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メールチェックをしていたら、楽天ブログからメールが来た。10000HIT・・小説を見てくれている人がいるんだろうか。それにしてもビックリしました。
2007年10月30日
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1918年12月、スペイン・マドリード。マドリード郊外にある瀟洒な造りの豪邸の一室で、ルドルフは激しい眩暈に襲われていた。「ルドルフ様、とうとう・・」「ああ、そうらしい。」ルドルフはそう言ってベッドに横になった。「ユリウス、ミハエルを頼む。」「わかりました。」「それから・・」ルドルフはユリウスの耳元で何かを囁いて、目を閉じた。寝ていたミハエルが起きてミルクを求めて泣き始めた。「よしよし、泣かないで。今からミルクをあげるからね。」ユリウスはミハエルをあやしながら、寝室を出た。ユリウスはミハエルを抱きながらある建物の前で足を止めた。そこは教会が経営している孤児院であった。「ごめんね・・」ユリウスはそう言って孤児院の戸口にミハエルが入っている籠を置いた。-第4章・完-あとがきロシア革命ほとんど出してなくてごめんなさい。そして後半部分が意味不明になってしまいました(滝汗;)。ロシア革命を書こうと思いましたが、いかんせん知識不足で全然書けませんでした・・。それに昼ドラな展開目指そうとしたけれどもこちらも挫折・・本当に期待していた皆さん、ごめんなさい。第5章では敵サイドの魔族の少女・ジュリアーナとカルロスの恋物語を書いていこうかなと思ってます。もちろん、孤児院に捨てられたミハエル君の成長も。ちなみに、ミハエルはロシア語で大天使ミカエルの意味です。ドイツ語だとミヒャエル君。
2007年10月26日
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「ここを出るぞ。」「はい。」産まれたばかりの赤ん坊を連れて、ルドルフとユリウスは北の帝国を後にした。第1次世界大戦を期に、時代の新しい波が、ヨーロッパを襲った。サラエボ事件、辛亥革命、ロシア革命・・時代の激流は王家を呑み込み、次々と崩壊させていった。そして・・1918年11月11日。オーストリア=ハプスブルク帝国最後の皇帝・カール1世退位。これにより、650年以上続いていたハプスブルク家による帝国は、あっけなく崩壊した。そのことを、ルドルフは汽車の中で知った。「私は、一体何のためにいままでやってきたのだろう・・?」「ルドルフ様・・」ユリウスはルドルフを抱き締めた。「本当に、ウィーンには私の居場所はなくなってしまった・・」「私がおります。どんなことがあっても、私があなたをお守りいたします。」「ありがとう・・」ルドルフは涙を流しながら、ユリウスの唇を塞いだ。
2007年10月26日
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1918年7月12日。ルドルフはサンクトペデルブルク市内の自宅で陣痛に襲われ、ベッドの上で暴れ回っていた。「ルドルフ様、今です、息んで!」「ううっ~!!」額から汗を流しながら、ルドルフは何度もいきんだ。「頭が見えてきました、もう少しです!」「う~!」ルドルフは最後の力を振り絞り、気を失った。元気な産声が、部屋中に響いた。「ルドルフ様、産まれましたよ。元気な男の子です。」ユリウスはそう言ってルドルフに赤ん坊を抱かせた。「ん・・」赤ん坊はソロモンに似た、美しいトルマリンの瞳と、ルドルフの蒼い瞳を持った子だった。「名前は、何にいたしましょう?」「さぁ・・お前が考えろ。」ルドルフはそう言ってユリウスにそっぽを向いた。ユリウスはルドルフの手から赤ん坊を抱いた。「じゃあ、この子はミハエルと名付けましょう。」「それでいい。」かくして、運命の忌み子がこの世に産まれた。その存在が、やがてルドルフとユリウスを脅かすことになるとは、この時まだ誰も知らなかった。
2007年10月26日
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アレクセイは泣き叫びながら廊下を走っていた。脳裏に浮かぶのは、八つ裂きになったラスプーチンの遺体と、怒りに燃えたルドルフの姿だった。「誰か、助けて・・殺されちゃう。」「どうしたのぉ、アレクセイ?」顔を上げると、そこにはブロンドの少女がいた。「アフロディーテ、助けて!あの人に殺されちゃうよぉ!」アレクセイはそう言ってアフロディーテに駆け寄った。「あらあら兄様を怒らせちゃったんだ、いけないわね。でもお兄様の暴走する姿は美しいからいいわ。」「ルドルフと、知り合いなの?」「知り合いも何も、私とルドルフ兄様は血を分けた家族よ?」アフロディーテはそう言ってアレクセイの頬を撫でた。「私と一緒にいらっしゃい。」「うん!」1918年7月17日。ロシア帝国皇太子・アレクセイは両親と4人の姉とともに銃殺され、13歳の若い命を散らした。だがアレクセイはその時既にロシアを離れ、ソロモンとアフロディーテと行動を共にしていた。「ねえアフロディーテ、僕ルドルフをものにできるかな?」「さあ、どうかしらね?」アフロディーテはそう言って不敵に笑った。あとがきロシア革命全然書けませんでした・・期待していた皆さん、すいません。アレクセイについては完全に私の創作ですのであしからず。
2007年10月26日
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魔族の本性を呼び覚ましたルドルフは、動くもの全てを斬っていった。やがて彼の白い肌は返り血でまみれ、瞳は真紅に染まった。ルドルフはアレクセイの部屋目指して次々と人を斬っていった。(殺してやる・・絶対に・・!)アレクセイの部屋を見つけ、ルドルフはドアを蹴破った。「ひぃぃっ!」そこには青ざめたアレクセイの従者がいた。ルドルフは彼を斬り伏せた。(どこだ、一体どこに!)アレクセイの姿を探していると、気配を感じてルドルフはサーベルを振り回した。
2007年10月26日
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「ルドルフが愛している司祭というのは、お前?」アレクセイはそう言ってサーベルでユリウスの柔肌を斬った。白い肌から鮮血が噴き出した。「あいつは僕のものなんだよ・・この泥棒猫!」嫉妬に歪んだ醜い顔で自分を睨みながら、何度も何度も斬りつけるアレクセイ。「ユリウスっ!」ドアが乱暴に蹴破られ、怒りを瞳に宿したルドルフがアレクセイとラスプーチン、そして天井に吊されているユリウスを見た。「よくも、ユリウスを・・」「だってお前が悪いんだよ?お前が僕のこと見なかったから。」アレクセイはそう言って笑った。ルドルフの瞳が、徐々に真紅に染まってゆく。突風が部屋を襲い、窓ガラスの破片がアレクセイの全身を突き刺した。悲鳴を上げながら床を転がり、アレクセイは部屋を飛び出していった。「ルドルフ大佐・・」怯えながら、ラスプーチンは恐る恐るルドルフに近寄った。ルドルフのサーベルが、ラスプーチンの瞳を突き刺した。「ひっ」部屋には断続的に振り下ろされるサーベルの音と、肉と骨が断たれる音が響いた。「ルドルフ様・・」ユリウスに映ったのは、全身八つ裂きにされ息絶えたラスプーチンの姿と、狂気を孕んだ真紅の瞳を宿したルドルフの姿だった。「大佐、一体どうなさって・・」部屋に入ってきた兵士が、ラスプーチンの姿を見て青ざめた。だが悲鳴をあげる前に、ルドルフの刃の餌食となった。ルドルフはうなり声を上げて、部屋を出ていった。
2007年10月26日
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革命が勃発して数日が経ち、サンクトペデルブルクは無秩序状態となった。「これからどうなるのだろうな、この国は・・」ルドルフはそう言って窓から暴徒達の群を見た。「滅びの道しか、この国には残っていません。」「そうか・・」ルドルフは窓から目を離してベッドから降りようとすると、激しい眩暈が彼を襲った。「大丈夫ですか?まさか、もう眠りが・・」「いや違う、そうじゃない・・」ルドルフはそう言って身支度をして、ユリウスとともに宮廷へと向かった。貴族達は革命によって自分達が殺されるのではないかと怯えていた。「では、私はここで。」「ああ。」「ルドルフ様、あまり無理をなさいませんように。」「誰に向かって言っている。」恋人の背中を見送りながら、ユリウスは廊下を歩いていると、突然背後から誰かに殴られ、気を失った。「ん・・」「気が付きましたか?」目を覚ますと、そこには喜びで瞳を潤ませるラスプーチンと、憎しみに満ちた瞳で自分を睨むアレクセイの姿があった。「アレクセイ様、これから楽しい実験の始まりですよ。」ラスプーチンはそう言ってサーベルを抜き、その刃をユリウスに向けた。
2007年10月26日
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1917年2月23日。数万人の市民が食糧配給の改善を訴えるデモを起こした。デモは日を追うごとに拡大し、サンクトペデルブルク市内の労働者の大半が参加するようになった。こうした状況を見た帝国政府は、26日デモの鎮圧のため市内中心部のネフスキー通りにて警官隊がデモ隊に発砲し、市民側に多数の死傷者が出た。連隊はデモの鎮圧に混乱していたが、やがてサンクトペデルブルクは無秩序状態となった。帝国政府に不満を持っていた一部の連隊がデモ隊と結託し、それに呼応するかのように兵士の脱走が始まり、反乱兵の規模は数万に達した。ロマノフの終焉が、突然訪れようとしていた。あとがき説明ばっかりですいません。ロシア革命が勃発したときのことを書いてみました。説明不足ですが・・(滝汗;)参考資料 ウィキペディア ロシア革命
2007年10月26日
