
ReviveTheGunSword 灰蘇の剣銃
24
「忍者と隠れ家」
柄留と罅助が出て行った後の事を思い出す。
―柄留は DMC の集会所に、罅助は鈴村功太朗の隠れ家に向かって 10 分が過ぎた後。外に気配を感じた。
「功太朗さん、ここでじっとしていて下さい」
「ああ……」
彼を残してオレは外に出る。歩き方からして普通の人間ではない、足音を消す歩法だ。
静まり返った深夜の住宅街、他に感じる気配は野良猫だけだった。
「息をひそめても無駄だぞ」「……」
反応は無い。動悸の乱れも無い。龍の力を使って相手の事を探る。
この街に来てから徐々に自分の力を解放していった。地元では出来ないことがこの街ではできる。知らない街で知らない人間しかいないのなら多少は問題ない。コソコソと裏山で憂さ晴らしをしなくていい。自分の中に眠る龍の力を解放できる。
何故オレの家系は龍の力が発現するか解らない。そしてどの程度の龍の力かも解らない。祖父は既に亡くなり資料も肝心な部分が失われていた。妹の亜瑠はあまり重く受け止めずに受け入れていた。だがオレは違う、アイツと違って力の制御……解放したいという欲求を抑えるのが大変だった。少しでも解放すれば周囲の人間は簡単に壊れてしまう、それに社会には馴染めない。亜瑠とは違ってオレの力はあまりにも人間社会には向かなかった。だからこっそりと裏山で解放してストレスを発散してたのだ。
つまらない不良や反社会的組織に絡まれても少し力を見せてやれば大人しくなった。時には逆恨みをして家族を巻き込もうとしてきたやつもいたが裏山で理解するまで相手してやったら大人しくなった。
「出てこないのならこちらから行くぞ」
怪人と戦った時に少し気持ちが高ぶった気がした。今度の相手はどの程度なのか。
「……」
オレの呼びかけに答えない侵入者。
「ハァッ!」
コンクリートの壁を殴りつけ隠れている奴を狙う。伝わった衝撃で吹っ飛んだのが解った。
「何者だ?」
「……なるほど、下忍の連中では手に余るわけだ。想像以上の男だな」と全身黒尽くめの男が言った。サイバーゴーグルにコンバットアーマーを装備している。
「何者だと聞いたのだが?」
「プロは余計な事を話さない」
低い声で言った、緊張はしているみたいだ。
「そうか、ならば吐かせるまで」
「……デカい口を叩くその力どの程度か測らせてもらうぞ」
コイツは初めからオレや功太朗さんを殺すつもりで来たのではない?戦力を調べに来たのか?
「速きこと風の如く……」
「む」
両手で印を結んだあとつむじ風を纏い飛び出す男。オレの背後を取ろうとする。降りかえるとまた加速する。
「静かなること林の如く……」
男の体が透けて透明に変わる。加速しながらの透明化、だがオレには気配で丸わかりだ。
「侵略する事火の如く!」
加速しながらオレの周り 360 度から手裏剣が放たれた。オレは飛び上がって回避。
「知りがたきこと陰の如く!」
男から伸びる黒い影、オレは空中で体を捻って躱す。男は伸びた影に乗って距離を詰めてきた。
「動かざること山の如く!」
オレの着地を狙って男は印を結び力を込めた拳で殴りつけてくる。オレは男の拳を踏み台にして蹴り、反動で地面に着地する。
「動くこと雷霆の如く!」
無数の電撃が降り注ぐ。この攻撃が本命か、だがこの程度オレには効かない。
「これぞ風林火山陰雷の術!只ではすむまい!!」
「残念だったな」
「なに……!?」
裏山で雷に打たれた時よりも弱いくらいだ。
「お前、この前の工作員の仲間か。ブラックヴァリーとかいったか」
「……少し加減が過ぎたか」
「加減だと?少しも効いていないが?……質問に答えろ」
「答えればお前には死んでもらう事になる。今度は全力で行くぞ」
「来い、嫌でも答えさせてやる」
「玄武・青龍・白虎・朱雀……」
男は高速で印を結んでいく。
「……お前相手には用心深すぎる事は無いと悟った。この本気の状態になるのは久しぶりだ。この忍法・爆裂究極体を見て生き残った者はいない」
男は左右にステップを踏んでオレの出方を見ている。
「それでもういいのか?来ないのならこちらから行くぞ」
歩いて距離を詰める。
「ぬううううううん!」
手裏剣を 10 枚投擲してきた。軽く龍の息吹で吹き飛ばして逸らす。
「ツェリャアアアアアアアアアア!!」
男は背中から銃剣を取り出して斬りつけてくる。オレは刃を左手でつまんで受け止めた。
「デエエイ!爆炎遁の術!!」
指先から爆炎を放つ男、オレは全身を龍気で纏っているため影響はない。
「くっ……これでも効かぬか!」
目を向いて驚く男に龍の息吹を軽く放つ。反応はしたが回避も防御も間に合わず胸に衝撃を受けて後方に転がっていった。
「ぐはっ……」
