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今日はとっても良い天気。でも、ちょっと風邪気味な私。掃除ぐらいしとかなきゃ、って朝からごそごそ。汗が出ると、体が楽になりました。昼ご飯を食べて、パソコンに向かってます。外からあたたかい陽射しが入ってきて。ちょっと昼寝でもしようかしら。冷やさないように。秋の空気を吸いながら。
Oct 31, 2009
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昨日、自分も喉が痛かったんですが、とうとうきちゃいました。新型インフルエンザ。学校で、生徒が次々に発熱。欠席連絡、早退、早退、早退。どうなるんでしょう。これから大事な出願の時期。今年は入試に向けては色々波乱がありそうです~。皆さんもお気を付けて~。
Oct 30, 2009
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昨晩もくたくたで帰ってきて、夕食、入浴、そして片付けを終えて、持ち帰った仕事をしようと思ったのですが、ちょっと5分だけ、と横になったのが失敗。気が付くと12時。畳の上で2時間ほど寝てました。寒くて目が覚めました。案の定、のどがいたいです。あ~最悪。
Oct 29, 2009
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って、タイトルに冠しましたが、キリ番企画ではありません。高校3年生を担任していると、この時期は大変なんです。ちょうど推薦入試の出願前になっておりまして、推薦書を書くという大仕事があるんです。大学側も、結構沢山の分量の推薦書を要求してきますので、これを書くのがなかなか大変しかも、生徒達は早く大学を決めたい一心で、やたら「推薦」「推薦」と言ってきます。何か違うんだけど…。と思いながらも、毎日執筆してます…
Oct 28, 2009
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先日発表したキリ番企画、ショートショート篇タイトルをnanaco☆さんからいただきました。「道連れ」です。これはまた渋いというか、色々と想像力をかき立てられるいいタイトルですね~。どう料理しようかな~って。わくわくします。でも、ちょっと暫くは執筆活動ができそうにないので、少し待って下さいね。nanaco☆さんありがとー
Oct 27, 2009
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昨晩から雨が降ってます。それほど寒くはないですが、空気がよどんでいる感じ。少し寝冷えっぽくて、のどに違和感。新型インフルエンザに罹ったという話があちこちでちらほら。自分はそんなに若くないので罹らないかなと思いながらも、心配。今朝はちょっと憂鬱です。
Oct 26, 2009
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ずっとキリ番企画ばっかりだったので、普通の日記を書くのが随分久し振りです。今、中間テストが終わって、採点やら成績処理で追われています。折角、秋めいてきて行楽日和なのに、ずっと家でお仕事です秋を探しに行きたいな
Oct 25, 2009
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キリ番企画90000ちょうどはnanaco☆さん。で、記念すべき100000は。学校から帰って来たら、もうぎりぎりまでになってたので、キリはよくないですが、ご覧にいれますね。100020 2009-10-10 01:13:05 ***.naver.jp 100019 2009-10-10 01:09:27 ムッティ138さん 100018 2009-10-10 01:01:24 ***.galabuzz.jp 100017 2009-10-10 00:42:48 *.plala.or.jp 100016 2009-10-10 00:41:19 202.248.*.* 100015 2009-10-10 00:17:55 221.186.*.* 100014 2009-10-10 00:13:08 日向 永遠さん 100013 2009-10-10 00:12:54 ともこりあん☆の気ままな日々さん 100012 2009-10-10 00:00:57 211.130.*.* 100011 2009-10-09 23:22:12 *.lcv.ne.jp 100010 2009-10-09 23:13:56 てんてん(^^)/さん 100009 2009-10-09 23:01:24 ***.yahoo.net 100008 2009-10-09 22:50:00 ***.bbtec.net 100007 2009-10-09 22:49:22 *.yahoo.co.jp 100006 2009-10-09 22:39:35 202.248.*.* 100005 2009-10-09 22:28:39 ***.memonews.com 100004 2009-10-09 22:24:11 カンちゃん0760さん 100003 2009-10-09 22:18:07 ***.yahoo.net 100002 2009-10-09 21:47:35 119.63.*.* 100001 2009-10-09 21:21:13 Nobubuさん 100000 2009-10-09 21:01:16 ***.yahoo.net 99999 2009-10-09 20:40:50 *.ocn.ne.jp 99998 2009-10-09 20:27:36 Nobubuさん 99997 2009-10-09 16:49:33 ***.msn.com 99996 2009-10-09 16:05:47 221.186.*.* 99995 2009-10-09 15:50:27 61.203.*.* 99994 2009-10-09 15:19:22 ***.okayama.jp 99993 2009-10-09 15:02:15 yan6051さん 99992 2009-10-09 14:51:26 ***.bbtec.net 99991 2009-10-09 13:53:02 211.130.*.* 99990 2009-10-09 13:27:45 ***.msn.com 99989 2009-10-09 13:26:12 *.odn.ne.jp 99988 2009-10-09 13:26:05 *.odn.ne.jpということで、常連のNobubuさんにほぼキマリかなというところですが、一応立候補制ということにしていますので、打診はしてみたいと思います。ということで、またまた連載をしたいと思います。何時になるかはわかりませんが、頑張りますね。
Oct 24, 2009
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連載中だったりなんかだったりで、放っておいたキリ番、発表させていただきますね。まずは90000ちょうど。90010 2009-06-18 22:20:01 *.infoweb.ne.jp 90009 2009-06-18 22:18:48 久美1987さん 90008 2009-06-18 22:18:33 *.infoweb.ne.jp 90007 2009-06-18 22:18:02 ***.spinn3r.com 90006 2009-06-18 22:14:45 *.infoweb.ne.jp 90005 2009-06-18 20:18:15 nanaco☆さん 90004 2009-06-18 19:38:41 119.63.*.* 90003 2009-06-18 19:26:26 221.186.*.* 90002 2009-06-18 18:41:44 *.iij4u.or.jp 90001 2009-06-18 18:25:01 *.infoweb.ne.jp 90000 2009-06-18 17:04:48 119.63.*.* 89999 2009-06-18 17:02:06 61.203.*.* 89998 2009-06-18 16:54:34 ***.msn.com 89997 2009-06-18 16:53:59 61.203.*.* 89996 2009-06-18 16:06:08 221.186.*.* 89995 2009-06-18 15:30:03 ***.yahoo.net 89994 2009-06-18 15:09:44 ***.ad.jp 89993 2009-06-18 14:37:35 ***.yahoo.net 89992 2009-06-18 14:20:26 61.203.*.* 89991 2009-06-18 12:34:24 *.yahoo.co.jp 89990 2009-06-18 12:28:04 ***.msn.com 89989 2009-06-18 12:26:52 119.63.*.* 89988 2009-06-18 12:23:13 202.248.*.* 89987 2009-06-18 12:20:18 74.125.*.* 89986 2009-06-18 11:29:18 221.186.*.* 89985 2009-06-18 10:26:05 yuco36さん 89984 2009-06-18 10:24:00 夢花風さん 89983 2009-06-18 10:08:47 山デジさん 89982 2009-06-18 10:02:27 ブーザン@上海さん 89981 2009-06-18 09:34:30 61.14.*.* 89980 2009-06-18 09:26:49 every.hot.さん ということで、一番近いのはnanaco☆さんですね。90000ちょうどということで、ショートショートをプレゼントさせていただきます。『タイトル』をよろしければ考えていただければと思います。よろしくね。明日は100000のキリ番も発表しちゃいますね。
Oct 23, 2009
