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「スター・ウォーズ / 最後のジェダイ」 Star Wars:The Last Jedi 2017年 アメリカ映画 監督 ライアン・ジョンソン出演 デイジー・リドリー アダム・ドライバー ジョン・ボイエガ オスカー・アイザック マーク・ハミル キャリー・フィッシャー ケリー・マリー・トラン ベニチオ・デル・トロ 皆さんお久しぶりです。 シリーズ第9作「スカイウォーカーの夜明け」公開日に合わせ、TV放送していましたので、録画して鑑賞しました。このブログをずーっと見ている数少ない方々はご存知かと思いますが、僕は、最初の「スター・ウォーズ」(1974年公開、ヒットしてシリーズ化してからは「エピソード4新たなる希望」と副題がついています。)の劇場公開を高校時代にリアルタイムで経験して以来のSF映画ファン、スター・ウォーズファンです。だから、この「エピソード8」が鑑賞できる状況が来るのを心待ちにしていました。 遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。 最高指導者スノークが率いるファースト・オーダーと新共和国のレイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)が率いるレジスタンスの戦闘は激化していました。ファースト・オーダーはレジスタンスの秘密基地の位置を突き止め、ハックス将軍が率いるスター・デストロイヤーの大艦隊で急襲してきました。レジスタンスのパイロットであるポー・ダメロン(オスカー・アイザック)は撤退命令を無視し、Xウイングで大艦隊の前に立ちはだかり、レジスタンスの艦隊が基地から撤退するための時間を稼ぎます。レジスタンスの爆撃機は次々と敵戦艦へ接近しますが、撃墜され、最後の一機になってようやく撃沈することに成功しました。その間、レジスタンスの艦隊は、ハイパースペースへ逃げ始めますが、ファースト・オーダーが開発した新技術により、追跡されてしまいます。重傷を負い、治療のために医療カプセルの中で眠っていたフィン(ジョン・ボイエガ)は目覚め、医務室を出て、帰還したポーと再会します。 一方、辺境の惑星に隠居していた伝説のジェダイ・マスター、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の元へ向かったレイ(デイジー・リドリー)は、全く相手にされません。しかし、レイとともにミレニアム・ファルコン号でやってきたチューバッカやR2D2に説得され、ルークは翌日の夜明けからレイの修行を開始する決心をします。 翌日、早朝からレイの修行を始めようとしたルークは、レイがフォースの暗黒面を跳ね除けようとしなかったことに恐怖します。 一方、ハイパースペースを抜けて逃げてきたレジスタンスのクルーザーは、ファースト・オーダーのカイロ・レン(アダム・ドライバー)率いる部隊の激しい攻撃により、一部損傷し、アクバー提督らリーダー陣は全滅し、レイアも船外に投げ出されてしまいます。レイアはフォースにより空間を飛び、味方の船へと舞い戻ってきますが、昏睡状態となってしまいます。劣勢を打開するべく、ポーは自分の作戦をレイアに代わって指揮を執るホルド提督に話すと反対されると思い、極秘裏にフィンと女性整備士のローズ・ティコ(ケリー・マリー・トラン)に、スノークが乗っている巨大な戦艦の内部に潜入させ、内部にある追跡装置を一時的に止める作戦を提案します。しかし、それには、暗号解読者が必要でした。 惑星タコダナの酒場の主人マズ・カナタから、惑星カントニカのカジノ都市カント・バイトにいる暗号解読者の情報を得、フィン、ローズとBB-8が秘かに脱出して向かい、自称暗号解読者のDJ(ベニチオ・デル・トロ)と出会います。 この映画、ネットなどで結構酷評されていますね。中にはシリーズから外すように署名している方々もいるほどです。 その理由のひとつに挙げられているのが、フォースの描写に関することです。スカイウォーカー家の一員であるにもかかわらず、今までのシリーズ中フォースを使える描写がほとんどなかったレイアが、生身で宇宙に放り出されたにもかかわらず、自ら宇宙空間を飛んで帰ってくるという、マスタージェダイでも見せたことがないとてつもない力を見せる場面、僕も、観た瞬間、「なんやそれ~~~???」と思いました。遠く離れた場所にいるのも関わらず、すぐそばにいるかの如くにお互いの姿が見え、会話するレイとカイロ・レン、今までテレパシーや虫の知らせなような描写はありましたが、こんなのは初めてでした。そして、最後の戦いに参戦するルークの描写、詳しくはネタバレになるので書かないでおきますが、またまた今までの映画では全くなかったフォースの使い方です。「ずり~~~~!!!そんなんありかあ????」と思いました。これまでの7作に出てきてない、しかもどう考えても難易度が高そうなフォースの使い方なんですよね。オビ・ワンやクワイ・ガンの幽霊が出てきた時(今回はヨーダが出てきます。)も、「そんなん有かあ???」と思ったけど、一説には、彼らは死んだのではなくて、フォースに還ったという言い方をするそうなんで、ジェダイマスタ-は肉体が滅びても、フォースそのものになって生き続けるみたいです。(ということはルークも………。)まあ、ただ気を付けなければいけないのは、この物語は、「遠い昔、はるか彼方の銀河系で」の物語なので、ルークもレイアもハン・ソロもレイもカイロ・レンもポーもクワイ・ガンもアナキンもパドメもオビ・ワンも………、地球人にそっくりの見た目をしていますが、全く別の人類なので、地球人の常識で判断するのはナンセンスなんですけどね。特に正体がわからないレイなんて、もともとそういう能力を持ち合わせている種族だと言われれば何もう言えませんけどね。他にも、あっという間に新共和国を恐怖に陥れたファースト・オーダーの最高指導者スノークがあまりにあっけなく………(詳しくは内緒)とか、紫髪の頑固おばさん(ホルド提督という、レーアとは旧知の仲らしいんですが。「ジュラシック・パーク」では心優しい古植物学者エリーを演じていました。)が初めから行き先を言っていれば、もっと物事がスムーズに進んでたんじゃないの?などなど、ツッコミどころは満載です。 監督・脚本のライアン・ジョンソンのせいかね。今度の第9作「スカイウォーカーの夜明け」には、前作「フォースの覚醒」のJ・J・エイブラムス監督が復帰していることから、どういう評価になったのかは明白ですけどね。 ということで、いろいろとがっかりポイントがたっぷりなシリ-ズ第8作ですが、今はシリーズ中屈指の名作と言われている「エピソード5帝国の逆襲」が、公開直後は結構酷評されていたことを考えれば、この作品の評価も、三部作の完結編「スカイウォーカーの夜明け」を観てから下すべきなのかもしれませんね。(笑) ところで、「スカイウォーカーの夜明け」なんですね。最後なのに“夜明け”とは?非常に楽しみです。(噂では10作目以降もあるという話が………。)
2019.12.29
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「カメラを止めるな」 2018年 日本映画 監督・脚本 上田慎一郎 全く無名の監督・俳優陣の低予算映画が、面白いと評判になり大ヒットし、日本アカデミー賞最優秀脚本賞も受賞してしまった話題の映画が地上波のTVで早々と放送していましたので、観てみました。 結論から申しますと、面白いの一言に尽きます。久々に心から笑える映画を観たという感じです。 冒頭30数分、非常に面白くないB級感たっぷりの短編ゾンビ映画を見せられます。しかし、なんとなくおかしな場面、違和感バリバリの映像が非常に気になります。例えば、同じ会話を繰り返していたり、監督が変な場所から突然現れたり、突然カメラが地面に置かれたままになってしまったり、ヒロインが叫んでいる場面が異常に長かったり、といった感じです。 こんな素人感丸出しの映画が話題になるわけがない、これはきっと何かあるぞと思って、はっきり言って全く面白くない超B級な映像を細かい部分まで気にしながら頑張って見続けました。すると、エンドロール後、その種明かしが始まりました。 なるほど、なるほど、これはこういう意味だったんだ、あそこは全くのアドリブだったんだ、あの事情がここにつながるんだ、といった感じで、どんどん違和感が腑に落ちてきて、観終わった後は、心からの爽快感と満足感に浸っている自分がいたわけです。 そして、思わず、もう一度最初から観たくなり、もう一度観てみました。今度は、最初のどうしようもなく面白くない短編ゾンビ映画で、思わず笑いがこみあげてきます。特に、監督の最初のセリフとメイク係が繰り返す「ポン!」に大爆笑でした。そういう映画です。 ところで、例によってこの記事を書く前に、ネットでのこの映画の評判を観てみました。そうすると、「全く面白くなかった。」「こんな映画がどうしてヒットしたのかわからない。」などなど、非常に酷評をしている方々が少なからずいることに気が付きました。中には、「最初が全く面白くなかったので早送りで観ました。」とか、「全く退屈だったので途中で観るのをやめました。」という、非常にかわいそうな人もいました。 残念ですね、こういう知的遊戯が理解できないかわいそうな方々が世の中には少なからずいるもんなんですね。 ということで、久々に心の底から笑えるコメディを堪能し、非常に満足でしたというお話でした。そうそう、監督の娘が学生時代バスケやってたという、ほんの一言が最後の方で生きているのに気が付いて、同じバスケ経験者として、非常にうれしかったということも付け加えておきましょう。(この点について指摘していた感想がなかったので、あえて書かせていただきました。) なお、今回は、あらすじを書くとそれだけでネタバレになってしまうので、あえて割愛させていただきました。
2019.03.12
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「ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー」Rogue One : A Star Wars Story 2016年 アメリカ映画 監督 ギャレス・エドワーズ 出演 フェリシティ・ジョーンズ ディエゴ・ルナ ドニー・イェン チアン・ウェン フォレスト・ウィテカー 地上波ノーカット初放送をしていましたね。皆さんご存知のとおり、第1作をリアルタイムで劇場で観て以来の「スター・ウォーズ」ファンのおじさんは、まだ未見のこのスピンオフ作品、当然のごとく、録画しておりました。 遠い昔、はるかな銀河系で‥‥。 科学者ゲイレン・アーソは、帝国軍から逃れ、辺境の惑星で農業に従事していましたが、究極兵器デス・スター製造に協力させるためにやって来た帝国軍の将校クレニックに妻を殺され、捕らえられてしまいます。岩山の中の穴に潜み難を逃れたゲイレンの一人娘ジンは迎えに来た反乱軍の戦士ソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)に育てられます。 15年後、無法者となっていたジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)は帝国軍に捕らえられていましたが、反乱軍に救出され、パルチザンとなっていたソウ・ゲレラとの仲介役を要請されます。 完成したデス・スターの重要情報をゲイレンに託され脱走した帝国軍のパイロットのボーディーが、惑星ジェダにアジトを構えるソウに拘束されていたからです。 反乱軍のキャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ)と組んだジンは、ジェダ・シティへ行き、そこで盲目の僧チアルート(ドニー・イェン)とその相棒ベイズ(チアン・ウェン)に出会いますが、戦闘に巻き込まれ、パルチザンに拘束され、アジトへ連行されてしまいます。 アジトでソウと再会したジンは、ゲイレンのメッセージを見ます。ゲイレンはデス・スター開発に協力しながらも、構造に致命的な弱点を仕込み、その弱点を記した設計図のデータは惑星スカリフにあることを伝えてきたのです。 その一方、帝国軍のクレニック長官は、ジェダ・シティをデス・スターのスーパーレーザー砲の試射の標的にしていました。通常より低威力の砲撃でしたが、聖なる都一帯は完全に破壊されます。ジンたち4人と解放されたボーディーは、帝国軍のドロイドをキャシアンが再プログラムしたK-2SOの操縦する戦闘機で辛くも脱出しますが、両足が義足で走れないソウはジンに銀河の未来を託し、崩壊するアジトと運命を共にするのでした。 最初の「スター・ウォーズ」(ご存知の通り、当初B級映画として作られたものが、予想に反して大大大ヒットしてシリーズ化してからは「スター・ウォーズ エピソード4 / 新たな希望」と呼ばれるようになっています。)の冒頭、今までのあらすじ的に基本設定の説明が画面全体に流れてきます。(初めて見たときは面食らいましたが、その後シリーズ化してからはお約束となっていますよね。)その中で、「反乱軍のスパイは、帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功」という一文があります。その顛末を描いているのがこの作品です。 大大大ヒットした「スター・ウォーズ」ですが、帝国軍の究極的最強巨大兵器“デス・スター”が、主人公ルーク・スカイウォーカーが天性の“フォース”を使ってギリギリのタイミングで放ったたった1発のミサイルで、完全崩壊するご都合主義すぎる結末に、疑問を持った観客も少なからずいたはずです。僕自身も、このブログの記事では書きませんでしたが、はっきり言って、疑問に感じていました。しかし、最初の「スター・ウォーズ」は、結果的には大大大ヒットして、ジョージ・ルーカスの思惑通り、シリーズ化され超大作にのし上がりました(後の新三部作エピソード1~3については、その超大作であるが故の油断というか、出来が良くなくても大ヒットしてしまうという、悪しき伝統にアグラをかいている感が無きにしも非ずですが。)が、そもそもが海のものとも山のものともつかない超B級映画だったわけで、多少ツッコミどころがあろうが、娯楽性に超重点を置いて作られた作品なので、余計なツッコミを入れるのも野暮ですから、あえて、ツッコミをしませんでした。 だから、この「ローグ・ワン」が作られていると聞いたときは、長年の(ほんと長年ですよね。ほぼ半世紀ですよ。)疑問が解消されるということで、涙がチョチョ切れるぐらいうれしかったわけです。 そして観てみたら、ハラハラドキドキ、涙がダラダラ、すごいドラマが形作られているではありませんか、ジンと父ゲイレンの別れ、小さな体で精いっぱい奮闘するジンの姿、義理堅く“フォース”の存在を信じるチアルートの一途さ、斜に構えながらもいざというときは頼りになるベイズの男気、容赦ない攻撃を受けながら機能を停止しても持ち場を離れないK-2SOの頑固さ(機械だから融通が利かないだけというツッコミは野暮です。)、なんだかんだ言って結局は命を懸けてしまうキャシアンの信念などなど、涙ポイント満載な、感動ドラマで、巷で騒がれているように、シリーズ1の完成度と言っても過言ではないいい作品ではありませんか。(前述のように、この作品が作られたという事実だけで涙がチョチョ切れるぐらいうれしかったという贔屓目が含まれている点は否定しませんが。) しかし、実は巷では(ネットでは)「前半が退屈だった。」とか、「ジェダイが出てこなくてがっかりした。」とか、「“フォース”を使ってないじゃないか。」とかいう理由で、低い評価を与えている方々が少なからず存在しています。 でも、これらは、この作品を「スター・ウォーズ」の一部としての視点のみで評価しているにすぎません。 どこの世界にも、華々しいスターの陰には、光が当たらない縁の下の力持ちがいるものです。ルークが“フォース”の力で何とかミサイルを命中させ、デス・スターを粉々にし、一躍英雄として脚光を浴びたその陰には、ジンたち名も知れず命を懸けて奮闘した戦士たちの犠牲があるのだという、感動の物語を理解してほしいものです。 ということで、今後「スター・ウォーズ エピソード4 / 新たな希望」を観るときに、冒頭のオープニングクロールや、反乱軍がデス・スターの設計図を見る場面や、ルークがミサイルを命中させるときに、ジンたちの健気な姿を思い出して、思わず涙してしまうであろう、というお話でした。 なお、デス・スターの司令官ターキン総督役のピーター・カッシング、及びレイア姫役のキャリー・フィッシャー、故人2人の姿を見事に蘇らせてくださったスタッフに、心から敬意と感謝を送りたいと思います。
2019.02.19
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「三度目の殺人」 2017年 日本映画 監督 是枝裕和 出演 福山雅治 役所広司 広瀬すず 吉田鋼太郎 斉藤由貴 橋爪功 なんか、すごい久しぶりですね。でも、忘れていたわけではありませんよ。 今回は、昨年の日本アカデミー賞作品賞に輝いた、是枝裕和監督初の法廷ミステリーです。以前、地上波TVで放映していたのを録画していたのを、やっと最近みることができました。 弁護士重盛朋章(福山雅治)は、司法試験同期の摂津大輔(吉田鋼太郎)から弁護を頼まれます。容疑者の三隅高司(役所広司)、彼は先日1人の男性を撲殺、ガソリンをかけて焼き殺した殺人の容疑にかけられ、当初から罪を認めており、殺人に加え窃盗も行っていたため死刑は確実でした。しかし、摂津は、ころころと供述を変える三隅に辟易していたのです。 幾度か彼の元へと足を運ぶ重盛だが、その都度三隅の話は二転三転しており、真実をなかなか掴めません。とりあえず死刑ではなく無期懲役とする減刑を目標とし、部下と共に調べ始めました。 被害者の男性は三隅の働いていた会社の社長で、彼をクビにした男であり三隅の供述のとおり、怨恨による殺人であることは確かなようです。三隅の家へと向かった重盛は、大家にこの家へ来ていた人物について聴きます。すると足の悪い少女がたびたび目撃されていました。その少女は被害者の娘・咲江(広瀬すず)でした。さらに、彼が被害者の妻・美津江(斉藤由貴)と交わした『例の件お願いします』というメールがあったのです。 裁判の日が刻一刻と迫る中、重盛は部下と2人で北海道へ向かいます。三隅は、かつて殺人の罪で30年投獄しており、その時の事件の詳細を聴きに来たのです。 しかし当時の事件を知る人間もまた、彼の供述の変わり方に頭を抱えていました。重盛達が分かったのは殺人の事実と、今と変わらぬ謎の性格、そして消息の掴めない三隅の娘でした。 そしていよいよ裁判の日、重盛たちは、『保険金殺人を狙った被害者の妻・山中美津江を主犯とした事件』というシナリオを用意していましたが、‥‥‥。 福山雅治が演じる重盛弁護士は、真実を追求することよりも、容疑者の依頼に応じた事件のシナリオを設定し、裁判を自分の思うとおりに持っていくことに働き甲斐を感じる、腕利きの弁護士でした。 しかし、役所広司演じる三隅の異様さに圧倒され、次第に真実が知りたいと思うようになっていきます。そこに、見るからに陰のある少女、被害者の一人娘でありながら容疑者三隅と交流があった、広瀬すず演じる咲江、その母であり、被害者の妻、美津江、三隅の最初の殺人を裁いた裁判長だった、重盛の父(橋爪功)などが絡んでいき、観客も次第に心から真実が知りたいと思い、物語にのめりこんでいきます。 そんな中、三隅を演じる役所広司の存在感は圧倒的です。終始目の焦点が合わず、何を考えているのか全く読めない虚ろな表情で供述を二転三転させる容疑者三隅、観客は彼の真実がどこにあるのか気になって気になって、画面から目が離せなくなります。日本アカデミー賞最優秀助演男優賞は圧勝だったのでしょう。 また、もう1人気になってしまうのが、被害者の娘咲江を演じる広瀬すずです。どことなく不幸を背負った陰のある少女の役がこんなに似合ってしまうのはどうしてでしょうか。彼女がCMなどで見せるあどけない明るい少女とはギャップがありすぎて、彼女の底はどこにあるのか、末恐ろしい女優です。こんな演技を見せられてしまうとやっぱり「海街diary」で、カーテンのエピソードを見せてほしかったと後悔しきりです。もちろん、彼女も日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞しています。(カーテンのエピソードがカットされていなければ、「海街diary」で受賞できたのかもしれませんね。詳しくはこのブログの「海街diary」の記事を参照してください。) ということで、大河ドラマの主役まで張っている当代きっての色男が、現在の日本映画界NO.1の演技派に圧倒的に食われてしまったというお話でした。まあ、役的にそうなってしまうのはしょうがないですけどね。(福山雅治は、この映画で主演男優賞にノミネートすらされてません。「そして父になる」のときはノミネートされているのにね。)
2019.02.13
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「クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的」El Bar 2017年 スペイン映画 監督 アレックス・デ・ラ・イグレシア DVDを借りてきたとき恒例の無名作品の紹介コーナーです。今回はなんとスペイン映画です。レンタルビデオ屋でサスペンスコーナーを物色していて見つけました。 マドリードの交差点に店を構えるバルは、いつものように常連たちで賑わっていました。ところが、一発の銃声が喧騒を切り裂きます。ひとりの客が店の外に出た途端、頭を撃ち抜かれたのです。 店内に残った客や店員たちは、とっさに店の奥に避難するが、ひとりの客が店を出て撃たれた男の様子を見に行きます。しかし、さらなる銃弾が放たれ、その客も殺されてしまうのです。 どこから狙われているかもわからない状況では外に逃げることも出来ません。客たちがパニックに陥る中、ふと外を見ると道に転がっていた2人の死体とおびただしい血痕が跡形もなく消えていたのです………。 何のことはない日常が突然異常な事態に見舞われ、どこにでもいそうな人々がパニックになって異常な行動を繰り返し、とんでもない事態になっていく、というお話です。 店の表から出たものが突然狙撃され、その原因もわかりません。しかし、表から出ていくと、3人目4人目の標的になってしまうため、店から出ることはできません。 店の中に残された8人は、何が起こったのか全く分からないまま、言い争います。「この中にテロリストがいるから狙われたんだ。」と誰かが言い出し、誰かの荷物の中に爆弾があるのではないかと、探し始めたりします。 そのうち、実はもう1人いたことに気が付きます。突然駆け込んできて、トイレに直行してこもったきりの9人目の男がいたことを。トイレに様子を見に行くと、その男は、見るからに尋常ではない異様な顔をして、死んでいました。それを見た8人は、未知の病原体をこの男が持ち込んだので、我々は閉じ込められたんだと、思い込みます。そして、その9人目の男が持っていた4本の注射器は、その病原体のワクチンだと決めつけます。 その上、男の死体に触っていない3人は、触ってしまった5人を隔離するため、地下室に閉じ込めます。4本のワクチンらしきものとともに。未知の病原体に侵されたかもしれない5人に対し、ワクチンらしきものは4本。当然何が起こるかはわかりますね。 という感じで、怒涛のように次から次へと展開するおかしな争いに目が離せなくなり、気が付いたら、いろいろな謎が明らかにならないまま(ごめん書いちゃった。)、終わってしまいました。どうやら、様々な謎が明らかになって、スッキリすることよりも、勝手な思い込みで、醜い争いを繰り広げる、人間の愚かさを描きたかったようです。 ということで、意外と面白い作品を見つけてしまった、というお話でした。 あっ、そうそう、主人公的に扱われている若い美女が、下着姿でオイルまみれになるという、おじさん好みの名場面もありますよ。
2018.09.07
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「LOGAN/ローガン」 LOGAN 2017年 アメリカ映画 監督 ジェームズ・マンゴールド出演 ヒュー・ジャックマン パトリック・スチュワート ダフネ・キーン お盆休みなので、DVDを借りてきました。 皆さんご存知の通り、無類の「X-MEN」好きの僕としては、ヒュー・ジャックマンの“ウルヴァリン”とパトリック・スチュワートの“プロフェッサーX”が最後となるこの作品、観ないわけにはいかないということで、久々なおかげで“旧作”7泊8日OKになっていたので、迷うことなく借りてきたというわけです。 2029年、この25年間で新たなミュータントは生まれておらず、彼らの存在は絶滅の危機に瀕していました。かつて“ウルヴァリン”の名で知られていたローガン(ヒュー・ジャックマン)は、テキサス州でリムジン運転手として働き、メキシコ国境の向かい側に位置する放棄された製錬工場でチャールズ・エグゼビア“プロフェッサーX”(パトリック・スチュワート)の介護をしながらキャリバンというミュータントと共に暮らしていました。チャールズは新たなミュータントと交信したと言い張りますが、彼がアルツハイマー病を患っていて能力を制御できなくなっていることもあり、ローガンとキャリバンはこれを信用していませんでした。 ある日、ローガンの素性を知る男ピアースが現れ、人探しの協力を求められます。また、ローガンは元看護師と名乗るガブリエラという女性から、ローラ(ダフネ・キーン)という名の11歳の少女をノースダコタ州にある“エデン”まで送り届けて欲しいという依頼を受けます。ローガンが改めて迎えに訪れると、ガブリエラは何者かに殺害されていました。ピアースに後をつけられ住処を襲撃されたローガンは、車中に忍び込んでいたローラとチャールズを連れて逃避行を始めます。 悲しい悲しいお話でした。 冒頭から哀愁が映画全体を支配する、もの悲しい雰囲気でした。 超速再生能力のため不死身で、すでに200年近く(詳しくは「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」参照、彼は南北戦争から従軍しています。)生きてきた“ウルヴァリン”ことローガンは、見るからに老化しており(何しろ、本などを見るときに眼鏡をかけるんですよ。ローガンが老眼(笑)ということですね。)、再生能力が著しく低下して、普通の人間と戦うのも苦労するぐらい弱っており、田舎町でリムジン運転手(タクシーではなく、日本でいうハイヤーに近い感じかな。依頼を受けて、お迎えに行く感じ。)としてひっそりと日銭を稼いでいる有様です。(見るからに落ちぶれた感じです。) “プロフェッサーX”ことチャールズに至っては、まるで廃人です。アルツハイマーの発作なのでしょうか、時折テレパシー能力が暴走し、周りの人間が動けないほどの超強力超能力波を発してしまいます。どうやら、以前その発作のせいで、周りにいたミュータントの仲間たちを含め、大量殺りくをしてしまい、政府から“制御不能な生きた大量破壊兵器”というレッテルは貼られ、追われる身のようです。そのため本人は罪の意識にさいなまれ、生きる気力をなくしてしまっており(チャールズって、落ち込むととことん沈んでしまうたちのようですね。「X-MEN フューチャー&パスト」でも、クズになっていましたしね。)、ローガンたちにかくまわれ、薬漬けで何とか生きながらえている状態でした。 そんな状態なチャールズですから、彼が「新しいミュータントを見つけた。」と言っても、ローガンとキャリバンは信用できなかったんですね。 しかし、実は新しいミュータントはいたんですね。 かつて父親がストライカーの「ウェポンX計画」(詳しくは、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」参照、ローガンが“アダマンチウム”の骨格を持つ理由です。)で、ミュータント兵器を作り出そうとしていたサンダー・ライス博士は、ミュータントの遺伝子から新しいミュータントを作り出そうとしていたのです。そして、ローラはローガンの遺伝子から作り出されたミュータントで、ローガンと同じ超速再生能力を持ち、“アダマンチウム”の爪が手の甲から飛び出すようにされていました。(ということはローラがローガンと同じく“アダマンチウム”の全身骨格まで移植されているとしたら、彼女はこれ以上体が大きくなりませんね。何ということでしょう。)その上、ローラはその爪を使って巧みに戦い、人を殺めるすべまで習得させられていたのです。 ね、悲しい悲しい悲しいお話でしょ。 そして、詳しく述べることは例のごとく控えておきますが、悲しい悲しい悲しい悲しい結末がやってくる映画です。(まあ、一応、希望の光が見える結末にはなっているけどね。) ということで、今までの「X-MEN」シリーズとは一線を画す作品ですが、映画の質的にも非常によくできており、涙なくして観られない作品です。 特に“ウルヴァリン”ファンには。(あんまりいないとは思うけど“プロフェッサーX”ファンにもね。)
