な土地へ著者が突入し、体験したことを綴ったエッセイともルポともつかない作品集です。住んでいる人たち自身、具体的なイメージの湧かない東京の謎・・・という程ではなく、とにかく色々体験することで体験しないよりは何か見えてくるものがあるだろうと言う著者の姿勢が興味深く、面白く読めました。 情報的な価値云々よりも、東京のカオスっぷりが味わえる一殺。
2003年01月07日
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迷っていた結婚に踏み切る瞬間「グレイの層」、前の職場が潰れ、全く畑違いの工場で働くことになった主人公がそこに溶け込む「涼風」、偶然出会った大学の頃の後輩との急展開「金曜日のトマトスープ」など、なかなか自分の居場所を見付けられなかった主人公達がふとしたきっかけで日常に隠れていた幸せに気付くという短編集です。ショート・ショートに近いくらいの短い作品ばかりですが、その数ページでの表現力が秀逸で、読んでいて暖かい気持ちになりました。 若い人に向けてのメッセージのようなものが押し付けがましくなく込められているような気がします。もっと若いうちに読みたかった一殺。
2003年01月06日
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人間の妄想をカプセルに抽出する装置を発明した博士は、自分に想いを寄せる女性から妄想を抜き取り、自分の愛する女性にそのカプセルを飲ませようとするが・・・という表題作の他、福の神の袋の中身「大黒さま」、男性の心を惹き付ける「海のハープ」など、SFながら様々な題材が楽しめるショート・ショート集です。その内容の多彩さもさることながら、軽妙で暖かい文体はさすが星新一というところで全体的なクオリティも高く、安心して読むことができます。 程良い軽さのSF短編が読みたい時はまず間違いの無い選択肢の一つですね。
2003年01月05日
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ある女子大の専務理事を務める主人公。 しかし先代の理事長が死去し、後を継いだ弟の無能ぶり、公私混同ぶりに嫌気がさし、いっそ自分が理事長に取って代わろうという野望を持つようになった。 好都合なことに理事長がある女性事務員に執心していると知った主人公は、探偵を使って2人の関係を確認し、それを理由に退陣を迫ろうと計画した。その一方で自らも外に女性を作り、息子は母と合わず悪い仲間と遊び歩るという状態だったが何とか計画は成功し、主人公は理事長の座に就くことが出来た。 しかし・・・因果応報と言うか、自業自得と言うか、理事長になることばかりに気を取られた結末はなかなか手厳しいもので、一歩間違うと教訓めいた内容になってしまうところですが、小説として読ませる力があってページ数の割にさくさく読み進められました。 ストーリーよりも人間模様の描写を楽しむという目的に向いている一殺です。
2003年01月04日
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ある男に惹かれて家を飛び出した少年を連れ戻す「街の詩」、体の怪我と同じように心の怪我も歩き続けることで治そうとする老人「約束」、別居して打算のためだけに子供を手許に置こうとする両親の間で揺れる少年「名なし」など、探偵である主人公が何かを感じ、引き受けた仕事を描いた短編集です。様々に絡み合う人間の心、そしてそれを感じ過ぎるほど感じてしまう主人公の描写が心地良く読めました。さすがに設定や内容はある程度パターンが出来ていて、味付けを変えているだけですが、その味付けが渋いのでつい引き込まれてしまいます。 逆に言えば、そこに味を感じない人にとっては何のヒネリもない話という感想になってしまうかも知れません。 好みの分かれる一殺。
2003年01月03日
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自分は生身の女性とは縁の無いものと決め付ける男性と女幽霊の話「柳の下」、一念発起した短編小説家が主人公以下子々孫々まで描いた大長編に取り組む「大河小説」など皮肉の効いた短編の他、何かにつけノイローゼにしてしまう風潮を憂える「ノイローゼ・ルポ」、男性の魅力について独自の理論を展開する「ピーコック革命」といったエッセイ、子供の頃の思い出、旅行記など3部構成の作品集です。つい最近読んだ「へそのない本」と収録の傾向や構成が似ていますが、短編に関してはこちらの方が読み物的要素が強いような気がしました。 エッセイは相変わらず彼にしか描けない突拍子も無いキャラと憮然とした文体が非常に楽しく読めます。 色んな作品に触れられるお薦めの一殺。
2003年01月02日
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父は失踪し、母は水商売という家庭環境が災いしてか、筆記も面接も手応えはあるのに就職試験に悉く失敗していた主人公は、あるきっかけで絶世の美女と知り合い、唐突に会社を1つ任されることになった。 しかも彼女の指示に従って株を買うと見る間に値上がりし、気付くと主人公は豪華マンションに住み、高級車を乗り回す身分となり、更にその美女の愛をも得た。 幸せの絶頂にある筈の主人公だったが、あまりに実感の湧かない状況に違和感を覚え、ある少女と知り合ったことで苦労しながら夢に向かって生きることに魅力を感じるようになった。 しかし・・・悪魔ならぬ女神から与えられ、奪われた富の結末を通して幸せとは何か、生きるとはどういうことなのか考えさせられました。 時代や主人公の設定が親しみ易いせいか厚さの割にテンポ良く読めます。 内容的にはややお約束っぽい印象でインパクトはありませんが、あまり重くなくそれなりに楽しめる一殺です。
2003年01月01日
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