異能者特務機関:TMI 第 20 話「念爆者(サイコボマー)2」
念爆者捜索チームのメンバーを乗せたヘリコプターは東京に向かい。
電人 G 対策チームのメンバーは北海道札幌市内に集合、作戦を開始していた。
ヘリコプターにはアリナ、フローレンス、哿の姿があった。哿とフローレンスは数十分前に北海道から戻ったばかりで少し疲労の色を見せている。
ヘリに乗る前にアリナはフローレンスと哿から B チームの樋野映子話を聞いた。
樋野映子は、『私は妊娠している。行方不明になったはずの舟木との子だ』と言った。樋野は密かに行方不明になったはずの舟木を北海道で何度か会っていたのだという。
『どうして黙っていたのか?』とフローレンスと哿が聞くと、『舟木の居場所を TMI に知られたくない』と答えた。そして TMI を抜けるつもりだと言った。
TMI を抜けたところで本部のスーパーコンピューターの AI から逃げることはできない。抜けた後も居場所は監視されている。 A チームの行方不明者は特殊な方法で連れ去られ追跡も監視を逃れていると樋野は答えた。舟木の居場所を知られてしまうのは安全の為にも絶対に避けたいと言った。
『安全の為とは?』と聞くと樋野は『ブラックヴァリーを知ってるでしょ?舟木は今そこにいる。 A チームの他の二人もそこにいる』と答えた。
北海道で『首狩り斬鬼』事件を起こした集団ブラックヴァリー。
『では……行方不明になった時、舟木さんらは念爆者と一緒にいた?』
フローレンスは聞く。行方不明になった現場を調査して拾った声は念爆者のものということは判明している。
『ブラックヴァリーは最強の殺し屋と呼ばれる男が居る。その男は念爆者に雇われている』と樋野映子。そして『裏切り者は許さない、その場合は殺し屋が処刑する』と言った。
舟木が TMI に情報を漏らしていると知られれば裏切り者として始末される。だが舟木自身は TMI よりもブラックヴァリーの方が居心地がいい抜けるつもりはないと樋野映子に話した。
樋野映子は同じ B チームのメンバーともう一度異能者共有を使い最強の男と念爆者の情報を掴もうとしている、ブラックヴァリーから舟木を、 A チームを取り戻す為に TMI に接触させるつもりでいると考えていると言った。
ここまでの話を聞いたアリナ。
「(これから向かう場所にブラックヴァリーが待ち受けている予感する。最強の殺し屋も居るかもしれない。念爆者は昔 TMI に追い詰められてからは異能力を使用していない。その代わりにブラックヴァリーを雇い敵を葬り去ってきた?)」
アリナは長官の言葉を思い出す。
『何もしてなかったわけでは無いよ。オカルト連中……ここでは術師としておこうか。知り合いを通じて術師に念爆者の捜査を依頼したことも何度かあったが全員が首無し死体となった』
「(首を狩る……ブラックヴァリー……敵は念爆者とブラックヴァリー……)」
―アリナ達を乗せたヘリコプターは途中高層ビルの屋上に着陸した。
待っていたのはパイロキネシスのイグネイシャス・ファイマンと和装の男だった。
「ウィッス!なんだなんだ?もうすでに U チームはおつかれちゃんかい?」
「大丈夫です。それに今回フローと哿さんは後方支援なので」
「そうかい!ま、現場に着くまでゆっくりしておきな!こっちの兄さんはオンミョウジの土御門道鳴(つちみかどみちなり)サンだ」
「宜しく……」
うらなりの暗い顔をした痩せぎすの中年男。目だけは強く輝いている。
「終夜アリナです。こちらはフローレンス・フランシスに哿希世美さんです」
「……そうか」
「オンミョウジ……陰陽師とは古代日本の律令制下において陰陽寮に属した官職の 1 つの事だと認識しています。それがどうして念爆者の仕掛けを破れるのでしょう」
「……ふっ、お前たちは呪(しゅ)というものを知らないそして理解できないだから彼奴の術を破れぬのだ」
「呪(しゅ)とは…… NOROI TATARI の類ですか?」
「……ふっ、小生はお前の師ではない。まぁ見ておれそうすればオカルトなどと小馬鹿にできなくなる」
「小馬鹿になどしていません」
アリナは小馬鹿にはしてないものの半信半疑で土御門を見つめている。
「そもそもだ、神通力、霊能力、超能力者などの異能者と術者はこの国では昔から共存しているんだ。科学が発達し、人々は術を捨てるようになった。異能者は才能を磨かなくなり今では誰もが便利な科学に浸っている。異能と術は極一部の中でのみ存在するようになった」
「異能者は今まで多く見てきましたが術師は会ったことがありませんでした」