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ユリウスとルドルフは死霊を相手に死闘を繰り広げていた。だがいくら倒してもキリがない。「クソッ、どうすれば・・」ルドルフはそう言って舌打ちした。その時、彼の背後に死霊の群が襲いかかってきた。「ルドルフ様っ!」ルドルフがサーベルを群に向かって振り下ろそうとすると、彼らは光に恐れをなして逃げ去った。「一体、これは・・」「間に合いましたね。」そこには光を掲げたソロモンが立っていた。「お前・・」ルドルフは眦を上げてソロモンを睨んだ。「何故助けた?お前と私は敵同士のはず。」「言ったでしょう?僕達は同じ魔族。憎しみ合い、戦うことだけが全てではありません。」ソロモンはそう言ってルドルフの唇を塞いだ。「では、僕はこれで。」「待てっ!」後を追おうとしたが、ソロモンの姿は既に消えていた。ドクン、と腹の子の心臓が鳴るのを、ルドルフは感じた。
2007年10月26日
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パーティーからの帰り道、ルドルフは背後に不穏な気配を感じて銃を撃った。すると路地裏から3人の男達が出てきてルドルフに襲い掛かった。 ルドルフは腰のサーベルを抜き、1人の頚動脈を刺し貫き、返り血を浴びながら残りの2人を手にかけた。「ルドルフ様、お怪我はっ!」銃声を聞いたユリウスがルドルフの元に駆けてきた。「ただの雑魚だ。」ユリウスは刺客の遺体を見てハッとした。「どうした?」「この人たちは、確かレーニンの部下だった・・」「じゃあ、こいつらは・・」ルドルフはレーニンの不吉な言葉を思い出し、眉間にしわを寄せた。「宮廷で一目置かれているわたしを亡き者にし、革命を起こす・・なんと姑息な・・」「帰りましょう。」「ああ。」そう言ってルドルフが刺客に背を向けると、死んだはずの刺客の1人がルドルフに向かって剣を振り上げて来た。「この、死に損ないがっ!」ルドルフは刺客の脳漿を突き刺し、頭蓋を鞘で叩き割った。「さぁ、行こうか。」「はい・・」2人が路地を後にしようとすると、突然2人の前に虚ろな目をした者達が現れた。みなその顔は青ざめ、中には半ば腐敗した顔をしている者もいる。「死霊か・・妖魔よりもタチが悪いな。」ルドルフは舌打ちして、サーベルに付いた返り血をコートの裾で拭った。「さぁ、来いっ!」コートを脱ぎ捨て、ルドルフは死霊たちに向かってサーベルを構えた。「ふふふ・・面白くなりそうだね。」「ええ。」水晶玉越しにルドルフの様子を見ていたアレクセイとラスプーチンは、そう言って笑った。
2007年10月26日
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1917年1月。ルドルフがサンクトペテルブルクに来てから一月が経った。 ロシアでは貧民達の暴動が日々起きており、その炎はもうすぐ冬宮を包み紅毛とする勢いであった。拡大する貧富の差。嵩む戦費に、高くなる税金。サンクトペテルブルクでは、レーニンが打倒ロマノフを掲げて民衆の人気を集めていた。そんな中、ルドルフはユリウスにソロモンの子を宿していることを話した。「本当なのですか、それは?」「ああ。」ルドルフはそう言って下腹を叩いた。「私は実験台にされ、腹には憎い敵の子がいる。だから私はこの子を殺す。」「殺すのですか、宿した命を?」「当たり前だろう、お前の子ならともかく、あいつは私たちの敵だ。」ユリウスは何か言いたそうに口を開いたが、ルドルフに睨まれて黙ってしまった。その日、ルドルフはある貴族のパーティーでレーニンに会った。「あなたですね、オーストリアからはるばる来たという貴婦人達の人気を集める若き大佐は。」レーニンはそう言ってルドルフを見た。「どうやらあなたはロマノフを倒して新しいロシアを作ろうとしていますね。」ルドルフの言葉にレーニンは大きくうなずいた。「私はこのロシアを変えてみせる。そのためなら、手段は選ばない。」その言葉にルドルフは背筋に一瞬悪寒を感じた。「まさか、皇帝一家を殺すと?」「そんなことはしませんよ・・けれども、必要とあればするでしょう。あなたは宮廷では一目置かれている存在だと聞きますが、そろそろ自分の身の振り方をお考えになったほうがよろしいでしょう。」レーニンはそう言って不敵に笑うと、ルドルフの元を去っていった。あとがきレーニン登場させました。といってもワンシーンだけですが。ロシア史にあまり詳しくないので、適当に書きました。
2007年10月26日
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「何故、こんなことを・・」ルドルフはそう言って部屋を出ようとした。「僕はあなたを愛しています。だから、愛の証が欲しいんです。」「愛の・・証?」ルドルフはくつくつと笑った。「ユリウスとの子は殺して、私にお前の子を産んで欲しいだと?身勝手な奴だ、お前も、あいつも。」「何と言われても構いません。あなたには僕の子を産んでもらいます。」「死んでもいやだと言ったら?」ルドルフは床に転がっている拳銃に手を伸ばした。「今ここで私が頭を撃ち抜けば、お前とあいつは困るだろうな。そのつもりはないが、お前の子を産むつもりもない。」拒絶の言葉を受け、ソロモンはため息をついた。「随分と嫌われましたね・・」「失せろ、お前の顔など見たくもない。」「わかりました。」一週間後、ルドルフの妊娠が確認された。「ソロモンの子を宿したお前は、戦いを止めることだ。」「わたしはお前達を倒す。」ルドルフはそう言ってユリウスが待つ我が家へと帰っていった。腹の中にソロモンとの愛の証を宿して。
2007年10月26日
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ガァーンッ!!部屋に銃声が響き、弾はソロモンの右肩を貫通した。「何故邪魔をするっ、もう少しで死ねたのにっ!」ルドルフはそう言ってソロモンの頬を叩いた。「今あなたが死んだら、あなたの従者はどうするんです?」「ユリウス・・」ルドルフは恋人の名を、久しぶりに呼んで目を閉じた。「あなたは、彼だけを愛しているのですね・・」ソロモンはさびしそうに笑って、ルドルフの服を脱がし始めた。『ルドルフ様、愛しています。』どこからか聞こえるユリウスの声。目を開けると熱で潤んだ翠の瞳で私を見つめるユリウスがいる。「ユリウス・・」自分を愛してくれる男の背中に、ルドルフは思いっきり爪を立てた。「痛っ・・爪を立てるほど、気持ちよかったんですか?」違う、この声はユリウスじゃない。そこには熱を孕んだトルマリンの瞳で自分を見るソロモンの姿があった。「離せ、離っ・・」「いいえ、離しません。僕の想いを、あなたに刻み込みたいんです。」ソロモンはそう言ってルドルフの最奥で果てた。
2007年10月26日
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オルフェレウスの邸に連れてこられて一週間が経った。ルドルフは毎日飲まず食わずでただ失った命を嘆き悲しんでいた。そのためか頬はこけ、目は泣き腫れて真っ黒な隈が周りを縁取っていた。ユリウスとの間に初めてできた命。それを無残にも奪われ、ルドルフは生きる気力を失くしていた。「また、残しましたね。」ソロモンが部屋に入ってきて、手がつけられていない朝食を下げた。「いい加減何か食べないと、あなたの体がもちません。一口でもいいから食べてください。」そう言って彼はスープをスプーンによそおってルドルフの口元に持っていった。「要らない。」ルドルフはそう言ってソロモンを睨んだ。「何故お前達はあんなことをした?人の命をまるでゴミのように扱って・・」「それは誤解です。確かにあなたにしたことは許されないかもしれません。けれどそれはあなたの命を救うためだったんです。もしあのまま無事に出産を迎えられても、あなたの命が危険に晒されるんですよ。」「それでも産みたかった。だから私はお前達を倒すと決めた。」ソロモンはため息をついた。「強情な奴だ。」オルフェレウスが部屋に入ってきてそう言ってルドルフの顎を持ち上げた。「随分と痩せたな。だが交配には支障はないだろう。」「兄さん、彼はまだ・・」「黙れソロモン。私はルドルフをお前達の実験台として連れてきたのだ。感謝しろ。」「実験台?何のことだ?」「これからお前は私達に抱かれるのだ。お前の従者以外に子を生せるのかどうか・・お前はわれわれにとって貴重な実験台なのだよ。」オルフェレウスはルドルフの服を乱暴に脱がせ、馬乗りになった。それからルドルフはオルフェレウスの残酷な実験台として、毎日サンクトペテルブルク中の魔族に抱かれた。(もういやだ・・こんなのは・・)ルドルフはサイドテーブルに置かれた拳銃を手に取り、こめかみに当てた。
2007年10月26日
