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Jul 7, 2019
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異能者特務機関:TMI 第 18 話「認識阻害」

「食事の後で B チームの皆さんと連絡を取ってみましょう」

 フローレンスは TMI 本部の【異能力共有】のレポートを探している。

 アリナは GOGO イチに出前を注文した後、 B チーム A チームのメンバー表を眺めている。

「哿さん、前 A チームの二人と B チームの人間関係はどうでしたか?」

「えっと……行方不明になった舟木さんと B チームの樋野さんは仲が良かったです。本人達は言いませんでしたが付き合ってると皆噂してましたね。行方不明になった中平さんは B チームの藤根さんと同期で親友だったと聞いてます……それと支部長の篁さんと B チームの當摩さんは義理の兄妹です」

「つまり行方不明になった 3 人と B チームは浅からぬ関係であったという事ですね。なるほど、リスクの大きい【異能力共有】をしてでも手掛かりを得たかった訳ですね。この行方不明事件はカテゴリー 6 がらみという事で本部が担当していると考えていますが哿さんは何か知っていますか?」

「長官からこの事件は本部が預かると聞いています。 B チームの皆さんは自分たちを事件捜査に加えるように強く抗議されてましたが却下されてしまいました……」

「……そうですか。長官がわたしに黙っていたのは B チームも巻き込んで動くと考えたのでしょうね。哿さん、長官に口止めされているのでは?」

「口止めされています……でもこのままじゃいけないって……あの時 B チームのみんなと一緒に抗議すべきだったと後悔しているんです」哿は目を強く閉じる。「僕が支部長になれば本部の捜査にも加わわる事もできるのですが。日本支部長の篁さんが戻って来るまでの間だけでも……」

「そうなると U チームに新たなメンバーが必要になる訳ですね」

 異能力共有のレポートを読みながらフローレンスが言った。

「そろそろ新しい支部長を決めるのではないでしょうか。バクテリア事件の事で日本の人材不足、指揮系統の見直しが本部で議題に上がってるのでは?今日か明日あたりに U チームの新たなメンバー候補を提示してくると思います」

「……アリナさんを本部所属にして監視下に置くという事も考えられます」

「あり得る話ですね哿さん。アリナを日本支部から外せば B チームやカテゴリー 6 の事をそのままにしておけると考えても不思議では無いです」

「わたしはそのような異動受け入れませんよ」

「長官にカテゴリー 6 の調査メンバーに入れると言われればどうですかアリナさん?」

「それは……」

「長官が考えそうな手ですね」

 タイミングを見計らったかのように制服の首から下げた TMI 専用の通信機が振動する。

「はい、哿希世美です。長官……」

『やぁ哿くん、今から本部の人間と日本支部に行くからね。食事中だったらゴメンね』

「いえ、大丈夫です。いつでもいらして下さい」

『そうか、では 1 時間後にまた』

「はい」

 通信はアリナとフローレンスにも聞こえていた。

***

― 1 時間後。食事を終えて待機していた三人、そこに長官ジェームズと髪の逆立った大柄な男、長髪赤毛の少年が現れた。

「あれは……」

 ロシア支部長フョードル・ヴァシリエヴィチ(自らを雷帝と称するエレクトロキネシス)に、本部所属イグネイシャス・ファインマン(スーパーファイヤーヒーローを名乗るパイロキネシス)の二人であった。