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連載を終えて【8】今日で終わりです。さて、今日で「連載を終えて」も終わりにしたいと思いますが、最後にタイトルです。書き終わったあと、「これってタイトル難しいナ~」って思いました。で、ちゃと屋さんに丸投げ状態だったんですが、ちゃと屋さんが、とても良いところに目を付けて下さって、結果的には少しアレンジさせてもらいましたが、『猫が見た空』 にさせて頂くことにしました。如何でしょうか???ちょっとスランプがあって、かなり長い間書けなかったりして、難産だったんですが、個人的にはとても気に入った作品になりました。本当にどうも応援ありがとうございました。皆さんのあたたかい励ましのコメントがないと、…多分続けられません。断言します。ということで、創作意欲の増している秋なので、次の90000のキリ番企画と、先日達成した100000の企画立て続けにやろうと思ってます。お楽しみに応援ありがとうぎざいました。
Oct 22, 2009
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連載を終えて【7】次で終わりかな…。昨日お尋ねした「仕掛け」ですが、種明かしをしたいと思います~。実は、前から、私はこのキリ番企画三題噺には、プレゼントするお友達のお名前をこっそり隠すことがありまして。で、今回のお相手は「ちゃと屋さん」ですね。で、あの絵ですが、千代子さんが書いた絵には「C・H」のサインがあり、もともとあった絵には「ATO」というサインが。設定では「阿藤」さんなんですけど…。結局、千代子さんの絵が左に行くことで、「C・H」と「ATO」が並ぶんです。合わせると「CHATO」になるんです。だから、鈴香は絵の並びにこだわったんですね。え? 「屋(YA)」がないって?ちゃんとお話にありましたよね。絵のすぐ右は窓で、そこからは「屋」根だって。「CHATO屋」になるでしょおあとがよろしいようで。(ゴメンナサイ、怒らないでね)もうそろそろ終わりにします。
Oct 21, 2009
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連載を終えて【6】。しつこいですが…。今日は、もう一つの仕掛けのお話です。今までの私の三題噺では、ちょくちょくやっていたやつですが…。まず、これがヒント1それから、もう一つのヒント。最後の場面で、どうして、鈴香は二つの絵をあの順番にしたのでしょうか?これがヒント2です。さあ、もうお分かりでしょう???ちょっと考えてみて下さいね。もうそろそろ終わりにします。
Oct 20, 2009
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連載を終えて【5】になりました。先日、クイズっぽい話題を出しましたが、皆さんお分かりいただけたでしょうか?nanacoさんが正解のコメントを下さいました。実は、今回はキリ番を続けて踏まれたちゃと屋さんにショートショートと、三題噺を続けて書くことになってまして、それならちょいと仕掛けをしてみようと…『月明かり』の舞台になっていた、あの常夜灯のある場所、それは、この博物館のテラスだったんです。「こだわりのある館長」さんは当然平蔵。遼介と鈴香は、虫の声に送られて去っていく…連載中にひょっとしたらご指摘があるかも…と思ってましたが、案外そんなものですね。ということで、今回はそういう仕掛けがありました。実はもう一つあるんですが、これについてはまた明日。よろしければ。
Oct 19, 2009
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連載を終えて【4】になります。今回、いちばん苦労したところは、やはり、何度も申しておりますが、「しみじみ」感を出すところ。ストーリー自体は、割とすぐに思いつきました。でも、「結構ベタ」だな~って。でも、あえてその線で行こうって。思い直しました。よく映画でも、リメイクの作品なんかで、結末やストーリーは判っているのに、はらはらさせられたり、ドキドキしたり。あれって、凄いな~っていつも思ってまして。それとはちょっと違うんだけど、細かい演出や、描写力(修行中)で、カバーできたら…と。ということで、こんな作品になりました。ちゃんちゃん。よろしければ。
Oct 18, 2009
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連載を終えて【3】でーす。今まで何作か書いてまいりましたが、だいたいパターンが決まっていて、かならず若い男女のカップルが登場するんですね。過去の作品で、そうでなかったのは『二十歳への帰り道』だけ。あ、初回作の『pure diamondo』もそうでしたが。自分でもワンパターンだなあって思いつつ、何となく構想しているとそうなってしまうんですよね。今回のお話もカップルが登場しますが、本編の中では、あまり進展はありません。で、いきなり10年後。二人は結婚して子どももいるんですよね。実は、あのラストはかなり最後あたりで思いつきまして、なぜって、あのままだと遼介は買い物にいくということで外してそれっきり。ちょっとそれじゃああんまりだな~って思って。それに、よく映画でもある感じで、ベタだけどまあ良いかって。読後感は良い方がいいですものね。昨日のクイズ?がそのままですが、もう1、2日寝かしておきますね。よろしければ。
Oct 17, 2009
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連載を終えて【2】です。今回のお題は、「黒猫」「博物館」「花火」。ちゃと屋さんからいただきました。とても素敵なお題で、もうすぐにお話ができそうな感じがしました。で、あれこれと構想していく中で、あまり奇想天外なお話より、しみじみした話の方がよいかも…って。料理でも、「素材を楽しむ」って考え方がありますよね。あの感じでした。この三つのお題はそれぞれいい雰囲気があって…。だから、今回はあまりお題の結びつきというものもあまり考えず、自然な感じで三つともが登場しました。最後は花火だったんですが、何となくラストシーンは「花火を見つめて感慨にふける○○」というイメージができてまして。毎回なんですが、お話は、それをプレゼントするお相手のイメージを大切にしてます。ちゃと屋さんは京都が大好きでいらっしゃるので、なんとなく「お祭り」が浮かんで…三つのお題を結びつける「つなぎ」的なものになりました。さて、今回も色々と仕掛けをしたのですが、まずはすぐに気づかれるだろうな…というものがあるんですが、いままではどなたも指摘されていません。ヒントを出すとすぐに分かっちゃいますが、前回のショートショート。これがヒントです。もうお分かりでしょうか???よろしければ。
Oct 16, 2009
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連載を終えて【1】です。いや~。終わっちゃいました。充実感と淋しさが同居している、何とも独特の感覚に襲われてます。最初は短い話かな~って思っていても、結果的には長くなってしまう…これも毎度のことですが、今回も例に漏れずそうなっちゃいました。さて、如何でしたでしょうか?お分かりのように、今回は、ストーリー的にはそれほどあっと驚くような仕掛けはしていませんでした。「しみじみ」をテーマに、どれだけ書けるかって、或る意味チャレンジでした。どうでしょうか、「しみじみ」していましたでしょうか。今回も「連載を終えて」として、裏話や、仕掛けなどを紹介していこうと思います。よろしくどうぞもう少し置いておきますね。よければポチを。
Oct 15, 2009
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長い間ありがとうございました。エピローグをどうぞ。 【エピローグ】 そして…。あれから10年の歳月が流れていた。 「ここでいいかな。」 「そうね、もう少し近い方がいいかも。」 「でも、ちょっと間隔が狭すぎない?」 「いいのよ。この2枚の絵はセットみたいなモノなんだから。」 「でも、これ、やっぱり右側の方が良くない?」 「左がいいの。すぐ右手に窓があって屋根でしょ。バランス的には絶対左よ。」 「判った。やっぱり学芸員さんの意見を尊重しなきゃね。」 「もう、ヤあね。」 「ははは。」 そして…、 その小さな絵は大きくて立派な額の左横に並べて展示された。 並べてみると、その小さな絵に描かれた黒猫は、明らかに大きな絵のそれを模倣したものだと判った。 ただ、小さな絵の方に描かれた猫の横には、優しそうな目をした少年がいた。 「お祖父ちゃんに…結局言えずじまいだったね。 …怒ってないかな…お祖父ちゃん。」 「大丈夫だよ。きっと天国でさ、彼女…千代子さんと再会して、黒猫を膝にのせてのんびり してるんじゃない。」 「そうだと…いいわね。」 そこで、遼介は一歩絵の方に進み出て言った。 「オレ、最近気付いたんだけど。」 「何に?」 「この絵のサインがあるだろ。」 遼介が指さしたのは、小さい方の絵だった。 「うん。」 「これってさ、『C・H』ってサインがしてあるけど、真ん中の『・』って何だか大きくな いかなって。前から思ってたんだ。」 鈴香も遼介の横に進み出てそれに顔を近づける。 遼介は、 「これ、掠れててはっきりしないけど『&』じゃないかなって…。」 鈴香は、その部分を黙って見つめていたが、 「確かに、ふつうの『・』じゃないわね。言われてみると『&』に見えるわ…。」 と呟くように言った。 「だろ。だから、ひょっとすると」 「ひょっとすると?」 「だから…、これって『Chiyoko& Heizo』なのかなって』 「まあ…。」 鈴香はそう言うと、改めて二つの絵を静かに見つめるのだった。 遼介は絵をみつめる彼女に、 「まさか、『Cat&Heizo』じゃないだろ…」 とついでに軽口を叩いた。 「もォー」とちょっぴり怒ったような顔をする鈴香。 遼介は笑いながら、 「よし。」 と一声発した。そして、 「じゃあ、ちょっと。仕事行ってくるな。」 鈴香は、 「はい。館長さん。」 「…その、『館長さん』ってのやめてくれよ、形だけなんだから。実質は学芸員の鈴香が管 理してるんだからな。」 「ふふふ。」 「それより、そろそろミルクの時間じゃないの?」 「うん。そろそろ起きて泣き始めるころよ。」 二人の視線は、同時に階段下の入り口のフロア隅へと移った。 そこには可愛いベビーカーが置いてあった。 その中には、すやすやと寝息をたてて眠っている可愛らしい赤ちゃんの姿があった。 そして…、 その外ではあの黒猫が、今日も静かに穏やかな空を見上げていた。 《了》 最後まで読んで下さってありがとうございました。是非感想などお聞かせいただければ幸いです。《狼》おかげさまで1位になれました。
