VAMPIREEYE127 「対決グレイビースト3」
「……ぞろぞろと……いいですよ、まとめて叩き潰します!」
接近してくる鎧騎士。背中に装着された飛行ユニットの上には漆黒の日本鎧に似た全身バトルスーツに真紅の隻眼の武者。
鎧騎士は宗像刀耶の変身した姿『ナイトケース・ダイヤ』
科学と魔法の技術を合わせて作り出したリティーシャの傑作。
漆黒の武者は更に義手をアップデートした木城二郎の姿であった。
イグネイシャスの前に着地する二人。
――少し前、都メタル
「隔壁攻略にはあと 45 分程度かかります。その間グレイビーストを抑えられるかどうか。ここは一気にグレイビーストを叩くべきでは?」
黒谷はリティーシャに言った。
「だからと言って攻略を中断してトーヤやジロウを出すわけにはいきません。ましてやカヅキを向かわせるのはもっての外では?」
「しかし……」
数秒の沈黙。
「リティーシャ、何分なら中断してもたせられる?」
華月が立ち上がって言った。
「 20 分程度なら」
「ならば 20 分でグレイビーストを叩く。現地の冬華らに二郎、宗像刀耶、 TMI のエージェントを合流させろ。 20 分で決着がつかない場合は黒谷の黒渦で二郎らは回収する。そこからは我が討ちに出よう」
「そんな無茶な……トーヤらに何かあったら……」
「このままでは我らが不利だ。冬華らが全滅した場合都メタルにグレイビーストが攻め込んでくるぞ」
「それは絶望的にマズいですね……」
「ええ、華月様の言う通りです。ここに攻め込まれるよりは攻めに言った方が良い。万が一ここを襲撃されることになれば追い返したとしても二度と碁盤の目町攻略のチャンスは来ないでしょう」
黒谷は必死に作業をしている勝田の横にあるタブレットを手に取って言った。
「ただ単に二郎君を送り出すのは心配です。なので……華月様」
「ああ、解っている」
華月は右手の人差し指から血を一滴出現させ空中に浮かべる。
「休憩中の二郎を呼んで来い」
「はい」
――現在
「爆!!」
体毛に爆砕呪を込めて投げつけるグレイビースト。刀耶はそれを左手のスモールシールで受け止めた。粉々に散る体毛。
「おっと、喰らわねえよ!この距離で仕掛けるなら飛び道具ってのは定石だしな!」
「……(爆砕呪を消した?衝突した後すぐに呪は無効化された……)」
グレイビーストの想定では爆砕呪を込めた体毛は鎧騎士に着き爆発するつもりだった。
「なるほど……厄介な魔法鎧ですね。そちらの鎧武者は……右手から想像するに木城二郎君ですか。アハハハハ!ちょっと見ないうちにかわりましたね」
「そうです、木城二郎です……俺も驚いているんです。まさかここまでの力を出せるようになるなんて(華月さんの血がものすごい力をくれる)」
「いいですね、君たち三人が私の相手をするのでしょう?」
「ああ、そうさ」
「おうよ」
「俺と、二郎君と刀耶君がアンタを斃す」
飛び上がったイグネイシャス。指先から熱線を発射。それを錫杖メイスで受け止めるグレイビースト。
「ストライクスマッシュ!!」
一気に接近した刀耶はロングソードにエネルギーを込めて胴を狙う。グレイビーストの脇腹を掠め体液を飛び散らせた。
「手ごたえありだな!奴に攻撃通るぜリティーシャ!!」
『やはりそうですか、その調子でガンガン攻めるのですよトーヤ』
刀耶のナイトケースの兜の通信装置で会話するリティーシャ。
「雷!!」
左腕から電撃を放つグレイビースト、二郎はそれを右手で受け止める。
「む……(吸収されている)」
「全身に衝撃が来るけど……吸収できる!」
「それならこれで」
大きく口を広げるグレイビースト。破壊のエネルギーが口内から放たれる。単純に自身のエネルギーを砲弾として三連続発射した。
間一髪で躱す三人。後方の空き家は火柱を上げて吹き飛んだ。
「冬華さん達は、今のうちに怪我した人たちの救助を!!」
二郎が叫ぶ。
「了解しました。ですがそれはあそこにいる馬牛の獣人を始末してからです。霄と蓮也の二人だけに押し付けられません」
「頼んだぜ、ガキども……奴との相性はお前らの方が良さそうだ」
「……怪我人は任せな」
冬華は倒れている夜叉童子、黄蜂、佐久間、斎藤に水元特製の治療薬を打ち込んで行く。4人を抱えて走る星熊と虎熊と八瀬。駐車場の壁際に寝かせセンジョーへ連絡する。
霄と蓮也はグレイビーストの放った馬牛獣二人の絶妙な連携に苦戦していた。
