今日も他人事

今日も他人事

2025年10月26日
XML
テーマ: 遊戯王(512)
カテゴリ: TCG
※広告が含まれます。案件ではございません。



そんな訳で、ネオニュー沢渡回です。アクションデュエル自体がNGと言う人でなければ見といて損はないですよ、本当。

というのも、遊戯王シリーズでもここまで「見世物としてのデュエル」を積極的かつ肯定的な内容として、ちゃんと無理なく描けているのは稀有なのだ。『GX』や『5D's』でも見世物としてデュエルが描かれることはあったが、「観客を沸かせて魅せる」という点を劇中キャラ達に意識させ、かつ、それを「善いもの」として描くことに、ここまで全力を傾けているお話を少なくとも私は知らない。どちらかと言えば、通常、ほとんどのデュエリストは「自分が勝利する」や「熱いデュエルを楽しむ」ことそのものに価値を見出しており、観客はそれに勝手に興奮して魅せられるものとして描かれてきたから。そして正直な話、実際に視聴者も納得できる形で描けているのは『ARC-V』全話通しても、この回を含めて数えるほどしかないと思う。




……ただ、このネオニュー沢渡回がエンタメデュエルの理想形としてあまりに上手く描けてしまったことは、結果的に二つの遺恨を残すことにもなってしまったと思う。

一つは、このお話があまりにも物語序盤だったということ。『ARC-V』は全148話で、今回の話はまだ31話。ここから100話以上のお話が紡がれることになったが、エンタメデュエルという観点に限って言えば、ネオニュー沢渡回の満足度に匹敵する回はあっても、それを超えたと感じた回はパッと思い出せない。モンスターの派手さや召喚方法の複雑さは寧ろ話が進むにつれて上がって言っている。しかし、それでも、ネオニュー沢渡回と比較した時、でも一番は……となってしまう。エンタメデュエリストとしての成長譚として成り立たせるのであれば、最悪、最終回だけでもネオニュー沢渡回を超えなくてはならないのだが、果たして、『ARC-V』という作品は、それを実現できていただろうか?




そして、もう一つは、このデュエルで描かれた内容が以後、劇中で活かされる素振りが見られないことである。沢渡はまだ良い。ここから、魔界劇団を手に入れて彼なりにエンタメデュエルを披露していくから。一方、遊矢はジャックから独り善がりだとダメだしされた挙句、ここぞという時にスマイル・ワールドを発動して視聴者置いてけぼりで観客を恍惚とさせていく。まるで、スマイル・ワールドこそがエンタメデュエルだとでも言わんばかりに。でも、思い出して欲しい。エンタメデュエルとしてちゃんと成立していたネオニュー沢渡回に スマイル・ワールドは存在しない という事実を。



そもそも、デュエルとは本来、善いものでも悪いものでもなく、「二人のプレイヤーがカードゲームを使って雌雄を決する」以上のものではない。分かりやすいのが初代やGXで「友達とゲームとして遊ぶ」か「試合でデュエリストとのしての腕を競う」、または「闇の力で決着がつかないので、カードゲームの結果で白黒つける」行為でしかないのだ。

エンタメデュエルとは、限定的な一形態に過ぎず、あくまで双方のデュエリストが"魅せる為"に全力を尽くし合ってシンクロした時に生じ得る偶然の産物に近い。遊矢が幾らエンタメデュエルをやろうとしたところで、相手がそれに乗ってくれなければ成り立たないのだ。それは、次の黒咲vsソラの前半パートでもよく分かる。あの前半パートは基本的にソラだけがエンタメデュエルをしようとして妙に滑っている感じが否めない。逆に後半パートでソラが本気で潰しにかかってからが最高に面白くなるのだ……もっとも、それは遊矢の理想とするエンタメデュエルとはまるで性質の異なるものでもあったが。





……問題は、その難しい産物を「劇中のキャラクターの好意的反応」だけで無理矢理、成り立たせようとしてくることなんだけど。幾らスマイル・ワールドで劇中の観客が笑っても、視聴者が笑えないのでは意味がない。寧ろ、なんじゃそりゃ、と呆れかえってしまう。