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ルドルフがオルフェレウスの邸で悲嘆にくれているころ、ユリウスは冬宮の中でルドルフの姿を探していた。舞踏会から先に帰ってきてルドルフの帰りを待っていたが、とうとう帰ってこなかった。(一体どこへ行かれたんだろう・・宮廷に顔も出していらっしゃらないし・・何かあったのでは・・)そう思いながらうろうろしているとき、1人の男にユリウスはぶつかった。「おや、誰かと思ったらウィーンから来た司祭様ではないですか。」「あなたは・・」長い銀髪をなびかせ、淡いグリーンの瞳をきらめかせながら、皇帝夫妻の寵愛を受けている若い魔術師は自分を見ていた。「人を探しているのですが・・」「それはルドルフ大佐ですか?闇雲に探すよりも私の部屋へどうぞ。」ラスプーチンの部屋へ一歩は入ったユリウスは、部屋に雑然と置かれている医療器具や魔術に用いる道具などを見て、少し鳥肌が立った。「こちらへ。」そう言ってラスプーチンが指し示したのは中央のテーブルに置かれてある水晶玉だ。水晶玉の周りにはタロットが積まれて置いてある。「この水晶玉でルドルフ大佐を探してあげましょう。」ラスプーチンはそう言って呪文を唱えて水晶玉に軽く触れた。すると水晶玉の中にルドルフの姿が現れた。「ルドルフ様っ!」ユリウスが水晶玉を覗き込むと、ルドルフは下腹をさすりながら涙を流している。“兄様、仕方ないじゃない。あいつらは私たちの妊娠を望んではいなかったんだから。”冷めた口調でアフロディーテがそう言ってルドルフのベッドに腰を下ろした。“けどオルフェも残酷よね。ソロモンに気絶させてその内に堕胎するなんて。”(堕胎・・ルドルフ様は・・)この前あんなに嬉しそうに自分に妊娠の報告をしていたルドルフの姿が、脳裏に浮かんだ。“子どもなんてまた作ればいいのよ。”アフロディーテの言葉にルドルフは答えず、虚ろな目で下腹をさすっている。(ルドルフ様・・)ユリウスは涙を流しながらそっと水晶玉の表面を撫でた。今すぐにでも抱きしめたい。だが水晶玉はやがて何も映さなくなった。「大佐がおられるのは、ここから10分もしないところですよ。」「そうですか、ありがとうございました。」そう言ってユリウスが部屋から出ようとすると、ラスプーチンがユリウスの腕を掴んだ。「今はそっとしておいた方がよいでしょう。彼はあなたの顔を見るとますます傷つくから。」「それは・・どういう意味ですか?」「言葉どおりです。」
2007年10月26日
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「そんな・・そんなことが・・」ルドルフはそう言って床にへたり込んだ。「あなたには選択肢が2つあります。1つは剣を取って無意味な戦いを続けること、もう1つは僕達と手を取り合って未来を築くことです。」ルドルフは下腹をさすった。この命がこの世に生れ落ちたとき、自分はいない。ならばールドルフは寝室の壁に掛けられてあるサーベルを取り、装飾を施された鞘を抜き、刃をソロモンに向けた。「私は、お前たちを倒すっ!」ソロモンはさびしげに笑って、壁に掛けてあるサーベルを取った。「やぁぁっ!」上段から勢いよく振り下ろしたルドルフの刃を、ソロモンは難なくかわし、ルドルフの鳩尾に一撃を入れた。「がはっ・・」ルドルフはそう呻いて気を失った。「オルフェ兄さん、後は頼みますね。」ソロモンはベッドにルドルフを寝かせて、立ち去った。「ん・・」目を覚ましたルドルフがベッドから起き上がろうとすると、下腹に焼け付くような痛みが走った。「無理をしちゃだめよ、兄様。だって兄様は堕胎したばかりなんだからvま、私もそうだけどね。」「そんな・・」「あいつらにとって、私たちは希望だから、死んで欲しくないのよ。あいつらにとって、お腹の子は歓迎されなかった命なのよ。」「どうして・・」ルドルフはそう言って下腹をさすった。蒼い瞳から、とめどなく涙が流れた。
2007年10月26日
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「それはできない。」そう言ってルドルフはソロモンに背を向けた。その途端、激しい眩暈に襲われ、ルドルフはよろめいた。「大丈夫ですか?」「ああ・・でもどうして・・」「それはね、妊娠したからよv」いつの間にか部屋に入ってきたアフロディーテがそう言ってルドルフの下腹を指した。「私もね、ここに赤ちゃんがいるのよ。でもね、私と兄様が赤ちゃん産むとね、どちらかが死んじゃうのv」「どちらかが・・死ぬ?」ルドルフはそう言って下腹をさすった。ユリウスとの愛の結晶を産み落とした後、自分は死ぬのか?「本当なのか、それは?」ソロモンはうつむいて静かにうなずいた。「優秀な子孫は1人だけでよい。お前とアフロディーテにとっては酷なことだが、2人とも子を産み落とせば両方とも助からぬ。」「そんな・・」それはルドルフにとって残酷な真実だった。あとがきとうとう残酷な真実を知ってしまったルド様。愛する人の子を宿したのに、喜べないって複雑ですね・・。
2007年10月26日
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「あいにくだが、私には伴侶がいる。」ルドルフはそう言って左手薬指に光る指輪をソロモンに見せた。「ユリウスのことなら知っています。ですが僕は、彼からあなたを奪います。」トルマリンの瞳を決意で光らせながら、ソロモンは言った。「あなたは何故無意味な戦いを続けているのです?同族同士憎み合い、殺しあっても何の利益も生まないのに。」「私には・・守るべきものが・・」そう言ったルドルフの脳裏に、父の涙と最期の言葉が浮かんだ。“ルドルフ、愛してる・・”「あなたの家族はもういない。あなたを慕ってくれる部下達も、あなたを頼りにする友も、もうあの世へ逝ってしまった。それでもあなたは戦うというのですか?」「私は・・私は・・」頭を抱えてうずくまるルドルフの肩を、ソロモンはそっと叩いた。「僕達とあなたは同じ魔族。魔族同士争って血を流すなんて、無意味だと思いませんか?戦いをやめて、僕達の未来を築くために、あなたはここにいるのに。」「私たちの、未来・・?」「そう。あなたは僕達の唯一の希望。だから・・」ソロモンはルドルフに跪き、微笑んだ。「僕の伴侶となって。」
2007年10月26日
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「ん・・」ルドルフはゆっくりと蒼い瞳を開き、辺りを見渡した。ここは冬宮ではない。「目が覚めたか?」ドアの方を見ると、オルフェレウスがそう言って自分を見ていた。「ここはどこだ?」「わが邸だ。そしてお前を閉じ込めるための金の鳥籠でもある。」「鳥籠?」「お前はここで、私の子を産むのだ。至高なる純血種の後継者を。」オルフェレウスはそう言って笑った。「また、会えましたね。」コツン、とブーツの音がして、ルドルフと同じ濃紺の軍服を着たソロモンが部屋に入ってきた。「お前、どうして・・?」「決まっているでしょう。」ソロモンはそう言ってルドルフを抱きしめた。「あなたと、愛し合うためです。」あとがきオルフェに続いてソロモンも再登場。ルド様が好きな弟のためにオルフェはルド様を拉致してソロモンに会わせたのです。そういうオルフェもルド様を狙っていますが。総受けですね、ルド様・・。やっぱり受胎期フェロモンのせいでしょうか?
2007年10月26日
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「どうしました、アレクセイ様?なにやら顔色がよくありませんね。」そう言ってラスプーチンは銀髪をなびかせながら、アレクセイの額に手を当てた。「僕ね、あいつのことが好きなの。」「あいつ?」「うん。最近28連隊の大佐になった奴だよ。」「ああ、ウィーンから来た・・」恋煩いか。「ねぇ、お前の魔術であいつを僕の虜にさせてよ。」「偽りの愛はいつか壊れます。それよりも・・」ラスプーチンはそう言って窓から獲物を見つけた。「彼に罠を仕掛け、あなたのものにするのです。」「それ、いいかもね。」「それでは、私はこれで。」ラスプーチンはそう言ってアレクセイの部屋を出て行き、獲物にゆっくりと忍び寄った。あとがきラスプーチン登場です。実在のラスプーチンはおっさんなんですが、私は面食いなので彼は美形にしました(オイ)。ラスプーチンは魔術師として皇帝夫妻から寵愛を受けていました。アレクセイが血友病を患い、その治療を施したからだといわれてますが、彼は謎が多い人物です。『月光花』では美形だけれどユリウスを密かに狙っている変態という設定です。彼もアレクセイと同様、魔族です。魔族は基本的に美形が多いのです(それは作者が面食いだから←オイ)
2007年10月26日
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「・・どうしてまた私が女装なんか・・」そう言ってルドルフは鏡の前でしかめっ面をした。「プラハ城で私が味わった思いを、あなた様にも知って欲しくて。」ユリウスはニッコリと笑いながら言った。「お前、あのときのことまだ根に持ってるのか?もう随分昔のことだぞ?」「でもあなたはピンクの髪をしたご令嬢に言いがかりをつけられたりしていないでしょう?」ユリウスのエスコートで真珠色のドレスをまとい、サファイアのネックレスをつけたルドルフが会場に入ると、周りにいた男達がどよめいた。「お嬢さん、一曲お願いできますか?」「いいえ、このわたくしと。」「いや、僕と。」ユリウスを無視して男達は男だとは知らずにルドルフを落とそうと必死だった。彼らが必死になるのは、ルドルフの体から漂ってくる甘い薔薇の香りだろう。ユリウスは男達に気圧され、早めに自分を置いて帰ってしまった。(全く、しょうがないやつめ・・)ユリウスはこんな華やかな場所は苦手で、ブタペストでもいつの間にか姿を消してしまっていた。ユリウスがいないとつまらないから帰るかーそう思ってルドルフが出口のほうへと歩き出したときー「私と踊ってくれませんか、フロイライン?」凛とした声とともに入り口からブタペストで見かけた男が現れた。「お前は・・」「久しいな、ルドルフ。」そう言ってオルフェレウスはニヤリと笑って、狼のように鋭いアメジストの瞳でルドルフを見た。「何故ロシアに?目的はなんだ?」「決まっているだろう、お前と交配するために来たのだよ。」オルフェレウスはそう言ってルドルフの腰を掴んだ。「今度こそ私のものになってもらおう。今宵お前は、私の子を産むのだ。」あとがきオルフェ登場。男達はルド様のフェロモンに吸い寄せられてしまいましたね。それにしてもユリウス、頼りにならないなぁ・・まぁ、ルド様がしっかりしてるからいいんですけど。次回はあの美形変態魔術師・ラスプーチンを出します。
2007年10月26日
