Mr. Cats' Gardenのブログ あるいはニャンスケの生活と意見
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<ニャンスケの西村智実論・開演前> 凄い指揮者が出てきた!女流の!そう感じたのはテレビの音楽番組、多分絶対「題名のない音楽会」だったはず、に初めて登場したときだったはず。「はず・はず」とあるのは、ニャンスケの記憶が記録されている事実と少し違うのだ。 記憶の中では、西本智実を視聴者に紹介していたのは、黛敏郎だった。しかし、西本智実が指揮者として日本に戻り、日本デビュー、そして出光音楽賞を獲た1998年は、黛敏郎没の直後である。その頃の司会者は主に武田鉄矢氏ということになっている。 いずれにしろ、画面から受けた西本智実氏の印象は強烈だった。女流小澤征爾現る。2000年を迎える前の頃、まだ指揮者は男性ばかりだった。そこに、凄い才能が性別女性で現れた。どう凄いのか?テレビという媒体を通しての音であり姿・動き・表情であるので、もどかしいところはある。しかし、細部から立ち上げられた極めて繊細な音作りと、そのダイナミックな躍動、流れ、それは縦糸と横糸が時系列でそれぞれに明確に自分の存在を主張しながらアンサンブルしているバロックな構築物、高性能高速メカ。後年登場した辻井伸行氏の音楽解釈と演奏を、オーケストラで実現していたという感じだったのである。この人の演奏会には是非行かねば、そう考えてから20年。しかし、方や宿主が多忙な時期が続き、此方西本智実氏の演奏会というのが殆ど目にとまらない。どうなっているんじゃ?この数年、コンサートに行ける気分的余裕が出てきたようで、宿主は西本智実氏の最近の情報を調べ始めた。ザッと見る限り、同氏の活躍はロシアからドイツ-イタリアのライン、バチカンが南限、みたいなのだ。彼女はイルミナートフィルハーモニーオーケストラという自前の楽団を率いている。そして、バチカン国際音楽祭でのコンサートは毎年行われている。出光音楽賞を初めとする受賞歴の中に、近年はバチカンからの受賞もある。ビザンチンとバロックの世界が西村智実の領域!<「西村智実・佐久間良子:卒塔婆小町」のチラシは不思議の塊>この公演、初演は既に2年前に行われていたそうなのだが、当時はまだパーフォマンス生観賞の世界に復帰していなかったため、その情報はつかみ損ねていた。今回、公演のパンフレットを見たとき、目を疑った。 図:卒塔婆小町宣伝パンフより これほど違和感に満ちたA4一枚、滅多に見たことない。どういう違和感か? (i)カソリック・クリスチャンに添った指揮者の履歴と仏教を連想させる卒塔婆の組み合わせ (ii)イノベーションオペラという副題と、佐久間良子というオペラとは遠い女優の登用 (iii)佐久間良子が真ん中に据えられ、世界の西本智実がサブに廻っているパンフレット構成という3点だろうか。たった3点というかも知れないが、何れもパンフレットの絞り込んだ主要素である。つまり全部違和感。<90分の種明かし:天才はキャソリック精神を踏まえていた:〔1〕会場の雰囲気と前説での種明かし> 池袋の新しい文化センターとでも申しましょうか、東建ブリリアホールなるものが今月開所した。池袋東口、サンシャイン60に行く路の途中で少し北側に、1200人程度が入る、3階からならオーケストラボックスもよく見える、良く設計された、東京文化会館大ホールの半分程度の適度なサイズの劇場という感じである。そのこけら落とし公演が本公演。 集まってくる客を見るとクラシック系の音楽関係者と覚しき年配者が結構目立つが、半数は佐久間良子を見に来た人たちみたいなのだ。時間ギリギリに入ってくる、通な定連を顕示したがる手合いが多いようで、開演ギリギリではほぼ満席になっていた。ちらほらある空席は来るのを忘れた連中であろうと想像できるような客質である。図:宿主のチケット半券 開演に先立ち、場内アナウンスが公演の進行プランを紹介する。