体勢を立て直し印を結んで術を唱える男。左右に奴の残像が広がっていく。所謂分身と言う奴らしい。
「ゲホガハッ……あり得ん……貴様のたった一撃で俺の究極忍法が解除された……だがこの森羅万象の術なら……」
「出し惜しみはしなくていい遠慮するな」
オレの一言で男の力が増したのが分かる。森羅万象の術とやらはコイツの最大の術なのだろう。
「超多重分身からの銃弾+爆炎遁+雷撃+毒+捕縛粘着の雨あられだ!!」
「龍気活性」
オレは襲い掛かる全てのものを全身から放つ龍気で吹き飛ばした。周囲で爆炎が上がる。
「!?……どうなっている……理解できん、お前は完全なる生身……カテゴリー3以上の異能者なのか?それとも……怪人……」
「どれも外れだ。さて、これ以上暴れられて周りを壊されても困るのでな、大人しくしてもらおうか」
「ぬううううう!!」
男は銃剣のアサルトライフルを連射。銃弾はオレの体に弾かれて地面に落ちていく。
「おのれおのれおのれ……」
アサルトライフルを弾切れまで撃つと銃剣を構え必死の形相で突いてきた。オレはマシンガンを掴んで取り上げる。
「ここまでだ」
軽くアサルトライフルのストックで殴り腕を掴んで捻じり上げる。呼吸を荒らげ脂汗を流し始める男。
「はなせええっ!」「フン」
男が動くと同時に腕を捻って地面に転がす。捻じって関節を極める。
「ヌグググ……莫迦めこんな極め技など関節を外して脱出すれば……」「ならばこうだ」
持ち上げて背後の地面に叩きつける。何か仕掛けようとしてきたので更に叩きつける。 4 度繰り返すと静かになった。
「理解したか?」
「化け物め……人間じゃな……い」
「かもな」
ここで尋問したいところだが……この男は相当訓練を詰んでいる。簡単に口を割りそうにない。オレには拷問の趣味はないので比留山陶子刑事に連絡して男を警察に引き渡す。普通に通報すれば院瀬見の息のかかった警官に全てをもみ消されてしまうからだ。
だがこれでいい。比留山刑事がこの男をきっかけに院瀬見の調査に踏み込めるかもしれない。
***
「あの忍者は怪人と同等くらいの実力はあったぞ」
「……ほぇ~院瀬見は怪人だけじゃなくてニンジャもいっぱい雇ってるって事かぁ」
柄留がパックのジュースを飲みながら言った。
「話を聞く限り襲ってきた忍者はかなりの使い手。和音君じゃなかったらこの家も功太朗さんも危なかったかもしれませんね」
罅助は足をテーブルに上げて組んでる柄留を見ないようにして言った。
「ボクでもちゃんとやれたよー!!」
「まぁ柄留さんなら忍者には勝てますね。ですが隙を突かれて家と功太朗さんを攻撃されてたかもしれません。忍者は圧倒的な和音君を前にして破壊工作どころじゃなくなったという事なのでしょうから」
「破壊工作かぁ……さっそく功太朗の居場所バレてるかな。それとも確かめに来た?他の派閥全部敵なら面倒だなぁ」
「それはどうでしょう……院瀬見にも色んな派閥がいますからね。平和的な派閥を説得すれば争いは減るかと」
「だが監視はされるだろうな。平和的な派閥も敵対する派閥を潰した存在を無視はしない」
「こちらも警戒しますしお互い様になるんでしょうね。陶子さんの立ち上げる組織に入れば我々も動きやすくなりますし……そういえば和音君はまだ卒業まで半年はあるんでしたか、この連休が終わったら地元に帰るんですよね」
「ああ、明日で連休は終わる。キッチリ片をつけて地元に帰ってやるさ」
「ねぇ~ボクはどうすればいいの?」
連休の後、柄留をどうすればいいか考えなくてはならない。比留山刑事に預けるのが一番だとは思うが。
「比留山刑事にその事も聞いておくか……お前を連れて地元に帰る訳にはいかないからな。亜瑠と同じ顔のお前の事を説明するのが面倒だ」
「やだやだやだ~!大人しくするし顔はミレーヌに変えておくしさぁ……変身中はグレイブラスター出しっぱなしになるけど大丈夫っしょ」
「大丈夫なわけないだろう。今ここで言ってても仕方が無い全て解決した後に考える」
「はぁ~い……」
***
鈴村功太朗は自室で深い眠りに付いている。色々あって疲れているのだろう。寝息でそれが分かった。罅助は守山探偵事務所から呼んだ助手から着替えと装備を受け取っている、柄留はシャワーを浴びている。オレは第六地区の地図を見て襲撃者に対するシミュレーションをする。
「地下アジトの行く道で罅助が遭遇した黒い影が気になる」
「確かにアレは無視できない存在です。敵対派閥と関係なければいいのですが」
「鮫もしくはイルカ、シャチだとすると高い知能を持っている……柄留のグレイブラスターで操れるかもしれないな」
「操る……なるほど、派閥の第六地区大襲撃作戦の前に少しでも戦力を増やそうという訳ですか。飼い主が居た場合そちらも取り込めるかもしれませんね」
