VAMPIREEYE104 「仮面の襲撃者2」
「チッ……これで全員口封じしなければならないか、やるぞ!!」
かぎ爪とクナイの男が美古都と壁山に襲い掛かる。刺叉と鎖鎌の男は須原に、直刀の男は霞に襲い掛かった。
「シャー!!」
かぎ爪の攻撃を十字槍で受け止める美古都。クナイの攻撃を展開した魔力壁で弾き返す壁山。
「その爪……毒がついてるっぽいんですが」
「クククク、強力な麻痺毒だ」「こっちのクナイもだ」
「ヤベェよ周防、何だコイツら……」
素早い動きでフェイントをかけて麻痺武器で仕掛けてくる黒嘴仮面達、美古都と壁山は猛攻を防御に徹して防ぐ。
「くっ……(強い……学校に乗り込んでくるサイバネ者らとは違う!)」
「速ぇ……(ハンドボールの試合でもこんな速いのいねぇ!)」
駐車場の端へと徐々詰められていく美古都と壁山。
「マズイ!」
須原が駆け寄ろうとするも刺叉の男に行く手を阻まれる。
「おっと、行かせない」
棘の付いた電磁指叉で突いてくる。
「セエイ!」
更に横から鎖鎌男の分銅が飛んでくる。回避する須原、電磁指叉は金網を引き裂き、分銅はブロック塀を粉砕した。
「フンハッハハハハ!!」
直刀を振る黒嘴の主格。霞は全て見切り雷の魔力を込めた拳を構える。
「流石は白峰三姉妹の中でも最も才能ありと言われる娘。この俺の剣を躱すか」
「確かに速いけど間合いに入らなければ大丈夫」
霞は軽く腰を落とし膝を柔らかく半円の動きで後退を繰り返し男の剣を回避する。
「(この年齢でこの域にまで体術を……それにあの両拳の雷【いかずち】)」
男は直刀を振って追うのを止めゆっくりと前で構え霞の出方を伺う。
「……」
霞の周囲の車や鉄柱から電撃の青い閃光が瞬いて見えた。
「あなたたち全員、電気対策は万全なのね」
「無論。貴様を相手に防電の装備を怠るなど自殺行為」
霞は回避を続けながら周囲の金属を利用して男らに電撃を浴びせかけていた。
「有象無象の輩など貴様の雷にかかればものの数秒で制圧されてしまうだろう」
「あたしとしては電撃で全員昏倒してくれてたほうが良かったなー」
「フウン!」
隙ありと判断した男は石粉と樹脂で成形した直刀で霞に斬りかかる。
「風迅剣!」
「うっ……」
回避したはずの霞の体に無数の切り傷が刻まれる。
「魔力を風の如く操り刃へと変える剣。間合い範囲自由自在の剣」
「わざわざ説明してくれてありがと」
「真偽を疑わないのか?俺の発言は虚偽のものやもしれんぞ?」
「説明するって事はあたしを殺す気はないんじゃないかなって。あくまで誘拐が目的」
「……フン!」
飛来した金網を両断する男。霞は会話しながら外れていた金網を電磁力で操作、男に向けて投げつけていた。霞は両断された金網を操り男に纏わりつかせにかかる。
「ええい、ならばこうだ!!」
金網を風迅剣で弾き飛ばし、懐から玉を取り出す男。地面に叩きつけ煙を発生させる。
「あ……これは……げほげほっ」
霞の目鼻喉に強烈な痛みが走る。
「退魔催涙煙。周囲の人間どもに騒がれる可能性があるこれを使いたくはなかったがな」
風迅剣で退魔催涙煙を誘導し須原と美古都、壁山にも浴びせかける。
「グム……」「ぐげええ……」「えっくしょん!」
目を抑える須原、悶える壁山、くしゃみをする美古都。
動きの止まった霞と三人に麻痺毒を仕込んだ武器を打ち込む黒嘴仮面の男達。
「しまった……やっちゃっ……た……」
糸の切れた操り人形のように倒れる霞。
「ぐふ……」
壁山はうつ伏せに昏倒。須原と美古都は耐えている。
「二人はまだ耐えるか。毒の効きが鈍いホムンクルスと……そっちの女は何だ?」
膝つき状態から立ち上がろうとする須原、十字槍を杖代わりにして体を起こす美古都。
「大蝦蟇なので……毒は結構耐性あるんですよね」
汗を噴き出している美古都、見る見るうちに顔色が戻っていく。
「退散した方が良いんじゃないですか?そろそろ警察来るかも?」
十字槍を構える美古都。後ろでは首を振って立ち上がる須原。