「 GUUUUUUUUUUUU ……」「 BUMOOOOOOOOO ……」
馬の獣人は下半身を馬に変えての高速移動ヒットアンドアウェイ。牛の獣人は蜘蛛のような足から黒い粘着爆発物を投げて翻弄。
「 GUHAHAHAHA- !!」「 HIHIHAHAHAHA- !!」
「やりにくい……コイツらかなり戦闘なれしてるぞ霄」
「思うように攻撃できない……」
そこに加勢に入る冬華と星熊。虎熊と八瀬は怪我人を見張っている。
「霄は私と遠距離から支援を、接近戦は蓮也と星熊に任せるのです」
「はい!」
牛獣人の投げる黒い粘着物を炎で薙ぎ払う蓮也。
「あの黒い粘着物厄介だ、接着力は強い上に爆発のタイミングは奴次第」
「なら当たらねーように本体をぶっ叩けばいいんだろ?」
「そうだ」
体格に見合わない軽いアクロバティックな動きで黒粘着物を回避する星熊。棒高跳びを思わせる動きで飛び上がり金棒を振り下ろす。
「ドウリャア!!」「MOGAAAAAAAAAAA!!」
星熊の一撃で牛獣人の角が一本折れる。
「隙あり!火突!」
蓮也の火炎刺突が牛獣人の胸に突き刺さる。
「 MOGYAAAAAAAAAAA !!」
「三連!!」
更に火炎刺突を三連続決める蓮也。傷口から噴き出した炎があっという間に牛獣人を包み込む。
「 MOGYAGYAAAAAAAAAA !!」
転げまわる牛獣人。
「(木城家に伝わる火神流剣術は風の剣。練った気で炎を起こし剣と共に気を風の如く走らせ操るもの)」
「 GYAGYAGYAAAAAAAAA !!」
たまらず背中の蜘蛛足を使って大ジャンプする牛獣人。屋根に上がり逃走の姿勢。
「霄!行ったぞ!!」
「ええ!!」
炎の羽を広げ牛獣人の前に回り込む霄。
「やああっ!」
霄の爪が空気を切り裂く。爪の軌跡は炎の刃となり牛獣人の胸を切り裂いた。
「 GYAAAAAAAA !!」
体勢を崩し屋根から落ちてくる牛獣人。そこには蓮也が待ち構えている。
「烈風連撃!!」
高速の四連斬りが牛獣人の背中から生える蜘蛛足を切断。再び全身を炎が包み込む。
「 MOGYAGYAAAAA !!」
転げまわる牛獣人。
「トドメダァ!!」
星熊が飛び上がり渾身の力で金棒を振り下ろす。
「 MOGY ……」
金棒は牛獣人の顔面に食い込み、痙攣の後沈黙した。
「 BUHIIIIIIIIIIIIIIIIN !!」「まだまだ!!」
冬華と馬獣人のスピード比べは冬華に分があった。四本の足をスプリングに変え速度を増した馬獣人。それに対し冬華は『 V システム』を起動させた。
冬華の CAROM ボディに組み込まれている V コンデンサー。 V システムは高濃度圧縮された粒子を蓄積しておき有事の際に解放するもので冬華の出力は一時的に 3 倍にまで上がる。
「 BUHIHIHIHIHI !?」
全身の力を振り絞り残像を残しながら壁や地面を蹴って加速する馬獣人。それに軽々と付いていく V システム起動の冬華。
「ハアアアアアア……月光剣オーバードライブ!!」
体内に取り込んだ祢々切丸を素体に高エネルギー粒子で包み込んだ巨大な青白いエネルギー剣。それをすれ違いざまに振り、馬獣人の体を薙ぐ。
青白い光に包み込まれて爆発する馬獣人。黒焦げとなって地面に転がって沈黙。
「……ふぅ、 V システムはもしもの時にはグレイビースト相手に使うつもりでした。これで私のエネルギー残量は 10 %です休みます」
静かに着地する冬華、虎熊の後ろで正座して眠りに入る。
「ハハッアタシはガールスカウトかよ」
半笑いで言う虎熊。
グレイビーストは斃された馬牛の獣人を見てため息をつく。
「はぁ~……高濃度のグレイパワーを与えたのにあの様とは。まぁいいです私一人でここにいる全員始末すればそれで終わりなのですから」
「果たしてそううまくいくかな?」
火炎弾を放ちながらイグネイシャスが言う。
「この作戦は三段構えなのさ、最初に 10 人、無理なら次の俺たち、それでも無理なら最後に最高戦力のあの子が君を討ちに来る」
「あの子……ああ、長門顕彰を討ち取った黒谷月……そうですか。彼女の消耗を出来る限り軽減するためにこの作戦を。ですが、ここに戦力を集中していいのですか?街は燃えていますよ?」
「そっちも対処済みなんだなー。君が考えてるよりこの街の者は切れるようだぜ?」
イグネイシャスは火炎弾で牽制しながら言った。
「連合も動いているんです。街はあっちが対処しています」
二郎が言った。