一昔前のエロゲやラノベでハーレム系の主人公が理由もなく劇中の美少女達からモテまくるのを見て、シラケるのと同じだ。書き手は劇中人物の反応を自由に描けるが、それは読み手の認識とズレないという範囲でのみ許される。それを超えた描写をされれば、読み手は納得するどころか作品そのものから醒めてしまいかねない。

正直、『ARC-V』という作品には色々思うところはある。あるけれど、個人的には、この劇中人物の好意的反応で無理矢理、物語を展開していったところも 低評価が増えてしまった 要因の一つだと思う。ゴリ押しダメ、絶対。


※11月5日追記



そんな訳でスマイルワールド登場。リアタイ当時はまぁ、こういう立ち直らせ回があってもいいかな、ゼアルにもあったし……ぐらいの気持ちでしたね。まさか、その後も散々引っ張るとは思わなかったよ、うん……



スマイルワールドというカードが遊矢にとって大事なものであること自体は良いのです。言ってしまえば、父親の形見――パパスの剣やオルテガの兜――みたいなもんですし。 まぁ、遊勝は死んでないけど。

問題なのは、遊矢とママさんだけでなく、他の劇中人物にまで受け入れられてる点。どの辺が盛り上がるのかさっぱり分からない。ねぇ、教えて。モンスターがニコォ……ってなることの何がそんなに面白いの???



私自身、ひねくれ気味な所はあるんですけど、でも、作ってる人達が本当にこれ愉しくて面白いと思ってるのかなぁって首を捻ることがしばしばで。大人の考えた「子供の喜ぶもの」みたいな感じで。なまじ地下デュエル(黒咲vsデニス)なんかは普通に見応えあるし、素直に面白いと感じるだけに。うーむ……



そういえば、このクロウvs遊矢のやり取りも苦手でしたね。シンクロ次元のクロウが変に因縁付けて来るのは百歩譲って納得できるとしても、遊矢がムキになって笑顔笑顔と言い募るのがちょっときつかった。十代とか遊馬は苦手なタイプなんですけど、この辺の遊矢はただただ不快だったなって……まぁ、シンクロ次元編は皆、バラバラ過ぎて正直、なんだかなぁ感が否めず。OPとEDは良かったんですけどねぇ……(==


※11/5追記 榊遊矢は空気が読めない?

第32話の沢渡
「来いよ、エンタメデュエリスト!沸いてるんだよ。今、俺たちのデュエルに会場が。期待してんだよ、観客が。お前のターンだ。みごと応えてみせろ」

第56話の沢渡
「こんな時にまだエンタメかよ!お前、状況分かってんのか!?」



じゃあ、遊矢はどうかっていうと……実は、読めてると思うんですよね、同じぐらい。ちゃんと状況把握をした上で、頭を回して作戦を立ててるんです。本当に空気が読めてない人はね、ああはしないと思うんですよ。それに、vs社長(2回目)やvs素良(2回目)からも分かるように逆鱗状態でなくてもエンタメせずにガチで戦う場面はちょくちょく描かれてます。

要するに、遊矢は自分が場違いであることを理解した上でそれでもなお、極力、エンタメを強行しようとしているのです。何故か?

それは、それこそが父親である遊勝のスタイルであり、遊矢の目指す理想そのものだから。




派手なパフォーマンスと演出で周囲を煙に巻き、皆を笑顔にしてみせる。だから、逆境であればあるほど、遊矢にとっては寧ろ「自分のエンタメで笑顔にしなくては」となる訳です。

でも、その行為は、ある意味ではた迷惑で、場違いなのです。極端な話、善意の押し売りと言っても良い。空気を読まない行動をしているのだから、周囲から反発されたり、理解されず馬鹿にされても仕方ない。寧ろ、この辺りは制作側の意図通りかと。だから、後でジャックに「お前のデュエルは独りよがりに過ぎない」と言わせてるんだと思うんですよね。多分。知らんけど。