「サイレンの音はまだ聞こえない。早く見積もっても 3 分は余裕がある。 5 対 2 となった今こちらが圧倒的有利、退散する必要はないな」
「(まずい……まずいです……一人一人がめちゃくちゃ強いのに壁山君と女の子やられちゃったし……)」
「あきらめろ、この状況で我々を斃し、倒れている二人を抱えて脱出など不可能だ。我々が用があるのはそこの白峰霞、お前たちは見逃してやっても良い」
「ここでその女の子を見捨てたら私は後悔します、一生自分を責める事でしょう」
「つまらん正義感で命を落とすことになるぞ」
「命を捨てるつもりはありません、警察が来るまでの時間稼ぎくらいはして見せます」
「下がって……貴女は霞お嬢様とあちらの倒れている男の子を車に乗せてくだサイ」
車のトランクから大剣アスカロンを取り出す須原。
「なん……だと!?何故それを持っている……」
「早速この剣を使う時が来るとは」
「デエエエエエエイ!!」
鎖分銅を投げる黒嘴仮面、須原はそれをアスカロンの側面で弾き返す。
「グエアッ!」
高速で弾き返された分銅はかぎ爪の黒嘴仮面の胸に命中。そのままうずくまった。
「一人減ったナ」
「ふん、未熟者め」
主格の男が言い捨てる。倒れた者に誰も駆け寄らずに須原を見ている。
「男よ、どこで手に入れたか知らんがその大剣貴様が使いこなせるとは思えんが?」
「そうか、このアスカロンの事を知っているという事は。エクレシアの手の者ダナ」
「……察しが良いな。それが知られたとてアスカロンを回収すれば済む事だ」
美古都は霞に駆け寄り抱き上げる。黒嘴仮面の動きは須原がアスカロンを構え圧で牽制して阻む。鎖分銅を打ち返した須原の動きを見た黒嘴仮面は迂闊に動く事が出来なくなっていた。
「貴様、白峰家に仕えているだけはあるという事か、部下どもは完全に気圧されている……ならば貴様の相手は俺がする。他の者は大蝦蟇の小娘を始末して白峰霞を奪え」
「御意」
鎖鎌、クナイ、刺叉の三人が車の裏にいる美古都に迫る。
「サセナイ!」「風迅剣!」
動く須原に風迅剣で斬りつける主格の男。アスカロンに風迅剣の魔力渦が衝突する。
「退ケ!」「退けさせてみろ!」
アスカロンと風迅剣がぶつかり合う。魔力渦が須原の腕を傷つけていく。
「攻防一体の風迅剣。アスカロンを使いこなせぬ貴様が倒れるのも時間の問題だ」
「ヌン!」
大剣アスカロンを小枝のように振り回す須原、空気を切り裂く音が響き渡る。剛剣の連撃を全て風迅剣で受け止める男。その度須原の体は風迅剣で傷ついていく。
「頑丈な男だ!まだ耐えるか、並の者ならとうに腕は千切れ飛び胴体は肉片へと変わっているだろう」
「ヌウウウウ」
車の横では美古都が十字槍を振るい必死に耐えていた。黒嘴仮面の男らの猛攻に削られ傷を増やしながらも十字槍を止める事無く。
「ハァ、ハァ……」
汗と血でドロドロに濡れている美古都、体温が上がり蒸気を発している。
「さっさとくたばれ!」
鎖鎌男が踏み込んで鎌で斬りつけてくる。美古都はそれを見逃さなかった、大きな動作の攻撃をずっと待っていた。汗を流しながら血を流しながら。
鎌にあわせて十字槍を突き出す。槍の穂先は男の仮面に命中、仮面を弾き飛ばした。
「……惜しかったな」
「いえ、決まりました……」
「なにっ……」
眩暈がしたかと思った男、気が付くと頬を地面に着けていた。
「……!?」
倒れた男を見て離れるクナイと刺叉の男。
「私は大蝦蟇ですよ、毒を持ってるんです。致死性では無いですけど体の力が抜けて動けなくなる毒なんです」
敵が退魔催涙弾の中、平気で動いている姿を見た美古都は仮面が防毒マスクを兼ねていると判断、毒を吸わせるために仮面を狙い隙を待っていた。
「(でも……もうここまでかも血を流しすぎちゃった……女の子、壁山君ゴメン……)」
膝をつく美古都、なんとか十字槍の穂先だけは仮面の男らに向けている。
「ウラ!」「トリャ!」
クナイと刺叉の男が美古都に攻撃を仕掛ける。
しかし男らの攻撃はあと数センチのところで停止していた。