90分公演で休憩無し。初めに西本智実に中井美穂アナウンサーがインタビューする形でスペシャルトーク形式の舞台前節があり、引き続いて舞台に入っていくこと、が説明される。そして、前節が始まる。舞台の説明:舞台構成・舞台背景となる後方壁全面の大きな一枚のスクリーンへの描画、何れも西本によるものであることが説明される。脚本・演出・作曲の補作も西本による。つまり、この芝居が全て西本によるものと言えることが明らかにされる。また、今回はオーケストラボックスの場所を平芝居の舞台にして、客席と演者を近接させ、オーケストラは舞台上の奥後方に展開させるという。このトークの後に始まる舞台ですぐに判るのだが、指揮者は舞台のほぼ中央に、そして指揮者から後方のオーケストラや合唱隊はチョット照明が落ちていて前面の平芝居が明るくショウアップされる。ストウーパとは:卒塔婆は当て字で言語はサンスクリプト語〔インド地方の言語〕のstupa、丸く盛り上がった場所や先の尖った構造物、の意味で、特に仏教用語では仏舎利を納めた仏塔のことを言う。それを日本にもたらしたのは、唐に行って長安で仏教を学んだ空海〔弘法大師〕だったという。ストウーパに関する西本の前説はここまでであったが、弘法大師は長安でキリスト教の異端としてローマから追放されたユリウス派信仰の東方への伝搬の中国でも呼び名、景教、と接点があったことでも知られる。キャソリックの考え方が、波が変調を受けるごとく仏教や様々な思想に因って変調されながら、空海を解して、日本に伝わってきたという流れが彷彿されてきて、西本氏の中でもそんな想像もあったのではなかろうかと勝手に想像する。楽曲の特徴:「この曲は洋楽器を使った通常のオーケストラ構成で和楽器の音を出す。そのため半音ではなく1/4音も出す工夫を団員と共に行った。また、小野小町の和歌を、古語のままコーラスとバリトン・バスで再現することを目指し、理解を助けるため舞台両袖の字幕スーパーを併用する。」つまり、作曲にも西本がふかく関与しているのである。小野小町:小野小町の生きた時代は、今と大きく違い、情報の伝達速度も情報量も極めて限られていた。また小仁の発することのできる情報量も今に比べて桁違いと言っていいほど少なかったと思われる。にもかかわらず、小野小町の名声は,それこそ東国の伝わり、人々の、就中おとこたちの、あこがれの的であった。小野小町はうら若き頃から、歴史に残る超スーパーアイドル、超スーパースターだったのである。―――というのが西本の極めて印象的な小町解釈。この数分間の前説で、このinnovation operaのパンフレットから受けた3つの不思議感は何れも半分ほど解消した。<90分の種明かし:天才はキャソリック精神を踏まえていた:〔2〕本公演。これは批判精神満載のほっと笑えるような現代劇だった。>図:会場配布パンフレットより 幕が上がると、オーケストラがいつもの舞台よりも大きく下がって、奥の方から舞台1/3ぐらいまでの所までに並び、その一番奥にコーラス隊がいる。チョット暗くなっているため客席から見ると、背景の群衆のような雰囲気になっている。指揮の位置はオーケストラに比べて光りが多い。手前の明るい場所の俳優さんからも、オーケストラコーラスメンバーからも一応見やすい位置である。コーラスは黄色系の僧衣? 「いろはにおえどちりぬるをーーーー」と、一寸読経のような形でコーラスとオーケストラが始まる。瞬間、今年2月に観た宮本亜門・金閣の舞台を想い出す。金閣では、読経は通奏低音的扱いであった。ここでは、ストーリー展開のキイ、或いはナレーション役も持っている。要するに、能狂言でお馴染みのお囃子と地唄が、洋楽器のオーケストラに置き換わり、舞台の袖ではなく奥に位置したのだ。そして僧侶に扮した2人がワキとアイという感じである。ひとしきり小町の噂の後、シテ小町登場。現代語ではあるが、一寸ユッタリした能舞台風のテンポのように記憶には残っている。 