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「人より多くの賃金を得なくても食べていけるだけの収入があれば十分」。 47%というから半数近くがそう答えている。 なんとも謙虚で、一部の政治家にも聞かせたいところだが、驚くのは回答者が新入社員であること。 これは日本生産性本部が昨春の新入社員に行った調査結果。 第二の人生を歩もうとしている人たちならまだしも、第一の人生を歩み始めたばかりの人たちの思いである。 頑張って働いて、給与も多く、出世も早く、と考えていいはずなのに…。 わが国では20年ほど前から、成果主義、実力主義、能力主義をうたった人事制度を採用する企業が広がった。 それは終身雇用制度や年功序列主義といった伝統的モデルの否定でもあったが、客観的な人事評価の難しさなどから、次第に姿を変えつつある。 とはいえ、この人事考課スタイルは若い人たちの支持が多かったはず。 それが…。 給与や昇進で「年齢や経験を重視して上がるシステム」を支持する率も、冒頭の答えに比例して逆に高まり、給与では48%、昇進では40%という。 雇用環境の厳しさは新卒市場も直撃している。 新入社員はまさしく苦労の体験者であり、この調査結果からは「ぜいたくは言っていられない」という思いが透けて見える。 それがあきらめにつながらなければいいが、今の永田町がそれをどこまで分かっているか、残念ながら心もとない。
Jan 28, 2010
鳩山内閣の支持率が急落した。 不支持率が上回ったのは鳩山内閣として初めてである。 むろん、政権与党の中枢にいる首脳2人の政治資金問題が影響した。 政権は浮沈の大きな潮目に差しかかった。 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体による土地購入をめぐり、元秘書の衆院議員らが逮捕された事件が目下の焦点だ。 世論調査では8割を大きく超す人が小沢氏の説明に納得していない。 幹事長や議員の辞職を求める声も7割以上に上っている。 検察との全面対決を宣言した小沢氏だが、どうやら国民の認識との開きは大きい。 小沢氏が検察の参考人聴取に応じる意向を示したとされるのは、こうした厳しい世論も意識したのではないだろうか。 何より心配したのは参院選への影響だろう。 鳩山由紀夫首相の偽装献金問題とともに、ほぼ9割が多少なりとも参院選に影響すると回答している。 民主党の政党支持率も政権発足以来、最低となった。 党内の動揺は大きいはずだが、表立って小沢氏を批判する声は聞こえてこない。 鳩山首相に至っては「どうぞ戦ってください」と背中を押しており、きのうも「聴取を受けるかどうかはご本人の判断」と述べている。 「政治とカネ」の問題に真正面から向き合おうとする姿勢が見えない。 さらに違和感を覚えるのは、民主党が検察による捜査情報漏えい対策チームの設置を決めたことである。 意図的なリークがなかったか調べるとみられる。 事件の解明に向けたチームなら分かるが、これでは小沢氏対検察どころか、民主党対検察という全面戦争である。 一蓮托生ということだろうか。 その検察の動きも慌ただしさを増している。 きのうは小沢氏の地元岩手県で建設中の胆沢ダムに絡み、複数の中堅ゼネコンを家宅捜索した。 一連の強制捜査が国会審議に影響することは承知のはずだ。 威信を懸けた捜査であり、結果を国民は注目している。 過去の政治資金絡みの事案に比べ、前のめりになりすぎているとの指摘もある。 国会はきのうから代表質問が始まった。 野党各党は「政治とカネ」問題を徹底追及する姿勢を明確にした。 これに対し鳩山首相は、自身の偽装献金問題は検察の捜査で全容が解明され「決着した」との認識を示した。 元秘書が在宅起訴されており、認識が甘いと言わざるを得ない。 首相の答弁を聞く限り議論は堂々巡りで、国会は当面、政治資金問題一色となりそうだ。 野党は「政治とカネ」の集中審議や参考人招致を求めている。 うみを出し、政治資金規正法の構造的欠陥をただす機会にしなければならない。 ただし、国会審議が政策そっちのけとなっては本末転倒である。 政治資金の取り扱いは政治家の倫理に帰する問題であり、国民生活のために力点を置くべき議論はほかにある。 民主党が自浄能力を発揮できないままでは支持率はさらに下落しかねない。 それは同時に、政治の変革に期待した国民を裏切ることにもなる。 政権交代への国民の幻滅を膨らませてはいけない。
