VAMPIREEYE126 「対決グレイビースト2」
***
―晴明神社前
「しゃらあああっ!!」
黒髪女性・夜叉童子の自在鎖鎌の分銅がグレイビーストの錫杖メイスを潜り抜け頭に直撃する。
「オン!!」
夜叉童子は魔力を分銅に込め直撃箇所に連続衝撃を与えた。道路工事の削岩機を思わせる魔力の衝撃がグレイビーストの頭部を襲う。
「シィ!!」
次に魔蟲属妖蜂の黄蜂が外骨格に包み込んだ針拳をグレイビーストの背中に突き立てる。細胞が壊死する毒を注入する。
「ドウラアアッ!!」
金棒をグレイビーストの横っ面に叩き込む星熊童子。
「……」
猛撃を喰らってなお、笑みを浮かべるグレイビースト。細長い犬のような顎から鋭い牙が覗く。右手で夜叉童子の鎖を掴んで引き、尻尾で黄蜂を捕らえ、左手で金棒を掴む。
「雷!!」
咄嗟に金棒を離した星熊を除き、夜叉童子と黄蜂はグレイビーストの発した電撃に打たれる。
「ぎゃあ!」「グハッ!」
「アハハハハハ……」
煙を上げる夜叉童子と黄蜂を投げ捨てるグレイビースト。
「集団で襲い掛かろうとも、一度に仕掛けられるのは精々 3 人。数で押せると考えていたのなら失敗でしたね。 3 人が私を斃せる者でなくては何の意味も無いですよ?」
「夜叉と黄蜂の二人に止めを刺さないのは……獣化させるためか?」
「ええ、私に恐怖を抱いたものはグレイパワーの支配に逆らえない。この夜叉童子と魔蟲蜂は後でゆっくり獣にします」
「そうかよ……(今の攻撃でダメージが入ってないのはあり得ねぇ……どんな術を使ってやがる……)」
「星熊、下がってくれ……こいつは俺が!やる!」
前に出てきたのは全身に電撃を纏わせ髪を逆立てながら青白く輝く竹刀型特殊合金警棒を正眼に構える斎藤勇雷。
「近藤さんの敵(かたき)はこの斎藤勇雷が討たせてもらう!!他の者も手出し無用!!」
「オイ……無茶すんな確実にやる事の方が……」
「解っているッ!!だがここは譲れないのだ、どうか見届けてくれッ!!」
「……いいぜ、ヤバいと判断したら割って入るからな?」
「ああ、恩に着る……」
斎藤勇雷の様子を見てグレイビーストは錫杖メイスを構える。
「いいですね貴方。決めました貴方はライオンにしてあげますよ……」
グレイビーストが言い終わるかいなや、轟音と共に電光を放って斎藤の剣が襲い掛かる。
面打ちの一撃は錫杖メイスに激突。青白い電撃を撒き散らしながら衝撃でグレイビーストを後方によろめかせた。
「……これはこれは。 A 級上位の妖並の魔力ですね」
錫杖メイスを変形させ 2 つに分けるグレイビースト、二刀流の構えを取る。
「ですが、グレイビーストになる前の私も A 級上位は単独で狩れてたんですよね」
「だからどうしたというのだ!」
「貴方に勝ち目はないということですよ斎藤勇雷」
「その慢心、打ち砕いてくれる!!ウオオオオオオオオオオオッ!!」
右上段に構える斎藤。剣は青白く巨大化。
「アハハハ!いいですね凄い魔力です!さぁ来なさい!!」
挑発するグレイビースト。
「……」
分析をしながら観察する冬華。魔力が強大であればあるほどグレイビーストは喜んでいるように見えた。
「いけません斎藤さん!」
「ウオオオオオオッ!!」
冬華の制止の声は届かず、音速に迫る突進力で剣を振り下ろす斎藤。しかしその剣は造作もなくグレイビーストに片手の錫杖で受け止められ、もう片方の錫杖で腹を突かれるカウンターの一撃を喰らった。
「がはっ!?」
錫杖メイスの先が斎藤の体を貫く。
「アハハハハハ!!妖殺しの専門家である私がグレイマンとなったのですよ?身の程を知りなさい」
「無念……」
うつ伏せに倒れこむ斎藤。
理解できなかった、一撃必殺の雷の打ち込みが手ごたえ無くそのまま反射されるようにカウンターを喰らった事を。
「さぁ次は誰ですか?そこのサイボーグ少女が一番私といい勝負できるんじゃないですか?それともそっちのサイバネカラテの男性かな?」
冬華と八瀬童子に視線を向けるグレイビースト。
「さぁさぁ掛かってきたらどうです?様子を見ているそっちの小柄な白峰の子と半妖の少年、周囲を警戒なんかしちゃって冷静なんですね?まぁそれで正解なんですけども」
霄と蓮也はグレイビーストの他に気配を感じていた。
「 GUUUUUUUUUUUU ……」「 BUMOOOOOOOOO ……」
物陰から馬と牛の灰色獣人。馬はアーマーを着込み、牛は背中から蜘蛛を思わせる足を 4 本生やしていた。
「昨日見つけた不審な動きをしている妖をさくっと軍勢に加えておいたのです。アラクネ?とゴブリン?でしたっけ?まぁとりあえず金につられてホイホイとついてきたのです。ちょっと狂化しすぎてあんまり理性残ってないですけど、その方が死ぬまで戦うので使い勝手は悪くないですね。可愛くないので後で殺処分決定ですが」