Oct 14, 2009
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実質今日が最終回です。では、一気にどうぞ。 【連載題23回】 鈴香は、もう驚かなかった。 自分の中で、今まで点と点だったものがすべて繋がったような気がしていた。たとえ、それが憶測の域を出ないものであったとしても…。 しかし、自分が思い描いていた以上に、平蔵に対しての自分の「役割」の重さを、彼女はひしひしと感じずにはいられなかった。 そして、慎重に尋ねるのだった。 「そう…。それで、お祖父ちゃん…その子と進展は…あったの?」 そこで、平蔵はゆっくりと鈴香の方へと向き直った。 「実はの…。 お嬢さんを初めて見た時じゃ、ワシは腰を抜かしそうになったんじゃよ…。 お嬢さんは…あの子に、そっくりなんじゃ。 『生き写し』という言葉があるが、まさにその言葉通りでの。 …ワシは時間が逆戻りして、あの子が帰ってきたのかと思ったよ。」 「そうだったんですか…。」 鈴香の言葉の後、暫く沈黙があった。 そして、平蔵は続けた。 「それがの…。 約束の晩。…祭りの晩になってもあの子はなかなか現れなくての。 ワシは友達の誘いも断って、ずーっと、この広場であの子を待っておったんじ ゃ…。 花火が終わっても、ずっと待っとった…。 ずーっとの…。」 最後の言葉をぽつりと呟くと、平蔵は静かに夜空を見上げた。 鈴香はその時、本当の意味で「確信」した…。 あの絵に描かれた「少年」は、このお祖父ちゃんに違いない…と。 …祖母の妹、千代子は、きっと…約束の日を前にして病気が悪化したのだ。 それで、祭の日にここへ来ること…平蔵との約束を果たすことができなかったのだ。 そして…。 病床で…、平蔵のことを思いながらあの絵を描いたんだ…。 だから…。 あの猫の絵に少年を描き加えたんだ…。 鈴香は胸が詰まった。 そして思わず…あたたかい涙が頬を伝うのが判った…。 鈴香はその涙を、平蔵に悟られないように左手の人差し指でそっと拭った。 何という偶然…。そして、なんて切ない話…。 思わず、鈴香は「やはり全ての真実を平蔵に語った方がいいのではないか…。」 そう、迷うのだった。 けれど…。やはりそれはいけないことのような気がし、思い直した。 そして、自分も黙って夜空を見上げた。 その夜空には、今日は星はあまり出ていなかった筈だった。 しかし、涙ぐんだ鈴香の目には、…そこには無数の星が、輝きながら揺れているように映っていた。 「…まあ、思えばあれがワシの初恋じゃったのかも知れん…。」 また、ぽつりと平蔵は呟いた。 そして、またすぐに平蔵は明るい調子に戻って続けた。 「しかし…。あれがきっかけで、ワシの『猫蒐集』がスタートしたんじゃから、 人生、分からんもんじゃの…。 考えようによっては、まだワシの初恋も終わっておらんちゅうことかも知れんの、 ふァっはっは。 …もっとも、これは家内には内緒じゃがの。」 そう言って平蔵はもう一度高らかに笑うのだった。 それを聞いて、鈴香も言った。 「…そうだったんですかァ。 それがきっかけで、お祖父ちゃんは猫を…? そうなんだ…。」 平蔵はゆっくりと言った。 「ああ、そうなんじゃよ…。 もともと猫も、あの絵も好きじゃったし、で…の。」 その後、平蔵が何か口にしようとした、その瞬間だった。 その平蔵の言葉に、突然聞こえてきた高い音が重なった。 「ヒュー。ヒュー。」 そして、 「ドドーン。ドドーン。」 夜空に花火の大輪が開いた。 「わあ。」と、思わず鈴香は声を上げた。 「ドドーン。ドドーン。ヒュー、ヒュー。」 「パチパチパチ。ドドーン。バチバチバチバチ。ヒュー、ドドーン」 次々に花火が上がり、夜空は鮮やかな色とりどりの花で覆われた。 美しい花火だった。 暫くは、その光景に、言葉も目も奪われていた鈴香であったが、ふと横を見ると、平蔵も眼を細めて花火を見つめていた。 もう、平蔵もそれ以上は何も言わなかった。 鈴香も黙って、花火と、花火を満足そうに見つめる平蔵を交互に見つめていた。 その時。 平蔵の肩越しに、鈴香の眼に飛び込んできたものがあった。 そこには、花火の光を受けて静かに光っているものがあった。 …あの、ブロンズの猫だった。 鈴香はそこで気が付いた。 あの、ブロンズの猫が…。 あの猫が、いつも眺めている方角、いつも見上げていた空…。 そうなのだ。 それは、まさに、あの花火の上がっている方向であった。 あの猫は、平蔵の側で、こうして毎年一緒に花火を見上げていたのだ。 …しかも、よく見れば、その猫のポーズは、あの絵に描かれた猫と同じ…。 階段に坐って首を擡げている、あの猫と同じ恰好をしているのだった。 …『お祖父ちゃん。あのブロンズ像、かなりこだわって造ってもらってさ…、 置く位置にもめっちゃ拘ってたんだ…。』 遼介の言葉が、今、鈴香の耳に甦っていた。 鈴香の頬をまた一すじの涙が伝った。 「ヒュルルー、ドドーン。ヒュー、ドドーン」 花火は後から後から打ち上げられ、夜空は色とりどりの光の粒で埋め尽くされている。 「お祖父ちゃん。あのね…。」 鈴香はそこまで言って、言葉に詰まってしまった。涙が後から後から溢れ出ていた。 「ドドーン。ドドーン。」 花火の音は鳴りやまない。 平蔵は、左手を右にあてて、 「何かの?」と、鈴香の言葉を聴こうとしていた。 鈴香は、少し息を吸い込むと、肩と肩が触れ合うぐらいに平蔵に近づいた。 そして力一杯言った。 「今日は誘って下さってありがとう。 私…またここに遊びに来させてもらっていいかしら。 いっぱい…いっぱい遊びにきてもいいかしら。」 どうやら今度は平蔵にも、その言葉が聞こえたのであろう。にっこりと優しく微笑むと、 「…ああ、いつでもいらっしゃいよ。」 平蔵の幸せそうな笑顔が、夜空に輝く花火の光で映し出されていた。 そして鈴香は、そのまま平蔵と肩を並べたまま、夜空を埋め尽くす花火を見つめていた。 平蔵の肩越しに見えるブロンズの猫も、今夜は満足そうだった。 第4部終 プロローグ、思い出して下さいました? 明日はエピローグです。今日もポチっとよろしくね。
Oct 13, 2009
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連載もあと少しです。最後まで応援してね。 【連載題22回】 どこからともなく、ひんやりとした風が吹いてくる。 山車も、かなり遠くへ行ってしまったのか、祭囃子も微かにしか聞こえてこない。 平蔵はもう一度軽くビールを口にした。そして、再び話し始めた。 「そうじゃ…あの時。…あれはもう閉館間際じゃったんじゃがの…。 ワシは、『ただいま』って言うて、いつものように正面の玄関から入ったんじゃ。する と、私の父が何やら指さすので、その先を見るとな…。」 「いたのね、あの子が。」 「ああ、…やっぱり、あの絵の前にいたんじゃよ。」 「お祖父ちゃんのお父様も、その子のこと…覚えてたってことね。」 「うむ…。まあ、印象的な子じゃったし、ワシがあの子のことを気にしてるということも、 まあ端から見ればみえみえじゃったということかの…。」 「ふふ…。それで、お祖父ちゃ…ん声を掛けたの?」 「ああ。」 「何て?」 「ワシも本当にうぶじゃったと思うんじゃが、『あの…、もうすぐ閉館です』ってのが第一 声じゃった。」 それを聞いて、鈴香は思わず笑い声を漏らしてしまった。 「ふふふ。可愛いわね。…でも、それで、その子が帰ってちゃって終わり。ってワケじゃな かったんでしょ?」 「ああ…。それでの、…ワシの顔を見て、その子が慌てて帰ろうとするんで、『閉館…だけ ど、もう少しいていいよ。』っての、ワシも慌ててつけ加えて…。 ホント、阿呆な声の掛け方じゃった…。」 「ふふ。それで?」 「うむ…。あの子はの、ぺこりとワシに頭を下げるとの…、 にっこり微笑んでくれたんじゃ。 …あの笑顔は今でも忘れられん。」 その時、平蔵の瞼の裏には、きっと色褪せないその子の笑顔が輝いていたのだろう。 彼は、暫く次の言葉を発することなく、目をつむって黙っていた。 そして、また再び話し始めた。 「それでな。ワシは、あの子に、勇気をふりしぼって、『この絵好きなの?』って、聞いた んじゃよ。」 「…それで?」 「控え目に、『はい』ってな…。」 「で…?」 「それからの…、ぽつぽつとじゃったけれども、暫く話をしたんじゃよ。 ただ、その話の内容はちーっとも覚えておらんが。」 「ふうん。でも、そんなものかも知れませんね…。」 とちょっぴり残念そうな鈴香。 「で、帰り際にの…。『また見においでよ』とだけ言ったのは覚えとる。」 「…それで、その次はあったの?」 鈴香は、どきどきしながら尋ねた。 彼女の脳裏には、病院のベッドで弱っているその子…千代子の姿が浮び上がっていた。 しかし、平蔵の返事は、彼女の想像を良い意味で裏切ってくれた。 「ああ…。その次はあったんじゃ」 それを聞いた鈴香は、ちょっぴりほっとしながらも、平蔵が発した『その次は』の『は』に微妙に力が込められていることにも気付いていた。 「それから随分と長い間、その子はこなかったんじゃが、夏休みになってふいに現れて の…。」 「で、どうなさったんですか。」 「それはもう…、ワシは嬉しくて嬉しくて、照れながらじゃったが、ここぞとばかりに話し かけて、沢山話をしたんじゃ。」 「でも…どうして、そんなに長い間来なかったのかしら、お祖父ちゃん…そのことは…尋ね たの?」 それは酷な質問かもしれない、そう思いながらも、鈴香は勇気を出して尋ねた。 「いや…。それは何となく聞いてはいけないような気がして、尋ねずじまいじゃった…。 あれは、夏真っ盛りじゃったんじゃが…。」 そこで平蔵はゆっくりと深呼吸した。 「もともと色白の可愛い子じゃったんじゃが、何だか一層色が白くなっておっての…。ひょ っとしたら病気じゃったのかも知れないと…。」 鈴香は、想像はしていたものの、実際にその言葉を平蔵から聴くと、さすがに胸が疼いた。 そして、思わず目を伏せてしまったが、平蔵は構わず続けた。 「ちょうど、今頃時分でしての。 …ワシはまた勇気をふりしぼって、『今度の夏祭りにおいでよ』と誘ったんじゃ。『この 博物館の前から花火がよく見えるよ』…っての。 …この間、ワシがお嬢さんに言ったのと同じ台詞じゃの。 ふァっはっは。」 平蔵の笑い声は、少し哀愁を帯びていて元気がなさそうな感じもした。 しかし、鈴香は同時に、その笑い声の底にある何かしら温かなやわらかみも感じとっていた。 そして、すかさず彼女は、「それで?」と再び問いかけた。 「うむ…。約束してくれたんじゃよ。 『お祭りの晩に、ここに来ます』っての。」 〈続く〉 いつも良いところで続きでごめんなさい。連載もあと2回です。今日もポチっとよろしくね。