2018.08.21
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「10クローバーフィールド・レーン」 10 Cloverfield Lane 2016年 アメリカ映画 製作 J・J・エイブラムス 監督 ダン・トラクテンバーグ 出演 メアリー・エリザベス・ウィンステッド ジョン・グッドマン ジョン・ギャラガー・Jr. すごい久しぶりの更新です。決して忘れていたわけではありませんが、仕事の都合で、時間的余裕がない状態が続いていたので、映画を観ることすらできなかったというだけです。ということで、これからも細々と更新はしていこうとは思っています。 で、今回は以前DVDを借りてきた中にあった、無名映画というにはちょっと語弊がある作品で、まあ、僕自身の単なる不勉強にすぎないと言えばそれまでなんですが、「こんな映画があったんだ。」と思ってしまった、この映画です。 「クローバーフィールド/HAKAISHA」という映画があります。ニューヨークが謎の怪獣に襲われ、逃げ惑う人々の手持ちカメラの映像のみという形で作られ、その臨場感が迫力たっぷりということで、話題を呼んだ作品です。以前、このブログで、怪獣大好きな僕がはまってしまった映画のひとつとして紹介していますが、その際、続編はあり得ないということを述べていたと思います。 題名も似ていますし、製作者が同じということで、続編なのか?と思い、予備知識ほぼ0で借りてきてしまいました。 服飾デザイナー志望のミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は婚約者と喧嘩し、家を出て車を走らせていました。ルイジアナ州の田舎道にさしかかり、ラジオからは南部海岸一帯が原因不明の停電に襲われているとのニュースが流れます。その時、突然大きな衝撃と共にミシェルの車は追突されます。 目が覚めたミシェルは、右足に大怪我を負い、治療を受けた状態で地下室に繋がれ監禁されていることに驚きます。事故から丸1日たっていました。 間もなく、監禁されている部屋に腰に銃を下げた太った初老の男・ハワード(ジョン・グッドマン)が入って来ます。彼によると、ここはレイクチャールズから65km地点にある自分の農場の地下で、外の世界は何者かに攻撃され、放射能か化学兵器かわからないが、何らかの有毒物質で汚染されている、とのことでした。地下には他に腕に怪我を負った男エメット(ジョン・ギャラガー・Jr.)も暮らしていました。 この地下室は、沢山の食料等の物資を蓄え核戦争に備えたシェルターで、出口には鍵がいくつも付いており、勝手に出ることは困難でした。出口の窓から外を見ると、人の姿は全く見えず、すぐそばの囲いには2頭の豚の死骸があり、その横には事故の痕がある白いトラックの姿がありました。 結論からまず言いますと、「クローバーフィールド/HAKAISHA」の続編ではありません。続編と期待して、怪獣の登場を待ちわびていると、ちょっとがっかりします。完全にがっかりというわけではないのが微妙なところなんですが、一応、最後の方でそれらしき展開になるのが、製作者J・J・エイブラムスの言う、“血縁関係”ということらしいのですが、はっきり言って、最後の展開は蛇足です。とりあえず、自身の作ったヒット映画に関連付けておけば、ある程度のお客が入ってくれるだろうという、あざとい製作者の打算の産物でしょう。で、このDVDを借りてきてしまった僕は、その製作者の打算にまんまと乗せられてしまったということです。 しかしながら、この映画、地下のシェルターに閉じ込められ、シェルターの持ち主の怪しさ100%のおっさんの言うことを信じていいのかどうか、主人公の目線で、ハラハラドキドキさせられる、なかなかなサスペンスに出来上がっているではありませんか。だから、鑑賞中、「クローバーフィールド/HAKAISHA」のことなど全く忘れ、B級サスペンスをそれなりに楽しんでいる自分に気づかされてしまいました。 そういう意味で、最後の展開(詳しくは秘密)は蛇足だったなあ、と言っているわけです。まあ、題名に“クローバーフィールド”って入ってなければ、こんな全くスター不在な地味映画、誰も観ないだろうから、しょうがないのかなあ。 ということで、まんまと製作者の策略に引っかかってしまいましたが、まあ、それなりに楽しめたからいいか、というお話でした。 ところで、監禁されているのが若い女の子で、監禁しているのが怪しいおっさんだからといって、世の男子諸君が喜ぶような展開には全くならないことだけは言っておきます。ポルノじゃないんだから。
2018.08.09
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「エクス・マキナ」 Ex Machina 2015年 イギリス映画 監督・脚本 アレックス・ガーランド 出演 アリシア・ヴィキャンデル ドーナル・グリーソン オスカー・アイザック ソノヤ・ミズノ 久々にDVDを借りてきました。「ジェイソン・ボーン」で存在感をバリバリに発揮し、今度アンジーに代わって「トゥーム・レイダー」の新シリーズの主役に抜擢され大注目の、アリシア・ヴィキャンベル主演の傑作SFということで、非常に観たかったこの作品をまず、観賞しました。 IT企業ブルーブックでプログラマーとして働くケイレブ(ドーナル・グリーソン)はある日、抽選で社長ネイサン(オスカー・アイザック)の広大な山岳地帯の奥にある別荘を訪問する権利を得ます。 ネイサンはここが人工知能(A.I.)の開発研究施設であることを明かし、ケイレブに彼の人工知能にチューリング・テストを行うよう依頼します。 ケイレブは、透明な壁に囲われた部屋の中で暮らすA.I.のエヴァ(アリシア・ヴィキャンベル)と対面します。エヴァは顔面と手、足先のみが皮膚で覆われているが残りの部分は機械の内部構造が透けて見える姿をしていました。 次の朝、ケイレブはメイドのキョウコ(ソノヤ・ミズノ)に会います。ネイサンによるとキョウコは英語を理解しないため、機密保持には都合が良いとのことでした。 ケイレブとエヴァの面談中に停電が起こり、部屋の照明と2人に向けられた監視カメラの電源が落ちます。その時エヴァはケイレブに「ネイサンは嘘つき。彼の言うことは信じてはいけない」と忠告します。その夜、ネイサンは停電の原因は不明だが、調査はしているとケイレブに説明します。 エヴァとケイレブは面談を行う度に親密になっていきます。 ある日エヴァは面談を中座し、ウィッグと服を身に着けロボットと分かるほとんどの部分を隠して現われ、自分の描いた絵をケイレブに見せます。面談の最中にまた停電が起こると、エヴァは停電を起こしているのは自分であり、ネイサンに監視されていない状態でケイレブと話がしたいのだと言い、彼女は次第にケイレブを誘惑するような態度を取り始めるのでした。 A.I.とは、単なるコンピューターではなく、自ら思考・学習する人工の知能のことです。つまり、鉄人28号やマジンガーZではなく、鉄腕アトムやC3-POのことです。では、そのA.I.を人間そっくりに造る目的は何でしょう。スピルバーグ監督の映画「A.I.」では、子どもの姿をしたA.I.を亡くなった子どもの代わりにするお話でした。「ターミネーター」シリーズでは、人類そっくりのA.I.を人間社会の中に紛れさせ、暗殺を行うのが目的でした。 金と暇と技術を持ち合わせたネイサンは、山の中の別荘で、美しい女性の姿のA.I.を造っていました。果たしてその目的は???そうです。今、下世話な想像をしたあなたの、ご想像の通りです。しかし、彼はA.I.をなめていました。「マトリックス」や「ターミネーター」「火の鳥」などを知っているSFファンなら、高度なA.I.がその思考の果てに人類に反抗する道を選ぶことが必然であることを知っています。そうです、この映画、結末はわかっていたんですね。 この映画、横柄な態度が鼻につく社長ネイサンよりも、性格がいいだけのお人好しな若者ケイレブよりも、かわいらしい女性の姿をした“囚われの姫”A.I.エヴァに感情移入して観賞する方が多いのではないでしょうか。そして、結末を見て安心し、しばらく間をおいて、実は恐ろしい結末だったことに気づき、恐怖するのです。そういう映画です。 やっぱり、脚本・演出の妙でしょうか、このアレックス・ガーランドという監督、この映画が何と初監督作品です。しかし、「28日後...」「サンシャイン2057」「わたしを離さないで」の脚本家でした。なるほど。 そして、なんといってもA.I.エヴァを演じたアリシア・ヴィキャンデルですね。「ジェイソン・ボーン」の時も思ったんですが、彼女、少女と見紛うほどのかわいらしい外見ですが、何かしら意思を感じさせる目の輝きが、なめてかかるとケガをするぞ、という雰囲気を持たせる、不思議な魅力を持った女優さんですね。「リリーのすべて」では、性転換した夫を支える妻という難しい役どころを演じ、米アカデミー賞助演女優賞を受賞しています。まだ20代、末恐ろしい女優さんです。 ということで、米アカデミー賞視覚効果賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞助演女優賞、英国インディペンデント映画賞作品・監督・脚本賞など、多くの賞に輝いている、今後が非常に楽しみな新人監督、新人女優の巧みな仕事を味わうことができ、非常に満足でした。 また1人、お気に入り女優が増えてしまいました。
2018.03.26
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「パッセンジャーズ」 PASSENGERS 2008年 アメリカ映画監督 ロドリゴ・ガルシア出演 アン・ハサウェイ パトリック・ウィルソン デヴィッド・モース すいません、久々の更新です。決して忘れていたわけでなく、やめようと思っていたわけでもなく、ただ単純に、忙しかったからだけです。 で、今回は、Gyaoの無料動画で観賞した、アン・ハサウェイ主演のこの作品です。 セラピストのクレア・サマーズ(アン・ハサウェイ)は多数の死傷者を出した飛行機事故の生存者のカウンセリングを依頼されます。 生存者5人の内の1人、エリック(パトリック・ウィルソン)はグループカウンセリングを拒否したため、彼だけ個人で話を聞くことになります。精神的ショックが大きいはずなのにエリックの気分は良すぎるほどで、患者として話をするどころかクレアを口説き始めるのです。 グループカウンセリングでは、患者それぞれの事故当時の記憶が食い違っており、クレアは事故の背景に何かあると感じ始めます。 カウンセリング中に外から覗く男がいたり、患者の1人は尾行されているといい、やがて患者は1人、また1人とカウンセリングに来なくなってしまいます。クレアは事故が機長のミスなどではなく機体の欠陥であり、航空会社がそれを隠蔽しようと患者を狙っていると疑い始めます。 クレアは何度もアタックしてくるエリックに次第に惹かれ、とうとうセラピストと患者としての一線を越えて関係を持ってしまいます。 クレアは事故の真相を探るべく航空会社を訪ね、代表のアーキン(デヴィッド・モース)に話を聞こうとしますが、彼は何かを隠しているようで、セラピストとしての仕事以上に踏み込もうとするクレアを邪見にするのでした。 若いセラピストの苦悩と成長を描いたドラマかと思ったら、終盤あっと驚くどんでん返しで、「そう来るか、やられた。」と思わせる、サスペンスでした。 エリックの家で、やたら吠えてくる犬の存在、クレアに何かとおせっかいを焼いてくるうっとうしい隣人のおばさん、そしてカウンセリングを覗く男、1人また1人と姿を消す患者たち、一見どうでもいいことなのにやたらと印象的に挿入される描写や、逆に意味深に物語に絡んでくる謎の存在、すべてはラストのどんでん返しのためだったのですね。 しかし、当初は、セラピストとして患者と特別な関係になるのを嫌い、うっとうしいくらいなエリックのアプローチをいなしていたクレアですが、まあ、予想通りと言えばその通りなのですが、結構あっさり落ちてしまうのはどうかと思ったというのは、蛇足ですかね。 ということで、劇場公開時には全く気にも留めなかった作品でしたが、以外と佳作で、楽しめる作品でした、というお話でした。 ところで、昨年公開されたジェニファー・ローレンス主演のSF映画「パッセンジャー」(原題「Passengers」は同じです。)とは全く関係ありませんので、お間違えなく。
2018.03.15
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「誰も知らない」 2004年 日本映画 監督 是枝裕和 出演 柳楽優弥 YOU カンヌ映画祭で、主演の柳楽優弥が最年少で主演男優賞を受賞し、当時非常に話題になった是枝監督の出世作です。GYAOの無料動画で観賞しました。 2DKのアパートに、スーツケースを抱えた母親のけい子(YOU)と息子の明(柳楽優弥)が引越してきました。大家には「主人が海外出張中の母子2人です。」と挨拶しますが、実は、スーツケースの中には次男の茂、次女のゆきが入っており、長女の京子も人目をはばかり、こっそり家にやってきます。 子ども4人の母子家庭だと家を追い出されかねないと、その事実を隠したいけい子は、大家や周辺住民に見つからないように、明以外の外出禁止など、子どもたちに厳しく注意しています。子どもたちは出生届未提出らしく、12歳の明も含め、学校に通ったことさえありませんでした。 当初は、けい子が百貨店で働き、明が弟妹の世話をする日々が続きますが、新たに恋人ができたけい子は家に不在がちになり、やがて恋人と同棲を始め、子供達の生活費は現金書留で送り帰宅しなくなってしまいます。そこから兄弟だけの、誰も知らない生活が始まるのでした。 男女で気持ちいいことをして、その行為が子どもを作るための行為だということを忘れている人がいます。そして、子どもを持つ覚悟がないまま子どもを作ってしまう人がたくさんいます。そして、時として、この映画のような悲劇が生まれてくるのです。 人類はその進化の過程の中で、子孫繁栄のため、非常な快楽を伴う交尾を獲得し、月に1回受精できる能力(ほかの哺乳類と比較して、非常に多いですよね。犬なんて年に2回だし。)を獲得し、生まれた子どもを保護し育てる能力を獲得しました。その結果、今地球上に人類はあふれかえっています。 見境なくしている人や、激しくしている人に対し、“動物的”とか、“野性的”と言う形容詞をつける人がいますが、確かに特定の相手とだけというわけではないという点では“動物的”かもしれませんが、快楽のためだけにするのは人間だけで、野生の世界では交尾の目的は子孫を残すことだけです。非常に激しかったり、普通じゃなかったり、時間や回数が多かったりして、より快楽を得ることを求めているのは人類だけであり、その結果として、女性のおなかの中に新しい生命が宿ることになるという可能性を忘れているのは、人類だけです。そして、自ら進んで新しい生命を宿すかもしれない行為を行いながら、その新しい生命を守っていく覚悟がない者が少なからずいるのも事実です。 人類は、お金というものがないと生きていくことが困難な複雑な社会を作り上げ、大人の保護がない子どもが生きていくことが不可能な世界を作り上げてしまいました。しかし、一方では、自らの子どもを守っていく覚悟のないまま子どもを作ってしまう快楽主義者が少なからずいる事実があるのです。 この映画は実話をもとにしているそうです。今もこのような子どもが世界のどこかで泣いているのかと思うと、心が痛んできます。そんなことを思ってしまう、衝撃的な映画です。子役にありがちなオーバーすぎる演技のまったくない、ほぼ無表情なリアルな演技の柳楽君がとにかくすごいです。 「八日目の蝉」の時も思いましたが、子どもができるかどうかは、男性にゆだねられています。結果的にどこに出すかどうかという問題です。一時の快楽を得たいと思うのは、悲しいかな、あることだと思います。しかし、その行為が子どもを作る行為だということを、世の男性諸君はしっかりと自覚しておいてほしいものです。予期せぬ子どもを宿して苦労するのは大体女性の方です。その女性を大切に思うのなら、男性がしっかりすべきです。
2018.01.29
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「君の名は。」 2016年 日本映画 監督・原作・脚本 新海誠声の出演 神木隆之介 上白石萌音 新年あけましておめでとうございます。(今更ですが、一応新年一発目なので。) 平成30年(すごいですね、もう30年ですか。)のお正月に地上波初登場で放映されていた、超大ヒット作「君の名は。」です。いつもの如く、映画ファンだが超貧乏なおじさんは、劇場公開では観ることができず、お正月ということで特別に放映されていたこの映画、超ヒットで超話題だったこの映画ですが、やっと初観賞です。 東京四ツ谷に暮らす男子高校生・立花瀧(神木隆之介)は、ある朝、目を覚ますと岐阜県飛騨地方の糸守町に住む女子高生・宮水三葉(上白石萌音)になっており、逆に三葉は瀧になっていました。2人とも奇妙な夢だと思いながら、知らない誰かの一日を過ごします。 翌朝、無事に元の身体に戻った2人は入れ替わったことをほとんど忘れていましたが、その後も週に2.3回の頻度でたびたび入れ替わりが起きた事という周囲の反応から、それがただの夢ではなく実在の誰かと入れ替わっていることに気づきます。性別も暮らす環境もまったく異なる瀧と三葉の入れ替わりには困難もありましたが、お互い束の間の入れ替わりを楽しみつつ次第に打ち解けていくのでした。 しかし、その入れ替わりは突然途絶え、記憶を頼りに描き起こした糸守の風景スケッチだけを頼りに瀧は飛騨に向かいます。瀧の様子を不審に思い心配していた友人・藤井司とバイト先の先輩・奥寺ミキもそれに同行します。しかし、ようやく辿り着いた糸守町は、3年前に隕石(ティアマト彗星の破片)直撃で消滅していたのです。 観てみてなるほど、いい映画ですね。とても丁寧に作ってありますし、適当に危機があって、見事なハッピーエンドで、観ている誰もが瀧あるいは三葉に感情移入して、ドキドキハラハラし、すっきり安心できる、いい話です。よくある入れ替わり物という人もいますが、これだけ離れた場所で、時間も空間も超越した入れ替わり物は、初めてです。(少なくとも僕は。)声の出演の皆さんも、神木くんを筆頭に見事な演技で文句のつけようがありませんし、絵もきれいですし、聖地巡礼する人の気持ちもわかります。 というわけで、大大大大ヒットし、多くの賞ももらっている名作ですが、やっぱりツッコむところはツッコんでおかないと、このブログにふさわしくないので、ちょっと書かせていただきます。 冒頭、ダイジェスト的に、飛んできたティアマト彗星(架空のすい星です。)の分裂した破片が、軌道を変えて地上に向かってくる映像が映されます。 「あれ?彗星って、あんなふうに分裂するもの?」「分裂したら、本体の軌道も変わるんじゃない?」「本体の方も地球に落ちてくるんじゃないの?」「すごい近くを通っているように見えるけど、大気圏内で分裂(つまり爆発)したら、地球の受ける影響はそんなもんじゃないだろう?」「大体、あんな近くを通っていたら、地球や月に引力的な影響があるはずだよなあ?」と、元理系少年のおじさんは、「????????」という頭で、物語に入っていったわけです。 前半の2人の入れ替わりによるコミカルな展開を楽しみつつ、思春期の男女の入れ替わりにもかかわらず性的な描写がない(三葉の姿で目覚めた瀧がおっぱいを触っている場面はありますが、妹の四葉を絡め、コミカルに消化しています。)のは子どもも観る映画だからしょうがないんだなあと思いつつ、途中で2人の曜日の認識のずれに気づきもしかして時間がずれてる?と思いつつ、ニュース映像の彗星の軌道図に違和感を持ちつつ、後半の展開(非常に多くの方が鑑賞している作品ですが、一応、どうなるかは秘密にしておきましょう。)にハラハラドキドキしつつ、頭の片隅で、最初に感じた疑問が残ったままでした。 で、観終わってすぐに、「彗星 分裂」とか、「彗星 爆発」とか検索して調べてみました。 彗星の分裂については、結構例があるみたいですが、その破片が惑星に衝突した例は非常に少ないみたいで、1994年のシューメーカー・レヴィ第9彗星の木星衝突の例のみが出てきました。僕もそういえば、と思い出したわけですが、あの時は、木星に近づきすぎたため、木星の引力に耐えきれず、いくつかの破片に分裂し、そのすべてが木星に衝突吸収されたはずです。この映画のように、分裂した破片が一部地球に落下し、残った部分は軌道を変えずに飛び去って行くという例は全く見つかりませんでした。 僕が一番疑問に感じているのは、爆発分裂して、片方は軌道を変えて惑星に衝突し、もう片方は軌道を全く変えずに飛び去って行くという、運動量保存の法則に全く反する動きについてですが、そういう実例は全く見つけられなかったのです。 飛び去った本体に対して、分裂した部分がほぼ無視できるほど小さい破片でしたら、そういうことも起こりうるかなと思うのですが、画面で見る限り、そうではなく、結構大きな破片が分かれているように見えます。それに、大気圏で燃え尽きず(隕石が大気圏で燃え尽きるものを“流れ星”と言います。)、地球に衝突していることから、結構大きな隕石であるはずで、それに対して、彗星本体が圧倒的に大きいとしたら、あれほどの至近距離(何しろ月よりも近いところを通っているのです。)を通っていたら、通るだけで地球への影響は多大なはずなので、筋が通りません。 「どうせ、“入れ替わり”という有り得ないことを描いているお話だから、有り得ないことが起こってもいいじゃん。」という人もいるでしょう。しかし、題材が“入れ替わり”と言う有り得ないことだからこそ、その基盤となる基本設定はリアルを追及するべきだ、と僕は思います。よりリアルな舞台であるからこそ、空想な部分が際立ち、観客はのめりこんで観賞できるのではないでしょうか。 と、僕は思うからこそ、非常に残念に思うのです。 ということで、大ヒットした傑作ですが、非常に残念に感じてしまったというお話でした。 ちなみに、ごく近い時間(宇宙的に何千年は非常に短い時間です。)の間に、ほぼ同じ場所に、クレーターができるほどの隕石が3つも衝突するという偶然は極めて0に近いことですが、全く0ではないので、ツッコまないでおきましょう。 ところで、三葉が生む女の子は五葉という名前に決まっているんですね。あっ、三葉が東京に居るということは、妹の四葉が神職を継いで、その子が五葉になるんですかね。
2018.01.13
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「イレブン・ミニッツ」 11 Minutes 2015年 ポーランド・アイルランド映画 監督 イエジー・スコリモフスキ では、DVDを借りてきた時恒例の、無名映画紹介コーナーです。 今回は、題名通り、11分間の出来事を描いた群像サスペンスです。 午後5時前、顔に殴られた跡を残して、ヘルマンは、警察から帰宅しました。嫉妬深い彼は、妻で女優のアニャと言い争いになるが、やがて睡眠薬を入れたシャンパンを喉に流し込み、寝てしまいます。そのすきに、映画監督との面接のためにアニャは、ホテルへ向かいます。 午後5時、慌てて飛び起きたヘルマンは、アニャを追ってホテルへ向かいます。 そのホテルの前では、最近、刑務所から出たばかりの男が、ホットドッグの屋台を開いていました。 一方、人妻とドラッグをやりながら情事に耽っていたバイク便の配達員は、彼女の夫が帰宅したため、慌てて逃げ出し、父親であるホットドッグ屋台の主人に電話で呼ばれ、ホテルへ向かいます。 あるアパートメントを訪れた医者は、暴れて抵抗する男と家財道具が積まれた階段に難儀しつつ、ほかの救命隊員たちとともに部屋へ入ります。医者たちは、産気づいた女と瀕死の男を部屋から運び出し、救急車に乗せます。 ホテルの一室で、男女がポルノ映画を見ています。やがて、休憩時間が終わったと、男が立ち上がり、窓の外のゴンドラに、乗り込みます。女は服装を整え、部屋を出ていき、ホテル前のバス停に向かいます。ゴンドラの男は、作業を再開しようと、ガスバーナーに火をつけました。 喧嘩早そうな夫と、セクシーな女優志望の妻、見るからに枕営業に応じそうな映画監督、刑務所を出たばかりな訳ありなホットドッグ屋、その息子で人妻と情事をしていたバイク便の男、ホテルの外のゴンドラで作業する男と、その友人(?)の登山家の女、その女の他、、バスに乗り込んでくるのは、ホットドッグを買った5人の修道女、風景画を描いていた年配の画家、質屋に押し入ったが店の主人が自殺していたため未遂で出てきたわけありそうな少年です。元カレと別れてからホットドッグを買った女は愛犬を連れホテル前に歩いてきます。そして、救急車もホテル前に通りかかります。 全く無関係な人々が、それぞれのドラマを抱えながら、偶然、ホテル前に集まってきます。そして、5時11分、事件が起こるのです。 ラストの事件には、ちょっと驚かされますが、次の瞬間、なるほど、と思わされます。事の大小はありますが、世界の様々な場所で、日々、こういったことが起きているわけで、事件を起こす人、それに巻き込まれる人、世界には何十億人という人がおり、日々、様々な出来事が、様々な人々の人生を巻き込みながら、この世界を形作っているのですね。 ということで、世界の片隅で起きた世界的に見ればちっぽけな事件を描いた映画で、世界の成り立ちを考えさせられたという、クリスマスには全く関係ないお話でした。 ということで、皆さん、よいお年を。(おそらく今年最後になるから書いておきました。)
2017.12.24