Jan 20, 2010
「球場では会うんだけど、こうやって話をすることがないんだよね。お互い避けてたのかな」 「…」 「しんどかったやろな。おれもしんどかったけどな。2人ともしんどかった」 「そうですよね」。 3年前、こんな日本酒のテレビCMが流れた。 話しかける方は元プロ野球投手の小林繁さん、消え入りそうな声で相づちを打つのは同じく江川卓さん。 話題になったCMだから、記憶に残っている人も多いだろう。 社会を騒然とさせた1978年の「空白の1日」。 巨人が野球協約の盲点を突いて江川さんと契約した。 これが認められず、ドラフト会議で阪神が江川さんを指名したが、コミッショナーの強い要望で巨人の小林さんと交換された。 希代の悪役にされた江川さんもしんどかっただろうが、小林さんのしんどさはそれ以上だろう。 「犠牲になったとは思わない」と気丈に受け入れたが、中心選手が何の実績もない新人に踏み台にされたのだ。 しかし、そこからが真骨頂。 翌年は4月の初対戦をはじめ巨人に8勝無敗。 細身の二枚目に詰まった意地に、女性でなくともしびれたものだ。 巨人に振り回されて11年間で現役を退いたが、通算勝利数は江川さんより4勝多かった。 57歳で小林さんは亡くなった。 記録より記憶に残る投手だったが、記憶の中だけの人となるにはあまりに早い。 ただCMを介し江川さんと気持ちが通じ合えたのは救いだっただろうか。 昨夜はそんな彼と杯を傾け、人生のほろ苦さを味わったファンもいたことだろう。
Jan 19, 2010
インターネットで地震情報を検索すると、日本のどこかで毎日、地震が発生していることが分かる。 震源地は所を選ばず、ほぼ日本列島全域といっていいだろう。 あらためて、私たちが地震と隣り合わせで暮らしていることを思い知らされる。 兵庫県を中心に6400人以上が犠牲となり、4万人以上が負傷、家屋約64万戸が被災した1995年1月の阪神・淡路大震災から、17日で15年を迎える。 この間、九州でも2005年3月に福岡沖地震が起きた。 福岡、佐賀両県で最大震度6弱を記録し、死者1人、負傷者は千人以上に上った。 この12日(日本時間13日)には中米ハイチでマグニチュード7・0の地震があり、多数の犠牲者が出ている。 インドネシアのスマトラ島沖でも近年、大地震が相次いでいる。 いつ襲ってくるか分からない地震に、私たちはどう対処したらよいのだろうか。 もちろん、建築物の強化や耐震対策などハード面の対策は不可欠だが、それだけでは限界がある。 やはり重要なのは、住民の防災意識を高めることだ。 兵庫県では、命の大切さや助け合いの素晴らしさなど震災で得た教訓を単に語り継ぐだけでなく、全国に発信して次世代に生かす努力が、いまも地域や学校現場、そして家庭でも続けられている。 その象徴といえるのが、県立舞子高校(神戸市垂水区)だろう。 震災で地域住民の避難場所にもなった舞子高では、震災直後から生徒が心肺蘇生(そせい)法など応急手当てを学んで市民救命士の資格を取得するなど、防災教育を実践している。 災害時は学校が重要な避難所の役割を果たすことから、地震で停電しても自家発電ができるよう、校舎に非常用電源として太陽光発電システムも導入した。 02年4月には全国初の環境防災科を設け、卒業生は地域の防災活動の担い手として活躍し始めている。 秋宗英生教頭は「大震災の際に避難住民と接し、被災者のケアなど学校としても多くのことを学んだ。 それが防災教育の原点」と言う。 九州ではどうか。定期的に避難訓練などはあるが、「まさか自分のところでは起きないだろう」と思っている人が少なくないのではないか。 これでは、せっかくの防災対策も意義は半減してしまう。 例えば、災害時に1人で逃げることが困難な高齢者や障害者、病人などの「災害弱者」をどうやって素早く救助し、避難させるか。 福岡沖地震の直撃を受けた福岡市では住民自らが自主防災組織を結成、役割分担を決めて災害弱者を支える動きも出ている。 このような試みは、ぜひとも他地域に広めたいものだ。 地震に限らない。 建築物の強化などハード面と、住民の防災意識というソフト面の両輪がそろってこそ、減災に効果を発揮することは言うまでもない。 大震災の実際を知らない世代も育っている。防災意識向上へ、自治体や地域、学校などが、それぞれの立場で地道な実践に取り組む重要性を再認識したい。
Jan 16, 2010