Oct 12, 2009
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急に寒くなってきましたよ~。お話も大詰めです。 【連載題21回】 平蔵の突然の申し出に、鈴香はやや驚きはしたが、すぐに答えた。 「…はい。もちろん…。」 その時だった。 「ヒュー ドドーン」 夜空に、突然一輪の大きな薄紫色の花が開いた。 思わず声を上げる鈴香。 「うああ、花火大会…始まっちゃいましたね。」 平蔵は、ほんのりと残像を残し、再び暗闇に戻った空を見上げたまま言った。 「いや、アレは試し打ちでの…。あれが上がった後、10分ほどしてからが本番じゃよ。」 平蔵は、流石に何年もここで花火を見ており、その辺りは熟知している様子であった。 鈴香はそっと、手元の時計を見たが、本当に7時50分を少し回ったところであった。 花火大会の開始時刻は8時の予定であった。 遼介はまだ戻ってこなかった。 きっと、気を利かせてくれているのだろう。 心の中で「遼介、ゴメン。」と、感謝しながら鈴香は言った。 「ええ、是非…そのお話…聞かせて下さい。」 平蔵は、ゆっくりと鈴香の方を向き、懐かしそうに目を細めてまた鈴香の姿を見つめながら言った。 「もうかれこれ60年ほども前になるかの…。」 それから。 平蔵の言葉は、止め処なく流れる水の用に緩やかに、そして情感を持って流れ続けた。 それはとても悲しいロマンスだった。 「ワシがまだ中学2年だった時のことじゃ。もう、その頃…本館の方は、博物館として公開 されていての、もともとあれも私の祖父が道楽で始めたんじゃが…。 ワシはここが大好きでの。いつも学校から帰ると、ここに寄って、宿題をしたり、遊んだ り、と、ここを生活の拠点にしておっての。 あの黒猫の絵も、当時は本館…と言っても、その頃は本館しかなかったが。 …その1階の隅に掛けられておっての。 作者は、『阿藤』とか言う、この街出身の名もない洋画家の手によるものなんだそうじゃ が、そんなこととは関係なく、ワシはあの絵が大のお気に入りじゃったんじゃ…。」 そこまで言うと、お祖父ちゃんはまた一口ビールを飲み、漆黒の闇に戻った空を暫く見上げていた。その眼は遠かった。 「ある時の…。ふらりと一人の女の子が博物館にやってきての。 あの絵の前でずーっと立っておったんじゃ。 それでの…。ワシも、あの絵が好きじゃったし、声を掛けようかなと思ったが、 なか なか純情な頃での…よう声をかけんかったんじゃよ。」 鈴香は、時折頷きながら聴き入っていた。平蔵は続けた。 「ところが、その子は暫くして、またやって来ての。またあの絵の前に立って、ずーっと見 ているんじゃよ。その時は、ワシもよっぽど声を掛けようかと思ったんじゃが。やっぱり できんかった。 そして、3度目じゃよ。 ワシは1度目も2度目もよう声を掛けられんかったんで、『三度目の正直』と思って、… もしも、もう1度あの子がやって来たら絶対に声を掛けようと決めていたんじゃよ。」 そこで、初めて鈴香は言葉を挟んだ。 「それで…。3度目はあったんですか?」 平蔵はまたそこで少し間を置いたが、少し声のトーンを下げて言った。 「ああ、2回目からは暫く間があったんじゃが…。 あの日のことは本当によく覚えているよ…。 2回目から随分間が空いてしもうたんで、もう半分諦めたというか…忘れかけておったぐ らいでの。 …その時、ワシは外に遊びに出ておっての。 夕方、いつものようにここに戻って来んじゃ…。」 「その子が…来てたのね。」 鈴香の言葉に、平蔵は黙ってゆっくりと頷いた。 〈続く〉 ゴールが見えてきました。ポチっと応援してね。
Oct 11, 2009
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おかげさまで、100000アクセス達成しました。皆さん応援ありがとう。 【連載題20回】 祭囃子。山車を引く掛け声。 熱気の中に、時折吹く秋の匂いを含んだ風。 遼介にとっては、いつもの祭であったが、鈴香にとって、それはとても新鮮な感覚であった。 かき氷、たこ焼き、綿飴…と、二人は祭りを楽しみながらぐるりと近回りを一周して、また博物館のある通りへと帰ってきた。 時刻は、7時50分だった。 テラスに入ると、ベンチに誰かが坐っているのが分かった。 お祖父ちゃんだった。 平蔵は、濃紺の短パンに白いTシャツ。その上に革のベストを引っかけて、やはり、ベレー帽を被っていた。 常夜灯の明かりは抑え目であるので、あまり良くは見えないけれど、顔は少し紅潮しているように見えた。アルコールが入っているのだろう、ご機嫌そうだった。見れば、ベンチに缶ビールが置いてある。 「やあ、いらっしゃい。お祭りは楽しんだかね。」 「はい。」 そう答える鈴香を、やはり平蔵は暫く懐かしそうな目で見つめていた。 遼介は、 「もうすぐ、花火が始まるよね。…オレ、何か買ってくるから。」 そう言い残し、すぐにそこを立ち去った。 平蔵は、その遼介の様子を眺めていたが、 「あいつは何を慌てているんじゃろな。」 と言うと、にっこり微笑んで、 「…まあ、お嬢さん、ここへお掛けなさい。」 お祖父ちゃんは、ベンチに置いていた缶ビールを右手に持ち替えながら横を空けてくれた。 「あ、アリガトウございます。」 そう言いながら、ちょこんと腰掛ける鈴香。満足そうにお祖父ちゃんは鈴香の方に目をやりながら、一口ビールを飲んだ。 鈴香は、 「…あの、今日も黒猫館、ちょっと見せて頂きました。ありがとうございました。」 「そうか、そうか、それはよかった。あいつが畏まって『鍵貸して下さい。』なんて言うも んだから、一体何かと思ったが…。 お嬢さんの為なら、いつでもOKですぞ。ふァっはっは。」 平蔵は高らかに笑った。 鈴香も、 「はい、それにしても。とっても素敵なネコちゃんたちですね。」 と告げた。 すると、平蔵はにこにこしながら、 「…遼介に聞いたんじゃが、お嬢さんは、あの2階の正面の黒猫の絵がお気に入りだと か。」 鈴香は一瞬、ドキリとしたが、遼介がそのぐらいのことは話していてもおかしくはないだろうと、すぐに思い直し、平蔵に笑顔で答えた。 「あ、はい。何だかとっても懐かしい感じがするんで…。」 それは鈴香が何気なく口にした言葉であったが、その言葉に、ほんの少しではあるが、平蔵が動揺する様子がうかがえた。 鈴香は、自分が何か不味いことでも言ってしまったかと、今度は本当にドキドキしてしまった。 …が、平蔵は、暫くして、 「あなた…。桜井鈴香さんとおっしゃっいましたな。」 そして、 「その…、…あなたの血縁者の方で、この辺りに縁のある方がいらっしゃいますかね。」 それは、いきなり核心をつく質問であった。 が、ここは鈴香は、腹を括って惚けることに決めた。 「いいえ、残念ですけど。ちょっと…思い当たらないです。」 「そうですか…。」 その平蔵の言葉は、残念そうにも、ほっとしたようにも受け取れた。 「もう一つお尋ねしてもいいですかね。…あなたのお祖母様。お二人いらっしゃるかと思い ますが、どちらのご出身の方ですか。」 「えっ…。」 と、鈴香は思わず驚いたが、今度も「二人」という言葉の意味を自分が勝手に取り違えていたということに気づいた。 それに気付くまで、暫く妙な間が空いたが、それを挽回するかのような明るい口調で答えた。 「えっと…。父方の祖母は私の実家のすぐ近くですが、母方のお祖母ちゃんは…この…県北 です。」 「そうですか…。」と平蔵。 思わず「県北」と言ってしまったが、鈴香は正確には違ってたな…と、少し気まずく思った。でも、それは仕方のないことだった。 平蔵は、彼女の動揺を察知したのか、やや申し訳なさそうに言った。 「…すみませんな。いきなり変な質問ばかりで。」 「…いえ。私も、実はあの絵を見て何だか懐かしい感じがしたので、お祖母ちゃんに、ひょ っとして私が子供の頃、この博物館に来たことがあるかどうか尋ねてみたりしたんです よ。 …でも、全然心当たりがないって。ちょっぴり残念でしたけど。」 「そうか…。やっぱり…。」 やや落胆する感じもあったけれど、平蔵の言葉の調子は明るく、ご機嫌な様子に変わりは なかった。 「始めてこの街に来た時も、何だか昔見たことのある風景みたいな所があちこちにあるん で、ひょっとしたらって。」 平蔵は黙って頷いていた。 鈴香は、そこで逆に問いかけてみることにした。 「お祖父ちゃん、あの絵に関して何か特別な想い出とかあるんですか。」 「うむ…。」 平蔵は、そこでもう一度、缶ビールをごくごくと、今度は少し多めに飲み下し、暫く虚空を眺めていた。 鈴香は、 「…あ、ごめんなさいね。 この博物館にあるものは全部お祖父様の大切な想い出が詰まってるものですよね…。変な 質問してゴメンナサイ。」 平蔵は、鈴香のその言葉に直接返事をしなかったが、暫く間を置いてゆっくりと口を開いた。 「お嬢さん。ワシの戯言を聞いてくれるか…。」 〈続く〉 いよいよ大詰めで~す。最後までしみじみね。嬉しい1位です。
Oct 10, 2009
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あ、100000アクセスが来そう。誰が次回の当選者でしょうか? 【連載題19回】第4部 祭の当日。 朝方、急に雨が降り始め、遼介はちょっと驚いた。 が、実はそれは天気予報通りであったということを彼は後で知った。そして、これも予報通りらしく、昼前から、空はまさに雲一つ無い快晴となっていた。 お昼のニュースでも、アナウンサーがここのところ連日の真夏日だということを、凄いニュースのように連呼していた。 そして、午後。 時計の針は5時を回った。 鈴香は約束通り、電車で遼介の街にやってきた。 駅舎から外へ出てみると、もうかなりの人が街に繰り出していた。駅を出てすぐの所にも、もう既に屋台のようなものが出ている。 鈴香はそれを横目に見ながら、博物館を目指して歩いていた。 夜店は6時頃から始まるということであったが、もう営業を始めている店も随分あるようだった。「大きな道には山車も出て凄い人出になるので、少し早めにやってきた方がいいよ」、という遼介のアドバイスは的確だった。 少し進んで行くと、法被姿の老若男女があちこちに見える。。 どこで手に入れたのか、キラキラと光る風船とアイスクリームを持って嬉しそうに歩いている子どもとすれ違い、鈴香は思わず微笑んでしまう。 水路脇の道路に出ると、先日は、暗い水面に街灯がちらちらとしていた水路も、今日は提灯やら何やらの明かりで色とりどりの光が反射していて、とても綺麗だった。 次第に辺りは薄暗くなり始めていた。 