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「話とは、なんだ?」そう言ってルドルフはアレクセイを見た。「お前、僕のことどう想ってるの?」「お前のことは大切な主だと思ってるが、それが何か?」アレクセイはフッと笑い、ルドルフの左手薬指を見た。「お前には他に好きな人がいるんだね・・」そう言ってルドルフに抱きつく。「僕はお前のことが好きなのに。」「冗談はよせ。」ルドルフはアレクセイから離れようとした。「ねぇ、お願いだよ。一度だけでいいから僕を見て。」「それはできないな。」冷たく言い放ち、ルドルフは部屋を出て行った。「いいよ、お前がその気なら僕は絶対、お前を手に入れてやる・・」くつくつとアレクセイは笑った。
2007年10月26日
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「おはようございます、大佐。」「おはよう、諸君。」ロシア軍28連隊は、今日も宮殿の中庭で訓練をしていた。冬宮で訓練する兵士達の中で一番目立っているのは、彼らの指導者であるルドルフだった。癖のあるブロンドは冬の光によって輝き、濃紺の軍服は均整の取れた体のラインを強調しており、窓からその様子を見ていた女官達は、一斉にため息をつく。「今日の訓練はここまで。」そう言ってルドルフは冬宮の中へと入っていった。アレクセイはルドルフの後姿を、木陰からじっと見ていた。女神のように美しい、その姿。初めて会ったとき、胸が締め付けられるように痛くなった。そして彼を手に入れたいと思った。自分だけのものにして、一生金の鳥かごに閉じこめたい。「何見てるのよ、アレクセイ?」「お姉様。」黒髪をなびかせながら、姉である第4皇女のアナスタシアがそう言って自分を見た。「何見てるのかと思ったら、ルドルフ大佐ね。あの人男なのに綺麗よね。女の私でも妬けちゃうわ。あなた、大佐のこと好きなのね?」「そ、そんなわけじゃ・・」「ごまかしたってだめよ、顔に出てるわよ。」アレクセイはいつの間にか、ルドルフに恋心を抱いていた。
2007年10月26日
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ルドルフは熱に潤んだ瞳でユリウスを見つめて言った。「お前の子どもが欲しい。」「ル・・ル・・ルドルフ様っ!?」あまりにも直截的な言葉をぶつけるルドルフに、ユリウスは顔を耳まで赤くした。「どうなさったのですか、一体?お熱でも・・」ユリウスはルドルフの額に手を当てようとしたが、その手はルドルフによって下腹へと導かれた。そこは熱く、濡れていた。「ユリウス・・」ルドルフは下腹に導いた手を自分の口元へと持っていき、わざと音を立ててユリウスの白い指をしゃぶった。その姿がなぜか艶かしく、指をしゃぶられただけなのに感じてしまう。ルドルフがゆっくりと自分の衣服を脱がしていく。金ボタンを外し、豪華な刺繍が施された軍服をズボンとともに脱ぎ捨て、シャツ1枚の姿となったルドルフのすらりと伸びた美しく長い足を見てユリウスは唾を飲み込んだ。「ユリウス・・」目を開けると、隣には一糸まとわぬ姿で寝ているルドルフの姿があった。それから、ルドルフは毎日ユリウスを求めてきた。一週間くらい経った頃、ルドルフの口からとんでもないことばが飛び出してきた。「ユリウス、私は妊娠した。」ルドルフはそう言ってユリウスに微笑み、下腹を撫でた。あとがきエロくてすいませんでした(滝汗;)。受胎期を迎えたルド様は、何かと積極的です。この時期は理性を捨てて、動物的本能に従うまでです。クールなルド様のイメージをぶち壊してしまいました・・すいません。
2007年10月26日
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「ん・・」ルドルフは朝日が射し込む寝室のカーテンを開け、遥か遠くにある宮殿を眺めた。ここはサンクトペデルブルクにある豪邸が立ち並ぶ裕福な地区である。ルドルフとユリウスは崩壊寸前のボロ家から、瀟洒な造りをしたこの豪邸へと引っ越してきた。ルドルフは昔のような優雅な生活を送っていた。「ルドルフ様、おはようございます。朝食を持ってまいりました。」執事がドアを開け、朝食を載せたトレイを持って入ってきた。「ありがとう。」そう言ってルドルフは執事に微笑んだ。その笑顔に執事の胸はキュンと鳴った。今日の主人は何か違う。髪や肌の艶がいいし、肌はきめが細かく張りがある。そして全身から甘く芳しい薔薇の香りがする。「今日はいい香水をおつけになっていらっしゃるのですね。」「香水?何を言う、私はそんなものはつけていないぞ。」「ではその香りは一体?」「香り?何のことだ?」ルドルフは首をかしげながら朝食を食べた。一体何のことだろう。朝食を食べ終えて身支度を済ませてリビングに入ると、そこにはユリウスが新聞を読んでいた。「おはよう、ユリウス。」そう言ってルドルフは両腕をユリウスの首筋に回した。「おはようございます、ルドルフ様。昨夜はよく眠られましたか?」「ああ・・」なんだろう、ユリウスを見ているとなぜか体が熱い。「ユリウス、今日は仕事を休みたいんだが・・」「何をおっしゃいます、皇太子様のお世話係のほかにあなたは26連隊の大佐なんですから、ちゃんとお仕事をなさってください。」「仕事なんか、どうでもいい。」ルドルフはそう言ってユリウスをソファに押し倒した。「ルドルフ様・・?」いつもとは違うルドルフの様子に、ユリウスは戸惑いを隠せなかった。 むせ返るほどの甘く芳しい薔薇の香りが、ルドルフの全身から漂い、ユリウスの鼻を刺激した。
2007年10月26日
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「ねえカエサル、兄様が宮廷であのクソ生意気なガキのお世話をすることになったわよv」宮殿にほど近い邸の中で、そう言ってアフロディーテはカエサルに微笑んだ。「そうですか・・困ったことになりますね。」「困ったことって、なぁに?あ、わかった、受胎期のことね!」「そのとおり。」カエサルはそう言って眼鏡を押し上げた。始祖魔族―ルドルフとアフロディーテには、それぞれ活動期、受胎期、昏睡期、3つのサイクルがある。特に受胎期は20年に一度しか巡ってこない大切な時期で、この時期は男女関係なく妊娠・出産ができる時期でもある。だが始祖魔族が妊娠・出産すると、2人のうち一方が死に、もう一方が力を失い40年の眠りに就くこととなっている。この時期を逃すとチャンスがないため、始祖魔族および魔族達は伴侶探しで忙しくなる。始祖魔族の1人であるアフロディーテの体内では受胎期を迎えると大量の性フェロモンを放出する。それはルドルフも同様である。だがそのフェロモンは魔族のみならず人間まで誘惑するため、一度間違いを犯すと取り返しがつかない事態となる。「アレクセイ様はソロモンの末弟に当たる魔族。皇太子様の放つ強烈なフェロモンに果たして耐えれるのかどうか、心配です。」「あの子なら我慢できずに兄様押し倒しちゃうわね。」アフロディーテはそう言って紅茶を飲んだ。その頬はばら色で上気しており、髪と肌の艶がよくなっている。「ねぇカエサル、お願いがあるの・・」アフロディーテはカエサルにしなだれかかり、熱で潤む蒼い瞳でカエサルを見た。「なんでしょう?」「あのね・・こんなことを言うのは恥ずかしいんだけど・・お前の子どもが欲しいのv」カエサルはクスリと笑って、慈愛に満ちた目でアフロディーテを見た。「そんなことなら、お安い御用ですよ。」彼はそう言って、アフロディーテをお姫様抱っこしてベッドへと運んだ。あとがき始祖魔族(アフロディーテとルドルフ様)には子どもができる時期、「受胎期」というものがありまして、20年に一度しか来ないという大事な時期なのですが、もしアフロディーテとルドルフ様が出産するとどちらかが死んでしまうという複雑なものなのです。フェロモンを放出するのは、動物と同じように子孫を残すための動物的本能としてです。次回は受胎期を迎えたルドルフ様を書こうと思っています。
2007年10月26日
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カフェでルドルフ達が働いて3日が経ったある日のこと。ルドルフをホテルでナンパした男が2人の前に現れた。「お前、しつこいな・・」そう言ってうんざりした様子で男を見るルドルフ。「へぇ~、あんた黒髪の彼氏いたんじゃん。マジイケメンだねぇ~」男はユリウスに名刺を差し出した。「俺、皇太子様の従者なんだけどぉ、今皇太子様の世話係探してる最中なの。一昨日あんたのこと皇太子様に報告したらさぁ、会わせろってしつこいんだよねぇ。」「ユリウス、さっさと仕事に取りかかろう。」ルドルフは男を完全無視してユリウスの肩をポン、と叩いた。「その話、お受けいたします。」ユリウスはそう言って男に微笑んだ。「ユリウス、本気なのかっ!あんなちゃらちゃらした男、信用できんっ!」「でも宮廷で働けばあなたが望むセレブな生活に戻れますよ?」「うっ・・」確かに、あんなボロ家よりもマシな家に住めるかもしれない。でも、何だか嫌な予感がするのだ。だがー「そうだな。」ルドルフとユリウスは男に連れられ、皇太子の部屋の前に立った。「皇太子様、彼をお連れいたしました。」さっきまでチャラチャラした男の口調が、堅い口調へと変わる。「入れよ。」ドアが開き、中には10歳前後の軍服姿の子どもが座っていた。「皇太子様、こちらが例の彼でございます。隣は、彼の連れです。」「ふぅん・・」アレクセイはそう言ってルドルフとユリウスを見た。その途端、ビビビッと来た。「ねぇ、僕と今からいいことしない?」アレクセイはルドルフの顎を掴んで言った。「いいこと?どんなことだ?」「色々あるよぉ~、鞭で打たれたり、縛られたり、外でしたりねv」儚げな外見とは裏腹に、アレクセイの口からは過激な言葉が次から次へと飛び出てくる。「優しくしてあげるからさ、今からしようよv」「生憎だが、私は打たれるより打つ方が好きでな。」ルドルフはそう言ってアレクセイを睨んだ。あとがきアレクセイとルドルフ様の出会いです。ルドルフ様はSでしょうね、きっと(意味不明)。
2007年10月26日
