VAMPIREEYE125 「対決グレイビースト」
「(晴明神社……碁盤の目町の入口に通じる隠し地下通路がある所……グレイビーストは私たちの作戦に気が付いている?)」
冬華はネットワーク通信で都メタルにメッセージを送信する。
『晴明神社周囲の監視をお願いします、グレイビースト出現の可能性が高いです』
『了解冬華ちゃん。むしろ良かった、グレイビーストがそこに現れるのなら都合がいい』
勝田は監視カメラドローンを晴明神社に数十台向かわせる。
10分と経たずに晴明神社近くの建物の屋上に終結する冬華と星熊たち。異常なまでの静けさが辺りを包んでいた。
「静かすぎる……」
星熊が警戒しながらあたりを見渡す。
「ん?」
はるか前方の建物で大きな爆発。後方、左右もほぼ同時に火柱が上がった。
京都市内が燃えている。
「何だ?」
全員が周囲を警戒、晴明神社への注意が一瞬逸れる。
晴明神社の境内に五芒星の陣が浮かび上がりそこからグレイビースト・神名 L 咲夜が飛び出した。手には巨大な錫杖。
「危ない!」
一番最初に気が付いたのは佐久間であった。傭兵時代に培われた危険察知能力と吸血の鬼の知覚が合わさり体が動いた。
尻尾と獣の足でロケットめいた跳躍で一気距離を詰めるグレイビースト。錫杖は 4 枚の金属刃が取り付けられており西洋のメイスを思わせた構造。人の倍ほどもある凶悪な錫杖メイスを振りかぶる。
「グッ……!!」
ナイフを持った両腕をゴリラに変えて受け止める佐久間。受け止めきれずに錫杖の刃が両腕に食い込む。そこで全員が気が付いた。
「爆!!」
グレイビーストが叫ぶと佐久間と錫杖メイスが触れた箇所が爆発を起こす。佐久間の両腕は千切れ飛びビルから吹き飛ばされ落下していった。
「佐久間さん!!」
蓮也は飛び込んで横薙ぎの刀を振るう。佐久間に追撃の構えを取っていたグレイビーストの動き止め錫杖メイスで受け止めさせた。
「アハハ!いい反応ですね、ですがまずは一人……!」
「クソッ」
「テメェ!!」
横から肉迫し金棒を振る星熊。グレイビーストは錫杖メイスを離して回避。飛び上がり際に尻尾を伸ばし星熊の顔面を狙う。
頭を振って避ける星熊。一本角の先が触れ火花を散らせた。
「アハハハハハ……このメンバーで私を討伐しようってんです?出来ますかね??長門顕彰を斃した黒谷月を連れてきたほうがいいのでは?」
錫杖メイスを引き寄せ電信柱の先に着地するグレイビースト。
「ここのメンバーは長門顕彰も相手にできますよ」
冬華が言い放つ。
「早速一人脱落したようですが?まぁまぁそれなりの者でしょう、一番に反応し私の爆砕呪で原型を留めているんですから。そうそう、今しがた市内で起きた爆発は灰色の軍勢の仕業です、本格的にこの街を落としにかかります」
「やはりそうですか」
「その気になれば一日で数千人単位で灰色の軍勢に出来るのですけど、雑な仕事になるのでそういうのは明後日以降します。とりあえず陰陽師団 10 名を獣化して放ちました。彼らは邪魔な妖やサイバネを駆除し街の人々を襲い屍人化して回るでしょう」
「テメェ……今までそうやってこなかったのは遊んでやがったのか?」
星熊は金棒を向けて言った。
「そういう訳では無いですよ。ちゃんと見極めて立派な獣にする者を選別したかったのです。雑な仕事でみんな犬猫獣化とかつまらないでしょう?この私グレイビーストはこの街を自分の獣園にするつもりですから、バラエティ豊かな愛すべき獣たちで揃えたいじゃないですか。ライオンとかパンダとかはまだまだ慎重に選びたいですしね」
「ふざけやがって……」
「アハハハハハ!獣化したほうが幸せだと気付くのは全て終わった後ですからね。【彼ら】に意味も無く生かされて労働力として死んでいくよりいいでしょう?愛玩動物として私の軍勢に加わりなさい。それが賢明です」
「訳分かんねぇこと言いやがって!」
「おや?センジョーは私と金熊童子とのやり取りやホテルでの会話を盗聴していたはずでしょう?それなら理解できてると思ってたのですが。【彼ら】が来てからが本当の地獄なのに。万が一にも私を斃せたとしても【彼ら】の襲来を止めることは不可能です」
「【彼ら】とは何者ですか?」
グレイビースト咲夜に砲身を向けたまま冬華が言う。
「地球人が大体想像する存在。インベーダーだとか宇宙からの来訪者だとか邪神だとかそういった存在です。合衆国はかなり前から彼らとコンタクトを取っていたのですよ?」
「地球外生命体……」
「まぁ……色んな所からこの地球に調査に来てたのでどれがどれとは言えないですが、所謂【グレイ】と呼ばれている存在の先兵こそがグレイマンですね」