もう9月だから、この時間でも結構薄暗くなっちゃうんだ、と少しだけ秋を感じる鈴香だった。 完全に陽が暮れたらまた綺麗だろうな、と華やぐ界隈を楽しみながら彼女は歩き続けていた。 祭ということで、この間ともまた様子が変わっている街並み、ちょっと迷いそうになった鈴香だったが、やはりあの目印になるマンションが助けてくれた。 そして、あの角が近づいてきた。 この間、既視感めいた妙な感覚にとらわれたあの場所であったが、今日は何も感じなかった。 今日もまたあの感覚が到来するのだろうか…と、少し構えていた鈴香だったが、「まあ、そんなものかな。」と軽く思いながら、そこを曲がった。 お祭りの喧噪は一気に後ろへとボリュームダウンしていった。 路地を抜け、博物館のテラスに出た。が、意外なことに、そこには誰もいなかった。 鈴香はゆっくりとテラスの模様の上を歩いていくと、あの黒猫のブロンズ像の下のベンチに座って、暫くぼんやりと考え事をしていた。 「お待たせ。」と、後ろから突然声がした。 鈴香はちょっと驚いて、すぐに立ち上がって振り向いた。 そこには遼介が立っていた。 「あ、びっくりさせてゴメン。待った?」 「ううん。大丈夫。」 そんな会話を交わしながら、鈴香の姿を見て遼介はちょっと驚いた。 鈴香は、この間初めてここにやって来た時と同じ恰好をしていたのだ。 ただ、髪型だけが少し違っていた。あの時は肩口まである髪をそのままにしていたが、今日は後ろで束ねていた。 自分を見つめる遼介の視線を感じ、鈴香も、 「…この間と同じ恰好の方がいいかな…なんて思って。 髪は…何となく、くくっちゃった。」 遼介は、その鈴香の思惑が分かったような気がしたが、敢えてそこは何も言わず、 「いいんじゃない。可愛いよ。」 と、照れくさそうに、それだけ言うと、 「お祖父ちゃんは多分家で一杯やって、花火に合わせて出てくると思うんで、 …8時頃かな。」 「…そう。」 遼介は、平蔵がいないことにちょっと肩透かしを食らった感じに見えたので、 「ウチに招待しても良いんだけど…。 良かったら一度連れておいでってみんなに言われてるんだ…。」 と言ってみたが、 「そう。でも、今日は急だし…悪いから、また今度にするわ…今日は外をぶらぶらしましょ うよ。」 「そう。じゃあまたそれは今度の機会ということにしようか。」 「うん。」 時刻はもう6時を回っていた。辺りはかなり暗くなっていた。 「もう、屋台とか色々始まってると思うんで、行ってみようか?」 「うん。」 そう鈴香は言いながら、歩き始めるとすぐ、 「あの…。」 と、立ち止まった。 「何?」 鈴香はやや申し訳なさそうに言った。 「もう…、閉まっちゃってるよね。」 鈴香の視線の先には博物館の新館があった。 遼介はすぐに言った。 「やっぱりそう言うと思ったんだよね。」 遼介は、鈴香の気持ちを前もって読んでいた。 彼は徐にポケットからいくつかの鍵がぶら下がっている銀の輪を取り出すと、ちょっと照れ臭そうに笑って彼女の目の前に差し出した。 「やっぱり、あの絵…見たいんだろ。もう一度。」 鈴香はにっこりと頷き、そして二人は薄暗い博物館の中へと入った。 「灯りは一部だけでいいよね。」 と、そんなことを呟きながら、遼介はあちこち違う所をパチパチと点けたり消したりしていたが、結果的に一階の入り口と階段の所だけを明るくした。 そして二階の一部にも電灯が点るのが分かった。 「お祖父ちゃんにはちゃんと言ってあるから。」 そう言って遼介は鈴香の手を引いた。 何となくであったが、遼介は思わず鈴香の手を握っていた。 少し冷たく感じる鈴香の手は、柔らかく、それでいてほんのりと温かかった。 階段を上りながら、遼介はどきどきしていた。 「足もと…気を付けて」というのが精一杯だった。 そして、再びあの絵に二人は対峙した。 「千代子さん…、きっと、昔ここで…この絵を見たんでしょうね。」 「うん。」 二人は暫く沈黙していた。二人の手はつながれたままだった。 鈴香は、稚拙ながらも、少女だった千代子が、この絵に思い入れ、その思いをあの絵に重ねたのだろう…そんな確信を持っていた。 …そして、きっとあそこに描かれた少年のことも。 「お祖父ちゃんに聞くのはやっぱり野暮だよな。」 ぽつりと遼介が言う。 「うん。」 鈴香も、そうは言いながらも、本当にあそこに描かれた少年が、若き日の平蔵なのだろうか…と、 そしてそれを確かめたいという気持ちは、強くなる一方だった。 そして、遼介も同じことを考えていた。 平蔵と千代子… 二人の間に、何かロマンスめいたものはあったのだろうか。 結局、そこでも結論は出ずじまいだった。 けれど、二人は妙な満足感に浸っていた。 そして、『黒猫館』を後にした二人は、祭囃子の聞こえ始めた通りへと歩き始めた。 〈続く〉 100000アクセスキリ番も当然やりますよ~。発表は連載終了後です。おかげさまで
Oct 9, 2009
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台風は大丈夫でしたか??? 【連載題18回】 喫茶店から出た二人は、じりじりと照りつける陽射しの下、鈴香のメモを頼りに暫く歩いた。 そして、20分ほど歩いたであろうか、道路脇の案内標識と、鈴香が聞いてきていたその地名が一致した。 「この辺りね。」 「うん、そうみたいだ。」 鈴香は、絵の話を祖母から聞いた時、妹の千代子が養子に出されていた場所も尋ねていたのであった。そして、それが案外近い場所であるということから、具体的な地名も分かる範囲で教えて貰っていたのだった。 流石に、その家の場所までは分からなかったが、たとえ分かったとしても今更尋ねて行くわけにはいかない。 とにかく、その辺りまで行ってみよう…ということで、こうして今日この駅前に待ち合わせたということなのだった。 その辺りは、古い街並みが幾らか残ってはいるが、大きな幹線道路が近くを通ったために、マンションや郊外型のショッピングモールなどがあちこちに出来ており、かなり雑然とした感じの雰囲気になっていた。 細い路地の向こうにコンビニエンスストアが見える角まで二人は歩いた。 見上げると、昔の商店街の名残のような、奇妙な形の色褪せた電灯がぶら下がっている。 遼介がしみじみと言った。 「…こんな所、用事がないからあまり来たことがないんで、何となく感覚が分からなかった けどさ…。 よく考えてみたら、ここからウチって案外近いな。」 「そうね。歩くと大変だけど。」 真夏に戻ったかのような陽射しを浴びて、鈴香はちょっとしんどそうだった。 どうせやって来るのなら、涼しかった昨日にすればよかった…とちょっぴり後悔する鈴香だったが、それはもう後の祭りである。 博物館は一つ向こうの駅で降りれば近いが、駅から博物館は少し東へ歩いた所にある。逆に、今彼等がいる場所は、こちらの駅から西へ向かった所にあるので、結果的に二つの地点を結ぶ距離はかなり近くなっている…という情況だった。 そして、彼女が口にした「大竹病院」というのは、この辺りでは有名な、昔からある大きな病院であった。 鈴香はその病院の名前を祖母から聞いた時、何かどこかで聞いた覚えがあると思た。そして、その時は思い出せなかったが、それはすぐに判明した。 鈴香がいつも通っている沿線の、駅のホームに大きな「大竹病院」と記された看板があるのだ。それを鈴香はいつも見ながら通学していたのだ。 そして、改めてそれを見付けた時、 彼女の中で、博物館の絵と、自分の記憶にあった絵、そして祖母の妹の千代子の姿が一気に結びついたのだった。ただ、それはまだ憶測の範囲を出るものではなかったけれど。 「大竹病院」という名前は、遼介にとっては子どもの頃から馴染みのある名前であった。自分自身、昔から何かあるとその病院に連れて行かれたし、そこには産婦人科もあるので、祖父も、遼介の父もそこで生まれた。勿論、遼介自身もそこで生まれたのである。 そして、その「大竹病院」は、もうこの辺りから見えてもおかしくないほどのところであった。 …つまり、「大竹病院」から遼介の家、博物館までは充分歩いても行ける距離であった。 再び、口を開いたのは遼介だった。 「そうか…。じゃあ、あの絵は。」 「そうね。」 鈴香は噛みしめるように言った。 「やっぱりあの絵のもとになったのは、遼介んちの絵じゃないかしら。」 「じゃあ、あの少年は…。」 そこで、暫く沈黙があったが、鈴香が突然言った。 「お祖父ちゃんって、そのこと知ってるのかしら。」 遼介も、鈴香の言いたいことは判っていた。 「多分、知らないと思うんだ。でもさ…。」 遼介は、初対面の時の、祖父が鈴香を見た時のちょっとした「異変」について説明した。 鈴香も、遼介の言葉を真剣に受けとめながら、その時の様子を思い浮かべていた。 「私…、そう言えば、よく『お祖母ちゃんの若い頃に生き写しだ』って…言われてた…。」 遼介はもう驚かなかった。 「そう…。やっぱり…、そうなんだ。」 「でも、これって…ひょっとして、凄いことなんじゃない?」 そして二人は暫く考え込んでしまった。 「お祖父ちゃんに、このこと知らせるべきなんだろうか…。」 二人は歩きながら話し続けた。そして、再び今日のスタート地点だった駅前まで戻って来てしまった。結局、結論は出ないままだった。 「お祖父ちゃん、お祭りに鈴香が来るの、凄く楽しみにしててさ…。」 鈴香はやや間を置いて言った。 「もちろん、行かせて貰うわ。でも…。」 遼介はちょっぴり困った顔の鈴香を横目に見て、 「そうだね。やっぱり…この話は、しない方がいいかも知れない…。」 「うん。そうかも知れないわね。」 「じゃあ…、そういう方針で…。」 「うん。」 「じゃ、明後日な。」 「…うん。」 「待ってるから。」 「分かった。」 別れ際の二人は言葉少なだった。 二人は駅のホームで別れた。遼介と鈴香はちょうど反対方向に向かう形になり、線路を挟んで二人はベンチに腰掛けて列車が来るのを待っていた。 暫くして、先に鈴香の乗る電車がやって来た。 鈴香は乗り込むと、遼介のいるホーム側のドアの所に来て、小さく手を振った。 そして、電車が茜色に染まりつつある西の空に向かって走り去って行くのを遼介はぼんやりと見つめていた。 夕暮れ時になって、やっと幾らか涼しい風が吹き始めていた。 第3部終〈続く〉 今日で3部終了です。次の4部で終わりです。応援よろしくね
Oct 8, 2009