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「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」 Star Wars : The Force Awakens 2015年 アメリカ映画 監督 J・J・エイブラムス 出演 デイジー・リドリー ジョン・ボイエガ アダム・ドライバー ハリソン・フォード キャリー・フィッシャー マーク・ハミル いよいよ今日、第8作「エピソード8 最後のジェダイ」が公開されますね。 この「エピソード7」、一生懸命我慢して、安いDVDが出るのを待っていたのですが、度重なる「エピソード8」の宣伝で、とうとう我慢できなくなって、DVDを借りてきてしまいました。今日、TVで放映されますね。ちょっとショックです。(と言いながら、きっと観るでしょう。) 遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。 エンドアの戦いから約30年後、ジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)葉消息を絶っていました。帝国軍の残党・ファースト・オーダーが、再び銀河に脅威をもたらしていました。レイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)は、新銀河共和国の支援の下、“レジスタンス”を指揮してファースト・オーダーに立ち向かっていました。 レジスタンスのポー・ダメロンは、砂漠の惑星ジャクーにいる探検家からルークの居場所を示す地図を受け取りますが、カイロ・レン(アダム・ドライバー)率いるファースト・オーダーの襲撃を受け、ドロイドのBB-8に地図データを託し、捕虜になってスター・デストロイヤーに連行されます。 ファースト・オーダーの襲撃にショックを受けた、ストームトルーパー“FN-2187”(ジョン・ボイエガ)は、帰還したスター・デストロイヤーの格納庫デッキで自分のヘルメットを外して動揺を鎮めようとしますが、上司のキャプテン・ファズマにとがめられて出頭を命令されます。 ポーは独房で拷問を受けますが、地図の在りかを答えるのを拒み続けます。カイロ・レンはフォースの力でポーの意識の中を探り、BB-8が地図を持っていることを知り、BB-8の早期発見の捜索を命じます。 一方、BB-8は、ジャクーのゴミ漁りであるレイ(デイジー・リドリー)に発見され、行動を共にするようになります。 立場を失って追い詰められたFN-2187は脱走を決意し、ポーを救出し、TIEファイターを強奪してスター・デストロイヤーから脱出します。その最中でポーはFN-2187を“フィン”と名付けます。しかし、ミサイル攻撃を受けたTIEファイターはジャクーへ墜落し、フィンとポーははぐれてしまいます。 フィンは砂漠を放浪の末、レイとBB-8に出会いますが、ファースト・オーダーの攻撃を受け、ジャンクヤードに留置されていたミレニアム・ファルコンに乗り込み、ジャクーを脱出します。 危機を脱したファルコン号ですが、謎の大型船のトラクター・ビームに捕獲されてしまいます。フィンとレイは覚悟を決めますが、乗り込んできたのはハン・ソロ(ハリソン・フォード)とチューバッカでした。 砂の惑星に住む若者(男女の違いはあるけれど)のもとに、重要な情報を託されたドロイドが現れ、そのフォースを操る素質を持った若者が、戦いに巻き込まれ、黒装束の悪役と戦い、惑星型の敵要塞を破壊する戦いがクライマックスになる、最初の「スター・ウォーズ/エピソード4新たなる希望」にそっくりな展開、「これはわざとそう作ってるな。」と思いました。調べてみたら、監督が語っていました、「第1作へのリスペクト」だと。なるほど、なるほど、じゃあ、その点を批判するのは無知丸出しで恥ずかしいですね。 で、はっきり言って、最初の「4」からリアルタイムで出会っている身としては、ハン・ソロ、レイア、ルーク、チューバッカ、R2-D2、C-3POがそろって出てくるだけで、涙チョチョ切れるくらいうれしくって、楽しくってしょうがないわけで、「4」そっくりな話の展開とか、レイがフォースを使えすぎとか、カイロ・レンがお子ちゃま過ぎるとか、いろいろとあるツッコミポイントはどうでもよくなってしまいますね。とにかく、十数年ぶりに、シリーズが復活したという事実、それだけで十分ですね。 もちろん、以前の記事で語っているように、マズ・カタナ(ヨーダと近縁の種でしょうかね。)の酒場の場面、異形の宇宙人がうようよしているシーンが、一番のお気に入りです。(わかってた?) 後、やっぱり、レイが気に入りました。なぜ、修行していないのにフォースがあんなに使えるのか、というか、自分の力がフォースによるものだと気づいていない感じですよね。何しろ、ベテランジェダイのクワイ・ガン(「1」参照)やベン・ケノビ(オビ・ワンではなく、アレック・ギネスが演じていたベンと名乗っていた老人の方です。)、ヨーダなどが使っていた、他人の行動を操るフォースも見せますからね。「ナニモンやこいつ」と思い、その正体がひたすら気になりましたね。まじめで正義感の強いのもいいですね。 演じているデイジー・リドリーという子、まだ25歳、映画出演はほぼ初めてというド新人ですが、今後の活躍が期待できる熱演です。主役に全くのド新人を持ってくるあたり、やっぱり、「4」に対するリスペクトなんですね。 ただ、ひとつ気になるのは、依然「1」の記事で述べたように、最近の若者、「4~6」「1~3」を観ていない者にとって、この映画理解されるのだろうか、ということです。はっきり言って、以前のシリーズを全く知らない人には、チンプンカンプンなところが多いいんじゃないかなあ。でも、大ヒットしてるから、大丈夫かな、おじさんの杞憂でしたかね。 ということで、今日公開の「エピソード8/最後のジェダイ」以降が、非常に楽しみになったというお話でした。 ところで、いつも予告編以外、内容を全く公開しない同シリーズなんですが、マスコミの執拗なインタヴューで、監督がふと漏らした「最後のジェダイはルーク」という一言が非常に気になりました。「レイはジェダイにならないということだよね?そんな重要な情報漏らしていいの?」と思ってしまいました。 先ほど急死したレーア姫ことキャリー・フィッシャー氏のご冥福をお祈りいたします。
2017.12.15
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「サウルの息子」 Saul fia 2015年 ハンガリー映画 監督 ネメシュ・ラースロー 主演 ルーリグ・ゲーザ 珍しいハンガリー映画です。 カンヌ映画祭グランプリ、米アカデミー賞外国語映画賞、ゴールデングローブ外国語映画賞など、多くの映画賞を受賞している作品です。 ハンガリー国籍のユダヤ人サウル(ルーリグ・ゲーザ)は、アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所でゾンダーコマンドとして、ガス室へ送られた者の衣服を片づけたり、死体を運んだり、働かされていました。 ある日、ガス室から出てきましたが、まだ息がある少年がありました。ユダヤ人囚人医師は、すぐ息の根を止め、解剖するように兵士に命じられます。サウルは、その遺体が自分の子どもだと思い込み、医師に隠しておくように頼み込みます。 サウルは、息子の遺体を、ユダヤ教の作法にのっとって埋葬したいと思い、同僚に持ち掛けられた脱走計画の準備とともに、ラビを探すため、監視の目を盗んでは、収容所内を右往左往します。 冒頭、字幕によって、ゾンダーコマンドについて説明されます。収容されたユダヤ人の中で、処刑にかかわる様々な雑用に従事する者をそう呼んだそうです。ガス室へ送られた者の残していった衣服などの処分、死体の運搬、事後のガス室の掃除、死体の焼却のための石炭の補充・運搬、灰の処分、などなどあらゆる作業に従事させられたようです。待遇は多少優遇されたようですが、秘密保持などのため、数か月たつと、処分されたそうです。 そんなゾンダーコマンドの1人、サウルを追うことにより、ユダヤ人強制収容所の悲惨な実態を描くのがテーマのようですが、映像は、ほぼ全編にわたって、サウルのバストショットです。 特に状況を説明したり、収容所の各場所の様子をきちんと映し出すことがないのですが、ラビを探したり脱走計画の準備をするために、持ち場を離れ、ウロチョロするサウルの周りで、ピントは外れているのですが、様々な状況が映し出されます。 斬新な手法ですが、まるで、自分が収容所の中にいるような臨場感で、画面に引き込まれてしまいます。 この映画、この監督の初長編映画だそうです。ネメシュ・ラースローという名前、覚えておかなければいけませんね。
2017.11.16
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「ジェイソン・ボーン」 Jason Bourne 2016年 アメリカ映画 監督 ポール・グリーングラス 出演 マット・デイモン トミー・リー・ジョーンズ アリシア・ヴィキャンデル ヴァンサン・カッセル ジュリア・スタイルズ マット・デイモンの大ヒットシリーズ、ボーンシリーズの第4作です。(「ボーン・レガシー」は、マット・デイモンが出ていないので、スピンオフととらえています。) 前作より数年後、表舞台から姿を消していたジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は違法の地下格闘技で生計を立てていました。一方、ニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)はハッカーのグループと協力し、CIAの軍事作戦プログラムの情報を暴くために奮闘していました。 ある日、極秘情報を盗んだニッキーは、ジェイソンがどのようにCIAに雇われ、トレッドストーン作戦によって暗殺のスペシャリストに育てられたこと、また彼の父親が裏で作戦に関わっていた秘密を知り、彼とコンタクトを取り、ギリシャで落ち合います。 CIA長官ロバート・デューイ(トミー・リー・ジョーンズ)は、2人の動きをキャッチし、部下のヘザー・リー(アリシア・ヴィキャンセル)に、暗殺チームを送らせます。 はっきり言って、幻滅しました。 以前も述べているように、このボーンシリーズは、単なるアクションだけでなく、ジェイソン・ボーンが、研ぎ澄まされた状況判断力や情報収集力を駆使して、知的に戦う姿が魅力の1つではなかったのでしょうか。前3作では、初めの場所でも、地図や平面図を見て逃走経路などを瞬時に読み取るところとか、携帯やCPを巧みに使って情報をつかむところなど、「やるなあ。」と思わせる場面が色々とあったのですが、今回は、そういった場面がほとんどありません。 それから、作戦員(ヴァンサン・カッセル)の暗殺者としてあるまじき行為の数々、非常に気になりました。狙撃の場所を確保するために、屋上にいた人を瞬殺したり、仲間であるはずのCIAの別動隊を出合い頭に撃ったり、装甲車で一般車の渋滞の列に突っ込み、次々になぎ倒していったり、彼の非情さを表すためなんでしょうが、人の命を軽視し過ぎですし、なんといっても暗殺とは全く真逆の行為でしょう。前3作に出てきた方々は、それなりの美学を持っていたと思うんですが。 なんなんでしょうかね、脚本がよくないのでしょうかね。 そもそも、このシリーズは3作で終わりのつもりで作っていたのではないでしょうか。「ボーン・アルティメイタム」のラスト、完結感バリバリでしたよね。マット・デイモンもグリーングラス監督も、当初は作る気はなかったという話です。 それなのに、今まで全く触れていなかった、ジェイソン・ボーン(本名デヴィッド・ウェッブ)の父親という存在を持ち出してきたりして、取って付けた感バリバリですよね。 ラストが続編のありそうな感じで終わっているところも含め、なんか非常にあざとい感じがして、嫌悪感すら生じてしまいました。 ということで、せっかくの質の高いシリーズが、商業主義に走るあまり、劣化してしまって非常に残念でした、という話でした。 ところで、やり手の若手CIA幹部ヘザー・リーを演じて存在感満点なアリシア・ヴィキャンデルという女優さん、「リリーのすべて」で世界初の性転換者の奥さんという難しい役を演じて、アカデミー助演女優賞を受賞している新進気鋭の女優さんです。今度アンジーの後を継いで「トゥームレイダー」の主役をやるそうですね。ちなみに、あのマグニートーこと、マイケル・ファスベンダーの新妻です。
2017.11.11
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「空気人形」 2009年 日本映画 監督 是枝裕和 出演 ペ・ドゥナ 板尾創路 ARATA オダギリジョー 余貴美子 星野真里 高橋昌也 DVDを借りに行ったら、見つけてしまいました、「クラウド・アトラス」で、一発で気に入ってしまった韓国女優ペ・ドゥナちゃんの主演作を。 さえない中年男・秀雄(板尾創路)はラブドールに“のぞみ”(ペ・ドゥナ)と名づけ、話しかけたり、抱いたりして暮しています。 空気人形であるはずの“のぞみ”がある日、瞬きをしてゆっくりと立ち上がり、軒先の雫に触れて「キレイ」と呟きます。その日から、秀雄のいない昼間、メイド服など、秀雄の用意した服を着、外出するようになります。 いつしか“のぞみ”は、ビデオ屋の店員・純一(ARATA)に一目ぼれし、アルバイトを始めます。 静かで、ゆったりして、美しくて、悲しくて、ちょっとだけ幸せになる優しい物語でした。 是枝監督の映画って、「海街diary」の時も感じましたが、静かで美しい空間を魅せるのがうまいですよね。静かで美しい風景にゆったりとした空気が流れる画面なのに、全く退屈しない、そんな不思議な雰囲気を作り出しているんですよ。 そんな中、とってもかわいいペ・ドゥナちゃんかわいらしい服を着て、ちょこちょこ動いているわけです。まさに、「惚れてまうやろ~~!!」という感じですかね。 でも、ペ・ドゥナちゃん、見た目がかわいらしいだけではありません。心を持ってしまったばかりの“空気人形”、という、普通ではありえない存在を見事にリアルに演じているんです。まず、心を持ったばかりで知らないことばかりの“空気人形”が、いろいろと知っていく喜び、純粋な子どものような無垢な喜びの表情がいいんですね。そして、空気の抜けた空気人形がしぼんでいく様子、スレンダーな体をより絞らせたり、タイミングよく首が折れるところなど、特殊効果に頼ることなく、見事に表現しています。たどたどしい日本語も、韓国人だからなのかもしれませんが、とってもそれらしいですよね。 どうやら、この「空気人形」の彼女の演技を観たウォシャウスキー姉弟が、「クラウド・アトラス」のクローン少女の役に、抜擢したという話です。 ほかの脇役の皆さんもとってもいいですね。 持ち前の変人さをそのまま表現した板尾創路のダメ男ぶりも、ディーン・フジオカと斎藤工を足して2で割ったようなイケメンなARATAの優しいだけな男ぶりも、自分の作った“空気人形”が心を持ったという有り得ない事実を静かに受け止めるオダギリジョーも、ゴミ屋敷の中でひたすら食べる過食症の女を演じる星野真里も、自分の老いに空虚感を感じている年増の受付嬢の余貴美子も、長年の代用教員生活に虚しさを感じている老人の高橋昌也も、皆さん、いい味を出しています。 ということで、かわいいペ・ドゥナちゃんにひかれて選んだDVDですが、思いがけず、ちょっといい話を味わえ、ちょっとだけ幸せになれた、というお話でした。 やっぱり日本映画は小品に、心温まるいい作品が多いですね。
2017.11.05
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「ネスト」 MUSANARAS 2014年 スペイン・フランス映画 監督 エステバン・ロエル ファンフェル・アンドレス さて、DVDを借りてきた時恒例の無名映画の紹介コーナーです。 今回は、パッケージの“「エスター」を凌ぐ衝撃のラスト”との謳い文句と、血まみれの女性のアップが目を引いた、この作品です。 妹を生んだ時に母が死に、代々長女が受け継ぐというネックレスを身に着けて、モンセは、妹を育ててきました。父は14年前に失踪していましたが、モンセは父の幻覚に悩まされ、玄関から一歩も外に出ることができない広場恐怖症で、数少ない顧客のドレスを仕立てて生活していました。 敬虔なクリスチャンのモンセは、美しく成長し、外に働きに出ている妹が、男性と親しくするのを極端に嫌がっていました。 妹の18歳の誕生日が過ぎた頃、アパートの上の階の住人カルロスが階段から落ちて、モンセに助けを求めてきました。モンセはカルロスを家に引き入れ、看病を始めます。 姉は危険だから早く出ていくよう促す妹に対して、モンセは医者まで呼んでくれた親切な人だと、カルロスは言います。 しかし、医者を呼んだというのはモンセのウソだったのです。 はっきり言いまして、「エスター」を凌いではいないです。 「エスター」では、最初主人公のエスターはかわいらしい聡明な美少女として画面に現れます。その美少女が物語が進むにつれて、徐々に異常性を見せていき、ラストに驚愕な正体が明らかになり、惨劇が起きるのです。 しかし、この話は、モンセは登場した瞬間から、瞳に異常な光を輝かせています。そして、妹への折檻の様子(誕生日の夜に、家を追い出されて階段の踊り場で寝ることになるなんて、異常もいいところでしょ。)、家の玄関から出れないこと、などなど、冒頭から異常性を示す行動を見せてくれます。だから、お父さんは14年前に失踪したと話に出てきた途端、それは失踪ではなく、お姉さんが○○したのかなと、推測できてしまいます。そして、クライマックスの惨劇も、やっぱりそう来たかと思ってしまい、全く衝撃の展開ではないんですね。大体が、パッケージの血まみれのアップからして、スプラッタな展開になるよ、と語っているわけで、ちっとも衝撃ではありません。 もしかして、ラストに明らかになる姉妹の秘密について、“衝撃”と言っているのでしょうか。でも、はっきり言って、その秘密(一応語らないでおきますね。)、在っても無くても関係ないですよね、最後の妹の行動には。 余計な謳い文句がついていたおかげで、ちょっとがっかりしてしまったのですが、なかなかなサスペンスなお話で(まあ、展開は読めましたが。)、なかなか楽しめる映画でしたよ。なんで、自らハードルを上げるようなことするんですかね。まあ、あの謳い文句がなかったら、今回僕も手に取りませんでしたけどね。ああ、そうかそれが狙いか。ということは僕はまんまと乗せられたということですか。なるほど。 ということで、DVD制作会社の策略にまんまと乗せられてしまった、というお話でしたが、まあまあ楽しめたので良しとしましょう。 あっ、もちろん、血が非常にたくさん流れる作品ですので、ご注意を。 そうそう、妹の名前、実は全く出てこないのでわかりません。途中で気が付いて、これはなんか意図があって隠しているなあ、と思ったんですが、それがもしかして最後に明らかになる“衝撃”なのかなあ、と思って観ていました。例えば、実は妹も実在していないとか。でも、違いました。きっと、最後の姉妹の秘密に関わっているんでしょうね。空振りしているけどね。
2017.11.04
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「スーサイド・スクワッド」 Suicide Squad 2016年 アメリカ映画 監督 デヴィッド・エアー 出演 ウィル・スミス ジャレッド・レト マーゴット・ロビー DVDを借りてきました。まずは、前から観たかったこの映画です。 この映画公開時に非常に盛んに宣伝してましたよね。で、その宣伝につられて、ちょっと興味を持ってしまったんですよ。だって、悪役たちを集めてチームを作るなんて、とってもとっても面白そうじゃあないですか。でも、この映画の評判をググってみると、酷評の嵐、これはもしかしたら、本国の興行でこけたから、日本で何とか取り戻そうという、「チャーリー・モルデカイ」の時のパターンか、と思ったわけです スーパーマンの死から数ヶ月、米国政府の高官アマンダ・ウォーラーは新たなるメタヒューマンへの対抗策として死刑や終身刑になって服役していた犯罪者を減刑と引き換えに構成員とした特殊部隊タスクフォースX、通称“スーサイド・スクワッド”を結成します。 メンバーはベルレーブ刑務所に収監されている百発百中のヒットマン・デッドショット(ウィル・スミス)、元精神科医で今はジョーカー(ジャレッド・レト)の彼女・ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)、火炎放射男のエル・ディアブロ、凶悪強盗のキャプテン・ブーメラン、遺伝子の突然変異したワニ男・キラー・クロック、縄を使う暗殺者のスリップノットなど危険な犯罪者たちです。 彼らはリック・フラッグ大佐の指揮下に置かれて米国政府のためにリスクの高いミッションに使い捨てとして利用されるのです。各メンバーは反乱するか、脱走を試みると爆発するように設計されたナノ爆弾を首に移植されています。 ウォーラーはフラッグの恋人のジューン・ムーン博士も部隊の一員に加えようと考えていました。考古学者のムーンは“エンチャントレス”と呼ばれる古代の魔女に取り憑かれており、ウォーラーはエンチャントレスの心臓を管理していたのです。しかし、エンチャントレスは支配されることを拒み、神秘的な兵器で人類を滅亡させようとします。 冒頭、軍の幹部らしき方々に、ウォーラーが作戦を説明する場面から始まります。そこでメンバーを1人1人紹介するわけですが、この30分ぐらいの場面が何と言っても退屈なんです。なんか非常にバカ丁寧で、同じようなテンポで、1人1人紹介していくので、退屈なんですね。(真面目か!!)なんか、気勢が削がれるというのはこういうことか、と思いましたね。映画の冒頭のつかみって、大事じゃないですかね。 で、結局部隊の目的がよくわからないうちに、ムーン博士が“エンチャントレス”に変身して暴走をはじめ、軍の幹部の方々の了承を得たのかどうかはっきりわからないうちに、新部隊の出動となり、刑務所に拘束されていた悪人たちが解放されます。で、何か訳が分からないうちに、ごちゃごちゃした戦闘が始まり、特に目新しいアクションがあるわけでなく、デッドショットの百発百中(というか、一撃必殺?とにかく無駄玉が全くないんですよ)さと、ディアブロの火炎の激しさ(エースやマスタング大佐もびっくりです。)と、ハーレイ・クインのエロ可愛さ(彼女だけとにかくやたらと出番が多いのは、気のせいでしょうか。)だけが強調され、印象に残りますが、正直、よくわかりません。そうそう、ジョーカーの立ち位置もよくわかりませんね。ジャレッド・レトの熱演のおかげで、彼のキレキレの狂気さはよくわかりますけどね。 なんでしょうね、脚本があかんのですかね。それとも、演出? ということで、アイデアは面白そうなのに、役者は熱演しているのに、………。という作品を紹介しました。 しかし、やっぱりハーレイ・クインのエロ可愛くって、キレキレぶりは、どうしても印象に残りますね。演じているマーゴット・ロビーという女優さん、まだまだ新人ですが、この腹のくくり具合、今後注目ですね。
2017.11.03
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「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」 Fantastic Beasts and Where to Find Them 2016年 イギリス映画 製作・脚本 J・K・ローリング 監督 デヴィッド・イェーツ 出演 エディ・レッドメイン キャサリン・ウォーターストン ダン・フォグラー アリソン・スドル サマンサ・モートン コリン・ファレル エズラ・ミラー このブログでは紹介していませんが、「ハリー・ポッター」シリーズは大好きで、全話DVDを購入し、繰り返し観ています。だから、このスピンオフ作、とってもとっても観たかったんです。 で、安く売っているDVDを見つけて、喜び勇んで買って帰り、さっそく鑑賞しました 1926年、闇の魔法使いグリンデルバルドがヨーロッパで猛威を振るっていました。 そんな中、魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は船でニューヨークに渡ってきました。ニュートのスーツケースの中には彼が世界中で保護した魔法動物たちで一杯ですが、税関の手荷物検査は間一髪通り抜け、ニューヨークの町中へ。 ニュートが通りを歩いていると、新セーレム慈善協会の指導者、メアリー・ルー・ベアボーン(サマンサ・モートン)が魔法使いの脅威と撲滅について熱心にスピーチをしていました。 ニュートがそのスピーチについ足を止めていると、スーツケースから、ニフラーという魔法動物が逃げ出してしまいます。光り物が大好きなニフラーを追って、ニュートは銀行へ。そこには、パン屋を開くための融資を断られ、途方に暮れてベンチに座っているジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)がいました。 ニフラーを追うどさくさの中、ニュートとジェイコブのトランクが入れ替わってしまい、“オブリビエイト”(記憶を消す魔法)することなく、ジェイコブに逃げられてしまいます。 それを見ていた元闇祓いのティナ・ゴールドスタイン(キャサリン・ウォーターストン)は、魔法機密保持法に違反したニュートを捕まえて、アメリカ合衆国魔法議会(マクーザ)へ連れて行きます。しかし、スーツケースを開けてみると、パンが一杯つまっていたため、ニュートは解放されます 一方自宅に帰ってきたジェイコブは、中に何が入っているかも知らずスーツケースを開け、中に入っていた魔法動物に逃げられ、自宅は半壊状態になってしまいます。 ニュートとティナはジェイコブの家を修復し、ティナが妹クイニー(アリソン・スドル)と暮らす家に、ジェイコブも連れて退避します。 シリーズ第3作「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」で登場する、ハグリット先生の魔法生物飼育学の危険な教科書(うかつに触ると噛まれます。)、『幻の生物とその生息地』の著者、ニュート・スキャマンダーを主人公にした新シリーズの第1作です。 僕は、このスキャマンダーを主人公にした新シリーズが作られるというニュースを聞いた時から、非常に楽しみにしていました。「ハリー・ポッター」シリーズにちょくちょく出てくる、ゴブリンやケンタウルスなどなど異形な者たち、ドラゴン・ピクシー・ヒッポグリフ・フェニックスなどの魔法動物が大好きだからです。 このブログでもたびたび触れていますが、恐竜好きで深海生物好きで、かつて怪獣博士だった僕は、こういう異形のものが大好きで、「千と千尋の神隠し」の湯場に異形のお客様がウジャウジャいる場面や、「スター・ウォーズ」の酒場の場面や「メン・イン・ブラック」の秘密の宇宙空港の場面など、異形の宇宙人がたむろっている場面が大好きです。 だから、異形な魔法生物がたくさん出てくることが必然であるこの映画、とってもとってもとっても楽しみだったわけです。 光物が大好きですばしっこいニフラー、透明になれるがゆえに透明マントの材料として乱獲され希少種になってしまったデミガイズ、翼のある蛇で大きさ自由自在なオカミー、翼で嵐を巻き起こすサンダーバードなどなど、もう楽しくってしょうがない映画でした。多くの方々が思っているように、僕もニュートのトランクの中に入ってみたいと心の奥底から思いました。 この映画、魔法動物の楽しさだけが見どころじゃありません。 やっぱり役者陣の巧みな演技も見どころです。 まず何といっても、主人公のニュート・スキャマンダーを演じるエディ・レッドメインですね。難病に侵されながらブラックホール関連で画期的理論を発表し続ける天才物理学者スティーブン・ホーキング博士を演じてアカデミー賞主演男優賞を受賞し、翌年は世界初の性別適合手術を受けたリリー・エルベを演じて2年連続ノミネート(受賞は残念)されている新進気鋭の演技派です。(「ジュピター」では、あのラジー賞も受賞していますが。) この映画でも、人見知りで人付き合いはうまくないが、魔法生物の前では非常に饒舌になり、愛情をもって世話をする主人公の個性を巧みな演技で表現しています。 アメリカ合衆国魔法議会長官パーシバル・グレイブルを演じるコリン・ファレルは、悪役フラッグ立てまくりの初登場でしたが、アメリカ魔法界の大物を威厳たっぷりに演じていましたし、メアリー・ルーの養子クリーデンスを演じるエズラ・ミラーは、屈折した悩める少年を怪演し、存在感抜群でした。まだまだ経験の少ない若い俳優さんですが、「ジャスティス・リーグ」でフラッシュを演じているようですね。今後が楽しみです。 かつて「マイノリティ・リポート」や「CODE46」で笑顔が印象的なかわいらしい女性を演じていて気に入っていたサマンサ・モートンが、えげつないおばさんを演じていたのはちょっとショックでしたね。あまりにもえげつなくって、最初誰だか気が付かなかったほどです。 そんな中、たまたまニュートと同じトランクを持っていたがために、事件に巻き込まれてしまう普通の人間(アメリカでは“ノー・マジ”イギリスでは“マグル”と言います。)、 ジェイコブ・コワルスキーを演じているダン・フォグラーの存在感が気になりました。いわゆる普通の小太りなおじさんなんですが、表情豊かで、なんとなく憎めない、見るからに人のよさそうな男を好演していましたね。ただ“ノー・マジ”ですが、ラストの感じだと、続編に出てきそうな雰囲気(詳しくは秘密)でしたので、とっても楽しみです。 ということで、ニュートが魔法動物たちの能力を生かして、闇の魔法使いグリンデルバルドと対決していくというシリーズの基本路線を作り上げ、すでに来年第2弾が公開され、次は若きダンブルドアが登場すると話題になっている、人気シリーズになること確実な第1作がとってもとっても期待通りで面白かった、というお話でした。 あっそうだ、あと、今までの「ハリー・ポッター」シリーズと違って、原作小説が出来上がってから、映画化されたのではなく、原作者のJ・K・ローリングが、直接脚本を書いているため、お話をカットした感ありありな時間が飛ぶ場面が全くなく、物語がテンポよく展開されるのもとってもいいなと思った、ということも付け加えておきましょう。
2017.10.29