だから、後々、遊矢が劇中人物を沸かせて盛り上げるシーンを描いたとしても、視聴者がそれに乗れないと「お、おう」となってしまう訳ですが、はてさて……





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2025年11月05日 22時05分29秒
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

白ケイ

白ケイ

フリーページ

時間に余裕がありましたら、どうぞ


三国志調査記録


1.魔王生誕


2.魔王、黄布に敗れ


3.辺章、韓遂の乱に魔王出陣す


4.馬騰、韓遂の乱に魔王再び出陣す


5.中原にて事変、魔王刻を得て上洛


6.魔王、帝を握り策略を巡らし


7.魔王、飛将と父子の契りを交わり


8.魔王、名士を配下に揃え


9.廃帝、立帝


10.阿鼻叫喚


三国志11(プレイ記録)


207年 ~再動~


208年 ~臥龍の下野~


209年 ~荊州分裂~


210年(一) ~臥龍と鳳雛~


210年(二) ~華~


210年 ~天下動乱~


211年 ~臥竜、点睛を欠く~


212年 益州平定


213年 ~三頭の龍~


214年 ~三都奪還~


215年 ~中原に鹿を追い~


216年 孫劉決裂


217年 前門の虎、後門の狼


218年 流血演舞


219年 孫家の落日


終幕 河北決戦


三国志11 西涼伝


1.魔王、再起


2.西涼の嵐


3.新天地


4.荊州争奪戦


5.死闘、果てなく


6.華、咲きて


7.巨星の失墜


8.魔王の後継者


主要武将 経歴


ロマンシング・サガ2 皇帝記録


ジェラール帝


ビーバー帝


アガタ帝


ジェイコブ帝


ブルーザー帝


ガマ帝


アルテミシア帝


アバールハサン帝


コウメイ帝


ティラナス帝


FE聖戦の系譜 略歴


大帝国 連合艦隊への道


大帝国SS 晩年


FE覚醒


FE覚醒SS 傷心


艦これ 艦娘名簿


艦これSS「青天」


艦これSS「刹那の平穏」


艦これSS「春の風」


艦これSS「鎮守府の春」


艦これSS「ビスマルク」


艦これSS「鋼鉄の戦姫」


艦これSS「日々平穏」


艦これSS「約束」


艦これSS「時雨の想い」


艦これSS「生きること死ぬこと」


艦これSS「ただ勝利のために」


艦これSS「大攻勢」


艦これSS「流転」


艦これSS「死闘の果てに」


艦これSS「華」


艦これSS「神通の憂鬱」


艦これSS「熱海の姉妹」


艦これSS「新たなる船出」


艦これSS「十人十色」


艦これSS「再起」


艦これSS「蒼い影」


艦これSS「ある夏の日に」


艦これSS「予感」


艦これSS「深淵より」


艦これSS「懐かしの海へ」


Fate Grand Order SS「悔悟を抱えて」


Fate Grand Order SS「刻まれた記憶」


艦これ 嫁艦名簿


Caligula Overdose SS 罪


Caligula Overdose SS それぞれの流儀


Caligula Overdose SS 決断


コードギアス ロストストーリーズ SS 共犯


大悪司SS『独り』


宇宙世紀にアズラエルがいたら…という妄想


遊戯王OCG 裏シスターデッキメモ


コメント新着

聖書預言@ Re:「自分の中で神格化している作品」というタグを観て思ったこと(07/15) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
白ケイ @ Re[1]:遊戯王OCGにはアニメ(映像+物語)が必要だよね(07/07) T.K1981さんへ こんばんわ。書き込みあり…
T.K1981 @ Re:遊戯王OCGにはアニメ(映像+物語)が必要だよね(07/07) おはようございます。 YouTubeの遊戯王ア…
白ケイ @ Re[1]:遊戯王OCGには美少女が一杯(06/21) T.K1981さんへ おはようございます。書き…
T.K1981 @ Re:遊戯王OCGには美少女が一杯(06/21) おはようございます。 遊戯王OCGには、美…

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: