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「伊藤七郎平翁伝」鷲山恭平撰 その37
◎勤勉貯蓄に係る講話(承前) 遠江 伊藤七郎平〔「報徳」第28号13~15ページ〕
天皇陛下にありましても我国の田畑山林作物の 能 耻 をかかぬ様にしたいと思召すことである。父母祖先が思ふ処も亦子々孫々家内繁栄して富有ならしめんと云ふに外ならざることであります。 斯様 の訳でありますから、其の御恩を報ゆるに其のお好みなさる処に応じて其の職を 力 むるが吾々の義務であります。先生が常に云はれました興国安民の法も之れに外ならざることで則ち国を開くとは原野を開拓し水利を導き民屋を新築する等之を興国の基であります。衰国を復興するの道は、荒蕪を開き道路を修理し 施家 を起こし貧民を撫育する 杯 が肝要であります。又我が遠州の如き貧国を 富 すにはせ 瘠地 を改良し物産を繁殖し惰農を誡め、力農を奨励し、 奢侈 を押へ倹約を務め負債を償却し貯蓄を行ふ等の義を専ら務むる処であります。 凡 て人々には又分限と云ふものがありまして一様には参らぬ。従つて 其 仕方 を 違 ひますけれど 其 分 に応じてすればよいのです。 畢竟 する処、各自 其 職業に勉強をなし道を研究して智識を開き推譲を行なひ家内 睦間敷 貧富の者和合して 争訟 のなき様、風俗矯正し、詐偽止み、或は人と約束を違ふる等なき様にするが己れの本分で、遠州報徳社の取る所つまり此の如き道を勉むるのであります。諸君にお勧め申すも 茲 でありまして皆様 其 分 に応じて彼の神徳皇徳に報恩する為め 其 業務を勉強し余力を以て 草靴 なり縄なりを 拵 へ、日に二厘三厘を積み、又節倹を行ひ分に応じて有余を蓄積し此内を以て田畑を開墾し山林を育てて以て非常の備とし子孫に譲り、或は貧民を救助し又は公共の用に寄附をしたりするのです。之れを本社では分度法と申しますが此の如くすれば自然 富有 となることでありますから 何卒 一人より二人、二人より三人四人と 団合 し結社をして協心其職に勉むる様にしたきものであります。左すれば即ち一村の富みで一村の富みは一郡の富み延ひて一国我皇国の富となることであります。 仮 令ひ村長が数千円の貯へある方だとて一村の富みだといふことは出来ぬ。又郡長様が数万円の財産家だとて一郡の栄へだと云ふことは出来ぬ。 所謂 己人の富みですから此の如き事は衆人一致合同して一村一郡延ひて皇国の富みと云ふ 様 にしたきことであります。 先程 述べました三徳に報ゆるには此の方法を以て国を富ますと云ふが報徳の道であります。若し報徳の道を思はずして勝手気侭に私欲に迷ふたり職に怠り奢侈に流れたなれば其身に災害を及ぼするは勿論、一家子孫の滅亡ともなる訳で実に自ら戒ねばならぬ。務むべきは報徳の良道であります。報徳は実業以て 勉 むるのでありまして、即ち日々働き精を 出 し勤倹して以て財を積みて天地人の恩徳を忘却せざる誠心の証として 差出 まして則ち神仏へ供する賽銭の如き者であります。之れを本社では基本財産とするのであります。我が報徳社も現在社員は州立社員二百三十八名各地村社員四千六百七十三名で町村社数は百八十一社あります。 其 内 には僅かに七八名位で一社に成て居るものもあれば、或は数十名の結社もありますが、先づ此社に 這入 て居る人々は挙てと云ふ訳にも参りませんが、概して活計に 困 むと云ふこともなく公租の延滞することもなく、多くは多少の貯蓄もして居ることであります。御本府は町村に農会あり又郡に府に秩序立ち誠に農業に結構なることでありますから、どうか 今 ま述ました此の如き方法を立て之れ又農会立の如く結社あらんことを希望致します。
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