大統領府や病院、学校も倒壊した。 民家は軒並み崩れ、住民が泣き叫ぶ。 犠牲者の遺体は道路に放置されたままだ。 カリブ海のハイチを襲ったマグニチュード(M)7・0の大地震は、首都ポルトープランスをまひ状態に陥れた。 現地の状況が明らかになるにつれて、被害は拡大するばかりだ。 国民のほとんどが1日2ドル以下で暮らす最貧国。 これまでクーデターや暴動が相次ぎ、国連の平和維持活動(PKO)や国際援助がなければ、国は立ちいかない。 その国連要員が入っているビルも全壊した。 欧米など各国の救援チームの活動が本格化しているが、治安悪化も懸念される。 国情は違っても、被災者が立ちすくむ姿は、15年前の光景を思い起こさせる。貧しさが被害を拡大 「世界の災害リスクは、貧しくガバナンス(統治)が弱い国に集中している」。 2009年版の国連世界防災白書は、こう指摘する。 貧しい国ほど、地震に弱い建物が多く、災害対策が遅れがちだ。 しかも貧困が被害を拡大させる悪循環にある。 ハイチは、そうした国の典型といえる。 災害に対する途上国の備えを向上させ、被害を減らすことは、世界が最優先で取り組むべき課題になっているが、現実にはなかなか進んでいない。 人々の祈り声が重なる。 賛美歌の歌声が聞こえる。 神に祈るしかない。 それが被災地の姿だと、現地からの報道は伝える。 マグニチュード7・0は阪神・淡路大震災に匹敵する。 全国民の3分の1に当たる300万人が被災した、との情報がある。 今も手作業での救出活動が続いている。 防災どころか、長い独裁政権が招いた政情不安でインフラ整備も不十分な国だ。 ここ数年は、ハリケーンの被害や食料高騰をめぐる暴動など、悪いニュースが多かった。 そこへ今回の大地震だ。 人々は生死のふちに追い込まれている。 フランスの旧植民地で、本国の革命直後に独立した。 「三銃士」などで知られる作家デュマの父親は、植民地時代に農園主と奴隷の間に生まれ、ナポレオン軍の将軍となった英雄だ。 女優の黒柳徹子さんは阪神・淡路大震災の年、ユニセフの親善大使としてハイチを訪れている。 大人の世界の問題のしわ寄せはすべて子どもにいくと訴える黒柳さんは、こうも言う。 「どんな環境でも子どもたちは懸命に生きている」。 被災者も同じである。 どんなに厳しい状況でも、懸命に生きている。 治安の悪化が伝えられるが、可能な限り、救出の手を差し伸べたい。 一人でも多く、一分でも早く。
Jan 15, 2010
阪神・淡路大震災から15年が近づいてきた。 まちの外観に被災当時の惨状はうかがえず、さまざまな復興事業も終わりつつある。 震災はずいぶん遠くなった。 そんな実感をもつ人は少なくないだろう。 しかし、被災者の内面が同様に立ち直っているわけではない。 家族を失った人たちの悲しみや喪失感は、なお深いものがある。 歳月を重ねても、決して忘れてはならない視点だと思う。 突然の災害で、かけがえのない命を奪われた。 あまりに理不尽な死は受け入れられたのだろうか。 とくに、子どもを亡くした遺族の3人に1人が受け入れられないと感じている。 なかには、震災を思い出すから答えたくない、答えられないという人もいるだろう。 無言のメッセージは、癒やされようもない遺族のいまを伝えているのかもしれない。 震災の日以降、被災地は懸命に生活再建やまちの復興に取り組んできたが、遺族のケアは十分目が向けられたとはいえない。 それだけに、家族を失った経済的、精神的影響がいまもある、という人が半数を占めたアンケート結果は重く迫る。 「いつまで震災のことを」という言葉に傷つき、何事もなかったような街並みに違和感を抱く。 「1・17」を前に、そんな被災者がいることを心に刻みたい。
Jan 14, 2010
寒い時期に増えるのがお年寄りの転倒による骨折だ。 厚着になるなどで体の自由が利きにくくなったりする影響らしい。 そういうと、道路の凍結など屋外での転倒を思い浮かべがちだが、意外なことに7割近くは自宅など屋内だという。 年齢別ではやはり60歳以上から増え、80~85歳が最も多い。 うち8割は女性だという。 高齢者の骨折の主な原因は骨粗しょう症だが、製薬会社が60歳以上の男女400人に聞いたインターネット調査では、ほとんどの人が「骨がもろくなる」などの症状は知っているものの、その怖さをあまり認識していなかった。 「自分は骨粗しょう症だと思わない」「検査を受けたこともない」とした人は約6割もいた。 ところが、重症化するとくしゃみや布団の上げ下げなどでも骨折しやすくなるなどと説明すると、大半の人が「検査を受けたい」と答えたという。 特に女性は、一度は整形外科などで受診したほうがよさそうだ。 骨粗しょう症予防の3原則は、食事と運動、日光浴といわれる。 その食事については面白い研究がある。 骨を強くする栄養素としてはカルシウムやマグネシウム、ビタミンDが知られるが、ビタミンKを多く含む納豆が効果的だというのだ。 骨折の発生率は西日本で高く、東日本で低い。 どうしてなのかと、全国を12地域に分けて栄養素の摂取量と骨折の発生率の関係を調べたところ、納豆の消費量の地域差とほぼ合致したという。 嫌いな人もいるかもしれないが、試す価値があるのでは。