「……グレイ」
「他の連中に比べグレイは穏健派ですよ?調和の為の支配ですから。この星のパワーバランスは崩れています。彼らは悪性腫瘍やウィルスの蔓延など色々と試してきたのですがしぶとく人類は生き残り増え続け星を穢してきた。そしてついにしびれを切らしたのです」
「……」
「他の宇宙来訪者の過激派なんて超巨大隕石を落として終わりですよ?恐竜を絶滅させたアレを喰らいたくないでしょう?人類はもう滅びるか隷属するかの二択しかないんですよ」
「貴女は彼ら(グレイ)と戦う気は最初からなかったのですか?」
「戦う気は……無かったですね。利用できるかどうかの興味しかなかったので。私にとっても人類と妖は邪魔なので利害一致と言った所でしょうか。私の興味は人類と妖の消えた先の未来。どの生物が次の頂点に立つのかそれこそが私の好奇心を搔き立てるものなのです。なので彼ら(グレイ)はそれを見守りますよ。この星を資源確保と開拓地に考えているので壊しはしません。人類を除く他の生物に敵対理由は何も無いです。私が懸念するのは他のグレイマンとの闘争ですよグレイマンはお互い対立しているので」
「グレイマンとの闘争?他にどのくらいこの星で活動してるのですか?」
「教えた所であなた達には何もできないでしょうからまぁいいですか。グレイマンは全員で 5 人。うち一人は消えました、グレイストームですね。一番最初に私の障害となりえる存在でしたがグレイストームとその勢力は完全に消滅しました。最近の事ですよ」
「グレイストーム……」
グレイビースト咲夜と冬華の会話に釘付けになる一同。蓮也だけは佐久間の救出に向かっていた。
「グレイマンは世界各地で活動しているというのに暢気なものですね。私の活動の場がこの国この街であったというだけ。グレイストームは主に合衆国で活動してました。彼の爪痕は今も合衆国を混乱に陥れてますね。それに乗じて動いてる者もいますよ?」
「合衆国の連続テロや変異モンスター騒ぎ……あれはグレイストームの仕業だと?」
「ええ。正確にはグレイストームとその協力者である念爆者とその関係者ですね。グレイストームは途中までは見事でしたよ。この星最大の先進国で活動を開始、恐らく世界で一番破壊活動が出来る念爆者&取り巻きを引き入れ、世界最高峰の頭脳を持つ科学者も手に入れたのですから。グレイストームの目的は人類の新たなステージ。超人類の誕生、【グレイ】も認める知的生命体の誕生を目論んでいました。まぁ失敗したわけですが」
「念爆者……?」
「フフフ……知らなかったのも無理はないですよ。私が一枚嚙んでいますからね。念爆者を認識できないように呪をかけていましたから。グレイストームに借りを作っておく為でしたが結局意味は無くなってしまいましたがね。今、私にとっての脅威はあなたたちではなく、異能者特務機関なんです。あの組織は念爆者とグレイストームを破るんですからね、警戒しますよ。白魔団も力を貸していたでしょうしね」
「???(白魔団?)」
冬華は自分のデータベースと照合するも咲夜の発言と殆ど一致しない。
「アハハハハ……面白いくらいなにも知らないのですね。あなたたちが後手後手に回るのも無理はないです。さぁて……おしゃべりはここまでにしますか。私と戦うか街を守るかそれとも【グレイ】の襲来の備えるか」
「……全てこちらが後手に回っていると考えているのなら間違いですよ。足元をすくわれるのはそちらでは?」
冬華は都メタルから碁盤の目町侵入作戦が決行されたことを通信で知らされた。
***
―都メタル
「作戦を開始します!」
勝田の号令で全員が作業を開始する。
HKF に似た装置をセットする二郎、吹雪、刀耶。
勝田の助手とオペレーターは装置と端末に集中する。
「……なるほどなるほど。厄介ですが解けない結界ではないですね」
リティーシャはガスマスクデバイスを装着、目の前のタブレット、横にある大型モニターをマニュピレーターアームを使って操作。
「速い……タイピング速度もそうだけどプログラムの構築が速すぎる……スパコン並だよこりゃあ」
勝田はリティーシャから送られてくるデータを処理しながら呟く。
「魔法による思考加速、演算処理。プログラム構築はルーンを利用、多次元的組み合わせで 1 から 10 の処理、 10 から 100 、 100 から 1000 の試行回数を毎秒ごとに」
リティーシャはボトルのミルクを飲みながら作業する。
「トーヤ!こちらは順調ですからそっちで躓かないで下さいよ!!」
「わかってらぁ!!」
敵対プログラムを排除していく二郎、吹雪、刀耶のアバター。