「……それは虹色の光事件で異能者が爆発的に増えたからだ。術は信じないが異能は信じるといった者が多くいるのもそのせいだ。 TMI のお偉いさんも術に関しては教育してないのだな」
「馬鹿にするつもりではありませんが、術とは魔法のようなもの、物語の中で使われるような超常現象の事ですか?」
アリナは真剣な口調で真っすぐに目を合わせて聞く。
「術といっても多くの種類がある。魔法もその一つ、魔の方法を術で成す魔術。忍のもある、忍法~の術といった風にだ。何となく聞いたことがあるだろう?超常現象を起こすには術を理解し己を理解しなければならない」
「学べば誰でも術は扱えるようになりますか?」
「誰でもは無理だ。知識を詰め込めばできると言ったものではない才能がいる。異能者は特に術を扱うのは難しいだろう」
「どうしてですか?」
「持って生まれた性質だ。犬に生まれた者が猫になれないようなものだ。お前が術を使えるようになったとしても極些細なものしか発動できないだろう。逆に小生が異能開発の訓練を受けたとしてもコインを机の上でほんの僅か動かせる程度のものだろう」
「……そうですか」
「……ふっ、だが極稀にだが両方の才能を持って生まれる者もいる。雄雌同体の生物が生まれるようにな」
「……」
「何故だか柄にもなくべらべらと話しちまったな……」
「土御門さん」
「何だ?もうしゃべり疲れたぞ」
「ありがとうございました」
「おぅ……」
「まもなく目的地に着きます」
イグネイシャスの相棒でヘリのパイロットが言った。
「 OK ナターシャちゃん!さて……この辺りで降下しようか。土御門の兄さんは哿クンに任せた。アリナちゃんとフローレンスちゃんはいけるよな?」
イグネイシャスは装備を渡しながら言った。
「ここで降りるのですか?」
「本当なら近くの TV 局のヘリポートに降りるつもりだったんだけど念の為に俺たちはこの下の森林公園で降りる。念爆者ってのは結構な勢力をもってると考えられてるんでね」
「ブラックヴァリー……」
「お?今から説明しようと思ってたんだけど知ってた?……そっか、アリナちゃんらはホッカイドウで奴らとやりあったんだったな!実はアメリカにも奴らがいるんだ。今朝アメリカ支部長のハリーからの報告書を見て知ったんだ」
「アメリカにも……」
「これさ」
イグネイシャスはアリナ達にタブレットを見せる。
「研究所爆破のテロリストの中にブラックヴァリーが……」
「ああ、そいつをテレパスで尋問して判明した。その中に認識できない名前が出てきたのでね。普通なら気が付かない事すら違和感を覚えなかっただろうね、でも今は念爆者捜索班さ。ピーンときて本部の AI に分析させたらビンゴ!念爆者だ!」
「念爆者とブラックヴァリーは繋がっている」
「そうさ!」
アリナはそこまで本部が把握しているのなら益々 B チームとブラックヴァリーにいる A チームの事を知られる訳にはいかないと思った。
「本部はブラックヴァリーを単なる首狩り斬鬼事件の集団から超一級テロリスト集団に認識を改めた。アリナちゃんがフランスに居る時戦った敵のようなものさ」
「……あの戦いはあまりに多くの犠牲者が出ました」
「テロリストは迅速に徹底的に潰さなければならない!長引かせては駄目なんだ!」
イグネイシャスは大きく手を広げ声を張った。
「それじゃあ行こうか。作戦のおさらいだ、一般人として念爆者の居る病院に向かう。土御門の兄さんに念爆者の仕掛けを破ってもらう。その間の護衛は俺とアリナちゃん病院の監視はナターシャちゃんにフローレンスちゃんと哿クンだ」
「念爆者を認識できるようになったら即撤退ですね……」
アリナは眉間にしわを寄せながら言った。
「ああ、流石に病院内で戦いをするわけにはいかない。その後は奴を追ってアジトを突き止める。電人 G 対策チームがその間にネットワークの安全を確保できているのが理想だ」
「どちらかが失敗すればどうなるのでしょう……」
哿は不安な表情を浮かべる。
「どっちも失敗は最悪だけど、どっちかが成功すればまだ可能性は残るさ!」
カモフラージュの為に量販店で売っているごく普通のコートを着込むイグネイシャス、アリナ、フローレンス、哿。アリナは袖の中に手を入れガントレットを隠す。
「降下!」
森林公園に降りる 5 人。タクシーを拾って病院を目指す。前の車両にアリナ、土御門、イグネイシャス。後続のタクシーにはフローレンスと哿。
数十分後、病院に着く直前、長官ジェームズから通信が入った。
『電人 G 対策チームが撤退した!交戦で 6 名中 3 名が死亡、 1 名が重体だ!!』