Jan 13, 2010
きょう11日は成人の日だ。 国民の祝日に関する法律では、この日の意義を次のようにいう。 「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」 こうも大上段に言われると、新成人でなくとも戸惑ってしまうのではないだろうか。 「みずから生き抜こうとする自覚、ありやなしや」と。 生き抜くことの難しさを痛感する時代である。 新成人が生まれた1989年は元号が昭和から平成に変わった年だ。 ベルリンの壁が崩壊し、中国で天安門事件が起きた年でもある。 日本と世界が大きく変わった節目の年といえるだろう。 問題はその変化の行き着く先が見通せないことだ。 未来を生きることになる若い人たちには、とりわけその思いが強いだろう。 「ちゃんと就職できるんだろうか」 「年金? 僕らのときもあるんですか」 胸をたたいて「大丈夫」と言えないのが悔しい。 しかし、その答えを出すのは、大人になった者の責任でもある。 世の中の仕組みや制度は変えられる。 昨年の総選挙が示した最大の教訓はそこにあるのではないだろうか。 成人となったことを最も強く感じるのは、選挙で1票を行使するときだ。 ところが、各種選挙の投票率を見ると、20代は極めて低い。 全人口に占める若者の数は減る一方である。 その上、声も上げないとなったら、存在感は希薄になるばかりではないか。 時代の変わり目に生まれた新成人が、まず率先して大人社会に注文を付けてほしい。 それは「新参者」の特権でもある。 日本人の平均年齢は女性が85歳を超え、男性も80歳に迫る。 人生80年とすれば、20歳はその4分の1にすぎない。 成人になったということは、人生の入り口に立ったということだ。 悩み、もがくのはこれからである。 いささか不謹慎ではあるが、先が見えないからこそ、面白いともいえる。 結果を自分で引き受ける覚悟さえすれば、何にでも挑戦できる。 既成の成功パターンにとらわれる必要もない。 若い人たちのチャレンジを見守り、支えるのは大人の役割だ。 「自分の能力に自信がない」と答える中高生の割合が、日本は突出して高いというデータがある。 子どもに「駄目出し」をしてはいないだろうか。 鳩山由紀夫首相は政権交代を「無血の平成維新」と表現した。 その役回りを担えるかどうかは別にして、時代の表現としては間違っていない。 維新を動かすのは若い力だ。 坂の向こうに何が待っているのか。 自分で足を動かして登っていくしかない。
Jan 11, 2010
福祉、医療の現場が人手不足に陥ってかなり時間が経つ。 農村集落が持続していくためには、若い人たちの力が必要だ。 高齢化率が高く、多くの中山間地を抱える所は、福祉、農業分野に活路があるのではないか。 そこに人材を呼び寄せるには、働く場が輝いていなければならない。 政府に求められているのは、労働条件の改善を促す強力なてこ入れである。 自治体も知恵を絞るべきだ。 働く価値を取り戻すには、非正規社員の使い捨てを認めてきた政策の転換が欠かせない。 政府の労働政策審議会が、派遣労働の規制を大幅に強化する報告書をまとめた。 これを基に厚労省は労働者派遣法の改正案をまとめる。 法案成立を急ぐのは当然だ。 しかし、それだけでは根本的な解決にはつながらない。 「同一労働同一賃金」の導入や雇用創出を目指したワークシェアリングの論議は、停滞したままだ。 いつまでこの問題を先送りすればいいのだろう。 政労使の協議を一層充実させていく必要がある。 経済のグローバル化は、中国やインドなどの新興国を巻き込んで、新たな弱肉強食の時代に入ろうとしている。 市場原理主義の過ちを繰り返してはならない。 国際競争に負けまいとして、働く人をコストとしか見なさない社会は健全といえるのだろうか。 働いてこそ、将来設計が可能となる。 生きがいや安心の源ともいえる。 個人と社会とを結び付けるのも、労働の喜びがあってのことだ。 こうした当たり前のことを社会が共有する。 それが消費を促し、不況脱却の足掛かりになる。 この大切な原点を忘れてはならないと思う。 今年は公設の派遣村が都内で設置された。 大勢の失業者が「入村」している。 働きたいという願いがかなう、活力のある社会を一日も早く取り戻したい。