「吐き気を催す邪悪だな」
霄が言い放つ。
「いいですね可愛らしいですね貴女。サーバルキャット獣人にしてあげますよ。そっちの男の子は……豹とかいいかもですね」
「ふざけるな!」
「落ち着くんだ霄、あの馬と牛の灰色獣人は侮れんぞ」
刀身の赤い刀を構える蓮也。ジリジリと迫る馬、牛の灰色獣人。
「アハハハハ!安心してください、死ぬ前に獣化してあげますから!さぁやりなさい!」
グレイビーストの掛け声で飛び掛かる馬と牛の灰色獣人。迎え撃つ霄と蓮也。
連合と華月派の 10 人の内 4 人、佐久間、夜叉童子、黄蜂、斎藤がリタイア。
残るは冬華、霄、蓮也、星熊、虎熊、八瀬の6人。
「さて、残りはずっと影に潜んで狙っている鬼、金棒筋肉の鬼。私を分析しているサイボーグ吸血鬼少女。サーバルキャット娘(仮)と豹少年(仮)の二人は馬牛獣の相手。さぁどう出ます?」
グレイビーストの挑発に乗る者は居ない。
斎藤勇雷の実力はこのメンバーの中では 1.2 を競うものであった。その斎藤が成す術もなく倒れたことで残りのメンバーは慎重にならざるを得なかった。
「(グレイビーストの呪を仮定するなら反射反転の呪……魔力の強い者ほど吸収されて反撃される……ホテルでの特殊部隊との戦闘データから物理攻撃を完全無効する事はできないと考えられる……かといって近代兵器に頼り呪の耐性が無ければグレイビーストの攻撃を防げない)」
冬華は都メタルのデータベースにアクセスしている。
「(圧倒的攻撃力で再生する前に押しきるか、グレイビーストの呪を無効化しなければ)」
冬華の頭には圧倒的攻撃力の華月と呪に耐性のある茉白が思い浮かぶ。
「(……グレイビーストの仲間であるグレイストームがどのような力を持つ者であったかは不明……ですが、異能者特務機関なる組織がこれを撃破。そしてグレイストームが仲間に引き入れたと言っていた念爆者、これはグレイビーストも警戒していた……)」
異能者特務機関、念爆者、グレイストームで検索をかける冬華。同時に都メタルに居る華月と黒谷に助言を求める。
***
―都メタル
「勝田よ、異能者特務機関に念爆者、グレイストーム。心当たりはあるか?」
華月は冬華からの通信で勝田に質問する。
「え?え??かづたんちょっと待って下さい今手が離せないので……リティーシャ、お答えしてあげて下さい」
「異能者特務機関( Talent's secret military institutions )通称 TMI と呼ばれている組織ですね。念爆者の方は異能者強度カテゴリー6に属する世界最強最悪と言われていた異能者です。そしてグレイストームとは念爆者と組んでいた魔法使いの男です」
作業を続けながらリティーシャが答えた。
「冬華が現在グレイビーストと戦闘中だ。敵はその異能者特務機関と念爆者を警戒していた。理由が解らないとの事だが」
「カヅキ、少しお待ちを……あああああもう!これ以上演算力を上げるのにはアレをつかうしかないですね!ナイトケースハート起動!!」
リティーシャの背後にあるカバンから桜銀のプレートが無数飛び出しリティーシャに張り付いていく。そして女性型の鎧騎士へと変身した。
「疑似人格複製、並列接続開始……ふう、これで隔壁攻略は私のコピー AI らにしばらく任せられます。さてさて……カヅキの聞いたトーカの発言を回収して解析開始……」
リティーシャは光ネットとジーニアスレイジのデータベースにアクセス。
「グレイビーストの反転反射の術式に対抗しうるのは……そうですねー純粋にゴリ押しできる者、術式を無効化出来る者、もしくは強度の高い物理攻撃。グレイビーストが警戒する理由としてカテゴリー5に相当する異能者にはそれに該当するものが居るのでしょう……なので異能者が集まる TMI を警戒してたのですね」
リティーシャはグレイビーストの術式無効化にナイトケースのストライクスマッシュ(魔力分解変換攻撃)が通じるか演算しながら調整。
「この状況でグレイビーストに対抗しうるのは……カヅキ、私のナイトケース……後は可能性としてはジロウですね」
二郎の義手のこれまでのデータからグレイビーストに通用すると考える。
「ダメだよリティーシャ、そのメンバーは動かせない」
勝田は無数のモニターをチェックしながら言った。
「ここの誰も外せないのなら……カテゴリー5の異能者が必要です。味方に引き入れば有利なんですが私にそんな知り合いはいません……師匠ならいるかもですが」
「僕もそんな知り合いはいない……ね」
