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2026.03.25
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カテゴリ: 内村鑑三
新井奥邃(おうすい)という人

林竹二先生と森信三先生が別々の文脈で新井奥邃という人に触れられ、深い敬愛を示されている。

「新井奥邃
(1846-1922)

 明治のキリスト教伝道師にしてトマス・レイク・ハリスの弟子。隠者。

 仙台藩士の家に生まれ、藩校養賢堂に学ぶ。のちに江戸の昌平黌に留学するも戊辰戦争に従軍。さらに榎本武揚の幕府海軍に入り函館まで転戦。同地ではじめてロシア正教を知る。維新後は捕縛を恐れて友人宅にかくまわれていたが、この潜伏期間中にキリスト教信仰を深めている。やがて森有礼に見出され、1871年にアメリカのハリス教団に送り込まれる。教団ではおもにハリスの秘書として原稿を整理し、印刷出版に従事している。

 1875年、ハリスとともにサンタローザに移住してさらなる信仰労働生活を送る。
 1899年、実に28年余の教団生活ののちに日本に帰還。ほぼ無一文という身の上であったため、友人知人宅を転々とする。
 1903年、巣鴨に私塾「謙和舎」を開き、伝道生活に入る。名誉欲など微塵もない人柄であり、一枚の写真も肖像画も残さぬまま隠棲し、1922年、巣鴨の謙和舎にて死去。享年77歳。



とある。

いわゆる、キリスト教徒にして隠者である。

しかも明治を代表する人物に深い霊的影響を与えた人物である。

林竹二先生 は「田中正造と新井奥邃」の論文で谷中村の闘いの中で田中正造がいかに新井奥邃という人との出会いで救われたかを詳述している。

「久々にて新井奥邃氏を訪うて治す。

厄介とまる。

安眠す。

ほとんど深山に寝たるごとし。

清風静かに、身辺和らかに神心清きを感ず。」

「安眠す」に田中正造の幼子が母のもとで安らかであるような気持ちまで感得できる。

「新井奥邃氏と話す。



ただ何事か心清まりて高尚にすすむを覚ゆ。

これ神のめぐみのみ。

神は物をさして教えることなし。

すべてを育するのみ。」

田中正造の闘いの一生を考える時、この人と会うことに思いをいたす。



「全国的な遊歴をして、漁師や農民などあらゆる職種と階層の人々の声に耳を傾けてみたけれども、結局自分というものが、根本的に名利の念を断たなければ、いかほど民衆の中に身を投じてみても、人生の根本真理は得られぬということが分かってきたのです。そこで主人公は、ついに意を決して比叡山の洞窟にこもることになるのです。

 この主人公にはモデルがあるかとよく聞かれますが、強いてお答えするとすれば、わたくし自身がこの世でお目にかかる機会のなかった、明治以降最深の隠者というべき「新井奥邃先生」と、今一人は先ほど申した西晋一郎先生でありまして、卓れた学者でありながら、「現代の隠者」と申し上げるべき幽深な風格の方でした。

 奥邃先生については、没後50年の近頃になって、一部の具眼の人々の間に知る人が出来かけているようですが、田中正造がその晩年、最も深く尊敬していた方でありまして、正造が晩年キリスト信者になったのも、この方の感化影響と申してよいのであります。

 新井奥邃という名を初めて知ったのは、今から六十年以前のことでありますが、山川丙三郎先生のダンテの「神曲」の名訳の巻頭についていた序文こそ、実は新井奥邃先生の「語録」の一部でありまして、「日本にも一人の隠者がいる、その名を“新井奥邃”という」ことが、深く心に刻まれたのであります。

 爾来六十余年後の今日まで、それが私の心中に消えずに生きているのであります。その後古本屋巡りをする際には、何とぞこの人の著述を見つけたいものだと、探し求めたものでしたが、見つからなかったのであります。

 それゆえキリスト教関係の人に逢うごとに、いつも「新井奥邃という方についてご存知ないでしょうか」とお尋ねしたものでしたが、知っている方には出逢わなかったのであります。ところが京大の大学院に入った頃だったと思います。」

「夫れ生命は知るべくして説くべからず。

纔に之れを説けば真と違ふ。

又生は感ずべくして知るべからず。

之れを期するは私智なり。無我と反す」


田中隆裕先生の訳

「そもそも生命というものは知るべきものであって、人に説くべきではない。

わずかであってもこれを説くならば真理から離れていくものである。

また生は感じるべきものであり、頭で理解しようとしてはならない。

頭で理解しようとするのは、私欲があるからである。

これは無我と反することである」

横田南嶺 生命は説くべからず





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最終更新日  2026.03.25 09:50:32


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