 アリナは立ち上がって見据える。

「フン……」

 腕を組んだままのフョードルが鼻を鳴らす。

「チィーッス!」

 軽いノリで片手を上げて歯を見せるイグネイシャス。

「カテゴリー 5 の武闘派が二人も……」

 哿は椅子に座ったまま眺めている。

「いきなりで驚いたかな?電人 G の対策チームリーダーに就任したフョードル君、カテゴリー6念爆者(サイコボマー)捜査班のイグネイシャス君だ」

「何の用ですか長官」

 アリナは鋭い目つきで長官を見る。

「なに、アリナくんには新しいチームに入ってもらおうかと考えていてね」

「いきなりですね」

「電人 G も念爆者も TMI の総力を挙げて取り組まなければ解決できない。君のように強い異能者の力が必要なのだよ」

「それで TMI 最強のエレクトロキネシスに最強のパイロキネシスの二人ですか」アリナは長官の前に移動。「念爆者ついてわたしの前で初めて言いましたね長官」

「そろそろ君に黙っておくのも限界だと感じてたし、本部の会議でもアリナくんに協力させるべきだという声が多くてね」

 ジェームズはゆっくりと歩きソファに腰を下ろして葉巻を取り出した。

「ウィッスどうぞ」

 イグネイシャスの指から出た小さな火の玉が葉巻の先に付く。ジェームズは先を炙って葉巻を吸い始める。

「カテゴリー 6 の念爆者……君に敵(かたき)を取らせたいとは思うが奴が敵なのは君だけじゃあないんだよ。スタンドプレーは許されないよ」

「長官がそういうのならば、わたしは一人で念爆者を追います」

「 TMI の協力なしで追っても私達の方が早く奴にたどり着いて斃してしまうかもしれないよ?」

「……」

 アリナの目つきは更に鋭くなり、喉の奥でほんのわずか唸り声をあげる。

「おっと、君を怒らせるつもりはないんだよアリナくん。念爆者を斃したい気持ちはよーく理解できる。だからこそ捜査が進むまでは何も言わなかったんだ、君を止めることはできないし止めたとしてもその後が大変だからね」

「……ということは念爆者の捜査は進んだという訳ですか?」

「そうだ」

 ジェームズは煙を吐いて答える。

「本部には優秀な捜査官がいるからね。念爆者の手がかりを思わぬところから拾い上げジグソーパズルのように組み上げていったんだ」

「奴はどこに?」

「まあ聞きたまえ。奴の居所は突き止められても会う事は困難なのだ。大国の大統領を殴りに行くとかそういったレベルの困難じゃあない。認識できないのだ」

「どういうことか説明してもらえますか?」

「例えば電車の向かいの席に奴が座っていても『気が付かない』のだ」

「認識を阻害させる異能者と一緒にいるということですか?」

「それならばその場にテレパスがいれば気が付くことが出来る。あれは異能力ではない」

「特殊な装置を持っていると?」

「……ああ、そういった類のものだ。これの厄介な所は念爆者を探す者は奴を見つけることはできない点なのだ」

「では念爆者の存在を知らない者は普通に接している訳ですか?」

「そうだ、そのせいで捜査は難航したのだ。昔、奴を追い詰めた時に脳波のパターンを TMI のスーパーコンピューターが記憶した。衛星で世界中を監視している、能力を使用すれば即座に居場所が判明するのだがここ数年それも無い。最後に奴が力を使用したのは日本の南、太平洋上にある某国の軍事基地に対してだ。奴は触ったものを任意のタイミングで 24 時間以内なら爆破できる。触れなくても半径 100 メートル以内にある認識できるものならば爆破できる……その気になれば核爆弾と同等の威力で発動させられる。つまり自由に扱える核爆弾を持っている、ゆえに奴は念爆者(サイコボマー)はカテゴリー6なのだ。奴は跡形もなく基地を吹き飛ばしたのだ」

「……」

「我々は奴を認識できない、そこで奴を乗せた船の船長に話を聞きモンタージュを作成したり犬を使い匂いを覚えさせたりして徐々に奴を追っていた」

「何も知らない船長ならば顔を見て覚えている、犬は念爆者なんて存在を知りません匂いの主を追っているに過ぎない、だから追えたのですね」

「ああ、そして引き続き船長に協力を仰ぎ、映っている思われる映像見せて奴の顔を確認させて最新鋭の顔認証システムに登録。警察の知り合いにこれを配備させて日本の空路航路を徹底的に見張るようにした。他の国に逃げられたらもう二度と追えなくなるかもしれないからね」

「念爆者のにおいを拾った犬の記憶をデータ化できなかったのですか?」

「……それも試したが成果はいまいちだ。事前に奴の匂いのデータを取って登録しておけばおけば良かったのだがそれが無い為日本中を手探りで探さなければならない状態だったのだよ。年月が経った今、もう匂いを辿ることは不可能に近い」