小町の「百晩通って来たら貴方の思いを聞き届けましょう」の言葉に、九十九夜通い通し、百番目に力尽きて果てたという深草少将の物語が、現代音楽の多様な展開を踏まえたような、斬新な曲構成の枠組みにピッタリと組み込まれた能楽・謡曲の世界のなかで老いた小町の回想として語られ、ニャンスケはただ圧倒されている内に、亡霊となった小町や登場人物が霞に消えていく。「フェー」と嘆息の一息―――――が終わるか終わらぬか、そういうタイミングで、―――ーーー 舞台は碧の丘陵地帯、そこに開発の重機が入っている。「東京オリンピックに間に合わそう」「急がねば」―――「ここら辺は変な石がゴロゴロしていて大変なんです」「何か字が書いてあるものがあります。これは遺跡では?」――「オリンピックに間に合わぬ。かまわずぶっ壊せ」―――「この石大きくてなかなか動かせない。監督も手伝って下さい」――――――「何か字が書いてある。これ卒塔婆じゃないか?」―――――ーーー工事は進む。「さっきからあそこに人がーー」「どこから来たのか、様子を見に行こう」―――――――「私小野小町。あなたのお陰で千年の彷徨から目覚めました。監督、あなたが待ちに待った深草少将!」――――― 二人の抱擁と共に舞台模様は再びがらりと変わり、暗転した黒一色の中に赤青金銀の帯が舞い、ピングと白の花吹雪が乱舞。要するに蜷川美花の如き世界が舞台一面になり、二人は目出度く昇天か! これで舞台は大団円。卒塔婆小町のうら悲しい一寸ジメジメした物語は、からっと爽やかな時代を超えたロマンス物語に。。。。洒脱の極み! 舞台が大きく展開したとき、どの様な演奏が行われていたのか、ニャンスケ全く無記憶。舞台のめまぐるしい展開と台詞に圧倒され、オーケストラやバックコーラスの音が記憶に残っていない。二つ明確になったこと。西本智実氏は、希代の綜合芸術家・エンターテイナーであると言うこと、そして、配役は商業面を考慮しつつ、彼女のダイナミックな演出に対応出来る俳優。と言うことで選ばれたのだということ。 開演前、トークが始まる前に、場内アナウンスでお決まりの携帯電話を止める指示などに加え、「本日は撮影が入りますので、ご了承下さい」とあった。この日の舞台がその内DVDとして出て来るのかなと、一寸期待もしてしまう。三重丸舞台であった。 西本智実氏、西本氏にいち早く注目した「題名のない音楽会」あるいは出光グループ、そしてバチカンに乾杯!西本智実 プレミアム CD BOX [初回限定生産][CD] / 西本智実 (指揮)西本智実 プレミアム CD BOX [初回限定生産][CD] / 西本智実 (指揮)BD/西本智実×高見沢俊彦/billboard classics presents INNOVATION CLASSICS TOMOMI NISHIMOTO × TOSHIHIKO TAKAMIZAWA(Blu-ray) (Blu-ray+DVD)/TYXT-10027西本智実(cond) / 西本智実 プレミアム CD BOX(初回限定盤) [CD]BD/西本智実×高見沢俊彦/billboard classics presents INNOVATION CLASSICS TOMOMI NISHIMOTO × TOSHIHIKO TAKAMIZAWA(Blu-ray) (Blu-ray+DVD)/TYXT-10027BD/西本智実×高見沢俊彦/billboard classics presents INNOVATION CLASSICS TOMOMI NISHIMOTO × TOSHIHIKO TAKAMIZAWA(Blu-ray) (Blu-ray+DVD)/TYXT-10027西本智実 PREMIUM CD BOX [ 西本智実 ]
2019.12.02
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