「だったらよー………俺と河上さんが結界隔壁攻略に入るぜ。一応トレーニングしてたし二郎や刀耶ほどの腕じゃなくてもなんとかやって見せるぜ。それなら二郎を動かせる」
恭一が立ち上がる。まだ体調は万全ではない。
「確かに僕も一応 HKF やってるからね。無茶さえしなければサポートに徹すればいけるさ」
勝田と共にモニターをチェックしていた河上が立ち上がった。
華月の顔を見る勝田、河上、恭一。判断を待つ。
「……二郎と刀耶の交代に恭一と河上の二人が入れ。吹雪の交代にも誰か入れ、休憩だ」
「はい!」「了解!!」
装置を付けた恭一と河上が二郎、刀耶と席を代わる。
「吹雪ちゃんの休憩交代に私が入ります!」
水元が吹雪と代わる。
水分補給する二郎、吹雪、刀耶。
「恭一と河上、水元がどこまで出来るかが重要だ。この休憩時間にそれを見極める。グレイビーストには、我が行ってやる」
「カヅキそれでいいのですか?被害は減らせると思いますが肝心の碁盤の目町攻略が困難になるのでは?貴方の娘でこの国最高峰の吸血鬼一族の当主と最強の陰陽師とエクレシアのエージェントが迎え撃ってくるのでしょう?」
「どの道グレイビーストを放っておく事はできぬ」
「それではそうですが……」
「あの……」
二郎が華月とリティーシャに声をかける。
「グレイビーストの言っていた異能者特務機関……なんか聞いた覚えがあって………思い出したんですけど」
二郎はセンジョーで出会ったイグネイシャスの事を思い出した。
「ほう?」
「ジロウ!?」
「えっと連絡先を教えて貰ってて……」
携帯端末をリティーシャに見せる二郎。
「でかしたぞ二郎」
「すぐメッセージを送りましょう!!アカウントは信用のある都メタルの社長のキドのを使いましょう」
木戸は光ネット通信でイグネイシャスにメッセージを送る。
数十秒後すぐに返信が来た。内容は――
『大体の事情は解った。こちらも調査をしていたのでね。すぐにそちらに向かう』
『都メタルの警備員に伝えておきます』
『いいや、向かうのはグレイビーストの所さ』
***
―晴明神社前
「アハハハハ!いいですね粘りますねー!」
冬華、星熊は絶え間のない連携でグレイビーストに攻撃を仕掛け続けている。隙あらば影からしなやかに虎熊童子が飛び出し首や目などの急所を狙う。
グレイビーストに傷を与え続けているものの、すぐに回復。余裕が見える。それに対し消耗しているのは冬華たちであった。少しづつ体力を削られている。その後ろで八瀬童子は迫る屍人から斎藤ら怪我人を守っている。
「決め手に欠けますね……」
「あの雷の刑事の一撃ですら耐えきりやがったんだ……あれ以上の攻撃を入れなきゃなんねえって事かよ」
「……このままではキリがないよ」
「霄と蓮也も馬牛の獣人に手こずっているみたいです」
蓮也、霄は馬と牛の灰色獣人との戦闘が続いている。
「ん?あれは?」
グレイビーストの見つめる先には夜空を飛ぶ火の玉。こちらに向かって来る。
「アハハハ!増援って事ですかね?」
火の玉はグレイビーストに向かって突進。数十個に分裂し突撃。全方位から集中砲火を浴びせにかかる。
「……っ!?」
グレイビーストの顔色が変わる。物理のただの炎なら 3000 ℃程度までなら問題ない。魔術の類の炎なら反射して吸収できる。浴びせかけられた炎は温度こそ 3000 ℃にはいかないものの、グレイビーストの体毛、施した呪を貫通し焼いてきた。
「……何者ですか」
再生の術で火傷の治療にかかるグレイビースト。目の前に浮いているのは人型の炎。
「 TMI イグネイシャス・ファイマン。カテゴリー5パイロキネシス」
「 TMI ……異能者ですか、忌々しい!」
「異能者の能力が通じる原理は……知っているようだな、グレイビースト神名 L 咲夜」
「……当然でしょう。異能者の力もまた宇宙からのギフトで誕生した存在だからです。腹立たしい事に……白魔団との繋がりもある」
「陰陽師のアンタなら知っていると思ったよ。そして何事にも相反する存在がいる。グレイマンやミュータントに対するは白魔団、 TMI 」
「そのうち現れるだろうと思ってましたよ。私に対するアンチアタッカーが。グレイストームも念爆者もそれに敗れた」
「おっと、アンタに対するのは俺だけじゃあないぜ?」
親指で後ろを指すイグネイシャス。月の光に照らされて輝いている鎧騎士。
続く
VAMPIREEYE137「救世主と少年」 Jan 15, 2022
VAMPIREEYE136「異次元の扉」 Jan 14, 2022
VAMPIREEYE135「起死回生」 Jan 12, 2022
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search