「では捜査が進展したというのは?」

「声と顔認証システム、日本 B チームが拾った声、電人 G 対策チームのおかげで奴を突き止めることができた奴の今の名は【       】だ」

「は?今なんと?」

「……こういう事なんだよアリナくん。念爆者を知らない者には名前を聞いて認識できただろうがね」

「長官はどうやって奴の名を?」

「テレパシーの応用だよ。私が TMI の AI に繋がり奴の名前を読み取らせて自動再生した」

「ではどうやって電人 G の対策チームが念爆者にたどり着いたか聞かせてもらえますか?」

「いいだろう」

 ジェームズは短くなった葉巻を消して哿に茶を要求する。

「電人 G は電脳世界を自由に移動し電子機器を自在に操る脅威の存在だが……本体を持たないという事が弱点にもなりうることを突き止めた。電人 G を駆除するワクチンプログラムを電脳世界から世界中にばら撒けば駆除できる。駆除される前に電人 G は電脳世界から隔離された機械などに本体を移す可能性もある。例えばアンドロイドなどにね、ではどうすれば電人 G を追えるか?」

 ジェームズはアリナ達全員を座るように手で合図する。

「電人 G は本体を安全な場所に移し、そこから電脳世界に干渉するだろうと考えた。安全を確保したら次は何を始めるか?バクテリアの実験だ。バクテリア自体は TMI が確保したが電人 G はデータは得たと言っていた。ブラウン博士に聞いたところ、人工的合成ゲノムからバクテリアを作り出すことは可能だそうだ。電人 G は恐らくその手法でバクテリアを作り出し実験を始めるつもりだ」

「……それが念爆者とどう繋がるのです?」

「電人 G が実験を始めるにはバクテリアを作成できる施設が必要だ。北海道にある施設は当然ながらもう使うことはできない。アメリカの施設は爆発で消滅。ランクは落ちるが実験可能な日本国内施設は東京に存在している。そこを使うのなら電脳世界を使って現地で直接行うのではなく、職員の ID を使って遠隔操作をするだろう。そこで我々は職員を調べることにした」

 ジェームズは哿の淹れた茶をすする。

「東京の施設職員の中に【     】がいたのだよ」

「!?」

「恐るべき偶然だ。念爆者は何らかの方法で東京の施設の職員に成りすましていたのだ。認識阻害の影響で当然最初は誰も気が付かなかった。だが、 TMI のスーパーコンピューター AI が反応し奴を見つけ出した。 B チームの拾ってくれた声のデータのおかげでね。姿や声は整形やサイバネ技術で変えることはできるが本人の話し方の癖までは変えることが出来ない」

「ではすぐに奴を!」

「そういう訳にはいかん。別の人物になりすまされればまた追う事になる。奴の目的を知る必要がある。そして認識を阻害するものを打ち破る方法を知らなくてはならない。それができなければ戦う事なく奴の先制攻撃で爆破されて我々は敗北する」

「……」

「電人 G が念爆者を知らないというのは考えにくい。 TMI の関連施設に居たのならばカテゴリー6念爆者の事は耳に入るはずだ。にもかかわらず奴の ID にアクセスできたのは何故か? AI には奴の認識阻害は効果が無い。半 AI と化している電人 G なら自身は念爆者の認識阻害を受けてるが、知らずにアクセスできたと考える」

「認識阻害を打ち破るには AI が必要だと?」

「いや AI で認識阻害を完全に破ることはできない。別人になりすまされれば追うのにまた時間を要する。方法は正確には分かってはいないが『否認の呪い』を利用したものと私個人は推測するね」

