DHHU その 37
龍帝のブレスを背中に受けて加速したユウは真邪王の顔面に蹴りを叩き込む。ブレスのエネルギーが足から伝わり真邪王の顔面から黒いオーラが放出される。
「ぎいいいいえええええええああああああああああっ!」
「どうだ! 龍帝のブレスは邪悪な者にしか効かないんだ!」
「おのれぇ……こうなったら……」
床に激突して転倒する真邪王、素早く立ち上がり回転を始める。徐々に速度を増し独楽のように高速回転。
「この場にいる全てを無差別に斬りまくってやる!」
シェルターの壁、棚など所かまわず切り裂き始める。
「いくら結界の力が強力でもあんなに暴れられたらまずいね」と才賀。
「どうする……動きを止めなくては」ドウェイン。
「今は無差別攻撃だろ? じゃあ何かに狙いを定めさせてユウの魔眼でやれば」ハオラン。
「つまり?」
「囮になるって事だぜ。チャンスは一度きり、絶対に外すなよユウ」
「え? え?」
「凄剣イクスバーンいつでも撃てる準備しておけよ!」
スライディングで真邪王に接近しながら軸足を狙うハオラン。
「甘い! 飛び上がればいいだけの事!」「そうかよ! だが俺もそうするだろうと思ってたぜ!」
全身のバネを使ってしゃがんだ状態から飛び上がり空中に回避した真邪王の足に飛びつくハオラン、途端に回転速度が落ちていく。
「バカめ! この状態で邪腕剣は回避できんぞ!」「いいんだよ!」
足にしがみついたハオランを狙い逆手に持った剣を突き下ろす真邪王。ハオランは直剣で受け流す動作を取るが邪腕剣に耐えきれず直剣は折れ肩から胸に突き刺さった。
「ギャハハハハ!」「ぐぅ……」
そのまま床に落下する二人。
「ぐっ !? 抜けん! それにこの感触、貴様……」
「逃がさねえぞ! ここが俺の人生のクライマックスなんだからよぉ!」
「ハオラン!」叫ぶユウ。
「撃てユウ! 魔眼を使って確実に!」
「そんな……でも!」「でもじゃねえ! 俺の覚悟を無駄にすんな !! 」
「うあああああああっ! 凄剣イクスバーン !! 」
龍帝に強化された凄剣イクスバーンの崩壊波は真っすぐにビーム状に黄金の閃光となり真邪王の心臓を貫いた。
「 gaaaaaaaaaaaaaaaaaa! 馬鹿な! 心臓が……そうか……」
全身から黒いオーラをまき散らして仰向けに倒れる真邪王。
「ハオラン!」
駆け寄るユウ。真邪王に貫かれた胸からは血液が殆ど出てない事に気付く。
「え? なにこれ! どうなってんの?」
「へへ……実はよ……心臓が無いんだわ」
「え……」
「最初の邪腕攻撃で俺の心臓は潰された。才賀さんがネクロマンシーを使って仮の生命維持してくれたって訳なんだ。どの道長くは無かったんだ最後にこうやってクソッタレに一矢報いて死ぬ前に別れの挨拶できる……出来すぎだぜ」
「そんな! そんなああああああああっ!」
「へへっ……そんな顔すんなってユウ、お前は最高の勇者だったぜ。お前と組めてよかった、楽しかった」
「駄目だ駄目だ! 今治療のカードを使って……」
「無駄だ……俺の心臓は戻ってこない、もう死んでいるんだ」
「うああああああああああああっ!」
「姉貴によろしくなユウ、最後に大仕事やってのけたって言っといてくれよな」
「わかった、わかったよおおおおおおおおおっ……」
***
魔王最終ダンジョンの玉座のジンガは最後のコピーを使う。
「京都で得た最後の切り札……酒呑童子コピー。これで決着をつける……」
波動を探るジンガ。
「……真邪王の奴、追い詰められてるのか? 呪力が乱れている、奴はしたたかだ、危なくなればこっちのダンジョンに来るだろう」
しかしそれは出来なかった。邪体を封じているシェルターに閉じ込められたことをジンガは知らない。
「早々に決着をつけるか……『領域酒樽発動』」
床に手を着けるジンガ。酒呑童子の能力である領域酒樽をダンジョン内に展開。酒気で満たしていく。
「防御不可能、回避不可能の広範囲必中攻撃……恐ろしいぜこれは展開されたが最後本体を叩き潰さなければどうにもできないぞ~……」
――ダンジョン内
ケンは冬華、谷川、茉白と無事合流していた。
「うっ……これは……」冬華に支えられているケンが言った。
