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2026.05.27
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カテゴリ: 内村鑑三

内村第3信

小石川上富坂町 内村鑑三ヨリ       

 親愛なるフランク〔宮部金吾〕

君の東京留学〔宮部は卒業と同時に、開拓使から植物学研究のため東京大学へ留学を命じられた〕に大きな可能性があるとの短いたより、うれしく読んだ。君と共に喜ぶ。神は今日までたえず僕らの生涯を導いて下さったが、今度も君に、君の志望をとげることをゆるしたもうた。僕は神に感謝した。君も感謝すべきだ。われわれの肉体と霊魂とを神のみ手にゆだねようではないか。そうすれば失敗することはないだろう。自分勝手に名や富や成功を得ようとせず、すべてをわれらの神のみ手にゆだねようではないか。「たゆまないでいると、時が来れば、刈り取るであろう」〔カラテア書6.9〕から。われわれは今日までに、すでに友人のある者が、自分自身で名誉を得ようとして大失敗したのを見て来た。「低い兄弟は、自分が高くされたことを喜びなさい。富んでいる者は、自分が低くされたことを喜ぶがよい」〔ヤコブ書1.9〕と聖ヤコブは教えている。ああ!神がかくまで豊かに君を恵みたまうとは、君にとり、君のご両親に取り、君のご家族にとり、僕にとり、また君のまことの友人一同にとり、何たる喜びであろう。君が喜ぶとき、僕は君と共によろこぶ。当然である。

しかし兄弟よ、君は喜ぶだけでなく、僕が泣く時、僕と共に泣いてくれなくてはいけない。僕の家庭の面倒は日に日に厄介なことになっていく。ああ!叔父とその子供たちとが、僕が彼らに食わせたり着せたりできるというので、辛い労働をのがれて気ままに暮らそうと、僕の狭い家に押しかけて来るのを見るのは、僕には実におそろしい光景だ。僕の出発の近づいたこと、父の事業の失敗、すでに満員の狭い家にさらに他人(病人-目下は静かにしているが-とその子供ら)が押し入って来たことなど、皆、僕の家庭をすざまじい、おそろしい、不愉快な場所にしてしまった。食事はすすまず、頭はみだれ、いやな光景をさけるため、僕はなつかしい自分のホームを出て、この雨がちの天気の中を、町をブラッキ廻らねばならない。僕はそれですむ。しかし母は、一体どうしたらその場をのがれることができるだろう。暗涙か、後悔か、黙想か。僕が、その光景をこまかにえがかないでも、たやすく想像してもらえるだろう。僕の心は北海道へとシキリに僕をかり立てる。しかし、自分の後にこんな大きな障害を残して行く事になる家の実情が、僕の平和をくらくする。

 しかし僕は、喜ぶ時にも泣く時にも、同じく神にたよる。神の道はわれらの道とことなることを信じる。あふるる祝福をたもうた神は、決して、僕を孤立無援のままにすておきたまわないだろう。すべては僕のため善に向かって働くだろう。兄弟よ、僕のために祈ってくれたまえ。僕も君のために祈るから。願わくはこの試みに耐え抜き得る力を与えられ、あらゆるいざないにあう時、それをすべて大なる喜びと見なし得んことを。

                     君の ヨナタン・内村鑑三

二伸 出発は10月3日、九重丸の予定(*)。






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最終更新日  2026.05.27 15:00:04


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