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「X-men:アポカリプス」 X-men:Apocalypse 2016年 アメリカ映画 監督 ブライアン・シンガー 出演 ジェームズ・マカヴォイ マイケル・ファスベンダー ジェニファー・ローレンス 「X-MEN」シリーズの最新作で、プロフェッサーXとマグニートーの若いころを描いた「ファースト・ジェネレーション」三部作の第三作で完結編です。 紀元前3600年、力を用い神として世界を支配していたミュータントのアポカリプスは、裏切りにあい、古代エジプトのピラミッドの中に封印されます。 1983年、アポカリプスは眠りから目覚めてしまいます。現代の文明は堕落していると判断したアポカリプスは、新しい秩序をもたらすため、マグニートー(マイケル・ファスベンダー)ら4人のミュータントを“黙示録の四騎士”として従えて世界の破壊に乗り出します。 プロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)やミスティーク(ジェニファー・ローレンス)の率いる若きX-MENはアポカリプスの計画を止めるために立ち向かっていきますが、ミュータントの力を吸収できるアポカリプスにテレパシー能力に目をつけられたプロフェッサーXが連れ去られてしまいます。 やっぱり「X-MEN」は面白いですね。特に、ブライアン・シンガー監督が自ら監督した作品はアクションやテンポがとっても良くて、全く退屈することなく、最後まで一気に楽しんでしまいます。個性豊かなミュータントたちの能力をよく理解し、効果的に活躍させているからでしょうかね。 で、今回何がうれしかったかというと、シリーズの第1作で、X-MENメンバーだった、スコット・ジーン・ストームの3人の若かりし姿(もちろん、若い役者さんたちが演じています。ハル・ベリーなら若風なメイクすればやれたかもしれませんけどね。)が見れたことですね。前作の「フューチャー&パスト」のおかげで、未来が書き換わってしまったので、必ずしも出さなくてもいい3人なんですが、やっぱり最初の「X-MEN」の中心メンバーだったスコット・ジーン・ストームは、出てきてほしいですよね。 それからうれしかったのは、前作「フューチャー&パスト」でも目立っていたクイックシルバーが今回も大活躍していたことですね。超速移動という彼の能力(「サイボーグ009」の加速装置と同じだよね。サイボーグじゃないから、歯の奥のスイッチを“カチッ”とはしないけどね。)は、とっても映画向きですよね。超速移動している彼に合わせると、周囲がすべて止まっていて、おちゃめな彼は余裕でちょこちょこいたずらをしながら走っていくところが非常に面白いのは、前作の記事に書いた通りです。今回は、爆発する“恵まれし子らの学園”から、中にいる子どもたちを1人1人救い出していく場面は圧巻です。 仰々しく登場してきた割に、アポカリプスのラストが結構、呆気なかったなあ、とか、ミスティークが裸(つまり青い肌)で活躍する部分が少なく、ジェニファー・ローレンスファンとしてはいまいちだった、とか、モイラ(「ファースト・ジェネレーション」でチャールズと恋仲になっていたCIAの人)がマヌケすぎる、とか、いろいろとツッコミたいところもあるんですが、やっぱり「X-MEN」は好きですね。 ということで、この3作目で終わりかと思っていたのですが、来年4作目が公開予定だということで、非常に楽しみな、大好きなシリーズの最新作を今回は紹介しました。 あ、そうそう、プロフェッサーXことチャールズのスキンヘッドの秘密もわかりますよ。(決して、パトリック・スチュワートがもともとスキンヘッドだからではないんですね。)それから、チャールズといい仲になっていたモイラが、前作に登場しなかった理由もわかります。(決してスケジュールが合わなかったからではないのですね。前作でチャールズが最初クズ化していたのは、これもあったのね。)
2017.10.21
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「シャーロック・ホームズ」 Sherlock Holmes 2009年 アメリカ・イギリス映画 監督 ガイ・リッチー 出演 ロバート・ダウニー・Jr. ジュード・ロウ レイチェル・マクアダムス マーク・ストロング コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」、昔はまりました。小学校高学年の頃です。以前書いたかもしれませんが、その頃の僕は学校の図書室に入り浸っていました。ちょうどそのころ図書室に入荷した「シャーロック・ホームズ」のシリーズにはまったんです。それは、初めて出会った“推理小説”でした。その後、僕は“推理小説”にはまっていきます。横溝正史、江戸川乱歩、アガサ・クリスティなどを読み漁りました。 そんな僕の推理物好きの原点「シャーロック・ホームズ」、それがあの「アイアンマン」のロバート・ダウニー・Jr.主演で映画化されると聞き、観たかった1本です。 1890年、ロンドンの探偵シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr.)と相棒で同居人のジョン・ワトスン博士(ジュード・ロウ)は、5人の女性を儀式で殺害したブラックウッド卿(マーク・ストロング)の新たな被害者を助けに向かいます。2人はレストレード警部が到着する前に殺人を阻止し、ブラックウッドを警察に引き渡します。 3ヵ月後、ホームズは刑務所で死刑宣告されたブラックウッドに面会します。ブラックウッドはさらに3人の止められない死が起こり、世界が変化するだろうと言います。 その後ブラックウッドは絞首刑になりワトスンが死亡を確認します。 その3日後、過去に因縁がある女泥棒アイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)がホームズのもとを訪れます。彼女はルーク・リオドンという名の男の捜索を依頼してきます。アドラーが部屋を後にするとホームズは彼女を尾行し、顔の隠れた謎の雇い主に会うところを目撃します。 その行方不明のリオドンという男こそ、ブラックウッドの計画のカギを握る男だったのです。歩いているブラックウッドの目撃証言があり、墓の中の棺からはリオドンの死体が発見されます。その死体から手掛かりを探し、リオドンの家を発見したホームズとワトスンは、科学と魔術の融合を目的とした実験が行われた痕跡を発見するのです。 予告編を観た時からわかっていました、この映画が、コナン・ドイル原作の推理小説「シャーロック・ホームズ」と違うことは。爆発あり、格闘あり、の見るからに派手な映像、そして、ボサボサ頭に無精ひげで、ヨレヨレのシャツを着ているロバート・ダウニー・Jr.の演じるホームズと、イケメンで強そうなジュード・ロウ演じるワトソン、原作通りなのは、ホームズのバイオリンがいけてないところだけですから。 制作者が自ら“新しいホームズを作りたかった”と語っているように、従来通りのホームズ映画を作ろうとは、ハナから思っていなかったようで、とにかく、コナン・ドイルが創造したまさに英国紳士なスマートな名探偵シャーロック・ホームズを観ようと思って観てはいけません。まあ、DVDのパッケージのロバート・ダウニー・Jr.の姿を見れば一目瞭然でしょう。 しかし、がっかりしてはいけません。確かにミステリーとしてはいまいちですが、アクション映画としては、なかなか面白く仕上がっているのではないでしょうか。結構楽しく観賞できました。 ただ、どこかの小学生の体に閉じ込められた高校生探偵のような熱狂的シャーロキアンが、怒り出さないか心配だったのですが、特に問題になることもなく、結構な興行成績で、続編も公開され、今度、第3弾も作られる(ただ、主役のロバート・ダウニー・Jr.が、「アイアンマン」の方で忙しいそうで、なかなか取り掛かれないようですが。)ようで、ちょっとホッとしています。まあ、犬のホームズ(宮崎駿)の時も特に問題にはなりませんでしたもんね。 ということで、コナン・ドイル原作の本格的ミステリーではありませんが、なかなか楽しいアクション映画を、今回は紹介しました。 ロバート・ダウニー・Jr.は「アイアンマン」に続いて、ヒットシリーズに恵まれ、うらやましい限りですが、ただ、半世紀以上生きている彼の体力がいつまで続くのかだけが心配です。「アイアンマン」とともにね。
2017.09.30
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「ガッチャマン」 2013年 日本映画 監督 佐藤東弥 出演 松坂桃李 綾野剛 剛力彩芽 濱田晴臣 鈴木亮平 岸谷五朗 中村獅童 「科学忍者隊ガッチャマン」は、1972年10月から1974年9月まで放映していたタツノコプロ制作の人気アニメです。続編も「科学忍者隊ガッチャマンII」が1978年10月から1979年9月に、「科学忍者隊ガッチャマンF(ファイター)」1979年10月から1980年8月に放映されていました。(いずれも日曜日の夜6時、フジTV系です。そう「サザエさん」の前です。この時間、「ちびまる子ちゃん」が始まる前は、結構長いことタツノコタイムだったんですよ。土曜日の6時半と同じように。) 皆さんご存知のように、僕はこのアニメをリアルタイムで観ていました。しかし、残念なことに、その内容をほとんど覚えていません。“荒鷲の健”“コンドルのジョー”と言ったガッチャマンたちの呼び名とか、敵の幹部“ベルク・カッチェ”が何故かオカマっぽかったこととか、アクションやメカがやたらとかっこよかったこととか、超有名な主題歌以外は。 だから、この映画、とってもとっても観たかったんです。ヴィジュアル的にぴったんこのキャスティングにも、とってもとっても期待感は高まっていました。同時に制作発表され、先に公開された同じくタツノコプロの大大ヒットアニメ「ヤッターマン」の実写映画版が、このブログでも依然述べているように、ヤッターマン愛を抱いた三池崇史監督のおかげで、アニメの忠実な再現がなされ、涙がちょちょ切れるぐらいうれしかった時のような感動を味わえるかと思って。 しかし、巷に聞かれるこの映画の評判は酷評の嵐でした。これは自分の目で一辺観てみなければ、と思っていたところ、Gyaoの無料動画にありましたので、1も2もなく、観賞しました。 21世紀初頭、突如現れた謎の侵略者ギャラクターは全世界に宣戦布告を行い、わずか17日で地球の半分を占領します。ギャラクターの操る赤いシールドに既存兵器は全く通用しなかったのです。 国際科学技術庁(ISO)の南部博士(岸谷五朗)は18世紀に発見された不思議な結晶体“石”により超人的な力を引き出せる800万人に1人の“適合者”のみが、ギャラクターのシールドを破り、対抗できることを発見し、対ギャラクター部隊“ISOエージェント”の設立・育成を始めます。 13年後、日本のISOエージェント、健(松坂桃李)、ジョー(綾野剛)、ジュン(剛力彩芽)、甚平(濱田龍臣)、竜(鈴木亮平)の5人に、人類の未来は託されたのです。 冒頭に登場するベルク・カッチェの着ぐるみのようなダサいコスチュームと低い男声に幻滅したことに始まり、ガッチャマンのコスチュームが変わりすぎている(リアルにかっこよくデザインされていたみたいですが、アニメをリアルに観ていた世代から言わせると幻滅です。特にジュンの衣装が………)とか、東京が現代過ぎるとか、投降してきたギャラクターの幹部イリヤ(中村獅童)の身柄をISOが拘束できず誘拐しなきゃいけないのはなぜ?とか、いろいろいろいろと、ツッコミどころはとってもとっても満載で、1つ1つ取り上げていくと膨大な文章になりそうですので、特にガン的な3点についてのみツッコマさせていただきましょう。 おそらくは物語にリアリティを持たせるために設定されたであろう、原作アニメと大きく異なる基本設定、謎の侵略者ギャラクターによって世界の半分(というか、人類が生息しているのは東京・ロサンゼルスなど5都市だけなら、半分じゃなくてほとんどじゃないの?)を支配されていて、対抗できるのは謎の“石”によって超能力を使うことができる”適合者”のみ(そのうち特別な訓練を積んで戦士となった若者が“ガッチャマン”ということなんでしょうが、“ガッチャマン”と言う言葉は全く出てきません。)という設定、なかなかハードで面白いと思うのですが、その設定を説明された後で映る東京の風景が、ところどころ軍隊らしきものが見られますが、あまりにも現代と変わらず、平和過ぎで、呆気にとられてしまいます。そんな中、大量の買い物袋を抱えたジュン、ネットカフェらしき場所でハッカーを楽しむ甚平、スーツ姿で優雅にお茶する健、清掃員のバイトに熱中する竜、が登場し、再び呆気にとられます。 これはいったいどういうことでしょう。たった17日でほぼ世界を滅ぼした侵略者から、この東京はどのようにして13年間も守られてきたのでしょうか。人類のあらゆる武器が通じない敵を防ぐ、都市を覆う壁かドームのようなもの(??????)をいち早く造ったのでしょうか。 しかし、その直後、敵の巨大車輪のような兵器の襲撃をあっさり許し、一気に危機に陥ってしまいます。いったいこれはどういうことでしょう。ギャラクターは、“適合者”が成長し、訓練を終え、出撃可能になるのを待っていたのでしょうか?????? 基本設定からいきなり破綻しまくりですよね。 2つめに、人類を守るエージェントとして訓練されたはずな“白鳥のジュン”の、あまりにも空気の読めない言動の数々が、大河女優であるにもかかわらず大根ぶりがひどいと評判の剛力ちゃん(見た目だけはかわいらしくてジュン役にぴったりですが。)の評判通りの演技も相まって、浮きまくっていることです。 前述の、人類の危機が迫っている中で買い物(おそらくは服やアクセサリー類)に興じている姿に始まり、あらゆる場面で健に対し好き好きビームを出しまくり、挙句は、健とジョーの幼馴染ナオミ(その正体は秘密)に対して嫉妬しまくり発言などなど、いったいISOは、人類を守る戦士を育成するために、どんな訓練をしていたのか、疑問が膨らむばかりです。 3つめは結末に関わることなので、詳しく述べるのはやめておきますが、結局、健とジョーとナオミの三角関係かよ!!!!という話です。 人類滅亡の危機の話じゃなかったのかよ!!!!ということです。 ということで、非常に非常に非常に残念だったというお話です。ただ、一部ネットで言われている、「デビルマン」と比較する発言には反論させてくださいね。あれよりはずっとましです。役者陣は大河ドラマに出ている方々ばかりですので、ごく一部を除いて演技はしっかりしていますから。やっぱり演出や脚本の問題ですかね。やっぱり原作をよく知っていて愛を持っている方に演出や脚本はやってほしいですね。 あっ、あと、ラストの濱田君の発言、TVの前で思わずズッコケました。すごいギャグでした。映画前のアニメ「おはよう忍者隊ガッチャマン」と同じぐらい笑っちゃいました。(「ZIP!」のあれは好きでしたよ。)
2017.09.20
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「ダークナイト ライジング」 The Dark Knight Rises 2012年 アメリカ映画 監督 クリストファー・ノーラン 出演 クリスチャン・ベール マイケル・ケイン ゲイリー・オールドマン アン・ハサウェイ トム・ハーディ マリオン・コティヤール ジョゼフ・ゴードン=レヴィット モーガン・フリーマン クリストファー・ノーラン監督によるバットマン映画、“ダークナイト3部作”の完結編です。安いDVDを見つけたので、喜び勇んで購入しました。 ジョーカーとの死闘から8年後、ハービー・デント検事は正義の味方のまま死に、“デント法”により、犯罪率は低下し、ゴサッムは平和でした。デントの罪を被ったバットマンは追われる身となっており、バットマンことブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)は、引きこもり生活を送っていました。 元傭兵ベイン(トム・ハーディ)は自らの軍団を率い、物理学者パヴェル博士を乗せた飛行機を襲い、博士を拉致し、飛行機は墜落させました。 ゴードン市警本部長(ゲイリー・オールドマン)は、ハービー・デントを称えるスピーチを求められ、バットマンの言う通りの状況になったことで、用意した真実を暴露する原稿は隠すしかありませんでした。 キャットウーマンことセリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)は、ブルース邸に侍女として潜りこみ、ブルースの指紋と真珠のネックレスを盗み出しました。セリーナは、自らの前科を消してもらうことを条件に、ウェイン産業の乗っ取りを企むダゲットに雇われたのです。しかし、だまされて指紋だけ奪われたセリーナは警察に通報し、ゴードン本部長らが現れました。ダゲットもマスク男のベインに戦わせます。 ゴードン本部長はベインに捕まり、ハービーとバットマンの真相について書いたスピーチ原稿を盗まれます。ゴードンは隙をみて地下水道から脱出し、機転を利かせた警官ジョン・ブレイク(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)に救助されますが、重傷でしばらく入院を余儀なくされます。セリーナは警察とベインらが戦っている隙に逃げ出していました。 ウェイン家の執事アルフレッド(マイケル・ケイン)は、ブルースがもうこれ以上傷ついたり、亡くなったりするのを恐れていました。ですから、今のようにブルースが半隠居生活であることは、アルフレッドにとっては心安らかなことです。 刑事に昇進したブレイクに、ウェイン財団が孤児院への寄付を打ち切ったことを聞かされたブルースは、そのわけを聞きに会社へ行き、役員の女性ミランダ・テイト(マリオン・コティヤール)と会います。ミランダは信用に足る人物に思えました。 社長に就任しているフォックス(モーガン・フリーマン)に会いに行ったブルースは、寄付を打ち切った理由が、研究開発費を投入しておきながら中断した核融合炉で赤字になったと聞かされます。フォックスは稼働を勧めますが、悪用されるおそれもあり、ブルースは踏み切れませんでした。しかし、ゴッサムの平和が脅かされてきた現状を見たブルースはバットマンの復帰を決意します。それを嘆いたアルフレッドはブルースの元を去りました。 冒頭の飛行機のアクションは斬新で、今回のメイン悪役ベインの残忍性も表現されていて、なかなかやるなあと思わせ、全体に漂うダークな雰囲気、リアル感を保ちながら、クライマックスでは、バットマンが操縦する新兵器“ザ・バット”と、キャットウーマンが操縦する“バットポッド”を駆使したアクションも見ごたえがありました。 しかし、ブルース・ウェインは前回のショックを引きずったままのいじけ虫だし、華々しく登場した悪の傭兵ベインは、弱点丸出し(顔面殴られてマスクがずれたらもうおしまいってことでしょ。ダース・ベイダーみたいにヘルメット一体型のマスクにしておけばよかったのに。)の尻すぼみ小僧だし、ラストの爆弾処理の下りは日本の大人気漫画の〇〇編のラストと全く同じだし(それが何かは、思いっきりネタバレになるので言わないでおきます。)警察につかまっているはずのジョーカーはベインによって1000人の囚人が解放された中にいなかったし(まあ、出てきたらベインなんて全く霞んじゃうけどね。まあ、8年もおとなしく捕まっているタマじゃないから、とっくに脱獄していたと、いい風に解釈しておきましょう。)、大小取り交ぜてツッコミどころは満載で、まあ、前作の出来が良すぎたせいということでしょうかね。 そんな中、若い警官(作中で刑事に昇格)ジョン・ブレイクが孤軍奮闘(ベインの策略で警官隊のほとんどが地下に閉じ込められてしまうので、文字通りです。)しているのが非常に目立ちましたね。ちょうど無重力のホテルの中で一人頑張るアーサー君みたいでしたよ。(笑) ということで、なかなか楽しめる作品でしたが、いろいろな面で偉大な前作には及ばなくて、ちょっと残念でしたというお話でした。 あっ、後、“バットポッド”(前作で大活躍だった自在に動くバイク)をキャットウーマンに任せたのは大大大正解でしたね。特にバックショットが大大大正解でした。(男性はみんなそう思っているはずです。バットマン、ナイスです。)
2017.08.29
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「ベイマックス」 Big Hero 6 2014年 アメリカ映画 監督 ドン・ホール 米アカデミー賞の長編アニメ賞をはじめ、数々の映画賞を受賞しているディズニーアニメです。 公開時、盛んにTVCMなどで宣伝されていましたが、日本語版主題歌AIの「Story」をバックに、見るからに癒し系ロボットのベイマックスに、心を病んだ少年が癒されることを前面に出した宣伝に、これは女性好みのお涙頂戴ストーリーだなと判断し、別にいいか、と思っていました。 昨年末、地上波初登場でTV放映していましたので、気が向くこともあるかな、と思い、録画しておきました。お盆休みで暇を持て余し、気が向いたので、観てみました。 未来の都市サンフランソウキョウに住む14歳の少年・ヒロ・ハマダは天才的な科学の才能を持つが、飛び級で高校を卒業したことで目標を見失い、その才能を非合法のロボット・ファイトのために利用するという自堕落な生活を送っていました。 そんな弟を見かねた兄のタダシは、彼を自身の所属する工科大学へ連れていきます。 タダシの友人たちの手がけた数々の発明品や、兄の開発したケアロボット“ベイマックス”を目にしたヒロは、科学の夢を追究したいと飛び級入学を決意します。 入学には、大学の研究発表会で、タダシの恩師でありロボット工学の第一人者であるキャラハン教授をうならせる独創的な発表が必須です。タダシや大学の仲間たちの協力の下、ヒロは発明品を完成させ、発表会でプレゼンテーションを行ないます。 ヒロの発明した“マイクロボット”は指先ほどのサイズしかないが、互いに引き寄せあって集合体を形成し、操作者の頭部に装着した装置で、その集合体を瞬時に思うままの形状に変化させることができるという画期的な発明品でした。 ヒロはキャラハン教授から直々に入学を許可されますが、しかしその直後、会場で火災事故が発生し、ヒロは、兄のタダシ、尊敬するキャラハン教授、マイクロボットを一度に失ってしまいます。 タダシの死以降、ヒロは部屋に引きこもっていましたが、ふともらした弱音で、兄の遺品の中にあったベイマックスが起動します。ベイマックスはタダシに与えられた“傷ついた人の心と体を守る”使命に従いヒロの痛みを癒そうと起動したのです。 ヒロの手元にたった1つ残されていたマイクロボットが何かに反応していることを疑問に思ったベイマックスとヒロは、古びた倉庫にたどり着きます。 倉庫の中では火災で失われたはずのマイクロボットが大量に生産されていました。2人謎の仮面の男の操る大量のマイクロボットに襲われながらも、命からがら逃げ帰ります。 一連の出来事から、あの火災が事故ではなくマイクロボットを狙った者による犯行なのではと推理したヒロは、仮面の男と対峙する決意をします。 彼はベイマックスに戦闘用のプログラムを組み込み、バージョンアップし、港で仮面の男に迫ったヒロですが、その圧倒的な力に屈し、心配して追いかけてきた仲間たちに助けられ、命からがら逃げることしかできませんでした。 仲間の1人フレッドの家に集まったヒロたちは、男の正体は実業家のアリステア・クレイではないかと推理し、一致団結して彼を逮捕することを決意し、それぞれの研究にあわせたスーツを開発、ベイマックスのアーマーもより戦闘的なものに改良します。 やられました。女性向けお涙頂戴ドラマではありませんでした。男子向けヒーローアニメではありませんか。しかも、日本でも根強い人気のあるスーパー戦隊シリーズを彷彿とさせる(というか、きれいに色分けされた戦闘スーツといい、完全に意識しているよね。ピンクと黄色が女子だし。)、それぞれが個性的な能力を発揮して戦う、グループヒーローものではないですか。しかも、お話もとってもうまくできていて、戦隊ヒーロー誕生編としてのつかみは十二分でした。 話によると、マーベル社を買収したディズニーが、マーベルコミックの中で、アニメ化する題材を探していたところ、発表当時は全く人気がなく完全に埋もれていた「Big Hero 6」という作品が目に留まり、現代風にアレンジして出来上がった作品だというではありませんか。(原題はまんま「Big Hero 6」です。) しかも、現地アメリカでの宣伝は、アクションヒ-ロ-物を前面に押し出したもので、あの女性を完全に意識したハートフルストーリー全面押しの宣伝は日本だけだというではありませんか。 どうやら、日本でのディズニー映画の需要は、女性と家族連れが圧倒的なんですね。しかも、前年のあの「アナ雪」の大大大ヒットの流れもあって、ハートフル全面押し宣伝になったみたいです。 しかし、この事実が、結構ネットをざわつかせているみたいですね。“宣伝詐欺”とかどうとか。そりゃあそうだ、ハートフルな感動ストーリーを観たいと思って観に行ったら、ヒーローのアクションだったら、“詐欺”と言いたくなるのもわかります。でも、それほど大騒ぎになってないのは、映画の出来が良くて、思惑とは違ったけど、結構楽しめたからでしょうね。 ということで、僕も“宣伝詐欺”を前面に掲げて記事を書こうと思いましたが、いろいろ考えると、あの「アナ雪」の後であることを考えるとしょうがないのかなあ、と考え直した、というお話でした。 そうだ、どうせなら、マーベルを前面に出して、実写で撮ればよかったんじゃない?そうすれば、あの海賊映画に続くヒットシリーズになったかもよ。何しろ、「アメトーク」で“戦隊ヒーロー芸人”やるぐらい、特撮ファンのおじさんは結構いるからね。ただ、主役のヒロをやる子がいるかどうかちょっと問題だけど。健太君や山田君や神木君は大きくなっちゃったしなあ、福くんはまだ早いかな。あっ、清史郎君がいるじゃん、濱田君も。
2017.08.14
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「僕だけがいない街」 2016年 日本映画 監督 平川雄一朗 出演 藤原竜也 有村架純 石田ゆり子 及川光博 鈴木梨央 中川翼 実写映画「僕だけがいない街」を観ました。劇場公開から1年と3か月、何故か地上波初放送していましたので、録画しておいて、今日観ました。 この漫画、前から気になっていたんですが、なかなか手が出なかったのです。しかし、ある時、古本屋で、1~6巻がセットで売っていたのを見つけ、思わず、衝動買いしてしまいました。ちょうど、実写映画化されるというニュースが出始めたころです。家に帰って、6巻を一気に読んで、当然のことながら続きが気になり、7.8巻ももちろん購読して、見事に完結していることに満足したのでした。 なかなか目が出ない漫画家の藤沼悟(藤原竜也)は、ピザ屋のアルバイトで生計を立てています。実は悟には悪い事が起こる前の瞬間に戻ることができ、その原因をとりのぞくまでその場面を繰り返すという、特殊能力があり、“リバイバル”と呼んでいました。ある日、ピザの配達中にこの能力“リバイバル”が起こり、小学生をトラック事故から救いますが、悟は対向車にはねられ、入院することになります。この事故から同じピザ屋でアルバイトをする愛梨(有村架純)と仲良くなり、田舎の北海道から母親の佐知子(石田ゆり子)が上京することになりました。 奇跡的な軽症で退院した悟と佐知子が買い物中にリバイバルが起こり、佐知子が、北海道で1988年に起こった女児誘拐殺人事件の真犯人について勘付きます。 しかし、真犯人も佐知子に気付かれたことに気づき、悟が外出中のある日、佐知子を殺害して逃走します。帰宅して、佐知子の死体を発見した悟は犯人を追いかけますが、警察に悟が犯人だと思われてしまいます。 佐知子が死ぬ前に戻りたいと強く念じる悟は今まで経験したことがない時間を遡り、気づけば1988年の小学生の頃(中川翼)に戻っていました。同級生の雛月加代(鈴木梨央)が殺された事件と佐知子が殺された事件のつながりに気付いた悟は、加代を助けることで佐知子を救えるのではないかと考えます。 映画が作られていたのが、原作がまだ雑誌連載中ということもあり、結末が違うであろうことは、わかっていました。しかし、ネットで多くの方々が語っているように、それはないだろうという結末に、非常にがっかりしました。 映画の4分の3ほど(加代が母親の虐待から救われるまで)の流れはほぼ原作通りです。尺の問題でしょうが、小学校時代の悟の友達関係など、結構な部分の割愛がなされているのですが、それでも話の流れはほぼ原作通りで、漫画原作の実写映画の悲惨な状況にいつも文句たらたらな僕も、「すごいうまく切ってあるなあ。」と感心しながら鑑賞していました。 しかし、だれがどう考えてもバッドエンドな結末、しかも、問題が解決してないのに繰り返しがない、戻る場所が違う、前の流れの中に戻ってない、など、リバイバルのルールを完全無視した、明らかに原作者とは別の人が考えたであろう、ひどい結末で、非常に非常に非常にがっかりしました。(詳しくは語れません。) ところで、子役の巧みな演技が不可欠なこの作品、主役の2人は見事でした。 悟役の中川翼君は、体は子ども頭脳は大人という、名探偵コナン状態に、全く違和感を感じさせないさりげない演技に感心しました。 そしてなんといっても、加代役の鈴木梨央ちゃん、母親から虐待を受けている少女の感情をなくした目、虐待された直後に悟に目撃されたときの怒りの表情、口癖の「馬鹿じゃない」の言い方、完璧です。大河ドラマ「八重の桜」(幼少期の八重役)の時から注目していましたが、末恐ろしい子です。(個人的には、ポカリのCMの吉田羊との掛け合いが好きです。) ということで、なかなかいいぞ、と思わせておいて、残念な結末で結局はがっかりしたというお話でした。 ところで、八代先生役の及川光博の老け顔メーク、違和感バリバリでしたね。というか、1988年にアラサーなら、2006年は実年齢ぐらいですよね。1988年に若作りするだけでいいんじゃない?