「嘘だろ……あの雷帝の旦那がいるんだぜ!?」
イグネイシャスは思わず声を上げた。
『フョードル君は重体、セレスティア博士と研究員の枩島くんもケガをしている。イワン君、アントン君、長神くんが亡くなった……』
「一体何が……」
『電人 G の操る兵器の軍勢が攻め込んで来たのだ。札幌市内はドローン、無人装甲車、無人戦闘用スーツが暴れていて大混乱だ』
「どこからそんな兵器が!?政府の隠している極秘特殊部隊のじゃあないっすよね?」
『調査中だが……おそらくはブラックヴァリーのものだ。政府関係者にブラックヴァリーが潜んでいる可能性もある』
「……ってことは、電人 G はブラックヴァリーと手を組んだって考えていいっすかね長官」
『ああ、実体を持たない電人 G は実世界でのサポートを必要としていたはずだ』
「ちっ……厄介な奴らが皆手を組んだって事かよ……」
「(これは……不味い!)」
アリナは心の中で叫んだ。
「(このままでは A チームの事が本部に長官に知られてしまう、どうすれば……)」
病院の前に到着する 2 台のタクシー。不安な表情を浮かべるアリナにフローレンスは駆け寄って手を握りしめた。
「フロー……」
「通信聞いてた。きっと何か手はあるはず」
「そ、そうですよ」
哿が大きく頷く。
「そうですね……今は考えても仕方ありません。奴の仕掛けを破る任務に集中します」
アリナがイグネイシャスと土御門に振り替えると右手を上げて軽く頷いた。
「作戦開始です」
フローレンスと哿は病院の周囲の警戒に。アリナが先頭を歩き次に土御門、後ろにはイグネイシャスが続いて玄関から入る。待合ロビーで土御門は人型の紙を取り出して息を吹きかけた。
「それは?」
「保険さ」
人型の紙はいつのまにか土御門そっくりに変わっていた。
「これが術……」
「紙は俺に、俺は紙に。周囲の奴らには俺の姿は見えてはいるが紙切れの様に気にはしない。そして人型は逆に俺に見えている。人型と手分けして彼奴の術を破る。ブラックヴァリーとやらに見つかった場合は人型が攻撃されるだろうよ」
次に土御門は桃の種を取り出して病院のゴミ箱、椅子の裏に置いて行く。
「次はなにを?」
「結界の準備さ、術を破った時にどんな罠が仕掛けられてるか分からないからな。これはそうだな……テントみたいなものだと思っとけ。中に入っておけば雨風は防げるって寸法よ」
「無関係の人を守る為ですか?」
「そうだな。本当は人払いの結界を仕掛けたいところだがそれだと彼奴に気付かれる。よし、次行くぞ」
ロビーから外来に向かう廊下を進む三人。
「!!」
アリナは空気の流れを感じ咄嗟に腕をクロスさせる。刹那、衝撃がアリナのガントレットに伝わる。
「何だ!?」
「アリナちゃん!?」
土御門とイグネイシャスが叫ぶ。
「メス……ですね」
床に落ちた刃物を一瞬だけ見る。
「いや、違うぞ。ただの割りばしだ」
土御門が拾い上げる。
「どうやらこの病院の中に彼奴に術を掛けた術師がいるらしい。しかしお前よく防いだな……」
「……知覚を研ぎ澄ましていますので」
アリナは自分の前方に突如現れた数本のメスを拳で叩き落す。床に落ちたメスは割りばしへと姿を変える。
「またか!」
「まるで気配を感じねぇな」
「敵はテレポート系の能力でメスを投げているような感じがします」
「異能者と術者が組んで仕掛けてきている可能性もあるな」
土御門を壁を背にさせ、イグネイシャスは彼の前で警戒する。アリナは二人の前でベアリング弾を構える。
「こんなに人が多い場所で襲ってくるなんて」
「それほどここに来られたくなかったんだろうよ」
「ちっ、やりにくいぜこういう敵は……」
三度アリナの目の前にメスが出現。アリナは弾かずに自分のベヤリング弾を撃った。メスはアリナに命中するも皮膚の表面でストップする。
「グェアッ」
廊下の真ん中で声が聞こえた。そして何かが倒れる音。
「メスの角度から軌道を予測してベヤリング弾を撃ちました。命中したようですね」
「あそこだな!」
ネット状にした炎を投げるイグネイシャス。廊下に人型が浮かび上がる。
「うぎゃああああ」
「おっと」
燃え始める人型についた炎を消すイグネイシャス。焦げたフードを被った男の姿が浮かび上がる。
「く、くそ!」
再び透明化する男、イグネイシャスは指鉄砲の構えで炎の弾丸を発射して足を打ち抜く。
「逃がすかよぉ!透明化とさえ分かれば温度で見えるんだよ!!」
続く
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