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台風直撃かも。 【連載題17回】 9月になって、2、3日涼しい日が続いていたので、このまま秋になってしまうのではないかという声もあちこちで聞こえていたが、今日は一転して真夏日が戻っていた。 鈴香と遼介は冷房の効いた喫茶店に向かい合わせに坐っていた。 祭の日は明後日に迫っていた。 後から来た遼介は、アイスコーヒーを注文した後、おしぼりで手を拭いながらまず第一声を発した。 「でも…、どうしてこんな所で待ち合わせなんだ。」 鈴香は今日は生成り色のサマーセーターにチノパンという恰好だった。 「ちゃんと理由があるのよ。」 「?」 「それは…、後できちんと話すから。」 鈴香が指定してきた待ち合わせ場所は、駅前の喫茶店であったが、そこは遼介の最寄りの駅から一つ上った所にあった。また、そこは鈴香の下宿先がある駅からも、一つこちらにある、誠に中途半端な位置にあった。 「で、お祖母ちゃんと話はできたの?」 「うん。」 「あの絵のことは、分かったの?」 「まあ、焦らないで…。ゆっくり話すから。」 ちょうど、鈴香が遼介を抑えるタイミングに合わせたかのように、アイスコーヒーとミックスジュースが運ばれてきた。 「今日はホント暑いわね…、でも、この分じゃ…お祭りは大丈夫そうね。」 「そうだね。…この間、しっかり降ったから、もう降らないだろ…。」 そう言うと、遼介はミルクもシロップも何も入れないままコップを持って、アイスコーヒーを美味しそうにグイッと一口飲み下した。 鈴香は遼介のそんな様子を嬉しそうに見ていたが、自分もストローでジュースを一口飲んで、小さく「ふうっ」と声を出した。 店内は、カウンタ席もあったが、木製の椅子とテーブルが4セットほど置いてある、比較的小さな喫茶店であった。窓際にはよく手入れされた観葉植物の鉢が置いてあり、濃い緑の葉が空調の風を受けて涼しげに揺れている。 遼介はちょっと店内の様子をきょろきょろと窺っていたが、鈴香が一口飲み終えたところで、待っていましたとばかりに、 「で?」 と、視線をよこしてきた。 「うん。あのね…。」 鈴香はちょっと伏し目がちに話し始めた。 「お祖母ちゃんの妹さん…つまりあの絵を描いた人ってさ、私もよく知らなかったんで、び っくりすることばかりだったんだけど。 …あの絵ってね、病院で描いたんだって。」 「え、そうなんだ。」 「うん。それでね、ちょうどその絵を描き終わったぐらいに亡くなった…んだそうよ。」 「そう…。残念だね。中学生ぐらいであれだけの絵が描ける才能があったのに。」 「うん。」 「で、ウチにある絵との関係って何か分かった?」 「それなんだけど、ここからはかなり私の憶測が入ってしまうんだけど…。」 「いいから、言いなよ。」 遼介は、今度はストローを使って少しアイスコーヒーを啜った。 「お祖母ちゃんの妹さん…千代子さんね。子供の頃、養子に出されてたんだって。」 「ふうん…、でも『子供の頃』って? どういうこと?」 「あのね、ウチのお祖母ちゃんの出所はそれほど裕福じゃなかったそうで、お兄さん…つま り跡取り息子はもういる状態で、次の子が双子の女の子でしょ。」 「だから…。」 「親戚に、子どもの出来ない夫婦がいたそうでね、そこへ養子に出てたんだって。」 「でも、千代子さんは病気がちで、入退院を繰り返すばかりだったんで、最後には養子縁組 が取り消しになったらしいの。」 「それって、何だかえげつない話だね。でも、そんなに簡単に養子縁組って破棄できたりす るのかな?」 「お祖母ちゃんも子どもだったんで、よくその辺りは知らないんだそうだけど、死ぬ直前 は、実家に戻っていたそうなのよ。」 「でね、あの絵をいつも枕元に置いて眺めていたんだって。…お祖母ちゃんは、千代子はあ の絵を見ている時だけ、幸せそうだった…って。」 「で、ウチの絵とあれがどう繋がるの…。」 「それがね、千代子さんが養子に出されていた家ってのが、…実はこの辺りなのよ。」 それを聞いた遼介は、思わず飲みかけたコーヒーを吹きそうになった。 「ええっ、…そうなんだ。」 「しかも、…これは多分…なんだけど、 千代子さんが入院していた病院ってのはね…。」 そこで先に口を開いたのは、遼介だった。 「大竹病院…。」 そこで鈴香はしっかり顔を上げて遼介の顔を見上げた。 「きっと…そうに違いないの。」 〈続く〉 少しずつお話は終局へ向かって動いています。応援よろしくね
Oct 7, 2009
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台風が近づいてますね。【連載題16回】 確かに似ていた。 全くそっくりな模倣、コピーとは違うが、構図、色調、そしてそういうものでは説明できない絵の持つ独特の雰囲気。 「ウチにある絵と同じ…」遼介はそう思った。 すると、鈴香も口を開いた。 「この絵…だわ。私、何となくだけど覚えているの。」 鈴香の瞳には、喜びとも懐かしさとも違う、何かしら哀愁めいたものが浮かんでいた。 そんな鈴香を余所に、 「そう。良かったわね。」と、さばさばと奥さんは言う。 しかし、その絵には遼介の博物館にあるそれとは決定的に違う箇所があった。 「…ただ、本当に良く似ているけど、この男の子はウチの絵と違うよね。」 その通りであった。 遼介の博物館の絵は、猫だけが階段の途中に坐っている構図であった。この絵もそこまでは同じであったが、この絵ではその猫の横に少年が座っていた。 鈴香は再びその絵に見入っていたが、ぽつりと言った。 「そうなのよ。だからちょっと印象が違ったのよ。」 遼介は、 「でもさ、この男の子以外は本当にそっくりだね。タッチとかは違うけど。 …でも、12、3歳で描いた絵にしては凄く巧いね。」 「うん。絶対…才能があったんだ。」 奥さんは、 「この絵ね、死んだお祖父ちゃん…つまり、私の夫の父が大切にしてたのよ。 妹の形見だって。でも、こういう応接間に掛ける絵としてはちょっと…でしょ。それに、 ウチの主人にしても、全く顔も見たことのない叔母さんの、しかも小さい頃の絵だから、 あまり思い入れがなくって。 …ごめんね。新築のどさくさで外しちゃってたのよね。それに、すっかり私も忘れてしま ってたわ。」 「あ、いいんです。そんな…。恐縮です。」 と鈴香。 「…で、思うんだけど。あなた、これ、持って帰らない?」 「え?」 「だって、本来はあなたのお祖母ちゃんの姉妹の形見ってことだよね。だから、ウチのお祖 父ちゃんも亡くなったから、一番濃い血縁者が持っているべきだと思うのね。」 奥さんは、ちょっとクールな口調でそう言った。 遼介は、確かにそうだと思いながら、ただ、その口調があまりに事務的だったので、「結局この奥さんもちょうどいい厄介払いができるぐらいにしか思っていないんだろうな…」などとそんな気もするのだった。 「それに…、うちの主人とも話をして、今日あなたがきて…良かったら持って帰ってもらお うかって。」 「はあ…。」 本来なら、鈴香のお祖母さんが貰うべきだろう…。やっぱり、こんなものは手元に置いておきたくないんだろうな。…と、側でそう遼介も考えていた。 奥さんの申し出に、生返事だった鈴香は、遼介に判断を求めるような視線を送ってきたので、彼は小さく頷いてみせた。 鈴香は、少し間を置いて、 「じゃあ…。でも、本当に持って帰ってもいいのかしら。」 「ええ、おば…お祖母ちゃんには、私からも電話しておくわ。」 結局、奥さんはすぐに綺麗な紙袋をどこからか持ってくると、その絵を額のまま中に収め、笑顔で「じゃあ、お祖母ちゃんにもよろしくね。」とさっさと部屋を片付け始めた。 遼介は何となく、その奥さんの様子に反感めいたものを感じつつも、自分たちも押しかけている立場だし、まあ奥さんの気持ちも分からないでもないな、とその気持ちを押し殺しながら黙っていた。 そして、そこを出る時、玄関口で、鈴香が聞いた。 「あの…、この絵って、いつどうやって描かれたのか…ご存知ですか。」 奥さんは、ちょっと考えて言った。 「そうね…。私もよく知らないんだけど、まず間違いなく死んだお祖母ちゃんのものよ。絵 の何処かに『C・H』とサインがあるわ。お祖母ちゃんは『千代子』でしょ、『平野千代 子』ね。 …あとは、あなたのお祖母ちゃんに聞いてみた方がいいんじゃないかしら。」 「あ、それはそうですね。」 鈴香は、確かにそうだと思い、取りあえず笑顔で頭を下げ、その場を後にした。 そして、その絵を持って二人は鈴香の祖母の実家を後にした。 雨はいつの間にかすっかり上がっていて、アスファルトの中央辺りはもう乾いて白くなり始めていた。 歩きながら、遼介が口を開いた。 「しかし、この絵…ホントによく似てたよな。」 「うん。」 「私、もう少し調べてみるわ。…何か分かるような気がするの。」 「そうだね。ちょっとしたミステリーだね。」 「うん。きっと何か私たちの知らない何かがあるのよ。」 「じゃあ。まずはお祖母ちゃんだね。」 「うん。」 駅への帰り道、二人の足取りは軽かった。 駅前の道路脇に植えられた街路樹の葉についた水滴が、少し傾き始めた陽の光を受けてキラキラと輝いていた。 〈続く〉 予定では24回連続になりそうです。読んで下さってる皆さん。気長にお付き合いをね。やった~。1位です。皆さんありがとう
Oct 6, 2009
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さあまた長い一週間が始まります~。【連載題15回】 遼介は「お祖母ちゃんの出所」ということで、かなり古い民家のようなイメージを持っていたが、予想は外れて、そこにはかなりモダンな建物があった。 もちろん、彼の思っていたような家も嘗てはあったのだろう、その脇の古い家の裏手には古い納屋か倉庫のような建物も残っている。 どうやら、跡取りの息子さんが古い家を少し残して新築したのだろう…ということは明かだった。 二人は家の側まで行き、ちょっと見渡してみた。 青い屋根の古い家の方にも玄関らしいものはあったが、そちらの方にはちょっと人気が感じられず、鈴香の足は迷わず新しい家の方に向いた。 門柱には「Hirano」と彫りつけられた陶板が嵌め込まれていた。 鈴香は、祖母の旧姓が「平野」であることを確認し、ゆっくりと門柱に取り付けられたドアフォンを押した。 と、すぐにそこにあるマイクから「ブチ」っというような音とともに、 「はあい。」 と、やや電子音がかった、くぐもった声が聞こえてきた。 そこには小さなカメラも取り付けられているので、どうやら中では私たちの姿が見えているのだろう。 鈴香は少し背をかがめると、マイクに向かって言った。 「こんにちわ。桜井…鈴香です。」 「はい、ちょっと待っててね。」 聞こえてきた声は女性のものであった。 そして、中でぱたぱたと廊下を走る音が聞こえてきた。 車庫には洒落た軽四が停められており、その横には大きなスペースが空いていた。どうやら、今家にいるのは奥さんだけなのだろうと予想できた。 それもそのはず、もう9月である。