「凄いな刀耶君……ちょっと練習しただけなのに俺たちの誰よりも上手い」
「そうね」
「HKFと似てるからなー……次の門が開いたぞ」
勝田は現実の碁盤の目町の隔壁が一つ開いたのをモニターで確認。
「第一隔壁突破!この調子だと最終隔壁に 1 時間で到達できそうだよ!!」
「最終隔壁突破後はこの私にお任せを」
黒谷ジークベルトが胸に手を当てる。
「華月様!京都市内が燃えてるとの報告が!!灰色の獣人が各地で屍人を増やしているとの事です!!」
水元が叫んだ。街に放ったドローンの映像とセンジョーからのメッセージを確認する。
「センジョー側の動きは?」
「上京区、西京区に向かったと。下京区、東山区は任せるとの事です」
「冬華たちはグレイビーストと交戦中……」
華月は冬華と通信をして状況を確認している。
「近藤さんがいれば警察を動かして市民を誘導できたのですが……」
黒谷は眉をひそめてタブレットを操作する。
「華月様、私と谷川先生が下京区に向かいます。」
茉白が手を上げた。
「じゃああたしと須原、吉良で東山区に行く!いいですよね?先代!」
霞が名乗りを上げる。須原、吉良も頷く。
「よし、谷川茉白組は下京区、霞須原吉良組は東山区の灰色の軍勢に向かえ」
「それならば私のゲートをお使い下さい。下京区、東山区にも座標を取ってありますので」
左手から黒い渦を出現させる黒谷ジークベルト。銃火器を満載した茉白と百足アームを装着した谷川が飛び込む。続いて出現させた黒い渦に霞、須原、吉良が飛び込む。
「ふぅ……流石に疲れますね」
「黒谷」
「ご心配なく華月様。碁盤の目町突入の時には回復していますよ」
「そうか」
華月は冬華の通信に耳を澄ませながら足を組みなおして言った。
***
―センジョー
「黒谷達の目的はエクレシア日本支部のある地下都市への突入というのは間違いではなかったようですね」
茨木童子・真柴樹里は目の前の手術台に横たわる全身を切断されワイヤーだけで繋がれた状態の烏天狗・飯田迦楼羅を弄りながら言った。
「俺たちには知られたくなかったようだが……邪魔する気は無い。エクレシアを潰してくれるならそれでいい。それよりも気になるのがグレイビーストの発言だ」
仙丈隼磨は星熊童子に持たせた通信機からの映像音声を拾いながら言った。
「宇宙人(グレイ)の襲来ですか。グレイマンとはエイリアンの手下の事だったとは」
「これから益々忙しくなりそうだな」
「……そうですね。ところでこの烏天狗はどうしましょうか?」
「これ以上エクレシアの情報を引き出せねぇのなら酒に変えちまうとするか。で、灰色の軍勢の方はどうだ?」
「灰色の軍勢討伐に出したヴァルキリー 4 名+ 2 名現場に到着しました」
茨木のタブレットの表示は燿子、妃羅莉、壁山が上京区。舞子、萌絵、美古都が西京極。
「センジョーの特殊部隊の動きは?」
「市民の避難誘導を警察と連携して行っています。屍人の侵攻を食い止めています」
「それでいい。センジョーは一般市民の味方って認識だからなぁ。ヴァルキリーに獣化した灰色の軍勢に容赦はしなくていいと伝えろ」
「ではそのように」
***
―碁盤の目町中央塔
「馬鹿な!結界隔壁をあり得ないスピードで解除しているだと!?」
葛野忍は式神隠形鬼に向かって叫んだ。
「咲夜は何をしているのです!」
「晴明神社前にて交戦中との事です」
「ええい……後ほんの少しで全てが決まるというのに……隠形鬼、結界隔壁が全て破られるまでどのくらいですか?」
「この速度でいけば一時(いっとき)程で完全解除されるかと」
「そんなに速く!?……仕方ありません、予備の生命石を使います。隠形鬼、準備を」
「御意」
「主殿!!」
部屋に飛び込んでくる水の塊。人型に変化する。
「どうしました水鬼」
「白峰雪名の様子が……」
「どうしたの言うのです!!」
「彼女の部屋の温度が急激に下がっています、現在- 200 ℃にも……」
「碁盤の目町の住民全てが人質なのです、白峰雪名には何もできないはず。余計な事すれば一人ずつ殺すと言って彼女の部屋に施した結界を更に強めなさい」
「御意」
「(あの女……小生の準備が全て整った後の事を察知しているのか?成す術もなく蹂躙され次代の白峰家は小生の子に移ると読んでいるのか?)」
目の前の装置に取り付けられた純白の左腕と生体ポッドに入れられた九尾の骸を眺める葛野忍。
「(急がなければ……小生は安倍晴明をも超える……史上最高の陰陽師だ!!)」
続く
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