2017.07.17
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「オデッセイ」 The Martian 2015年 アメリカ映画 監督 リドリー・スコット 主演 マット・デイモン ジェシカ・チャスティン キウェテル・イジョフォー ショーン・ビーン 前回のディカプリオにオスカーをさらわれたのが、本作のマット・デイモンです。最近流行りの取り残され系SFです。 火星探索チーム・アレス3のクルーたちが土壌分析の調査をしている最中、大規模な砂嵐が到来します。巻き込まれると危険だと判断したメリッサ船長(ジェシカ・チャスティン)は、任務を中止して火星から離陸することを決断しました。 ところが退避の途中、植物学者のマーク・ワトニー(マット・デイモン)に飛来物が当たり、倒れてしまいます。メリッサ船長はぎりぎりまでマークの救助を試みましたが、視界が悪く、赤外線もきかない中、生存が絶望的だと判断しMAV(火星上昇機)に乗り、探査船ヘルメス号に移って帰還し始めました。 地球でもマークの生存は絶望的とみなされ、NASAは、マークの死を公式に発表します。 しかし、マークは生存していました。通信用アンテナが脇腹に刺さっていたのですが、出血した血液が宇宙服の隙間で凝固したため、助かったのです。 砂嵐が去った後、目を覚ましたマークは、居住ユニットに戻り、自分で脇腹の施術をし、前向きに考えました。4年後、次のクルーがやってくるまで、できるかぎりのことをやってみようと思ったのです。 生き残るために必要な物資を物色していると、生のジャガイモの真空パックを見つけました。トイレに残されていた排泄物がパックを肥料にして、土を運び込んで温室を作り、ジャガイモの栽培を始めました。 その頃NASAではマークの遺体をどうするかと話題になっていましたが、火星の表面の観測していた衛星交信担当の女性ミンディが、地表に動くものがあることを発見します。 「ゼロ・グラビディ」や「インターステラー」など、最近の宇宙探査系SFは、リアリティの高いものが流行りですね。まさにScience Fictionですね。(でも、SFの意味を“奇想天外な物語”という意味でとらえている、かわいそうな人々も時々いますが。) そんな中、本作のリアリティは群を抜いています。それはそうです、この作品は、NASA全面協力で作られているからです。そうです、あの「ゼロ・グラビディ」のでたらめさに激怒したと言われる、アメリカ航空宇宙局(NASA)がです。 NASA監修で何が一番違うかというと、細かい部分はある程度知識がないとわからないのですが、誰もが感じる違いというと、宇宙飛行士たちの冷静さでしょうかね。 マークは意識を取り戻して、自分が火星に取り残された事実を認識し、最初にしたことは、自分の傷の手当です。自分の脇腹に刺さっているアンテナの切れ端を取り除き、自ら縫合をします。(まるでブラックジャックみたいですね。ブラックジャックはたとえ荒野のど真ん中であっても、ビニール製の簡易無菌室を膨らませて、自分のおなかの手術をします。)そして、基地内に残されているものをすべてチェックし、自身の生存に必要なものを洗い出していきます。特に、食料のチェックは重要ですね。実はまだアレス3のミッションは始まったばかりで、30日分×6人近い食料が残されていました。そして、真空パックされた生のジャガイモを発見し、それを栽培して、4年後(次のアレス4がやってくる時)まで生存することに挑戦する道を選ぶのです。 また、メリッサ船長も、砂嵐の中事故にあったマークをいったんは捜索に出ますが、尋常じゃない砂嵐のおかげで倒れ掛かっているMAVが発射可能な限度が迫っているため、生存の可能性の低いマークを救うよりも、残った5人(自分を含めて)を救う方が大切と瞬時に判断し、MAVに戻ります。 NASAによると、宇宙飛行士は、いかなる困難な状況に置かれても、慌てず冷静でいられる訓練を行っているそうで、瞬時に状況を判断し、最善の行動をとることができるそうです。そういえばヒビトも月面で遭難したとき、非常に冷静でした。 性格的な問題もあるのでしょうが、地球から現在可能な宇宙船で行くと半年以上かかる(宇宙はなんて広大なんでしょう。)、すぐ隣の兄弟惑星火星に取り残されたマークは、冷静を通り越したポジティブさで、冗談を言ったり、趣味が悪いと言いながら船長(年齢的にはおばさん)の残していったディスコ音楽を掛けたりしながら、サバイバルしていきます。 どうも、この辺がついていけないという感想を述べている方々も多いみたいですが、取り乱したり、落ち込んだりするよりも、宇宙飛行士としてのリアリティを感じ、僕は非常に好感を持ちました。(温室が壊れて、平均気温-43度という火星の大気にさらされ、ジャガイモが全滅したときは、さすがに取り乱していましたが。) 後、僕が気にいったのは、地球のスタッフの奮闘ぶりです。「アポロ13」の時もそうでしたが、方策を練ったり、軌道計算したり、シミュレーションしたり、地球のスタッフは遭難した宇宙飛行士を地球へ生還させるために、考えられる限りのあらゆることをしようとします。「アポロ13」ではむしろ地球の方の動きの方が物語のメインでした。何しろ距離が近く時間がないので、そのバタバタぶりが見どころでもありました。 火星探査統括責任者のカプーア(キウェテル・イジョフォー)を中心に、マークを救助するための方策を模索続けます。このカプーア統括責任者の熱い仕事ぶり、非常に印象に残ります。このキウェテル・イジョフォーという人、米アカデミー賞作品賞受賞作「それでも夜は明ける」の主演の人です。なるほど。 また、何かとリスクの少ない方策を選ぼうとするサンダース長官(まあ、最高責任者としては当然と言えば当然か?)に反抗して、結局はマークの救助を成功させる(そうなることは明らかなので結末に関わることですが、書いてしまいました。)こととなる、フライトディレクター・ミッチ・ヘンダーソン(ショーン・ビーン)も、いい味を出していましたね。見た目通りの悪役を演じていることが多い彼(何しろ、「よく死ぬ映画俳優トップ10」の第1位ですから。)ですが、今回はおいしい役でしたね。 ということで、宇宙を舞台にした壮大な物語ですが、最後は結構アナクロい結果でドキドキしてしまった(詳しくは秘密)、理系男子好みの映画を今回は紹介しました。 しかし、ビニールシートとガムテープって最強なんですね。
2017.07.06
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「レヴェナント:蘇えりし者」 The Revenant 2015年 アメリカ映画監督 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ出演 レオナルド・ディカプリオ トム・ハーディ レオナルド・ディカプリオが、5度目のノミネート(主演4、助演1)で、念願のオスカー(もちろん主演男優賞。)を手にした映画です。実はイニャリトゥ監督は前年の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」から2年連続監督賞受賞、そして撮影監督のエマニュエル・ルベツキは、「ゼロ・グラビティ」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」と、3年連続撮影賞受賞(史上初)という快挙を達成した傑作です。 時は1820年、アメリカの西部開拓時代。凄腕の罠猟師ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)が率いる狩猟団は、突然、先住民族のアリカラ族に襲われます。 仲間の半数を失った狩猟団は、ボートで逃げ出しますが、ヒューの提案で森を歩いて行くことになりました。 一歩先を行くヒューは、運悪く森のなかで子連れの熊に襲われ、深手負い、瀕死の状態になってしまいます。 深手を負ったヒューを仲間たちが、運ぼうとしますが、以前から仲が悪く因縁関係のあった、ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)は、足手まといのヒューを安楽死させようと、リーダーのヘンリーに提案します。 しかし、ヘンリーは、仲間のヒューを殺すことの出来なかったため、死ぬのを誰か看取ることを命じます。 そこに名乗りを上げたのが、まだ若いジムと、ヒューの息子ホーク、そしてなんとジョンでした。ジョンの目的はヒューを殺すことです。 ジョンは、ヒューのために息子のホークや仲間たちが、集団から遅れて死ぬかもしれないから、自分が殺してやろうかとヒューに提案します。 それに同意したヒューがジョンに首をしめられているところをホークが発見します。 ホークはジョンに襲いかかりますが、ヒューの目の前で、あえなくジョンに殺されてしまいます。 ヒューはジョンが予め掘っていた穴に生き埋めにされ、置き去りにされます。 しかし、奇跡的に回復したヒューは、穴の中から這い出し、ジョンに息子の復讐をすべく、森の中を歩き出します。 すごいです。とにかくディカプリオの演技がすごいです。泥まみれ、雪まみれ、全身傷だらけ、もう彼の演技が壮絶すぎて、圧倒されます。見た目はとってもとっても汚らしいですが、いつものイケメンの面影は全くありませんが、何か非常にかっこいいです。米アカデミー賞主演男優賞受賞に、どこの誰も文句は言えません。そのくらい圧倒される迫力の演技です。 レオナルド・ディカプリオは、「ロミオ+ジュリエット」「タイタニック」「ザ・ビーチ」などでそのイケメンぶりから、アイドル的な人気でスターになりました。でも、実は19歳で出演した「ギルバート・グレイプ」という映画で、米アカデミー賞助演男優賞にノミネートされるほどの演技派なんですね。本人もアイドル的な人気は不本意だったようで(特に14部門ノミネート11部門受賞の大作「タイタニック」の主演でありながら自身はノミネートさえされなかった事実はショックだったのではないでしょうか。)、密かに復讐に燃える若者や、正体を隠して潜入捜査する刑事や、大胆な手口で人をだます天才詐欺師や、実在する大富豪や、心に闇を抱える男とか、様々な役に挑み続け、主演男優賞にも3度ノミネートされますが、受賞は果たせていなかったのです。 という彼の経歴を考えれば、今回の体を張った壮絶な演技も納得です。 もちろん、この映画、ディカプリオだけではありません。 最近注目のトム・ハーディの心の底から憎んでしまうほどの悪役ぶりも見事ですし、殺風景になりがちな雪景色を美しく描き出している撮影技術の巧みさは秀逸ですし、なんといっても、根底に流れる主題として、ネイティヴ・アメリカンに対する白人の侵略という暗黒の歴史を描き出しているところも注目ポイントですね。 ということで、ディカプリオが念願のオスカーを手にした傑作をじっくり味わいました、というお話でした。 ところで、ヒューがクマに襲われる場面、すごい迫力ですが、もちろん、CG合成ですので、ご心配なく。(言うまでもないか?)
2017.06.25
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「ターミネーター:新起動/ジェニシス」Terminator Genisys 2015年 アメリカ映画 原作 ジェームズ・キャメロン 監督 アラン・テイラー 出演 アーノルド・シュワルツェネッガー エミリア・クラーク ジェイ・コートニー ジェイソン・クラーク イ・ビョンホン J・K・シモンズ YOUTUBEで観賞しました。 皆さんよくご存じの「ターミネーター」と名のついた5作目です。(TVドラマの「サラ・コナー クロニクル」なども含めるともっとありますけど。)第1作の監督、ジェームズ・キャメロン(今回は原作)は、自分が製作にかかわっていない「T3」「T4」は続編と認めてないそうで、本作は真の「T3」と公言しています。ということで、僕も「T5」という言い方はしないでおきましょう。 1997年にスカイネットが人類を核攻撃した“審判の日”により人類は30億以上の命が奪われ、殺人マシンのターミネーターたち機械軍が支配する世界となっていました。 2029年、生き残った人類は抵抗軍のリーダーであるジョン・コナー(ジェイソン・クラーク)のもと、機械軍を壊滅に追いやりますが、追い込まれた機械軍スカイネットはジョンの母親サラ・コナー(エミリア・クラーク)を抹殺するために過去に一体のターミネーターT-800を送ります。 ジョンは母親を守るため、スカイネットの基地にあった時空転送装置を使い、部下のカイル・リース(ジェイ・コートニー)を過去(1984年)へ転送します。転送されるとき、カイルはジョンが何者かに襲われるところを見ます。 転送途中でカイルは“スカイネットはジェニシス”“審判の日は2017年”というキーワードや、両親と一緒に誕生日のお祝いをする幼い自分らしき風景を目にします。 1984年についたカイルが、無人の店内で服を手に入れていたところ、ターミネーターT−1000(イ・ビョンホン)が現れ、彼を攻撃してきます。そのとき、消防車に乗ったサラ・コナーが現れ、カイルを救出します。 カイルの目的は大学生であるサラ・コナーを救うことでしたが、サラ・コナーのもとにはT−800(アーノルド・シュワルツェネッガー)がいて、サラ・コナーの幼いときに転送されて以来ずっと見守っていたと言います。どうやらカイルがジョンから聞いていた歴史は、書き換えられているようです。 彼らはT−1000の追撃を受けますが、罠に追い込み破壊に成功します。 サラとT-800は、“審判の日”である1997年に行くため時空転送装置の準備をしていましたが、カイルは転送中に見た光景をサラたちに話し、2017年に行くべきだと主張します。 こうしてサラ・コナーとカイル・リースは“審判の日”を阻止するべく、スカイネットが起動する2017年へと行くことになるのです。 「T3」「T4」を認めないキャメロン監督が、真の「T3」を作ると意気込んで作った割には、いまいちでがっかりした。というのが正直な感想です。 トレーラーが縦にひっくり返るとか、ぶら下がって落ちていくバスをすり抜けるとか、どこかで観たアクション(「ダークナイト」及び、「ジュラシックパーク」参照。)、大物スター(イ・ビョンホン)を起用した割には結構あっさりやられてしまったT-1000、人類の救世主となるべきジョン・コナーが敵になってしまうという裏切り行為(どんでん返しのつもりだったのかもしれませんが、予告編でばらされてしてますので、がっかりポイントになってしまいました。クリスチャン・ベールでなくどう見ても悪役顔の人を起用している点も含めてね。)、などなど、がっかりポイントばかり目についてしまいました。 もちろん、シュワちゃんの復活(さすがにお年なので、アクションはいまいちですが。)や、サラ・コナーが可愛くなったというプラスポイントもあるんですが、どうしてもいまいち感がぬぐえませんでした。 ああ、2017年でカールやサラを助ける警部役のJ・K・シモンズ(ジュノの寛大なお父さん、あるいは、どうしてもスパイダーマンを悪人にしたい編集長をやっていた人です。)が、いい味を出していたところもプラスポイントかな。(どうも渋い演技を見せる脇役のおじさんを気に入る傾向がありますね、僕には。) ところで、例によってこの記事を書くためにネットでこの映画の感想などを検索していたら、「タイム・パラドクスが起こって、………」などと、能書きを述べていた人がいて、非常にがっかりしました。 タイム・パラドクスって、過去に戻って自分の親を殺してしまうとか、時間旅行上の矛盾のことを言うのであって、起きてはならないことのはずです。だから、タイム・パラドクス的なことが起きたとしても、実は本当の親ではなかったなど、必ず辻褄が合うようになるはずです。 今回のお話も、誰かが子どもの頃のサラ・コナーを守るべくT-800を送り込んでいた(それが誰かは、今回は謎のままです。)ことにより、時間の流れ全体が書き換わっているだけで、タイム・パラドクスではありません。ちょうど、いけてないサラリーマンで相変わらずビフにいじめられていたジョージ・マクフライが、マーティが介入してきたおかげで、夢をかなえて売れっ子作家になって、逆にビフをこき使うように変わっていたのと、同じですね。 もちろん、今回も、サラが1985年に戻ってジョンを産む、または、実はジョンには別の親がいたことになる、ということがなかったり、未来のある時点で誰か(すでにジョン・コナーがそれをするのは不可能になっていますので、)が、T-800を子ども時代のサラのもとへ送る、ということがなかったら、タイム・パラドクスになってしまいますので、続編で明らかになるはずです。 あっ、ということは、「T1」から「T4」の流れがあった上で、今回全面的に書き換わっているということになれば、「T3」「T4」を完全否定しなくてもいいんですね。なんだあ、そういうことですか。(この映画の中で、ジョンは子どもの頃からカールを知っていたような描写があったような気がしますが、まあ、細かいことは気にしないでいきましょう。) ということで、作品のでき事態はちょっとがっかりでしたが、新しく起動した人気シリーズの今後に期待したいということで、今回はこのくらいにしておいてやろう。(相変わらずの上から目線ですみません。) しかし、シュワちゃんが続編に耐えられるでしょうか、それだけは心配です。
2017.06.12
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「400デイズ」 400days 2015年 アメリカ映画 監督 マット・オスターマン 主演 ブランドン・ラウス さて、恒例のDVDを借りてきた時の無名映画紹介コーナーとまいりましょう。 今回は、パッケージの解説を読んで、どっかで見たような話だなあと、思いつつ、どう決着をつけるのか気になったこの作品です。 主演のブランドン・ラウスという人、「スーパーマン リターンズ」の主演(つまりスーパーマン役)だそうです。興業的に大失敗した作品だから、ちっとも知らなかったけど、確かに、長身マッチョなイケメンで、まさしくスーパーマンにぴったりのヴィジュアルですね。 地下に建設された施設内で400日にわたって生活するという実験に、4人の宇宙飛行士が参加する。順調に地下での生活を送っていた彼らだが、実験開始から200日目に地上の本部へメッセージが送れなくなってしまう。その後、彼らは幻覚にも悩まされるようになる。そして実験開始373日目に、外からハッチをたたく音が施設内に響き渡る。実験を中断して地上に出る宇宙飛行士たちだったが。その前には荒野が広がっていた。さらに、地球上には存在しないはずの物質が大気中に確認され… 以上、パッケージに書かれたあらすじです。なんか面白そうでしょ。 実験の参加者は、イケメン船長のセス(ブランドン・ラウス)、医療担当の女性隊員エミリー、通信担当のガテン系強面ドボラク、実験担当の草食系優男バグの4人です。 冒頭、いきなりセスが警察署から釈放する場面から始まります。どうやら、彼女に振られてやけ酒し、喧嘩して一晩御厄介になっていたようです。彼はそのまま記者会見場に遅刻して現れます。そして、船長と紹介され、しかもそのまま、荒れ地の真ん中にハッチだけある地下への入り口に入っていきます。「えっ、えっ、えっ、それでいいの???」「ちょっと宇宙飛行士として大丈夫?しかも船長????」という良識を疑う始まり方です。 しかも、その別れた彼女というのが、後でわかるんですが、実験に一緒に参加しているエミリーなんですよ。「なんやそれ????」でしょ。 それから、食事をしたり、排せつしたり、睡眠したり、トレーニングをしたり、ミーティングしたり、談笑したり、実験したり、通信したり、娯楽に供したり、個室で過ごしたり、などなど、普通に生活する様子の描写が、不十分なまま、26日目(早!!)、地震のような振動を感じたかと思ったら、電力の供給が減少し、地上との通信が途絶える(パッケージの解説には200日目とありますが嘘です。)のを皮切りに、喧嘩をしたり、異常行動に走ったり、ネズミが侵入してきたり、いろいろな異常事態が起こりますが、訓練の一環かもしれないと、特別な動き(状況を確かめるとか、外へ出てみるとか、通信装置の修理を試みるとか、)は全くなく、結局373日目(様子見が長すぎじゃない???)、侵入者が現れたところで、やっと外へ出るという決断をします。(優柔不断かよ!!!) 外へ出てみると、空は厚い雲に覆われ、荒野のど真ん中だと思われた地下施設ですが、結構近いところに民家や小さな町があったりして、町の住民は異様な雰囲気で、怪しいスープを出してきたレストランの親父が言うには、月に光る物体が衝突して粉々に砕け、地球に降り注いできたとのこと、それが真実か確かめる間もなく、町の住民との争いになり、ずーっと夜で全く昼間にならないまま400日目になっていて、全く何も解決しないまま、唐突に終わってしまいます。 天変地異があったのか、それとも町の住民もすべてグルで訓練の一環なのか、それとも長らく閉じ込められていたための精神異常による幻覚を見ているのか、それぞれの伏線と思われる描写があるため、全く判断がつかないまま、何の答えも提示ないまま、結論は全面的に視聴者に丸投げで終わってしまうのです。 観終わって、まずポカンとします。そして、徐々に怒りがこみ上げてきます。なんなんだこの話は、結末はご想像にお任せします、にしてもほどがあるぞ!!! とにかく、脚本がめちゃめちゃで、書いた本人(どうやら監督のようですが。)も結論を決めてないんじゃないかな???なんにしても、ひどい話です。 ということで、全くおすすめ出来ない怒りしか生まない映画なので、結末(ないけどね。)まで詳しく書いてしまいました。 なんて言っても、4人の髪形やひげ、体形などが400日の間、全く変わらないところが、まともな映画を作ろうという気持ちが全くないということですよね。(散髪や髭剃り、整髪の場面は全くありません。)
2017.05.08
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「ペーパー・ムーン」 Paper Moon 1973年 アメリカ映画 監督 ピーター・ボグダノヴィッチ 出演 ライアン・オニール テイタム・オニール ゴールデン・ウィークなので、DVDを借りてきました。 今回は、かつて僕が大好きだった女優テイタム・オニールが初出演にして、アカデミー助演女優賞を最年少(受賞時10歳、現在も最年少記録です。)で受賞した、懐かしの名作を借りてきました。 確か、かなり依然TV放送かレンタルビデオ(DVDではない。)で観た覚えがあるんですが、テイタムの文句なしの可愛さは覚えていたのですが、ストーリーはよく覚えていなかったんで、再確認したかったのです。(可愛いテイタムが観たかっただけという話もありますが。) 9歳のアディ(テイタム・オニール)は、母親を自動車事故で亡くし、身寄りはミズーリにいる叔母だけでした。形ばかりの埋葬の場で、急きょ駆け付けた母親のかつての恋人モーゼ(ライアン・オニール)は、牧師夫婦からアディを叔母の家に届けるように頼まれてしまいます。ミズーリへ聖書のセールスに行くと言ってしまった手前、渋々引き受けざるをえなかったのです。 モーゼは、交通事故を起こした男の兄を訪ね、示談金200ドルをせしめ、その金で今まで乗っていたボロ車を新車に買い替え、邪魔っけになったアディを汽車に乗せてポイしようとします。ところが、アディは、モーゼが200ドルせしめたやり取りを立ち聞きしていて、私のお金だから返してと主張します。アゴの線がそっくりだからもしかして父親なの?だったら返さなくてもいいけど、と言うのです。父親ではないとかたくなに主張するモーゼですが、お金を使ってしまった以上、返しようがありません。じゃあ、稼いで、と言うアディと旅を共にするしかないのでした。 もうとにかく、テイタムが可愛いの一言に尽きますね。(かつてファンだったという蟇目を抜きにしてもね。) とにかく可愛くて聡明で小生意気で、この天才子役がいなかったら、痛快でちょっとホロっとさせるこの名作は成り立たなかったでしょう。 この映画、まず、テイタム有りきで作られた、という話を聞いてびっくりしました。 ジョー・デヴィッド・ブラウンの小説「アディ・プレイ」を映画化したいと考えていたボグダノヴィッチ監督が、主役のアディにぴったりの子がいると紹介されたのがテイタムで、その後、「ある愛の詩」のヒットでスターになっていた実の父親ライアン・オニールをモーゼ役にという話になったということです。(ちなみに、この原作小説「アディ・プレイ」、この映画のヒットの後、題名が「ペーパー・ムーン」と変更されたそうです。) ということで、テイタム・オニール初出演にしてキャリアハイの映画史に残る名作を、今回は紹介しました。 ところで、映画の中では親子かどうかわからないとなっている2人ですが、アゴどころか、顔全体がそっくりじゃないかよ!!!というツッコミを入れたのは私だけではないですよね。
2017.05.05