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「何で私がこんな目に・・」そう言ってブスッとするルドルフ。「仕方ないでしょう、生きるためには働かなきゃいけないんですから。」そう言いながらユリウスは窓拭きをしていた。ホテルを追い出され、ルドルフとユリウスは市内のカフェで住み込みで働くこととなった。司祭となる前に色々とアルバイトをしていたユリウスは慣れていたが、いままで人に傅かれ、頭を下げられる側にいたルドルフにとって、接客業は向かず、主に裏方の仕事に回っているのだった。「それにあんなボロ家に住むなんて・・あんな、ネズミの巣に私が・・」そう言ってルドルフはため息を付いた。「“いつまでも、あると思うな親と金”ですよ。雨露を凌げる家があっていいじゃないですか。」「良くない、良くないぞっ!なんだあの部屋の広さはっ!スイス宮にある私の部屋の半分以下じゃないかっ!」「ホーフブルクと庶民のアパートを比べないでくださいよ。それよりも仕事してください。」「お前・・ホーフブルクにいた時はおとなしかったのに、今では私に意見するようになって・・」ルドルフはユリウスを睨みながら窓拭きを再開した。「絶対にこんなところから抜け出してやる・・ホーフブルクよりいい家に住んで、服も毎日新調して、風呂も毎日入って・・」「口よりも手を動かしてくださいよ。」「ったくああいえばこういう・・」不平不満ばかり言っているルドルフだが、本当はユリウスがいるから何も不満はない。しかし皇太子時代のライフスタイルが身についてしまったため、今の極貧生活とどうしても比べてしまうのであった。「今日もお仕事、頑張りましょうね。」「ああ・・」あとがき私的にはルドルフ様は接客業は向かないんじゃないかと思うんですよ。プライド高いから。それに人に頭下げるよりも下げさせるタイプだし。シンプルライフは次で終わります。
2007年10月26日
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ルドルフとユリウスは、サンクトペデルブルクの最高級ホテルのスイートに落ち着いた。「これから家探しですね。長くは住まないし、内装にはあんまり拘らなくてもいいですよね?」ユリウスはそう言ってベッドに大の字になって寝ているルドルフに話しかけた。「私はボロ家に住むのは御免だぞ。古くてもいいから、一等地の家に住む。」「そんなことだろうと思いました。」ユリウスはベッドに腰を下ろしてため息を付く。「でもこんな時代ですし、豪邸に住むのは難しいかもしれませんよ?」「その時は、その時さ。」ルドルフはそう言ってニヤリと笑ってベッドから降りた。「下のカフェに行って来る。ここのルームサービスは最悪だ。」「私もお供いたします。」「お前は家探しを頼む。そういうことはお前の方が頼りになるから。」「わかりました。」ルドルフは下のカフェに入り、熱々のコーヒーとビーフストロガノフを頼んだ。料理を待っている間、駅でコートをやった子どものことを思った。あのコートはフランツが成人祝いにくれたものだったが、あのコートの他に10着くらいにたようなものがある。皇族としていままで贅を尽くしてきたルドルフは、物に対する愛着心が皆無に等しかった。コートにしろスーツにしろ、望めば何着でも作れる。黒貂のコートをやったくらいで、どうということもない。そう思いながらコーヒーを飲んでいると、誰かに肩を叩かれた。「ねぇねぇ、君宮廷で働かない?今さぁ、皇太子様のお世話係探してんだけどぉ、皇太子様は面食いだからぁ~、きっと君のこと気に入るんじゃないかなぁ~?」振り返ると、語尾を上げて話す気障な男が自分に話しかけている。「それに君ぃ、貴族っしょ?宮廷なら就職先いっぱいあるからおいでよ~」男はそう言ってルドルフの左手薬指を見た。「所帯持ちでもうちは全然大丈夫。毎日8時間労働で残業なしだしぃ、土日とか連休とか、休暇とか休みあるしぃ。家族サービスとか全然OK。それに、出会いもあるしぃ~」こめかみに青筋を立てたルドルフは、男に零度の微笑みを浮かべながら言った。「バツイチですから。」「あっそ。じゃあ皇太子様にピッタリだ。」男は空気が読めないのか、ルドルフの腰に手を回した。「皇太子様はぁ、バツイチとかなんかワケあり系が好きなんだよねぇ。それにぃ、イケメンだと何かと優遇してくれるよv」「・・気安く私に触るな、この下郎。」 堪忍袋の緒が切れたルドルフは、男の急所に強烈な膝蹴りを喰らわし、カフェを去っていった。あとがきルド様、アレクセイの従者にナンパされる。次回から、ルドルフとユリウスの「シンプルライフ」が始まります。
2007年10月26日
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1916年12月、ロシア帝国・サンクトペテルブルク。 300年の永きに渡りロマノフ家が支配するこの帝国は、ハプスブルクが支配するオーストリア同様、斜陽の時期を迎えていた。その影響か、街中には路上生活者やストリートチルドレンが多く、彼らは自動車を乗り回す貴族達に物乞いをする日々を送っている。過去に何度かロシアと対立し、オーストリアをロシアから救おうとしたルドルフは、この帝国の現状を見て驚いた。エカテリーナの治世より、広大な領土を治めてきたロシア。だが北の帝国の栄華は近い。「ルドルフ様?」駅の売店でピロシキを買ってきたユリウスは、凍死寸前で路上に蹲る子どもを見ていた。「ユリウス、ちょっと待っていてくれないか?」「ええ。」ルドルフは子どもの方に歩いていき、皇太子の頃よく愛用していた黒貂のコートを脱ぎ、子どもの肩に羽織らせた。「ありがとう!!」子どもはそう言ってルドルフに微笑み、元気よく路地を駆けていった。「あれはあなた様が大事になさっていた・・陛下から賜ったコートですよ。」「あれの代わりならいくらでもある。それにあの子はいずれロシアの未来を築く存在だろう。」「そうですね・・」オーストリアの元皇太子は、こうして北の帝国に降り立った。その頃、宮殿では-「ちょっとぉ、まだ僕の新しい世話係見つからないのぉ?」そう言ってロシアの幼き皇太子・アレクセイは従者を睨んだ。「まだ見つかっておりませんが、見つけ次第殿下には・・」「さっさと見つけてよね。お母様なにかとうるさいし、そろそろ新しいおもちゃ欲しいしさぁ。今から街行ってイケメン見つけてキャッチして来いよぉ。」20代前半の従者は、「わかりました」と頭を下げて、部屋を出ていった。あとがきロシア編、スタートです。ロマノフ朝末期のロシアと言えば、ロシア革命は外せません。その前に、第3部で少し出てきたソロモンとオルフェレウスの出番を増やさなくては。そしてロシア編では、新キャラが登場します。変態美形魔術師・ラスプーチンと、変態皇太子・アレクセイです。アレクセイは表では病弱で純真無垢な皇太子ですが、裏はルドルフ様に負けず劣らずの策略家で、俺様な子です。
2007年10月26日
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1914年6月28日、サラエヴォ。オーストリア皇太子・フランツ=フェルディナンドとその妻・ゾフィーは、セルビア人の一青年によって暗殺される。オーストリアはそれをきっかけに宣戦布告し、第一次世界大戦が勃発する。だがドイツの圧倒的な武力の前に、オーストリアはなすすべもなかった・・1916年11月21日、ホーフブルク。オーストリア=ハンガリー帝国皇帝・フランツ=カール=ヨーゼフは、最期の時を迎えようとしていた。40年もの長きにわたりこの国を治めてきた獅子は老いてしまい、ドイツの狼にその体を傷つけられた。(ルドルフ・・私はこの国を守れなかった・・お前が命をかけて守ろうとしたこの国を・・)若くして死んでしまった1人息子。愛していたのに、その思いは伝えることができなかった。ルドルフといつも喧嘩ばかりしていた・・子どもの頃はあんなに愛して、いつくしんでいたのに・・。自分はどこかで間違って、あの子を殺してしまった。できることなら、あの子に謝りたい。「父上。」懐かしい声がする。これは空耳だろうか?それともあの子がせめてもの慰めに来てくれたのだろうか?「父上。」目を開けると、あの日マイヤーリンクで死んだルドルフが目の前に立っていた。「ルドルフ・・」「父上、お別れを言いに来ました。」そう言ってルドルフは自分の手を握ってくれた。温かく、柔らかな手。その手に銃で暴発した際にできた傷があるのを、フランツは見た。これは幻覚じゃない。ルドルフが私に会いに来てくれた・・。 あれから27年も経つのに、ルドルフはマイヤーリンクのときの、若々しい姿のままだ。自分はもう、こんなに年老いているというのに。「父上、ゆっくり休んでください。もうすぐ母上に会えますから。」ルドルフはそう言って父の手を握った。「ルドルフ、許してくれ・・お前を愛していたのに、素直になれなかった私を・・」「私だって、あなたを尊敬していたのに、私はあなたを裏切るようなことをした・・それは悔やんでも悔やみきれません・・けれども、こうして最期に会えてよかった。」「ルドルフ・・愛してる・・」フランツの呼吸が弱くなる。「さようなら、父上。私も、あなたを愛していました。」安らかな永遠の眠りに就いた父を、ルドルフは涙を流しながら看取った。「お別れは、お済になりましたか?」キィッと扉が開き、司祭服を着たユリウスが入ってきた。「ああ。もう行こうか、ユリウス。この国に私は必要ないだろう。」「そうですね。」1916年11月21日。オーストリア=ハンガリー帝国皇帝・フランツ=カール=ヨーゼフは、86年の生涯に幕を閉じた。皇帝の死を悼む鐘が鳴り響く中、ウィーン西駅で汽車を待っていた。「どこへ行こうか・・」「ロシアはどうですか?あそこは、今血なまぐさくなってます・・アフロディーテにとっては楽しい場所でしょう。」「そうだな・・ユリウス、またここに戻ってこような。いつになるかわからないが、きっとここに・・」「ええ、戻ってきましょうね。あなたの家へ。」ユリウスはそう言ってルドルフの手を握った。一方、ロシアでは―「ふふ、ルドルフ兄様がここにやってくるわよ、カエサル。」