「それはどういうものですか?」

「アリナくん、君は霊といった存在を信じるかね?」

「信じてはいません、わたしは確認できていませんから」

「うむ、では霊を『見える話せる』という人をどう思うかね?」

「何かしらの原因で脳に影響を受けたかと思われます。例えば薬物、異能力などです」

「そうではないとしたらどうかね?科学でも異能の超能力でもない力があるとしたら?」

「そんなものがあるとすれば……オカルトですか?」

「そう言ってしまえばそこまでなのだが無いものとして考えるのではなく、あるものとして考えてくれたまえ。何故私がそう考えるのか?それは大量の異能者を生み出したレインボーフォリナー事件の原因はオカルトに関係しているからだ」

「……!?」

「それについてはまた機会があれば話そう。とにかくオカルトは存在し、それを操る術を持つ者たちもいる」

「長官が嘘をついていないのは分かりますが、信じがたいですね」

「すぐに信じろとは言わない、念爆者の認識阻害を打ち破るのにオカルトを操る者の協力は必要だと考える。電人 G に関しては最強のエレクトロキネシスのフョードル君なら電脳世界に現れた電人 G の後を追いのアジトを見つけることが出来るだろう」

「長官、それならば何故そのオカルトを使える連中に最初から協力を仰がなかったんですか?そうしてれば何年も捜査しなくて済んだのではないですか?」

「何もしてなかったわけでは無いよ。オカルト連中……ここでは術師としておこうか。知り合いを通じて術師に念爆者の捜査を依頼したことも何度かあったが全員が首無し死体となった」

「……」

「おそらく念爆者の一味だろう。だが今回はそうはさせない、こちらは奴の居場所を突き止めた。術師には認識阻害を破ってもらう、その護衛には TMI が着く」

「その護衛にわたしも入れというのですか?」

「そうだ。だが念爆者の認識阻害を破るまでが任務だよ。その場で奴に挑むのはやめてもらいたい」

「念爆者を前にしてわたしを止めるのですか」

 アリナは拳を握りしめる。

「さっきも言ったが念爆者を斃したいのは君だけじゃあ無い。自分自身を抑える自信が無いのなら電人 G 対策チームに入ってもらうよ」

「……長官、念爆者が A チームと日本支部長と接触して消えたのは何故だと考えています?」

「さあね、分からんよ。だが念爆者を捕らえれば分かるんじゃないか?さて、アリナくん、君は念爆者捜索チームか電人 G 対策チームに入るか決めたかね?」

「少し時間をいただけますか?」

「いいとも、夜までに返事をくれたまえ。明日の朝には作戦開始だからね」

 そう言って立ち上がる。

「フョードル君、イグネイシャス君、何か彼女らに言っておくことはあるかね?」

 フョードルが立ち上がり前に出る。

「終夜アリナ、電人 G 対策チームに入るのは拒まんが俺のチームでの勝手な真似は許さんぞ?俺は甘くない、粛清が必要と感じたのなら容赦なく行う!肝に銘じておけ!!」

 フョードルは手に稲妻を発生させて顎を上げ上から睨みつける。続いてイグネイシャスが立ち上がる。

「ウィッス!まぁ仲良くやろーぜアリナちゃん!雷帝のアニキはああ言ってるけど気にしないでいいぜ。こっちの念爆者捜索チームは基本自由で拘束はしない。チームの規則は一つだけ【チームの為に動く事】だ」

火を纏わせた指先でハートを描いた。

「以上だ!長官!!」

「ウィッス!」

「では行こうかフョードル君、イグネイシャス君」

 扉を開けると同時に 3 人の姿は消え、本部へと転送された。

続く






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Last updated  Jul 7, 2019 10:30:26 PM コメントを書く


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長月(ながつき) @ Re[1]:Fallout:NewVegas 第1話2話「目覚め」(11/19) Keyさんへ ありがとうございますがんばり…
久 遠@ Re:FalloutNewvegas121話「ストレンジトランスミッション!」(07/20) やほーい(=゚ω゚)ノ 何周遅れか分からないけ…
長月(ながつき) @ Re[1]:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年も…
久 遠@ Re:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年…
長月(ながつき) @ Re[1]:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) こちらもFO4までに終わらせるつもりです!…
くおん@ Re:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) やあ( ´ ▽ ` )ノ EDーEとの意思疎通方法、…

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