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「ヒトラーの審判 アイヒマン、最期の告白」Eichmann 2007年 イギリス・ハンガリー映画 監督 ロバート・ヤング 出演 トーマス・クレッチマン トロイ・ギャリティ フランカ・ポテンテ Gyaoの無料動画で観ました。 アドルフ・アイヒマンは、ナチス親衛隊中佐(最終階級)として、数百万人にもわたるユダヤ人をアウシュヴィッツに送る命令を下した男です。終戦時、一度は連合国軍に捕らえられながらも、身分を偽って逃げだし、アルゼンチンで15年にもわたり潜伏したのち、1960年に、イスラエル諜報機関(モサド)によって捕らえられ、裁判にかけられたのち絞首刑になりました。 イスラエル人のレス警部(トロイ・ギャリティ)と妻のヴェラ(フランカ・ポテンテ)は友人の結婚式に出席していました。そこでアルゼンチンに潜伏していた戦犯アドルフ・アイヒマン(トーマス・クレッチマン)が逮捕されたニュースを聞きます。 アイヒマンの尋問官としてレスが選ばれます。世界中からアイヒマンに関する情報を集めます。その情報をレスがまとめてアイヒマンに自白させることを促すのです。 録音機を部屋にセットしていよいよ尋問が始まります。アイヒマンは至って冷静でした。レスは集めた情報から、ひとつひとつアイヒマンに尋問していきます。 移送担当の責任者だったアイヒマンはホロコーストに関与したのは命令だったからと答えます。彼はヒトラーの命令を忠実にこなしただけで、殺害には関与してないと述べます。レスは他の戦犯の証言から関与していた事を認めさせようと尋問をしていきます。 レス警部がアイヒマンを尋問する映像が物語の本線です。もちろん、それだけでは画面に変化がなく、退屈な映画になってしまいますが、戦時中や潜伏中のアイヒマンの回想(妻や愛人との情事の様子含む)や、獄中の様子、レス警部の家庭の描写など、効果的に挿入され、見ごたえのある100分でした。 この映画が描き出したいテーマは2つあると思いました。 ひとつは、アイヒマンが残虐な殺人鬼ではなく、命令に従っただけの、普通の男に過ぎないということを描き出すことです。 尋問中、彼は「命令に従っただけだ。」を繰り返します。そして、彼が家族と楽しげに過ごす様子、離れている息子たちに手紙を書いている様子などが挿入されます。一方で、戦時中、部下に威圧的に接している様子や、囲っていた愛人(複数個所にいたらしい。)との高圧的な情事(ちょっと官能的です、注意)にふける場面など、彼が権力を手にして如何に増長していたかが映し出されます。 もちろん彼がアウシュヴィッツに送られたユダヤ人たちがどうなるのか知らずに、輸送の手配をしていたはずはなく、自分のしたことにより多くのユダヤ人たちがどうなるか理解はしていたと思います。しかし、彼は、特に深い信念を持っていたわけではなく、命令されただけだからという都合のいい合理化により、思考を停止させていただけの、ただの小男に過ぎないのです。 この映画は、そんな悲しい事実を映し出そうとしているのでは、と思いました。 もうひとつは、イスラエル政府が、ナチスの暴挙に対しすぐに報復に出ることなく、アイヒマンをきちんと尋問し裁判を行っていることにより、「目には目を」というレベルの低い手段には出ていないという大人な対応をしているという点です。 第2次世界大戦の事後処理は、ヨーロッパ戦線はニュルンベルク裁判、極東戦線は東京裁判で、連合国軍の主導できちんと行われました。しかし、それとは違い、直接迫害されていたユダヤ人、つまり、家族や親戚、友人などが理不尽に殺害されていたり、自分自身が収容所で迫害を受けていたりと、生々しい悲惨な体験をしている人々が、尋問をして証拠や自白を確認した上、公正な判断としての裁判を行ったという点で、このアイヒマン裁判は特筆すべきことだと思います。 裁判なんてもどかしいことせずにすぐに処刑しろ、と主張する、復讐心に燃え、感情が抑えきれないイスラエル国民たちの激しいデモが巻き起こり、尋問官であるレス警部や家族が嫌がらせを受ける場面も映し出されます。 しかし、公正な法の下に成り立ってる現代国家において、どんな凶悪犯罪者にも人権はあるという考え方は基本中の基本ですから、どこかの虚栄心の塊な独裁国家や道徳心のかけらもない悪事隠ぺいがまかり通っている未熟な大国とは違って、成熟した国家として国際的に認められたい、新興国イスラエルとしては、きちんとしているんだというところを、内外に宣伝する絶好の機会ととらえていたんでしょうね。 ところで、アイヒマン役のトーマス・クレッチマン(「戦場のピアニスト」の廃墟の中で暮らす主人公のピアニストを陰ながら助けるドイツ人将校をはじめ、ナチスもの映画にドイツ兵として多く出演しています。)の板についたナチス将校ぶりはさすがだと思いました。(苦悩しながらもまじめに尋問に取り組むレス警部はいまいちでしたけどね。) ちなみに、レス警部の奥さんヴェラ役の人は、ジェイソン・ボーンの彼女役の人ですよね。アゴでわかりました。(ザキヤマの娘さんの行く末が心配です。) 邦題に“ヒトラー”と入っていますが、ヒトラーは全く登場しません。(戦時中の回想シーンで、アイヒマンの背後にヒトラーの肖像画が映るのみです。)原題は「Eichmann」です。この日本では、アイヒマンはあまり有名ではないので、そのままだと、ナチスものだとわかってもらえないから、苦肉の策で“ヒトラー”と入れたみたいです。ご注意を。
2017.04.27
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「ジュピター 20XX」 ASTRONAUT: THE LAST PUSH 2012年 アメリカ映画 監督・脚本 エリック・ヘイデン このほど、NASAが地球外生命体に関する重大発表をするというニュースが流れました。「えっ、ついに発見されたか、エウロパ?タイタン?トリトン?それとも太陽系外か?」と思いっきり期待して見てみたら、「土星の衛星エンケラドスで、表面の氷の裂け目から噴出する水蒸気の中に、水素分子が発見され、氷の下の海の中に生命体がいる可能性が高まった。」という、喜んでいいのかどうか迷う、非常に中途半端な発表で、ちょっとがっかりしました。 以前、「エウロパ」という映画を紹介したときにも述べましたが、太陽家の外側を回る木星型惑星(木星・土星・天王星・海王星)の周りをまわる、巨大衛星たち(木星のエウロパやガニメデ、土星のタイタンや海王星のトリトンなど)の表面を覆う氷の下に海があるものが多く、そこには生命体が存在する可能性があるのです。 そんな中、また、変な映画を見つけてしまいました。GYAOのおすすめ無料動画で見つけ、SF大好き理系おじさんは、「きっとツッコミどころ満載だぞ。」と思い、観てみたわけです。 木星の衛星エウロパに海洋生物が生息している証拠写真が数多く発表され、モフィット社は独自の宇宙開発を進め、有人探査計画を実施します。2人の宇宙飛行士マイケルとネイサンは、世界中の注目を浴び、宇宙へと飛び立ちました。 地球帰還まで13年のミッションだが、地球を離れて2年、2人がコールドスリープ中、予期せぬ隕石との衝突により宇宙船が損傷してしまいます。先に目覚めたマイケルは非常用居住区に逃げ込みなんとか一命をとりとめますが、相棒のネイサンとともに、コールドスリープ室兼脱出ポッドを失ってしまいます。地球上の指令班はミッションの中止と地球への帰還を命じます。 しかし、地球到着までにかかる期間は3年間。たった独り、宇宙空間での孤独で静か過ぎる日々が始まるのです。 最近、宇宙に取り残され系の映画、多くないですか?アカデミー賞にノミネートされた「ゼロ・グラビティ」や「オデッセイ」「インターステラー」、インディペンデンド系で高い評価を受けている「月に囚われた男」など、科学考証もしっかりしていて、役者陣の演技もしっかりしていて(というか、ほかに出演者がいないから頑張るしかないんだけど。)、見ごたえのあるいい作品が多いのですが、残念ながら、流行に乗じただけの残念な作品が少なからずあるのもしょうがないのかなということですね。 金星でスイングバイして木星を目指す航路(木星と地球の間を回っている火星ではなく、地球よりも内側を回っている金星というところがミソね。)、ゆっくり回転して遠心力で疑似重力を生み出しながら飛ぶ宇宙船の姿、序盤で「おっ、なかなかやるなあ。」と思ったのですが、その後、次々と残念な描写が現れてきます。 微小隕石の衝突により、コールドスリープ装置のある降下カプセルが損傷して使えなくなるって、あまりにも無防備すぎないか?火星と木星の間の小惑星帯をどう通ろうと思っていったんだろう、とか、机も椅子もない3m四方ぐらいのあまりにも狭く殺風景な居住区、行程のほとんどをコールドスリープで過ごす予定だったにしても、あまりにも居住性が低すぎないか、とか、いったいどこに大量の食糧・水・酸素を備蓄しているのか、と思ってしまう、宇宙船の小ささ、そして、なんといっても狭い居住区に1人だけのまったく同じような映像が続く、画面の変化のなさ、低予算のため仕方がないところもあるとはいえ、ツッコミどころが満載で、とってもとってもとってもとっても退屈な映画です。 しかし、最大のツッコミどころは、「ジュピター 20XX」という邦題です。あえて結末を言ってしまって申し訳ないのですが、実はこの映画、目的地は木星の衛星エウロパですが、木星の近くに全く行かないで終わってしまうんですよ。地球から最初のスイングバイを行うために金星に向かう途中で事故にあってしまい、コールドスリープで過ごすはずが予定外に起こされてしまうことから始まり、ラストは再び地球近くまでやってきたところで映画は終わってしまうのです。“ジュピター”という題名は詐欺ですよね。木星の映像は全くないんですよ。 原題は、「ASTRONAUT: THE LAST PUSH」訳して「宇宙飛行士、最後の決断」というところでしょうか、ちゃんと映画をしっかり観てから邦題を考えてほしいですね。 ということで、映画のほぼ全編にわたって孤軍奮闘している無名の役者のいまいちな演技もその退屈さに拍車をかけていて、見どころと言えば、おそらくはCGで作られたであろう途中で少し挿入される、表面の雲の動きがリアルなで美しい、まじかで見た金星の映像だけ、という非常に残念なC級映画の紹介でした。
2017.04.23
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「ムーラン・ルージュ」 Moulin Rouge! 2001年 アメリカ映画 監督 バズ・ラーマン 出演 ニコール・キッドマン ユアン・マクレガー ジョン・レグイザモ ムーラン・ルージュと言えば、画家ロートレックが描いたポスターで有名な、19世紀末から20世紀初頭にかけてパリに実在したキャバレーです。ロートレックはこの店に入り浸り、この店に集う人々を題材にした作品を多く残しています。 そのムーラン・ルージュを舞台に、店のトップダンサーと作家志望の男の恋を描き、ゴールデングローブ賞の作品賞(ミュージカル・コメディ部門)・主演女優賞(もちろんニコール・キッドマン)・作曲賞を受賞し、米アカデミー賞でも衣装デザイン賞・美術賞を受賞(作品賞・主演女優賞初め6部門はノミネートのみ)するなど、数々受賞している、ミュージカル映画です。 1899年、作家を目指してパリのモンマルトルにやってきた青年クリスチャン(ユアン・マクレガー)は、画家ロートレック(ジョン・レグイザモ)らの劇団のショーの台本を担当することになり、ナイトクラブムーラン・ルージュへやってきます。 店の看板女優サティーン(ニコール・キッドマン)を一目見たクリスチャンは、恋に落ちてしまいます。 サティーンは、クリスチャンを傾きかけていた店を劇場に改造するためのパトロン候補のウースター公爵だと勘違いしてベッドに誘い込もうとしますが、詩を口ずさむ彼に本気で恋してしまいます。 クリスチャンが貧乏作家だと知っても、恋の炎は消えませんでした。作家と女優の関係を装いつつ愛し合う2人でしたが、ムーラン・ルージュのオーナーのジドラーにキスの現場を見られてしまいます。 何とか公爵のご機嫌を取りたいジドラーは、サティーンに、公爵のもとへ行くように命じるのです。 この映画の感想をネットで調べたら、「前半はいい感じで盛り上がっていたけど、後半失速してがっかりした。」といった感じのものが多くありました。僕も大いに同感です。 最初のショーの場面、クリスチャンがロートレックらの劇団と知り合うコミカルな場面、ショーの後クリスチャンがサティーと知り合うと同時に、公爵とブッキングしそうになるちょっと面白ハラハラな場面、などなど、前半は歌あり、踊りあり、笑いあり、豪華絢爛な舞台と衣装に包まれた、まさしくミュージカルって感じで、とっても楽しく観賞していました。 実はあらすじには描いていませんが、後半この映画悲劇になっていくんですね。当時としてはどうしようもない、ある事情(どんな事情かは一応秘密にしておきますが、よくあるお涙頂戴物の映画にあるやつです。「せかちゅう」とか。)から、クリスチャンとサティーの純愛は、悲劇に終わるのです。はっきり言って、「なんで???」と思いました。 元来、僕は不治の病(あっ、言っちゃった。まあ、いいか。)、つまり世の中のほぼすべての人が涙を誘われてしまう要素で、悲劇を組み立てるというのが、非常に安易に思われて、大っ嫌いなんですね。 せっかく楽しいコミカルな雰囲気で進んでいたいい感じのミュージカルなんだから、その雰囲気のまま、公爵をうまく出し抜いてコミカルなエンディングにしてほしかったと思ったんです。非常に残念です。結局アカデミー作品賞を取れなかったのは、そういうところでしょうかね。(ちなみに、作品賞を取ったのは、ゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞の「ビューティフル・マインド」です。まあ、しょうがないか。さらにちなみに、翌年はドラマの「戦場のピアニスト」を抑えて、ミュージカルの「シカゴ」が受賞しています。もしかして、バランスを取った?) ということで、楽しいミュージカルが、非常に残念でした。という話でした。 ところで、ロートレック役のジョン・レグイザモですが、子どもの頃の病気のため足に発達障害があり、異様に身長が低かったという、この実在の人物を演じるため、終始膝たちで演じていて(画面に映ってしまった足先はCGで消してあるということです。)、撮影終了後、しばらく足先の感覚がなく苦労したというお話です。さすがプロですね。彼の狂言回し的役割、とってもいい味を出していますよ。
2017.03.26
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「アナと雪の女王」 Frozen 2013年 アメリカ映画 監督 クリス・バック ジェニファー・リー 声の出演(日本版吹替) 神田沙也加 松たか子 「アナ雪」やっと観ました。もちろん、この前のフジ系の“地上波初ノーカット放送”です。 ディズニー映画として、空前の大ヒットを記録し、社会現象まで引き起こした、この映画、「どないなもんじゃい???」と思い、すかさず鑑賞させていただきました。 触れたものを凍らしたり、雪や氷を作る魔法の力を持って生まれたアレンデール王国の王女・エルサ(松たか子)は、8歳のときのある夜、妹のアナ(神田沙也加)と魔法で遊んでいました。不思議な魔法の遊びにはしゃぎすぎた妹を助けようとして、エルサは自分の力を制御できず、誤って魔法をアナの頭に当ててしまい、意識不明の状態にさせてしまいます。2人の両親である王と王妃は、トロールたちに救いを乞い、アナは回復するが、引き換えにエルサの魔法に関する記憶を失ってしまいます。 日増しに魔法の力が強くなっていくエルサは力を制御し世に知られぬよう城中の窓や門を閉めて部屋に閉じこもり、誰とも触れ合わず自分を抑えて生きることを強いられます。一方アナは、突然大好きな姉が自分を避けるようになったわけを知らぬまま、閉ざされた城の中で寂しく成長します。しかし、10年後、2人は両親を海難事故で亡くし、お互いだけが唯一の肉親となってしまうのでした。 3年後、成人したエルサは女王として即位することになり、閉ざされた門を開いて戴冠式が行われることになります。エルサの魔法はもはや自分の意思で抑えることができないほど強大なものになっていましたが、彼女はなんとか1日を乗り切ろうとします。 一方アナは、13年ぶりに外界と接触できる特別な1日に新たな出会いを夢見ていたところを、戴冠式の直前に、大勢招かれた招待客のうちの1人である隣国の王子ハンスと出会って恋に落ち、その日のうちに結婚の約束までしてしまいます。 戴冠式のパーティーでアナに婚約のことを告げられたエルサは、あまりにも早すぎる展開に2人の結婚に反対し、頭を冷やすようアナを説得しようとします。姉妹は口論になり、エルサは思わず人々の前で魔法を暴発させてしまいます。 自分の力を知られ、怪物呼ばわりされたエルサは王国から逃げだします。王国は、エルサが期せずして暴走させてしまった魔法により永遠の冬に閉ざされてしまいます。 ノースマウンテンにたどり着いたエルサはそこに魔法で氷の城を建て、自分を抑えつけるのをやめて独りで生きていく決意をするのでした。 で、素直に思ったのが、「何で大ヒットしたんだろう???」という疑問でした。 絵はきれいです。歌もとってもいいです。歌とアニメーションの動きがとても合っていて、見ごたえはあります。 しかし、主人公のアナは見ていて「こいつ大丈夫か???」と心底心配してしまうほど世間知らずな超箱入り娘だし、もう1人の主人公エルサはと言えば超いじけ虫の引きこもりだし、アナが一瞬で心奪われる自称王子ハンスはうさん臭さ満載だし、話は予想通りの展開の連続で、とってつけたようなハッピーエンドだし、と思いました。 特に、あの「Let It Go」って、「何もかも放り出して、ありのままに1人で生きる。」って意味だったんですね。ちょっとショックです。 「涙が止まりませんでした。」とか、「感動の連続でした。」とか、何を観て言っているんだろう、と思いました。 まあ、世間で評判になっているから、観ておかないと、という集団心理の積み重ねの結果ですかね。 でも、家族で楽しむにはちょうどいい映画、つまり、ディズニー映画の王道にはぴったりの映画、ということですな。 ところで、今世間で話題になっているエンディングの件ですが、たしかにMay J.がかわいそうというのはありましたが、視聴者が積極的に参加できるいい企画だと思いました。しかし、ところどころ挿入される、明らかに番宣のためにやらされているタレントたちの映像は、完全に興ざめで、いい企画に水ではなく熱湯を注いでいましたね。
2017.03.14
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「初恋」 2006年 日本映画 監督 塙幸成 出演 宮﨑あおい 小出恵介 藤村俊二 宮﨑将 公開時の宣伝文句、「三億円事件の犯人は女子高生だった。」、そして、その昭和最大の未解決事件を描いているのに全く似つかわしくない「初恋」という題名、非常に気になっていた映画でした。 実母が家を出てゆき、親類の家に預けられて育った高校生のみすず(宮﨑あおい)は孤独な少女でした。男に襲われそうになり警察の聴取を受けても家への連絡を拒んでいましたが、ショックを受けて不安定になっていたみすずは、音信不通だった兄・リョウ(宮﨑将)から手渡されたマッチに書かれている店、新宿のジャズ喫茶Bへと立ち寄ります。 店内には兄を含め6人の若者がいました。立ちつくすみすずに、彼らは“面接”と称して素性を聞き出そうとします。子ども扱いされてカッときたみすずは言い放ちます。 「大人になんかなりたくない」。そのひと言で彼女は“合格”し、リョウとは兄妹であると明かさないまま、“B”に入り浸ることとなるのです。 リョウは多数の女性たちと関係を持ってはヒモとなり、ユカは劇団で女優として活躍していたが実家やリョウとの関係に悩んでいました。テツとヤスはチンピラを暴行して金を脅し取り、ドラッグに明け暮れていました。タケシは小説家を目指し、大学生の岸(小出恵介)は仲間内では冷めた態度から“つまらない男”だと扱われていました。 ある日、みすずは補導されそうになったところを岸に救われます。Bの仲間たちは新宿でのデモに巻き込まれ、警官たちに暴行を受け負傷します。権力に対する怒りを内に秘めていた岸は、みすずをバイク屋の柏田(藤村俊二)に紹介して運転を教え、温めていた計画を打ち明けます。みすずの力が必要だと言ってくれた岸のために、彼女はその計画を了承するのです。 そして、1968年12月10日、白バイの警官に扮したみすずはトラブルに遭いながらも三億円の強奪に成功します。 “三億円事件”は、1968年12月10日、東京都府中市内で東芝府中社員のボーナス、約3億円を乗せた現金輸送車が、白バイに乗ったニセ警官に奪われた事件です。3億円という当時しては膨大な被害額(現代の価値に換算すると10億円にもなるという。)、犯行に使ったバイク(後でわかったことですが偽白バイだったようです。)や現金が入っていたジェラルミンケースなどかなりの物証が残っていたにもかかわらず、結局時効を迎えて迷宮入りとなり、、非常に世間で話題になった事件です。 あのあまりにも有名な実行犯のモンタージュ写真が捏造だという話もあり、この映画のように、真犯人は女性であるということは十分にあり得ること(もちろん体格や声の問題はありますが。)ですし、劇中の主人公と同じ名前の原作者の著作がこれ一作のみであること、その経歴などが全く不詳であることなど、このお話が真実ではないかとうわさされているそうです。 しかし、このお話のテーマは三億円事件の真実を告白することではなく、それを巡る、みすずと岸の、若さゆえのもどかしすぎる恋愛であることは明白で、だからこそ題名が「初恋」なんだなと理解しました。 でもそうなると、彼らの犯したことが”三億円事件”である必然はないわけで、あえてこの日本で一番有名な未解決事件を非常にリアルに描いてみせているところに、何かしらの真実があるのではないだろうか、と思ってしまうのは勘繰りすぎでしょうか。 まあ、“三億円事件”の真実はともかく、この映画の公開の前年、「NANA」「パッチギ!」でそれぞれブレイクした主演の2人の演技力が光る、名作であることは揺らぎないところでしょう。 ちなみに、みすずの兄リョウ役の宮﨑将(まさる)は、宮﨑あおいの実の兄です。
2017.02.24
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「クヒオ大佐」 2009年 日本映画 監督 吉田大八 出演 堺雅人 松雪泰子 満島ひかり 新井浩文 中村優子 児島一哉 内野聖陽 今を時めく堺雅人主演の、実在の結婚詐欺師をコメディタッチに描いた映画です。ちょっと前に夜中に地上波で放映されていたものを録画しておきました。 米軍特殊部隊のパイロット、ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐(堺雅人)は、父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の遠い親戚という華麗なる経歴の持ち主です。常に軍服を着ており、片言の日本語を話しますが、実は経歴はデタラメで、生粋の日本人の結婚詐欺師です。 弁当屋を切り盛りする、永野しのぶ(松雪泰子)もクヒオ大佐にすっかり騙され、献身的に大佐に尽くし、結婚を夢見ています。 自然科学館の学芸員として働く、浅岡春(満島ひかり)の前にもクヒオ大佐が現れます。クヒオ大佐は言葉巧みに近づき、春もクヒオ大佐のことが気になり始めます。 高級ホステスの須藤未知子(中村優子)にも近づいたクヒオ大佐は、お金持ちのような素振りをし、クラブに出入りするようになりました。 ある日、クヒオ大佐はしのぶに電話をしますが、電話に出たのは、弟の達也(新井浩文)でした。彼は、クヒオ大佐が詐欺師であることを見破り、貢いだお金を自分に渡すように脅します。 なんでしょうねえ、非常に中途半端な作品ですね。 コメディタッチで淡々と進んでいく話なんですが、クヒオと達也のやり取りはちょっと面白かったですが、松雪泰子・満島ひかりという日本映画界が誇る薄幸な女が異様に似合う五大演技派女優(クロサウルス選、あと3人は深津絵里・木村多江・池脇千鶴)の内の2人をターゲットの女性役に選んでいる時点で、コメディになり得ないはずだし、政府の高官役の内野聖陽(家康はまさにはまり役でしたね。)の存在意義が全く分からなかったし、春の同僚で元カレ役の児島一哉(アンジャッシュ)は笑わすのが本業のはずなのに、ただただ気持ち悪いだけだし(あんな男と付き合っている女の気が知れん。)、終盤クヒオのかわいそうな生い立ちが挿入されますが、気持ちを動かされるまでには至らないし、いったい、何が描きたかったのか全く分からない作品でしたね。 結局、わかったのは、堺雅人の常にほほえみを浮かべているかのように見える(アルカイック・スマイル?)優男ぶりが、結婚詐欺師役にはぴったりだということと、やっぱり、堺雅人(真田源二郎信繁)は、新井浩文(加藤清正)が苦手なんだなということぐらいですかね。 ということで、今を時めく堺雅人主演の映画、まあ、期待外れもあるんだなあ、というお話でした。 さあ、僕も「沈黙の艦隊」読んで、世界情勢を勉強しようっと。
2017.02.21
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「シャニダールの花」 2013年 日本映画 監督 石井岳龍 出演 綾野剛 黒木華 Yahooのおすすめ映画で観ました。 何故か女性の胸に咲く“シャニダール”と呼ばれる花、その花弁の成分から新薬を開発しようとする製薬会社は、女性たちに高額の契約金を支払い、研究所の施設で栽培しています。 製薬会社でシャニダールの研究をつづける植物学者の大瀧賢治(綾野剛)は、新たに赴任してきたセラピストの美月響子(黒木華)と出会います。 提供者のひとり田村ユリエは、大滝に好意を寄せていますが、大滝と響子の親密さに心を痛め、花の成長は思わしくありません。 菊島ミクは花が思うように成長せず、ノイローゼ気味でした。 新たに花のつぼみが見つかった少女立花ハルカは、人見知りなため、不安を抱えながら入所してきますが、響子とともに絵を描くことで次第に打ち解け、花は順調に成長していきます。 そんな中、響子の胸にシャニダールの芽が出てきます。謎の多い花の研究に疑問を感じ始めてきた大滝は、花が咲かないうちに切除したほうがよいと響子に伝えますが、響子は、花を咲かせて種が得られるまで育てたいと言います。 不思議なお話でした。 シャニダールの花はどこから来るのか、なぜ若い女性にしか咲かないのか、なぜ芽から直接花になるのか、なぜ女性の心の動きに花の成長が左右されるのか、花の芽生えた女性をどうやって見つけてくるのか、最新式の施設や膨大な研究費、女性たちに支払う超高額な契約金など、その膨大な資金はどこから来るのか、などなど、どんどん疑問が頭に浮かんできます。 観続けていくとその疑問が次々と解決されていくのだろうかと、淡々とスローテンポで流れる静かな時間に耐え、時々挿入される、意味不明なカットにも耐え、響子の胸に花が芽生えたり、研究所がダメになったり、予想通りな展開に納得しながら、最後まで観終え、「えっ、これで終わり????」と、多くの疑問が解決しないまま迎えてしまった、意味のよくわからないエンディングに、頭の中が?で満タンなままでした。 結局、意味や結末は自分で考えな的な、よく言えば芸術作品的な、風呂敷を広げ過ぎて収集がつけられなかった的な、なんとなく自然環境を破壊し続ける人類に対しての警告的なテーマを匂わせながら消化しきれなかった的な、不思議な作品でした。 まあ、最近僕のお気に入り女優の仲間入りしてきて、大河ドラマ「真田丸」では、結構早いうちにいなくなってしまった(真田源二郎信繁の最初の正室梅が早々に亡くなってしまうのは史実だからしょうがないんだけどね。)ので、非常に残念に思っていた黒木華ちゃんの魅力を十分に堪能できたので、僕的にはある意味満足できた作品でしたが、もっとお話を吟味してから作品を作ってほしかったなあ、と思ってしまいました。
2017.01.31