アフロディーテはそう言って従者に微笑んだ。「そうですか・・生きていたんですね。」「ええそうよ、兄様は死んでなかったの。眠ってたのv」アフロディーテはカエサルに抱きついた。「ユリウスも来るわ。これから楽しくなりそうv」(早くいらっしゃいなお兄様、待っていてよv)「ロシアであいつを倒す。」シベリア大陸を横断している汽車の一等車両の中で、ルドルフは決意を固めた。「あいつをロシアで倒す。ユリウス、そのときは・・」「わかっております。」ユリウスはそう言ってルドルフに微笑んだ。「私はいつまでも、あなたのお傍におります。あの日、私は誓ったんです。健やかなる時も、病める時もあなた様と一緒だと・・」「ありがとう、ユリウス。」ルドルフはユリウスの手をそっと包んだ。2人の左手薬指には、あの日交わした永遠の愛の証が、月の光を受けて輝いていた。(これからこの世は混沌と破壊、絶望で満ちる・・その前に私はアフロディーテを必ず倒してみせる!)このとき、長い戦いの幕が上がった。果てしなく続く漆黒の闇のような、戦いが。-第3章・完-あとがき第3章やっと終了いたしました。書きたいことが多すぎて長くなってしまいました。マイヤーリンクでマリーがサーベルでルドルフ様の右手を切り落としたのは完全に私の創作ですので、あしからず。マリーはけなげに彼女らしくルドルフ様を愛していたのだと思います。けれどユリウスの存在で心が乱れ、ソロモンに傀儡の術をかけられて精神がおかしくなり、ルドルフから真実を告げられて崩壊してしまった、という悲劇的な最期を描きました。長い眠りから覚め、父・フランツに別れを告げるルドルフ様。父の最期を看取ったルドルフ様は恋人とともに激動のロシアへ。ロシア編では新たにキャラが登場します。そしてブタペスト編でルドルフ様を魅了した(?)オルフェと、ルドルフ様に惚れてしまったソロモンがついに動きます。第1次世界大戦が勃発し、その後戦いの暗雲が世界中を包み込みました。その後も私たちは愚かしい戦争を繰り返している。21世紀となった今でも、戦いの炎の中で命を落としている人たちがいます。絶望、混沌、破壊、死・・サラエヴォ事件によって私たち人類が開いてしまったパンドラの箱。戦いはなく、平和な世でも心は荒廃し、猟奇的な殺人事件がおきる殺伐とした日本。私たちにはいつ、「希望」が見えるのでしょうか?ルドルフ様とアフロディーテの戦いは、パンドラの箱を開けてしまった人類の戦いとして描こうと思います。最終話は430話を予定しております。ラストはハッピーエンドにしたいと思います。「希望」を見つけたルドルフ様とユリウスの姿を書きたいので。
2007年10月19日
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1909年8月21日、カプツィーナ霊廟。この日はちょうど、20年前に情死したルドルフ皇太子の生誕50周年目に当たる。だがその日を迎える前に、皇太子は若くして死んだ。しかしそれは表向きのことで、実は皇太子は死んでおらず、長い眠りについていた。コツン、と革靴が静かな霊廟の床を鳴らし、暗闇の中から司祭服を纏った男がルドルフの棺の前に立った。黒髪と、翠の瞳をした司祭は、ゆっくりと石棺の白い蓋を開けてゆく。そこにはあの日のままのルドルフが眠っていた。切断された右手を黒手袋で隠され、胸の前に両手を組んだ姿で。司祭はルドルフの胸元に耳を当てた。胸元ではかすかに心音が聞こえる。やがてゆっくりと、ルドルフの蒼い瞳が開かれる。切断された右手は永い眠りの後再生され、それは空を何度も掴んだ後、差し出された司祭の手を握る。「お目覚めになられましたね、ルドルフ様。」司祭はそう言ってルドルフに微笑んだ。ルドルフは司祭のカソックのボタンを外し、襟元をはだけさせて、白い首筋に犬歯を立てた。血がポタリ、と大理石の床に落ちた。「参りましょうか。」司祭はそう言って、ルドルフの手を握った。その言葉を聞いたルドルフは司祭にうなずいて微笑み、司祭の手を握り返した。その瞳は、蒼く美しい光を放っていた。
2007年10月19日
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1889年2月5日、カプツィーナ教会において皇太子ルドルフの葬儀がしめやかに行われた。「ルドルフ兄様は、眠りについたわ。」そう言っても喪服姿のアフロディーテは、さびしく笑った。「昔から私、ルドルフ兄様のこと大嫌いだった。私からユリウスを奪って、死んじゃえばいいんだと思ったの。でも死んでしまうと、なんだか悲しいわね。」「ええ、そうですね。」カエサルはそう言ってアフロディーテを抱きしめた。アフロディーテはカエサルの胸で泣きじゃくった。「もうここには飽きたわ。ロシアに行きたいわ。」「私も、お供します。」
2007年10月19日
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1889年1月27日、ウィーン・ドイツ大使館。ヴィルヘルム2世の誕生パーティーで、ルドルフはマリーと飽きることなくワルツを踊った。シュティファニーは屈辱に打ち震えながらその場を去った。「もう準備はできているかい?」「ええ。」「マイヤーリンクに行ったら、君を思う存分愛してあげるよ。」ルドルフはそう言ってマリーに微笑んだ。「ええ、もう準備はできているわ。」マリーにはかわいそうだが、彼女にはオーストリアのために犠牲になってもらおう。これから私は勝負に出る。眠りに落ちる前に。1889年1月29日、ウィーン郊外・マイヤーリンク。一面の銀世界の中、暗く陰鬱な雰囲気が漂う部屋の中で、マリーは興奮に包まれていた。これから愛する人と一緒に死ねる。なんて素敵なことなんだろう。「家族に宛てた遺書を書いたときは私、泣いてしまったわ。だって本当のことのようで。」「そうだね・・でも君の望みは叶わない。だって私は君のことを一度も愛してたことがないんだからね。」そう言ってルドルフは酷薄な笑みをマリーに向けて浮かべた。今、なんて言ったの?「私を・・愛していなかったの?」マリーはそう言って、壁に掛けてあるサーベルを抜いた。「私を愛してくれているから、私と死ぬんでしょう?ねぇ・・」嘘であることを願って、マリーはルドルフの手を掴んだ。だがー「私に気安く触るな、成り上がり者が。」ルドルフは彼女の手を振り払った。「君は実によく働いてくれたよ。ドイツの裏をかくために君は私に協力してくれたね。それだけは感謝するよ。さぁ、もう行くがいい。」「・・つき」 マリーは怒りと悲しみ、そして絶望で潤んだ瞳でルドルフを睨み、サーベルを構えて突進した。「嘘吐きぃっ!」彼女の激情はルドルフの右手を切断した。私と死んでくれるって言ったのに・・ひどいわ、ひどい!」マリーはテーブルにおいてある拳銃を手にし、こめかみに銃口を当て、17歳の若い華を自らの手で散らした。「大・・嫌い・・」搾り出すような声を出し、硝煙と血に塗れてマリーはゆっくりと床に倒れ、息絶えた。右手を切られても、痛みは感じなかった。ただ、マリーの哀れな最期を、ルドルフは冷たい目で見ていた。(馬鹿な女・・)床に転がっている銃を拾い上げ、自分のこめかみに当てたとき、激しい眩暈に襲われた。「う・・」ルドルフは銃を床に落とした。「ルドルフ様!」床に倒れそうになったとき、ユリウスが抱きとめてくれた。「ユリウス・・私は・・もう・・」「ルドルフ様、お疲れでしょう。少しお休みになってください。」「ユリウス、私はこの国を救えたかな?」ルドルフの問いに、ユリウスは一瞬動揺したが、彼はルドルフに笑顔を浮かべてこう言った。「ええ、あなた様はこの国のためによくやってくださいましたよ。そのことを皆、わかっておりますよ。」「そうか・・よかった・・」ルドルフはそう言ってゆっくりと瞳を閉じた。1889年1月29日、ウィーン郊外のマイヤーリンクにおいてオーストリア=ハンガリー帝国皇太子・ルドルフは男爵令嬢マリー=ヴェッツラと情死。享年30歳。
2007年10月19日
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ルドルフは、ある計画を進めるため、マリーを利用した。自分に惚れている彼女を利用し、ドイツの裏をかいてやろうと必死だった。そしていつしかルドルフはマリーに会わなくなった。偽りの恋はルドルフ自身を苦しめるだけだから。それに、ルドルフが愛しているのは、ユリウスただ1人だけだから。 そんな彼の気持ちも知らないマリーは、ルドルフに捨てられたと思い込んでは、毎日ため息をついていた。(皇太子様は、もう私のことを愛してくれなくなってしまったのかしら・・?) そう思いながら、マリーの脳裏に、ルドルフとあの美しい司祭と熱いキスを交わしている光景が浮かんだ。(あの方は、私のことなんかはじめから愛してくださらなかったんだわ・・)不意に悲しみがこみ上げてきて、マリーは歩きながら泣いた。(どうして、皇太子様?私はあなたのことを愛しているのに、どうして愛してくれないの?)「これを、どうぞ。」肩を叩かれ、マリーが振り向くと、そこにはトルマリンの瞳が優しい光を放ちながら自分を見ていた。「ありがとうございます。」そう言ってマリーはハンカチで目元を拭った。「何故、泣いていたのです?」「悲しい・・恋をしてしまったから。」「悲しい恋?」「私はある方を愛してました。けれど、その方は別の方だけを愛してらっしゃるの・・」「そうですか・・」女神のような美しい容貌を持った青年はそう言ってマリーを見た。その瞳の美しさに、マリーは魅せられた。「あなたは彼のことを愛しているのですね・・彼の中にあなたが永遠に生きられる方法をお教えします。」「・・私が死ねば、皇太子様は私を愛してくださるわ。そうだわ、皇太子様と死ねばいいんだわ。」ぶつぶつ独り言を言うマリーを、ソロモンはほくそえみながら見送った。「これで、邪魔者は消しましたね。」フッと笑ってソロモンは夜の闇に溶け込んだ。
2007年10月19日
