VAMPIREEYE114 「解析」
「アハハハハ!口では何とでも言えますよ。彼らは既にアクションをおこしてますよ?数十年前から流行り出した新型悪性腫瘍。あれのきっかけは一人の魔術師が起こした虹色の光事件です。虹色の光とは彼らの力です。それによって生まれた異能者やサイバネら、人類は殺し合いを加速させて人口を急激に減らし続けてます。新型悪性腫瘍の治療を受けられない、サイバネに慣れない異能者になりそこなった者は衰弱死。それとここ十年で流行り病が増え平均寿命が 20 歳も下がってる事知ってますかね?」
「そんな……」
「彼らの事その力少しは理解できました?彼らの使徒であるグレイマンに従う事が救いだと理解できました?」
「く……」
二郎は混乱し目の前が真っ暗になる感覚に陥る。
「と言っても人類側も黙って見てる訳じゃないんですよね。白魔団などというグレイマンに対抗できる組織があるんです。実際これまでの歴史でグレイマンは白魔団に何度か敗北しています。どうします?白魔団が助けに来てくれる事を祈って待ちますか?」
神名 L 咲夜は二郎の義手を見つめる。
「その右手の義手。本当に不思議なものです。手に入れて調べたい、もしくは君がどうなっていくのか知りたい」
「はぁはぁ……咲夜さま……」
壁際に立っていた長身の女性は息を荒くする。
「ん~?どうしたのです亀姫?やけに衰弱してますが?」
咲夜は札を投げ亀姫と呼んだ女性に張り付ける。
「おやおやおや?」
張り付けた札は二郎の右腕に吸い寄せられ電撃が迸る。
「うぐっ……」
「木城二郎君の右腕の仕業ですか……無意識かな?それとも……」
電撃を浴びて転がってる二郎。瞬時に全身を黒い靄が包み込み外骨格と変形。赤く目を輝かせた鎧武者の姿へと変身した。
「へぇ……面白いですね。亀姫、相手をしなさい」
「わ、わかりました咲夜さま『モスグレイパワー』」
緑灰色の煙に包まれる長身の亀姫。全身を苔のような体毛に覆われた人型のニホンアナグマに変身する。
「木城二郎君、君が生きてたらまた会いましょう。亀姫、遠慮はいりません」
和室に戻る咲夜。煙のように咲夜と和室は姿を消す。残されたのは漆黒鎧姿の二郎とモスグレイパワー・アナグマ形体の亀姫。
「亀姫さん俺は君と戦う理由がない」
「わ、私はありますっ!咲夜さまの命令ですからっ!!」
長刀(なぎなた)を構える亀姫。
「ヤァ!」
長刀を振る亀姫。飛ぶ斬撃が二郎のバックル刀に命中した。
「重い斬撃だ……」
「ヤァヤァヤァ!!」
斬撃は重さをさらに増していく。
「(何だ……何かが纏わりつくように……重くなっていく)」
「ヤァーーーー!!」
体を回転させての大振り横薙ぎの一撃。二郎はしゃがんで飛ぶ斬撃を回避。壁に激突した斬撃は緑灰色の蒸気を発生して消える。
「逃がしませんよ……このビルに閉じ込めますっ!」
斬撃を連続で放つ亀姫。二郎は重くなった剣を下に向けて体を左右に捻って回避。
「(考えるんだ、灰色の軍勢はそれぞれ何か特殊能力を持っていた)」
バックル剣を離し斬撃をかいくぐって亀姫にショルダータックルを決める二郎。
「ぎゃあっ!」
コンクリートの壁に激突する亀姫。二郎はその隙にバックル剣を拾い窓ガラスのまだない窓から飛び降りる。
「ああっ!待ってー!!」
「ぐふっ」
義手のパワーを使って軽減したとはいえ 9 階からの落下はかなりの衝撃を受けた。
亀姫は追ってこない。
「剣が軽くなっている……距離限定の能力かな?」
二郎は変身を解除しながらバックルを戻し建設現場から出ていく。亀姫はあたふたと足踏みしながらその様子を眺めていた。
「ああ……逃がしちゃった……咲夜さまに叱られる……」
急いでバス停に向かう二郎。丁度バスが来ていた。
「痛てて……( 9 階から飛び降りたのはやっぱり無茶だったかな。瞬間的に足腰を強化すれば良かったかな?)」
二郎は気が付いていなかった。落下の衝撃で全身痛むのではなく、義手の影響で負担をかけていた体に落下の衝撃が響いたのだと。
傷ついた体を義手は修復を開始する。義手で作られた細胞は人間のものとは比べ物にならないほど強靭。二郎の体の五割は既に義手からの細胞に変わっていた。
***
―梅小路公園会合前
都メタル
都メタルのシェルターにたどり着いた二郎は疲労ですぐにベッドで気絶してしまった。
「何があったのかなぁ……まぁー今は寝かせとくかなぁ」
勝田は頭を掻きながら言った。
時刻は 20 時を過ぎた頃。他のメンバーは食事をとった後自由に過ごしていた。
「うーん……霄ちゃん吹雪ちゃん霞ちゃんも帰ってくるなり爆睡だし何があったんだか」
勝田は首をかしげる。
「勝田!」
華月が奥の部屋から出てくる。黒いゴシックドレス姿であった。
