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2026.08.02
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カテゴリ: 報徳
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報徳外記

(現代語訳)
 第二十二 全功(上)
  国家衰廃の時に当って、その衰えたところを挙げ、その廃れたところを興し、国家を富士山のように安泰としようと望むのは、なんと大業ではないか。古来、大丈夫が志を立てて道を行い、廃国を興し、善政を行ない、主君を中国の聖王堯や舜のように行い、人民をして窮りのない恩恵をこうむらしめようと願う者があっても、しかも往々にして初めは有っても、終わりはない。どうしてその思慮がまだいきわたらず、その道がまだ尽きないのか、なぜならば国の費用を制するに、王制の法にしたがえば、国家は富盛となって衰廃の患いは無い。物事が次第に衰え、出費に筋道が無く、贅沢が行われて、国用に節度が無い。いやしくも出費に筋道がなく、国用に節度が無いならば、一年の歳入を尽してもまたなお足りない。増税してこれを足し、これを他に借りてこれを補う。これが衰国の常である。この時に当って、志の有る家老が、その衰えたところを挙げ、その廃れたところを興そうと願うときには、必ずまず悪い政治を改め、贅沢を禁じ、歳入を量って歳出を制し、倹約を行って民に厚く施す。そもそも国家の衰弱は、租税を減じ、いやしくも歳入を量って支出を制するならば、上は公用から下士の給与に至るまで、その分度によって減ぜざるを得ない。いやしくも武士の給与を減ずれば、必ず言う。私の給与は、先君が私の祖先の百戦の勲労に報いたものである。主君はなぜこれを私されるのか。これは主君ではなく、家老がやったことだと。いやしくも人民に厚くすれば言う、四境が恐れ無くて社稷を安んじるものは、虎のような臣や、多士が多くいるためではないか。どうして人民に厚くして武士に薄くするのか。これはどうして主君の思慮であろうか、必ずや家老の行うところであると。家老がなければこの困窮や苦労は無いと。盛衰の天分を知らず、先例を引用し家株を守り、いたずらに給与の減少を憂いとする。衆の口は金をとかし悪口讒言で堅いものでも溶かしてしまう。咎が無いのに咎を帰し、罪が無いのに罪に陥しいれる。これが大業のその終わりを全うすることができないゆえんである。身分の卑しい男がご飯茶碗を持てば蠅が必ず集まる。職録が高ければ怨望が必ず集まる。ご飯茶碗を棄てれば蠅が集まる患いは無く、職録を去るならば怨望はすぐに解けてしまう。家老がいやしくもその衰廃を興そうと願うならば、まず職禄を辞して、使わない家具はもちろん家宝や大切な家財といえどもこれを売りさばき、荒地を開墾し、僅かに自ら生産する穀物で自らを養えば、小臣や貧しい武士と衣食を同じくし、日夜休むことなくこれに従事すれば、必ず言う、国を憂えられる家老は、なお重禄を辞して、田を開墾して自らを養い、衣食は私たちと同じである。私もどうしていたずらに録を食(は)むことができようか。まして禄の減少は、もとからその所である。徒食を恥に思う心が急に起こって来て、禄が減じて怨む心はすっきりと消える。そして小・大おのおのその分を知って、その貧に安んずる。論語にいう、国をたもち家をたもつ者は、すくなきを患えずして、ひとしからざるを患う。貧しきを患えずして安からざるを憂う。なぜなら均しければ貧しきは無く、和らげばすくなきは無く、安ければ傾くことは無いと。八人の貧しい家が、たまたま一つの衣を得る、一人がこれを取れば七衣が足らない、これを祖父に献ずる。祖父は言う、老体どうしてこの新しい衣を用いることをなそうと。これを長子に与える。長子はこれを弟に譲る、弟はまたこれを甥に推し譲る。しまいに七人ともあまねく皆辞する。これを取りあえば七衣が足りない。これを譲れば一衣が余る。家老が一たび禄位を辞して、一国の武士は自ずからその分を知って、その貧に安んずる。これが大業がその終わりを思慮して成功を全くする道である。しかし道を信ずることが篤(あつ)く、国の為にその身を忘れる者でなければできないことである。