Jan 4, 2010
もろさわようこさんをご存知ですか? 望月出身の女性史研究家。 84歳のいまも、自らの生き方を重ねながら女性の解放を追い求める、情熱の人である。 もろさわさんの口癖は「男と女のあり方が、基本になるのよ」。 その意味するところはこうだ。 男の女に対する態度、女の男に対する態度が、その人の人権意識を測るものさしになる。 「立派なことを言っていても、生活のなかでそう行動していなくては、その志はまことのものではないのよ」。 耳が痛い。 でも、その通りと思う。 夫婦、家族、職場。 日常のふるまい、身近な人間関係ほど、地金が出るものだ。 鳩山政権が、結婚や家族をめぐる法律、制度の見直しを始めている。 家庭のかたち、男女のあり方はどう変わっていくのか。 じっくり見守りたい。 配偶者控除の廃止も、その一つだ。 賛否はおそらく分かれる。 実現すれば、女性の働き方が変わることは間違いない。 働く者にとって、収入が増えるのはうれしいことだ。 でも、それを必ずしも喜べない人たちがいる。 パートで働く主婦である。 収入が増えないよう、仕事をセーブしている人が少なくない。 働きたくても休む日もある。 なぜか。 「103万円の壁」があるからだ。 夫が所得税の配偶者控除を受けるとき、妻のパート収入の上限になる。 結果的にではあるけれど、企業がこの制度を補強してきた。 多くの会社が、家族手当を支給する基準を、この「103万円」に合わせている。 配偶者控除は、外で働く夫を家庭で支える妻の「内助の功」に報いる意味合いがある。 半面、結婚後の女性の働き方をパート労働へと誘導し、経済的、社会的に弱い立場にとどめてきたことも事実だ。 「103万円」のために、働き方が縛られる。 どうにもすっきりしない。 こんな線引きは、なくした方がいい。 ただ、壁はほかにもある。 こちらの方が、超えるのは難しいかもしれない。 長野市に、換気扇や水回りの掃除などの家事代行サービスをしている会社がある。 社長以外は全員、女性。 パート勤務の主婦が主力だ。 「103万円」以内で働く人もいる。 会社の業績は伸びている。 仕事ぶりを見れば、それもうなずける。 きめ細かでチームワークがいい。 プロ意識が伝わってくる。 彼女たちに聞いてみた。 もしも配偶者控除がなくなったら、もっと働こうと思いますか。 答えはいずれも、ノー。 「仕事を休めなくなると困る」から。 彼女たちの夫はサラリーマン。 子どもが風邪をひいても、夫は会社を休めない。 休むのは、いつも「お母さん」である。 「103万円の壁」がなくなれば働き方の幅は広がる。 でも、家事や育児に夫がかかわらなければ、妻の負担と責任が増すだけだ。 ためらうのも無理はない。 つまり、妻の働き方の問題を考えていくと、行き着く先は夫の働き方になる。 政府は、子育て中の女性が働きやすいよう、保育サービスを拡充していく考えだ。 それも大事だけれど、もう一つ、忘れずに力を入れてほしいことがある。 男性も、女性も、幼い子をもつ親が早く家に帰れる職場環境を整えることだ。 子育てに限らない。 介護のために仕事を辞めざるを得ない独身の男性が少なくない。 核家族化が進むなか、長時間労働に代表される「男の働き方」だけでは、家族のさまざまな局面に対応しきれなくなっている。 問われているのは、労働のかたちそのもの。 その多様化に本気で取り組まなくてはならない。 簡単ではない。 制度や仕組みだけでなく、意識を変えるには、かなりの時間がかかる。 政府はもちろん、企業も、働く一人ひとりにも努力が求められる。 足元から変わってこそ、ほんものである。 今の高校生が働き始めるころ、どんな社会になっているだろう。 「女だから」「男だから」といった先入観が取り払われ、さまざまな可能性が開かれているといいけれど。 そのために、前を歩く女性たちがしてきたように、自分の立っている場所で、できることを一つひとつ積み重ね、手渡していく。 それが大事なのだと思う。
Jan 3, 2010
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