「あの長門顕彰から接触があったらしい。白峰家宛に手紙が届いた。斎藤が確保してここにある。見に来い」
「はい!かづたん!」
華月の発言を聞いていたメンバーは各々思いをはせる。
―冬華、茉白、谷川克政。
「茉白、私たちは動くべきかしら?」
「待機がベストだと思われます。ここ、都メタルの防衛を固めるのも大事なことです」
「ここが私たちのお城、守らなくてはならない!」
「そうです冬華。私たちの愛のお城を守りましょう」
「き、君たち……」
―都メタル社長・ 木戸剛照 、元陰陽師・ 沖田実満。
「僕はどっちかと言うと防衛戦に向いてる能力だからねぇ~」
「御謙遜を、木戸さんの能力は万能ですよ。私こそ中途半端な事しかできない能力」
「いやいやいやいや……沖田さんは器用です。何でもそつなくこなし華月様のお世話も完ぺきにこなされている。細かい気使いと器用な立ち回り。僕にはとても無理です」
「やり手社長の木戸さんに褒められると照れますな、お互い頑張りましょう」
「はい」
「あちらの冬華さん、茉白さん、谷川さんと打ち合わせをしましょう」
―京都府警警部・斎藤勇雷、都タクシー社長・ 佐久間 瓢介 ・平安新聞社主・河上起央。
「近藤さんの敵は俺が必ず取ります!」
「斎藤さん、その時は自分も呼んで下さいよ?近藤さんの敵、取りたいんで」
「斎藤さん、出来る事があるなら言ってください。協力は惜しみませんよ」
「佐久間さん、河上さん、かたじけない……」
***
―梅小路公園会合前
センジョー社長室
「社長、長門顕彰から接触がありました」
茨木童子・真柴樹里は入念に調べた手紙を持って酒呑童子・仙丈隼磨の前に立つ。
「ハッ!ついに向こうから来やがったか、内容は?」
「今夜 0 時、梅小路公園にて会合を行う。 2 名までの参加。とのこと」
「あ~~~……茨木、星熊を連れていけ。会合の様子は動画に取っておけよ。俺は俺で色々やっておくからよ」
「承知致しました」
「ヤバくなったら逃げろよ。長門顕彰なんて奴とまともにぶつかるな。もし奴とやりあおうとする別のが現れたらそいつも敵に回すな」
「心得ました」
「虎熊にも色々探らせてるがよぉー……どうやら来週、再来週がかなりの山場のようだ」
葉巻に火をつける酒呑童子・仙丈隼磨。
「各位に連絡して準備はしておく。未曽有の災害が起きた時どう動くかで人間社会は判断する。センジョーは最適の行動を取る。いいな?」
「虎熊の他に熊にも連絡しておきます。社長、明日の知事との会合は……」
「予定を少し早める。なあに 8 時 30 分なら問題ない、あっちの職員にも優秀なセンジョーの者が入り込んでいるからな」
「では 8 時 30 分で予定しておきます」
「神名の動きはどうだ?」
仙丈隼磨の発言後、超高速スワイプでタブレットを操作する茨木童子。
「杉田幻赫氏に代わり美濃セレスティア白夜氏がアイスクラーピウス業に就任との事です。株価の変化はありません」
「この時期に交代か……何かあったな?だが美濃セレスティア白夜はアメリカでも実績を積んで将来ノーベル賞を取ると言われている人物。剛腕で知られていた杉田幻赫よりも期待は高いか」
「社長、気になるのはもう一名……アデル・ホワイトと言う人物でして」
「サイエンス誌にも載っていた遺伝子工学の分野で注目されている者だな」
「既にご存じでしたか。このアデル・ホワイト、過去に人間のクローン実験していたとの噂が流れています。シミュレーターを使っての事だと当時は弁明を出しました。彼女はアイスクラーピウス業に関わっている者の一人です」
「……茨木、お前の想像していることはわかるぞ。アイスクラーピウスで既にクローンが作られているのではないか?だろ?」
「はい」
「細胞劣化によるクローンの短命説は随分と昔、 2016 年 12 月に有名なサイエンス誌で否定しているにも関わず、今だにクローン短命説は根強い。これは意図的に世間にそう思わせていると考える」
「私も同じ考えです。人間のクローンが作られているとすれば既に要人との入れ替わり、異能者兵士の量産、人口妖にミュータントの誕生と進んでいる可能性もあります。それを隠す為に今更クローン短命説を広めているのでしょう」
「気になるところだな……センジョーは神名と繋がりを持っているとはいえ、アイスクラーピウスに搭乗するのは簡単じゃない。アデル・ホワイトに会うにはどうするか……」
***
―現在
―梅小路公園での会合後
深夜、都メタルのシェルターのベッドで目を覚ます二郎。体のダルさは消えていたが義手の黒い部分は大幅に広がり右腕を完全に漆黒化、肩から胸、首の一部までに達していた。
「起きたか二郎君」
「勝田さん」
「お腹すいてる?大丈夫なら僕の部屋に来て欲しいんだ」
「あ、はい……」