たいていの学校も2学期が始まっているはずで、子どもがいても、高校生までなら当然学校に行っている時間帯である。御主人も勤め先であることは想像に難くない。 「大学生は、夏休みが長くっていいね。」と、今年になって、周囲の人から度々言われるが、実際に大学生だけがそうなんだ…と鈴香はしみじみ感じていた。 「ガチャリ」 玄関の扉が開いて、中から未だ50歳手前だろうか、という年格好の若作りな女性が出てきた。 「あ、いらっしゃい。…鈴香ちゃんね。お祖母ちゃんから窺ってますよ。…まあまあ、上がってお茶でもどうぞ。」 「あ、はい。」 鈴香は、遼介を紹介するとともに、突然の訪問の無礼を詫びたが、奥さんはとてもにこやかで感じ良く応対してくれた。 何やら垢抜けていて、人慣れた感じであり、とても専業主婦には見えなかった。 今日は何か都合でちょうど家にいたのかも知れないな…と遼介は思った。 「お邪魔しまーす。」と言うと、玄関に靴を脱ぎ、限りなく新品に近いスリッパに足を入れ、しずしずと綺麗な廊下を案内されて歩く。 鈴香は、「親戚」とは言っても、ちょっと離れると本当に何も知らないんだな…。 と、そんなことを改め思うのだった。 小綺麗な居間に案内され、出されたアイスティを飲みながら、そこで暫く雑談などした。部屋にある家具や置物はどれもセンスの良いものばかりであった。 奥さんは、ちょうど話の切れ目にチラリと時計の方に目をやった。 何となく、それに急かされるような感じを受け、鈴香は言った。 「…あの、それで例の『絵』なんですが。」 「あ、そうね。違う話ばかりしちゃってごめんなさいね。 隣の、古い母屋の居間に掛けてあると思うわ。」 何となく、そういうのを待ちかねていたような、ちょっぴりわざとらしい感じで奥さんはすぐに立ち上がった。 「じゃあ。参りましょう。」 すぐ隣にある家だが、そこに行くには一旦玄関を出てからぐるりと外を回らなければならなかった。 隣の家の玄関には門柱も残っていたが、くすんだタイルが剥がれ、下のコンクリートが剥き出しになっている部分が見える。 「ごめんなさいね。もう、随分掃除もしてなくて。」 鍵を開けながら、奥さんは申し訳なさそうに言う。 「いえいえ。こちらこそ、突然申しわけありません。」 埃っぽい廊下を少し行くとすぐ左にそれらしい部屋があった。 「多分、ここにあると思うんだけど」と言いながら、奥さんが板張りの引き戸をガラガラと空けると、古い応接セットのようなソファーが見える。 カーテンが閉まったままなので中は暗かったが、すぐに電灯を点けてくれた。 そこは、かなり物置化しているのだろう。奥の方の窓際あたりには雑然と物が積み上げてある。 鈴香は周囲の壁を見まわしたが、それらしい絵は見付けることができなかった。 「黒猫の絵だったわよね。確かこの辺りに掛かってたと思うんだけど。」 奥さんは、そう言いながら隅の方をごそごそとし始める。そこには、横になった絵や掛け物が数枚乱雑に突っ込んであった。 暫くして、 「あ、あったわ、これでしょ。」 そう言って奥さんが取り出した絵は、簡単な額に入れられたちょうどA3サイズほどの水彩の絵だった。 「鈴香ちゃん。子供の頃、お祖母ちゃんに連れられて何回かウチにも来たことがあるから、 これに見覚えがあったってことかしらね…。長いことこの部屋に掛けられてたんで…こ れ。」 と、奥さんは側にあった黄色いモップ型の雑巾でホコリを払いながら言った。 「へえ…。」 差し出されたそのその絵を見て遼介は思わず声を漏らした。 〈続く〉 今朝はぐっと冷えて秋らしい朝ですポチっとね。
Oct 5, 2009
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日曜日ですね~。一休み。【連載題14回】 翌日は生憎雨模様であった。 今週末は例のお祭りだから、どうせならここで降っておいて欲しいものだ…と、遼介は思っていたが、雨は朝から本格的に降っており、ちょっと降り過ぎかなというぐらいの雨量であった。 目的地へは、ここからいつもの路線で4つ程下った駅で乗り換えなければならないので、そこの乗り換え口を待ち合わせ場所にしていた。 そこはそれほど大きな駅ではなく、到着した遼介は、自動販売機が2台並べて置かれた横のベンチに坐っている鈴香をすぐに見付けることができた。 遼介の姿に鈴香も、すぐに気がつき、笑顔で手を挙げる。 鈴香は、今日はジーンズにピンクのポロシャツ、それからキャップという、彼女にとっては「普通」の出で立ちであった。偶然遼介もジーンズにグリーンのポロシャツで、何となく示し合わせたかのような感じになった。 それをちょっぴり嬉しく感じつつ、遼介は、「この間のワンピースも可愛かったけど、やっぱり彼女はスポーティな恰好の方が似合うかな…。」などと、そんなことを考えていた。そして、 「待った? 同じ電車かなって思ったんだけど。」 と、笑顔で爽やかに告げた。 鈴香もニッコリと笑って、 「ううん。大丈夫。 …私、一本前の電車がちょうど出る所だったから、それに乗っちゃったの。ちょうど読み かけの本があったんで…いい時間だったわ。」 彼女はそう言いながら、肩から掛けたバッグに文庫本をしまいながら立ち上がった。 「じゃあ、行こうか。」 「うん。」 二人は人気のないホームで再び電車が来るのを待っていた。 雨はまだしとしと降り続いていた。 「で、…場所、分かるの。」 「うん。お祖母ちゃんに説明してもらったし、駅から通っている大きな道路沿いだからすぐ 分かるって。」 「そう。じゃあ安心だね。」 焦げ茶色のボディに黄色と緑のラインが入った2両編成のローカル線は、約10分後に到着した。 乗車時間はそこから約20分ほどである。やや山間部にさしかかる辺りにある小さな町が、目的地であった。 雨は小降りにはなったものの、まだぽつぽつ降り続いているのが走っている電車の車窓からも見て取れた。 電車は空いており、二人は横長のシートに仲良く腰掛け、外を眺めながら話をしていた。 目的の町には、すぐに到着した。 駅を出ると二人は雨の中を傘をさして歩いた。 ちょっと足下が濡れたけれど、まだまだ夏っぽい天気であり、素足にサンダル履きという二人には却って気持ちいいほどだった。 「ところで、その『絵』って、どんな絵なんだろうね。」 「うん…。でも、『絵』としてはあまり期待しない方がいいと思うよ。だって…。」 「え?」 と遼介。 「お祖母ちゃんの妹さんね、12歳で亡くなったの…。」 「そうなんだ。…でも、随分若い時に亡くなったんだね…。」 「うん。詳しくは知らないんだけど、病気だったらしいの。 体、弱かったんだって。 …私のお祖母ちゃんが、姉でしょ。で、自分は健康で病気知らずだったらしいから、却っ てちょっと辛かったみたいなのよね。 …自分が色んなものを取っちゃったみたいで。」 「ふうん。」 雨は知らない間に小降りになっていた。 傘はもういらないかなと思いながらも、何となく二人ともそのまま歩き続けていた。足下の水たまりに、時折雨粒が小さな円を描いていた。 「あ、あれだわ。きっと。」 鈴香が指さした方向に、ぽつんと一軒だけ田圃の中に家が見えた。 そこには、赤茶色の屋根に煤けたピンク色の壁の、ちょっと南仏を意識したような新しい家と、青い屋根の古い家が寄り添って建っているのが見える。 確かに、あそこは大きな道路からもよく見えるし、道路の反対側には駐車所の広い郊外型の大きなホームセンターがある。 どうやらあれが目印だったのだろう。 「傘、たたもうか。」 と、鈴香に声を掛けられ、二人は傘をしまいながら、大きな通りから真っ直ぐにその目的の家に伸びている細い道へと曲がった。 〈続く〉 メンテナンスでなかなか更新ができませんでした~応援よろしくね。
Oct 4, 2009
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だんだん話が見えてきました? がんばりまーす。【連載題13回】 鈴香の何だか怪談でも語るかのような口調に、遼介は思わず、ゴクリと生唾を飲んでしまった。 かまわず、鈴香は続けた。 「でね…。私、『お祖母ちゃん、何か心当たりあるの?』って尋ねたのよ。 するとね。何でも、お祖母ちゃんの実家にも黒猫の絵があるんだって教えてくれたの よ。…でも、母の実家ならちょくちょく行ったけど、お祖母ちゃんの実家って、そうそう 行く場所じゃないでしょ…。」 遼介は確かにそうだという感じでコクリと頷く。 「それでも…ね、小さい頃に一度や二度は行ったことがあるかもしれないって…。 だから、可能性としてはその時の記憶だってこともあるかも知れないわ。 …でも、私なーんにも覚えてないのよね。」 遼介はちょっと眉間に皺をよせて、 「…ふうん。つまり、お祖母ちゃんは、鈴香がその絵を子供の頃見ていて、それで勘違いし てんじゃないかって思ったってこと? …でもそうだとすると、凄く遡っちゃうよな…。」 「うん、そうなのよ。 お祖母ちゃんって、母方のお祖母ちゃんなのよね。 …私も殆ど記憶がないし、聞けばそれほど大きな絵じゃないって言うし…。」 「でさ、さっき言ってたけど、何が『凄い』の?」 遼介は歯切れの悪い鈴香に思わず突っ込みを入れた。すると、 「待ってよ、これからなのよ。」 そう言って、鈴香は紅茶を二口ほどゴクゴクと飲み、「ふう。」と息を吐いてから話を続けた。 「…でね。その絵ってのがさ、お祖母ちゃんの妹さんが描いた絵なんだって。」 「へえ。お祖母ちゃんの妹さんって絵描きさんだったんだ。」 「それが、違うのよ。」 「…私も、知らなかったんだけど、お祖母ちゃんって双子だったんだって。」 「そうなんだ。」 遼介にとっては、それは別段大したことのない情報ではあった。が、鈴香の様子に合わせて少々大袈裟に驚いてみせた。 「双子かァ…それは凄いな。…でも、まあ、自分の祖父母の兄弟ってのは基本的にあまり会 わないし、知らないことが多いよね。 でも、双子ってのはちょっと珍しいかもね。 …で、当然そのお祖母ちゃんの妹さんだっけ…には、鈴香は会ったことないんだ。」 それを聞いて、鈴香はちょっぴり残念そうに言った。 「それがね。若い頃に亡くなっちゃったんだって。」 「ああ…。そうなんだ…。ごめん。」 「ううん、いいの。私も知らなかったのよ。」 遼介は、ちょっと間を置いて、 「でも、その方の形見として絵が残ってるってワケだ。」 「そうみたいなの。」 「でもさ、まだ確信には至ってないんだよね。」 「そうなの…。でね?」 「?」 「実はね。お祖母ちゃんの実家ってのがさ、意外に近い場所にあるのよ。」 「へえ。そうなんだ。」 「…そこを訪ねてみようかなって。」 「その絵ってまだあるんだ。」 「うん…。お祖母ちゃんによると、その実家はお祖母ちゃんのお兄さん…つまり跡取りが継 いだのね。 その方も、もう何年も前に亡くなってるんだけど、その息子さん、うーん…と…要する に、その家はお祖母ちゃんの甥っ子に当たる人が継いで、それは今でもあるんだって。 …お祖母ちゃん、もうかなり前になっちゃうけど、法事の時か何かにまだその絵が掛けて あるのを見たような気がするって言ってたのよ。」 「そう。それじゃあ、その絵はまだ見に行けるんだ。」 「それはそうなんだけど。」 「え、何か問題でも?」 「ううん。特に問題ってほどじゃないけどさ。」 「何?」 そこまで言って、鈴香は急に笑顔になった。そして、遼介の顔を見つめて言った。 「見に行く時、遼介にも付き合って欲しいな。」 遼介はちょっぴり驚いた。 「え、オレが?」 「何だか、『親戚』って言っても遠縁だから、敷居が高いのよ…。 お祖母ちゃんは予め連絡しておいてあげるって言ってるンだけど。一人じゃ心細くって さ。」 遼介は、それを聞いて、「ここはポイント高いぞ」と自分で自分に言い聞かせた。そして、 「うん。いいよ、一緒に行こう。」 と、ややこわばった笑顔で快諾した。 鈴香は、 「やったァ。嬉しい。じゃあ、『善は急げ』だから明日ね。」 「え…、明日ァ。」 遼介の慌てる様子を余所に、鈴香は残りの紅茶を一気に飲み干していた。 〈続く〉 今回のテーマは「しみじみ」です。今日はしみじみ出勤してきます再び2位になりました。