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「大公、準備は?」「整ったぜ。」「そうか・・感謝する。」「あんまり無理すんなよ。俺に取っちゃお前だけが頼りなんだからな。」「わかってる。」ヨハンが部屋を出て行き、ルドルフはいつになく激しい眩暈に襲われ、椅子に倒れ掛かるようにして座った。眠りが近い。だがまだ眠るわけにはいかない。私にはやらねばならぬことがー―そんなにこの国を守りたいのかい?突然頭の中で声が聞こえた。―お前がいくら頑張っても、この国は救えないのにクスクスとあざけりの笑い声が細波のように神経を逆なでする。(黙れ。)―お前に待っているのは、絶望とこの国が滅ぶ姿だよ。「だまれっ!」ルドルフは腰のサーベルを抜き、見えぬ声に向かってきりつけた。その途端に声はやんだ。その夜、押し寄せる眠りと狂気に戦いながら、ルドルフは徹夜して残りの仕事を片付けた。
2007年10月19日
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ユリウスとの熱いキスを交わしているところをマリーに見られたことも知らずに、ルドルフはユリウスの体に溺れていった。神の前で、禁忌を犯す。なんと気持ちのいい行為だろう。神など信じていない。自分の目に映る現実だけを信じる。いままでも、これからも。「聖域で禁忌を犯すなんて、大胆だねぇ。」ふと耳障りな声が聞こえて振り返ると、そこにはロマの服をまとった黒髪の女が立っていた。金の瞳は好奇心に満ちた視線をユリウスに投げる。「それがあんたの伴侶かい。」「何者だ。」「そう警戒おしでないよ、あたしはあんたの仲間なんだからさ。」そう言って女はニッと笑った。鋭利な犬歯が女の唇の隙間から覗いた。「お前さんは罪深い男だねぇ、小娘を弄び、聖域で天使を犯すなんて。」「天使じゃない、ユリウスはわれわれと同じものだ。」ルドルフはそう言ってユリウスの頬を撫ぜた。「血を与えたんだね?天使が愛しいあまりに。」「そんなところだ。お前は何をしにここへやってきた?」「あんたたちの濡れ場を見るために来たのさ。それに、伝言を預かってきた。」「伝言?」ルドルフの眉が少し釣りあがった。カサンドラは翠の薔薇に巻かれた羊皮紙を取り、それをルドルフに投げてよこした。そこには流麗な文字でこうかかれてあった。『あなたを必ず、僕のものにします -S-』ルドルフの脳裏に、ブタペストで会った青年の笑顔が浮かんだ。「ソロモンはあんたにゾッコンさ。いずれ天使様に危害を加えるようになるかもね?」魔女はそう言って笑った。「失せろ。」「じゃあね、皇太子様。」魔女の姿は、闇の中へと消えていった。
2007年10月19日
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「まだミッツィとかいう女とは続いていらっしゃるの?」マリーを家に送るとき、馬車の中で彼女はそう言ってルドルフを見た。「そんなことを聞いてどうするのかな?」「だって、わたしは・・」「やきもちかな、困った子だね。」マリーは頬を膨らませてルドルフを見た。「わたし、皇太子様の女になりたいんですもの。あんなブスよりも、わたしの方がいいでしょう?」自信過剰なマリーの言葉に、ルドルフは苦笑する。「さようなら、また会おう。」マリーはうっとりとした目で、霧の中に消え行く馬車を見つめた。ルドルフと密会した数日後、マリーはアウグスティーナのミサに出た。成り上がり者の娘が入ってきて、由緒正しき高位貴族達は一斉に彼女を見て眉をしかめた。だがそれも美しい司祭が現れると、彼らの顔は一斉に彼の美しさに魅せられた。それはマリーも同じだった。(綺麗な方・・)美しく、艶やかな黒髪。象牙のような白く透き通るような肌。そして美しく澄んだエメラルドの瞳。まるで地上から降りてきた天使が、この場にいる者たちに神の教えを授けているかのようだった。ミサが終わっても、マリーはまだ信徒席に座ってボーっとしながらユリウスを見ていた。「どうなさったんですか、気分でも・・」美しい司祭はそう言って自分に声をかけた。「大丈夫です。」マリーは慌てて立ち上がり、アウグスティーナを出た。入れ違いに、ルドルフがアウグスティーナに入ってきた。それを見たマリーは、アウグスティーナに戻った。そこでは、ルドルフと熱いキスを交わす司祭の姿があった。(そんな・・あんな美しい人が、どうして・・) その光景を見た瞬間、マリーはさきほど美しいと思っていた司祭に対して激しい憎しみを抱いた。
2007年10月19日
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ユリウスは今朝の朝刊を見てため息をついた。そこにはルドルフが男爵令嬢との熱愛が発覚した、というくだらないゴシップ記事だった。ルドルフの女遊びの激しさは、ユリウスはよく知っている。美しい容姿と皇太子という地位に寄ってくる女達の数は数え切れないほど多く、その結果ルドルフには隠し子が30人もいるほどだ。だがルドルフが本気で愛しているのはユリウスだけだ。彼にとって女遊びは一種の娯楽のようなもので、すぐに飽きると他の女を探すのだ。ユリウスはそんなルドルフの女遊びを初めて知ったときはショックを受けた。だが女遊びはルドルフの娯楽のようなものだと思えば、次第に何にも思わなくなってきた。ガウンを脱いでシャツを着ようとすると、全身を映す鏡に白い喉に赤い手形が見えた。それは数日前、シュティファニーが嫉妬に駆られて自分を絞殺しようとした跡だ。彼女は王宮で大事に育てられ、それゆえ世間を知らず、男女のことも知らない幼くて世間擦れしていない無知な少女だ。ウィーン宮廷人はそんな彼女を冷遇し、姑である皇后や義妹であるマリア=ヴァレリー皇女でさえも彼女を嫌った。ベルギーから来た花嫁は、四面楚歌のウィーン宮廷で孤独にさいなまれていた。かつてのルドルフのように。だがルドルフにはユリウスがいた。ユリウスがいたから、ルドルフは狂気に蝕まれることなく、ここまで来れた。だがシュティファニーには、気を許す友人も、理解者もいない。孤独な彼女の心のよりどころは、美しい夫だけだった。だがその夫は、自分を愛さずにユリウスを愛した。瞼を閉じ、ユリウスはシュティファニーの憎しみに歪んだ顔を思い出した。美しい夫を奪った、美しい聖職者。未だに消えない赤い手形は、彼女の怒りと嫉妬、そして決して癒されることのない深い哀しみ。ユリウスはシュティファニーのことを憎みもしなければ、嫉妬もしない。ただ、彼女には哀れみだけを感じる。宮廷に冷遇され、夫にも愛されず、常に孤独に苛まれる少女。それが、ハプスブルクの哀れな皇太子妃の姿だった。 彼女はユリウスを絞殺しようとしたあと、逆にルドルフに半殺しの目に遭い、夫に似た1人娘をウィーンに残し、一人寂しく実家へと帰っていった。 彼女の侍医によると、傷は癒えたが精神衰弱状態にあり、当分ウィーンには戻れないという。たとえ彼女がウィーンに戻ったとしても、そこで待ち受けているのは中傷の嵐と絶え間ない孤独だろう。(哀れな人・・)ユリウスは記事を目で追いながらフッと笑った。そもそも、彼女がルドルフと結婚したのが間違いだったのだ。彼女が不幸なのは、彼女がルドルフと結婚したからだ。シュティファニーは自ら孤独と不幸の道を歩んだ。(不幸な方・・でもそれは皇太子妃様が望まれたこと・・ルドルフ様と結婚などせず、永遠に純真無垢な少女のままでいられたほうがよかったのに・・)「ユリウス、何を見ている?」いつの間にかルドルフが自分の背後にいて、ゴシップ記事を見ていた。「いいえ、何でも。女遊びはほどほどになさりませんと。」「またお兄様の説法か。」ルドルフはそう言って顔をしかめたが、目は笑っている。この少女もいずれは捨てられるだろうが、そんなことは自分には関係ない。
2007年10月19日
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ウィーンにあるヴェッツラ男爵邸では、その娘であるマリーが、ルドルフの写真を集めては眺め、ため息をついていた。女と見まごうばかりの美しい容姿を持ったルドルフは、まさに彼女にとっておとぎ話の王子様だ。(あの方にもう一度お会いしたいわ・・)自分は金で爵位を買った成り上がり者だ。ウィーン宮廷人達は自分達を快く思わず、成り上がり者と呼び軽蔑する。金をかけて準備した社交界デビューも、「成金趣味」と酷評されただけだった。そのとき、ルドルフに会ったのだった。正確には遠くで見たのだが。癖のあるブロンドの髪はシャンデリアのしたで美しく輝き、金色の睫毛と眉毛は優雅なカーブを描いている。そして何よりも美しいのは、瞳の色。まるで極寒の湖の水面のような、美しい蒼い瞳。マリーはその瞳に魅せられた瞬間、ルドルフに愛されたいと思った。金で爵位を買った成り上がり者の貴族と、ハプスブルク家の皇太子。どうマリーがあがいても、ルドルフとは結婚できない。でも自分を見てくれるだけでいい。気にかけてくれるだけでいい。そして、愛してくれるだけでいい。マリーの願いは、ただそれだけだった。
2007年10月19日
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「すまないな、ユリウス。お前にはいつも迷惑をかけてばかりだ。」ベッドに横になったルドルフは、そう言ってユリウスの手を握った。「何をおっしゃいます。あなた様のために、わたしはいるのです。」「そうだな・・そうだったな。」ルドルフはそう言ってフッと笑った。「ミッツィにも話したんだが・・眠りが近づいている。」「眠りが・・?」ユリウスの美しい顔が、こわばる。「ああ。私はその前にやらねばならないことがある。だから、傍にいてくれるか?」「ええ。だってわたしはあなた様の従者ですから。」「何を言う。恋人としてだ。」そう言ってルドルフはベッドから起き上がり、ユリウスのカソックを緩める。「血をくれ。」「わたしの血なら、いくらでもあなたに差し上げます。」「お前もわたしの血を飲むといい。」「では・・」ルドルフとユリウスは互いの血を交互に飲んだ。愛しい人の血は、とても甘かった。