 第二十二 全功(上)
  国家衰廃の時に当たり、其の衰へたるを挙げ、其の廃れたるを興し、国家を富嶽の安きに措かんと欲するは、豈に大業ならざらんや。古より以来、大丈夫志を立て道を行ひ、廃国を興し、善政を布き、君をして堯舜と為し、民をして無窮の沢を蒙らしめんと欲する有りと雖も、而も往々初め有りて終はり莫し。豈に其の慮ひ未だ周ねからず、其の道未だ尽さざるや、蓋し国用を制する、王制の法に循へば、則ち国家富盛にして衰廃の患無きなり。此の陵夷して、費出経無く、奢侈行はれて、国用節無し。苟も費出経無く、国用節無ければ、則ち一歳の入を尽すも亦た猶ほ足らず。賦を加へて以て之を足し、諸れを他に借りて以て之を補ふ。是れ衰国の常なり。是の時に当たり、有志の大夫、其の衰へたるを挙げ其の廃れたるを興さんと欲する。必ず先づ弊政を改め、奢侈を禁じ、入を量りて以て出を制し、倹を行ひて以て民に厚うす。夫れ国家衰弱、租税随って減ず。苟も入を量りて以て出を制せば、則ち上は公用より下士禄に至るまで、其の度に由りて裁減せざるを得ざるなり。苟も士禄を減ずれば則ち必ず曰く、我が禄や、先君吾が租百戦の勲労に報ひたまふなり。君何ぞ之を私したまはんや。君に非ざるなり、大夫なりと。苟も民に厚うすれば則ち必ず曰く、四境虞れ無くして社稷を安んずるもの、虎臣矯々、多士済々の故に非ずや。何ぞ民に厚うして士に薄うするや。此れ豈に君の慮ならんや、必ず大夫の為すところなり。大夫微んば則ち此の窮苦無しと。盛衰の天分を知らず、例を引き株を守り、徒らに禄の減少を以て憂ひと為す。衆口金を鑠し積毀骨を鎖す。咎無くして咎を帰し、罪無くして罪に陥る。是れ大業の其の終はりを全ふする能はざる所以なり。匹夫餉器を持すれば則ち蠅必ず集まる。職録高崇なれば則ち怨望必ず帰す。餇器を棄つれば則ち蠅集の患無く、職録を去れば則ち怨望頓みに解く。大夫苟も其の衰廃を興さんと欲せば、則ち先づ職禄を辞し、閑家具は論ずる無く家宝重器と雖も之を鬻ぎ、以て荒蕪を墾き、僅かに其の産粟を以て自奉と為し、小臣貧士と衣食を同じうし、日夜孜々として此に従事せば、則ち必ず曰はん、憂国の大夫、尚ほ重禄を辞し墾田を以て自奉と為し、衣食我に如かざるなり。我豈に徒然として録を食むべけんや。況んや禄の減少、固より其の所なりと。徒食の耻心勃然として興り、減禄の怨心釈然として解く。而して小大各々其の分を知り、其の貧に安んず。語に曰く、国を有ち家を有つ者、寡きを患へずして均しからざるを患ふ。貧しきを患へずして安からざるを憂ふ。蓋し均しければ貧しきは無く、和らげば寡きは無く、安ければ傾く無しと。八口の貧家、偶々一衣を得、一人之を取れば則ち七衣足らず、乃ち之を乃租に献ず。乃租曰く、老髐何ぞ此の新衣を用ひるを為さんと。之を長子に与ふ。長子之を弟に譲る、弟又た之を甥に推す。終ひに七人の徧くして皆辞す。之を取れば則ち七衣足らず。之を譲れば則ち一衣余り有り。大夫一たび禄位を辞して、一国の士自づから其の分を知り其の貧に安んず。是れ大業其の終はりを慮りて功を全ふするの道なり。然れども道を信ずること篤うして国の為に其の身を忘るる者に非ずんば能はざるなり。





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最終更新日  2026.08.02 16:16:52


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