勝田の研究室に移動する二郎。部屋の中央には義手のレプリカが置いてあった。
「説明するためにレプリカを用意したんだ。ちょっとややこしい話になるけどいいかな?」
「はい」
勝田はレプリカの義手を持ってプロジェクターの3 D 画像を映し出す。
「この義手は V エナジーと名付けられた特殊なエネルギーを発生させるというのは前に話した事あったよね?」
「そうですね」
「素材が不明でどう調べても二郎君、君自身の腕と結果が出てたんだ。訳が分かんなくてねーそれでジーニアスレイジのデータを漁っていたら関係ありそうなのが出てきてね。マーリンのレポートなんだけど……神話・伝説に登場するアイテムの再現てもので」
勝田はひげを蓄えた筋骨隆々の騎士と光り輝く剣の映像を出現させる。
「霊体召喚からの存在証明、具現化、固定。なんだけどまぁここは魔法の分野で僕は詳しくないけどえっと……この画像のアーサー王の剣を再現するためにマーリンは残滓を辿って集め霊体を呼び出し剣の記憶を具現化、それをこの世界で固定させる。固定させるためには霊体の記憶から正確な情報を読み取り魔術で分子レベルの構築が必要……と」
「全然分かりません……」
「うーーーーん……例えばだけど3 D ソフトをプログラムからつくってそのソフトで3 D データを作って分子レベルの3 D プリンターで再現……とかになるのかなぁ」
「物凄く大変そうですね……」
「だねぇ~それでこのレポートが関係ありそうって思ったのは君のデータで義手が作られてると言った点だ。マーリンの魔法を利用して作ったものなら君自身が素材の義手を……未来で完成させて過去に送り込み未来でマーリンの魔法で召喚形成固定。こう考えればあまりにも頑丈過ぎるその義手にも説明がつくんだよね」
勝田はレプリカを触りながら説明する。
「え?え??」
「その義手は未来にあるべきもの送られてきた時代まで経つか、未来で壊れるかしない限り壊れる事はない……はず。あとは同時代に違う時代のものが存在した場合、二つが触れた場合どうなるか。想像だけで僕にはわからない。それと元々の義手の作り方がまだ不明だ。それに過去に干渉する方法なんて……無いわけじゃないけどまだ不可能だ」
「じゃあ勝田さんこの義手の変化は??」
二郎はシャツを脱いで見せる。義手の黒の浸食が広がり肩にまでかかっている。
「スゴイ事になってるね……その現状の仮説を立てるのなら……義手完成に向かって進んでいるからこそ変化している、かな。解析が進む事と二郎君が様々な経験を積むことが関係している気がするね。この義手の作成者は未来の僕と二郎君っぽいんだが……ジーニアスレイジのメンバーの力を借りなければとても出来そうにない」
「俺が未来でこんな高度なものを……?」
「そもそもだ、君が僕に義手を触らせ物凄い情報を入れたからここまで進んだんだ。未来で何かあってそっちの僕らが何か細工したんじゃないか?義手の完成を急がせている」
「……勝田さん、最初に義手を作ったのは俺で、いつか分からない未来から送りつけて何をしようとしてるんでしょうか?」
「さぁねぇ……未来で何か大変なことが起きて過去を変えたいのかな?……いや、でもそれは並行世界の枝が増えるだけで本人がいる世界に変化はないはずなんだけど……」
勝田はフォトンペンタブで空中に図と計算式を書き込んでいく。
「未来の僕たちは義手で過去の枝分かれを観測できているのなら……意味はある……か」
話してる最中に二郎の義手が変化を始める。漆黒部分が更に広がる。
「勝田さんの解析が進んだから?」
「そうなる……よねぇ。二郎君義手じゃない体に変化はあるかい?」
「全身とても軽くて……力が漲る感じですね」
二郎は軽く連続ジャンプをして見せる。
「今日の所はここまでにしておこうか。一応ジーニアスレイジのサーバーにはアップしておくよバックアップの為にね」
空中に現れたページにアクセスして勝田個人ファイルに解析データを保存する。
「これでよしと、僕かジーニアスレイジのメンバーしか見れない」
「はい」
「これさぁ将来君がジーニアスレイジのメンバーになるって事なんだろうなぁ……」
「そうなんですかね……」
「まぁ~いつか解る事だしいいか。あ、そうだ二郎君かづたんが皆を集めて話があるってさっき言ってたよ。あの方、超絶パーフェクトな姿になっててねー」
「丁度俺も華月さんに報告したいことがあったんです」
神名 L 咲夜の事、亀姫モスグレイパワーの事を思い出していた。
シェルターのメインホールには既にほぼ全員が集まっていた。
「あ……華月さん……何か様子が……」
「来たか。どうだ、完璧な姿を取り戻した我は」
続く
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