2007年10月19日
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「ふふふ、やったわよカエサル。」「どうなさったんですか、アフロディーテ?」「お兄様がね、あのブスを半殺しにしたのv」「皇太子妃様を?」「ええ。あいつ、ブスのくせに高貴な血筋を鼻にかけて、ムカつくったらないわ。ユリウスを殺そうとして、逆にあいつ半殺しの目に遭ったのよ、いい気味だわ。」そういったアフロディーテの瞳は、らんらんと光っていた。「皇太子妃様には同情も哀れみも感じません。」「そうね、そうよね。」アフロディーテは窓を開け、ホーフブルクに向けて歌を歌った。(また、あの歌が・・)ユリウスを抱きかかえたルドルフは、アフロディーテの歌を聞いて頭痛に襲われた。シュティファニーを取り囲んでいた侍女達は錯乱状態になり、何か叫んだりわめいたりしている。“とうとうお目覚めになったのね、兄様v”アフロディーテの声が、直接頭の中で響く。“さっさと殺しなさいな。”(いやだ、やめろ・・)「ん・・」ルドルフの腕に抱かれていたユリウスが目を開けると、そこには眉間にしわを寄せているルドルフの姿があった。「ルドルフ様?」「やめろ、私は・・お前とは違う・・」瞳から蒼い光が次第に消え、真紅に染まっていく。「ルドルフ様、わたしがおります。」ユリウスはそう言って、ルドルフの手をそっと握った。「あ・・」愛しい人の手の感触を確かめ、ルドルフは正気に戻った。「ありがとう、ユリウス。私を正気に戻してくれて。」「わたしは、なにもしていません。」ユリウスはそう言ってルドルフに微笑んだ。
2007年10月19日
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「お前なんかいなくなればいいのよ、死ねぇっ!」シュティファニーは万力を込めてユリウスの首を締め上げた。「うっ・・」憎しみに満ちた皇太子妃の目。その目には涙が光っていた。「お・・ゆ・・し・・く・・だ・・さ・・い・・」そう言ってユリウスの意識は闇に堕ちた。妻の部屋に入ると、そこには力なく横たわるユリウスの姿を、歓喜の表情を浮かべる妻の姿があった。「邪魔者は消しましたわ、あなた。」「ユリウス・・」ユリウスを揺さぶったが、彼はビクともしない。「これであなたと2人だけの世界だわ。あなた、愛していますわ。」シュティファニーはそう言ってルドルフにしなだれかかった。「お前・・よくも、ユリウスをっ!」「皇太子妃様、しっかりなさってください!」「皇太子妃様!」侍女達が全身血まみれのシュティファニーを見て泣き叫んでいる。ルドルフは彼女の返り血が付いている袖口を見た。(これが・・魔族の力・・?)
2007年10月19日
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シュティファニーはルドルフが今夜も帰ってこないことにイライラしていた。自分を愛してくれないことはわかる。何も望んでくれていないことはわかる。けれども、それでも自分はルドルフを愛しているのだ。だがルドルフはそんな彼女の気持ちを知らない。(私は何のためにここに来たの?私は一体・・)そう思いながらため息をついていると、黒髪の司祭と夫の姿が視界に入った。そして見てしまった、2人がキスをしているのを。(私を愛してくれなかったのは・・)「ユリウス、皇太子妃様がお呼びだよ。」「皇太子妃様が?」ユリウスがシュティファニーの部屋のドアをノックすると、そこには険しい顔のシュティファニーが立っていた。「あなたね、夫によくしてもらっている司祭様というのは。」そう言ってシュティファニーはユリウスのあごを掴んだ。「憎らしいほど美しいわね・・言いなさい、どうやって夫に取り入ったの!」「私は、何も・・」「嘘おっしゃい!」シュティファニーは嫉妬に任せてユリウスの頬を何度も何度も叩いた。「わたくしのものなのよ!ルドルフ様はわたくしのものなのに、お前はわたくしからルドルフ様を奪ったのよ!死んで償いなさい!」シュティファニーはそう言ってユリウスの首に手をかけた。
2007年10月19日
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ユリウスが救護院に向かっていると、目の前に1人の青年が立ちはだかった。「あなたに、お話があるんです。」その青年は、ブタペストで会った青年だった。「私に、何のお話ですか?」「単刀直入に言います。あなたは“あの方”とは一体どんな関係なんですか?」ブタペストで見た柔らかな瞳とは違い、ソロモンの自分を見る瞳は険しかった。「ルドルフ様と私は・・」「恋人同士ですか?それならそれでいい。」ソロモンはユリウスを睨んだ。「僕はあなたから“あの方”を奪います。あなたのような優柔不断な人がいたら、“あの方”は傷つく。だから、あなたは身を引いてくださいね?」「私が・・ルドルフ様を、傷つける・・?」「そうです。あなたは“あの方”を知らずのうちに傷つけているではありませんか。」ソロモンはそんなこともわからないのか、というような目つきでユリウスを睨むと、カフェから出て行った。「私は・・ルドルフ様を・・」ソロモンが放った言葉の刃に突き刺され、ユリウスはしばらく動けなかった。
2007年10月19日
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「見せて頂戴、血が出たところ。」そう言ってアフロディーテはエルジィのぷっくりとした愛らしい手を掴んだ。「いや・・」エルジィは恐怖を感じて、アフロディーテから一歩、後ずさった。「変なことしないわよ。だから・・」「エルジィから離れろ!」ルドルフがアフロディーテの背中にいつの間にか銃口を突きつけていた。「じゃあね、私の可愛いお人形さんv」アフロディーテは黒薔薇の嵐を巻き起こして消えた。「どうでしたか、ルドルフ様の娘は?」「とーっても可愛い子だったわ。あのブスに似なくてよかったし、あの子とってもおいしそうだったわ。連れて行こうと思ったけれど、兄様に邪魔されちゃったわ。」アフロディーテはそう言って舌打ちした。「ねえカエサル、私、いいこと思いついたの・・」アフロディーテの瞳が、残酷な光を放った。
2007年10月19日
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エルジィはその夜なかなか眠れず、王宮庭園で咲き誇る薔薇を見ていた。ひときわ目立つのは、父・ルドルフがブタペストから持ってきたという翠の薔薇だ。自然界にないその色は、神々しさとともにまがまがしさを思わせるほど、美しい。「きれぇ・・」エルジィが手を伸ばすと、その柔らかな手は棘に触れ、血が流れた。「あらあら、大丈夫?」振り返ると、真珠色のドレスを着たお姫様が立っていた。「血が出ているわね・・」そう言ってアフロディーテは舌なめずりしながらエルジィを見た。(おいしそう、この子。)
2007年10月19日
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ルドルフはホーフブルクを出て、ミッツィに会いに行った。「こんばんは、皇太子様。」「こんばんは、ミッツィ。」ルドルフはそう言って愛人に微笑んだ。「ユリウスさんがこれを皇太子様にって。」ミッツィがルドルフに渡したのは、真紅のワインが入ったボトルだ。ルドルフはボトルの栓を開け、中の液体を全て飲み干した。「お体はあれからいかが?ユリウスさんがかなり悪いとおっしゃっていたけれど・・」「大丈夫だよ、ミッツィ。心配してくれて、ありがとう。」「いいのよ。私にできることは、これだけですもの。それに・・私はユリウスさんには敵わないわ。」そう言ってミッツィはさびしそうに笑った。ミッツィはルドルフとユリウスが魔族だと知っていた。そしてルドルフが愛しているのは、ユリウスだけだということも。「最近眩暈がするんだ。もしかしたら、もうすぐなのかな・・」「もうすぐって、眠りが近いの?」始祖魔族―ルドルフとアフロディーテには、10~20年単位で昏睡期を迎える。ここ最近、ルドルフは激しい眩暈に襲われていた。もうすぐ、眠りのときが来る。そのときまで私はこの国を守らなければ。
2007年10月19日
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1886年末、ウィーン。ホーフブルクでは皇帝主催の舞踏会が行われていた。ルドルフは妻をエスコートしながら大広間に入った。貴婦人や令嬢の視線が、一斉にルドルフに向けられる。それとは逆に、シュティファニーには氷のような冷たい視線の矢が突き刺さる。他愛のない話をして、ルドルフは舞踏会を抜け出した。愛していない妻を残して。「おとうたまv」アウグスティーナに足を向けようとすると、エルジィがこちらに駆けてくるのが見えた。「エルジィ、どうしたんだい?寝る時間じゃないのかな?」「待ってたの、おとうしゃまが戻ってくるの。」「しょうがない子だね。」ルドルフはそう言ってエルジィをだっこした。「どこ行くの、おとうしゃま?」「天使様に会いに行くんだよ。」アウグスティーナに着くと、ユリウスが神に祈りを捧げていた。「きれい・・」エルジィはそう言ってユリウスを見た。「ルドルフ様、舞踏会は・・」「抜け出してきた。ユリウス、娘のエルジィだ。」「初めまして、エルジィ様。」「は、はじめまして・・」ユリウスの笑顔を見たとき、エルジィは彼の優しさに包まれたような気がした。「おとうしゃま」「どうした、エルジィ?」「おとうしゃまは、天使様のこと、お好きなの?」一瞬ルドルフの顔に動揺が走ったが、すぐにいつもの顔に戻った。「うん、好きだよ。天使様は、私を助けてくれるからね。」エルジィはその言葉の意味も知らず、父の腕の中で眠った。
2007年10月19日
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