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「CHLOE / クロエ」 Chloe 2009年 アメリカ映画 監督 アトム・エゴヤン出演 アマンダ・セイフライド ジュリアン・ムーア リーアム・ニーソン あけましておめでとうございます。(もう1月も半ば、今更と思いますが、今年初めての投稿なので一応ね。) 2017年一発目の記事は、先日YOUTUBEで見つけて、これって、僕のお気に入り女優の1人、アマンダ・セイフライドが出てるやつだよなあ、と思い、どんな分野のものかも知らず、予備知識ほとんどなしで、つい観てしまった、この作品です。はっきり言って、お正月全く関係ないですが。 産婦人科医キャサリン(ジュリアン・ムーア)のは、大学教授の夫デヴィッド(リーアム・ニーソン)の誕生日のため、時間とお金をかけてサプライズ・パーティーの準備をしてきました。 当日、郊外の大きな自宅には多くの友人が集まり、主賓の帰りを待っていましたが、海外に出張していたデヴィッドは飛行機に乗り遅れ、深夜にならないと帰れないことがわかり、キャサリンの計画は台無しになってしまいました。 翌朝、帰宅していたデヴィッドの携帯をチェックしたキャサリンは、ツーショット写真付きの女子学生からのメールを見てしまいます。 夫の浮気を疑うキャサリンは、以前から医院の窓から見かけていて娼婦だと知っている女で、ホテルのトイレで偶然出会ったクロエ(アマンダ・セイフライド)に、夫を誘惑してその結果を自分に報告するように依頼します。 結論から申しますと、非常に腹が立ちました。キャサリンのクロエに対する態度、そして最後の仕打ち(もちろんそれは秘密です。)にです。 大学教授の夫を持つ、産婦人科医のキャサリンです。どう考えてもお金持ちですね。そして、クロエは自らの体を売って暮らす娼婦です。 夫とセックスレスになって久しいキャサリンは、夫の浮気を疑っていました。それを確かめるべくキャサリンのとった対策は、夫に直接正すんじゃなく、娼婦に誘惑させてみるという策でした。 そして、クロエはクロエで、キャサリンと知り合ったのは実は偶然ではなく、ある思いを成就するためにわざと近づいてきたのです。その思いは、娼婦という身からは想像できない、非常に純粋な思いなのですが、でもある意味非常識な思いなので、簡単には成就できないものなのです。(どんな思いなのかは一応秘密にしておきましょう。勘のいい人は気が付いたかもしれませんが。) キャサリンは、自ら夫に働きかけることなく、娼婦なら金を払えば体を張ってくれるだろう、どうせ卑しい仕事をしているのだから、という、いかにも金持ち女が発想しそうな方法で、夫の浮気心を確かめようとするのです。そして、クロエの純粋な思いに気づくことなく、そのくせ、欲求不満が堪っていたかのような行為(どんな行為かは一応秘密にしておきましょう。)に及びながらも、彼女の思いには応えることなく、悲惨な結末(もちろん秘密。)を招いてしまいます。 キャサリンのいかにも金持ち女らしい身勝手さが、クロエのある意味純粋な思いを踏みにじっただけではなく、クロエにとって、あまりにも悲惨な結末を招いているのだなと思うと、アマンダはお気に入りでジュリアン・ムーアは全く自分の好きなタイプからかけ離れているという僕の嗜好は脇に置いておいても、非常に腹の立つお話だなあ、と思ったわけです。 ということで、非常に腹が立ったという形で、感情を動かされたという意味では、それなりの名作なのかなあと思われる、アマンダ・セイフライドと、ジュリアン・ムーアが体を張って頑張っている映画を今回は紹介しました。 いろいろ思わせぶりな秘密を匂わせているので、この作品、観たくなったんじゃない?アマンダが非常に色っぽくていいですよ。ジュリアンの方は別に見たくなかったけど。
2017.01.15
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「ミラージュ」 MIRAGEMAN 2007年 チリ映画 監督 エルネスト・ディアス=エスピノーサ 主演 マルコ・ザロール ネットのおすすめ動画で観ました。なんとなくヒーローものなんだなと思い、予備知識ゼロで、まあ、暇つぶしになればという感じで観始めたんですが、中身の意外な重さに、思わず見入ってしまいました。 クラブの用心棒マルコ(マルコ・ザロール)は、強盗に襲われ、両親を惨殺された過去をもつ男でした。彼の唯一の家族、弟のチトはそのショックで心を閉ざし、現在入院療養中です。弟の治療費と生活費を稼ぐため、クラブのオーナーからの嫌がらせに耐えながら、毎日1人黙々とトレーニングを続けるマルコでした。 ある日、マルコは、日課のジョギング中に強盗団が押し入る現場に遭遇します。とっさに強盗のマスクを奪って顔を覆い、強盗団を撃退し、襲われていた女性を救い、そのまま顔を見せずにその場を立ち去ったのです。 次の日、ワイドショーでは『覆面ヒーロー、強盗を退治!』のニュースで大騒ぎでした。マルコが助けた女性は人気美人TVレポーター、マリアだったのです。 チトもニュースを見て大喜びし、覆面ヒーローのマネをして少しずつ心を開いていきます。その様子を見たマルコは、弟のために一大決断をするのです。 お手製の覆面をかぶり、“ミラージュマン”と名乗り、街に巣食う悪者たちと戦うことを決意するのです。 強盗に両親を殺され、精神を病んでしまった弟を抱えたマルコは、クラブの用心棒の仕事の傍ら、自宅で自作の器具を使い、黙々と体を鍛える日々を送っていました。そして、偶然強盗団を撃退し、そのニュース(それが兄だとはわかってはいませんが、)に弟が喜び、回復の兆しが見えてきたことから、正義のヒーローとして戦うことを志します。 しかし、彼は世紀の大富豪や、巨大軍事企業のオーナーではなく、手首から糸が出たり、傷がすぐに治ったり、金属を自在に操ったり、といった超能力があるわけでもありません。ただ単に独学で体を鍛えているだけのごく普通の一般人です。というか、どっちかというと、日々の生活にいっぱいいっぱいの、はっきり言って貧乏人です。 そして、その戦う相手も、超能力や超兵器を駆使したり、常識はずれの超犯罪を行うぶっちぎれた極悪人ではなく、普通の強盗やひったくり犯です。 だから、この物語は、ほかのヒーローもののような夢物語ではなく、非常に生活感にあふれ、地に足がついたリアルな物語なのです。 マルコは、へたくそな絵で、覆面をデザインし、ホームセンターで材料を探し、情報を集めるのに苦労(なんとあろうことかネットに電話番号を公開し、困った人からの情報を求めます。なんという無謀なことをと思ったのは私だけでしょうか。)し、上から目線で手助けしようとする金持ち女に騙されて落ち込んだりします。 しかし、彼がヒーローとして戦う目的は、金を儲けたいとか、有名になってちやほやされたいとか、女にもてたいとか、とってつけたような正義感に目覚めたとか、そんなものではありません。彼は、心を病んでしまっている弟に元気になってもらいたい、ただそれだけなのです。 ということで、そのリアル感、ドラマ感に、思わず感動してしまう、全く無名なチリ映画に、思わず出会ってしまった、というお話でした。 ところで、マルコ役のマルコ・ザロールという人、もちろんチリ人の俳優さんなので全く知らなかったわけですが、格闘家としても活躍している、チリでは有名なアクションスターのようですね。彼の身のこなし、なかなか半端ねえですよ。すごいです。
2016.12.23
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「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」 Mortdecai 2015年 アメリカ映画監督 デヴィッド・コープ出演 ジョニー・デップ グウィネス・パルトロー ユアン・マクレガー ポール・ベタニー ジェフ・ゴールドブラム すいません、またジョニデ映画です。口ヒゲがトレードマークのとぼけた紳士に扮したジョニデ(例によってキャラをかぶっています。)が印象的で、公開時TVCMなどで盛んに盛んに宣伝していた映画です。 イギリスの貴族であるチャーリー・モルデカイ(ジョニー・デップ)は、裏社会でインチキ美術商を営んでいますが、実はイギリス政府に対し800万ポンドの借金を抱え破産寸前でした。 彼の愛する妻ジョアンナ(グウィネス・パルトロー)と、モルデカイ家に仕える忠実な従者ジョック(ポール・ベタニー)は、邸宅の美術品を売るなどして何とか破産を免れようとしていましたが、チャーリーは家の状況には無関心で、最近生やし始めた口ヒゲばかりを気にしていました。 そんなある日、女性絵画修復士が何者かに殺害され、ゴヤの名画が盗まれるという事件が発生します。絵画を盗んだ男が国際テロリストだと判明したため、アラステア・マートランド警部補(ユアン・マクレガー)は、旧知の仲であり、美術品の知識があり裏社会にも顔が利くチャーリーに絵画の捜索を依頼します。一方、マートランドから絵画の話を聞き出したジョアンナは、借金を返済するため独自に絵画の捜索を始めます。 チャーリーはゴヤ専門の美術商から情報を聞き出し、自動車修復士のスピノザのところに向かいますが、エミルに命を狙われて襲われ、ジョックやマートランドに助けられます。 絵画修復士の家に向かったチャーリーは、彼女が撮影した写真に写っていた絵画を見て、ゴヤの幻の名画『ウェリントン公爵夫人』だと判断します。『ウェリントン公爵夫人』は第二次世界大戦中にゲーリングの手に渡った後、彼の莫大な財産と共に姿を消しており、絵画の裏地にはスイス銀行の秘密口座の番号が書かれていたのです。 しかし、その直後、チャーリーはロシアン・マフィアに拉致されてしまいます。 同じ頃、ジョアンナは絵画修復士と恋仲だったアッシャーボロードン公爵(ジェフ・ゴールドブラム)と面会し、“バーニー”という人物が『ウェリントン公爵夫人』を所持していることを突き止めます。 コメディタッチの推理物ということで、結構僕の好きなジャンルなんですが、正直言いまして、あんまりおもしろくなかったんですよ。 キャプテン・ジャック・スパロウまたはマッドハッターまたはウィリー・ウォンカことジョニー・デップ、アイアンマンの超優秀な秘書ペッパーことグウィネス・パルトロー、オビ・ワン・ケノビことユアン・マクレガーと、主要キャストにはスターを配し、「ドッグヴィル」「ビューティフル・マインド」など多くの作品で存在感を発揮している名脇役ポール・ベタニー、「ジュラシック・パーク」シリーズや「インディペンス・デイ」では主役を張っているジェフ・ゴールドブラムと、脇には確かな名優も起用している映画なのですが、なぜか面白くないのです。 チャーリーの口ヒゲ(日本版の宣伝文句に“チョビ髭が世界を救う”とありましたが、ちょびヒゲというのはチャップリンや“カトちゃんぺっ”のようなヒゲのことで、このチャーリーのヒゲは“口ヒゲ”ですよね。)をめぐる夫妻の掛け合いは、「さっさとそれよ!!!」と思わずTVの前で突っ込んでしまうほど、ちょっと面白いのですが、モルデカイ家の忠実な従者ジョックのドジっぷりとタフさも非常に面白かったのですが、そのほかの部分は………。 どうやら、脚本や演出に問題があるのではないでしょうか。しかし、このデヴィッド・コープという監督、「ジュラシック・パーク」シリーズ、「ミッション・インポッシブル」「天使と悪魔」「スパイダーマン」「宇宙戦争」「スネーク・アイズ」「M.I.B.3」などなど、数々のヒット作の脚本を書いている方なんですよ。 ところが、彼の監督作はというと、ヒット作は全くありません。(数は少ないのですが)以前、このブログでも、いまいちだったと紹介した同じくジョニデ主演の「シークレットウインドウ」(監督・脚本)という作品もありました。 しかも、今回は脚本は別の無名の人(弟子かな?)に任せているんですね。 ということで、豪華キャストを配しているにもかかわらず、興行的にも全く振るわず、批評家たちにも酷評されている、残念な作品を紹介しました。 この作品、公開時、日本では盛んに盛んに宣伝されていましたよね。本国での不振を、日本公開で何とか挽回しようと必死だったということですかね。なるほど、異常に盛んに宣伝している作品には気をつけろということですね。
2016.12.13
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「ジュラシック・ワールド」 Jurassic World 2015年 アメリカ映画 監督 コリン・トレボロウ 出演 クリス・プラット プライス・ダラス・ハワード 「ジュラシック・ワールド」ついに観ました。以前からこのブログを見ていてくださる方々はもちろんご存知の通り、僕は恐竜大好きで、「ジュラシック・パーク」3部作も大好きです。だから、この映画観たくて観たくてたまりませんでした。でも、絶対DVDを買おうと思っていたので、レンタルが旧作になった時も我慢して、DVDが安くなるのをじっと待っていたのです。そして、昨日ついにDVDを購入し、即観賞しました。 イスラ・ヌブラル島で起こった惨劇から22年後、インジェン社を買収したマスラニ社は、故ジョン・ハモンドが夢見たテーマパーク「ジュラシック・ワールド」を実現させ、今や世界中から毎日2万人の旅行者が訪れる人気の観光施設として成功を収めていました。 パークの運営責任者のクレア(プライス・ダラス・ハワード)は、訪ねてきた甥のザックとグレイの世話をアシスタントのザラに任せ、オーナーのマスラニと遺伝子操作によって生み出された新種のハイブリッド恐竜インドミナス・レックスについて話し合っていました。 インジェン社の警備部門長であるホスキンスはヴェロキラプトル(ラプトル)の調教師オーウェン(クリス・プラット)と会い、ラプトルを兵器として軍事利用する話を持ちかけるも一蹴されます。その直後、アクシデントにより飼育員の1人がラプトル4姉妹(ブルー、デルタ、エコー、チャーリー)が暮らす飼育エリアに落下してしまいます。オーウェンは自ら飼育エリアに入ってラプトル達に「待て」と命令して止め、辛くも飼育員を救い出します。それを見ていたホスキンスは改めてラプトルが人間の支配下に置けると確信します。 クレアはオーウェンのバンガローを訪れ、インドミナスの防壁をチェックしてほしい旨を伝えます。2人は以前にデートしたことのある仲だったが、性格が合わず付き合うことなく別れた仲でした。 オーウェンはクレアの要請を受け入れ、インドミナスの飼育エリアに向かいます。しかし、いるはずのインドミナスは姿を消しており、生体反応も確認されない上、内部の防壁に真新しい爪痕が残されていました。 クレアは直ちに恐竜が脱走したとの報をパークのコントロール・ルームに連絡し、オーウェンは2人の職員と飼育エリアに入り防壁の爪痕を調べます。しかし、インドミナスは最初から外へ逃げ出してはおらず、自らの生体反応を隠蔽し待ち伏せしていました。 クレアはコントロール・ルームからの連絡でようやくインドミナスが脱走していないことを知りますが、時すでに遅く、インドミナスは飼育エリア内にいたオーウェンらを襲撃、2人の職員を捕食し本当に脱走してしまうのでした。 はっきり言って、「ジュラシック・パーク」第1作の焼き直しでしたが、恐竜大好きな僕は、そんなことは気にせず、とっても楽しんで観入ってしまいました。 今回の見所は3つ、まずはなんと言っても本作の一番の目玉、遺伝子操作によって生まれた最強最悪のモンスター、インドミナス・レックスです。ティラノサウルス・レックスの遺伝子をベースに、ヴェロキラプトルやテリジノサウルスなど5種の恐竜、コウイカやアマガエルなどの遺伝子を組み込んだという、キメラ恐竜で、T-レックス並の巨体で、ラプトル並の知能を持ち、テリジノサウルス並の腕力を発揮し、保護色などの特殊能力も兼ね備えたスーパーハイブリッド恐竜なのです。もう、こんなモンスターを作り出しておいて、ストーリー展開上、こいつが逃げ出して大パニックになることが必然ではないですか。 2つ目は、白亜紀の海の生態系の頂点だったモササウルスの登場です。推定体長12.5mから18mで、T-レックスさえ凌ぐその体格で、一説には白亜紀最強ではないかと言われる海のモンスターの復元された姿、非常に観たいと思っていたので、パーク内の人口ラグーンでの“モササウルスえさやりショー”のド迫力に感涙物の大大大感動でした。 ちなみにモササウルスは厳密にいうと恐竜ではなく、分類上は有隣目(トカゲ目ともいう)に含まれる、海洋生活に特化したトカゲの仲間です。 そして3つ目は、その知性を利用したラプトル軍団の組織化です。ヴェロキラプトルを含むドロマエオサウルス科は非常に知能が高かったという説があり、前3作でもその知性の高さを発揮している場面がたびたび出てきていたので、この第4作では人の支持を理解して動くように調教されたラプトル軍団が、絶対出て来るだろうなあ、と思っていたらその通りだったのでうれしかったです。 あ、そうそう、うれしかったと言えば、「3」に続いて登場している翼竜、今回はプテラノドンに加えてディモルフォドンも登場していますが、その描写で、改善点が見られたところです。 「3」の紹介記事で指摘させていただいた点、飛行能力を得るために徹底した軽量化をしているプテラノドンが人間をぶら下げて飛べるわけがない、という点です。 本作では、インドミナスに破壊された翼竜舎(バードケージ?)から逃げ出した翼竜たちが取り残された観光客たちを襲う場面(ヒッチコックの「鳥」のオマージュ?)があるのですが、その場面で、人の肩をつかんだプテラノドンが、ことごとくうまく飛べていない描写でした。「3」を観た研究者とかに指摘されたのかな?USJのアトラクションにも誰か指摘してくれないかなあ。 ただ、ちょっと残念だったのが、恐竜の羽毛に関する描写が全くなかったことです。 最近の研究では、ティラノサウルスやヴェロキラプトルなどの獣脚類や、プテラノドンなどの翼竜には羽毛があったというのが定説になってきています。 しかし、残念ながら、この映画シリーズが始まった1993年当時、恐竜の羽毛については、まだまだ証拠も少なく定説ではありませんでした。そのため、第1作では、T-レックスやラプトルは羽毛のない姿で描かれてしまい、物語の整合性のため、その後の映画もそのままの姿で描かれなければならなくなってしまったと推測されます。非常に残念です。 ということで、遺伝子操作された新種のモンスターが逃げ出し、大暴れし、パニックになり、ヒーローがラプトル軍団を率いて対抗し、そして………。という予想通りの展開・結末でしたが、相変わらず、いい人と子どもたちは助かり、悪い人ばかりが犠牲になるというお決まりのパターンで、シリーズを通した「自然をなめたら行かんぜよ。」というテーマを継承していた、大大人気シリーズの最新作を、今回は紹介しました。
2016.11.23
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「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」 Locke 2013年 イギリス映画 監督 スティーヴン・ナイト 主演 トム・ハーディ さて、いつもの無名映画紹介コーナーと行きましょう。 「画面に映るのはただ1人、交わされる言葉は電話のみ……」と、パッケージに書いてありました。どういうこと?とってもとっても気になって借りてきてしまいました。 夜、仕事を終えて建築現場を後にし、愛車に乗って帰宅の途に就いた建設会社のエリート社員、アイヴァン・ロック(トム・ハーディ)、彼は、一大建設プロジェクトの着工を翌朝に控え、今晩は家に帰って、愛する妻子とともにサッカーをTV観戦するはずでした。 しかし、かつて一夜の過ちで関係を持ち、妊娠した女性ベッサンから、破水をして病院に搬送され、いまにも赤ん坊が生まれそうとの緊急連絡が入ります。 アイヴァンは大切な家庭や仕事を棒に振って病院へ向かう決心をするのです。 いやあ、驚きました。謳い文句はその通りだったのです。全編、車を運転するトム・ハーディの映像のみ、時折角度を変えたり、俯瞰映像になったり、車外の風景(夜だから基本暗くてよく見えない。)に切り替わったりして、変化を入れていますが、基本、トム・ハーディのアップあるいは上半身のみ(終始車を運転しているので、当たり前と言えば当たり前。)、ともすれば退屈してしまいそうな映像が続くわけですが、それが観続けられてしまうから不思議です。 アイヴァンは、結構大きな建設会社の現場監督で、結構仕事ができる男らしく、冒頭にその建築現場がちらと映る、高層ビルの現場監督を任されているらしいです。翌日、一番大事な基礎のコンクリートを打つ工事の指揮を執る予定だったのでしょう。そして、この晩は、ひいきのサッカーチ-ムの試合を家族でTV観戦する約束をしていて、家では2人の息子と妻がユニホームを着こんで待っているのです。 そこへ、予期せぬ1本の電話、かつて酔った勢いでたった1度だけ関係を持ってしまった女性から、今から2人の子どもを産むという知らせです。 まじめで責任感の強い(自己中ですが)男なのでしょう、とにかく顔だけは出さなければ、と思ったようです。この夜の予定はおそらくダメになってしまいますが、後で謝ればいいだろう、明日の仕事も最初からは間に合わないかもしれませんが、途中からなら行けるだろう、そんな自己中心的で楽観的な考えでいたのかもしれません。 電話(安心してくださいハンズフリーです。)で、明日の仕事をとりあえず任せなければいけない部下に指示を出しつつ、妻や息子に事情を説明しつつ、知らせを聞いてかけてきた上司に言い訳をしつつ、彼は不倫相手のいるロンドンの病院に向かって運転を続けます。 しかし、だんだん雲行きが怪しくなっていきます。考えたら当たり前ですが、彼の自己中的楽観的判断が通るわけがないのです。はじめは自信満々で話している彼の表情がだんだん曇っていき、しまいには涙目になっていきます。(まあ、想像はつくと思いますが、結局彼がどうなったかは秘密にしておきましょう。) こういったドラマを彼の表情と電話での会話のみで見せていくのです。だんだん結末が気になって引き込まれて行ってしまいました。これはアイデアと脚本の妙ですね。そして、主演のトム・ハーディの巧みな演技ですね。 彼って、「インセプション」で、夢の中で他人に化けターゲットを騙す“偽装師”イームスを演じていた彼ですよね。そして、「ダークナイト ライジング」のメイン悪役や、バイオレンス系アクション映画なのにアカデミー作品賞にノミネートされた注目作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の主演、レオナルド・ディカプリオがアカデミー主演男優賞を初受賞した「レヴェナント 蘇えりし者」で助演男優賞にノミネートされた敵役、などなど、最近非常に注目されている存在です。 ということで、最近注目の演技派俳優の見事な独り芝居を思いがけず楽しんでしまいました、というお話でした。 これはやっぱり、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観ないといかんなあ。
2016.11.08
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「ミクロキッズ」 Honey, I Shrunk the Kids 1989年 アメリカ映画監督 ジョー・ジョンストン主演 リック・モラニス 最近忙しくてちょっと疲れ気味なので、軽く楽しめるコメディが観たいと思い、この映画のDVDを借りてきました。 以前、「借りぐらしのアリエッティ」の紹介の記事の中で、ちらっと紹介しましたね。変な科学者の“物体縮小化装置”により、子どもたちが小さくなってしまい、自宅の裏庭で大冒険をするという、ディズニー製作のファミリー映画です。 公開当時、本国アメリカはもちろん、この日本でも大ヒットし、大変話題になった作品で、僕もかつて、ビデオテープ(DVDではない)を借りてきて観た覚えがあります。数十年ぶりに観賞しました。 科学者のウェイン・サリンスキー(リック・モラニス)は、長年自宅で“物体縮小化装置”の研究に励んでいました。しかし、実験は失敗続きでした。大学でのプレゼンでも、専門家たちの笑い者にされてしまっていました。 そのプレゼンのあったある土曜日、サリンスキー家の隣のトンプソン一家は釣りキャンプに行く準備をしていました。トンプソン家の次男ロンがバッティング練習していたボールが、“物体縮小化装置”のある部屋のガラスを突き破って装置を直撃してしまいます。 装置は暴走し始め、部屋の中にあったソファと椅子を縮小化した後、ガラスを割った事を謝りに向かったトンプソン家の兄弟ラスとロン、事情を知って一緒に部屋に向かったサリンスキー家の姉弟ニックとエミーの4人も縮小してしまいます。 散々なプレゼンに怒り心頭で帰宅したウェインは、装置を破壊してしまいます。散乱した部品と一緒にゴミ袋に入れられ、庭先のゴミ捨て場に置かれてしまった子どもたちは、父に助けを求めるため、家を目指してジャングルと化したサリンスキー家の芝生の中庭の冒険を余儀なくされてしまうのでした。 やっぱり面白かったですね。以前にも観た作品でしたが、心の底から楽しめました。子どもたちは6mm(推定)に縮んでしまいました。その彼らから見た手入れの行き届いていない伸び放題の芝生の庭はまるでジャングルです。そして、見た目10mほどの距離ですが、助けてくれるはずの父親がいる家は遥か彼方なのです。 アリやサソリと戦ったり、スプリンクラーの洪水から避難したり、落ちていた巨大なクリームサンドで腹ごしらえし、夜を過ごすのはレゴブロックの穴の中です。 そして、中盤で子どもたちを小さくしてしまい、ゴミ袋に入れてほかってしまったことに気づいたウェインは、見るからに滑稽な方法で見つけ出そうとします。考えてみれば理にかなっている方法で、彼はいたって真面目(そうです、彼はいたって真面目なキャラなんですね、今回も。)なのですが、見た目ははっきり言って異常なんですね。子どもたちが肉眼では見つけづらいほど小さくなってしまった。たったそれだけのアイデアが、様々な面白い場面を生んでいるんですね。 結局面白映画を作れるかどうかは、アイデア次第なんですね。 ということで、30年近く昔の作品ですが、やっぱり面白いものは面白いんだなあ、ということを再確認させられた作品でした。
2016.11.07