「これはもしや酒呑童子の?」「領域酒樽だと思われます」谷川と茉白。
「私の魔力放出範囲を広げます、みんな私の近くにきて……これでダメージは相当に抑えられるはずです」冬華が言った。
「酒気を浴び続ければ 1 分程度しかこの状態は持ちませんが」
「使い捨てのアーマーを複数使えば……」
谷川は大量に得た怪人の血液から人数分のアーマーを 3 着は作れる事を説明した。
「 1 分以内にジンガの元にたどり着いてアーマーを着て即戦闘……か」
ケンは三人の姿を見る。
「この場で皆さんを運んで高速移動できるのはこの茉白。皆さんを運びます。変形、運搬モード」
車輪のついた 4 足に変形する茉白。背中に谷川、谷川の右腕に冬華、左腕にケンがしがみつく。
「ジンガは動く気配はないですね、行きましょう茉白」冬華はジンガの反応を見て言った。
冬華の放出限界まであと 20 秒の所でジンガの待つ玉座のある広間にたどり着いた。
「ヌウウウウウウウウウウウンッ!」
金棒を持った筋骨隆々の二本角ジンガが飛び掛かってきた。受け止めたのはケンの月光姫。
「酒螺掌!」
ジンガが手をかざすと掌から酒の渦巻きが発生し月光姫を吹き飛ばす。
「酒は力、万物酒に変えればそれは力に変わる。京都で酒呑童子に敗北し学びえたこの領域酒樽の中では全てのものが弱化する!」
ケンは酒を浴びた月光姫の動きが鈍くなったのを感じた。
「いけません、みなさん私のスーツで防御を!」
谷川が全員に布をかぶせるとたちまち全身スーツとなって身を包み込んだ。
「これでも 1 着 30 秒持てばいい所ですが……」
「やるしかないですね……」
冬華は血液カプセルを噛み砕いて魔力を補充する。
「茉白、冬華様のサポートを。私はケン君を守ります」「はい先生」
ジンガはケンに狙いを定める。
「徹底的に! 勇者を狙って潰す! 後の奴らなど放っておいてもダンジョンは消せねぇ!」
怒涛のラッシュを仕掛ける酒呑童子ジンガ。月光姫を自在に操りケンは自分に攻撃を向かわせない。
「酒流走」
酒の水流に乗り足場を増やして多角的に攻撃を仕掛ける。水流は月光姫に降り注ぎダメージを与えていく。
「クソ! この酒を吸収して月光姫の魔力変換するには少し時間がかかる……それに量が多すぎる」
「ギャハハハハハ! ダンジョンにおいて最強のコピー体だ!」
横から冬華の波動弾の牽制が入るも金棒で受け止める。
「解る解る、手に取るように空間を把握できるぞ……離れていても反応できる」
月光姫のエネルギーソードを軽く回避し酒を浴びせかけるジンガ。
「しぶといなその召喚者……流石テメェの切り札って訳だ」
「月光姫は負けない……負けないんだ!」
その様子をしっかりと観察する冬華。
「(いつかくるかもしれない本物の酒呑童子との対決の為にもデータを取らなくては)」
ケンから月光姫は白峰家をイメージして発現させたと聞いていた冬華。動きからすぐに華月がモデルだと解った。
「(この場合お母様よりも雪名や吹雪の能力の方が有利……)」
冬華は冷凍エネルギーを体内で生成し始める。
「ケン! 吹雪のように戦うのです! 出来ますか?」
「…… !? なるほど、そうか!」
月光姫は後ろに下がりドレスアーマーをパージする。再構築したドレスアーマーは青白く輝き冷気を放ち始めた。
「月光姫は四元素を自在に操る!」
先の戦闘で苦しめられた吹雪のダイアモンドダストモードの再現に入る。
「酒が……凍る……」
凍結した酒気は分解され氷気に。ジンガが酒気を放てば放つほどダイアモンドダストの勢いは強くなる。
「火を使えば一瞬でテメェら爆死させられたのによぉ……どうやら先に吹雪を出したのは間違いだったな(サイバネを無視して先に勇者に酒呑童子を当てれば良かったな……)」
先にコピー酒呑童子とケンが当たってた場合、月光姫は完成に至らず不死鳥の剣士では相性が悪く撃破するのは難しかった。運よく冬華がジンガとダンジョンで初遭遇して吹雪のコピー体を使わせた事が功を奏した。
冬華はケンとジンガの様子を録画し続ける。
「(これが勇者の幸運の力……私が先にコピー吹雪と対峙した事が結果、月光姫を生み出す流れとなった。そしてコピー酒呑童子に対抗できるように)」