Oct 3, 2009
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今日から第3部です。よろしくね。【連載題12回】 「あのね…。」 「何?」 「私…、調べたの。」 「何を?」 「この間、私…あの黒猫の絵『どこかで見たことがあるような気がする』って言ったでし ょ。」 「ああ…うん。」 「あれ、ずっと気になっててね…。」 鈴香が博物館に来た次の週は、サークルも休みだったので、お互い何となく連絡もとらずにいた。そして、今週になってちょっと大学に用事があって出向いた遼介だったが、そこでばったり鈴香と出逢ったのであった。 鈴香も奨学金か何かの手続きで、学生課に用事があったらしく、折角だからと二人は学生会館に立ち寄って、ソファに腰掛けて話をしていた。 「私…先週末にちょっと帰省したでしょ。あの時にちょっと聞いてみたのよ。」 「猫の絵のこと?」 「うん。」 「で、何て?」 そう言うと、遼介は手に持っていた缶コーヒーを口に含んだ。 鈴香は遼介の手元をやや焦点の合わない目でじっと見つめていたが、やがて口を開いた。 「…まずね、お母さんにね、『私、小さい頃あの博物館に行ったことある?』って尋ねた の。」 「で?」 「無さそうね。」 「じゃあ、やっぱり何かの思い違いか何かだったんじゃ…。」 「うん。そうかも知れない。でもね」 「でも?」 「ちょっと凄いことが分かったのよ。」 「え?」 そこで、鈴香もペットボトルの紅茶でちょっと口をしめらせた。 「これ…お祖父ちゃんには絶対内緒にしておいてくれる?」 「うん。」 遼介は思わず身を乗り出した。 「あのね。実は、私のお祖母ちゃんなんだけど…。」 「お祖母ちゃんって、田舎の?」 「そう…なんだけど。」 「この間、実家に帰ってた時にね、ちょうど親戚が集まってたのよ。…その時に、あの絵の ことや、ここの博物館の話をしてたのよ…。」 「あ、ひょっとして、鈴香のお祖母ちゃんが、来たことあるとか。」 「ううん、違うの…。ちょっと、最後まで聞いてよ。」 「ゴメン…。で?」 「あのね…。うーん。話す順番が難しいのよ。ちょっと待って。」 そう言うと、鈴香は暫く空中に何かを書くような仕草をしながらぶつぶつ言っていた。 鈴香が何か集中して考え事を始めると、よくその仕草をすることに、最近遼介は気付いていた。「自分は気付いているのかな…」と、何となく可笑しいような嬉しいような気分がしたが、今は真剣な表情の鈴香にちゃちゃを入れるのは止して、彼は黙って待っていた。 すると、ほどなくして鈴香は口を開いた。 「あのね…。まず一度整理すると、私…あの博物館で、猫の絵を見た時、何だかとっても懐 かしい気がしたのね。 …で、ひょっとして私、小さい頃誰かにあそこに連れて行ってもらったことがあるのかな って、母に尋ねたのよ。」 「うん。」 「母は、それは、まず無いだろうって…。でね、その時ちょうどそれを横で聞いていたお祖 母ちゃんがね。」 「うん。」 遼介は一層身を乗り出して聞いた。 「その『猫の絵』って『黒猫の絵かい?』って聞いてきたのよ。」 〈続く〉 今、全体の半分ぐらいかな~ってとこです。気長にお付き合いを。応援してね
Oct 2, 2009
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今日で2部は終了でーす。ちょっと長目にどうぞ【連載題11回】 絵の前で立ち尽くしたまま動かない鈴香に、遼介はもう一度声を掛けた。 「この絵に、何かピンときた? …奇遇だね。 …実は、この絵がお祖父ちゃんの原点なんだ。」 そこで始めて鈴香は遼介の方へと向き直った。その目は真剣だった。 「…この絵って、昔からウチにあってさ。 本当は本館にあったんだ…。多分、地元出身の無名の画家の作品だろうなってお祖父ちゃ んは言ってたんだけど、実際よく判らないんだ。 その右隅にサインが見えるだろ? AとTとOって微かに…分かるかな? 『阿藤』って読むのかな…。でも、そんな人はお祖父ちゃんも聞いたこと無いってさ。 ひょっとしたら「アット、オー」かも知れないな…なんてちょっと思ったりもしたんだけ どね…。」 鈴香は黙って聞いていた。遼介は続けた。 「…でさ、この絵というか、ここに描いてある黒猫にお祖父ちゃんは取り憑かれちゃったん だって。つまり、何だか妙にこの黒猫ちゃんに魅せられてさ、 それで何時からか猫コレクションを始めたんだってさ。 …それが高じてここまで来たんだ。」 遼介はそこで、一息ついた。 鈴香はまだ黙って聞いていた。が、唇を少し口を尖らせ、何かを確認するかのように小さく頷いていた。その目は穏やかだった。 遼助はそんな鈴香に、 「…だから、この絵もちょくちょく色々な所で紹介されてて…だから、鈴香…それでも見た んじゃない?」 と、問いかけた。 鈴香は、ちょっと考えながら、 「そうかも知れないわね。でも…。」 「でも?」 「何だかちょっと違うような気がするのね。そういうのとは…。」 「そういうの…って?」 「うまく言えない…。」 鈴香はそう言うと、また暫く黙ってその絵を見つめていた。 結局、随分とそこで時間を潰してしまい、その後もゆっくりと館内を回ったので、そんなこんなでかなり時間が経ってしまっていた。 ふと見れば時計はもう4時30分を過ぎていた。 帰り際。 鈴香は、「お祖父ちゃんにお礼を言って帰らなきゃ。」 そう言って、また本館へと向かおうとした。 と、後ろの方から声がした。 「どうでしたかな。お気に召したでしょうかな。」 振り返ると、祖父がベンチに腰掛けてパイプを燻らせていた。脇ではあのブロンズの猫が空を見上げている。 鈴香は平蔵の方へ満面の笑みを浮かべて歩み寄り、 「はい。とってもよかったです。萩原朔太郎の『青猫』の初版本があったのには感動しまし た。あれ、手にとって見て良かったんですか?」 「ああ、いいですとも。あれも私の想い出の品でしてな…。 …で、研究の資料になりそうなものは見つかりましたかな?」 「はい。まだ自分の研究って、大して進んではいませんが、本当に、参考になりました。よ ければ、…またお邪魔してもいいかしら?」 「ほうほう。…そうですか、それは何より。お金なんかいいですから、たびたびいらっしゃ い。」 鈴香の笑顔を見て、平蔵もご機嫌そうだった。 遼介は、 「彼女、今日はこれからバイトなんだ。だから、駅まで送ってくる。」 と、時計を見た。 すると、祖父はゆっくりと立ち上がり、口を開いた。 「桜井さんとおっしゃいましたな。」 「はい。」 「お嬢さん、…ところで、あなたは、お住まいはどこですかの。」 鈴香はいきなりの質問にちょっと驚いたような目をしていたが、すぐに笑顔になって答え た。 「はい。今はここから二駅向こうに下宿してるんですが…。実家は…。」 彼女は、遼介たちが済む県の隣の県の北部にある小さな町の出身だった。 鈴香の地元には文学部のある大学がなかったので、こちらの大学に進み、今は近くに下宿をしている…と平蔵に簡単な説明をした。 平蔵は、それを聞くと、 「そうですか。あそこは冬場は雪がたくさん降りますよね。」 「あ、ご存知ですか。近くにはスキー場もあるんですよ。」 「そうじゃった、そうじゃった。」 平蔵はにこにこと笑い、そして続けた。 「ところで。お嬢さん。よければ、今度…祭りの時にでもまたいらっしゃい。」 「あ、あのポスターの…」 鈴香は、平蔵の言う「祭」というのが、あのポスターに出ていた夏祭りのことだとすぐに判って答えた。 「そうそう、よろしければ、是非いらっしゃいな。 花火大会もあるしの。ちょうどここから花火もよく見えるんじゃよ…。」 「あ、そうなんですか。私、打ち上げ花火大好きなんです。嬉しいな。」 鈴香は、平蔵が向けた視線の先を見た。 そこは、ちょうど新しいマンションと本館の間で、そこからは遠くが見渡せた。 どうやらそのずっと先に広場か河原があるのだろう、そこだけは何も遮るものが無かった。 「花火の時はの…このベンチが特等席なんじゃよ。」 そう言って、お祖父ちゃんは右手でベンチの脇を撫でながら、また煙草を深く吸い込み、そして紫煙をゆっくりと空へ向けてふーっと吐き出した。 鈴香は、 「はい。じゃあ是非。」 とにこやかに答えた。 遼介は、自分が誘う前に祖父に先を越されてしまったことを、ちょっぴり悔しく感じもしたが、それはそれで、巧くことが運んだことを嬉しく思っていた。 実は、彼も鈴香をお祭りに誘おうと思っていたのだった。 けれど、それをいつ切り出そうかと悩んでいたのだ。その矢先の祖父のお誘いだったのである。 しかし、遼介は、祖父がなぜ急に出身地なんかを彼女に尋ねたのか、それについては分からずにいた。 まさか身上調査…? と、ちょっぴり妙な気もしたが、やはり初対面の時の祖父のあの様子とこれには何か関係があるに違いない…。 と、そう感じた。 しかし、それがどのようなものかということは、あれこれと勘ぐってみても、特に何も心当たりは浮かんでこなかった。 「じゃあ、ありがとうございました。失礼します」 そう鈴香は告げ、遼介と一緒に夕陽が差し始めているテラスを後にした。 第2部終〈続く〉 もう10月ですね。小説では8月なのに…2位になりました
Oct 1, 2009
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