「敵は怪人に忍者、最先端の武器を装備したアーマー兵にサイバネ。軍用武器を持ったハンターの連中だ。犠牲者を減らす為にもできるだけ戦力が欲しい」
「ええ、数の差を少しでも埋めたいです。洗脳がうまくいけばそのまま陶子さんの組織に入れられるかもしれませんしね」
「ええ~……ちょっと怖いなぁソレ……」
髪を拭きながら現れた柄留。
「まぁあくまで希望ですからね、実際に見定めるのは和音君にお任せしましょう。ほら正体不明の柄留さんを受け入れ成功してるのですから実績があります」
「はぁ~!?だってボクは最強にカワイイし何も怪しくないからではー?ね?和音君?」
「地面に潜る黒い影は会ってみない事には解らない、その時判断する。危険なら退治するまでだ」
「ねええええっ!……スルーしないでー!!」
「少ししたら出ましょうか。功太朗さんを起こしてきます」
罅助は荷物をアタッシュケースに詰め功太朗を呼びに行く。
「柄留、準備はいいのか?」
「んー?シャワー浴びでスッキリしたしいつでも行けるよ。準備もなにもボクの荷物なんて和音君に買ってもらったケータイしかないし」
罅助は功太朗を連れて出てきた。車庫に止めてある RV 車に乗せる。守山探偵事務所の助手が運転席に座って待っていた。後部座席にオレと柄留、功太朗。助手席には罅助。
「一応防弾仕様と姿勢制御を搭載してるので撃たれてもひっくり返されても平気です」
罅助が言った。車はゆっくりと走り出し第五地区の水路へ向かう道路へ入った。
「流石にもう追手は居ないみたいですね。院瀬見の派閥も第六地区の襲撃準備をしているのでしょう」
サイバーゴーグルで周囲を見ている罅助。
「七曲キョウヤから連絡がないということはまだ襲撃はされてない。予想通り早朝に仕掛けるつもりなのか」
「一応陶子さんにも警戒してもらってますがまだ何も動きはないようです。それと……柄留さんが大暴れした地下のバーの事何処にも話題に上がってません。消防が出動した程度の情報は毎日みますしね」
「院瀬見の圧力か」
「この街を支配している院瀬見なら可能でしょう」
第五地区の工場地帯の側道を走り抜け森林公園が見える所で停車した。
「この先は夜間、従業員の車しか入れません歩きましょう」
先頭に罅助、次に柄留、功太朗、最後尾の殿(しんがり)はオレだ。
「和音君ちょっとうれしそう……なんで?」
「……そう見えるか?そうだな……これまで発揮できなかった龍の力を使えてるからな。オレは全力を出したことがないと前にも言ったろ?全力を出せるかもしれないと期待しているのかもしれない」
「そっかぁ……これも亜瑠ちゃんの【引き寄せ】のおかげなのかな?」
「かもな、アイツにまんまと引きずり込まれたわけだ」
水路脇の道を進んでアンダーパスをくぐり抜けた先の交差点の橋から下に降りる。コンクリートで整備された用水路が流れている。
「ここを進んであそこのトンネルに入ります。突き当り T 字路の左側で謎の黒い影と遭遇しました」
「そうか……まずはアジトを目指すぞ。功太朗と罅助はそこで待機だオレと柄留でそいつを確認する」
水路から廃地下鉄のホームに進む。そこから隠し通路に降りてしばらく歩くと罅助の言った通りセキュリティロボットの残骸が転がっていた。
「こんなもの私と蒐魅が使っていた時は無かったのだが……」
功太朗がつぶやいた。
「ちょっと待ってくれ……このセキュリティボットは…… KAMINA (神名)製だ。この街で神名の製品を扱うのは街の外の者だ。簡単に手に入るものでもない」
「そうでしたか……しかし神名製だと何かあるのですか?」
罅助は残骸を拾って見ながら言った。
「派閥に属さない他勢力がこの周辺を探索したのだ。……神名製のセキュリティボットを所有して配置した者が私のガレージを発見してに何も手を付けてないのが気になる」
「敢えて触らなかった?……もしくはそう見せかけてるのですかね?」
「既に中に入り調べ終えた後かもしれない。その場合保存ボックスの状態が気になる」
周囲を警戒しながらアジトに到着。中に入ると自動で照明がついた。埃一つない清潔な部屋だった。少し薄暗く青系のライトがついている。
「どうですか功太朗さん?」
功太朗はデスクに座りコンピューターを起動する。
「やはり誰か侵入したようだ。メインコンピューターに痕跡が残っている……データの抽出を行った……それだけか。いや、画像ファイルが作成されてる」
「画像ファイル?怪しいですね……」
「ここまで侵入してロック解除も出来た者がそんな安易なトラップは使わないと思うが……一応スキャンをかけて見たが只の画像ファイルのようだよ」
続く
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