「グヌヌヌヌ!?」「グウウウウ!?」
「??一体なにが?」
美古都の体が宙に浮いた。空中に放り投げられた後、次々と傷口を塞ぐ粘着物が体にくっついていく。そして柔かなハンモックのようなものに包まれ駐車場の端に寝かされた。
「まったく……何か物音がするからって来てみれば」
「あ……ああ……!舞子さん……!!」
「しばらくじっとしてなさい、コイツらには借りがあるのよ。マンションの襲撃犯と同じ格好しているの」
舞子は非常階段から飛ぶ。落下しながら糸を射出して壁面に着けスイング。駐車場に着地した。
「グヌヌヌ!」「グウウウ!」
車の前の黒嘴仮面は極細の蜘蛛糸で拘束されている。舞子が目の前の糸を弾くと男二人は射出されビルの壁に激突、そのまま貼り付けになった。
「クソ……」「動けん……」
「今度はこっちが不意を突いてやったわよ。そしてセンジョーからの情報でお前たちの正体は分かったわ」
主犯格の男を指さす舞子。
「ほう……死にぞこないの土蜘蛛が出てきたか。魔猿の呪と我が部隊の襲撃を受け満身創痍の貴様がノコノコと」
須原への攻撃を中止し離れる主格の男。
「お前は大天狗・長門顕彰の長門組傘下、カラス天狗組の【飯田迦楼羅】ね」
「如何にも」
「聞きたいことが山ほどある」
「お前と話をする気など無い!」
風迅剣を放つ飯田、舞子は横っ飛びの跳躍で回避。
「フン!」
舞子を狙う飯田、その隙を見逃さずアスカロンで斬りつける須原。風迅剣の第二撃を放つ前に阻止する。
「邪魔だ!ホムンクルス!」
「土蜘蛛サン、この敵は自分が相手します霞お嬢様たちを頼みます」
「はぁ?アンタ一人が盾になるって?冗談はやめて」
糸弾を射出する舞子、飯田の足を狙う。飛び跳ねて回避したところにアスカロンを叩き込む須原、衝撃を逃がしつつ下がる飯田。
「フゥ……ふがいない部下は斃され目の前には白峰家仕えのホムンクルスに連合の土蜘蛛……そろそろ本気を出さなければならんようだ」
漆黒のカラスの翼を広げる飯田。ゆっくりと上段に剣を構えると風迅剣は巨大化する。
強大な魔力の奔流に周囲の大気は唸りを上げ、つむじ風と化し、駐車場は飯田を中心とする竜巻となった。
「一気に決める!風迅剣・轟嵐峨!!」
空高く伸びた巨大な風迅剣が振り下ろされる。暴力的な魔力の渦は触れた物を木端微塵に粉砕する。アスファルトはめくれ上がり車は吹き飛ばされ土ぼこりが撒きあがる。
「フッハハハハハハハハ!!塵となったか!!」
「おあいにく様!」
飯田の背後から声がする。スイングで舞子が飛んでくる。振り返るよりも早く後頭部に飛び蹴りが命中。前のめりに倒れる所にアスカロンをフルスイングする須原。咄嗟に胸の前に剣を構える。
「ヌウオオオオッ!」
剣が体に近すぎるため風迅剣は発動できない。飯田はアスカロンを通常状態の剣で受け止める。須原のパワーにアスカロンは耐えれるが飯田の剣はそうはいかなかった。
「折れ……」
須原のアスカロンのフルスイングを受け転がる飯田。折れた刀身が滑っていく。
「おのれ……風迅剣・轟嵐峨をどうやって耐えた……」
須原は大剣アスカロンを突き立て盾に、舞子はビルの壁につけてあった糸を引いて張力で回避していた。
「どうだ……まだやれるゾ」
破れたビジネススーツの上着を脱ぎ捨てる須原。筋骨隆々で 2 メートルを超える巨体が強調される。風迅剣につけられた傷は思いのほか浅く出血も既に止まっている。
「グッ……」
舞子の弾丸めいた糸弾が飯田の体に三発命中。
「退くなら今だと思うけど?それともここから泥沼の生死を掛けた戦闘を再開する?」
「……ここは退いてやろう」
サイレンの音が聞こえる。飯田は折れた剣を拾い翼を広げて飛び去って行った。
「助かった、感謝シマス土蜘蛛」
「まぁ、なりゆきでやった事よ」
「舞子さぁ~ん……ありがとうございます~……」
蜘蛛糸ハンモックから体を起こす美古都。
続く
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