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2026.02.01
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カテゴリ: 報徳記を読む
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二宮翁夜話巻の5


天保4年同7年、両度の凶歳は7年がもっともはなはだしかった。
早春から引き続いて、季候が不順で梅雨から土用になるまで降る続き、気候は寒冷で、冷たい雨、曇天のみで、晴日はまれであった。
晴れるかと思えば曇り、曇ると思えば雨が降る、
私は土用前から、これを心配して注意していたが、土用にさしかかって空の気色が何となく秋めいていて、草木に触れる風も、何となく秋風めいていた。
その折よそから、新茄子が到来したのを、糠味噌につけて食べたが、自然秋茄子の味がしあt。
これによって意を決して、その夕方から、凶歳の用意に心を配って、人々を諭して、その用意をさせて、その夜徹夜して書状を作って諸方に使を発して、凶歳の用意をすぐに行うよう実行させた。
その方法は空地はもちろん、木綿(もめん)の生育した畑をつぶし、荒地や廃地を起して、蕎麦(そば)・大根・カブラナ・ニンジンなどを、十分に蒔きつけ粟(あわ)・稗(ひえ)大豆などすべて食料になる物を耕作培養に力を尽させ、また穀物の売物がある時は、何ものに限らず、皆これを買い入れ、すでに借り入れの抵当がなく貸金の証文を抵当に入れて、金を借用したり、この飢饉の用意を行うよう諸方に通知した。
その通知をしたうち厚く信じてよく行ったのは、谷田部・茂木(もてぎ)の領邑なり、
この通知を得るや、その使いの帰りと同道して、郡奉行自らが馬に鞭を打って来た。
そして尊徳先生に具体の方法を質問して、急いで帰って郡奉行・代官役など、属官を率いて、村里に臨んで懇々と説諭して、まず木綿畑をつぶし、荒地を起こし廃地を挙げ、食料となる蕎麦や大根の類をいたるところ蒔き付けた。
寺の庭までも説諭して蕎麦・大根を蒔かせたという。
下野国真岡近郷は、真岡木綿ができる土地であるから、木綿畑がもっとも多い。
その木綿畑をつぶして、蕎麦に蒔き替えるようにと命令したのを愚民はことの外に嘆く者があり、また苦情を鳴らす者があった。
そのため愚民に明らにするため、所々に一畝(うね)ずつ、もっとも出来のよい木綿畑を残しておいたが、綿の実一つも結ぶことがなく、秋になって初めて私が説いたことを信じたと聞いた。
愚民の諭しがたいことにはほとんど困却したものだ。
また秋田を刈り取った干田に、大麦を手のまわるだけ多く蒔かせ、畑に蒔いた菜種の苗を、田に移し植えて、食料の助けにした。
凶歳の時は油断なく、手配りして食物を多く作り出さなければならない。
これが私が飢饉を救った方法の大略である。

二宮翁夜話巻の5

【9】翁曰く、
天保4年同7年、両度の凶歳7年尤(もつと)も甚し、
早春より引続き、季候不順にして梅雨(ばいう)より土用(どよう)に降り続き、季候寒冷にして、陰雨(いんう)曇天のみ、晴日稀(まれ)なり、
晴(はれ)ると思へば曇り、曇ると思へば雨降る。
予土用前より、之を憂ひ心を用ひしに、土用に差し掛り空の気色(けしき)何となく秋めき、草木に触るゝ風も、何となく秋風めきたり、
折節他より、新茄子(なす)到来せるを、糠味噌(ぬかみそ)に付けて食せしに、自然秋茄子(なす)の味あり、
是に依つて意を決し、其の夕(ゆふ)より、凶歳の用意に心を配り、人々を諭して、其の用意を為さしめ、其の夜終夜書状を作りて諸方に使を発して、凶歳の用意一途に尽力したり、
其の方法は明き地空地は勿論、木綿(もめん)の生ひ立ちたる畑を潰し、荒地廃地を起して、蕎麦・大根・蕪菁菜(かぶらな)胡蘿葡(にんじん)等を、十分に蒔き付けさせ粟・稗・大豆等惣(すべ)て食料になるべき物の耕作培養精細を尽させ、又穀物の売物ある時は、何品(なにしな)に限らず、皆之を買入れ、既に借入れの抵当なく貸金の証文を抵当に入れて、金を借用したり、
此の飢饉の用意を、諸方に通知したる内、厚く信じて能く取行ひたるは、谷田部・茂木(もてぎ)領邑なり、
此の通知を得るや、其の使と同道にて、郡奉行自ら馬に鞭打つて来りて、其の方法を問ひ、急ぎ帰りて郡奉行(こほりぶぎやう)代官役等、属官を率いて、村里に臨み懇々説諭して、先づ木綿畑を潰し、荒地を起し廃地を挙げて食料になるべき蕎麦大根の類を蒔き付けたる事夥(おびただ)しく、堂寺の庭迄も説諭して蕎麦大根を蒔かせたりと云へり。
下野国(しもつけのくに)真岡近郷は、真岡木綿の出る土地なれば、木綿畑尤も多し、
其の木綿畑を潰して、蕎麦を蒔き替ふるを愚民殊(こと)の外歎く者あり、
又苦情を鳴らす者あり、
仍(よ)つて愚民明らめのため、所々に一畝(せ)づゝ、尤も出来方の宜敷(よろし)き木綿畑を残し置きたるに、綿実(わたのみ)一つも結ばず、秋に至つて初めて予が説を信じたりと聞けり。
愚民の諭し難きには殆(ほと)んど困却せり。
又秋田を刈り取りたる干田(かんでん)に、大麦を手の廻る丈(た)け多く蒔かせ、夫より畑に蒔きたる菜種の苗を、田に移し植ゑて、食料の助(たすけ)にせり、
凶歳の時は油断なく、手配りして食物を多く作り出すべし。
是れ予が飢饉を救ひし方法の大略なり。





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最終更新日  2026.02.01 00:00:11


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