二郎らが都メタルを出る前に華月は仙丈隼磨とメッセージを交換し情報を共有していた。都メタルは二郎たちが離れている間は河上、恭一、水元が隔壁攻略の時間稼ぎをする。グレイビーストを斃しきれないもしくは撤退に至った場合、華月が出る。それと同時に二郎たちは戻って攻略を再開する。緊急退避は黒谷ジークベルトの魔法の渦で行う事になっていた。
その間に仙丈隼磨ら連合は京都市内の灰色の軍勢を鎮圧するという流れになっていた。
「アハハハ……そうですか、追い込まれているのですねこの私が!いいです仕方ないです、全身全霊を持って戦うまでですよ!!」
グレイビーストの全身が虹色の光を放つ。全身の体毛が逆立ちヤマアラシのように鋭く尖っていく。両腕両足は分厚いうろこ状の皮膚に包まれる。
「ここからは全力です!ガアアアアッ!!」
ロケットめいたダッシュでイグネイシャスを狙う。瞬時に炎ジェットで下がるイグネイシャス。追撃の錫杖メイスは回避が間に合わず炎の塊を盾に爆発させて起動を逸らせて躱す。刀耶、二郎が反応し、グレイビーストに攻撃を仕掛ける。
「シャッ!」
グレイビーストの爪が伸びる。刀耶はロングソードで辛うじて受け止める。
「シィッ!」
刀耶への攻撃とほぼ同時に二郎を狙う刃尾。バックル刀の受けで直撃を回避した。
「グアオオッ!!」
グレイビーストは錫杖メイスを振り高速独楽回転、二郎、刀耶、イグネイシャスは辛うじてガードが間に合うも吹き飛ばされ廃ビルの壁に激突する。
「速い……」「重い……」「鋭い……」
「ウオオオオオアアアアアアアアアアアッ!!」
グレイビーストは大きく口を開け咆哮しながらエネルギーを放つ。ギリギリで回避が間に合う三人。ビーム状の破壊エネルギーは廃ビルを貫きその先にある道路の車をおもちゃのように吹き飛ばしていった。
「何て威力だ……」「あれは喰らったらヤベェ!」「マジかよ……」
飛び上がるグレイビースト。縦回転して二郎たちを狙う。三人はそれぞれの方向に飛んで回避。グレイビーストは地面に衝突の際、エネルギーを爆発させる。アスファルトの破片が二郎たちの体を打った。
「うぐっ……」「クソ」「くっ……」
「ゴフウウウウウウウウ……フルパワーで戦うなんて何時以来でしょうか……」
グレイビーストは牙を剥きながら二郎たちを睨みつける。
「怪我人が巻き込まれる前に離れるか……行くぞ虎熊、八瀬」「そうだね」「おう」
星熊と虎熊と八瀬は怪我人を抱えて離れていく。霄はグレイビーストを警戒しながら飛んで蓮也は刀を構えて最後尾で護衛を務める。
「アハハハハ!逃げていきますね、いいですよ後でじっくりと狩るだけです。まずは目の前のオマエタチ三人からですよ!!」
二郎、刀耶、イグネイシャスに獲物を狩らんとする獣の殺気を放つグレイビースト。
「グウオオオオオオッ!!」
錫杖メイスを振るいながら突進、狙われたのは二郎。錫杖メイスの連続攻撃を見切りバックル刀で受け流していく。
「ナンダト!?」
「(見える……速いけど解る……!)」
「ゴオオオオオオ……」
「(エネルギーの溜め……来る!)」
口から破壊エネルギー弾を放つグレイビースト。二郎はしゃがんで回避。
「ならば……爆砕呪!連打!受けて見なさい!!」
錫杖メイスを短く持って連打で突いてくる。触れた箇所からエネルギーを感じる二郎。体内に侵入し爆裂しようとするそれを、強引に右腕に引き寄せて解呪する。
ほとんど無意識で二郎はそれを行った。華月の得意とするエネルギー操作を。
「何……!?」
驚きのあまり動きを止めるグレイビースト。二郎は隙ありと袈裟斬りを仕掛ける。
「セヤーッ!!」「甘い!!」
槍のような刃尾が脇から突き出してくる。二郎はまともに腹部に受ける。漆黒の鎧部分は鋭い刃から二郎の生身を守りきったが衝撃までは防げなかった。後方に吹き飛ばされる。
「がふっ……」
「私の動きについてこれるようですが……技術ではまだ私が上、カウンターを合わせればお前には回避しようがないですね」
意識を失いそうになるのを耐えながら二郎は体を起こそうとするも動かない。
続く
VAMPIREEYE137「救世主と少年」 Jan 15, 2022
VAMPIREEYE136「異次元の扉」 Jan 14, 2022
VAMPIREEYE135「起死回生」 Jan 12, 2022
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search