ジンガは酒気を浴びせ続けていたが突如距離を取った。
「酒気だけがコイツの力じゃねえ……」
大きく酒気を吸い込んだジンガの体が一回り大きくなる。
「シンプルにパワーアップだ! 小細工が通じねえのなら解りやすくねじ伏せにいくぜ」
「む……」
未来予知の魔眼で突進してくるジンガを見たケンは左に回避する。ダイアモンドダストで凍り付く前に痛恨の一撃を叩き込む気でいる。
「これでまた形勢逆転か? お前は今他のカードを使えない、自身を守るために気を使い仲間に守られなくてはならない」
「私を忘れてもらっては困りますよ」
茉白のパーツを取り付けた冬華がジンガを睨む。
「ふん、酒気で碌に動けねぇポンコツなど眼中にねえ」
矢のような突進で冬華に迫るジンガ、金棒の振り下ろしと同時に酒気ブレスを浴びせかける。谷川のフード付きボディスーツは一瞬で溶解、冬華のボディから煙が上がる。
「何 !? 」
冬華の左肘に取り付けられた茉白の予備腕がジンガの右腕を掴んだ。触れた箇所から凍結を始める。
「どうですか? コストは悪いですが私も直に触れれば魔力に干渉する事も可能。酒気で溶けるよりも速く凍結させます」
「テメェ!」
冬華が魔力を冷気に変換できるなどジンガには予想外だった。事実ダンジョンに入るまでは戦闘で使用できるほどの強力な変換は出来なったがコピー吹雪との戦闘経験が冬華を刺激し完成させるに至った。
左拳で冬華を振り払うジンガ。パージした茉白の腕はジンガの右腕を掴んだまま凍結を続ける。
「無理に剥そうとすると右腕ごと崩壊しますよ」
「……やってくれたな」
「たあああああああああっ!」
ゼクスミニアドを月光姫に持たせジンガに仕掛けるケン。
「ぬぅ……」
「ここで一気に決める!」
離れようとするジンガ、後方からマニュピュレーターを伸ばす谷川。
「うぜぇ!」
酒気で払うジンガ、体勢が崩れた所に月光姫の赤黒いオーラを纏った中段回し蹴りが炸裂、凍結した右腕を粉砕、金棒が床を滑っていく。
「ぐぎゃああああああっ!」
「終わりだ!」
「ここで終われるか! 酒樽領域出力全開! 酒の津波でダンジョンごと溶かしつくしてやるわ!」
ジンガの左手が床に触れる直前、飛翔してきた茉白のチェーンソー腕によって切断される。
「なんだとおおおおおおおっ !? 」
「やりました」
既に谷川のスーツはなく、酒気でボロボロになりながら力を振り絞りチェーンソー腕を飛ばした茉白。その場で膝をつく。
「馬鹿な! こんなっ!」
「撃槍! ゼクスミニアド !! 」
螺旋状の光帯を纏う槍。それを持った月光姫は華月を思わせる背中と足裏の魔力噴出によって爆発的加速。
「ちくしょおおおおおおおおおおっ!」
防御も回避も間に合わないジンガ、心臓にゼクスミニアドが突き刺さる。
「ごふぁ……これで……全て終わりだと思うなよ……真邪王いる限り再び魔王は現れる」
「その時はまた! 勇者と仲間がお前たちを倒す !! 」
「ギャハハハハ……」
ゼクスミニアドの崩壊波で塵になっていくジンガ。
「終わった……」
「まだです勇者ケン、脱出しなければ」
冬華が言った。
「残りの血液カプセル全てを使用して全員を抱えて脱出します」
ドレスパーツは崩壊しほぼ素体状態の冬華。
「魔力放出……さぁ皆行きましょう」
球状の魔力を放出して生命維持空間を作り出す冬華。ケン、谷川、茉白を抱えて飛ぶ。
「津波が来ますしっかりと捕まって」
加速する冬華、穴の開いた壁面から脱出、直後円錐建物は大量の酒をまき散らしながら崩壊していった。
「やった……ついに魔王を……【凶】を壊滅させたんだ……後はユウが……」
ケンは崩壊するダンジョンを見ながら意識を失った。
丁度その頃、ユウも真邪王を撃破していた。
冬華はそのままホテルに向かって飛びながら財団の者に連絡を入れた。
続く
DHHU外伝その8 Jun 13, 2025
DHHU外伝グレイ・イーター編その7 Jun 2, 2025
DHHU外伝グレイ・イーター編その6 Apr 14, 2025
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search