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「一命」 2011年 日本映画 監督 三池崇史 出演 市川海老蔵 瑛太 満島ひかり 役所広司 竹中直人 青木崇高 波岡一喜 今はまっているマンガの1つに、成田美名子先生の「花よりも花の如く」があります。 成田美名子先生は、「あいつ」「ミキ&ユーティ」(今のファンの人にはわからないでしょうね。「エイリアン通り」「CIPHER」ならわかるかな?)の頃からのファンで、連載作をずーっと追って、単行本を購読しています。 現在連載中の「花よりも花の如く」の主人公、榊原憲人(正しい読みは“のりと”なのですが、周りの人々は“けんと”と呼んでいます。)は、能楽師です。日本の伝統芸能である能の世界とそれをめぐる人々のドラマを描いています。 前作「NATURAL」の脇役榊原西門(“サイモン”と読みます。この兄弟、父方の実家が神社、母方が能楽師という家なのですが、なぜか名前は外国風です。)が憲人の弟ということで、その番外編的な始まり方(「花よりも花の如く」の第1話は短編で、「NATURAL」の最終巻に入っています。)から、続きで読み始めました。はっきり言って、能の世界って、今までの僕の人生の中で全く接点がなく、全くの無知だったのですが、成田先生独特の巧みなドラマの作り方にはまってしまって、ずーっと楽しく読み続けています。(いまだに能の世界は全く知らないんですけどね。) その中で、主人公の能楽師榊原憲人のもとに、TVドラマの話が来ます。能楽師の役なので本物の能楽師に、ということで出演依頼が来るわけですが、同じ芸能の世界に生きる者ですが、TVドラマなど全く門外漢の自分のところになぜ?と憲人が思っていると、プロデューサーが、一本のDVDを持ってきます。それが仲代達也主演の「切腹」という映画です。話によると、殺陣に真剣を使っていて、その迫力が半端ないというのです。つまり、このドラマの能楽師にも本物の迫力がほしいということなのでしょう。ということで憲人は説得されてドラマに出演することになります。(その撮影の様子から、出来上がったドラマまで、マンガの中でしっかり描かれています。) その半端ない迫力の真剣の殺陣の映画「切腹」、観たいなあと思っていたら、三池崇史監督、市川海老蔵主演でリメイクされたというではありませんか、ということで、さっそく観てみました。 江戸時代初頭、大名の御家取り潰しが相次ぎ、生活に困った浪人たちの間で“狂言切腹”というものが流行していました。 井伊家の江戸屋敷に津雲半四郎(市川海老蔵)と名乗る浪人が、切腹を願い出てきます。家老・斎藤勘解由(役所広司)は、数ヶ月前にも同じように訪ねてきた若浪人・千々岩求女(瑛太)の、狂言切腹の顛末を語り始めます。武士の命である刀を竹光に変え、恥も外聞もなく切腹を願い出てきた若浪人の無様な最期を……。 真剣ではありませんでしたが(というか、絶対にありえません。詳しくは秘密。)、クライマックスでの海老蔵の殺陣、見事でした。ということで、オリジナルとは話が変わっているわけなのですが、それはそれで納得のお話なので、感動しました。この海老蔵の殺陣はもちろん、その得意の眼力を生かした演技見事でした。 そして、もう1人の主演、瑛太も、ド迫力(はっきり言って非常にグロテスクです。血が苦手な人は気持ち悪くなるかも。)の切腹シーン、すごいです。そして彼のまじめでやさしい好青年ぶり、観た女性はみんな心を奪われてしまうでしょうね。 主役2人の迫真の演技もすごいのですが、それ以上に巧な演技を見せてくれるのが、幼馴染の千々岩求女の妻となる津雲半四郎の娘、美穂を演じる満島ひかりです。貧困のどん底にいながら家事に内職に頑張り、病気になりながらも、夫を心から愛しているのがひしひしと伝わってきて、思わず目頭が熱くなってきます。とりわけ、終盤のまんじゅうを食べる画面(詳しくは秘密)、すごいと思いました。 この子、「悪人」の時は、わがままで空気の読めない殺される女の役で、確かフォルダー5にいた子だよなあ程度で、あんまり気に留めていなかったんですが、最近その巧みな演技力が注目されてきていますね。(弟はちょっとチャラいけどね。) 後、役所広司は主役ではないのであまり目立ってはいませんでしたが、面倒ごとを煙たがっているのを控えめに演じていましたし、求女に切腹を強要する意地悪な井伊家家臣を演じる青木崇高も悪役に徹していてよかったですね。 考えてみれば「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に匹敵する救いのない悲劇なんですが、役者陣の巧みな演技で、涙なしではいられない、見ごたえのあるドラマが形作られていました。 ただ、井伊家の家臣で家老の副官的な役、竹中直人は単なるイエスマンで、彼のアクの強さを全く発揮できていなかったし、青木と一緒に求女に意地悪する井伊家家臣役の浪岡一喜も、ちょっとおとなしめの演技で、いつものクレイジーさが全くなく、非常に残念でした。 ということで、真剣の迫力は見られませんでしたが、別の意味で、見ごたえのある作品を鑑賞することができ、それはそれで満足でした、というお話でした。 で、オリジナルの方の「切腹」がやっぱり観たくなってきてしてしまいました。レンタル屋で探してみなければ。
2016.10.26
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「長州ファイブ」 2006年 日本映画 監督 五十嵐匠出演 松田龍平 北村有起哉 山下徹大 寺島進 泉谷しげる 榎木孝明 ネットのおすすめ無料動画にありました。皆さんご存知なように、幕末大好きな僕としては、とっても観たかった映画ですので、思わずしっかり観てしまいました。 幕末、尊王攘夷の嵐が吹き荒れ、生麦事件が起きたり、長州が外国船に砲撃したり、といった中、藩命を受けた井上聞多(のちの外部卿・馨)・伊藤俊輔(後の初代総理・博文)ら長州の5人の若者が、イギリスへ極秘留学(もちろん外国船に密航で)します。真に攘夷を行うためには、敵について知らなければいけない。そのためには実際に行くのが一番手っ取り早いということからです。その長州五傑の極秘留学の顛末を描いた物語です。 尊王攘夷の気運が高まる文久2年(1862年)12月、品川御殿山に建設中のイギリス公使館の焼き討ちを果たした一党の中には、高杉晋作(寺島進)の指揮の下、長州の若き志士である山尾庸三(松田龍平)、志道(井上)聞多(北村有起哉)、伊藤俊輔等がいました。数日後、彼らは佐久間象山(泉谷しげる)の薫陶を受け、イギリスを始めとした西欧列強から日本を守る為にはむしろ“敵”である彼らから多くを学ぶべきだと悟るに至り、イギリスへ渡る事を決意します。 海外渡航は幕府により厳固に禁じられていましたが、長州藩主・毛利敬親(榎木孝明)から黙認の言質と援助を取りつけ、航海術に長けた野村弥吉(山下徹大)、噂を聞きつけた遠藤謹助を仲間に加えた五人は密航へ向けて動き出します。 前代未聞のこの目的を遂げる為には「“侍”であることすら捨てる」と覚悟を決めて髷を切り落とした五人は、文久3年(1863年)5月、死罪覚悟でイギリスの帆船チェルスウィック号に乗り込むのでした。 右は本物です。 幕末、尊王攘夷の嵐が舞っている中、その急先鋒である長州藩が、イギリス公使館焼き討ちや関門海峡での外国船砲撃という攘夷決行、馬関戦争と、武力による攘夷を盛んに実行している最中、5人の若者を外国留学に送り出していたという事実は知っていました。こんなところ、まさしく知性と狂気が同居する男吉田松陰およびその思想を一番色濃く受け継ぐ弟子高杉晋作がリードしている(表向きのリーダーは桂小五郎ですが、実は高杉なんですね。)長州藩だなあ、と思っていましたが、その詳細は実はあまりよく知りませんでした。 だから、この映画とってもとっても観たかったんです。 キャスト的に山尾役の松田龍平(桃太郎のお兄さんですね。)が主演なのは承知していたのですが、前半は海外留学実現のために奮闘する志道聞多(当時は志道家に養子になっていましたのでこの名ですが、後の外務卿井上馨です。)役の北村有起哉(「八重の桜」で会津藩士秋月悌次郎を熱く演じていて、非常に存在感を発揮していました。)を中心に話は進んでいくので、ちょっと意外に思っていました。 留学して1年もたたないうちに、馬関戦争の後始末のために志道と伊藤が帰国(これは史実だからしょうがないのですが)してからは、残りの3人もそれぞれの勉強のためもありバラバラになってしまい、山尾以外はほとんど描かれなくなり、史実にあったのかは定かではない聾唖のイギリス人女性との恋(聾唖の方々との交流があったのは事実で、山尾は帰国後明治政府の要職についてからは工業振興とともに、聾唖学校の設立に尽力しています。)が中心になっていき、ちょっと呆気にとられてしまいました。 主演にイケメンを持ってきた理由はこれか、とある意味納得はしましたが、幕末大好きな僕的には、帰国後の志道・伊藤のその後も含め、最後まで5人を描いてほしかったですね。特に、後半全く描かれなかった帰国組の2人は、馬関戦争の後始末や長州戦争などなど、結構ドラマチックな活躍をしているはずです。(特に志道聞多はその間死線をくぐっています。「おーい!竜馬」にちらっと出てくる彼は、顔中傷跡だらけです。) ということで、なかなかよくできた映画でしたが、ちょっと期待していたものと違っていてがっかりしたというお話でした。 ところで、高杉晋作に寺島進って、年齢的に無理ありすぎません?イギリス公使館焼き討ちの時、彼は23歳のはずだけど。 まあ、女好きで有名な伊藤俊輔がイギリスで娼館に行っている場面にはちょっと笑っちゃったけどね。(そのため彼を主人公にしての大河ドラマが作られないという噂です。初代総理大臣なのに。)
2016.10.12
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「月に囚われた男」 MOON 2009年 イギリス映画監督 ダンカン・ジョーンズ出演 サム・ロックウェル ケヴィン・スペイシー(声のみ) さて、恒例の無名映画紹介コーナーです。と言っても、ちょっと今回は趣が違います。というのも、この映画、一般的知名度は低いかもしれませんが、一部コアなファンの間では結構知名度の高い作品だと思うからです。英アカデミー賞や英インディペンデント映画賞、サターン賞など、いろいろと受賞・ノミネートを受けている名作です。僕自身もこの映画の存在は知っていて、米アカデミー賞にノミネートされたマット・デイモン主演の「オデッセイ」が評判になった時、何か同じような映画(月と火星の違いはありますけど)があったぞ、と思っていたものです。 近未来、核燃料生産企業“ルナ産業”に勤めるサム・ベル(サム・ロックウェル)は、“ヘリウム3”採掘のため、1人で月の裏側にある掘削基地へと3年間派遣されています。話し相手は人工知能ロボット・ガーティ(声・ケヴィン・スペイシー)だけの孤独な環境でしたが、地球にいる妻と幼い娘からのメッセージを励みに耐えていました。 ところが、あと2週間で任期を終え地球に帰還できる、ある日、サムは掘削地での作業中に移動車もろとも落石事故にあってしまいます。 基地の医務室で意識を取り戻したサムは、事故当時の記憶がなく、ガーティや本部の対応に不審を抱き、ガーティの制止を振り払って、事故現場を見に戻ります。 するとそこには、負傷したまま放置されているもう1人の自分がいたのです。 いやあ、すごい面白かったです。 事故の後、基地内の医務室で目を覚ましたサムを観て、「あれ、どうやって回収したんだろう?1人しかいないのに。もしかして………。」と思っていたら、やっぱりでした。そう、医務室で目を覚ました方のサムはクローンだったんです。 「こら!物語の重要な秘密を書くんじゃねえよ!」と思っている皆さん、安心してください。はいてますよ。(もう古い?)じゃなくて、大丈夫ですよ。この物語は、このサムがもう1人の自分を見つけるところまでが起承転結の起ですから。もっと重要などんでん返しが最後に待っていますから。 そう来るとは思いませんでしたね。非常に面白いと思ってしまいました。ほぼ基地内部の映像ばかりで、出演者も非常に少なく(ほぼサム・ロックウェル1人)、非常に低予算なインディペンデンド映画でも、アイデア次第で見ごたえのある映画が作れるんだという見本のようですね。「クローバーフィールド」や「エイリアン」を観た時の衝撃なようなものがありましたね。 ということで、あまり期待していませんでしたが、予想に反して非常に感動(衝撃?)してしまったというお話でした。 ところで、月面上の基地にもかかわらず、地球上と同じように行動しているサムの描写が少し気になりましたが、作業車を降りたサムが飛び跳ねている描写もあったので、きっと基地内では重力が地球上と同じようになるような装置が設置してあるんだろうと、好意的に解釈しておきましょう。 ちなみに、ヘリウム3とは、通常の陽子2中性子2のヘリウム(ヘリウム4ともいう)に対し、中性子が1しかない同位体で、その分質量が軽く、核融合が比較的容易だということで、未来のエネルギー源として、今非常に注目されているものです。地球に比べ、月には非常に多く存在しているといわれています。やるなあ、デヴィット・ボウイの息子(この映画の監督です。)
2016.09.22
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「俺たちは天使じゃない」 We’re No Angels 1989年 アメリカ映画監督 ニール・ジョーダン出演 ロバート・デ・ニーロ ショーン・ペン デミ・ムーア ジョン・C・ライリー DVDを借りてきました。まずは何となく軽いコメディが観たいなあ、と思い、この作品を借りてきました。確か、ロバート・デ・ニーロと若いショーン・ペンが脱獄囚で神父に化けて逃げる話だったよなあ、と、かなり昔に観た記憶があったからです。 カナダ国境近くの州刑務所に服役していたネッド(ロバート・デ・ニーロ)とジム(ショーン・ペン)は、殺人犯ボビーの死刑執行に立ち会った際に、彼の脱獄計画に巻き込まれ、心ならずも刑務所を脱走し、国境沿いの小さな町に逃げ込みます。 国境を越えるために身分を神父と偽った2人は、折から2人の神父が来るはずだった教会に送り込まれてしまい、そのまま修道院での生活が始まってしまいます。 隙をみては国境越えの機会をうかがう2人ですが、結局はうまくゆかず、そのうちにネッドは、町に住む聾唖の娘を抱えたモリー(デミ・ムーア)という美しい女性に夢中になってゆきます。 やがて脱獄犯を追う刑務所長の一行が、町にやって来ました。 前に観たのはずいぶん前でしたので、はっきり言って、ほぼ忘れていましたね。で、はっきり言って、正直、あんまり笑えませんでした。脱獄囚が牧師に化けて、そのギャップからいろいろと笑えるというコメディだったはずですが、テンポがよくないのでしょうか、いかにもチンピラそうなデ・ニーロ(この辺の演技力はさすがです。)がいちいち変顔でリアクションするのがわざとらしく感じるのがいけないのでしょうか、この人どうして刑務所に入っていたのと思ってしまうほどの好青年なショーン・ペンと、仕方なく体を売って娘を育てている割には全くアバズレていないデミ・ムーアの違和感が際立ってしまっているのでしょうか、とにかくあまり笑えませんでした。 と言っても、見るに堪えない駄作というわけでもなく、なんとなくほのぼのとしたちょっといい話に仕上がっていて、ちょっと気持ちがサバサバしているときに観るとなんとなく気持ちがほっこりする作品だなあ、と思いました。 思うに、この作品の雰囲気を作っているのは、ちょっと天然気味な好青年を演じている若きショーン・ペンではないでしょうか。いったいこの好青年が何の罪で刑務所に入っていたのか、なんとなく人に流されてしまいがちなほど朴訥でいい人っぽい青年だから、周りのよくない仲間にそそのかされてしまったのかなあ、と思いますね。この時のショーン・ペンはまだまだ新人で、「アイ・アム・サム」や「ミスティック・リバー」など、数々の受賞をするのはまだ先の話ですが、やっぱり演技派の役者さんは若いころから違うのだな、と思わせますね。 ちなみに、デミ・ムーアも、出世作「ゴースト/ニューヨークの幻」の公開はこの翌年ですし、「シカゴ」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるジョン・C・ライリーが、ショーン・ペンと仲良くなる朴訥な若い修行僧を好演していますが、彼らもショーン・ペン同様、まだまだ全く無名の新人です。だから、この映画の制作時にすでにスターだったのはデ・ニーロだけです。 ということで、今回は1人の大スターと将来有望な新人たちによる、ほのぼのとした秀作を観ましたよ、というお話でした。 ところで、1955年公開でハンフリー・ボガード主演の同名映画のリメイクということなんですが、お話はかなり変わっているということなので、全く別物と考えた方がよさそうですよ。
2016.09.21
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「LUCY / ルーシー」 LUCY 2014年 フランス映画監督 リュック・ベンソン出演 スカーレット・ヨハンソン モーガン・フリーマン 今回実はもう1枚DVDを借りてきました。ちょっと前に話題になっていて、気になっていたこのSFアクションです。 ごく普通の平凡な女性ルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は、訪れた台北のホテルでマフィアの闇取引に巻き込まれ、下腹部にCPH4という新種の麻薬が入った袋を埋め込まれてしまいます。この麻薬は通常10%までしか活用できない人間の脳の潜在能力を極限まで高めることができる恐ろしいものでした。 運び屋として体内の麻薬と共に移動するよう命じられたルーシーだったが、麻薬を狙うマフィアに捕まってしまいます。ルーシーは拷問を受け、その拍子に体内の袋が破れ、彼女の脳は麻薬の力で覚醒し、超人的な力を発揮してその場から脱出します。 ルーシーの脳はますます覚醒し脅威的な力を発揮し始めます。 彼女はマフィアの事務所を襲撃し、ボスのMr.チャンを負傷させ、残りのCPH4を手に入れるため、運び屋の行く先の情報を手にし、フランスのデル・リオ刑事に協力を要請し、運び屋を逮捕させ、Mr.チャンの仲間も倒して残りの薬も手に入れます。 そして脳科学の権威であるノーマン博士(モーガン・フリーマン)に会いにいくのです。 いやあ、なかなかなトンデモなお話でしたね。 確かに、人類は脳の機能の10%しか使っていない、というお話は僕も聞いたことがあります。アインシュタインが言ったとか、言わなかったとか。 しかし、この結構多くの人が信じている説は、はっきり言ってデマだということが最近の研究ではっきりしているそうです。 実際には、脳は部分部分で司っている機能が決まっているので、一時に使われる部分が10%ぐらいだというのが真相だそうです。物を見るときは視力を司る部分、物事を覚えるときは記憶を司る部分という感じで、行動が違えば脳の使われる部位が違うということなんですね。 ましてや,脳の使われていない部分を使いだすと、頭の回転が速くなるとか、記憶容量が増えるとか、運動神経がよくなるとか、勘が鋭くなるとか、いった程度の覚醒ではなく、この映画のようにハンパない超能力を使えるなんて、あまりにもトンデモなさ過ぎて、有り得ないですね。いったい人類の能力についてどれだけ傲り高ぶりまくっているのかっていうことですよね。高々ちょっと脳みそが大きくなっただけの一哺乳類に過ぎないということをしっかり自覚してほしいですね。 ということで、あまりにもぶっ飛びすぎているお話で、もう最後の展開(どんな結末かは一応秘密にしておきますが。)なんて全くついていけませんでしたが、非常に速いテンポでどんどんお話が進んでいくのと、スカーレット・ヨハンソンの色っぽさで、結構楽しめてしまったというお話でした。余計なことを考えず、頭をおバカにして楽しめばいい映画なのかな、と思います。
2016.08.19
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「肉」 WE ARE WHAT WE ARE 2013年 アメリカ映画監督 ジム・ミックル 「東京喰種(トーキョーグール)」が実写映画化されるそうですね。実は最近はまっています。(「亜人」とともに)だから非常に気になります。どんなキャストで、どこまで描くのか(お話も描写も)、ちゃんと原作の良さを生かして作ってくれるのか、などなど。話によると、主役金木研に窪田正孝、ヒロイン(?)トーカちゃんに清水富美加、これだけは決まっていて発表されているようですね。ちょっと年齢高めに設定かな?窪田君はともかく、トーカちゃんは違うでしょう。もっと見るからにツンデレな子にしなきゃいかんでしょ。堀北真希とか、橋本愛とか。清水富美加、リゼ役ならぴったりなのに。見た目は清楚でおとなしく実は……、というのが似合いそうだよね。 で、今回の無名作品紹介コーナーは、そんな「東京喰種(トーキョーグール)」をほうふつとさせる邦題のこの作品です。ただ、“18禁”だったけど、ホラーコーナーではなくサスペンスコーナーにあったのがちょっと気になって借りてきました。 ニューヨーク州の小さな町で暮らすパーカー一家は、厳格な父親・フランクの元、家族は静かに暮らしていました。しかし、街を襲った嵐による不慮の事故で、母親のエマが亡くなってしまいます。 悲しみに暮れる中、美しい姉妹・アイリスとローズは、母親の代わりに一家を支えなくてはならなくなりました。それは、幼い弟のロリーの面倒を見ることと、先祖代々一家に伝わる恐ろしい儀式を引き継ぐことでした。 嵐のせいで、木々はなぎ倒され、川は氾濫し、地元の医師・バローは奇妙な骨片を発見します。それは、パーカー家が抱えるおぞましい秘密へと続く手掛かりだったのです。 物語はゆっくりじっくり静かに進行していきます。一家の秘密に関する手がかりを少しずつ散りばめながら。そのあまりにもゆっくりな進行に若干イライラしながら。なるほど、確かにホラーじゃあないわ。「東京喰種(トーキョーグール)」のようなスプラッタな展開を期待してみている人には拍子抜けかもしれません。 しかし、中盤、姉妹が初めて恐ろしい儀式を経験してから、バロー医師が発見した骨片の謎を探り始めてからは、展開は加速していき、そして最後のスプラッタな結末(そう来るとはちょっと意外だったのでびっくりしました。)を迎えます。 ネットでこの映画に関する記事をちょっと調べてみたら、いろいろと批判的な意見を述べている方々もおられましたが、僕的には、なかなかやるなあ、そう来るかあ、とちょっと感心してしまいました。 ただ残念なのは、あまりにも直接過ぎる「肉」という邦題ですね。もっとおしゃれな題名はなかったのでしょうか。原題をそのまま訳しても、物語のオチがわかってしまう感じなので、変えざるを得なかったのでしょうけど、しかし、せっかく映画の前半で一生懸命一家の秘密を隠しているのに、あまりにもその秘密を暴露してしまっているのも考え物かなあ、と思うんですね。まあ、あまりにも内容を知らずに観てしまうとショックが大きすぎてしまうのかもしれないので、ちょっとその内容を感じさせるようなものがいいのかもしれませんが、ちょっとあまりにもデリカシーがなさすぎる感じですよね。(だって、僕ら世代にとって、「肉」って、ついつい額に描いて遊んでしまうものだから。) ということで、主役の美少女姉妹がなかなか魅力的なのも効果的な、無名だけどなかなか楽しめたホラーサスペンスの佳作を今回は紹介しました。 もちろん、ラストの展開はなかなかショッキングですので、そういうのに弱い方は観ない方がいいですよ。まあ、“18禁”ですので、家庭で視聴の場合も守った方がいいと思いますよ。お子さんの将来のために。
2016.08.16
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「アメリカン・スナイパー」 American Sniper 2014年 アメリカ映画監督 クリント・イーストウッド出演 ブラッドリー・クーパー シエナ・ミラー 今日は終戦記念日です。で、戦争映画について書かねばと思い、この映画のDVDを借りてきました。イラク戦争に4回も従軍し、160人以上の敵を殺害し、アメリカでは英雄視されているという、実在の米軍狙撃手を描いた作品です。 瓦礫だらけの町を、米海兵隊の戦車が地響きを立てながら随伴歩兵と共に進撃していきます。その後方の建物の屋上ではネイビー・シールズのスナイパーであるクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)がスナイパーライフルを手に掃討作戦の様子をじっと見守っていました。 そんな中、海兵隊の進路上に不審な親子を発見したカイルは、母親が子どもに手榴弾を手渡すのを確認し、上官に指示を仰ぐがはっきりとした答えが返ってきません。隣の海兵隊員は「間違ったら軍事刑務所行きだぞ」と忠告しますが、カイルは子どもに照準を合わせ、引き金に指をかけます。 銃声と共に時代は遡り、カイルの幼少期へと戻ります。テキサス州に生まれ、厳格な父親に狩猟を教わりながら育ったカイルは、ある時、いじめられていた弟を暴カで守ります。父親から「お前は弱い羊達を守る番犬になれ、狼にはなるな」と教わります。 時は流れ、カウボーイに憧れロデオに明け暮れる青年カイルは、1998年のアメリカ大使館爆破事件をTVで見、海軍に志願します。 30歳という年齢ながら厳しい選抜訓練を突破して特殊部隊シールズに配属され、私生活でもバーで出会ったタヤ(シエナ・ミラー)という女性と交際を始めます。 アメリカ同時多発テロ事件を契機に戦争が始まり、カイルもタヤとの結婚式の場で戦地への派遣が告げられるのでした。 この映画、アメリカで物議をかもしているそうですね、好戦か反戦か。 原作はクリス・カイルの自伝です。父親に「番犬になれ。」と育てられ、狙撃手としてたぐいまれなる才能を発揮して英雄となった男の、自らの人生を誇らしげに描いた物語が原作です。 しかし、あの「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」「グラン・トリノ」を作った、巨匠イーストウッド監督です。 これは、わざとどちらともとれるように描いているんだなと思いました。 でも、やっぱり、イーストウッドです。反戦に決まっています。 冒頭の手榴弾を持つ子どもを撃とうかどうか迷う場面、実はこれはクリスがイラクに派遣されて初めての標的として、後で同じ場面が描かれ、彼は親子ともども狙撃し、味方の部隊を守っています。また後の場面では、自分が狙撃した兵士の迫撃砲を手にした子どもを、スコープを覗きながら、「打つな!、捨てろ!」とつぶやく場面が出てきます。(結果的に子どもは迫撃砲を捨てますので、クリスも観客もホッとします。)こういう場面を印象的に強調していること、アメリカに帰ってきたクリスが、心ここにあらずな感じなのを心配したり、また戦地へ行こうとする夫を必死に止めようとしていたりする妻タヤを何度も描いていること、そして、映画の製作が始まってから起こった事件のため、急きょ脚本を書き換えたという衝撃的な結末(実話なので、知っている人は知っていると思いますが、あえてどんな結末かは秘密にしておきます。)。 これらのことから、やっぱり僕は反戦映画だと思っています。 ということで、イラク戦争を淡々とリアルに描き出した、巨匠の名作を今回は紹介しました。 この色々と物議をかもしている作品をあえて作品賞に選ばなかった米アカデミー協会に賛辞を贈りたいと思います。 ところで、主演のブラッドリー・クーパーって、「ハング・オーバー」で観たときはスマートなイケメンだと思っていたんだけど、見事にマッチョな兵士に変身しています。聞くところによると、18kgも増量したそうですね、この映画のために。すごいですね。
2016.08.15
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